説明

浴槽用蓋

【解決すべき課題】施蓋状態において浴槽本体との間に隙間が生ずるようなことがなく、湯気の散逸を防ぐと共に、湯温の低下を有効に防止することができるようになした浴槽用蓋を提供する
【課題を解決するための手段】蓋本体1の周縁部にエッジプロテクター2を取付け、当該エッジプロテクター2が浴槽本体7のフランジ部8の上面に当接するようになっている浴槽用蓋において、前記エッジプロテクター2の外周部に、浴槽本体7の上面形状に対応して自在に変形が可能な合成樹脂製チューブ体5を形成し、当該合成樹脂製チューブ体5を施蓋の際に浴槽のフランジ部の上面に当接させるようにした。また、当該チューブ体5を浴槽本体7に設けられているヘッドレスト10に当接させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は浴槽の上面開口を覆って湯温の低下を防ぐ浴槽用蓋に関する。
【背景技術】
【0002】
浴槽内の湯の保温能力を高めるには、浴槽本体の断熱性能の向上を図るのは勿論のこと、浴槽の上面開口を覆う浴槽用蓋においても特に高い断熱性能が必要である。
【0003】
浴槽用蓋には巻き込みを可能としたシャッター式のもの、折り畳みを可能とした折り畳み式のものの他、2枚一組、あるいは3枚一組というように複数枚の薄板状パネルを組み合わせて用いるようにした組合せ式の浴槽用蓋が知られている。
【0004】
このうち、組合せ式の浴槽用蓋においては、断熱性能を高めるため、次に示す特許文献にも記載されているように、合成樹脂発泡体等からなる断熱芯材の表裏両面に、硬質のポリプロピレン樹脂、あるいはアルミニウム薄板等によって作成された化粧パネルを積層一体化させて蓋本体を形成し、当該蓋本体の周縁部に滑り止め効果を示現するエラストマー製ないし軟質合成樹脂製のエッジプロテクターを嵌め付けて構成したものが一般に市販されている。
【特許文献1】特開平11−32930公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
蓋本体の外周縁にエッジプロテクターを嵌着した組合せ式の浴槽用蓋の場合、浴槽本体のフランジ部上面が水平状態を保持しており、且つ蓋本体に反りがなく、エッジプロテクターもその長手方向に沿って水平状態を保持しているものであれば、施蓋状態において両者間に隙間が生ぜず、湯温の低下を防ぐことができる。
【0006】
しかしながら、従来のエッジプロテクターは前記した特許文献にも開示されているように、内側には蓋本体の周縁部を抱き込むための凹所が形成され、外側は浴槽本体のフランジ部の上面に当接させる厚肉部が形成されているだけのものであり、浴槽本体のフランジ部上面が水平状態を保持するものであったとしても、蓋本体のエッジプロテクターの当接面を正確に水平に保持するのは不可能であるか、あるいは非常に困難なことであった。
【0007】
そのため、浴槽本体の上面開口に蓋本体を載置した状態において、浴槽本体のフランジ部上面とエッジプロテクターの間には全体を通じて何箇所かの隙間が生ずるのが常であり、この隙間を通じて外気が浴槽内に取り込まれるため湯温の低下を招くという問題点があった。
【0008】
また、最近は消費者のニーズに呼応してヘッドレストを設けた浴槽も市販されるようになってきており、この場合、ヘッドレストの部分において蓋本体との間に隙間が生じ易く、湯温の低下を招く要因になるという問題点がある。
【0009】
従って、本発明の目的は、施蓋状態において浴槽本体との間に隙間が生ずるようなことがなく、湯気の散逸を防ぐと共に、湯温の低下を有効に防止することができるようになした浴槽用蓋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明の構成を詳述すれば、請求項1に係る発明は、蓋本体の周縁部にエッジプロテクターを取付け、当該エッジプロテクターが浴槽のフランジ部の上面に当接するようになっている浴槽用蓋において、前記エッジプロテクターの外周部に、浴槽の上面形状に対応して自在に変形が可能な合成樹脂製チューブ体を形成し、当該合成樹脂製チューブ体を施蓋の際に浴槽のフランジ部の上面に当接させるようにしたことを特徴とする浴槽用蓋である。
【0011】
請求項2に係る発明は、蓋本体の周縁部にエッジプロテクターを取付けてある浴槽用蓋において、前記エッジプロテクターの外周部に、浴槽に設けられているヘッドレストの形状に対応して自在に変形が可能な合成樹脂製チューブ体を形成し、当該合成樹脂製チューブ体を施蓋の際に浴槽に設けられているヘッドレストに当接させるようにしたことを特徴とする浴槽用蓋である。
【0012】
また、請求項3に係る発明は、合成樹脂製チューブ体は浴槽に設けられているヘッドレストに対応する部分だけでなく、ヘッドレストに連なる浴槽の直線状のフランジ部上面に対応する部分にも一体的に形成してあることを特徴とする請求項2記載の浴槽用蓋である。
【0013】
さらに、請求項4に係る発明は、合成樹脂製チューブ体の任意の箇所に外気に通じる小孔を穿設してあることを特徴とする請求項1ないし3記載の浴槽用蓋である。
【0014】
本発明は上記のように、エッジプロテクターの外周部に、浴槽の上面形状に対応して自在に変形が可能な隙間埋め体としての内部中空の合成樹脂製チューブ体を形成したものであり、仮に浴槽本体のフランジ部上面に僅かな凹凸部があったり、あるいは蓋本体が熱変形等によって僅かな反りを生じていたとしてもエッジプロテクター外周部のチューブ体が自在に変形して当該僅かな凹凸部や、反りに基づく隙間を塞ぐことができる。
【0015】
なお、ヘッドレストの設けられている浴槽の場合には、当該ヘッドレストの部分と蓋本体の間に隙間を生ずることがあるが、合成樹脂製チューブ体を当該ヘッドレストに対応する箇所に付設することにより、隙間をなくすことができこの部分からの熱放出を防ぐことができるものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明は浴槽本体の上面形状に対応して自在に変形が可能な合成樹脂製チューブ体をエッジプロテクターの外周部に付設したものであるから、浴槽本体のフランジ部の上面に蓋本体を被せた状態においてエッジプロテクターと浴槽上面との間に隙間が生ずるようなことがなく、湯気の散逸を防ぐことができると共に、湯温の低下を有効に防止することができるものである。また、ヘッドレストの設けられている特殊タイプの浴槽の場合においても、合成樹脂製チューブ体がヘッドレストの形状に対応して自在に変形し、ヘッドレスト周辺部分からの放熱を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面に基づき本発明に係る浴槽用蓋の実施形態を詳細に説明する。
【0018】
図1は本発明浴槽用蓋の一実施形態を示す平面図、図2は図1のA−A線に沿った拡大断面図、図3は隙間埋め体としてのチューブ体を形成したエッジプロテクターの一実施形態を示す拡大断面図、図4はエッジプロテクターの外周中央部分にチューブ体を形成したエッジプロテクターの一実施形態を示す拡大断面図、図5は浴槽のフランジ部上面にチューブ体が当接して隙間を埋めている使用状態の一例を示す説明図、図6は浴槽に設けられているヘッドレストにチューブ体が当接して隙間を埋めている状態の一例を示す説明図、図7はヘッドレストが設けられている浴槽に対応させるようにした本発明浴槽用蓋の他の実施形態を示す平面図である。
【0019】
図中1は浴槽の大きさに対応して2枚一組となした組合せ蓋における薄板状の蓋本体を示し、2は当該蓋本体1の外周縁全体に嵌め付けた滑り止め効果を有するエラストマー製ないし軟質合成樹脂製のエッジプロテクターである。
【0020】
蓋本体1は図示する実施形態の場合、合成樹脂発泡体のような高い断熱性能を有する断熱芯材3の表裏両面に、硬質ポリプロピレン樹脂、あるいはアルミニウム薄板等によって作製された化粧板4,4を接着、溶着等の手段で積層一体化してなるものであるが、本発明を実施する対象としての浴槽用蓋はこれに限定されるものではなく、全体として薄板状をなし、浴槽用蓋として要求される断熱性能ないし耐熱性を具備するものであれば、積層構造以外のものであってもよいのは勿論である。
【0021】
エッジプロテクター2は前記蓋本体1の周縁部を密嵌し得る凹所を有すると共に、その長手方向外周部に沿って合成樹脂製チューブ体5を連続して突成してある。この合成樹脂製チューブ体5はエッジプロテクター2の成形の際に同時に押出成形することもできるが、通常のエッジプロテクター2の押出成形とは別にチューブ体5を作製して、これをエッジプロテクター2の外周部に接着あるいは溶着等の手段によって後から取付けるようにしてもよいのは勿論である。
【0022】
なお、ここでチューブ体5と称しているのは、エッジプロテクター2に突出形成された状態をあらわしているものであり、エッジプロテクター2に後付けするような場合、完全なチューブ体の他、樋状をなすようなものをエッジプロテクター2に突成し、エッジプロテクター2の素地を利用して全体としてチューブ体5となるような場合も含むものである。
【0023】
合成樹脂製チューブ体5には柔軟性が要求されるため、合成樹脂発泡体が好適に用いられるが、施蓋状態において浴槽のフランジ部の上面形状、あるいはヘッドレストの形状に対応して自在に変形が可能なものであれば、汎用の軟質合成樹脂を用いることができる。
【0024】
なお、図1に示すような2枚一組として用いる浴槽用蓋の場合には、施蓋状態において浴槽のフランジ部上面に当接しない蓋本体1,1同士の突き合わせ部6,6が生ずるが、この突き合わせ部6,6には合成樹脂製チューブ体5を特に形成する必要はない。しかしながら、当該突き合わせ部6,6にも合成樹脂製チューブ体5を突成しておくと、蓋本体1,1同士の突き合わせ部6,6の間に生ずる隙間を埋めることができ高い保温性能を得ることができる。
【0025】
また、浴槽本体7に形成されているヘッドレスト10に相当する部分のみに合成樹脂製チューブ体5を突成するようにしてもよいが、図1に示すように浴槽本体7に設けられているヘッドレスト10に対応する部分だけでなく、ヘッドレスト10に連なるフランジ部8の直線状上面に対応する部分にも一体的にチューブ体5を形成することによって浴槽本体7との密着性を一層向上させることができるものである。
【0026】
さらに、図7に示す実施形態のように浴槽本体7に設けられているヘッドレスト10に対応する部分だけでなく、ヘッドレスト10に連なるフランジ部8の直線状上面に対応する部分にも一体的にチューブ体5を形成するとしても、それ以外の辺には当該チューブ体を付設しないようにしてもよい。なお、この場合チューブ体を付設しない辺については浴槽本体7との密着性が良好なケースである。
【0027】
合成樹脂製チューブ体5の形成位置は、図2及び図3に示すように施蓋状態において浴槽本体7のフランジ部8上面に当接することとなるエッジプロテクター2の下側隅角部付近が最適であるが、チューブ体5を大きくしてエッジプロテクター2の外周部全体を覆うように形成してもよい。なお、チューブ体5とエッジプロテクター2の接合部付近は掃除性、あるいは耐久性等を考慮してなだらかな曲面形状にするのが最も好ましい。
【0028】
また、図3に示すようにチューブ体5がエッジプロテクター2の下側隅角部付近に形成されている場合でも、図6に示すようにヘッドレスト10が設けられている浴槽本体7に対応することは充分可能である。しかしながら、図4に示すようにエッジプロテクター2の外周部中央付近にチューブ体5を形成して、このチューブ体5をヘッドレスト10が設けられている浴槽本体7に対応させるようにしてもよいのは勿論である。
【0029】
なお、エッジプロテクター2の外周部に形成する合成樹脂製チューブ体5は、その内部が外気と遮断されていると熱膨張等によって内圧が高まって浴槽本体7のフランジ部8上面等との当接時に変形し難くなるので、チューブ体5の適所、例えば、図3に示すようにチューブ体5の上部適所に外気に通じる小孔9を穿設しておく。
【0030】
これによって、チューブ体5は、浴槽本体7のフランジ部8の上面形状、あるいはヘッドレスト10の形状に対応して即時に変形し、浴槽本体7と蓋本体1の間の隙間を埋めることができる。なお、小孔9の穿設位置は任意であり、特に図示しないがチューブ体5の端末部を覆う遮蔽部に設けるようにしてもよいのは勿論である。
【0031】
本発明浴槽用蓋は上記のとおり、エッジプロテクター2の外周部に、浴槽本体7のフランジ部8の上面形状に対応して自在に変形が可能な隙間埋め体としての内部中空の合成樹脂製チューブ体5を形成したものであり、仮に浴槽本体7のフランジ部8の上面に僅かな凹凸部があったり、あるいは蓋本体1が熱変形等によって僅かな反りを生じていたとしてもエッジプロテクター2外周部のチューブ体5が自在に変形して当該僅かな凹凸部や、反りに基づく隙間を塞ぐことができ、高い保温効果を得ることができるものである。
【0032】
なお、合成樹脂製チューブ体5はエッジプロテクター2の全周縁に沿って形成するようにしてもよいのは勿論であるが、浴槽本体7のフランジ部8との間に予め隙間が想定される場合には当該想定部分のみにチューブ体5を形成するようにしてもよい。
【0033】
また、ヘッドレストの設けられている浴槽の場合には、当該ヘッドレストの部分と蓋本体の間に隙間を生ずることがあるが、合成樹脂製チューブ体5を当該ヘッドレストに対応する箇所に付設することにより、隙間をなくすことができこの部分からの放熱を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明浴槽用蓋の一実施形態を示す平面図である。
【図2】図1のA−A線に沿った拡大断面図である。
【図3】隙間埋め体としてのチューブ体を形成したエッジプロテクターの一実施形態を示す拡大断面図である。
【図4】エッジプロテクターの外周中央部分にチューブ体を形成したエッジプロテクターの一実施形態を示す拡大断面図である。
【図5】浴槽のフランジ部上面にチューブ体が当接して隙間を埋めている使用状態の一例を示す説明図である。
【図6】浴槽に設けられているヘッドレストにチューブ体が当接して隙間を埋めている状態の一例を示す説明図である。
【図7】ヘッドレストが設けられている浴槽に対応させるようにした本発明浴槽用蓋の他の実施形態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0035】
1:蓋本体
2:エッジプロテクター
3:断熱芯材
4:化粧板
5:合成樹脂チューブ体
6:突き合わせ部
7:浴槽本体
8:フランジ部
9:小孔
10:ヘッドレスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓋本体の周縁部にエッジプロテクターを取付け、当該エッジプロテクターが浴槽のフランジ部の上面に当接するようになっている浴槽用蓋において、前記エッジプロテクターの外周部に、浴槽の上面形状に対応して自在に変形が可能な合成樹脂製チューブ体を形成し、当該合成樹脂製チューブ体を施蓋の際に浴槽のフランジ部の上面に当接させるようにしたことを特徴とする浴槽用蓋。
【請求項2】
蓋本体の周縁部にエッジプロテクターを取付けてある浴槽用蓋において、前記エッジプロテクターの外周部に、浴槽に設けられているヘッドレストの形状に対応して自在に変形が可能な合成樹脂製チューブ体を形成し、当該合成樹脂製チューブ体を施蓋の際に浴槽に設けられているヘッドレストに当接させるようにしたことを特徴とする浴槽用蓋。
【請求項3】
合成樹脂製チューブ体は浴槽に設けられているヘッドレストに対応する部分だけでなく、ヘッドレストに連なる浴槽の直線状のフランジ部上面に対応する部分にも一体的に形成してあることを特徴とする請求項2記載の浴槽用蓋。
【請求項4】
合成樹脂製チューブ体の任意の箇所に外気に通じる小孔を穿設してあることを特徴とする請求項1ないし3記載の浴槽用蓋。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−228851(P2008−228851A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−69861(P2007−69861)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【出願人】(591037063)東プレ株式会社 (9)
【Fターム(参考)】