説明

海上浮遊体用長尺体及びその布設方法

【課題】 海中でダメージを受けた長尺体を速やかに交換することのできる海上浮遊体用長尺体の布設方法を提供する。
【解決手段】 プラットホーム10側に接続された海底ケーブル4Aと、海上設備20側に接続された海底ケーブル4Bとは、海中ブイ6上に装着された接続部28によって接続されている。海底ケーブル4Bがダメージを受けた場合、接続部28を海中ブイ6から取り外して海上または海面近傍に移動し、この場所で海底ケーブル4Bの交換を実施し、交換完了後に接続部28を海中ブイ6に再取り付けする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海上浮遊体と海底ケーブル等の長尺体との間を接続し布設することができる海上浮遊体用長尺体及びその布設方法に関し、特に、海中でダメージを受けた長尺体を速やかに交換することのできる海上浮遊体用長尺体及びその布設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、沖合の海上に浮かぶ浮上プラント、発電所、原油貯蔵所、ドック等の海上設備に電力、水などを供給したり、通信を行うために、陸地から海上設備に向けて海底ケーブル(電力ケーブル、通信ケーブル、光複合電力ケーブル)、給水管、油送管等の長尺体が海底に布設されている。
【0003】
このような長尺体は、海上設備に至る途中で海底から海中にブイで浮遊させ、ブイの両側でカテナリをもたせている。これは、海上設備が波・風・潮流等の影響を受けて上下左右に動いても長尺体に異常な張力が加わらないような布設方法を採用している。
【0004】
図2は、従来の海上浮遊体用長尺体を用いた海上設備の構成を示す。海上設備30は、陸地寄りの海底2に立設され、最上部が海面3から露出しているプラットホーム10と、沖合に設置された海上浮遊体20と、プラットホーム10と海上浮遊体20の間に布設される2本の海底ケーブル14A,14Bと、その海底ケーブル14A,14B同士を海底2で接続する接続部5と、海底ケーブル14Bの途中に介在してこの部分の海底ケーブル14Bを海中に浮遊させる海中ブイ6と、上端が海中ブイ6に係着された一対のブイ係留ロープ7A,7Bと、ブイ係留ロープ7A,7Bの下端を海底2に固定する一対のアンカー8A,8Bと、海中ブイ6の両側面に取り付けられて内部に海底ケーブル14Bが挿通される一対のケーブル屈曲制限装置9A,9Bとを備える。
【0005】
プラットホーム10には、電源供給設備11が最上部に設置されており、この電源供給設備11から海底2に至る部分には、プラットホーム10に沿って漂流物等から海底ケーブル14Aを保護するための円管状の保護部材12が設置され、この保護部材12に海底ケーブル14Aが挿通されている。
【0006】
海中ブイ6は、例えば球状を成し、海底ケーブル14Bを浮遊させることのできる構造を有し、両側面にはケーブル屈曲制限装置9A,9Bが取り付けられ、このケーブル屈曲制限装置9A,9Bに海底ケーブル14Bが挿通される。
【0007】
海上浮遊体20は、水平方向の揺動を可能にする節部21aを有するとともに海底2に立設された支柱21と、支柱21の上部に取り付けられた浮動部22と、浮動部22内に設置された受電設備23と、浮動部22の近傍の海上に浮上する浮遊構造体24と、浮遊構造体24を浮動可能に支柱21に固定する連結部材25と、浮遊構造体24上に設置された電気機器26と、電気機器26を受電設備23に接続する電力ケーブル27と、浮動部22の下面に取り付けられて海底ケーブル14Bの端部の屈曲を制限するケーブル屈曲制限装置9Cとを備える。
【0008】
次に、海底ケーブルに採用する電力ケーブル14A,14Bを現地の海上で接続する方法について説明する。
図2において、海中ブイ6には、予めブイ係留ロープ7A,7Bが接続されている。まず、作業者によって、海底ケーブル14Aの一端が電源供給設備11に接続され、海底ケーブル14Aの他端が保護部材12を通して海底2へ引き出される。一方、作業者は、海底ケーブル14Bの一端を受電設備23に接続し、その他端を海面3上に浮上させた海中ブイ6のケーブル屈曲制限装置9A,9Bに通し、海中ブイ6を海底ケーブル14Bの中間部にセットする。次に、ダイバーにより、ケーブル14Bの他端と海底ケーブル14Aの他端を接続部5で接続し、接続部5を海底2に布設する。また、電力ケーブル27による受電設備23と電気機器26との間の接続が、作業者によって行われる。なお、海底ケーブル14A,14Bを接続してから海中ブイ6に取り付ける順序であってもよい。
【0009】
海底ケーブル14Bに海中ブイ6を取り付けた後、海中ブイ6の直下の海底2にアンカー8A,8Bを設置し、ついで海中ブイ6を海中の所定位置まで沈め、ブイ係留ロープ7A,7Bをアンカー8A,8Bに係着し、海中ブイ6を固定する。
【0010】
また、海中の長尺体の立ち上げ部分に中間ブイを設置し、この状態で、中間ブイを長尺体と共に海中に沈めるようにし、長尺体に対する中間ブイの取り付けを作業のしやすい海面上、作業船上、陸上等で先行して行えるようにし、布設の作業性を向上させた長尺体の布設方法が知られている。この時、長尺体と接続部は海底に布設される(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平2−214404号公報(第5−8頁、図1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、従来の海上浮遊体用長尺体の布設方法によると、海上浮遊体20に電力及び信号などを供給するケーブルは、浮動部22が波、風、潮流等によって上下左右に動くため、その影響を小さくできるようカテナリ形状をもたせた布設を行っても、特に、海中ブイ6と浮動部22の間の海底ケーブル14Bには大きな歪みを受ける。海底ケーブル14Bが海中ブイ6と浮動部22の間でダメージを受けた場合、海底ケーブル14Aとの接続部5から海底ケーブル14B全長を交換する必要がある。この場合、水深が深いと、海底ケーブル14Bの引き上げに多大な時間と経費が必要になる。特許文献1の方法においても同様、布設後の海底ケーブルの交換は、容易ではない。また、ケーブルに大きな歪や張力がかかる海中ブイ6と浮動部22との間の部分にはケーブル同士の接続部を設けることが出来なかった。
【0012】
従って、本発明の目的は、海上浮遊体と海中ブイの間でダメージを受けた長尺体を速やかに交換することのできる海上浮遊体用長尺体及びその布設方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記目的を達成するため、陸地側から布設された長尺体と、海上に浮遊する海上設備から布設された長尺体とを、海中に設置された中継部材に設けた接続部を介して着脱自在に取り付けたことを特徴とする海上浮遊体用長尺体を提供する。
また、本発明は、海底ケーブル等の長尺体を海中に設置された中継部材を介して陸地側から海上に浮遊する海上設備まで布設する海上浮遊体用長尺体の布設方法において、前記中継部材に接続部を設置するとともに、前記長尺体を複数の長尺体から形成し、その長尺体同士を前記接続部で着脱自在に接続することを特徴とする海上浮遊体用長尺体の布設方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の海上浮遊体用長尺体及びその布設方法によれば、海中でダメージを受けた長尺体を速やかに交換することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図示にて説明する。
(海上設備の構成)
図1は、本発明の実施の形態に係る海上設備を示す。この海上設備1は、図2と同様の構成であり、鉄塔等を用いて陸地寄りの海底2に立設され、最上部が海面3から露出しているプラットホーム10と、沖合に設置された箱船形の海上浮遊体20と、プラットホーム10と海上浮遊体20の間に接続部28を介して連結した状態で布設された長尺体としての2本の海底ケーブル4A,4Bと、この海底ケーブル4A,4Bと接続部28の近傍部分を海中に浮遊させる中継部材としての海中ブイ6と、海中ブイ6に上端が係着された一対のブイ係留ロープ7A,7Bと、ブイ係留ロープ7A,7Bの下端を海底2に固定する一対のアンカー8A,8Bと、海中ブイ6の両側面に取り付けられて内部に海底ケーブル4A,4Bが挿通される一対のケーブル屈曲制限装置9A,9Bとを備える。更に、中継部材である海中ブイ6の上部には着脱自在に接続部28が設けられる。
【0016】
なお、海底ケーブル4A,4Bにより1本分の海底ケーブルを形成しているが、同様の構成による海底ケーブルの複数本を並行に布設することもできる。この場合、ケーブル重量等に応じて1または複数の海中ブイ6を用い、或いは海底ケーブル毎に海中ブイ6を取り付ける。
【0017】
プラットホーム10は、図2と同様の構成であり、自家発電設備、変圧器及び遮断機を含む変電設備等の電源供給設備11が最上部に設置されており、この電源供給設備11から海底2に至る部分には、プラットホーム10に沿って漂流物等から海底ケーブル4Aを保護するための円管状の保護部材12が設置され、この保護部材12には、ケーブル4Aが挿通される。
なお、プラットホーム10は、海上に設置された例を示しているが、一般的な陸上まで海底ケーブル4Aを布設する方法にも適用できる。
【0018】
中継部材の海中ブイ6は球状を成し、海水に対して浮力を有する素材又は構造を有し、両側面にはケーブル屈曲制限装置9A,9Bが取り付けられており、海中に浮遊させる。ケーブル屈曲制限装置9A,9Bは、海底ケーブル4A,4Bを海中から立ち上げて、海中ブイ6上の接続部28と接続する場合に各海底ケーブル4A,4Bの1点にのみ曲げが集中しないように設けられその形状はホーン状を成しており、内部に海底ケーブル4A,4Bが挿通される。海底ケーブル4A,4Bをケーブル屈曲制限装置9A,9Bに挿通させることにより、海底ケーブル4A,4Bの接続部28は海中ブイ6に固定される。
【0019】
接続部28は、海水による腐食等を防止できる構造および海中ブイ6から分離できる構造、例えばボルト、ナットで取り付け固定するなどの締結手段を有し、プラットホーム10側と海上浮遊体20側に分かれた2本の海底ケーブル4A,4Bを接続ならびに連結する。なお、接続部28は、海中ブイ6の上部に設けたが、海中ブイ6の下部または海中ブイ6の内部に設けてもよい。
【0020】
ブイ係留ロープ7A,7Bは、塩害に強く十分な強度を有するナイロンロープ等を用いる。また、アンカー8A,8Bは、杭状の構造体や船の錨等であり、潮流によって海中ブイ6が流されない長さ又は重さを有している。
【0021】
海上浮遊体20は、図2と同様の構成であり、海底2に立設された鉄柱等による支柱21と、水平方向の揺動を可能にする節部21aを有するとともに海底2に立設された支柱21と、支柱21の上部に取り付けられた浮動部22と、浮動部22内に設置された受電設備23と、浮動部22の近傍の海上に浮上する浮遊構造体24と、浮遊構造体24を揺動可能に支柱21に固定する連結部材25と、浮遊構造体24上に設置されたモータ、ポンプ等の電気機器26と、電気機器26を受電設備23に接続する電力ケーブル27と、浮動部22の下面に取り付けられて海底ケーブル4Bの屈曲を制限するホーン状のケーブル屈曲制限装置9Cとを備える。
【0022】
(海底ケーブルの布設方法)
次に、海底ケーブル4A,4Bの布設方法について説明する。プラットホーム10と海上浮遊体20を建設後、電源供給設備11がプラットホーム10に設置され、受電設備23が浮動部22に設置され、さらに、電気機器26が浮遊構造体24に設置される。さらに、受電設備23と電気機器26を電力ケーブル27で接続する。なお、電力ケーブル27の接続は、海底ケーブル4A,4Bの布設後に行ってもよい。
【0023】
まず、作業者は、海底ケーブル4Aの一端を保護部材12に挿通して海底へ引き出すとともに、他端を電源供給設備11に接続する。また、海中ブイ6を作業現場に浮上させ、海底から引き上げた海底ケーブル4Aの一端をケーブル屈曲制限装置9Aを通した後、この一端をケーブル屈曲制限装置9Aから抜け落ちないように治具、ロープ等で海中ブイ6に仮固定する。
【0024】
また、作業者は、海底ケーブル4Bの一端を下側からケーブル屈曲制限装置9Cに通して受電設備23に接続し、他端をケーブル屈曲制限装置9Bに下側から挿通して接続部28の一端に接続し、仮固定してあった海底ケーブル4Bの一端を接続部28の他端に接続する。海底ケーブル4A、4B同士の接続後、接続部28をボルト、ナットにより海中ブイ6の上部に取り付け固定して締結する。
【0025】
次に、海中ブイ6を所定の位置に移動させ、海中の所定の深さに沈め、アンカー8A,8Bにブイ係留ロープ7A,7Bを係着し、海中ブイ6を位置決めする。以上により、海底ケーブル4A,4Bの布設が終了する。
【0026】
次に、海底ケーブル4Bがダメージを受けた場合の交換について説明する。まず、ダイバーが海中ブイ6まで潜り、海中ブイ6からボルト、ナットを緩めて接続部28を取り外し、海底ケーブル4A,4Bと接続部28を海上または海面近傍まで移動させる。次に、海底ケーブル4Bのみを接続部28、ケーブル屈曲制限装置9B、および受電設備23から取り外す。次に、引き換え用の別の海底ケーブル4Bを用意し、その一端を受電設備23に接続し、他端をケーブル屈曲制限装置9Bに通して接続部28の一方に接続する。次に、ダイバーにより接続部28の他方をボルト、ナットにより海中ブイ6に固定し取り付ける。なお、電力ケーブル4Aについても、海底ケーブル4Bと同様の方法により交換することができる。
また、海中ブイ6と共に接続部28を海上に浮上させることで、海底ケーブル4Bを交換することができる。
【0027】
(実施の形態の効果)
この実施の形態によれば、以下の効果を奏する。
(イ)海上浮遊体と海中ブイの間でダメージを受けたケーブル4Bを速やかに交換することができる。
(ロ)接続部28を海中ブイ6に設けることにより、ダイバーは深く潜る必要がなくなり、潜水作業にかかる負担を軽減することができる。
(ハ)ケーブル4A,4B同士の接続は、海中ブイ6から取り外して海上または海面近傍に移動した接続部28で行えるため、布設が容易になり、工事期間を短縮することができる。
(ニ)接続部28を解体可能な構造にすることで、再接続を容易にすることができる。
【0028】
[他の実施の形態]
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されず、その要旨を変更しない範囲内で種々な変形が可能である。例えば、海中に設置された中継部材としては、海中ブイ6に代えて、海底面に固定状態に設置されるとともに接続部28を装着した架台等の構造物を用いてもよい。この場合、接続部28は、装着したままの構造でも、解体可能な構造であってもよいが、ダイバーによる作業性を考慮した場合、取り外せるようにするのが望ましい。
また、海水に対して浮力を有する素材又は構造を有している中継部材の形状は、球状、楕円状、円柱状などの各種形状であってもよい。
【0029】
また、受電設備23を浮遊構造体24側に設置し、この浮遊構造体24に海底ケーブル4Bの上端を接続する構成にしてもよい。また、この構成において、浮遊構造体24の係留は、支柱21を用いずに大型のアンカー等を用いて行ってもよい。
【0030】
また、長尺体は、海底ケーブルのほか、光ケーブル、通信ケーブル、制御ケーブル、各種の金属ケーブル等のいずれであってもよい。
更に、2つ以上の電力ケーブルの接続については直接現地海上で行う方法もあるが、予め電力ケーブル製造工場にてケーブル同士を接続部で接続し、一体連続とする方法で行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態に係る海上設備を示す設置図である。
【図2】従来の海上浮遊体用長尺体を用いた海上設備の構成を示す設置図である。
【符号の説明】
【0032】
1 海上設備
2 海底
3 海面
4,4A,4B 海底ケーブル
5 接続部
6 海中ブイ
7A,7B ブイ係留ロープ
8A,8B アンカー
9A,9B,9C ケーブル屈曲制限装置
10 プラットホーム
11 電源供給設備
12 保護部材
20 海上浮遊体
21 支柱
21a 節部
22 浮動部
23 受電設備
24 浮遊構造体
25 連結部材
26 電気機器
27 電力ケーブル
28 接続部
30 海上設備

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陸地側から布設された長尺体と、海上に浮遊する海上設備から布設された長尺体とを、海中に設置された中継部材に設けた接続部を介して着脱自在に取り付けたことを特徴とする海上浮遊体用長尺体。
【請求項2】
前記中継部材は、海水に対して浮力を有する素材又は構造を有していることを特徴とする請求項1記載の海上浮遊体用長尺体。
【請求項3】
前記接続部が、前記中継部材の上部に設けられていることを特徴とする請求項1記載の海上浮遊体用長尺体。
【請求項4】
長尺体を、海中に設置された中継部材を介して陸地側から海上に浮遊する海上設備まで布設する海上浮遊体用長尺体の布設方法において、
前記中継部材に接続部を設置するとともに、前記長尺体を複数の長尺体から形成し、その長尺体同士を前記接続部で着脱自在に接続することを特徴とする海上浮遊体用長尺体の布設方法。
【請求項5】
前記長尺体の交換時に、前記接続部を前記中継部材から取り外して海上または海面近傍に移動し長尺体と接続することを特徴とする請求項4記載の海上浮遊体用長尺体の布設方法。

【図1】
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【図2】
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