説明

海水電解装置

【課題】コスト増、大型化を招くヒータやファン等の結露防止対策を講じることなく、既存の装置構造に簡単な改良を加えることによって、金属ケース内部の結露状態、海水リーク状態を目視によって確認、判別することを可能とする一方で、金属ケース内底部に結露による水溜まりが発生している場合には、装置を分解することなく簡単な操作による排水することができる海水電解装置を提供する。
【解決手段】海水を通水する管体2と、管体内の海水に対して電源からの直流電流を通電させて電気分解するための陰極10及び陽極11と、管体及び陰極及び陽極を包囲する金属ケース20と、金属ケースの内部に配置されて管体から漏水して金属ケース内部に溜まる液量を検知する漏水検知器30と、を備えた海水電解装置であって、金属ケース適所に管体、及び金属ケース内底部を目視するための窓25を設け、金属ケース底部に排水口26を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は臨海地域にある発電所、工場等に設置されて海水から次亜塩素酸ナトリウム水溶液を生成するための海水電解装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
臨海地域にある各種発電所、工場等においては、発電機や原動機等の駆動軸部等を冷却するための軸冷水を冷却するために海水が利用される。例えば、発電所では発電機の駆動軸部を冷却するために使用した軸冷水(純水)を海から導入した海水により冷却してから再度軸部に供給している。
ところで、海から海水を導入する海水用管体内には経時的に貝類が堆積して通水を阻害する要因となるため、別途設けた海水電解装置によって生成した次亜塩素酸ナトリウム水溶液を海水用管体内に適量ずつ供給して貝類の付着を防止している。
【0003】
図3は従来の海水電解装置の構成を示す斜視図であり、保護カバーを取り外した内部構成を示している。この海水電解装置100は、S字状に配管された海水を通水する管体101と、管体101の一端に海水を導入する海水導入部110と、管体内の海水に対して電源からの直流電流を通電させて電気分解するための陰極102及び陽極103と、管体101内に生成された次亜塩素酸ナトリウム水溶液を排出する排出部111と、管体及び陰極及び陽極を包囲する金属ケース105と、金属ケースの内部に配置されて管体に形成された亀裂や継ぎ目からリークして金属ケース内底部に溜まる海水を検知する漏水検知器115と、を備えている。
金属ケース105は前面が開口した金属ース本体105aと、金属ケース本体105aの前面開口にネジ止め装着されてこれを閉止する保護カバー105bと、を有している。各電極102、103には440V、90アンペア程度の電流が流れているので、各電極は露出させておくと危険であるため、SUS板等からなる保護カバー105bにより前面開口を閉止している。
【0004】
海水導入部110は図示しない海水導入管体から供給されてきた海水を管体101内に導入し、管体内の海水は陰極102及び陽極103に夫々接続されたリード線104から給電される電流によって次亜塩素酸ナトリウムとH20とに分解されて次亜塩素酸ナトリウム水溶液となる。管体101内に生成された次亜塩素酸ナトリウム水溶液は排出部111から装置外に排出されて、軸冷水を冷却するための海水を導入する海水用管体内に供給される。海水中に供給された次亜塩素酸ナトリウム水溶液はその殺菌作用により海水中の貝類等の微生物を死滅、或いは減少させて海水用管体内に貝類が付着、堆積して詰まりを起こす不具合をなくすることができる。
【0005】
漏水検知器115は、管体101に形成された亀裂等からリークした海水が金属ケース内に溜まったことを検知する手段であり、海水の量が所定以上に達したときに検知動作して図示しない警報器を作動させると共に、図示しない制御部は各電極への通電を遮断して装置の稼働を停止させる。漏水を放置し続けることにより金属ケース内の海水により両電極102、103が短絡を起こして地絡事故につながる虞があるからである。
金属ケース内の漏水によって海水が溜まり始めた場合には金属ケース本体と保護カバーとの接合部から外部に漏水が発生することにより、漏水の発生が判明することがあるが、この時点での漏水発見では事故発生を防止するには遅すぎる可能性がある。
【0006】
ところで、管体101内に導入される海水は比較的低温であるため、ほぼ密封された状態にある金属ケース105の内部温度との温度差により管体外面に結露が発生することがある。結露は、特に梅雨や降雨量が多い時期に増大する(例えば、1〜2cm程度の水位)。管体101への結露量が多くなると滴下して金属ケース内底部に溜まる水量が増大して漏水検知器115を誤作動させることがある。但し、通常の結露によって金属ケース内に溜まる程度の水量であれば地絡事故の危険は少ないが、密閉された空間である金属ケース内部の状態を外部から知ることができないために、漏水検知器115の検知動作が海水のリークによるものか、単なる結露によるものか判断ができず、警報が作動した時点で装置の稼働を停止させた上で前パネルを取り外して内部を確認する必要があった。単なる結露であれば、必要に応じて清掃、乾燥のための作業を行ってから再組立して使用を再開し、海水のリークが発生している場合には漏水箇所の修理、部品交換、清掃、乾燥を行った上で再組立てして使用を再開していた。
【0007】
しかし、結露を原因とする警報の場合にはそのまま放置して使用し続けても地絡事故発生等の問題ないことが多いにも拘わらず、警報が作動するたびに装置を停止した上での分解による点検が必要とされる現状を改善したいという要請が強いにも拘わらず、改善措置が採られていなかった。また、梅雨時期等のように結露によって多少の水が溜まった場合に、金属ケースを分解せずにこれを検知、確認したり、清掃、乾燥する方法が存在しなかった。
結露を防止する手段として金属ケースに換気穴と換気ファンを設けて換気させたり、或いは金属ケース内部にヒータを配置して乾燥を促進する方法も考えられるが(例えば、特開2003−79014公報)、これらの対策は何れもコスト増、装置の大型化、維持管理のための手数増、費用増を招くため、この種の装置のように極力単価、及びランニングコストを低減したい装置にあっては問題であった。
【特許文献1】特開2003−79014公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の海水電解装置は、内部を視認不能な金属ケース内に、海水を通水する管体と、管体内の海水を電気分解するための電極を配置し、更に金属ケース内底部に海水のリークを検知する漏水検知器を配置した構成を備えていたが、海水のリーク以外の原因、例えば管体に結露した水が落下することにより形成された水溜まりによっても漏水検知器が検知動作して警報が作動することがあった。警報が作動した場合には、それが海水のリーク以外の原因によるものであっても、そのたびに装置の稼働を停止させて金属ケースを分解して内部を点検し、その後組み立てて稼動を再開させるという煩雑な作業が必要となるため、点検の頻度が増大して装置の稼働率が低下するという不具合が発生していた。
【0009】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、コスト増、大型化を招くヒータやファン等の結露防止対策を講じることなく、既存の装置構造に簡単な改良を加えることによって、金属ケース内部の結露状態、海水リーク状態を目視によって確認、判別することを可能とする一方で、金属ケース内底部に結露による水溜まりが発生している場合には分解することなく簡単な操作により排水することができる海水分解装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1の発明に係る海水電解装置は、海水を通水する管体と、該管体の一端に海水を導入する海水導入部と、該管体内の海水に対して電源からの直流電流を通電させて電気分解するための陰極及び陽極と、該管体内に生成された次亜塩素酸ナトリウム水溶液を排出する排出部と、前記管体及び陰極及び陽極を包囲する金属ケースと、該金属ケースの内部に配置されて前記管体から漏水して金属ケース内部に溜まる液量を検知する漏水検知器と、を備えた海水電解装置であって、前記金属ケース適所に前記管体、及び金属ケース内底部を目視するための窓を設け、前記金属ケース底部に排水口を設けたことを特徴とする。
従来は、結露水に起因して警報が作動した場合のように直ちに排水、乾燥等の作業を行う必要がない場合であっても、海水の漏水による警報であるか否かの判断ができなかったため、金属ケースを分解して内部の状態を確認する必要があった。本発明では、金属ケースの適所に内部確認用の窓を設けたので、結露による警報か否かを容易に確認することが可能となる。この際、装置の稼働を停止させたり、煩雑な分解、組立て作業が不要となるので、装置の稼働率の低下を防止できる。また、既存の金属ケースを加工することにより容易に窓を形成できる点もメリットである。また、排水口を設けることにより、金属ケースを分解することなく底部に溜まった結露水の排水を行うことができ、内部の乾燥を促進することができる。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1において、前記排水口を開閉するためのブロー弁を備えたことを特徴とする。
排水口を開閉するためのブロー弁を設けることにより、排水作業を効率化することができる。
請求項3の発明は、請求項1又は2において、前記窓は、前記金属ケース適所に形成した開口部を透明板により閉止した構成を有していることを特徴とする。
このように構成することにより金属ケース内部の気密性を確保しながら、外部から内部状態の確認を実施することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように本発明によれば、金属ケース適所に管体、及び金属ケース内底部を目視するための窓を設け、金属ケース底部に排水口を設け、更に必要に応じてブロー弁を設けたので、コスト増、大型化を招くヒータやファン等の結露防止対策を講じることなく、既存の装置構造に簡単な改良を加えることによって、金属ケース内部の結露状態、海水リーク状態を目視によって確認、判別することができ、金属ケース内底部に結露による水溜まりが発生している場合には分解することなく簡単な操作による排水することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を図面に示した実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1(a)及び(b)は本発明の一実施形態に係る海水電解装置の構成を示す斜視図、及び保護カバーを外した状態を示す斜視図であり、図2(a)及び(b)は海水電解装置の内部構成を示す正面図、及び平面図である。
海水電解装置1は、S字状に配管された海水を通水する管体2と、管体2の一端に接続されて管体内に海水を導入する海水導入部5と、管体2内の海水に対して電源からの直流電流を通電させて電気分解するための陰極10及び陽極11と、管体2の他端部に接続されて管体内に生成された次亜塩素酸ナトリウム水溶液を排出する排出部15と、管体及び陰極及び陽極を包囲する金属ケース20と、金属ケースの内部に配置されて管体に形成された亀裂、穴や継ぎ目からリークして金属ケース内底部に溜まる海水を検知する漏水検知器30と、を備えている。
【0014】
管体2は、複数のパイプ材を継手部材を介してS字状、その他の任意の形状に連結した構成を有している。陰極10及び陽極11は、管体内部の海水中に端子を露出させた状態で通電されることにより、海水を電気分解する。
金属ケース20は前面が開口した金属ケース本体20aと、金属ケース本体20aの前面開口にネジ止め装着されてこれを閉止する保護カバー20bと、を有している。各電極10、11には440V、90アンペア程度の電流が流れているので、各電極は露出させておくと危険であるため、SUS板等からなる保護カバー20bにより前面開口を閉止している。
【0015】
海水導入部5は図示しない海水導入管体から供給されてきた海水を管体2内に導入し、管体内の海水は陰極10及び陽極11に夫々接続されたリード線12から給電される電流によって次亜塩素酸ナトリウムとH20とに分解されて次亜塩素酸ナトリウム水溶液となる。管体2内に生成された次亜塩素酸ナトリウム水溶液は排出部15から装置外に排出されて、軸冷水を冷却するための海水を導入する海水用管体内に供給される。海水中に供給された次亜塩素酸ナトリウム水溶液はその殺菌作用により海水中の貝類等の微生物を死滅、或いは減少させて海水用管体内に貝類が付着、堆積して詰まりを起こす不具合をなくすることができる。
漏水検知器30は、管体2に形成された亀裂等からリークした海水が金属ケース内に溜まったことを検知する手段であり、海水の量が所定以上に達したときに検知動作して図示しない警報器を作動させると共に、図示しない制御部は各電極への通電を遮断して装置の稼働を停止させる。漏水を放置し続けることにより金属ケース内の海水により両電極10、11が短絡を起こして地絡事故につながる虞があるからである。
【0016】
本発明の特徴的な構成の一つは、保護カバー20bの適所に設けた開口部20b−1に透明アクリル板(透明板)20b−2を固定することによって点検用の窓25を形成した点にある。窓25は、内部の管体への結露状態や、金属ケースの内底部への水の溜まり状態を作業者が外部から目視確認できるようなサイズ、形状、個数を選定して形成する。なお、窓25を形成する場所は保護カバー20bに限らず、金属ケース本体20aの適所であってもよい。
窓25は、既存の金属ケースに対する後からの加工によって形成することが可能である。
更に、金属ケース本体20aの底部に排水口(排水管)26を設けることにより、管体への結露によって底部に溜まった水が排水口26から適宜外部に排水されるように構成する。必要に応じて金属ケース本体の底部に溜まった水が排水口26に流入し易くするための傾斜や溝を形成してもよい。
【0017】
或いは、排水口26に手動操作により開閉するブロー弁27を設けて常時には排水口26を閉止しておき、窓25からの確認によって金属ケース内底部に結露によって水が溜まっている場合にブロー弁を開放させて排水するようにしてもよい。
排水口26やブロー弁27は、既存の金属ケースに対する加工によって形成することが可能である。
【0018】
このように本発明の海水電解装置は、金属ケース20の適所に設けた点検用の窓25から管体2への結露状態や、海水のリークの有無や、金属ケース内底部への結露水、或いは海水の溜まり状態を確認できるようにしたので、装置を分解する必要の有無等を定期的に容易に確認することができる。
結露による水溜まりの発生か、海水による水溜まりの発生かの判断は、管体への汗状の結露の付着の有無を確認すれば容易であり、海水による場合には局所からの比較的多量のリーク状態を確認することにより判別することができる。
【0019】
また、漏水検知器30の検知動作によって警報が作動した場合に、窓25から内部を目視確認することによって結露水が溜まっている場合には、装置の稼働を停止させたり、保護カバーを取り外すことなく、ブロー弁27を開放することによって排水口26から排水することにより対処することができる。排水後も排水口26を開放し続けることにより換気による内部の乾燥を促進することができる。
また、警報の作動時に窓25からの確認によって海水のリークが発生していることが判明した場合には直ちに電源を遮断して装置の稼働を停止した上で、保護カバーを取り外し、管体の修理、部品交換を行うことで対処することができる。この場合も必要に応じてブロー弁27を開放して排水を実施することができる。
本発明によれば、コストや手数が増大するファンやヒータを用いることなく金属ケース内部の結露を有効に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(a)及び(b)は本発明の一実施形態に係る海水電解装置の構成を示す斜視図、及び保護カバーを外した状態を示す斜視図である。
【図2】(a)及び(b)は海水電解装置の内部構成を示す正面図、及び平面図である。
【図3】従来の海水電解装置の構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0021】
1…海水電解装置、2…管体、5…海水導入部、10、11…電極、12…リード線、
15…排出部、20…金属ケース、20a…金属ケース本体、20b…保護カバー、
25…窓、26…排水口、27…ブロー弁、30…漏水検知器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海水を通水する管体と、該管体の一端に海水を導入する海水導入部と、該管体内の海水に対して電源からの直流電流を通電させて電気分解するための陰極及び陽極と、該管体内に生成された次亜塩素酸ナトリウム水溶液を排出する排出部と、前記管体及び陰極及び陽極を包囲する金属ケースと、該金属ケースの内部に配置されて前記管体から漏水して金属ケース内部に溜まる液量を検知する漏水検知器と、を備えた海水電解装置であって、
前記金属ケース適所に前記管体、及び金属ケース内底部を目視するための窓を設け、
前記金属ケース底部に排水口を設けたことを特徴とする海水電解装置。
【請求項2】
前記排水口を開閉するためのブロー弁を備えたことを特徴とする請求項1に記載の海水電解装置。
【請求項3】
前記窓は、前記金属ケース適所に形成した開口部を透明板により閉止した構成を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の海水電解装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−297604(P2008−297604A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−145794(P2007−145794)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】