説明

浴槽防水パン

【課題】浴槽防水パンに点検口を設けることなく、洗い場床および浴槽防水パンの少なくともいずれか一方の下側に配設された排水部材からの漏水確認を容易に行うことができる浴槽防水パンを提供する。
【解決手段】洗い場床とは別体として設置され、前記洗い場床に隣接して設けられる浴槽の下方に設置される浴槽防水パンであって、底面部と、前記底面部の周縁部の全周から上方に延在した側壁部と、を備え、前記側壁部のうちで前記洗い場床の側の前記側壁部の少なくとも一部は、可撓性を有し、前記可撓性を有する前記側壁部を水平方向に押圧し変形させることにより、前記洗い場床および前記浴槽防水パンの少なくともいずれか一方の下側に配設された排水部材からの漏水を確認するためのスペースを形成可能としたことを特徴とする浴槽防水パンが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽防水パンに関し、具体的には浴槽の下に配置される浴槽防水パンに関する。
【背景技術】
【0002】
ユニットバスの中には、例えば、洗い場床と、洗い場床に隣接して設けられ浴槽の下に配置される浴槽防水パンと、を備えたものがある。この浴槽防水パンは、例えば、浴槽に取り付けられる給湯配管や追い炊き配管などの配管接続部から浴槽の下に湯水が漏れた場合であっても、その湯水を受けることができる。そのため、浴槽防水パンは、建物床や建物壁に湯水が漏れることを防止することができる。
【0003】
また、ユニットバスを施工する際には、洗い場床に対して取り付けられる排水トラップや、浴槽防水パンに対して取り付けられる浴槽排水エルボの締め付けが不十分な場合に発生する水漏れを検査する作業が行われる。この排水トラップや浴槽排水エルボは、洗い場床および浴槽防水パンの下に設けられる。
【0004】
そこで、浴槽パン(防水パン)に点検孔を設けることにより、浴槽パン下方の排水管の接合部の点検、清掃を可能とした浴室ユニットの防水パンがある(特許文献1)。しかしながら、浴槽パンは湯水を受けるものであるため、漏水の確認を行った後には点検孔を塞ぐ必要があり、また水密的に閉塞させる必要がある。そのため、その水密構造が不十分である場合には、建物床や建物壁に湯水が漏れるおそれがある。さらに、その水密構造を形成するためには、コストがかかるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−70100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、浴槽防水パンに点検口を設けることなく、洗い場床および浴槽防水パンの少なくともいずれか一方の下側に配設された排水部材からの漏水確認を容易に行うことができる浴槽防水パンを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明に係る浴槽防水パンは、洗い場床とは別体として設置され、前記洗い場床に隣接して設けられる浴槽の下方に設置される浴槽防水パンであって、底面部と、前記底面部の周縁部の全周から上方に延在した側壁部と、を備え、前記側壁部のうちで前記洗い場床の側の前記側壁部の少なくとも一部は、可撓性を有し、前記可撓性を有する前記側壁部を水平方向に押圧し変形させることにより、前記洗い場床および前記浴槽防水パンの少なくともいずれか一方の下側に配設された排水部材からの漏水を確認するためのスペースを形成可能としたことを特徴とする。
【0008】
本発明では、少なくとも洗い場床側の側壁部は、可撓性を有するため、作業者は、その側壁部を水平方向に押圧することにより変形させることが可能となり、作業者は、変形させた側壁部と洗い場床との間に生じた隙間から排水トラップの漏水確認を行うことができる。浴槽防水パンに点検口などを設ける必要はなく、浴槽防水バンの水密性を確保しつつ排水トラップの漏水確認を行うことができる。
【0009】
本願請求項2に係る浴槽防水パンは、前記可撓性を有する前記一部は、略上下方向に延在する折り返し線を有する蛇腹部を有し、前記蛇腹部は、水平方向に押圧されることにより変形可能であることを特徴とする。
【0010】
この態様では、可撓性を有する一部が蛇腹部を有することにより、少なくとも洗い場床側の側壁部をより大きく変形させることができる。つまり、その側壁部は、浴槽防水パンの材料的要素だけでなく構造的要素により可撓性を有することが可能となり、蛇腹部が設けられていない場合と比較するとより大きく変形させることができる。これにより、作業者は、浴槽防水パンの水密性をより確保しつつ排水トラップの漏水確認をより楽に行うことができる。
【0011】
本願請求項3に係る浴槽防水パンは、前記浴槽は、上面に壁パネルを載置可能な浴槽リムを有し、前記側壁部と、前記浴槽リムと、は互いに離間して配設され、且つ前記浴槽リムの上面における荷重が前記側壁部には加わらないように配設されたことを特徴とする。
【0012】
この態様では、側壁部は、浴槽リムが受けている荷重を支持できるほどの強度を有する必要はないため、その側壁部に可撓性を付与することができる。そのため、作業者は、浴槽防水パンの水密性をより確保しつつ排水部材からの漏水確認を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、浴槽防水パンに点検口を設けることなく、洗い場床および浴槽防水パンの少なくともいずれか一方の下側に配設された排水部材からの漏水確認を容易に行うことができる浴槽防水パンが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態にかかる浴槽防水パンを備えたユニットバスを表す斜視模式図である。
【図2】本実施形態にかかる浴槽防水パンを備えたユニットバスを表す分解模式図である。
【図3】本実施形態にかかる浴槽防水パンおよび排水トラップの近傍を表す斜視模式図である。
【図4】本実施形態にかかる浴槽防水パンを表す斜視模式図である。
【図5】本実施形態にかかる浴槽防水パンを表す斜視模式図である。
【図6】本実施形態にかかる浴槽防水パンを撓ませる前のユニットバスを側方から眺めた断面模式図である。
【図7】本実施形態にかかる浴槽防水パンを撓ませた状態のユニットバスを側方から眺めた断面模式図である。
【図8】本実施形態にかかる浴槽防水パンを側方から眺めた断面模式図である。
【図9】浴槽防水パンの排水部近傍を拡大して斜めから眺めた断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる浴槽防水パンを備えたユニットバスを表す斜視模式図である。
また、図2は、本実施形態にかかる浴槽防水パンを備えたユニットバスを表す分解模式図である。
また、図3は、本実施形態にかかる浴槽防水パンおよび排水トラップの近傍を表す斜視模式図である。
なお、図2および図3に表したユニットバスでは、説明の便宜上、浴槽やエプロンなどを適宜省略している。
【0016】
図1〜図3に表したユニットバスは、図示しない建物床に載置される洗い場架台210と、洗い場架台210の上に載置される洗い場床100と、洗い場架台210に固定され図示しない建物床に載置される浴槽架台220と、浴槽架台220の上に載置される浴槽防水パン300と、浴槽防水パン300の上に載置される浴槽400と、洗い場床100と浴槽400との間に着脱可能に設置されるバスエプロン500と、を備える。洗い場床100と浴槽防水パン300とは、図2に表したように、別体として設置されている。
【0017】
洗い場架台210は、「アジャスタボルト」などと呼ばれる支持脚211を有し、建物床の任意の位置に載置される。
浴槽架台220は、ねじなどの締結部材や溶接や接着などにより洗い場架台210に適宜固定されている。浴槽架台220は、洗い場架台210と同様に、「アジャスタボルト」などと呼ばれる支持脚221を有する。これらの支持脚211、221を適宜調整することにより、洗い場床100や浴槽防水パン300や浴槽400の高さを調整することができる。
【0018】
浴槽400は、底面部401と、底面部401の周縁部の全周から上方に延在した側壁部402a、402b、402c、402dと、上面あるいは上端を形成する浴槽リム405と、を有する。また、底面部401の外側(使用者が入浴する側とは反対側)には、図2および図3に表したように、浴槽400内の水を排水可能な排水部430が付設されている。排水部430は、排水口を有し、浴槽400内の水は、その排水口を通して排水される。なお、本願明細書において「水」という場合には、冷水のみならず、加熱されたお湯も含むものとする。また、浴槽リム405の上には、図示しない壁パネルが載置される。つまり、浴槽400は、ユニットバスの壁パネルや天井の荷重を受けることができる。
【0019】
浴槽防水パン300は、底面部301と、底面部301の周縁部の全周から上方に延在した側壁部302a、302b、302c、302dと、を有する。側壁部302a、302b、302cの上端の高さ位置は、浴槽防水パン300の上に載置された浴槽400の浴槽リム405の高さ位置よりもやや低い。そのため、側壁部302a、302b、302cの上端と、浴槽リム405と、の間には、隙間が存在する。これにより、浴槽リム405が受けている壁パネルなどの荷重は、浴槽防水パン300には加わらない。そのため、浴槽防水パン300の側壁部302a、302b、302c、302dは、浴槽リム405が受けている荷重を支持できるほどの強度を有していなくともよく、後に詳述するように、側壁部302dに可撓性を付与することができる。
【0020】
一方、浴槽防水パン300の側壁部302dの上端の高さは、浴槽防水パン300の上に載置された浴槽400の浴槽リム405の高さよりも低く、例えば、浴槽400の底面部401と浴槽リム405との中間部程度である。そのため、浴槽防水パン300の側壁部302dは、浴槽400の側壁部402dの一部を覆うことができる。なお、浴槽防水パン300の側壁部302dにより覆われない浴槽400の側壁部402dの他部は、バスエプロン500により覆われる。
【0021】
浴槽防水パン300の内側には、図3に表したように、浴槽400の排水部430に接続された排水管441が設置されている。一方、浴槽防水パン300の外側であって洗い場床100の下側には、排水管441に接続された排水管(排水部材)442が設置されている。この排水管442は、洗い場床100の下側に付設された排水トラップ(排水部材)150に接続されている。つまり、排水管441の一端は、浴槽400の排水部430に接続されており、その他端は、排水管442に接続されている。また、排水管442の一端は、排水管441に接続されており、その他端は、排水トラップ150に接続されている。なお、排水管441、442の少なくともいずれかは、洗い場床100側の側壁部302dを貫通しており、その貫通した部分では、例えばパッキンなどの水密部材により水密的に取り付けられている。
【0022】
そのため、浴槽400の排水部430から排水された水は、排水管441、442を通って排水トラップ150に導かれる。そして、排水トラップ150に導かれた水は、封水として排水トラップ150内に一時的に貯留され、その後、排水トラップ150に接続された排水管161を通ってユニットバスおよび建物の外に排水される。なお、排水トラップ150は、洗い場床100の下側に締め付けフランジを介して固定されており、導かれた水をその内部に封水として一時的に貯留することにより悪臭や害虫類が浴室内に侵入することを防止することができる。そのため、この締め付け固定が不十分である場合には、その部分から漏水が生ずる場合がある。
【0023】
また、浴槽防水パン300は、前述したように、底面部301と、底面部301の周縁部の全周から上方に延在した側壁部302a、302b、302c、302dと、を有するため、浴槽400と図示しない給湯配管または追い炊き配管との接続部などから水が漏れた場合であっても、その漏水した水を受けることができる。そして、その受けた水は、浴槽防水パン300の排水部310および排水管321を介して排水される。
【0024】
より具体的には、浴槽防水パン300の底面部301には、図3に表したように、浴槽防水パン300内の水を排水可能な排水部(排水部材)310が設けられている。また、排水部310には、排水管(排水部材)321の一端が接続されている。排水管321は、排水管442と同様に、浴槽防水パン300の外側であって洗い場床100の下側に設けられており、その他端は、排水トラップ150に接続されている。
【0025】
そのため、浴槽防水パン300が受けた水は、浴槽防水パン300の排水部310から排水され、排水管321を通って排水トラップ150に導かれる。そして、排水トラップ150に導かれた水は、封水として排水トラップ150内に一時的に貯留され、その後、排水トラップ150に接続された排水管161を通ってユニットバスおよび建物の外に排水される。このようにして、浴槽400と図示しない給湯配管または追い炊き配管との接続部などから漏水した水は、浴槽防水パン300により受けられ、排水部310および排水管321を通って排水トラップ150に導かれた後、排水管161から排水される。つまり、浴槽防水パン300は、浴槽架台220や建物床などに水が漏れることをより確実に抑制することができる。
なお、排水部310は、排水トラップ150と同様に、浴槽防水パン300の下側に締め付けフランジを介して固定されている。これについては、後に詳述する。そのため、排水トラップ150と同様に、この締め付け固定が不十分である場合には、その部分から漏水する場合がある。
【0026】
ここで、図1〜図3に表したようなユニットバスを施工する際には、作業者は、排水トラップ150や排水部310から水が漏れていないか否かを確認する。その漏水確認は、一般的に、排水トラップ150や排水部310を直接的に目視したり、鏡などを使用して間接的に目視したり、予め敷設しておいた試験紙を引き上げて確認することにより行われる。しかしながら、浴槽防水パン300に隣接した洗い場床100の下側に設けられた排水トラップ150や、浴槽防水パン300の下側に設けられた排水部310を直接的にあるいは間接的に目視する、または予め敷設しておいた試験紙を引き上げることは容易ではない。それは、漏水確認するための空間が狭いためである。
【0027】
そこで、浴槽防水パン300に点検口を設け、その点検口から排水トラップ150を直接的にあるいは間接的に目視することにより漏水を確認する方法が挙げられる。しかしながら、浴槽防水パン300に点検口を設けると、漏水確認を行った後にその点検口を塞ぐ必要があり、また水密的に閉塞させる必要がある。そのため、点検口の水密構造が不十分である場合には、建物床や建物壁に水が漏れるおそれがあるため好ましくない。さらに、点検口の水密構造を形成するためには、コストがかかるため好ましくない。
【0028】
これに対して、本実施形態にかかる浴槽防水パン300を備えたユニットバスでは、作業者は、浴槽防水パン300の側壁部302dを洗い場床100とは反対側、すなわち浴槽400側に押すことにより、漏水確認するための隙間(スペース)を確保できる。そして、作業者は、その隙間(スペース)から光を当てつつ直接的に目視したり、鏡などを挿入し間接的に目視することにより、排水トラップ150や排水部310から水が漏れていないか否かを確認することができる。あるいは、作業者は、洗い場床100や浴槽防水パン300の下に予め敷設しておいた試験紙をその隙間(スペース)から引き上げ、その引き上げた試験紙を確認することにより、排水トラップ150や排水部310から水が漏れていないか否かを確認することができる。以下、浴槽防水パン300の構造および排水トラップ150や排水部310からの漏水の確認方法について、図面を参照しつつさらに詳細に説明する。
【0029】
まず、本実施形態にかかる浴槽防水パン300の構造について説明する。
図4および図5は、本実施形態にかかる浴槽防水パンを表す斜視模式図である。
なお、図4は、浴槽防水パン300を前方(洗い場床100側)からみたときの斜視模式図であり、図5は、浴槽防水パン300を後方(洗い場床100とは反対側)からみたときの斜視模式図である。
【0030】
本実施形態にかかる浴槽防水パン300は、図1〜図3に関して前述したように、底面部301と、底面部301の周縁部の全周から上方に延在した側壁部302a、302b、302c、302dと、を有する。側壁部302dには、図4および図5に表したように、略上下方向に延在した折返し線を有する蛇腹部303が設けられている。つまり、蛇腹部303は、浴槽防水パン300を上方あるいは下方からみたときに略波形の断面を有し、その蛇腹部303の山および谷は、略上下方向に延在している。
【0031】
なお、本実施形態にかかる浴槽防水パン300では、2つの蛇腹部303が形成されているが、これだけに限定されるわけではなく、1つあるいは3つ以上の蛇腹部303が形成されていてもよい。また、蛇腹部303の折返し線の方向は、厳密に上下方向である必要はなく、斜め方向に延在してもよい。また、2つの蛇腹部303の間には、浴槽防水パン300内の方向へ凹んだ凹部305が形成されている。
【0032】
また、側壁部302dには、図4および図5に表したように、排水管孔307が設けられている。そして、排水管441、442(図3参照)の少なくともいずれかを排水管孔307に通すことにより、排水管441と排水管442とを接続することができる。なお、排水管441、442は、排水管孔307において水密的に固定される。また、底面部301には、図5に表したように、排水部孔309が設けられている。そして、浴槽防水パン300の排水部310は、この排水部孔309に水密的に固定される。これについては、後に詳述する。
【0033】
浴槽防水パン300は、樹脂などにより形成されており、その材料としては、例えばPP(ポリプロピレン:Polypropylene)、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン:Acrylonitrile-Butadiene-Styrene)、FRP(繊維強化プラスチック:Fiber Reinforced Plastics)、およびゴムなどが挙げられる。これらの中でも、PPやABSなどは変形しやすいためより好ましい。また、その厚さは、約10mm程度以下であることがより好ましい。
【0034】
このように、浴槽防水パン300は、蛇腹部303を有し、PPやABSなどの樹脂により形成されているため、作業者などが図4に表した矢印Aの方向(水平方向)に側壁部302dを押すと、その側壁部302dは変形することができる。より具体的には、作業者などが側壁部302dを矢印Aの方向(水平方向)に押すと、側壁部302dは、浴槽防水パン300内の方向へ撓むことができる。つまり、側壁部302dは、可撓性を有する。
【0035】
例えば、PPにより形成され、図4および図5に表した形状を有する浴槽防水パン300の場合には、撓み量は、約50〜60ミリメートル程度である。側壁部302dが浴槽防水パン300内の方向へ撓むと、後に詳述するように、浴槽防水パン300と、洗い場床100と、の間の隙間はより大きくなる。そのため、作業者は、より大きくなった隙間から光を当てつつ直接的に目視したり、鏡などを挿入し間接的に目視することにより、排水トラップ150や排水部310から水が漏れていないか否かを確認することができる。あるいは、作業者は、洗い場床100や浴槽防水パン300の下に予め敷設しておいた試験紙をその隙間から引き上げ、その引き上げた試験紙を確認することにより、排水トラップ150や排水部310から水が漏れていないか否かを確認することができる。
【0036】
これによれば、浴槽防水パン300に点検口を設けることなく排水トラップ150や排水部310からの漏水確認を行うことができる。そのため、点検口を塞いだり水密構造を設ける必要はなく、浴槽防水パン300の水密性をより確保しつつ排水トラップ150や排水部310からの漏水確認を行うことができる。また、点検口における水密構造が不要となるため、水密構造のためのコストがかかることはない。
さらに、試験紙を用いて漏水確認を行う場合には、敷設しておいた試験紙から隙間までの経路が短いため、その試験紙をより容易に引き上げることができる。これによれば、試験紙が、洗い場架台210や浴槽架台220に引っ掛かって破れたり、洗い場床100や浴槽防水パン300の下に残ったりするおそれは少ない。また、敷設しておいた試験紙から隙間までの経路が短いため、排水トラップ150や排水部310以外の部分において、水が試験紙に付着するおそれは少ない。これによれば、排水トラップ150や排水部310からの漏水確認をより正確に行うことができる。
【0037】
次に、排水トラップ150や排水部310などの排水部材からの漏水の確認方法について説明する。
図6は、本実施形態にかかる浴槽防水パンを撓ませる前のユニットバスを側方から眺めた断面模式図である。
また、図7は、本実施形態にかかる浴槽防水パンを撓ませた状態のユニットバスを側方から眺めた断面模式図である。
【0038】
まず、作業者は、洗い場架台210と、洗い場床100と、浴槽架台220と、浴槽防水パン300と、浴槽400と、を所定位置に適宜設置する。続いて、洗い場床100あるいは浴槽400内に水を流す。このとき、作業者は、浴槽防水パン300の側壁部302dを図6に表した矢印Aの方向(水平方向)に押す。そうすると、その側壁部302dは、図7に表したように、浴槽防水パン300内の方向へ、すなわち洗い場床100とは反対側へ撓む。これは、図4および図5に関して前述したように、側壁部302dに蛇腹部303が設けられ、浴槽防水パン300がPPやABSなどの樹脂により形成されているためである。
【0039】
なお、側壁部302dを矢印Aの方向に押すときには、2つの蛇腹部303の間の部分、あるいは凹部305近傍を押すことがより好ましい。これによれば、側壁部302dの中央部(凹部305近傍)を洗い場床100とは反対側へより大きく撓ませることができ、また、排水トラップ150の設置位置に隣接した側壁部302dの部分をより大きく撓ませることができる。
【0040】
側壁部302dを洗い場床100とは反対側へ撓ませると、図7に表したように、側壁部302dと、洗い場床100と、の間において、側壁部302dを撓ませる前よりも大きい隙間が生ずる。そこで、作業者は、図7に表した矢印Bのように、その隙間から光を当てたり、鏡などを挿入し適宜配置させることにより、直接的に又はその鏡を介して間接的に排水トラップ150や排水部310を目視できる。これにより、作業者は、直接的に又は鏡を介して間接的に排水トラップ150や排水部310を目視することにより、排水トラップ150や排水部310から水が漏れていないか否かを確認することができる。あるいは、作業者は、洗い場床100や浴槽防水パン300の下に予め敷設しておいた試験紙を、その隙間から矢印Bとは反対方向に引き上げ、その引き上げた試験紙を確認することができる。これにより、排水トラップ150や排水部310から水が漏れていないか否かを確認することができる。
【0041】
これによれば、作業者は、浴槽防水パン300に点検口を設けなくとも排水トラップ150や排水部310からの漏水確認を行うことができるため、浴槽防水パン300の水密性をより確保しつつ排水トラップ150や排水部310からの漏水確認を行うことができる。また、作業者は、浴槽防水パン300の外側であって洗い場床100の下側に設置された排水管442や排水管321などからの漏水を確認することもできる。また、試験紙を用いて漏水確認を行う場合には、図4および図5に関して前述した効果と同様の効果を得ることができる。
【0042】
なお、本実施形態では、洗い場床100あるいは浴槽400内に水を流した後に、側壁部302dを押して撓ませ、側壁部302dと洗い場床100との間の隙間から鏡などを挿入する場合を例に挙げて説明したが、これだけに限定されるわけではない。例えば、作業者は、側壁部302dを押して撓ませ、側壁部302dと洗い場床100との間の隙間から鏡などを挿入し適宜配置させた後に、洗い場床100あるいは浴槽400内に水を流してもよい。この場合であっても、作業者は、浴槽防水パン300の水密性をより確保しつつ排水トラップ150や排水部310からの漏水確認を行うことができる。
【0043】
次に、本実施形態にかかる浴槽防水パン300の排水部310について説明する。
図8は、本実施形態にかかる浴槽防水パンを側方から眺めた断面模式図である。
また、図9は、浴槽防水パンの排水部近傍を拡大して斜めから眺めた断面模式図である。
【0044】
本実施形態にかかる浴槽防水パン300は、図1〜図3に関して前述したように、浴槽400と図示しない給湯配管または追い炊き配管との接続部などから水が漏れた場合であっても、その漏水した水を受けることができる。そして、その受けた水は、浴槽防水パン300の排水部310および排水管321を介して排水される。
【0045】
浴槽防水パン300の排水部310は、図9に表したように、逆止弁カバー311と、排水フランジ313と、排水エルボ315と、を有する。逆止弁カバー311は、ねじなどの締結部材319により浴槽防水パン300の底面部301に固定されている。また、逆止弁カバー311は、貫通孔311aを有し、その貫通孔311aには図示しない逆止弁が設けられている。そして、浴槽防水パン300内に水が溜まり、図示しない逆止弁に水圧がかかると、その水圧により逆止弁が開く。これにより、浴槽防水パン300が受けた水は、貫通孔311aおよび図示しない逆止弁を通って排水される。また、逆止弁カバー311は、排水エルボ315から浴槽防水パン300内に逆流する水を止水することができる。
【0046】
また、浴槽防水パン300の下側(外側)には、排水エルボ315が設置されている。排水エルボ315は、その上端部において径外方向に延在した鍔部315aを有する。その鍔部315a近傍であって排水エルボ315の内周壁には、例えば雌ねじが形成されている。一方、排水フランジ313は、上端部において径外方向に延在した鍔部313aを有する。その鍔部313aの下側であって排水フランジ313の外周壁には、例えば雄ねじが形成されている。
【0047】
そして、排水フランジ313の鍔部313aと、排水エルボ315の鍔部315aと、の間に浴槽防水パン300の底面部301を挟設させ、排水フランジ313の雄ねじを排水エルボ315の雌ねじに螺合させて締め付けることにより、排水エルボ315を底面部301に取り付けることができる。なお、排水部孔309(図5参照)の内周部には、図9に表したように、例えばゴムなどの弾性を有する材質から形成されたパッキン317が設けられている。つまり、排水フランジ313と底面部301との間、および底面部301と排水エルボ315との間には、パッキン317が挟設されている。これにより、排水エルボ315は、浴槽防水パン300の底面部301に水密的に固定されている。
【0048】
排水エルボ315の一端には、図3に表したように、排水管321が接続されている。そのため、浴槽400と給湯配管または追い炊き配管との接続部などから浴槽防水パン300内に漏水した水は、逆止弁カバー311と、排水フランジ313と、排水エルボ315と、排水管321と、通って排水トラップ150に導かれる。
【0049】
なお、浴槽防水パン300の底面部301と、浴槽防水パン300の上端部304(図4参照)と、の中間部近傍には、浴槽防水パン300内の水を洗い場床100に導く図示しないドレン排水管が設けられている。これによれば、逆止弁カバー311や排水エルボ315において水詰まりが生じ、浴槽防水パン300が受けた水を排水管321から排水トラップ150に向かって導水できない場合であっても、水位が上昇した浴槽防水パン300内の水をドレン排水管を通して洗い場床100に導くことができる。
【0050】
以上説明したように、本実施形態によれば、浴槽防水パン300の側壁部302dには、上下方向に形成された蛇腹部303が設けられ、その浴槽防水パン300は、例えばPPやABSなどの樹脂により形成されている。そのため、作業者は、浴槽防水パン300の側壁部302dを洗い場床100とは反対側へ撓ませることができ、側壁部302dと洗い場床100との間に生じたより大きい隙間(スペース)から、例えば光を当てたり鏡などを挿入できる。これによれば、作業者は、直接的に又は鏡を介して間接的に排水トラップ150や排水部310や排水管442、321を目視することにより、排水トラップ150や排水部310や排水管442、321から水が漏れていないか否かを確認することができる。そのため、作業者は、浴槽防水パン300の水密性をより確保しつつ排水トラップ150や排水部310や排水管442、321からの漏水確認を行うことができる。あるいは、作業者は、洗い場床100や浴槽防水パン300の下に予め敷設しておいた試験紙を、側壁部302dと洗い場床100との間に生じたより大きい隙間(スペース)から引き上げ、その引き上げた試験紙を確認することができる。これにより、排水トラップ150や排水部310や排水管442、321から水が漏れていないか否かを確認することができる。
【0051】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、浴槽防水パン300などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置などや排水管441、442、321および排水トラップ150や排水部310の設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0052】
100 洗い場床、 110 支持脚、 150 排水トラップ、 161 排水管、 210 洗い場架台、 220 浴槽架台、 211、221 支持脚、 300 浴槽防水パン、 301 底面部、 302a、302b、302c、302d 側壁部、 303 蛇腹部、 304 上端部、 305 凹部、 307 排水管孔、 309 排水部孔、 310 排水部、 311 逆止弁カバー、 311a 貫通孔、 313 排水フランジ、 313a 鍔部、 315 排水エルボ、 315a 鍔部、 317 パッキン、 319 締結部材、 321 排水管、 400 浴槽、 401 底面部、 402a、402b、402c、402d 側壁部、 405 浴槽リム、 430 排水部、 441、442 排水管、 500 バスエプロン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗い場床とは別体として設置され、前記洗い場床に隣接して設けられる浴槽の下方に設置される浴槽防水パンであって、
底面部と、
前記底面部の周縁部の全周から上方に延在した側壁部と、
を備え、
前記側壁部のうちで前記洗い場床の側の前記側壁部の少なくとも一部は、可撓性を有し、
前記可撓性を有する前記側壁部を水平方向に押圧し変形させることにより、前記洗い場床および前記浴槽防水パンの少なくともいずれか一方の下側に配設された排水部材からの漏水を確認するためのスペースを形成可能としたことを特徴とする浴槽防水パン。
【請求項2】
前記可撓性を有する前記一部は、上下方向に延在する折返し線を有する蛇腹部を有し、
前記蛇腹部は、水平方向に押圧されることにより変形可能であることを特徴とする請求項1記載の浴槽防水パン。
【請求項3】
前記浴槽は、上面に壁パネルを載置可能な浴槽リムを有し、
前記側壁部と、前記浴槽リムと、は互いに離間して配設され、且つ前記浴槽リムの上面における荷重が前記側壁部には加わらないように配設されたことを特徴とする請求項1または2に記載の浴槽防水パン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−270533(P2010−270533A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−124440(P2009−124440)
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】