説明

浴槽設置構造および浴槽設置方法

【課題】浴槽防水パンを設置可能なユニットバスにおいて、浴槽架台を基準として浴槽の設置位置を規定することが可能となり、浴槽と洗い場床とをより正確な位置関係に配置することができる浴槽設置構造および浴槽設置方法を提供する。
【解決手段】上面の所定位置にネジ取り付け部が形成された浴槽架台と、前記浴槽架台の上に設置され、前記ネジ取り付け孔の直上位置に貫通孔が配置された浴槽防水パンと、前記浴槽防水パンの上に取り付けられ、前記貫通孔を介して前記浴槽架台にネジ固定される浴槽載置ピースと、前記浴槽防水パンの上に設置され、前記浴槽載置ピースを基準にして水平方向の設置位置が規定される位置決め部を裏面に有する浴槽と、を備えたことを特徴とする浴槽設置構造が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽設置構造および浴槽設置方法に関し、具体的には浴槽防水パンを設置可能な浴槽設置構造および浴槽設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ユニットバスの中には、浴槽と、洗い場床と、バスエプロンと、が別体として分割されたものがある。このようなユニットバスでは、一般的に、浴槽と、洗い場床と、バスエプロンと、が施工現場にそれぞれ分割された状態で搬入され、その施工現場にて組み立てられる。このとき、浴槽と洗い場床との相対的な位置は、より正確に決定されることが好ましい。これは、浴槽と洗い場床とを正確な位置に取り付けることができないと、浴槽や洗い場床などに載置される壁パネルを正確な位置に取り付けることができないためである。浴室の壁パネルを正確な位置に取り付けることができないと、ユニットバス自体が歪んだり、隙間が発生して気密性や水密性が低下するため好ましくない。
【0003】
あるいは、浴槽と洗い場床とを正確な位置に取り付けることができないと、バスエプロンを正確な位置に取り付けることができないおそれがある。バスエプロンは、一般的に、浴槽の側面を覆い隠すように、あるいは浴槽と洗い場床との間に形成される開口を塞ぐように取り付けられる。そのため、バスエプロンを正確な位置に取り付けることができないと、隙間が発生して気密性や水密性が低下したり、意匠性が低下するため好ましくない。
【0004】
そこで、洗い場パンの裏側から延出された補強フレーム上に、別体の浴槽脚を介在させて別体の浴槽を固設する洗い場付き浴槽の設置構造がある(特許文献1)。特許文献1に記載された設置構造によれば、浴槽を補強フレーム上に載置し位置合わせをすることにより、補強フレームからみた浴槽の設置位置を決定することができる。しかしながら、浴槽防水パンが設置されるユニットバスにおいては、浴槽と浴槽架台(補強フレーム)との間に浴槽防水パンが介在することとなるため、特許文献1に記載された設置構造によれば、浴槽架台を基準として浴槽の設置位置を規定できないという問題がある。
【0005】
また、浴槽載置用の防水パンを備えた浴室ユニットがある(特許文献2)。特許文献2に記載された浴室ユニットによれば、防水パンの軽量化や低廉化を図ることができ、また防水パンの設置や運搬作業を容易化することができる。しかしながら、浴槽と、洗い場床や浴槽架台(支持部材)と、の位置関係については、特許文献2には記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−16263号公報
【特許文献2】特開2007−92346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、浴槽防水パンを設置可能としながらも、浴槽架台を基準として浴槽の設置位置を規定することが可能となり、浴槽と洗い場床とをより正確な位置関係に配置し、施工性をより向上させることができる浴槽設置構造および浴槽設置方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明に係る浴槽設置構造は、上面の所定位置にネジ取り付け孔が形成された浴槽架台と、前記浴槽架台の上に設置され、前記ネジ取り付け孔の直上位置に貫通孔を有する浴槽防水パンと、前記浴槽防水パンの上に取り付けられ、前記貫通孔に挿通され前記ネジ取り付け孔に固定されるネジによって前記浴槽架台に対し固定される浴槽載置ピースと、前記浴槽防水パンの上に設置され、前記浴槽載置ピースに対し固定されることにより水平方向の設置位置が規定される位置決め部を裏面に有する浴槽と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明では、浴槽防水パンを設置可能としながらも、浴槽の水平方向の設置位置を浴槽架台を基準として規定することが可能となり、浴槽と洗い場床とをより正確な位置関係に配置することができ、浴槽を設置する際の施工性を向上させることができる。
【0010】
本願請求項2に係る浴槽設置構造では、前記ネジ取り付け孔、前記貫通孔、および前記浴槽載置ピースは、複数形成されており、前記貫通孔の径は、前記ネジ取り付け孔の径よりも大きいことを特徴とする。
【0011】
浴槽防水パンは大型化しやすいため、複数の貫通孔を誤差無く所定の位置に形成することが困難である。この態様では、浴槽防水パンの貫通孔は、浴槽防水パンの寸法誤差に対応できるように、貫通孔の径は、ネジ取り付け孔の径よりも大きくすることにより、浴槽の水平方向の設置位置を浴槽架台を基準としてより正確に規定することができ、浴槽を設置する際の施工性をさらに向上させることができる。
【0012】
本願請求項3に係る浴槽設置方法では、貫通孔を有する浴槽防水パンを浴槽架台の上に設置する際に、前記浴槽架台の上面に形成されたネジ取り付け孔の直上に位置するように前記貫通孔を配置し、前記浴槽防水パンの上に浴槽載置ピースを固定する際に、前記貫通孔を介して前記浴槽載置ピースを前記浴槽架台の前記ネジ取り付け部にネジ固定し、浴槽の裏面に設けられた位置決め部を前記浴槽載置ピースに対し固定することにより前記浴槽の水平方向の設置位置を規定することを特徴とする。
【0013】
本発明では、浴槽防水パンが設置されるユニットバスにおいて、浴槽の水平方向の設置位置を浴槽架台を基準として規定することが可能となり、浴槽と洗い場床とをより正確な位置関係に配置することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、浴槽防水パンを設置可能としながらも、浴槽架台を基準として浴槽の設置位置を規定することが可能となり、浴槽と洗い場床とをより正確な位置関係に配置し、施工性をより向上させることができる浴槽設置構造および浴槽設置方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態にかかる浴槽設置構造を備えたユニットバスを表す分解模式図である。
【図2】浴槽防水パンが設置されたユニットバスの浴槽載置ピースの近傍を拡大して眺めた断面模式図である。
【図3】浴槽防水パンが設置されていないユニットバスの浴槽載置ピースの近傍を拡大して眺めた断面模式図である。
【図4】本実施形態の浴槽載置ピースを表す斜視模式図である。
【図5】本実施形態にかかる浴槽設置方法を説明するための平面模式図である。
【図6】本実施形態にかかる浴槽設置方法を説明するための斜視模式図である。
【図7】浴槽の裏面に付設された位置決め部の近傍を拡大して眺めた拡大模式図である。
【図8】本実施形態の変形例にかかる浴槽設置構造を表す断面模式図である。
【図9】本変形例の浴槽載置ピースの近傍を拡大して眺めた断面模式図である。
【図10】本変形例の浴槽防水パンを表す斜視模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる浴槽設置構造を備えたユニットバスを表す分解模式図である。
【0017】
図1に表したユニットバスは、図示しない建物床に載置される洗い場床100と、洗い場床100に固定され図示しない建物床に載置される浴槽架台200と、浴槽架台200の上に載置される浴槽防水パン300と、浴槽防水パン300に水密的に取り付けられる浴槽載置ピース360と、浴槽防水パン300の上に載置される浴槽400と、を備える。また、図1に表したユニットバスでは、洗い場床100と浴槽400との間に、バスエプロン500(図8参照)が設置される。
【0018】
洗い場床100は、支持脚110を有し、建物床の任意の位置に載置される。また、洗い場床100の支持脚110は、いわゆる「アジャスタボルト」を有する。これにより、洗い場床100の高さを調整することができる。
浴槽架台200は、ねじなどの締結部材や溶接や接着などにより洗い場床100に適宜固定されている。浴槽架台200は、洗い場床100と同様に、支持脚210を有し、その支持脚210は、いわゆる「アジャスタボルト」を有する。これにより、浴槽架台200の高さを調整することができる。また、浴槽架台200は、ねじなどの締結部材601を通す貫通孔220を有する。これについては、後に詳述する。
【0019】
浴槽防水パン300は、底部301と、底部301の周縁部から上方に延在した側壁部302a、302b、302c、302dと、を有する。側壁部302a、302b、302cの上端の高さは、浴槽防水パン300の上に載置された浴槽400の浴槽リム405の高さと略同じある。そのため、浴槽防水パン300の側壁部302a、302b、302cは、浴槽400の側壁部402a、402b、402cをそれぞれ覆うことができる。一方、側壁部302dの上端の高さは、浴槽防水パン300の上に載置された浴槽400の浴槽リム405の高さよりも低い。そのため、浴槽防水パン300の側壁部302dは、浴槽400の側壁部402dの一部を覆うことができる。なお、側壁部302dにより覆われない浴槽400の側壁部402dの他部は、バスエプロン500により覆われる。
【0020】
これにより、浴槽防水パン300は、例えば、給水源に接続された図示しない配管などから水が漏れた場合であっても、その漏水を受けることができる。つまり、浴槽防水パン300は、浴槽架台200や建物床などに水が漏れることをより確実に抑制することができる。なお、本願明細書において「水」という場合には、冷水のみならず、加熱されたお湯も含むものとする。また、浴槽防水パン300は、底部301に設けられた貫通孔310を有する。すなわち、貫通孔310は、浴槽防水パン300のうちの、浴槽架台200の上面に対向する部分に設けられている。これについては、後に詳述する。
【0021】
浴槽400は、底部401と、底部401の周縁部から上方に延在した側壁部402a、402b、402c、402dと、上面あるいは上端を形成する浴槽リム405と、を有する。浴槽400の裏面、すなわち底部401の浴槽架台200側の面(下面)には、図1に表したように、浴槽400の水平方向の設置位置を規定する位置決め部410が付設されている。なお、位置決め部410は、浴槽400と別体ではなく、一体として形成されていてもよい。
【0022】
また、浴槽載置ピース360は、浴槽防水パン300に設けられた貫通孔310と、浴槽架台200の設けられた貫通孔220と、を通して締結された締結部材601により浴槽防水パン300を介して浴槽架台200に固定される。そして、例えば作業者などは、位置決め部410と、浴槽載置ピース360と、を締結部材601で締結し固定することにより、浴槽架台200を基準として浴槽400の設置位置を規定することができる。これらのことについて、以下図面を参照しつつさらに詳細に説明する。
【0023】
図2は、浴槽防水パンが設置されたユニットバスの浴槽載置ピースの近傍を拡大して眺めた断面模式図である。
また、図3は、浴槽防水パンが設置されていないユニットバスの浴槽載置ピースの近傍を拡大して眺めた断面模式図である。
なお、図2および図3は、図1に表したA−A断面図に相当する。
【0024】
浴槽架台200の貫通孔220の下には、図2に表したように、ナット230が付設されている。ナット230は、溶接や接着などにより浴槽架台200に予め固定されている。但し、これだけに限定されず、ナット230は、浴槽架台200に予め固定されていなくともよい。
【0025】
また、浴槽載置ピース360は、図2に表したように、締結部材601を通す貫通孔363を有する。貫通孔363の径は、締結部材601の径Dよりも大きく、浴槽防水パン300に設けられた貫通孔310の径よりも小さい。より具体的には、貫通孔363の径は、締結部材601の径Dに比較的近く、浴槽防水パン300に設けられた貫通孔310の径から比較的遠い。
【0026】
そのため、浴槽載置ピース360の貫通孔363と、浴槽防水パン300の貫通孔310と、浴槽架台200の貫通孔220と、に締結部材601を通しナット230に締結することにより、浴槽載置ピース360は、浴槽防水パン300を介して浴槽架台200に位置決めされつつ固定される。つまり、浴槽載置ピース360の設置位置は、浴槽架台200を基準として規定される。そして、ナット230に締結された締結部材601の周囲あるいは上方には、パッキンやシリコンなどの水密部材603が設けられている。水密部材603は、浴槽防水パン300の貫通孔310を通して浴槽架台200や建物床などに水が漏れることを抑制できる。
【0027】
さらに、本実施形態においては、浴槽防水パン300に設けられた貫通孔310の径は、締結部材601の貫通孔363を貫通する部分における径よりも大きく、また、締結部材601の浴槽架台200との結合部における径よりも大きい。図2に表した具体例の場合、浴槽防水パン300の貫通孔310は、締結部材601の径Dよりも十分に大きいため、浴槽架台200を基準として規定される浴槽載置ピース360の設置位置には影響を及ぼさない。言い換えれば、浴槽防水パン300の貫通孔310は、浴槽架台200を基準として規定される浴槽載置ピース360の設置位置に影響を及ぼさない程度に大きい。あるいは、浴槽防水パン300の貫通孔310は、浴槽載置ピース360の設置位置を浴槽架台200を基準として規定できる程度に大きい。
【0028】
例えば、締結部材601の径Dが6ミリメートルである場合には、浴槽防水パン300の貫通孔310の径は、約12ミリメートル程度である。あるいは、例えば、締結部材601の径Dが8ミリメートルである場合には、浴槽防水パン300の貫通孔310の径は、約16ミリメートル程度である。つまり、浴槽防水パン300の貫通孔310の径は、締結部材601の径Dの約2倍程度である。
【0029】
浴槽載置ピース360は、図2に表したように、締結部材601を通す貫通孔362をさらに有する。そして、浴槽載置ピース360の貫通孔362の近傍には、浴槽架台200と同様に、ナット361が付設されている。ナット361は、溶接や接着などにより浴槽載置ピース360に予め固定されている。
【0030】
位置決め部410は、図1に関して前述したように、浴槽400の裏面、すなわち底部401の浴槽架台200側の面(下面)に締結部材601により固定されている。位置決め部410は、図2に表したように、締結部材601を通す貫通孔415を有する。位置決め部410の貫通孔415は、浴槽載置ピース360の貫通孔363と同様に、締結部材601の径Dに比較的近い。そのため、位置決め部410の貫通孔415と、浴槽載置ピース360の貫通孔362と、に締結部材601を通しナット361に締結することにより、位置決め部410を有する浴槽400は、浴槽載置ピース360に位置決めされつつ固定される。つまり、浴槽400の水平方向の設置位置は、浴槽載置ピース360を基準として規定される。
【0031】
ここで、浴槽載置ピース360を基準として規定される浴槽400の水平方向とは、左右方向(図1参照)および前後方向(図1参照)の少なくともいずれかである。そのため、位置決め部410が有する貫通孔415は、上下方向に長手方向を有する長孔であって、左右方向の幅が締結部材601の径Dに比較的近い長孔であってもよい。これによれば、浴槽400の上下方向の設置位置は、自由度を有しつつ、浴槽400の水平方向の設置位置は、浴槽載置ピース360を基準として規定される。
【0032】
一方、浴槽400の上下方向の設置位置は、浴槽400の底部401が浴槽防水パン300の所定位置に載置されることにより規定される。これについては、後に詳述する。そして、浴槽載置ピース360と、位置決め部410と、の間には上下方向に間隙Bが存在する。すなわち、浴槽載置ピース360の上端は、位置決め部410には当接していない。そのため、浴槽400の荷重は、浴槽載置ピース360にはあまりかからず、浴槽400の底部401を載置する浴槽防水パン300の所定位置に主としてかかる。これによれば、浴槽載置ピース360が浴槽400の荷重により破損することを抑えることができる。
【0033】
以上説明したように、位置決め部410を有する浴槽400は、浴槽防水パン300を介して浴槽架台200に位置決めされた浴槽載置ピース360に、位置決めされつつ固定される。その結果、浴槽400の水平方向の設置位置は、浴槽防水パン300が設置されるユニットバスにおいても、浴槽載置ピース360を介して浴槽架台200を基準として規定される。すなわち、浴槽架台200からみた浴槽400の水平方向の設置位置は、浴槽防水パン300が設置されるユニットバスにおいても、浴槽載置ピース360を介して決定される。
【0034】
さらに、浴槽架台200は、図1に関して前述したように、締結部材や溶接や接着などにより洗い場床100に適宜固定されている。そのため、浴槽400の設置位置を浴槽架台200を基準として規定することにより、浴槽400と洗い場床100とをより正確な位置関係に配置することができる。
【0035】
一方、浴槽防水パン300が設置されないユニットバスでは、図3に表したように、位置決め部410を浴槽架台200の上に直接的に載置することができる。そのため、位置決め部410を有する浴槽400は、浴槽架台200に位置決めされつつ固定される。その結果、浴槽400の水平方向の設置位置は、浴槽防水パン300が設置されないユニットバスにおいても、浴槽架台200を基準として規定される。
【0036】
そして、浴槽架台200は、締結部材や溶接や接着などにより洗い場床100に適宜固定されているため、浴槽400の設置位置を浴槽架台200を基準として規定することにより、浴槽400と洗い場床100とをより正確な位置関係に配置することができる。なお、この場合には、締結部材601が浴槽架台200の上面に接触しないように、位置決め部410に「ザクリ」などと呼ばれる凹部を設ける、あるいは浴槽架台200の上面に凹部あるいは孔を設けることが好ましい。
【0037】
本実施形態にかかる浴槽設置構造によれば、浴槽防水パン300が設置されるユニットバスでも、浴槽防水パン300が設置されないユニットバスでも、浴槽400の水平方向の設置位置を浴槽架台200を基準として規定することができる。そのため、浴槽400と洗い場床100とをより正確な位置関係に配置することができる。
【0038】
次に、浴槽載置ピースおよび位置決め部の構造の詳細、並びに浴槽設置方法について、図面を参照しつつ説明する。
まず、浴槽載置ピース360の構造の詳細について説明する。
図4は、本実施形態の浴槽載置ピースを表す斜視模式図である。
なお、図4(a)は、ナット361側からみた斜視模式図であり、図4(b)は、ナット361とは反対側からみた斜視模式図である。
【0039】
浴槽載置ピース360は、図4に表したように、浴槽防水パン300に載置される基部366と、基部366と略直交する方向に延在し位置決め部410を固定する固定部367と、を有する。基部366には、例えば2つの貫通孔363が設けられている。この貫通孔363の設置位置は、浴槽架台200の上面に設けられた貫通孔220の設置位置にそれぞれに対応している。そのため、図1および図2に表したように、浴槽載置ピース360の貫通孔363と、浴槽防水パン300の貫通孔310と、浴槽架台200の貫通孔220と、に締結部材601を通し締結することにより、浴槽載置ピース360を浴槽防水パン300を介して浴槽架台200に位置決めし固定することができる。なお、基部366に設けられた貫通孔363の設置数および設置位置は、図4に表した浴槽載置ピース360に限定されるわけではない。
【0040】
固定部367には、貫通孔362が設けられている。また、固定部367における基部366側の面には、中心軸が貫通孔362の中心軸と略一致するようにナット361が付設されている。ナット361は、溶接や接着などにより固定部367に固定されている。そのため、図1および図2に表したように、位置決め部410の貫通孔415と、浴槽載置ピース360の貫通孔362と、に洗い場床100側から締結部材601を通しナット361に締結することにより、位置決め部410を有する浴槽400を浴槽載置ピース360に位置決めし固定することができる。
【0041】
次に、浴槽設置方法について説明する。
図5は、本実施形態にかかる浴槽設置方法を説明するための平面模式図である。
なお、図5は、浴槽防水パン300を介して浴槽架台200に浴槽載置ピース360を固定した状態を上方から眺めた平面模式図である。
【0042】
本実施形態にかかる浴槽設置方法では、まず、作業者は、浴槽防水パン300を浴槽架台200上に載置し、浴槽架台200の直上に位置する部分に浴槽防水パン300の貫通孔310を配置させる。より具体的には、浴槽防水パン300を浴槽架台200上に載置し、浴槽架台200の貫通孔220と、浴槽防水パン300の貫通孔310と、の位置を対応させる。このとき、浴槽架台200の貫通孔220の中心軸と、浴槽防水パン300の貫通孔310の中心軸と、が略一致していることがより好ましい。
【0043】
続いて、作業者は、浴槽載置ピース360を浴槽防水パン300上に載置し、浴槽載置ピース360の貫通孔363と、浴槽架台200の貫通孔220と、の位置を対応させる。このときにも、浴槽架台200の貫通孔220の中心軸と、浴槽載置ピース360の貫通孔363の中心軸と、が略一致していることがより好ましい。
【0044】
続いて、作業者は、浴槽載置ピース360の貫通孔363と、浴槽防水パン300の貫通孔310と、浴槽架台200の貫通孔220と、に締結部材601を通しナット230(図2参照)に締結する。これにより、浴槽載置ピース360を浴槽防水パン300を介して浴槽架台200に固定することができる。このとき、図2に関して前述したように、貫通孔363の径は、締結部材601の径Dに比較的近いため、浴槽載置ピース360の貫通孔363に締結部材601を通して締結することにより、浴槽載置ピース360の設置位置を浴槽架台200を基準として規定することができる。このようにして、浴槽載置ピース360が浴槽防水パン300を介して浴槽架台200に固定された状態は、図5に表した如くである。
【0045】
図6は、本実施形態にかかる浴槽設置方法を説明するための斜視模式図である。
また、図7は、浴槽の裏面に付設された位置決め部の近傍を拡大して眺めた拡大模式図である。
【0046】
続いて、本実施形態にかかる浴槽設置方法では、作業者は、浴槽防水パン300の上に浴槽400を載置する。そして、位置決め部410の貫通孔415と、浴槽載置ピース360の固定部367に設けられた貫通孔362と、の位置を対応させる。このとき、位置決め部410の貫通孔415の中心軸と、浴槽載置ピース360の貫通孔362の中心軸と、が略一致していることがより好ましい。
【0047】
ここで、浴槽400の下側には、図6に表したように、支持脚420が付設されている。この支持脚420は、いわゆる「アジャスタボルト」を有する。これにより浴槽400の高さを調整することができる。そして、浴槽400を浴槽防水パン300上に載置すると、支持脚420の下端部と、浴槽400の底部401の下端部401aは、浴槽防水パン300に接触する。これによれば、支持脚420と、底部401の下端部401aと、は浴槽400の荷重を支えることができる。
【0048】
また、浴槽400の裏面には、図6に表したように、位置決め部410が付設されている。位置決め部410は、図7に表したように、浴槽400の裏面に固定される基部411と、基部411と略直交する方向に延在し浴槽載置ピース360に固定される固定部413と、を有する。
【0049】
位置決め部410は、図7に表したように、基部411において締結部材601により浴槽400の裏面に固定されている。また、固定部413の端部には、浴槽400からみて洗い場床100側に湾曲したガイド部414が設けられている。そのため、位置決め部410の貫通孔415と、浴槽載置ピース360の貫通孔362と、の位置を対応させる際、浴槽400に付設された位置決め部410は、ガイド部414により案内される。これにより、作業者は、位置決め部410の貫通孔415と、浴槽載置ピース360の貫通孔362と、の位置を楽に対応させることができる。なお、本実施形態の浴槽400では、図6に表したように、2つの位置決め部410が浴槽400の長手方向(左右方向)に離間して付設されている。但し、位置決め部410の設置数や設置位置については、これだけに限定されるわけではない。
【0050】
続いて、作業者は、位置決め部410の貫通孔415と、浴槽載置ピース360の貫通孔362と、に締結部材601を通しナット361(図4参照)に締結する。これにより、位置決め部410を有する浴槽400を浴槽載置ピース360に固定することができる。このとき、図2に関して前述したように、位置決め部410の貫通孔415は、締結部材601の径Dに比較的近いため、位置決め部410の貫通孔415に締結部材601を通して締結することにより、浴槽400の水平方向の設置位置を浴槽載置ピース360を基準として規定することができる。
【0051】
本実施形態にかかる浴槽設置方法によれば、浴槽防水パン300を介して浴槽架台200に位置決めされた浴槽載置ピース360に、浴槽400を位置決めしつつ固定することができる。その結果、浴槽防水パン300が設置されるユニットバスでも、浴槽防水パン300が設置されないユニットバスでも、浴槽400の水平方向の設置位置を浴槽架台200を基準として規定することができる。そのため、浴槽400と洗い場床100とをより正確な位置関係に配置することができる。さらに、浴槽400を設置する際の施工性を向上させることができる。
【0052】
次に、本実施形態の変形例にかかる浴槽設置構造について、図面を参照しつつ説明する。
図8は、本実施形態の変形例にかかる浴槽設置構造を表す断面模式図である。
また、図9は、本変形例の浴槽載置ピースの近傍を拡大して眺めた断面模式図である。 また、図10は、本変形例の浴槽防水パンを表す斜視模式図である。
なお、図9は、図8に表した範囲Cの部分の拡大模式図に相当する。
【0053】
本変形例の浴槽400aは、図8および図9に表したように、浴槽400aの裏側、すなわち底部401の浴槽架台200側に凹部401bを有する。そして、この凹部401bには、図9に表したように、例えばゴムやパッキンなどの弾性体605が付設されている。本変形例では、図7に表したような位置決め部410は設けられていない。
【0054】
また、本変形例の浴槽載置ピース370は、図10に表したように、略直方体の形状を有する。つまり、浴槽載置ピース370は、図4に表した浴槽載置ピース360の基部366や固定部367などを有しているわけではなく、いわゆる「ブロック」の形状を有する。また、浴槽載置ピース370は、図9および図10に表したように、上面に凹設部371を有し、その凹設部371の下部には、締結部材601を通す貫通孔373が設けられている。この貫通孔373の径は、締結部材601の径Dよりも大きく、浴槽防水パン300に設けられた貫通孔310(図1参照)の径よりも小さい。より具体的には、貫通孔373の径は、締結部材601の径Dに比較的近く、浴槽防水パン300に設けられた貫通孔310の径から比較的遠い。
【0055】
そのため、浴槽載置ピース370の貫通孔373と、浴槽防水パン300の貫通孔310と、浴槽架台200の貫通孔220(図1参照)と、に締結部材601を通し締結することにより、浴槽載置ピース370は、浴槽防水パン300を介して浴槽架台200に位置決めされつつ固定される。つまり、浴槽載置ピース370の設置位置は、浴槽架台200を基準として規定される。そして、浴槽載置ピース370の周囲あるいは凹設部371の内部には、シリコンなどの水密部材603が設けられている。水密部材603は、浴槽防水パン300の貫通孔310を通して浴槽架台200や建物床などに水が漏れることを抑制できる。
【0056】
また、浴槽400aは、浴槽載置ピース370が凹部401bに挿入されるように、あるいは浴槽載置ピース370と凹部401bとが係合するように、浴槽載置ピース370上に載置されている。より具体的には、浴槽載置ピース370の外側と、凹部401bの内側と、が当接するように、浴槽400aは、浴槽載置ピース370に載置されている。これにより、浴槽400aの水平方向の設置位置は、浴槽載置ピース370を基準として規定される。
【0057】
このとき、凹部401bに付設された弾性体605の下面と、浴槽載置ピース370の上面と、は当接している。つまり、凹部401bに付設された弾性体605は、浴槽載置ピース370上に載置されている。そのため、本変形例の浴槽載置ピース370は、浴槽400aの水平方向の設置位置を規定しつつ、浴槽400aの荷重を支えることができる。また、弾性体605は、例えばゴムやパッキンなどのように弾性を有するため、浴槽400aを設置するときの衝撃などを和らげることができる。
【0058】
なお、本変形例の浴槽架台200には、図2に表したようなナット230は設けられておらず、いわゆる「バーリング」などと呼ばれる加工処理により突出部が形成され、その突出部の内側の貫通孔220に雌ねじが形成されている。また、浴槽400aと浴槽載置ピース370とは、互いに固定されないため、水密性がより確保される位置において適宜固定される。その他の構造については、図1〜図7に関して前述した浴槽設置構造と同様である。
【0059】
本変形例によれば、浴槽400aは、浴槽防水パン300を介して浴槽架台200に位置決めされた浴槽載置ピース370に、位置決めされつつ固定される。その結果、浴槽400aの水平方向の設置位置は、浴槽防水パン300が設置されるユニットバスにおいても、浴槽載置ピース370を介して浴槽架台200を基準として規定される。また、位置決め部410を別体として設ける必要がないため、浴槽400aを設置する際の施工性をより向上させることができる。さらに、浴槽載置ピース370は、浴槽400aの水平方向の設置位置を規定しつつ、浴槽400aの荷重を支えることができる。これにより、図6に表した支持脚420などを設ける必要はなくなり、浴槽400aの構造を簡略化することができる。また、その他の効果についても、図1〜図7に関して前述した効果と同様の効果を得ることができる。
【0060】
以上説明したように、本実施形態によれば、浴槽防水パン300が設置されるユニットバスでも、浴槽防水パン300が設置されないユニットバスでも、浴槽400の水平方向の設置位置を浴槽架台200を基準として規定することができる。そのため、浴槽400と洗い場床100とをより正確な位置関係に配置することができる。さらに、浴槽400を設置する際の施工性を向上させることができる。
【0061】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、浴槽防水パン300や浴槽400などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置などや浴槽載置ピース360の設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0062】
100 洗い場床、 110 支持脚、 200 浴槽架台、 210 支持脚、 220 貫通孔、 230 ナット、 300 浴槽防水パン、 301 底部、 302a、302b、302c、302d 側壁部、 310 貫通孔、 360 浴槽載置ピース、 361 ナット、 362、363 貫通孔、 366 基部、 367 固定部、 370 浴槽載置ピース、 371 凹設部、 373 貫通孔、 400 、400a 浴槽、 401 底部、 401a 下端部、 401b 凹部、 402a、402b、402c、402d 側壁部、 405 浴槽リム、 410 位置決め部、 411 基部、 413 固定部、 414 ガイド部、 415 貫通孔、 420 支持脚、 500 バスエプロン、 601 締結部材、 603 水密部材、 605 弾性体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面の所定位置にネジ取り付け孔が形成された浴槽架台と、
前記浴槽架台の上に設置され、前記ネジ取り付け孔の直上位置に貫通孔を有する浴槽防水パンと、
前記浴槽防水パンの上に取り付けられ、前記貫通孔に挿通され前記ネジ取り付け孔に固定されるネジによって前記浴槽架台に対し固定される浴槽載置ピースと、
前記浴槽防水パンの上に設置され、前記浴槽載置ピースに対し固定されることにより水平方向の設置位置が規定される位置決め部を裏面に有する浴槽と、
を備えたことを特徴とする浴槽設置構造。
【請求項2】
前記ネジ取り付け孔、前記貫通孔、および前記浴槽載置ピースは、複数形成されており、
前記貫通孔の径は、前記ネジ取り付け孔の径よりも大きいことを特徴とする請求項1記載の浴槽設置構造。
【請求項3】
貫通孔を有する浴槽防水パンを浴槽架台の上に設置する際に、前記浴槽架台の上面に形成されたネジ取り付け孔の直上に位置するように前記貫通孔を配置し、
前記浴槽防水パンの上に浴槽載置ピースを固定する際に、前記貫通孔を介して前記浴槽載置ピースを前記浴槽架台の前記ネジ取り付け部にネジ固定し、
浴槽の裏面に設けられた位置決め部を前記浴槽載置ピースに対し固定することにより前記浴槽の水平方向の設置位置を規定することを特徴とする浴槽設置方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−270531(P2010−270531A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−124438(P2009−124438)
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】