説明

浴槽用腰掛け装置

【課題】腰掛けボードの腰掛け面積と腰掛け強度とを確保でき、入浴の安全性を高めつつ、不使用時には外観良くしかもコンパクトに収納でき、デザイン性に優れたものとする。
【解決手段】洗い場3に隣接する浴槽フランジ2上面に水平に載置して使用される腰掛けボード4を、桟状で剛性のある硬質部7と折り曲げ自在な柔軟性のある軟質部8とを交互に並列接続して構成すると共に、浴槽フランジ2近傍の浴室5内の露出しない位置に、腰掛けボード4を硬質部7と軟質部8との並列接続方向Dを浴室壁10の高さ方向Eと平行に向けた縦向き姿勢で収納すると共に収納した腰掛けボード4を並列接続方向Dと平行な方向に引き出し可能とする腰掛けボード収納部9を備えた浴槽用腰掛け装置6である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽フランジ上面に水平に載置して使用される腰掛けボードを備えた浴槽用腰掛け装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、介添えの手助けを得たり、自らが入浴する老人や病人が浴槽に入る際に、浴槽フランジに腰掛けて入浴の動作を安定化させる必要がある。そのため、洗い場に面した浴槽フランジの面積を広くして、腰掛け面積を広くすることで、跨ぎ動作は安定するのだが、反面、浴槽フランジを広くすればするほど浴槽の面積が狭くなり、広々と入浴できないという課題がある。そのうえ近年のデザインが進化した浴槽は、洗い場側に面した浴槽フランジ面積を小さくする傾向があり、腰掛け面積がほとんど取れないデザイン的な制約もある。
【0003】
そこで、従来より、図6に示すように、洗い場3に隣接する浴槽1の上端部に設けた浴槽フランジ2上面に幅広の腰掛けボード40を固定することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ところがこの特許文献1に示される従来の固定型のものでは、腰掛けボード40が洗い場3側に突出して浴室5の有効スペースを狭めてしまい、腰掛けないときは邪魔になり、さらには健常者の入浴の妨げになるという問題や、腰掛けボード40によって浴槽1のデザインが損なわれるという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−308762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の従来の問題点に鑑みて発明したものであって、その目的とするところは、腰掛けボードの腰掛け面積と腰掛け強度とを確保でき、入浴時の安全性を高めるものでありながら、不使用時には外観良くしかもコンパクトに収納でき、デザイン性に優れた浴槽用腰掛け装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するために、本発明は、洗い場3に隣接する浴槽フランジ2上面に水平に載置して使用される腰掛けボード4を、桟状で剛性のある硬質部7と折り曲げ自在な柔軟性のある軟質部8とを交互に並列接続して構成する。さらに上記浴槽フランジ2近傍の浴室5内の露出しない位置に、上記腰掛けボード4を硬質部7と軟質部8との並列接続方向Dを浴室壁10の高さ方向Eと平行に向けた縦向き姿勢で収納すると共に収納した腰掛けボード4を上記並列接続方向Dと平行な方向に引き出し可能とする腰掛けボード収納部9を備えたことを特徴としている。
【0008】
このような構成とすることで、腰掛けボード4を浴槽フランジ2上面に水平配置して使用する場合は、複数の硬質部7によって腰掛け面積と腰掛け強度とが十分に確保されるようになり、従って、浴槽フランジ2の面積が狭い浴槽1であっても、腰掛けボード4を利用して入浴動作を安全に行えるようになり、しかも浴槽フランジ2の面積を広げるための制約もなくなる。一方、腰掛けボード4を使用しないときは複数の軟質部8によって腰掛けボード4を折り曲げて腰掛けボード収納部9に縦向き姿勢で収納できると共に腰掛けボード収納部9が浴室5内に露出しないため、浴室5の有効空間スペースを阻害することもない。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、腰掛けボードの使用時には腰掛け面積と腰掛け強度とを十分に確保できると共に、不使用時には腰掛けボードを折り曲げて腰掛けボード収納部に縦向き姿勢でコンパクトに収納できるものである。従って、浴槽フランジの面積が狭い浴槽であっても入浴動作を安全に行えると共に、浴槽のデザインの自由度を高めることができるものであり、さらに浴室の有効空間スペースを阻害することがないため、デザインの一層の向上が図られるものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の浴槽用腰掛け装置を備えた浴室の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】同上の平面図である。
【図3】同上の側面断面図である。
【図4】同上の腰掛けボードを縦向き姿勢で収納ケースに収納した状態の正面図である。
【図5】同上の腰掛けボードを縦向きと水平向きとの間で折り曲げる状態を説明する斜視図である。
【図6】従来例の固定型腰掛けボードの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
【0012】
図1は本発明の浴槽用腰掛け装置6を備えた浴室5の斜視図であり、図2は平面図であり、図3は側面断面図であり、図4は腰掛けボード4を縦向き姿勢で収納ケース12に収納した状態の正面図である。
【0013】
本発明の腰掛けボード4は、図5に示すように、桟状で剛性のある硬質部7と折り曲げ自在な柔軟性のある軟質部8とが交互に並列接続して構成されている。
【0014】
本例では、交互に並列接続される硬質部7と軟質部8とは、例えば樹脂材料で一体成形されており、人が安定して腰掛けることができる広さと強靭さが得られるように硬質部7の長さ及びその本数が適宜に設定される。ここでは、硬質部7は強靭性を有する断面角パイプ形状をしており、軟質部8は90°程度折り曲げ自在な薄肉形状をしている。各硬質部7の表面側が腰掛け面となっており、各硬質部7の裏面側が軟質部8を介して連続形成されている。
【0015】
上記浴槽フランジ2近傍の浴室壁10の壁裏スペース11には、腰掛けボード収納部9となる薄型箱状の収納ケース12が設置されている。一般に浴室5の壁裏スペース11は、浴室設置有効寸法から考えて奥行き50mm程度の空間スペースが残っており、腰掛けボード4を縦向き姿勢で収納することで、奥行き50mm程度に収まる収納ケース12が設置可能となる。
【0016】
ここで、腰掛けボード4の縦向き姿勢とは、腰掛けボード4を構成する硬質部7と軟質部8との並列接続方向D(図5)を浴室壁10の高さ方向E(図1)と平行に向けた姿勢をいい、また、腰掛けボード4の引き出し方向とは、該並列接続方向D(図5)と平行な方向をいう。
【0017】
また、上記収納ケース12の上端開口部は、浴槽フランジ2上面と略同じ高さに形成した壁スリット孔20を介して浴槽フランジ2上面に連通しており、この壁スリット孔20が腰掛けボード4の出し入れ口となっている。本例では、縦向き姿勢にある腰掛けボード4の先端部に取り付けた取手13を掴んで腰掛けボード4を引き出すものであり、引き出す際に硬質部7間を繋ぐ軟質部8が約90°折り曲がることで、腰掛けボード4を縦向き姿勢から水平姿勢にスムーズに変更できる構造となっている。
【0018】
なお、壁裏スペース11の収納ケース12には、浴室5内の床パン上に排水するための横引き管(図示せず)が接続されており、腰掛けボード4についた水滴が収納ケース12内部から該横引き管を通って浴室5内に戻されるようにしてあり、収納ケース12内が常に清潔に保たれる。さらに収納ケース12は浴室5内の蒸気が浴室5外へ出ることを防止できるように密封構造とされており、浴室5の蒸気が収納ケース12内部から浴室5外に漏れることも防がれている。
【0019】
しかして、上記構成の腰掛けボード4の使用時には、図4に示す縦向き姿勢にある腰掛けボード4の取手13を掴んで図3の矢印方向Aに向けて引き出すことで、浴槽フランジ2上面に水平に配置できる。このとき図1に示すように、腰掛けボード4は洗い場3側の一側端4aが浴槽フランジ2の洗い場3側のフランジ面に沿って延びた状態で、腰掛けボード4を構成する複数の硬質部7のそれぞれの長手方向が洗い場3から浴槽1内に入る入浴方向Gと平行に向くようになり、且つ腰掛けボード4の先端側の各硬質部7が浴槽1内に張り出しており、腰掛け面積と腰掛け強度とが十分に確保された状態となる。
【0020】
また、腰掛けた人が向きを変える動作をしたときに腰掛けボード4に水平方向H(図2)に回動する力がかかった場合でも、収納ケース12内に残っている腰掛けボード4の一部の硬質部7(図1参照)が薄型の収納ケース12内部で水平方向Hに回動するのが規制されているため、腰掛けボード4全体が水平方向に回動することはなく、固定状態を維持できる。
【0021】
従って、浴槽フランジ2の面積が狭い浴槽1であっても、腰掛けボード4に腰掛けることで入浴動作を安全に行うことができる。
【0022】
一方、腰掛けボード4を使用しないときは、取手13を図3の矢印方向Bに押すことで腰掛けボード4を収納ケース12内に戻すことができる。このとき腰掛けボード4が軟質部8で折り曲げられながら縦向き姿勢に変更されて、図4に示すように、壁裏スペース11の収納ケース12内に収納されていく。これにより、浴室5の有効空間スペースを阻害することがないものであり、しかも、腰掛けボード4や収納ケース12が浴室5内に露出しないためデザイン的にも一層良好となる。
【0023】
前記実施形態では壁裏スペース11に、腰掛けボード収納部9となる収納ケース12を設置したが、収納ケース12の設置場所は必ずしも壁裏スペース11に限らず、例えば浴槽フランジ2下方の浴室壁10と浴槽1裏面との間の空洞スペース25(図3)に設置することも可能であり、要は、浴槽フランジ2近傍であって浴室5内の露出しない位置であれば任意に選択できるものである。
【符号の説明】
【0024】
1 浴槽
2 浴槽フランジ
3 洗い場
4 腰掛けボード
5 浴室
6 浴槽用腰掛け装置
7 硬質部
8 軟質部
9 腰掛けボード収納部
D 硬質部と軟質部との並列接続方向
E 浴室壁の高さ方向


【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗い場に隣接する浴槽フランジ上面に水平に載置して使用される腰掛けボードを、桟状で剛性のある硬質部と折り曲げ自在な柔軟性のある軟質部とを交互に並列接続して構成すると共に、上記浴槽フランジ近傍の浴室内の露出しない位置に、上記腰掛けボードを硬質部と軟質部との並列接続方向を浴室壁の高さ方向と平行に向けた縦向き姿勢で収納すると共に収納した腰掛けボードを上記並列接続方向と平行な方向に引き出し可能とする腰掛けボード収納部を設けたことを特徴とする浴槽用腰掛け装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−24914(P2011−24914A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−175888(P2009−175888)
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】