説明

海水及び硬水対応の磁気式流体処理装置、及び磁気式流体処理方法

【課題】海水や硬水を磁気処理する際に付着物を抑制することが可能な海水及び硬水対応の磁気式流体処理装置を提供する。
【解決手段】磁石12を内蔵する円柱面状部材10と円柱面状部材10の外周面10aに対して外周端部20aが突出する磁性体プレート20とを交互に積層し、円柱状積層体110の長手方向両端側に円錐状カバー30を設けた円柱状積層体110を備え、磁性体プレート20が所定間隔をおいて隣接するように支持プレート40を用いて互いに平行に複数の円柱状積層体110を固定すると共に、配管120内にて一方の円錐状カバー30の先端部30a側が流体の上流側へ向きつつ円柱状積層体110の長手方向が流体の流れに沿うように円柱状積層体110を配置し、流体通路20bを通過する流体に対して磁気処理を行う海水及び硬水対応の磁気式流体処理装置100として構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の通路に設置し流体に対して磁気処理を行う磁気式流体処理装置及び方法に関し、特に海水及び硬水に対応させる技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
磁力の作用により水を活性化する方法やこの方法を利用する装置がよく知られている。例えば、特許文献1には、図9に示すように磁性を有する金属板2を挟んで磁石3の同極同士が相対するように配置した多数個の磁石3と金属板2を直立方向に積層した積層柱を、横方向に隣接する磁石3,3同士が異極となるように複数個並立させ、横方向に隣接する金属板2,2の切り口同士が一定間隔を有するように固定して図示しない筒状ケーシング内に収納し、水を当該筒状ケーシングの前後方向に流すことで、互いに異極となる隣接する金属板2,2の切り口間に生ずる磁束を通過させて水の磁気処理を行う磁気式水処理装置1が開示されている。
また、上述した磁気式水処理装置1において、磁石3の損傷を防止するなどの為に、図10に示すように磁石3を円柱面状部材4に収納することが考えられる。
【特許文献1】特許第2909891号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、磁気式流体処理装置は、例えば水道水・工業用水・空調管の冷温水や冷却水、温泉、地下水、発電所の蒸気を復水させるコンデンサの冷却材或いは天然ガスを気化させる冷媒としての海水などの広範囲の流体を処理対象とすることが可能である。
しかしながら、流体の種類によっては種々の弊害が発生する可能性があった。例えば、海水を処理する場合には、円柱面状部材4における海水が流れる方向の上流側に海水に含まれる不純物が付着して溜まる可能性があった。また、硬水を処理する場合には、円柱面状部材4における硬水が流れる方向の上流側に高濃度のスケール(カルシウムやマグネシウムなどの堆積物)が付着する可能性があった。そうすると、所望する通水面積を確保し難くなり、流体の圧力損失が大きくなって流体の流れが悪くなる可能性がある。特に、工業系では元々の流速が早い場合が多く、流体の圧力損失への影響度が大きくなると考えられる。
このように、海水や硬水を磁気処理する場合に、付着物を抑制する対策は未だ提案されておらず、海水及び硬水に対応した磁気処理が望まれる。
【0004】
本発明は上記課題に鑑みて為されたもので、その目的とするところは、海水や硬水を磁気処理する際に付着物を抑制することが可能な海水及び硬水対応の磁気式流体処理装置及び磁気式流体処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための請求項1に記載の発明は、磁石を内蔵する円柱面状部材と該円柱面状部材の外周面に対して外周端部が突出する磁性体プレートとを交互に積層し、長手方向一端側に円錐状カバーを設けた円柱状積層体を備え、前記磁性体プレートが所定間隔をおいて隣接するように支持プレートを用いて互いに平行に複数の前記円柱状積層体を固定すると共に、流体の通路内にて前記円錐状カバーの先端部側が該流体の上流側へ向きつつ長手方向が該流体の流れに沿うように前記固定した円柱状積層体を配置し、前記磁性体プレート間を通過する前記流体に対して磁気処理を行う海水及び硬水対応の磁気式流体処理装置として構成してある。
【0006】
上記のように構成された本発明の海水及び硬水対応の磁気式流体処理装置において、流体が円柱状積層体の間を流れる際に流体の流れる方向の上流側が円錐状カバーの傾斜面となり、通水面積が上流側から円柱面状部材側へ向けて円錐状カバーにより徐々に狭くさせられて流体が滑らかに流れる。
【0007】
また、好適には、前記長手方向他端側にも前記円錐状カバーが設けられている構成としても良い。このように構成されることで、流体が円柱状積層体の間を流れる際に流体の流れる方向の下流側が円錐状カバーの傾斜面となり、通水面積が円柱面状部材側から下流側へ向けて長手方向他端側に設けられた円錐状カバーにより徐々に広くさせられて流体が滑らかに流れる。
【0008】
また、好適には、前記円柱面状部材、磁性体プレート、円錐状カバー、及び支持プレートは、海水に対する耐食性を有する金属である構成としても良い。
例えば、ヨークとして機能する磁性体プレートには、SUS405,SUS430等のフェライト系ステンレス鋼やSUS403,SUS420等のマルテンサイト系ステンレス鋼などの強磁性体のステンレス鋼を用いるのが望ましい。
また、円柱面状部材、円錐状カバー、及び支持プレートには、SUS304,SUS316Lなどの非磁性体のオーステナイト系ステンレス鋼を用いるのが望ましい。また、耐食性に優れたチタン,銅,アルミニウムなどを用いることも好ましい。
【0009】
また、好適には、前記磁性体プレートの外周端部は、面取りが施されている構成としても良い。このように構成されることで、円柱面状部材に沿って流れる流体の流れが滑らかになる。また、磁性体プレートの外周端部の先端が鋭くなる。
【0010】
また、好適には、前記円錐状カバーの傾斜は、該円錐状カバーへの付着物の量や前記流体の速度に応じて角度調整される構成としても良い。例えば、流速が早い場合には円錐状カバーの傾斜を急角度とする。尚、円錐状カバーの傾斜を急角度とする程、円柱状積層体の長手方向が長くなるので、設置スペースとのバランスを考慮して適宜角度調整される。
【0011】
また、好適には、前記支持プレートは、前記円錐状カバーの先端部を連結することで前記円柱状積層体を固定する構成としても良い。
【0012】
また、好適には、前記支持プレートは、前記円柱面状部材を連結することで前記円柱状積層体を固定する構成としても良い。
【0013】
また、好適には、前記支持プレートの端部は、面取りが施されている構成としても良い。このように構成されることで、支持プレートを通過する流体の流れが滑らかになる。
【0014】
また、好適には、前記円錐状カバーの内部には、前記磁石は内蔵されない構成としても良い。このように構成されることで、円錐状カバー周辺の磁場が弱くなる。
【0015】
さらに、好適には、上記海水及び硬水対応の磁気式流体処理装置における処理方法として作用する構成としても良い。すなわち、磁石を内蔵する円柱面状部材と該円柱面状部材の外周面に対して外周端部が突出する磁性体プレートとを交互に積層した円柱状積層体の長手方向一端側に円錐状カバーを設け、前記磁性体プレートが所定間隔をおいて隣接するように支持プレートを用いて互いに平行に複数の前記円柱状積層体を固定すると共に、流体の通路内にて前記円錐状カバーの先端部側が該流体の上流側へ向きつつ長手方向が該流体の流れに沿うように前記固定した円柱状積層体を配置し、前記磁性体プレート間を通過する前記流体に対して磁気処理を行う海水及び硬水対応の磁気式流体処理方法として構成しても良い。
このように、請求項1にかかる発明と併記して、かかる海水及び硬水対応の磁気式流体処理方法としての発明を開示している。すなわち、必ずしも実体のある装置に限らず、その方法としても有効であることに相違はない。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、請求項1に記載の発明によれば、流体が円柱状積層体の間を流れる際に流体の流れる方向の上流側が円錐状カバーの傾斜面となり、通水面積が上流側から円柱面状部材側へ向けて円錐状カバーにより徐々に狭くさせられて流体が滑らかに流れるので、海水や硬水を磁気処理する際に付着物(例えば海水に含まれる不純物、スケール)を抑制することが可能な海水及び硬水対応の磁気式流体処理装置を提供することができる。よって、流体を通水する際に圧力損失が増大することを抑制でき、所望の流速が得られる。
【0017】
また、本発明によれば、流体が円柱状積層体の間を流れる際に流体の流れる方向の下流側が円錐状カバーの傾斜面となり、通水面積が円柱面状部材側から下流側へ向けて長手方向他端側に設けられた円錐状カバーにより徐々に広くさせられて流体が滑らかに流れるので、海水や硬水を磁気処理する際に付着物を一層抑制することができる。
【0018】
また、本発明によれば、前記円柱面状部材、磁性体プレート、円錐状カバー、及び支持プレートには、海水に対する耐食性を有する金属が用いられるので、耐久性に優れた磁気式流体処理装置が構成される。
【0019】
また、本発明によれば、前記磁性体プレートの外周端部が面取りされることで前記円柱面状部材に沿って流れる流体の流れが滑らかになるので、海水や硬水を磁気処理する際に磁性体プレートの外周端部への付着物を抑制することができる。よって、流体を通水する際に圧力損失が増大することを一層抑制でき、所望の流速がより得られ易い。また、磁性体プレートの外周端部の先端が鋭くなるので、磁束がより飛びやすくなる。
【0020】
また、本発明によれば、前記円錐状カバーの傾斜が設置スペースとのバランスを考慮しつつ円錐状カバーへの付着物の量や前記流体の速度に応じて角度調整されるので、海水や硬水を磁気処理する際に付着物を一層抑制することができる。
【0021】
また、本発明によれば、前記支持プレートにより前記円錐状カバーの先端部が連結されることで前記円柱状積層体が固定されるので、流体圧に対して円錐状カバーが安定する。特に、流速が早いときには強度上有利となる。
【0022】
また、本発明によれば、前記支持プレートにより前記円柱面状部材が連結されることで前記円柱状積層体が固定されるので、円錐状カバーの形状に拘わらず適切に固定できる。つまり、円錐状カバーの形状(例えば傾斜角度)が調整し易い。
【0023】
また、本発明によれば、前記支持プレートの端部が面取りされることで支持プレートを通過する流体の流れが滑らかになるので、流体を通水する際に圧力損失が増大することを一層抑制でき、所望の流速がより得られ易い。
【0024】
また、本発明によれば、前記円錐状カバーの内部に前記磁石が内蔵されず円錐状カバー周辺の磁場が弱くなるので、円錐状カバーへの付着物を一層抑制することができる。
【0025】
さらに、本発明によれば、上記同様の効果を奏する海水及び硬水対応の磁気式流体処理方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面にもとづいて本発明の実施形態を説明する。
【0027】
(1)海水及び硬水対応の磁気式流体処理装置の説明:
図1は本発明の一実施形態に係る海水及び硬水対応の磁気式流体処理装置100の外観図、図2は磁気式流体処理装置100の部分正面図、図3は円錐状カバー30の斜視図、図4は支持プレート40の平面図、図5は磁石12と磁性体プレート20との位置関係を示す部分斜視図、図6は磁気作用を説明する部分正面図である。
尚、図1において上から下へ向かう矢印Aの方向が流体(例えば海水や硬水)の流れる方向であり、上側が流れの上流側(一次側)、下側が流れの下流側(二次側)である。
【0028】
図1〜図6において、磁気式流体処理装置100は、磁石12を内蔵する円柱面状部材10と円柱面状部材10の外周面10aに対して外周端部20aが突出する磁性体プレート20とを交互に積層し、長手方向両端側に円錐状カバー30を設けた円柱状積層体110を複数個備えている。
複数の円柱状積層体110は、各磁性体プレート20が所定間隔をおいて隣接するように支持プレート40を用いて互いに平行に固定されている。この支持プレート40は、例えば円錐状カバー30の先端部(平面部)30aを連結することで円柱状積層体110を固定する。より具体的には、円錐状カバー30の先端側から突き出た支持軸50のボルト部にて支持プレート40を挟み込む形でナット52により各円柱状積層体110がそれぞれ締め付け固定される。
このように構成された磁気式流体処理装置100は、流体の通路である配管120内にて一方の円錐状カバー30の先端部30a側が流体の上流側へ向きつつ円柱状積層体110の長手方向が流体の流れに沿うように配置される。この配管120は、磁気式流体処理装置100を配置する配管120bにおける通水面積(配管の断面積−装置の断面積)が上流側配管120aや下流側配管120cの通水面積に比較して例えば120%以上となるように配管120bの径が設定されている。
【0029】
円錐状カバー30は、中空の円錐状をしており、先端側には支持プレート40と当接する平面部30aが形成され、底面側には磁性体プレート20と当接する鍔部30bが形成されている。この平面部30aには、支持軸50が貫設される孔部30cが形成されている。
また、円錐状カバー30の傾斜は、この円錐状カバー30への付着物(例えば海水に含まれる不純物、スケール)の量や流体の速度に応じて角度調整される。例えば、付着物が多い場合や流速が早い場合には円錐状カバー30の傾斜を急角度とする。尚、円錐状カバー30の傾斜を急角度とする程、円柱状積層体110の長手方向が長くなることから、付着物への対策等と設置スペースとのバランスを考慮して適宜角度調整するのが望ましい。
【0030】
支持プレート40は、円板状をしており、円柱状積層体110を固定する為に支持軸50が貫設される固定孔部40aが形成され、流体を通す為に通水孔部40bが形成されている。通水孔部40bの面積が広い程、通水面積が広くなる反面、水圧に対する強度が弱くなることから、早い流速にも対応できるように支持プレート40を厚くすることで強度を確保しつつ通水面積を可及的に広くすることが望ましい。
また、支持プレート40の各端部40cは、支持プレート40を通過する流体の流れが滑らかになるように面取りが施されている。
【0031】
1つの円柱状積層体110は、略円柱形状の磁石12の同極側が磁性体プレート20を挟んで互いに相対するように配置した構造を複数積層し、支持構造体としての支持軸50が貫設して構成される。例えば本実施例では、磁性体プレート20の枚数で6段積層してある。尚、円錐状カバー30周辺の磁場を弱くして付着物をより抑制する為に、円錐状カバー30の内部には磁石12は内蔵されない。
本実施例では、磁石12の極性配置が同じ円柱状積層体110を7本、隣接する各円柱状積層体110の各磁性体プレート20の半径辺端部が互いに同一面内で所定間隔を保って並行相対するように配置し、複数の流体通路20bを形成する。そして、配管120b内を流通する流体は、各層の磁性体プレート20の外周端部20a間で形成される流体通路20bを通過して後述する磁気作用を受けることで、流体の磁気処理が行われる。
【0032】
磁性体プレート20は、円板状をしており、円柱面状部材10の外径よりも僅かに大きな外径である。例えば、外周面10aに対して外周端部20aが僅かに突出する程度の外径であり、より多くの磁束を放射することと外周面10aに対する突出を可及的に抑制することとのバランスを考慮して設定されている。
また、円柱面状部材10に沿って流れる流体の流れが滑らかになるように、磁性体プレート20の外周端部20aは、面取りが施されている。これにより、外周端部20aの先端がくなることから、外周端部20aから磁束がより飛びやすくなるという副次的な効果も得られる。
【0033】
円柱面状部材10、磁性体プレート20、円錐状カバー30、及び支持プレート40は、例えば海水に対する耐食性を有する金属である。
より具体的には、ヨークとして機能する磁性体プレート20には、SUS405,SUS430等のフェライト系ステンレス鋼やSUS403,SUS420等のマルテンサイト系ステンレス鋼などの強磁性体のステンレス鋼を用いるのが望ましい。
また、円柱面状部材10、円錐状カバー30、及び支持プレート40には、SUS304,SUS316Lなどの非磁性体のオーステナイト系ステンレス鋼を用いるのが望ましい。また、耐食性に優れたチタン,銅,アルミニウムなどを用いても良い。
【0034】
(2)磁気式流体処理装置による磁気処理:
上記のように構成された磁気式流体処理装置100は、隣接する円柱状積層体110の磁石12が互いに同極となるように配置されているので、各磁石12で挟まれる磁性体プレート20同士も互いに同極となるように隣接し、流体通路20bを形成することになる。よって、流体が流体通路20bを通過する際、例えば、磁性体プレート20の隣接する対がN極である場合には、流体に対し互いに向かい合う逆の2方向に磁束が作用する一方、対がS極である場合には、互いに離間する逆の2方向に磁束が作用することになる。
更に、上下に隣り合う層の磁性体プレート20は互いに異極となるので、流体通路20bを流通する流体は、磁性体プレート20がN極の場合の磁束作用とS極の場合の磁束作用とを交互に受けることになる。よって、流体に対する磁束作用をより大きくすることができ、高い活性化効果を得ることができる。
この磁気処理の効果として、下流側にて、配管120内の付着物を少なくすることができる。例えば、付着スケールの溶解、再付着抑制効果やスライム、ぬめりなどの付着抑制効果を得ることができる。また、同じく下流側にて、菌の餌となる有機物を分解したり、住みかをなくして、菌類や藻類などが繁殖し難い環境を作り出し維持することができる。これに関連してムラサキガイやミドリガイ等の貝類の繁殖を抑制する効果も得ることができる(発育に必要な栄養が減少するためであると考えられる)。
【0035】
また、磁気式流体処理装置100において、流体が円柱状積層体110の間を流れる際に流体の流れる方向の上流側が円錐状カバー30の傾斜面30dとなり、配管120bにおける通水面積が上流側から円柱面状部材10側へ向けて円錐状カバー30により徐々に狭くさせられることから流体が滑らかに流れる。
また、円柱状積層体110の下流側にも円錐状カバー30が設けられているので、流体が円柱状積層体110の間を流れる際に流体の流れる方向の下流側が円錐状カバー30の傾斜面30dとなり、通水面積が円柱面状部材10側から下流側へ向けて円錐状カバー30により徐々に広くさせられることから流体が滑らかに流れる。
また、磁性体プレート20の外周端部20aは面取りが施されているので、円柱面状部材10に沿って流れる流体の流れが滑らかになる。
また、支持プレート40の各端部40cは面取りが施されているので、支持プレート40を通過する流体の流れが滑らかになる。
【0036】
(3)変形例1:
前述の実施例では、磁気式流体処理装置100は、円柱面状部材10と磁性体プレート20とが交互に積層された長手方向両端側に円錐状カバー30が設けられた円柱状積層体110を備えていたが、図7に示すように、円柱面状部材10と磁性体プレート20とが交互に積層された長手方向一端側に円錐状カバー30が設けられた円柱状積層体130と、円柱面状部材10と磁性体プレート20とが交互に積層された円柱状積層体140とを備え、円柱状積層体140の長手方向両端側に各円錐状カバー30が上流側及び下流側に向くように2つの円柱状積層体130をそれぞれ配置する構成としても良い。
このようにすれば、流体の磁気処理量に応じて円柱面状部材10と磁性体プレート20との積層段数を変更する場合に、予め組み立てられた円柱状積層体140の個数を変更するだけで対応することができるので、処理量に合わせて磁気式流体処理装置100全体を毎回組み立てることに比較して、組立工数が低減できる。また、同一の円柱状積層体130と円柱状積層体140とをそれぞれ用意しておくだけでよいので、コスト的にも有利となる。
【0037】
(4)変形例2:
前述の実施例では、支持プレート40は、円錐状カバー30の先端部(平面部)30aを連結することで円柱状積層体110を固定したが、図8に示すように、円柱面状部材10を連結することで円柱状積層体110を固定しても良い。
このようにすれば、円錐状カバー30の形状に拘わらず適切に固定できる。つまり、円錐状カバー30の形状(例えば傾斜角度)が調整し易い。
【0038】
(5)まとめ:
上述のように、本実施例によれば、流体が円柱状積層体110の間を流れる際に流体の流れる方向の上流側が円錐状カバー30の傾斜面30dとなり、通水面積が上流側から円柱面状部材10側へ向けて円錐状カバー30により徐々に狭くさせられて流体が滑らかに流れるので、海水や硬水を磁気処理する際に付着物(例えば海水に含まれる不純物、スケール)を抑制することが可能な海水及び硬水対応の磁気式流体処理装置100を提供することができる。よって、流体を通水する際に圧力損失が増大することを抑制でき、所望の流速が得られる。
【0039】
また、本実施例によれば、流体が円柱状積層体110の間を流れる際に流体の流れる方向の下流側が円錐状カバー30の傾斜面30dとなり、通水面積が円柱面状部材10側から下流側へ向けて円錐状カバー30により徐々に広くさせられて流体が滑らかに流れるので、海水や硬水を磁気処理する際に付着物を一層抑制することができる。
【0040】
また、本実施例によれば、円柱面状部材10、磁性体プレート20、円錐状カバー30、及び支持プレート40には、海水に対する耐食性を有する金属が用いられるので、耐久性に優れた磁気式流体処理装置100が構成される。
【0041】
また、本実施例によれば、磁性体プレート20の外周端部20aが面取りされることで円柱面状部材10に沿って流れる流体の流れが滑らかになるので、海水や硬水を磁気処理する際に磁性体プレート20の外周端部20aへの付着物を抑制することができる。よって、流体を通水する際に圧力損失が増大することを一層抑制でき、所望の流速がより得られ易い。また、磁性体プレート20の外周端部20aの先端が鋭くなるので、磁束がより飛びやすくなる。
【0042】
また、本実施例によれば、円錐状カバー30の傾斜が設置スペースとのバランスを考慮しつつ円錐状カバー30への付着物の量や流体の速度に応じて角度調整されるので、海水や硬水を磁気処理する際に付着物を一層抑制することができる。
【0043】
また、本実施例によれば、支持プレート40により円錐状カバー30の先端部30aが連結されることで円柱状積層体110が固定されるので、流体圧に対して円錐状カバー30が安定する。特に、流速が早いときには強度上有利となる。
【0044】
また、本実施例によれば、支持プレート40の端部40cが面取りされることで支持プレート40を通過する流体の流れが滑らかになるので、流体を通水する際に圧力損失が増大することを一層抑制でき、所望の流速がより得られ易い。
【0045】
また、本実施例によれば、円錐状カバー30の内部に磁石12が内蔵されず円錐状カバー30周辺の磁場が弱くなるので、円錐状カバー30への付着物を一層抑制することができる。
【0046】
さらに、好適には、海水及び硬水対応の磁気式流体処理装置100における処理方法として作用する構成としても良い。すなわち、磁石12を内蔵する円柱面状部材10と円柱面状部材10の外周面10aに対して外周端部20aが突出する磁性体プレート20とを交互に積層した円柱状積層体110の長手方向両端側に円錐状カバー30を設け、磁性体プレート20が所定間隔をおいて隣接するように支持プレート40を用いて互いに平行に複数の円柱状積層体110を固定すると共に、配管120内にて一方の円錐状カバー30の先端部30a側が流体の上流側へ向きつつ円柱状積層体110の長手方向が流体の流れに沿うように円柱状積層体110を配置し、流体通路20bを通過する流体に対して磁気処理を行う海水及び硬水対応の磁気式流体処理方法として構成しても良い。
このように、必ずしも実体のある装置に限らず、その方法としても有効であることに相違はなく、上記同様の効果を奏する海水及び硬水対応の磁気式流体処理方法を提供することができる。
【0047】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0048】
例えば、前述の実施例では、流体通路20bを通過する流体に対して互いに逆の2方向の磁束を作用させたが、隣接する磁性体プレート20を異極同士とし、N極からS極への一方向の磁束を作用させても良い。
【0049】
また、円柱状積層体110は、円柱面状部材10と磁性体プレート20とが交互に積層された少なくとも長手方向一端側に円錐状カバー30が設けられておれば良い。このようにしても一定の効果は得られる。
【0050】
また、円柱状積層体110において、磁石12の同極側が磁性体プレート20を挟んで互いに相対するように配置した構造の積層数は設置が可能であれば限定はされない。例えば一層のみであっても良いし、100層以上の多層であっても良い。但し、層数が多いほど磁気作用自体は高くなるが大型化するので、流量、要求される流体品質、コスト、設置スペース等の諸条件を考慮し、最適な層数を適宜設定することが望ましい。
【0051】
また、円柱状積層体110の設置本数は限定されない。最小構成の2本のみであっても良いし、3本以上設けても良い。但し、本数が多いほど磁気作用自体は高くなるが大型化したり流通抵抗が増大するので、流量、要求される流体品質、コスト、設置スペース等の諸条件を考慮し、最適な本数を適宜設定することが望ましい。
【0052】
また、円柱状積層体110の配置レイアウトは、本実施例のような軸方向投射位置が円芯に一つ、その円周上に他を各々配置するものに限定はされず、隣接する磁性体プレート20間で磁気作用を奏し得る流体通路20bが形成できれば、他のあらゆる配置レイアウトが適用可能である。例えば、軸方向投射位置が円周上に各々配置するようなレイアウトにしても良い。この他、軸方向投射位置が方形、ひし形、三角形、楕円、渦巻き状等、多種の配置レイアウトが可能である。
【0053】
また、磁石12の形状は、本実施例の円柱状には限定されず、柱状に積層可能な他のあらゆる形状が適用可能である。
【0054】
また、前述の実施例では、各層の磁石12、磁性体プレート20は全て同じ厚さ、形状にしているが、これに限定されず、各層毎に異なる厚さ、形状を採用してもよい。例えば、厚さについては、両端近くの層を薄く、中央部分の厚さを厚くしたり、或いは流体上流側の層を薄く、下流側の層を厚くしたり等、流体に対する磁束作用を層位置によって変化させることが可能である。
【0055】
また、前述の実施例では、磁石12と磁性体プレート20とを交互に積層しているが、これに限定はされず、複数層の磁石12毎に磁性体プレート20を積層するようにしても良い。又、このような磁石12と磁性体プレート20との積層配分は全て同じにする必要は無く、円柱状積層体110において部分的に変えても良い。
また、磁石12と磁性体プレート20との積層固定構造は、本実施例に限定はされない。中間固定板を用いても良いし、支持軸50以外の固定方法を採用しても良い。例えば、磁石12上下面に凹凸等で構成した係止機構を設け、単に積層するのみで脱着可能に容易に固定するような構造が挙げられる。
【0056】
また、藻の発生対策に用いられる銅イオン発生装置や、殺菌対策に用いられる銀イオン発生装置を併用しても良い。これに関連して、円錐状カバー30等の素材に銅を用いることでも、銅イオン発生装置を設けた際に得られる一定の効果は得られる。
【0057】
また、本発明は、上述した実施例や変形例に限られず、上述した実施例及び変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、公知技術並びに上述した実施例及び変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、等も含まれる。
【0058】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一実施形態に係る海水及び硬水対応の磁気式流体処理装置の一例を示す外観図である。
【図2】磁気式流体処理装置の一例を正面から見て示す部分正面図である。
【図3】円錐状カバーの一例を示す斜視図である。
【図4】支持プレートの一例を示す平面図である。
【図5】磁石と磁性体プレートとの位置関係を例示する部分斜視図である。
【図6】磁気作用を説明する部分正面図である。
【図7】磁気式流体処理装置の変形例を示す部分正面図である。
【図8】支持プレートを用いて円柱状積層体を固定する際の変形例を示す外観図である。
【図9】従来の磁気式流体処理装置の一例を示す外観図である。
【図10】従来の磁気式流体処理装置の部分正面図である。
【符号の説明】
【0060】
10:円柱面状部材
10a:外周面
12:磁石
20:磁性体プレート
20a:外周端部
30:円錐状カバー
30a:先端部
40:支持プレート
100:海水及び硬水対応の磁気式流体処理装置
110、130、140:円柱状積層体
120:配管(流体の通路)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁石を内蔵する円柱面状部材と該円柱面状部材の外周面に対して外周端部が突出する磁性体プレートとを交互に積層し、長手方向一端側に円錐状カバーを設けた円柱状積層体を備え、
前記磁性体プレートが所定間隔をおいて隣接するように支持プレートを用いて互いに平行に複数の前記円柱状積層体を固定すると共に、流体の通路内にて前記円錐状カバーの先端部側が該流体の上流側へ向きつつ長手方向が該流体の流れに沿うように前記固定した円柱状積層体を配置し、前記磁性体プレート間を通過する前記流体に対して磁気処理を行うことを特徴とする海水及び硬水対応の磁気式流体処理装置。
【請求項2】
前記長手方向他端側にも前記円錐状カバーが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の海水及び硬水対応の磁気式流体処理装置。
【請求項3】
前記円柱面状部材、磁性体プレート、円錐状カバー、及び支持プレートは、海水に対する耐食性を有する金属であることを特徴とする請求項1または2に記載の海水及び硬水対応の磁気式流体処理装置。
【請求項4】
前記磁性体プレートの外周端部は、面取りが施されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の海水及び硬水対応の磁気式流体処理装置。
【請求項5】
前記円錐状カバーの傾斜は、該円錐状カバーへの付着物の量や前記流体の速度に応じて角度調整されることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の海水及び硬水対応の磁気式流体処理装置。
【請求項6】
前記支持プレートは、前記円錐状カバーの先端部を連結することで前記円柱状積層体を固定することを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の海水及び硬水対応の磁気式流体処理装置。
【請求項7】
前記支持プレートは、前記円柱面状部材を連結することで前記円柱状積層体を固定することを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の海水及び硬水対応の磁気式流体処理装置。
【請求項8】
前記支持プレートの端部は、面取りが施されていることを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載の海水及び硬水対応の磁気式流体処理装置。
【請求項9】
前記円錐状カバーの内部には、前記磁石は内蔵されないことを特徴とする請求項1乃至8の何れかに記載の海水及び硬水対応の磁気式流体処理装置。
【請求項10】
磁石を内蔵する円柱面状部材と該円柱面状部材の外周面に対して外周端部が突出する磁性体プレートとを交互に積層した円柱状積層体の長手方向一端側に円錐状カバーを設け、
前記磁性体プレートが所定間隔をおいて隣接するように支持プレートを用いて互いに平行に複数の前記円柱状積層体を固定すると共に、流体の通路内にて前記円錐状カバーの先端部側が該流体の上流側へ向きつつ長手方向が該流体の流れに沿うように前記固定した円柱状積層体を配置し、前記磁性体プレート間を通過する前記流体に対して磁気処理を行うことを特徴とする海水及び硬水対応の磁気式流体処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−172537(P2009−172537A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−15434(P2008−15434)
【出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【出願人】(502455267)
【出願人】(506345144)株式会社エコ・レイド (2)
【Fターム(参考)】