説明

浴水浄化装置

【課題】 電解用電極の性能を維持できる浴水浄化装置を提供する。
【解決手段】 食塩保持容器16にクエン酸等の有機酸を添加した食塩を収納し、有機酸が溶解した弱酸性の水溶液を生成する。該弱酸性の水溶液を電解槽8内に供給し、所定時間保持して陰極80上に付着する又は電解槽8内に蓄積する不溶性塩を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、浴水浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
浴槽水を循環ポンプにより循環し、濾過装置などにより浄化する浴水浄化装置が広く用いられている。浴水浄化装置の中には、電解殺菌装置を備え、食塩水を電解し、生成する次亜塩素酸により殺菌を行う構成のものも広く用いられている(文献1、2)。
【0003】
【特許文献1】特許第3559345号公報
【特許文献2】特開2005−7272号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
浴水には通常水道水が用いられるが、地域によっては水道水中の硬度成分が多く、この硬度成分が電解槽による運転で陰極上に付着して、電解性能を低下させる問題があった。
この問題を解決するために、従来は次の方法を選択して行っていた。
(1)陽極、陰極の電解の極性反転
一定時間毎に、陽極、陰極の極性反転を行って陰極上に付着する硬度成分を落とす方法である。これにより、陰極上に付着する硬度成分を落とすことができるが、使用する地域の硬度成分が異なるため、例えば硬水地域の場合は頻繁に、軟水地域では比較的少ない間隔で、除去しなければならない。即ち一定間隔とすることが困難であり、また電極の極性反転は電極の寿命を縮めることになり、好ましくない問題があった。
(2)イオン交換樹脂による軟水化処理
イオン交換樹脂を使って、水中の硬度成分を取り除き、食塩水の電気分解を行えば、陰極上に付着する硬度成分をなくすことができるが、浴槽に新たな水を入れる毎に軟水器を使用しなければならない問題がある。
本発明は上記従来技術の問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は電解殺菌装置を備えた浴水浄化装置において、前記電解殺菌装置が、電解糟と該電解糟に備えられた陽極と陰極とを備え、前記電解糟に有機酸の酸性水を供給する手段を設け、前記酸性水により陰極に付着した不溶性成分を除去する、ことを特徴とする。
前記酸性水を供給する手段は、前記電解殺菌装置による電解運転毎に酸性水を供給する、ことが可能である。
また該有機酸の酸性水の濃度はpH:1〜5に調整することが望ましく、これにより陰極板に付着する不溶性硬度成分を溶解させ、電解槽内に不溶性硬度成分を蓄積させないようにすることが可能である。また、電解糟において行う電解に対応するために、該有機酸成分と電解により発生する塩素イオンが反応して塩素ガスを発生しない程度の濃度とすることが望ましく、電解時の酸性水濃度はpH:3〜5とするのが更に望ましい。
また有機酸の種類は特に限定しないが、浴水に誤混入した場合を考慮すると、クエン酸等の食用酸が好ましい。
前記有機酸の酸性水を供給する手段は、該酸性水のみを単独で供給する装置であっても良いし、或いは電解のための塩化ナトリウムと前記酸性水とを供給する装置であっても良い。電解殺菌装置の場合、通常は塩化ナトリウムを供給する装置が付帯しているため、該装置を利用して塩化ナトリウムと前記酸性水とを供給する構成とすることも可能である。更に、電解に供する食塩(Nacl)に有機酸を少量添加した水溶性混合材とすることで、混合材の溶解により一定濃度の有機酸の酸性水状態として供給するものであってもよい。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、硬水地域でも電解槽のメンテナンスを必要としない電解殺菌装置を内蔵する浴水浄化装置を提供できる効果がある。特に、硬水地域、軟水地域に係わらず、陰極上に付着或いは電解槽内に蓄積する水道水中の硬度成分の不溶性塩を確実に除去できる。そのための軟水化装置の追加を必要とせず、また電極の極性反転による電極の短寿命化などの問題がなく、機器の性能を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1において、浴槽1の浴水は、循環ポンプ2により浴槽1の水中に一端が配置された給水管3、分水管4,濾過装置18、保温装置19を経由して出水管10から再び浴槽1に戻り、上記循環経路Jを循環しつつ、浄化されるようになっている。
保温装置19と浴槽1との間にはアスピレータ11が設けられ、ここに電解槽8から次亜塩素酸が供給され、浴水の塩素殺菌が行われるようになっている。
【0008】
循環経路Jの途中には分水管4が設けられ、配管Hにより水を取り込むために使用される第1の切り替え弁5の第1のポート5aに接続されている。切り替え弁5の第2のポート5bと食塩供給装置6の取り込み口6aが配管Hにより接続されている。食塩供給装置6内には、食塩保持容器16を底部から所定の高さに位置を維持するために、4本の足部を備えた台座6bが設けられている。底部から所定の高さに位置を維持するのは溶解した、高濃度食塩水が下方に沈殿することで、確実に高濃度食塩水が取り出せること、沈殿流れが助長されること、高濃度食塩水には新たな食塩の溶解が行われないこと等による。
【0009】
食塩供給装置6の下方には高濃度食塩水を取り出すための取り出し口6cが形成され、第2の切り替え弁7の第1のポート7a及び開閉弁9を介して電解槽8に接続している。なお切り替え弁7のポート7bと切り替え弁5のポート5cとは配管Hで接続されている。
【0010】
電解槽8には陰極80と陽極81が配置され、これらは電極82に接続されている。電解槽8には高濃度食塩水の取水口8cが設けられており、これが前記切り替え弁7の第3のポート7cと開閉弁9を介して配管Hにより接続されている。
【0011】
電解槽8に設けられた送出口8dには配管Hの一端が接続されており、他端はアスピレータ11の絞り部に開閉弁12を介して接続されている。
【0012】
なお13は計時手段としてのタイマであり、14は制御装置14であり、切り替え弁5、切り替え弁7、開閉弁9、開閉弁12等の開閉制御を行っている。
なお、食塩供給装置6の水位を検出するための手段として水位計15が設けられている。
【0013】
食塩供給装置6内の底部から所定の高さに位置を維持して食塩保持容器16が設けられ、この内部に食塩を収納している。好ましくは精製塩であり潮解性に優れた粉末状のものが好ましい。食塩保持容器16には蓄えた食塩が周囲の水に接触して無攪拌で溶解するための多数の開口部が形成され、溶解した高濃度食塩水が外形に沿って下方に沈殿する沈殿流れを形成するようになっている。
【0014】
食塩保持容器16において溶解して生成した食塩水はその重量比により沈殿するのと同時に、溶解していない水が無攪拌で溶解食塩水と入れ代わることで、新たに食塩と接触して、溶解が促進されるように構成されている。なお、食塩水の濃度が高まり、全体に飽和食塩水となった以降は、当然新たな水の供給が行われるまで、食塩は溶解せず、残存して保持されるようになっている。
【0015】
以上の構成において、食塩保持容器16の内部に食塩を収納し、高濃度食塩水の生成が指令されると、切り替え弁5をポート5a,5bが通じる状態に制御し、浴水を食塩供給装置6に取り込む。水位計15により所定の水位を検出すると、切り替え弁5をポート5a,5cが通じる状態に制御する。そしてタイマ13をスタートさせて計時し、一定量溶解必要時間に到達したら、計時信号を制御装置14に出力して、高濃度食塩水の供給を開始する。即ち、切り替え弁7をポート7a,7cが通じる状態とし、開閉弁9を開放状態にし、更に切り替え弁5をポート5a,5bが通じる状態にして、浴水を食塩供給装置6に取り込むことで、高濃度食塩水を電解槽8に供給する。該供給量を時間により制御するためにタイマ13をスタートさせて計時する。
【0016】
高濃度食塩水の供給の必要時間に到達したら、計時信号を制御装置14に出力して、開閉弁9を閉鎖し、切り替え弁7をポート7b,7cが通じる状態に制御し、切り替え弁5をポート5a,5cが通じる状態に制御する。そして開閉弁9を開放状態に制御すると共に、希釈する水の供給量を時間により制御するためにタイマ13をスタートさせて計時する。
【0017】
水の供給の必要時間に到達したら、計時信号を制御装置14に出力して、開閉弁9を閉鎖状態にする。また切り替え弁7はポート7aのみが通じる状態に制御し、切り替え弁5をポート5cのみが通じる状態に制御する。
次に電解時間を制御するためにタイマ13をスタートさせて計時すると共に、電解槽8の電極に通電して食塩水を電気分解して塩素イオンを生成し、所定の電解時間に到達したら、電気分解を停止する。
【0018】
次に、開閉弁12を開放状態にし、電解槽8の大気開放弁17を解放して、アスピレータ11の作用により、電解槽8の電解水を循環路J中に供給する。供給により生成した塩素イオンにより循環路J中の循環水及び浴槽1の貯水を塩素殺菌、消毒することが期待できる。大気開放弁17及びアスピレータ11の作用により電解槽8の電解水は瞬時に循環路J中に放出される。
【0019】
次に開閉弁12を閉鎖状態にすると共に、電解槽8の大気開放弁17を閉鎖状態にする。再度高濃度食塩水を生成する場合は、切り替え弁5をポート5a,5bが通じる状態に制御し、浴水を食塩供給装置6に取り込む。この繰り返しにより、食塩保持容器16の内部保持された食塩が消費つくされるまで、高濃度食塩水を生成することが出来る。
【0020】
以上の構成において、本発明の実施形態では、飽和濃度食塩水(約40℃、約26w/w%)を電解槽(容積約225ml)に約10ml供給し、浴水(約40℃)で一定食塩濃度(0.8〜1.5w/w%)とし、一定条件で電気分解(定電流電解:2Aで約35分電解、電圧7〜9V)し、生成した一定濃度の次亜塩素酸溶液(残留塩素量700〜900mg)を定期的に浴水に供給するようにしている。
【0021】
そして、食塩保持容器16には有機酸を添加した食塩を収納するように構成している。有機酸の量は上記条件において、約260gとしている。なお、有機酸の種類は特に限定しないが、浴水に誤混入した場合を考慮すると、クエン酸等の食用酸が好ましい。
そして前記したように浴水を食塩保持容器16の中に供給することにより、安定して飽和濃度食塩水を作るが、本発明においては有機酸が溶解した弱酸性の水溶液を生成する。
【0022】
そして、該弱酸性の水溶液を電解槽8内に供給し、所定時間保持することにより、該弱酸性の水溶液により陰極80上に付着する又は電解槽8内に蓄積する不溶性塩を確実に除去する。そのため、電解能力の劣化を抑制でき、安定した確実な塩素殺菌を維持できる。
【0023】
所定時間経過したら、陰極80と陽極81に通電して食塩水を電気分解して塩素イオンを生成し、所定の電解時間に到達したら、電気分解を停止する。
そして前記したように、アスピレータ11の作用により、電解槽8の電解水を循環路J中に供給する。供給により生成した塩素イオンにより循環路J中の循環水及び浴槽1の貯水を塩素殺菌、消毒する。
【0024】
図2により動作を説明する。通常の清浄化運転を行い(ステップS1)、タイマ13により電解殺菌を行うべき時間を計時し(ステップS2、3)、電解の時間が到来したら、電解槽8に通水し、また食塩水と有機酸の混合液である弱酸性の水溶液を電解槽8に供給する(ステップS4、5)。タイマ13により供給時間が経過したら(ステップS6、7)、陰極80と陽極81に通電して電解処理を行う(ステップS8)。生成した電解水、次亜塩素酸をアスピレータ11を介して循環路Jに所定時間供給する(ステップS9、10)。そして、運転の終了まで、上記動作を繰り返す(ステップS11)。
【0025】
なお、上記実施形態では食塩保持容器16に有機酸を添加した食塩を収納するように構成しているが、有機酸の水溶液を供給する装置を別に設けることも可能である。
図3の実施形態では、電解槽8に有機酸性水供給装置85を設け、適宜電解槽8に有機酸の水溶液を供給して、陰極80上に付着する不溶性塩や或いは電解槽8内に蓄積する不溶性塩を除去するように構成されている。使用後の弱酸性水溶液は排水弁86と排水管87により排水されるようになっている。
【0026】
図4により動作を説明する。
通常の清浄化運転を行い(ステップS20)、タイマ13により電解殺菌を行うべき時間を計時し(ステップS21、22)、電解の時間が到来したら、電解槽8に通水する(ステップS23)。そして有機酸性水供給装置85から弱酸性水を電解槽8に所定時間通水する(ステップS24、25、26)。所定時間経過したら排水弁86を開けて排水管87から弱酸性水を排出する(ステップS27)。
【0027】
次に再び電解槽8に通水し、食塩供給装置6から食塩水を電解槽8に供給する(ステップS28、29)。タイマ13により供給時間が経過したら、陰極80と陽極81に通電して電解処理を行い(ステップS30)、生成した次亜塩素酸をアスピレータ11を介して循環路Jに所定時間供給する(ステップS31、32)。そして、運転の終了まで、上記動作を繰り返す(ステップS33)。
【0028】
以上説明したように、上記構成によれば、電解槽8の陰極80上に不溶性塩を効果的に除去できるため、電解塩素殺菌の効力を維持でき、浴水浄化能力を維持することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態を示す概略図。
【図2】本発明の一実施形態の動作を示すフローチャート図。
【図3】本発明の他の実施形態を示す概略図。
【図4】本発明の他の実施形態の動作を示すフローチャート図。
【符号の説明】
【0030】
1:浴槽、2:循環ポンプ、3:給水管、4:分水管、5:切換弁、6:食塩供給装置、7:切換弁、8:電解槽、9:開閉弁、10:出水管、11:アスピレータ、12:開閉弁、13:タイマ、14:制御装置、15:水位計、16:食塩保持容器、17:大気開放弁、18:濾過装置、19:保温装置、80:陰極、81:陽極、82:電極、85:有機酸性水供給装置、86:排水弁、87:排水管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解殺菌装置を備えた浴水浄化装置において、
前記電解殺菌装置が、電解糟と該電解糟に備えられた陽極と陰極とを備え、
前記電解糟に有機酸の酸性水を供給する手段を設け、
前記酸性水により陰極に付着した不溶性成分を除去する、
ことを特徴とする浴水浄化装置。
【請求項2】
前記供給する手段が、塩化ナトリウムと前記酸性水とを前記電解糟に供給する、
請求項1の浴水浄化装置。
【請求項3】
前記供給する手段が、前記電解殺菌装置による電解運転毎に酸性水を供給する、
請求項1又は2の浴水浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−29876(P2007−29876A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−218194(P2005−218194)
【出願日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(000002244)蛇の目ミシン工業株式会社 (79)
【Fターム(参考)】