説明

浴槽装置

【課題】湯張り開始と同時に排水栓が自動で閉まるようにした浴槽装置を提供すること。
【解決手段】浴槽2に湯水を給湯する給湯器3を有し、浴槽2に設けられた排水口9を排水栓10で開閉する浴槽装置1であって、給湯器3の給湯圧力を利用して、排水栓10を閉動作させる閉塞手段11が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽に湯水を給湯する給湯器を有し、浴槽に設けられた排水口を排水栓で開閉する浴槽装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の排水栓装置(浴槽装置)には、浴槽の底部に設けられた排水口を開閉するためのポップアップ式の排水栓装置(浴槽装置)がある。この排水栓装置(浴槽装置)は、浴槽に設けられた押ボタンで操作される操作力伝達部材によって上げ下げされる栓体を有するとともに、この栓体を上昇位置で保持する位置保持機構を有しており、押ボタンを1回押すと、栓体が上昇して排水口の開放状態が保持され、押ボタンをもう1回押すと、栓体が下降して排水口が閉じるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−277559号公報(第3頁、第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、台所等の浴室以外の場所に設置された操作パネルによって操作でき、予め設定した湯量、湯温で給湯を行う、いわゆる全自動風呂が普及している。しかしながら、特許文献1に記載の排水栓装置(浴槽装置)にあっては、使用者が浴槽に設けられた押ボタンを操作して栓体(排水栓)の開け閉めを行わなければならず、台所等に設置された操作パネルによって、浴槽に湯張りをする際に、使用者が一旦浴室へ移動して浴槽の栓体の開栓または閉栓の確認を行わなければならず、その確認作業が面倒であるばかりか、使用者が確認作業を怠り、栓体が開いた状態で給湯されると、湯水は浴槽に溜まらずそのまま排水されてしまい、水道代、ガス代の無駄が生じるという問題がある。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、湯張り開始と同時に排水栓が自動で閉まるようにした浴槽装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
課題を解決するために、本発明の浴槽装置は、
浴槽に湯水を給湯する給湯器を有し、該浴槽に設けられた排水口を排水栓で開閉する浴槽装置であって、
前記給湯器の給湯圧力を利用して、前記排水栓を閉動作させる閉塞手段が設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、使用者が確認作業を怠り、排水栓が開いた状態で湯水が給湯されても、湯張り開始と同時に排水栓が自動で閉まり、使用者が湯張り前に浴室に移動して浴槽の排水栓の開放状態または閉塞状態の確認を行わずに済むようになる。
【0007】
本発明の浴槽装置は、
前記閉塞手段は、前記給湯器から給湯される湯水が流れる給湯管内の水圧が所定の圧力以上になったときに可動する可動部を有し、該可動部が可動されたときに、前記排水栓が閉動作されることを特徴としている。
この特徴によれば、給湯管内を流れる湯水を、可動部の可動を制御する制御手段として利用できるとともに、湯張りのタイミングと、排水栓を閉動作させるタイミングとを一致させることができる。
【0008】
本発明の浴槽装置は、
前記閉塞手段には、前記排水栓と連結された移動壁部を有し、かつ作動液が充填された排水栓支持室が設けられ、前記移動壁部は、前記排水栓が開放される開放位置と、前記排水栓が閉塞される閉塞位置と、の間で移動できるようになっており、前記可動部が可動されたときに、前記作動液が前記排水栓支持室の外部に流出し、前記移動壁部が前記開放位置から前記閉塞位置に移動されることを特徴としている。
この特徴によれば、作動液によって開放位置に支持された移動壁部により排水栓が開放されており、可動部が可動されたときに、排水栓支持室から作動液が流出して、移動壁部が閉塞位置に移動し、排水栓支持室で支持されている排水栓が閉動作されるようになる。
【0009】
本発明の浴槽装置は、
前記移動壁部を前記閉塞位置に向かって付勢する付勢手段が設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、可動部が可動されたときに、付勢手段によって作動液を排水栓支持室外部に強制的に流出させることができる。
【0010】
本発明の浴槽装置は、
前記移動壁部が前記開放位置から前記閉塞位置に移動されるときに、前記排水栓支持室内部から流出する前記作動液が貯留される貯留室が設けられており、該移動壁部が前記閉塞位置から前記開放位置に移動されるときに、前記作動液が前記貯留室から該排水栓支持室に流入されることを特徴としている。
この特徴によれば、排水栓支持室から流出する作動液は貯留室に貯留され、排水栓支持室に流入される作動液は、この貯留室に貯留された作動液を再利用して流入されることとなり、作動液を繰返し使用することができる。
【0011】
本発明の浴槽装置は、
前記閉塞手段には、前記排水栓と連結された移動壁部を有し、かつ作動液が充填された排水栓支持室が設けられ、前記移動壁部は、前記排水栓が開放される開放位置と、前記排水栓が閉塞される閉塞位置と、の間で移動できるようになっており、操作部の操作力が伝達される操作力伝達手段が設けられ、該操作力伝達手段により前記移動壁部が前記閉塞位置から前記開放位置に移動されて前記作動液が前記排水栓支持室の内部に流入され、該作動液が前記排水栓支持室の内部に充填されることを特徴としている。
この特徴によれば、操作部が操作されると操作力伝達手段により移動壁部が開放位置に移動し、排水栓支持室に作動液が流入して、排水栓支持室で支持されている排水栓が開動作されるとともに、排水栓支持室の内部に充填された作動液により移動壁部を開放位置で支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】浴槽装置を示す概略図である。
【図2】排水栓の閉塞状態を示す断面図である。
【図3】排水栓の開動作を説明する断面図である。
【図4】排水時の状態を示す断面図である。
【図5】排水栓の開放状態を示す断面図である。
【図6】排水栓の閉動作を説明する断面図である。
【図7】手動操作の際の排水栓の閉動作を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る浴槽装置を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0014】
実施例に係る浴槽装置につき、図1から図7を参照して説明する。図1の符号1は、本発明の適用された浴槽装置である。この浴槽装置1は、いわゆる全自動風呂であり、台所等の浴室以外の場所に設置された操作パネル(図示略)によって操作でき、予め設定した湯量、湯温で給湯を行えるようになっている。
【0015】
図1に示すように、浴槽装置1は、浴槽2に湯水を給湯する給湯器3を有しており、この給湯器3には、水道管4が接続されている。また、浴槽2の側面部には、給湯口5を有する循環金具6が取り付けられている。更に、給湯器3と循環金具6とは、湯張給湯管7及び追焚給湯管8により接続されている。
【0016】
使用者が、操作パネルを操作して湯張りを開始すると、水道管4から給湯器3に水が流れ込み、給湯器3で所定の温度に温められた湯水が、湯張給湯管7を介して循環金具6から浴槽2内に給湯されるようになっている。
【0017】
また、この浴槽装置1は、浴槽2内の湯水を再び給湯器3に循環させて温める追焚きができる追炊き機能を有している。使用者が、操作パネルを操作して追焚きを開始すると、循環金具6から浴槽2内の湯水が追焚給湯管8を介して給湯器3に流れ込み、再び所定の温度に温められた湯水が、湯張給湯管7を介して循環金具6から浴槽2内に給湯されるようになっている。
【0018】
更に、浴槽2の底部には、排水口9が設けられており、この排水口9を閉塞する排水栓10が設けられている。この排水栓10は昇降されることにより、排水口9を開放状態にしたり閉塞状態にすることができる。排水口9の下方位置には、排水栓10を昇降させるための本発明における閉塞手段としての排水栓制御装置11が設けられている。
【0019】
図2に示すように、排水栓制御装置11は、排水口9の直下に設けられた略円筒形状をなす排水室12を有している。排水室12は、その内周側面における上方側に排水トラップ(図示略)に接続される排水管部13が形成されている。排水管部13から排水された湯水は、排水トラップを介して下水道に排水されるようになっている。
【0020】
排水室12における下方側には、ダイヤフラム14が設けられており、このダイヤフラム14によって、排水室12が上方側と下方側に仕切られている。尚、排水栓10には、下方側に向かって延びる排水栓軸15が取り付けられている。この排水栓軸15は、排水口9に設けられた排水口金具16の中心部の保持部17に保持されている。排水栓軸15の下端部には、水平方向に板状に広がる排水栓軸板部18が形成されている。
【0021】
この排水栓軸板部18の上面に支持板19が設けられるとともに、この支持板19の上面には、ダイヤフラム14が設けられている。支持板19とダイヤフラム14は、固定板20によって排水栓軸15に対して固定されている。
【0022】
尚、排水栓軸板部18と固定板20と支持板19とダイヤフラム14とにより、排水栓支持室21の一部の壁部を形成する本発明における移動壁部を構成している。排水栓軸15には、排水口金具16と固定板20との間に配置された本発明における付勢手段としての排水栓軸バネ22が設けられており、この排水栓軸バネ22によって、ダイヤフラム14が下方に向かって付勢されている。
【0023】
図2に示すように、排水室12におけるダイヤフラム14で仕切られた上方側の空間は、浴槽2から排水された湯水が流れる排水領域23となっている。排水室12におけるダイヤフラム14で仕切られた下方側の空間が排水栓支持室21として形成されている。この排水栓支持室21の内部には、作動液が充填されている。尚、この作動液は低温でも凍らない不凍液で構成されている。
【0024】
排水栓10とダイヤフラム14は、排水栓軸15により連結されているため、排水栓10とダイヤフラム14は、同時に昇降されるようになっている。ここで、排水栓10が開放されている状態におけるダイヤフラム14の位置を開放位置とし(図4参照)、排水栓10が閉塞されている状態におけるダイヤフラム14の位置を閉塞位置とする(図2参照)。
【0025】
排水栓支持室21の内部には、ポップアップ回転軸24が設けられており、このポップアップ回転軸24は、浴槽2の近傍に設けられた本発明における操作部としての押ボタン25を、使用者が操作することによって昇降動作される。
【0026】
押ボタン25とポップアップ回転軸24とは、本発明における操作力伝達手段としての伝達部材26によって連結されており、伝達部材26の内部には、ワイヤー(図示略)が配置されている。押ボタン25が押下されると、その操作力が伝達部材26の内部のワイヤーによってポップアップ回転軸24に伝達され、ポップアップ回転軸24が上昇される。そして、押ボタン25の押下が解除されるとポップアップ回転軸24が降下される。
【0027】
図2に示すように、排水栓支持室21と隣接して略円筒形状をなす制御室27が設けられている。排水栓支持室21と制御室27とは、第1連通管28により連通されている。この制御室27には、仕切壁29が設けられており、この仕切壁29によって、制御室27が左方側の空間と右方側の空間とに仕切られている。更に、この制御室27には、ダイヤフラム30が設けられており、制御室27における仕切壁29によって仕切られた右方側の空間が、ダイヤフラム30によって仕切られている。
【0028】
制御室27における仕切壁29によって仕切られた左方側の空間が、第1制御領域31となっており、制御室27における仕切壁29とダイヤフラム30によって仕切られた中央部の空間が、第2制御領域32となっており、制御室27におけるダイヤフラム30によって仕切られた右方側の空間が、第3制御領域33となっている。
【0029】
尚、前述した第1連通管28は、排水栓支持室21と、制御室27における第1制御領域31と、を連通しており、排水栓支持室21と第1制御領域31との間で、作動液が第1連通管を介して移動されるようになっている。
【0030】
図2に示すように、仕切壁29には、開口部34が形成されており、この開口部34を開閉する調節弁35が設けられている。この調節弁35は、パッキン36が設けられた円板部37と、この円板部37から第2制御領域32に向かって突出されたロッド部38とを有している。このロッド部38は、仕切壁29の開口部34に設けられた保持部58に保持されている。
【0031】
そして、調節弁35は、第1制御領域31側から仕切壁29の開口部34を閉塞するようになっている。尚、パッキン36は、仕切壁29に向かって窄まるように形成されたテーパー面を有しており、このパッキン36によって、仕切壁29の開口部34が閉塞される。
【0032】
制御室27の左側面には、調節弁バネ39が設けられており、調節弁バネ39の右端部は、調節弁35の円板部37に接続されている。この調節弁バネ39によって、調節弁35が右方側に付勢されて調節弁35により開口部34が閉塞される。
【0033】
制御室27の上方側には、貯留室40が設けられている。この貯留室40には、ダイヤフラム41が設けられており、このダイヤフラム41によって、貯留室40が上方領域42と下方領域43とに仕切られている。
【0034】
図2に示すように、貯留室40の上面は、その一部が開口されており、上方領域42が外部に開放されている。ダイヤフラム41によって、貯留室40の内部の作動液が蒸発するのを防ぐことができる。そして、貯留室40の下面と制御室27の上面とが第2連通管44により連通されており、貯留室40の下方領域43と制御室27の第2制御領域32とが連通されている。
【0035】
第2制御領域32と貯留室40の下方領域43には、作動液が充填されている。そして、第2制御領域32と貯留室40の下方領域43との間で、作動液が第2連通管44を介して移動されるようになっている。更に、第2制御領域32と第3制御領域33との間に設けられたダイヤフラム30には、ロッド部38とは近接して配置される本発明における可動部としての可動部材45が設けられている。
【0036】
図1に示すように、制御室27と、湯張給湯管7とは、制御用給湯管46により接続されており、湯張給湯管7の内部を流れる湯水の一部は、制御用給湯管46を流れて第3制御領域33に入り込むようになっている(図2参照)。制御用給湯管46から第3制御領域33に入り込む湯水の水圧によって、ダイヤフラム30が可動されるようになっている。
【0037】
ダイヤフラム30が可動されることによって、可動部材45は、調節弁35のロッド部38を押圧する可動位置と(図6参照)、可動部材45が調節弁35のロッド部38から離れる非可動位置と(図2参照)、の間で可動されるようになっている。
【0038】
次に、図2から図5を参照して、押ボタン25による排水栓10の開動作について説明する。図2に示すように、浴槽2には湯水が入っており、排水栓10は閉塞状態にあるとともにダイヤフラム14は閉塞位置にある。
【0039】
この状態で使用者が押ボタン25を押圧操作すると、伝達部材26の内部のワイヤーによって排水栓支持室21におけるポップアップ回転軸24の上端が排水栓軸板部18に当接して排水栓軸15を押し上げ、排水栓10が上昇して開動作され、ダイヤフラム14が閉塞位置から開放位置に移動する(図3参照)。
【0040】
ダイヤフラム14が閉塞位置から開放位置に移動することにより、排水栓支持室21の容積が増加して作動液が負圧となるとともに、排水栓支持室21と連通されている制御室27の第1制御領域31の作動液も負圧となる。そのため、調節弁35が第1制御領域31側に吸引され、制御室27の仕切壁29の開口部34が開放される(図3参照)。
【0041】
制御室27の仕切壁29の開口部34が開放されることにより、貯留室40に貯留された作動液が第2制御領域32を介して第1制御領域31に流入され、貯留室40のダイヤフラム41は降下するとともに、第1制御領域31を介して排水栓支持室21に作動液が流入される。また、排水栓10が開放状態になると、浴槽2内の湯水が排水領域23に排水され、排水管部13を介して排水される。
【0042】
図4に示すように、調節弁35は、作動液の移動によって排水栓支持室21と貯留室40が同圧となったところで閉塞される。押ボタン25の押圧操作が解除されると、伝達部材26の内部のワイヤーとともにポップアップ回転軸24が降下される。ポップアップ回転軸24が降下されても、排水栓支持室21の内部には、作動液が充填されているため、この作動液によってダイヤフラム14は閉塞位置に保持される。
【0043】
また、調節弁バネ39によって調節弁35が仕切壁29の開口部34の方向に付勢されており、開口部34は閉塞されたままとなるため、排水栓支持室21の作動液が流出されることがなくなり、排水栓10の開放状態が維持される。
【0044】
次に、図5、図6を参照して、給湯圧力による排水栓10の閉動作について説明する。図5に示すように、排水栓10は開放状態にあるとともに、排水栓支持室21のダイヤフラム14は開放位置にあり、制御室27のダイヤフラム30は非可動位置にある。
【0045】
使用者が、台所等にある操作パネル(図示略)を操作して湯張りが開始されると、給湯器3から流出された湯水は、湯張給湯管7を介して浴槽2に給湯されるとともに、湯張給湯管7の内部を流れる湯水の一部は、制御用給湯管46を流れて第3制御領域33に入り込むようになっている。
【0046】
そして、図6に示すように、湯張給湯管7内の水圧が高くなり、制御用給湯管46を通して第3制御領域33に伝達され、その水圧によってダイヤフラム30が可動され、ダイヤフラム30が非可動位置から可動位置に移動する。
【0047】
また、ダイヤフラム30の可動とともに、ダイヤフラム30に取り付けられた可動部材45がロッド部38に当接し、第3制御領域33の水圧によりロッド部38が押圧され、調節弁バネ39の付勢力に抗して調節弁35が第1制御領域31に移動し、仕切壁29の開口部34が開放される。尚、一般的に、水道の水圧は2〜3気圧となっており、調節弁バネ39の付勢力は、水道の水圧により可動部材45が調節弁35を押圧する押圧力よりも弱くなるように設定されている。
【0048】
ダイヤフラム14は、排水栓軸バネ22によって下方向に付勢されているため、制御室27の開口部34が開放されると、排水栓支持室21の内部の作動液が第1制御領域31を介して第2制御領域32に強制的に流出されて、この第2制御領域から貯留室40に作動液が流入されるようになっている。それに伴い、貯留室40のダイヤフラム41は上昇される。
【0049】
尚、貯留室40の上面の一部は開口しているため、貯留室40の上方領域42にある空気が貯留室40内部に留まることなく、作動液が貯留室40の下方領域に流入されても、貯留室40の上方領域42にある空気がダイヤフラム41の上昇を妨げないようになっている。
【0050】
排水栓支持室21内部の作動液が貯留室40に流出することにより、ダイヤフラム14が開放位置から閉塞位置に移動するとともに、排水栓10は閉動作されて排水口9が閉塞状態となる。そのため浴槽2に湯水を溜めることができる。
【0051】
湯張りが行われている間は、第3制御領域33に所定の水圧がかけられているため、ダイヤフラム30は可動位置にあり、調節弁35も開放された状態となっている。湯張りが終了されると、給湯器3から湯張給湯管7に流出される湯水は止まり、湯張給湯管7内の水圧は低くなる。
【0052】
制御用給湯管46内から第3制御領域33に伝達される水圧が所定の水圧より低くなることにより、可動部材45がロッド部38を押圧する力がなくなり、かつ調節弁35は調節弁バネ39によって付勢され、調節弁35によって仕切壁29の開口部34が閉塞され、ダイヤフラム30は可動位置から非可動位置に移動する(図2参照)。また、ダイヤフラム14は、排水栓軸バネ22によって下方側に付勢されているため、ダイヤフラム14は閉塞位置のままとなり、排水栓10の閉塞状態が維持される。
【0053】
本発明の排水栓制御装置11は、使用者が手動操作を行うことによって排水栓10を閉塞状態にすることができる。次に、図2、図5、図7を参照して、使用者が手動により押ボタン25を押圧操作することによる排水栓10の閉動作について説明する。
【0054】
図5に示すように、排水栓支持室21の下面と制御室27の下面は、第3連通管47により連通されており、排水栓支持室21と制御室27の第2制御領域32とが連通されている。排水栓支持室21の下面には、第3連通管47と通じる連通孔48が形成されており、この連通孔48を開閉する連通孔制御弁49が設けられている。
【0055】
連通孔制御弁49は、略円筒形状をなし、連通孔制御弁49の下部には、略円板状をなすフランジ部50が形成されている。尚、排水室12の下面には、ポップアップ回転軸24の周囲を囲むように形成された円筒形状をなす挿嵌保持部51が設けられている。この挿嵌保持部51の外周に、連通孔制御弁49が挿嵌されている。
【0056】
また、排水室12の下面には、連通孔制御弁49の周囲を覆うように形成されて連通孔制御弁49の外周を保持する外周保持部52が設けられている。連通孔制御弁49は、挿嵌保持部51と外周保持部52との間に昇降自在に配置される。
【0057】
前述した連通孔48は、排水室12の下面における挿嵌保持部51と外周保持部52との間に開口されている。外周保持部52の側面には、排水栓支持室21と連通する側面孔57が設けられている。連通孔制御弁49のフランジ部50の下面には、パッキン53が設けられている。そして、連通孔制御弁49と外周保持部52との間には、連通孔制御弁バネ54が設けられている。
【0058】
この連通孔制御弁バネ54が連通孔制御弁49のフランジ部50の上面を付勢することにより、連通孔制御弁49が下方側に向かって付勢され、連通孔制御弁49のフランジ部50のパッキン53により連通孔48が閉塞されるようになっている。
【0059】
尚、連通孔制御弁49の上面部には、平面視において、略長方形状をなす長孔部55が開口されている。また、ポップアップ回転軸24の上端部近傍の側周面には、両側方に突出する2本の係合歯56が形成されている。更に尚、平面視において、長孔部55の長手方向の幅は、ポップアップ回転軸24の係合歯56を含めた左右幅よりも大きくなるように形成されている。
【0060】
ポップアップ回転軸24は、降下時に水平方向に所定角度回転されるようになっており、ポップアップ回転軸24の係合歯56の突出方向が変化するようになっている。そして、ポップアップ回転軸24が上昇する際に、長孔部55の長手方向と係合歯56の突出方向とが一致した場合には、ポップアップ回転軸24は、長孔部55を通過して上方に突出されるようになっており、このポップアップ回転軸24の上端が排水栓軸板部18に当接し、排水栓軸15を押し上げるようになっている(図3参照)。
【0061】
更に、長孔部55の長手方向と係合歯56の突出方向とが一致しない場合には、ポップアップ回転軸24の係合歯56が長孔部55の周縁(連通孔制御弁49の上面部)に当接し、ポップアップ回転軸24の上昇とともに、連通孔制御弁49が上昇されるようになり、フランジ部50のパッキン53が連通孔48から離間されて、更にフランジ部50が側面孔57を通過して上昇すると、連通孔48が開放されるようになっている(図7参照)。
【0062】
尚、本実施例では、押ボタン25を使用者が押圧操作する度に、ポップアップ回転軸24が上昇して、その後、押ボタン25の押下が解除されると、ポップアップ回転軸24が90度回転されながら降下し、ポップアップ回転軸24の係合歯56の突出方向が変化するようになっている。
【0063】
つまり押ボタン25を使用者が押圧操作する度に、長孔部55の長手方向と係合歯56の突出方向との一致と非一致が繰り返されるようになっており、ポップアップ回転軸24のみの上昇と、連通孔制御弁49を伴うポップアップ回転軸24の上昇と、が交互に繰り返されるようになっている。
【0064】
更に、使用者が押ボタン25を押圧操作して手動により排水栓10を閉塞する際の閉動作について詳述する。先ず図5に示すように、排水栓10は開放状態にあるとともに、排水栓支持室21のダイヤフラム14は開放位置にある。
【0065】
この状態で使用者が押ボタン25を押圧操作すると、伝達部材26の内部のワイヤー(図示略)によって排水栓支持室21におけるポップアップ回転軸24は押し上げられるとともに、ポップアップ回転軸24の係合歯56と連通孔制御弁49の上面部とが係合して、連通孔制御弁バネ54の付勢力に抗して連通孔制御弁49が押し上げられ、連通孔48が開放される(図7参照)。
【0066】
図2に示すように、押ボタン25の押下が解除されると、ポップアップ回転軸24が降下されるとともに、連通孔制御弁49が連通孔制御弁バネ54の付勢力によって降下される。そして、ポップアップ回転軸24が降下されるとともに、排水栓支持室21の内部の作動液が、連通孔48から第2制御領域32に強制的に流出されて、この第2制御領域から貯留室40に作動液が流入されるようになっている。それに伴い、貯留室40のダイヤフラム41は上昇される(図2参照)。
【0067】
連通孔制御弁49が降下し、更にフランジ部50が側面孔57を通過して降下すると、連通孔制御弁49のフランジ部50のパッキン53により連通孔48が閉塞されるようになっている。尚、ダイヤフラム14は、排水栓軸バネ22によって下方向に付勢されているため、ポップアップ回転軸24の降下とともに、ダイヤフラム14が開放位置から閉塞位置に移動され、排水栓10が降下して排水口9が閉塞状態となる。
【0068】
以上、本実施例では、給湯器3の給湯圧力を利用して、排水栓10を閉動作させる排水栓制御装置11が設けられていることで、使用者が確認作業を怠り、排水栓10が開いた状態で湯水が給湯されても、湯張り開始と同時に排水栓10が自動で閉まり、使用者が湯張り前に浴室に移動して浴槽2の排水栓10の開放状態または閉塞状態の確認を行わずに済むようになる。
【0069】
尚、排水栓制御装置11は、給湯器3の湯張り給湯によって生じる水圧を利用して排水栓10の開閉の制御を行っており、電磁弁などの電気機構部品を用いていないため、湯水を溜める浴槽2の近傍に排水栓制御装置11を安全に使用することができる。
【0070】
また、排水栓制御装置11は、給湯器3から給湯される湯水が流れる制御用給湯管46内の水圧が所定の圧力以上になったときに可動する可動部材45を有し、可動部材45が可動されたときに、排水栓10が閉動作されることで、制御用給湯管46内を流れる湯水を、可動部材45の可動を制御する制御手段として利用できるとともに、湯張りのタイミングと、排水栓10を閉動作させるタイミングとを一致させることができる。
【0071】
また、排水栓制御装置11には、排水栓10と連結されたダイヤフラム14を有し、かつ作動液が充填された排水栓支持室21が設けられ、ダイヤフラム14は、排水栓10が開放される開放位置と、排水栓10が閉塞される閉塞位置と、の間で移動できるようになっており、可動部材45が可動されたときに、作動液が排水栓支持室21の外部に流出し、ダイヤフラム14が開放位置から閉塞位置に移動されることで、作動液によって開放位置に支持されたダイヤフラム14により排水栓10が開放されており、可動部材45が可動されたときに、排水栓支持室21から作動液が流出して、ダイヤフラム14が閉塞位置に移動し、排水栓支持室21で支持されている排水栓10が閉動作されるようになる。
【0072】
また、ダイヤフラム14を閉塞位置に向かって付勢する排水栓軸バネ22が設けられていることで、ダイヤフラム30が可動されたときに、排水栓軸バネ22によって作動液を排水栓支持室21外部に強制的に流出させることができる。
【0073】
また、ダイヤフラム14が開放位置から閉塞位置に移動されるときに、排水栓支持室21内部から流出する作動液が貯留される貯留室40が設けられており、ダイヤフラム14が閉塞位置から開放位置に移動されるときに、作動液が貯留室から排水栓支持室21に流入されることで、排水栓支持室21から流出する作動液は貯留室40に貯留され、排水栓支持室21に流入される作動液は、この貯留室40に貯留された作動液を再利用して流入されることとなり、作動液を繰返し使用することができる。
【0074】
また、排水栓制御装置11には、排水栓10と連結されたダイヤフラム14を有し、かつ作動液が充填された排水栓支持室21が設けられ、ダイヤフラム14は、排水栓10が開放される開放位置と、排水栓10が閉塞される閉塞位置と、の間で移動できるようになっており、押ボタン25の操作力が伝達される伝達部材26およびポップアップ回転軸24が設けられ、押ボタン25が操作されると伝達部材26およびポップアップ回転軸24によりダイヤフラム14が閉塞位置から開放位置に移動されて作動液が排水栓支持室21の内部に流入され、作動液が排水栓支持室21の内部に充填されることで、排水栓支持室21で支持されている排水栓10が開動作されるとともに、排水栓支持室21の内部に充填された作動液によりダイヤフラム14を開放位置で支持することができる。
【0075】
尚、作動液を不凍液にて構成することにより、寒冷地などの氷点下の気温になる地域において、作動液が凍って排水栓制御装置11が正常に動作しなくなることを防止できる。
【0076】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0077】
例えば、実施例では、排水室12に排水栓支持室21が形成されるとともに、排水室12における排水栓支持室21の上方側の空間が排水領域23となっているが、排水領域23が設けられる排水室12と排水栓支持室21とを別体に形成してもよく、例えば、排水領域23が設けられる排水室12の下方に、これとは別体の排水栓支持室21を設け、排水栓支持室21から上方に延びる排水栓軸15を排水室12に貫設し、この排水栓軸15により排水栓10を昇降させるようにしてもよい。
【0078】
また、実施例では、本発明の排水栓制御装置11を、給湯器3が追焚き機能を有する全自動風呂に適用したが、追焚き機能を有しない給湯器に本発明の排水栓制御装置11を適用してもよい。
【0079】
また、前記実施例では、本発明における付勢手段としての排水栓軸バネ22が、排水栓軸15が配置される排水領域23に設けられているが、この付勢手段は、排水領域23に無くてもよく、例えば、ダイヤフラム14よりも下方側の排水栓支持室21にバネ部材を配置して、排水栓軸15を下方側から引っ張るように付勢してもよい。
【符号の説明】
【0080】
1 浴槽装置
2 浴槽
3 給湯器
7 湯張給湯管
9 排水口
10 排水栓
11 排水栓制御装置(閉塞手段)
14 ダイヤフラム(移動壁部)
21 排水栓支持室
22 排水栓軸バネ(付勢手段)
25 押ボタン(操作部)
26 伝達部材(操作力伝達手段)
40 貯留室
45 可動部材(可動部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽に湯水を給湯する給湯器を有し、該浴槽に設けられた排水口を排水栓で開閉する浴槽装置であって、
前記給湯器の給湯圧力を利用して、前記排水栓を閉動作させる閉塞手段が設けられていることを特徴とする浴槽装置。
【請求項2】
前記閉塞手段は、前記給湯器から給湯される湯水が流れる給湯管内の水圧が所定の圧力以上になったときに可動する可動部を有し、該可動部が可動されたときに、前記排水栓が閉動作されることを特徴とする請求項1に記載の浴槽装置。
【請求項3】
前記閉塞手段には、前記排水栓と連結された移動壁部を有し、かつ作動液が充填された排水栓支持室が設けられ、前記移動壁部は、前記排水栓が開放される開放位置と、前記排水栓が閉塞される閉塞位置と、の間で移動できるようになっており、前記可動部が可動されたときに、前記作動液が前記排水栓支持室の外部に流出し、前記移動壁部が前記開放位置から前記閉塞位置に移動されることを特徴とする請求項2に記載の浴槽装置。
【請求項4】
前記移動壁部を前記閉塞位置に向かって付勢する付勢手段が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の浴槽装置。
【請求項5】
前記移動壁部が前記開放位置から前記閉塞位置に移動されるときに、前記排水栓支持室内部から流出する前記作動液が貯留される貯留室が設けられており、該移動壁部が前記閉塞位置から前記開放位置に移動されるときに、前記作動液が前記貯留室から該排水栓支持室に流入されることを特徴とする請求項3または4に記載の浴槽装置。
【請求項6】
前記閉塞手段には、前記排水栓と連結された移動壁部を有し、かつ作動液が充填された排水栓支持室が設けられ、前記移動壁部は、前記排水栓が開放される開放位置と、前記排水栓が閉塞される閉塞位置と、の間で移動できるようになっており、操作部の操作力が伝達される操作力伝達手段が設けられ、該操作力伝達手段により前記移動壁部が前記閉塞位置から前記開放位置に移動されて前記作動液が前記排水栓支持室の内部に流入され、該作動液が前記排水栓支持室の内部に充填されることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の浴槽装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−26891(P2011−26891A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−175563(P2009−175563)
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【出願人】(000002222)サンウエーブ工業株式会社 (196)
【Fターム(参考)】