海洋生産装置
【課題】建設及び維持が容易な海洋生産装置を提供すること。
【解決手段】海洋の深層部に配置された取水装置1と、海洋の表層部に配置された放水装置3とは海底に固定される。取水装置1は海流が流れ込むように開口するラッパ管状に形成される。放水装置3は海流が流れ出す方向へ開口する。これにより、取水装置1と放水装置3とを連結する揚水管2を通じて海洋深層水がリフトアップされ、海洋の表層部に栄養塩類が豊富に供給されて、光合成により二酸化炭素がプランクトンとして固定され、このプランクトンを有効利用して有用な海洋生物を増産することができる。
【解決手段】海洋の深層部に配置された取水装置1と、海洋の表層部に配置された放水装置3とは海底に固定される。取水装置1は海流が流れ込むように開口するラッパ管状に形成される。放水装置3は海流が流れ出す方向へ開口する。これにより、取水装置1と放水装置3とを連結する揚水管2を通じて海洋深層水がリフトアップされ、海洋の表層部に栄養塩類が豊富に供給されて、光合成により二酸化炭素がプランクトンとして固定され、このプランクトンを有効利用して有用な海洋生物を増産することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海洋に配置された海洋生産装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年における大気中の二酸化炭素濃度の増大による海面上昇問題は、人類が解決すべき深刻な問題として認識されつつある。その一つの解決案として、大気中の二酸化炭素濃度低減のために、豊富な栄養塩類を含む海洋深層水を海洋表層部にリフトアップしてそのプランクトン生産量を増大するとともに大気中の二酸化炭素濃度を削減することが提案されている。この方法を海洋深層水リフトアップ装置をいうものとする。
【0003】
特許文献1は、海流が流れる海洋の中層部にプレートを斜めに配置して海流が流れる方向を上方へ変化させることを提案している。特許文献2は、500メートル以上の長さの筒を海洋に立て、筒上部を海洋表層水により間接加熱することによりその比重を軽くして筒下部から海洋深層水をリフトアップすることを提案している。しかしながら、ほとんどすべての海洋型二酸化炭素吸収技術はアイデア段階にとどまっている。
【0004】
第1の理由は、海洋の表層部に設置されるこの種の大規模海洋生産装置は、その設置自体は浮力を利用できるために比較的容易であるものの、海洋環境特有の問題である、船舶や大型魚類の衝突問題、波浪問題により、海洋生産装置の設置及び維持コストがそれぞれ巨額となるためである。波浪問題に関しては、特許文献3は海洋生産装置を沈降させることを提案している。
【0005】
第2の理由は、海洋深層水リフトアップ装置は、上記耐海洋環境性能を必要とするにもかかわらず、その経済的生産効率が低い点が挙げられる。リフトアップした海洋深層水を用いて有用な海洋生物を生産し、販売することにより費用の一部は回収できたとしても、上記した船舶や大型魚類の衝突問題や波浪問題に耐え得る海洋生産装置の設置及び維持費用を賄うことは困難である。
【特許文献1】特開2001−323430号公報
【特許文献2】特開2001−336479号公報
【特許文献3】特開平6−225664号公報
【特許文献4】特開2000−295939号公報
【特許文献5】特開2000−273836号公報
【特許文献6】特開平8−42275号公報
【特許文献7】特開平8−332994号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したように、二酸化炭素消費型海洋生産装置としての海洋深層水リフトアップ装置は、現在の技術レベルでは経済性を改善することが必要である。経済性の改善は、装置をできるだけ長期に使用することと、単位費用当たりの経済効果(二酸化炭素排出権の経済的価値を含む)を増大させる点に依存する。
【0007】
この観点から見た場合に、特許文献1が提案する海洋の中層部に配置される斜めプレートによる海洋中層部の海流方向の上方への偏向技術は、斜めプレートから上方へ放出された中層部の海流の上昇方向への速度エネルギーが水平方向へ流れる強力な海流との接触により渦や乱流として斜めプレートから排出された直後に急速に消失してしまう問題、中層部の斜めプレートまで海洋の深層部からの深層水をほとんど誘導することができないという問題をもち、海洋深層水を数百メートル上方の海洋の表層部まで到達させるのは困難であった。また、特許文献2が提案する筒上部を海洋表層水により間接加熱して海洋深層水をリフトアップする方法は、リフトアップする海洋深層水の流量の増大のために筒内部の海洋深層水と海洋深層水との間の移動熱量を大幅に増大させる必要があるため、並びに、海洋の表層部の間接熱交換器に対して上記した独特の海洋環境問題(衝突問題、波浪問題(竜巻を含む))を考慮する必要があるため、大規模な実用化が困難であった。
【0008】
更に、海洋深層水リフトアップ装置の経済性向上のために、大規模な魚保持装置を配置することも考えられるが、このような大規模な魚保持装置は、海洋深層水リフトアップ装置と同じく上記海洋環境問題をもつという問題があった。波浪による破損を回避するため海洋生産装置を沈降させることは有益であるが、海洋では天候急変が普通であり、その海洋生産装置の沈降管理が困難であった。
【0009】
本発明は、上記解決困難な問題を解決して建設及び維持が容易な海洋生産装置及びその保全装置を提供することをその目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する第1発明は、海洋の少なくとも表層部に配置される海洋生産装置において、海流が流れる前記海洋の表層部に開口する深層水流出口と、前記海洋の深層部に開口する深層水流入口と、前記表層部と前記深層部との間に配置されて前記深層水流入口から流入した前記海洋深層水を上方へ揚水した後、前記深層水流出口から排出させる筒部とを有する揚水管と、前記揚水管の深層水流入口及び深層水流出口に連結されて前記海流のエネルギーに基づいて前記揚水管内の前記海洋深層水を上方に付勢する深層水付勢装置と、前記揚水管及び深層水付勢装置の移動を規制する移動規制装置とを備えることを特徴としている。
【0011】
すなわち、この発明は、海流中に立設された揚水管に設けた揚水機構に海流エネルギーを作用させて揚水管中の海洋深層水のリフトアップを行う。このようにすれば、ほとんど無尽蔵な海流エネルギーを揚水管中の海洋深層水のリフトアップに用いることができるため、簡単な装置にて海洋深層水を海洋の表面部までローコストかつ効率よくリフトアップして利用することができる。
【0012】
好適な態様において、海洋の表層部は、水深50メートル未満を言い、海洋の深層部は水深150メートル以上更に好適には200メートル以上を言う。好適な態様において、移動規制装置は、一端が海底に固定されたロープとされる。その他、海底に配置され、剛体からなる揚水管の底部を固定するベースもこの移動規制装置を構成することができる。海流増速管や揚水管の上部に作用する波力の影響を低減するため、このロープはダンパ装置を通じて海底に固定されることができる。好適な態様において、前記揚水管の深層水流出口の後方に配置されて海草を生育させる海草生育装置を有する。この海草生育装置は、揚水管の深層水流出口の後方へ海流により延在するネットにより構成される。なお、このネットの開口は非常に大きくてよい。これにより、海洋表層部において、太陽エネルギー及び二酸化炭素を効率よく回収することができる。好適な態様において、前記揚水管の深層水流出口の後方に配置されて内部に魚や貝類を保持する魚槽を有する。このようにすれば、大量のプランクトンを魚槽に供給できるので魚保持飼料を最小限としつつ必要な種類の魚の生産を増加することができる。魚槽は、たとえばネットにより覆われる海中スペースにより構成されることができる。好適な態様において、魚槽は、海草生育装置を兼ねることができる。すなわち、魚槽の構成するネットを海草の根の定着部材とすることができる。
【0013】
好適な態様において、前記深層水付勢装置は、前記深層部に配置されて前記海流の動圧を受ける方向へ開口する取水口と、前記取水口と前記揚水管の深層水流入口とを接続する連結筒部とを有し、前記連結筒部は、前記取水口から前記揚水管の深層水流入口へ向けて細くなっている。このようにすれば、揚水管の深層水流入口に海流の動圧を増倍して作用させることができ、簡素な機構にて大量の海洋深層水をリフトアップすることができる。
【0014】
好適な態様において、前記深層水付勢装置は、前記表層部に配置されて前記海流の動圧を受けない方向へ開口する放水口と、前記放水口と前記揚水管の深層水流出口とを接続する連結筒部とを有する。このようにすれば、連結筒部内の海洋深層水は、放水口周囲の前記海流のエゼクタ効果により放水口へ向けて吸引されるため、簡素な機構にて大量の海洋深層水をリフトアップすることができる。
【0015】
好適な態様において、前記深層水付勢装置は、前記表層部に配置されて前記海流が流入する海流流入口、及び、前記海流が流出する海流流出口を有して内部の前記海流を外部の海流よりも増速して内部の水圧を外部の水圧よりも相対的に低下させる海流増速管を有し、前記放水口は、前記海流増速管に連通する。このようにすれば、揚水管の深層水流出口の圧力減少効果を向上することができるため、海洋深層水のリフトアップ能力を向上することができる。海流増速管は、海流流入口から流入した海流は、ノズル構造により増速減圧される。このようにすれば、簡素な静止構造により、海洋深層水のリフトアップ能力を向上することができる。
【0016】
好適な態様において、前記揚水管は、略魚形断面を有する。魚形断面の頭部は海流の上流側に、尾部は海流の下流側に配置される。これにより、海流に対する揚水管の抗力を大幅に削減することができるので、海流による揚水管の移動を規制する移動規制装置、たとえばアンカー及びロープの費用を大幅に低減することができる。好適な態様において、前記揚水管は、半魚形断面を有する樋状管を二枚突き合わせて接合して構成される。これにより、揚水管の製造が容易となる。
【0017】
好適な態様において、前記揚水管は比重が1未満とされる。これにより、揚水管の姿勢が海流に押されて水平方向へ寝るのを良好に防止することができる。好適な態様において、前記海流増速管は比重が1未満とされる。これにより、ロープにより海流増速管を所定深度に容易に保持することができる。
【0018】
好適な態様において、前記揚水管の深層水流出口は前記深層水を水平方向より上向きに放出する。このようにすれば、揚水管の上端部に設けられた深層水流出口を海面より深く配置しても、日射光量が大きい海面近傍に海洋深層水を到達させることができるため、波浪などによる揚水管などの破損を防止することができる。
【0019】
好適な態様において、前記揚水管の深層水流出口の後方に延在する魚槽を有し、前記魚槽は、海流上流側にて海流流入可能に海流方向と略直角に延在する剛構造の上流側の剛性壁部と、海流下流側にて海流流出可能に海流方向と略直角に延在する剛構造の下流側の剛性壁部と、前記両剛性壁部を連結して海流方向に延在するネットとを有する。このようにすれば、魚槽への海流や波浪の影響を低減しつつ大規模な魚槽を構成することができる。
【0020】
好適な態様において、前記揚水管の上部近傍に設置されて大型障害物の接近を検出するセンサと、前記揚水管の上部近傍に設置されて警報を発する警報装置と、前記センサの出力信号に基づいて前記大型障害物の接近を検出した場合に前記警報装置に警報出力を指令する制御装置とを有する。大型障害物としては、船舶や大型魚類が挙げられる。大型障害物を検出するセンサとしてはソナーとして公知の水中超音波センサを採用することができる。警報としては、無線又は発光又は空中音波又は水中音波を採用することができる。このようにすれば、船舶又は大型魚類が揚水管に衝突してそれを破損させるの確率を低減することができる。また、このようにすれば、電力生産が容易でない海洋において、警報装置の消費電力を低減することができる。
【0021】
上記課題を解決する第2発明は、海洋の少なくとも表層部に配置される海洋生産装置において、多数の開口を有して内部の魚保持空間を区画する魚保持スペース区画体と、前記魚保持スペース区画体に固定されて前記魚保持空間の周囲に向けて音波を放射する魚脱出防止装置を有することを特徴としている。このようにすれば、波浪などによる破損や海洋生物が付着するネットの必要量を低減しつつ、大規模な魚槽を実現することができる。なお、指向性音波としては、魚の忌避効果が高い周波数たとえば超音波が好適である。
【0022】
なお、魚脱出防止装置として通電装置を用いてもよい。この通電装置は、前記開口における所定のギャップを隔てて配置された一対の電極対をもち、この電極対間に直流電流又は交流電流を流すことにより、魚の近接を阻止する。このようにすれば、ネット交換費用を低減することができる。音波エネルギー発生に必要な電力は、海流や波力のエネルギーを用いて生産することができる。更に説明すると、目が細かい漁網によりたとえば半径数キロメートルといった海域を囲んで海洋魚保持層を構成する際に、波浪や流木により漁網が破れたり、漁網に海洋生物が付着したりして漁網が沈降する不具合が生じる。また、一端が海底に固定されたロープによりこの漁網を海流中に保持する場合、ロープと漁網との接合部には漁網に作用する海流抗力全体が作用し、同様に漁網の上流部は、自己に作用する海流抗力に加えて漁網の下流部に作用する海流抗力に耐える必要がある。つまり、海流中にて大型の海洋魚槽を静止させる場合、漁網の強度を大幅に増大させる必要があり、設置、交換費用が増大する。これに対して、この発明によれば、漁網を簡単な構造とすることができるため、海流抗力や波浪エネルギーによる漁網の破損や疲労を大幅に低減するとともに、その設置、交換費用を大幅に低減することができる。
【0023】
好適な態様において、魚脱出防止装置は、一定インタバルにて完結的に上記音波又は電流を定常的に出力することができる。たとえば、5秒間に0.1秒間だけ出力を行うことができる。これにより、必要電力を大幅に低減することができる。また、魚脱出防止装置として魚保持スペース区画体の周囲に多数配置されている超音波放射装置や電極対は同時に音波又は電流を出力するのではなく、時間的に異なるタイミングで出力することができる。このようにすれば、電源を小型化することができる。また、魚保持スペース区画体内の魚に持続的な影響を与えることができる。
【0024】
好適な態様において、海洋生産装置を構成する構造物はロープとされ、このロープに所定間隔で設けられた多数の超音波放射装置が設けられる。各超音波放射装置は、魚保持空間を囲むように指向性の超音波を放射する。その他、海洋生産装置を構成する構造物は互いに所定間隔を隔てて平行配置され、それぞれ一定間隔にて電極が配置された導電性ロープとされる。一対のロープの電極間には電圧が印加される。これにより電極間の海水中に電流が流れるため、魚はこの電流を忌避する。このようにすれば、波浪などによる疲労が大きい海面直下のネット部分を省略することができるため、好適な態様において、前記魚保持スペース区画体に固定されて前記魚保持スペースからの魚の脱出行動を検出する魚脱出検出センサと、前記魚脱出検出センサの出力信号に基づいて前記魚の脱出行動を検出した場合に前記魚脱出防止装置の作動を指令する制御装置とを有する。このようにすれば、安定な電力生産が容易でない海洋において省電力をはかりつつ安価で大容量の魚槽を実現することができる。魚脱出検出センサとしては、通常の超音波魚群探知機を用いることができる。音波放射器が音波センサの一部を兼ねることもできる。ネット交換頻度を低減することができる。魚がネット内の魚槽に侵入する場合にこの強力超音波や電流を放射せず、魚の侵入を許可することも可能であるが、鮫などの有害魚類が魚保持空間に侵入するという問題が生じる。
【0025】
上記課題を解決する第3発明は、海洋の少なくとも表層部に配置される海洋生産装置において、波力エネルギーの大きさ及び大型障害物の接近を検出するセンサと、前記海洋生産装置の沈降を行う沈降装置と、前記波力エネルギーが所定しきい値を超えると判定した場合及び前記大型障害物が接近したと判定した場合の少なくとも一方において、前記沈降装置に沈降を指令する沈降制御装置とを備えることを特徴としている。波力エネルギーの大きさを検出するセンサとしては、たとえば水中構造物の表面に設置された圧力センサを採用することができる。これにより、波浪が大きい場合や大型障害物が接近する場合に揚水管や魚槽などの水中構造物を沈降させてその破損を防止し、波浪が小さい場合には揚水管などを上昇させて太陽エネルギー密度が高い海洋表層部へ海洋深層水を放出したり、魚槽をプランクトン生産が豊富な海洋表層部に上昇させることができる。沈降装置の沈降力は、揚水管の上部や海流増速管に設置された翼部に作用する海流力により発生させることができる。つまり、海流方向と翼の弦方向との角度(いわゆる迎え角)を調整することにより海流を受ける翼の抗力と揚力とが変化するため、海流増速管や揚水管の上部の深さを調整することができる。迎え角の変化は、たとえば海流増速管や揚水管の上部や翼内部に収容された流体の移動による重心位置の変位により実現できる。その他、揚水管の上部や海流増速管に作用する浮力を調整したり、海流増速管を海底に固定するロープの長さをロープ巻き取り機の回転量を調節することにより実現することができる。
【0026】
波力エネルギーの大きさを検出するセンサとしては、海流増速管や揚水管の上部に配置された圧力センサを用いることができる。これらの管に作用する波力エネルギーが大きいと、圧力センサが検出する圧力変動が大きくなるため、圧力変動の大きさが所定レベルを超える場合に波浪が大きいと判定することができる。また、この圧力センサが検出する平均圧力はこのセンサの海面からの深さに比例するため、沈降量も検出することができる。この第2発明の海洋生産装置は、生け簀などにも利用することができる。大型障害物の接近を検出するセンサは、通常のソナーのような水中超音波距離測定装置を採用することができる。
【0027】
上記説明した本発明の海洋生産装置の好適実施態様を以下に説明する。ただし、本発明は、以下の実施態様に限定されないことはもちろんである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
(全体構造)
図1は、この発明の海洋生産装置を説明する模式図である。この海洋生産装置は海洋深層水リフトアップ装置であって、取水装置1と、揚水管2と、放水装置3と、ロープ(移動規制装置)4とを有しており、海流中に斜めに立った状態にて配置されている。ロープ4の下端は、図示しない海底に固定されたアンカーに固定され、ロープ4の上端は、取水装置1及び放水装置3に固定されている。5は海面であり、6は海流であり、矢印は海流が流れる方向を示す。
【0029】
取水装置1は、深層水付勢装置として海洋の深層部に配置されている。この明細書では、海面50より50メートル未満の海水領域を表層部、海面下200メートルより深い海水領域を深層部と呼ぶ。深層部の海水を深層水又は海洋深層水と呼ぶ。取水装置1の比重は1未満とされ、取水装置1には浮力F1と海流60に対する抗力F2とを合成した力F3が作用している。なお、この明細書では、浮力は、真の浮力から重力を減算した力の差を言うものとする。取水装置1は、海流60の上流側に向けて開口する取水口11をもつ。取水口11に流入した深層水60aは、自己の動圧により取水口11の内部を通って揚水管2内に押し込まれ、揚水管2の内部を上昇し、放水装置3に到達する。
【0030】
揚水管2は、内部の深層水60aを含む全体の比重が1未満とされている。取水装置1には浮力F4と海流60に対する抗力F5とを合成した力F6が作用している。力F6の方向を揚水管2の長さ方向と略等しくすることにより、揚水管2に掛かる曲げ力を低減できるため、揚水管2の曲げ剛性を小さくすることができる。21は揚水管2の深層水流入口、22は揚水管2の深層水流出口である。
【0031】
放水装置(海流増速管)3は、海洋の表層部に配置されたいわゆるエゼクタ装置であり本発明で言う深層水付勢装置を構成している。放水装置3の比重は1未満とされ、放水装置3には浮力F7と海流60に対する抗力F8とを合成した力F9が作用している。放水装置3は、海流60の上流側に向けて開口する海流流入口31と、海流60の略下流側に向けて開口する海流流出口32とを有する。海流流入口31から放水装置3の内部に流入した海流は放水装置3の内部に形成されたノズル構造により減圧増速される。放水装置3の出口部をディフューザ構造としてもよい。揚水管2の深層水流出口22は放水装置3の減圧された内部に連結されているため、揚水管2内の海洋深層水は、揚水管2の深層水流出口22から放水装置3の内部に吸い出される。放水装置3の海流流出口32は、入口31から取り込んだ海流と、揚水管2から吸い込んだ海洋深層水を斜め上方へ吹き出す。これはプランクトン生産効率が高い海面直下に栄養塩類を吹き上げるとともに、海流増速管に対する波浪の影響を軽減するためである。
【0032】
取水装置1に接続されるロープ4の方向は、力F3の方向により規定され、放水装置3に接続されるロープ4の方向は力F9の方向により規定される。取水装置1に接続されるロープ4と、放水装置3に接続されるロープ4とは同じアンカーに接続されることが経済的である。揚水管2もロープ4にて固定してもよい。
【0033】
(取水装置1)
取水装置1の構造を図2〜図4を参照して説明する。図2は取水装置1の模式垂直断面図、図3は取水装置1の模式水平断面図、図4は取水装置1の上半分を正面から見た模式正面図である。
【0034】
取水装置1は、海流60の動圧が揚水管2に最大限に掛かるように海流60の上流側に向けて開口する取水口11と、この取水口11から後方へへ向けて次第に狭く形成された角錐形のラッパ管部12と、ラッパ管部12の上端面から上方へ伸びる案内翼13と、ラッパ管部12の下端面から下方へ伸びる案内翼14とを有している。案内翼13、14は、海流により海流が流れる方向とほぼ平行に配置され、これにより最大流量の海流が取水口11に押し込まれる。すなわち、案内翼13、14は飛行機の垂直尾翼と同様の取水装置1の姿勢保持機能をもつ。飛行機の水平尾翼と同様、水平方向に伸びる案内翼を取水装置1に設けてもよい。これにより取水装置1の姿勢は更に安定する。取水装置1の姿勢は、取水装置1の浮力F1、抗力F2、揚水管2から取水装置1に掛かる力、及びロープの引っ張り力と、これらの力の作用点により規定されるが、これらの力の設計自体は容易に解決可能な機械工学上の問題であり、取水装置1の姿勢は取水口11への海洋深層水の取り込みを最大限とするように維持されることができる。ラッパ管部12の海流方向と直角な方向の断面積は後方へ向けて連続的に狭くなっており、ラッパ管部(連結管部)12の出口は揚水管2の深層水流入口21に連結されている。これにより、揚水管2の深層水流入口21から揚水管2内に入る海洋深層水の速度は増大する。
【0035】
(揚水管2)
揚水管2の構造を図5を参照して説明する。図5は揚水管2の模式水平断面図である。揚水管2は両端に締結用のリブをもつポリエチレン被覆鋼板からなるチューブにより構成されており、揚水管2の水平断面は魚形となっている。これにより、海流に対する抗力が大幅に低減される。揚水管2は、図5のAーA断面で分断した形状の半魚形板を2枚締結してなる。23は揚水管2内に配置されたリブであり、リブ23は揚水管2に掛かる負圧に対抗して揚水管2の形状を維持している。このようにすれば、半魚形板を積層して輸送できるため、輸送コストを減らすことができる。
【0036】
(放水装置3)
放水装置3の構造を図6を参照して説明する。図6は放水装置3の模式垂直断面図、図7は海流上流側からみた放水装置3の模式部分正面図である。
【0037】
放水装置3は、上流側の海流流入口31と、下流側の海流流出口32とを連通する海流増速管33を有している。海流増速管33の上流部は、海流流入口31から下流側へ狭くなるノズル部34を有している。ノズル部34は海流流入口31から流入した海流を増速し、この増速によりノズル部34内は減圧される。ノズル部34の上部には浮力を発生させるための空気室35と、海洋深層水を蓄積する深層水室36とが形成されている。ノズル部34、空気室35及び深層水室36は、図7に示すように海流の向きと直角な水平方向へ長く延在している。深層水室36の下端は揚水管2の深層水流出口22に連結されている。揚水管2の深層水流出口22には、ノズル部34内へ突出する放水筒部37が固定され、放水筒部37の下流端には放水口38が設けられている。
【0038】
海流流入口31からノズル部34に流入した海流60は、ノズル部34の断面積の減少により、増速減圧されて放水筒部37の外周を通過し、その後、後方かつ斜め上方へ曲げられて海流流出口32から斜め上方へ放出される。ノズル部34の減圧により、放水筒部37内の深層水60aは放水口38から後方へ吸い出される。これにより、深層水室36は、揚水管2の深層水流出口22から深層水室36を通じて放水筒部37へ流入する。39は、深層水流出口22近傍に配置されてノズル部34から出た海流及び深層水60aを斜め上方へ偏向する偏向翼である。
【0039】
(警報装置)
上記した海洋深層水リフトアップ装置への船舶又は大型魚類の接近を回避するための警報装置5を図8を参照して説明する。この警報装置5は、放水装置3の上端に1乃至複数固定されて略水平方向へ超音波を定期的に放射し、船舶や大型魚類から反射した超音波を検出する超音波センサ51と、超音波センサ51が受け取った超音波信号に基づいて、船舶又は大型魚類の大きさ、位置を演算することによりそれらの接近を判定する演算装置52と、船舶又は大型魚類の接近を検出した場合に超音波周波数又は可聴周波数の音響エネルギーを水中に放射し、かつ、音響や点滅信号を海面に浮かべたブイから放射する警報装置53、54とを有している。これらの装置への電力給電のために、海流により駆動されるタービンに連結された発電機や、海水電池を含む各種電池や波浪エネルギー発電装置などが放水装置3に装備される。発電電力はバッテリに一時的に蓄電されることが好適である。超音波センサ51の検出原理は従来周知の超音波式魚群探知機と同じとすることができるため、更なる説明を省略する。これにより、船舶や大型魚類の接近時に相手に警報を発するため、海洋深層水リフトアップ装置への衝突を回避することができる。警報を発する代わりに、後述する沈降装置を作動させて海洋深層水リフトアップ装置やそれに付帯する装置を沈降させてもよい。
【0040】
(沈降装置)
上記した海洋深層水リフトアップ装置の沈降装置6を図9を参照して説明する。この沈降装置6は、圧力センサ61と、演算装置62と、巻き上げモータ63と、ロープ巻き取りドラム64とを有し、これらの装置61〜64は放水装置3に固定されている。圧力センサ61は、放水装置3の上端面又はその上方に突出する棒体に固定されて、水圧を検出する。
【0041】
演算装置62は、圧力センサ61が検出した水圧の変動の大きさすなわち、所定時間内の水圧の最小値と最大値との差の絶対値を検出し、この差の絶対値が所定しきい値を超えたら波浪が大きいと判定することができる。つまり、波浪が大きいと、圧力センサ61の検出圧力の変動量が大きくなるので、この現象を利用して波浪エネルギーを推定することができる。また、放水装置3が沈降すると、圧力センサ61に作用する検出圧力の変動が減少するため、放水装置3の沈降を停止することができる。更に、上記差の絶対値が第2のしきい値より小さくなったら波浪が小さいとして放水装置3を上昇させる。これにより、波浪が大きいときのみ、放水装置3を沈降させてその破損を防止することができる。また、圧力センサ61の検出圧力の平均値により放水装置3の深度を判定することもできる。演算装置62は、波浪が大きいと判定した場合には巻き上げモータ63を駆動してこの巻き上げモータ63と連結されたロープ巻き取りドラム64を巻き上げる。これにより、ロープ巻き取りドラム64はロープ4を巻き取り、放水装置3は沈降する。演算装置62は、波浪が小さいと判定した場合には巻き上げモータ63を逆回転させてロープ巻き取りドラム64からロープ4を引き出す。これにより、放水装置3は自己の浮力により上昇する。巻き上げモータ63は回転しない場合にロープ4を拘束するロープロック機構を備えることが好ましい。なお、放水装置3を昇降させると同じ原理で、取水装置1も同期して昇降させることが好適である。
【0042】
沈降装置6の変形例として、放水装置3に回動可能な水平翼を設けてもよい。この水平翼を回動させると、海流から水平翼が受ける抗力及び揚力が変化するため、放水装置3に作用する力の方向が変化し、沈降深さを調節することができる。なお、水平翼を回動させる代わりに、ロープ巻き取り機を用いて、放水装置3の上流端のロープ4を長くするか、下流端のロープ4を短くしてもよい。これにより、海流に対する取水装置1の迎え角が変化するため、同様の作用により放水装置3の深さを調整することができる。なお、放水装置3などに作用する波浪エネルギーを緩和するため、ロープ4にダンパを設けてもよい。
【0043】
沈降装置6の変形例として、圧力センサ61をソナー(超音波水中距離検出装置)を採用してもよい。このソナーにより海洋深層水リフトアップ装置の周辺に存在する船舶や大型魚類の位置を計測する。演算装置62は、計測した位置の変化から船舶や大型魚類が接近して衝突する可能性を判定し、衝突可能性が高い場合に、海洋深層水リフトアップ装置の沈降を指令する。なお、この沈降制御は、海洋深層水リフトアップ装置のみでなく、この海洋深層水リフトアップ装置近傍に設置される魚槽の沈降制御にも利用することができる。
【0044】
(魚槽兼海草生育装置)
放水装置3の下流側には、海洋生産装置である魚槽兼海草生育装置7が配置されている。魚槽兼海草生育装置7を図10を参照して説明する。図10は魚槽兼海草生育装置7の模式斜視図である。魚槽兼海草生育装置7の保持及び沈降制御は、放水装置3と同様であるため、その説明は省略する。
【0045】
魚槽兼海草生育装置7は、海流60の上流側にて海流流入可能に海流方向と略直角に延在する剛構造の上流側の剛性壁部71と、海流60の下流側にて海流流出可能に海流方向と略直角に延在する剛構造の下流側の剛性壁部72と、剛性壁部71、72を連結して海流方向に延在するネット73とを有する。剛性壁部71は、それぞれ海流方向と直角方向に延在する多数のポリエチレン被覆鋼管711、712、713を組み立ててなる。711は水平方向に延在するポリエチレン被覆鋼管、712は垂直方向に延在するポリエチレン被覆鋼管、713は斜め方向に延在するポリエチレン被覆鋼管である。
【0046】
剛性壁部72は、それぞれ海流方向と直角方向に延在する多数のポリエチレン被覆鋼管721、722、723を組み立ててなる。721は水平方向に延在するポリエチレン被覆鋼管、722は垂直方向に延在するポリエチレン被覆鋼管、723は斜め方向に延在するポリエチレン被覆鋼管である。
【0047】
剛性壁部71のポリエチレン被覆鋼管711と剛性壁部72のポリエチレン被覆鋼管721とは多数のロープ730により接続され、剛性壁部71のポリエチレン被覆鋼管712と剛性壁部72のポリエチレン被覆鋼管722とは多数のロープ731により接続されている。各ロープ730は横ロープ732により接続され、各ロープ731は横ロープ733により接続されて、ネット73を構成している。剛性壁部71、72及びネット73は、内部に魚保持空間をもつ魚槽兼海草生育装置7を構成している。上流側の剛性壁部71は、海洋深層水リフトアップ装置の放水装置3と同様にロープにより海底のアンカーに締結されるか、放水装置3に締結されている。ネット73及び下流側の剛性壁部72、海流により剛性壁部71の下流側に配置される。魚槽兼海草生育装置7の底面を構成するロープ730は、海草の根が定着する海草定着ベースを兼ねている。
【0048】
(魚脱出防止装置)
魚槽兼海草生育装置7に設けた魚脱出装置を図11、図12を参照して説明する。図11は魚槽兼海草生育装置7の側壁部(魚保持スペース区画体の一部)70に沿って設けられた魚脱出防止装置を示す模式平面図、図12は魚脱出防止装置の側壁部の一部を示す模式正面図である。
【0049】
8は、魚槽兼海草生育装置7の側壁部70に固定された指向性の超音波放射装置であり、この側壁部に沿って延在するケーブルから給電されている。矢印は超音波放射方向を示す。すなわち、超音波放射装置8は、側壁部70の延在方向へ超音波を放射する。これにより、魚槽兼海草生育装置7の内部の魚保持スペースSから魚槽兼海草生育装置7の側壁部70を超えて外部へ魚が逃げ出すのを防止することができる。魚保持スペースSの上端面及び下端面にも同様の構造が魚保持スペース区画体の残部として配置されており、これにより、魚が魚保持スペースSから外部に脱出するのが防止される。また、海洋生物の付着や交換費用が大きい漁網維持費用の低減も可能となる。なお、魚保持スペースSの上端面への超音波放射装置8の配置は省略可能である。また、超音波放射装置8の代わりに、平行配置された2本のロープにそれぞれ電極を設け、これらの電極間に電流を流して、魚の脱出を防止してもよい。77は魚槽兼海草生育装置7の側壁部をなすロープである。なお、超音波の代わりに、特定波長の音波たとえばイルカやシャチの発生声を放射してもよい。あるいは、一本のロープに所定間隔を隔てて多数の電極を設け、互いに隣接する電極間で通電を行ってもよい。
【0050】
(魚脱出防止装置の制御)
魚脱出防止装置である超音波放射装置8の制御を図13に示すブロック図を参照して説明する。
【0051】
魚脱出防止装置9は、魚槽兼海草生育装置7の側壁部70や上端面及び下端面近傍の魚の存在を検出するソナー91と、このソナー91の出力信号に基づいて魚保持スペース区画体近傍に魚が存在するか否かを判定し、魚保持スペース区画体近傍に魚が存在すると判定した場合に超音波放射装置8に超音波放射を指令する制御装置92と、超音波放射装置8とからなる。ソナー91は、指向性超音波を放射し、
対象で反射した超音波を検出して信号電圧に変換し、制御装置92に出力する。制御装置92は、放射時点から所定時間内における反射超音波に対応する信号電圧の大きさが所定レベルを超える場合に魚保持スペース区画体近傍に魚が存在すると判定し、超音波放射装置8に超音波放射を指令する。ただし、ロープや網などの存在のために、固定的に反射する超音波が存在するため、制御装置92は、一定大きさの反射超音波に相当する信号電圧を入力信号電圧から差し引いてもよい。これにより、安定な電力生産が容易でない海洋において省電力をはかりつつ安価で大容量の魚槽を実現することができる。
【0052】
なお、ソナー91から遠く離れた魚体からの反射超音波量は、近くの魚体からの反射超音波量よりも小さくなるため、制御置92は、ソナー91から魚体までの距離に応じて、入力信号電圧(反射超音波の量)を補正するようにしてもよい。その他、魚の位置の変化から魚が魚保持スペースから魚保持スペース区画体に接近中か、あるいは外部海洋から魚保持スペース区画体へ接近中かを判別し、後者の場合には超音波放射を停止して、魚を魚保持スペースに取り込むようにしてもよい。なお、多数のソナー91を分散配置し、各ソナー91が近傍の超音波放射装置8だけを制御するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】実施例の海洋深層水リフトアップ装置を示す模式縦側面図である。
【図2】取水装置の模式垂直断面図である。
【図3】取水装置の模式水平断面図である。
【図4】取水装置の上半分を正面から見た模式正面図である。
【図5】揚水管の模式水平断面図である。
【図6】放水装置の模式垂直断面図である。
【図7】放水装置の模式部分正面図である。
【図8】船舶又は大型魚類の接近回避のための警報装置を示すブロック図である。
【図9】海洋深層水リフトアップ装置の沈降装置を示すブロック図である。
【図10】魚槽兼海草生育装置の模式斜視図である。
【図11】魚脱出防止装置を示す模式平面図である。
【図12】魚脱出防止装置の側壁部の一部を示す模式正面図である。
【図13】魚脱出防止装置である超音波放射装置を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0054】
1 取水装置、2 揚水管、3 放水装置、4 ロープ、5 警報装置、6 沈降装置、7 魚槽兼海草生育装置、8 超音波放射装置、9 魚脱出防止装置、11 取水口、12 ラッパ管部、13、14 案内翼、21 深層水流入口、22 深層水流出口、23 リブ、31 海流流入口、32 海流流出口、33 海流増速管、34 ノズル部、35 空気室、36 深層水室、37 放水筒部、38 放水口、51 超音波センサ、52 演算装置、53 警報装置、61 圧力センサ、62 演算装置、63 モータ、64 ドラム、70 側壁部、71 剛性壁部、72 剛性壁部、73 ネット、91 ソナー、92 制御装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、海洋に配置された海洋生産装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年における大気中の二酸化炭素濃度の増大による海面上昇問題は、人類が解決すべき深刻な問題として認識されつつある。その一つの解決案として、大気中の二酸化炭素濃度低減のために、豊富な栄養塩類を含む海洋深層水を海洋表層部にリフトアップしてそのプランクトン生産量を増大するとともに大気中の二酸化炭素濃度を削減することが提案されている。この方法を海洋深層水リフトアップ装置をいうものとする。
【0003】
特許文献1は、海流が流れる海洋の中層部にプレートを斜めに配置して海流が流れる方向を上方へ変化させることを提案している。特許文献2は、500メートル以上の長さの筒を海洋に立て、筒上部を海洋表層水により間接加熱することによりその比重を軽くして筒下部から海洋深層水をリフトアップすることを提案している。しかしながら、ほとんどすべての海洋型二酸化炭素吸収技術はアイデア段階にとどまっている。
【0004】
第1の理由は、海洋の表層部に設置されるこの種の大規模海洋生産装置は、その設置自体は浮力を利用できるために比較的容易であるものの、海洋環境特有の問題である、船舶や大型魚類の衝突問題、波浪問題により、海洋生産装置の設置及び維持コストがそれぞれ巨額となるためである。波浪問題に関しては、特許文献3は海洋生産装置を沈降させることを提案している。
【0005】
第2の理由は、海洋深層水リフトアップ装置は、上記耐海洋環境性能を必要とするにもかかわらず、その経済的生産効率が低い点が挙げられる。リフトアップした海洋深層水を用いて有用な海洋生物を生産し、販売することにより費用の一部は回収できたとしても、上記した船舶や大型魚類の衝突問題や波浪問題に耐え得る海洋生産装置の設置及び維持費用を賄うことは困難である。
【特許文献1】特開2001−323430号公報
【特許文献2】特開2001−336479号公報
【特許文献3】特開平6−225664号公報
【特許文献4】特開2000−295939号公報
【特許文献5】特開2000−273836号公報
【特許文献6】特開平8−42275号公報
【特許文献7】特開平8−332994号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したように、二酸化炭素消費型海洋生産装置としての海洋深層水リフトアップ装置は、現在の技術レベルでは経済性を改善することが必要である。経済性の改善は、装置をできるだけ長期に使用することと、単位費用当たりの経済効果(二酸化炭素排出権の経済的価値を含む)を増大させる点に依存する。
【0007】
この観点から見た場合に、特許文献1が提案する海洋の中層部に配置される斜めプレートによる海洋中層部の海流方向の上方への偏向技術は、斜めプレートから上方へ放出された中層部の海流の上昇方向への速度エネルギーが水平方向へ流れる強力な海流との接触により渦や乱流として斜めプレートから排出された直後に急速に消失してしまう問題、中層部の斜めプレートまで海洋の深層部からの深層水をほとんど誘導することができないという問題をもち、海洋深層水を数百メートル上方の海洋の表層部まで到達させるのは困難であった。また、特許文献2が提案する筒上部を海洋表層水により間接加熱して海洋深層水をリフトアップする方法は、リフトアップする海洋深層水の流量の増大のために筒内部の海洋深層水と海洋深層水との間の移動熱量を大幅に増大させる必要があるため、並びに、海洋の表層部の間接熱交換器に対して上記した独特の海洋環境問題(衝突問題、波浪問題(竜巻を含む))を考慮する必要があるため、大規模な実用化が困難であった。
【0008】
更に、海洋深層水リフトアップ装置の経済性向上のために、大規模な魚保持装置を配置することも考えられるが、このような大規模な魚保持装置は、海洋深層水リフトアップ装置と同じく上記海洋環境問題をもつという問題があった。波浪による破損を回避するため海洋生産装置を沈降させることは有益であるが、海洋では天候急変が普通であり、その海洋生産装置の沈降管理が困難であった。
【0009】
本発明は、上記解決困難な問題を解決して建設及び維持が容易な海洋生産装置及びその保全装置を提供することをその目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する第1発明は、海洋の少なくとも表層部に配置される海洋生産装置において、海流が流れる前記海洋の表層部に開口する深層水流出口と、前記海洋の深層部に開口する深層水流入口と、前記表層部と前記深層部との間に配置されて前記深層水流入口から流入した前記海洋深層水を上方へ揚水した後、前記深層水流出口から排出させる筒部とを有する揚水管と、前記揚水管の深層水流入口及び深層水流出口に連結されて前記海流のエネルギーに基づいて前記揚水管内の前記海洋深層水を上方に付勢する深層水付勢装置と、前記揚水管及び深層水付勢装置の移動を規制する移動規制装置とを備えることを特徴としている。
【0011】
すなわち、この発明は、海流中に立設された揚水管に設けた揚水機構に海流エネルギーを作用させて揚水管中の海洋深層水のリフトアップを行う。このようにすれば、ほとんど無尽蔵な海流エネルギーを揚水管中の海洋深層水のリフトアップに用いることができるため、簡単な装置にて海洋深層水を海洋の表面部までローコストかつ効率よくリフトアップして利用することができる。
【0012】
好適な態様において、海洋の表層部は、水深50メートル未満を言い、海洋の深層部は水深150メートル以上更に好適には200メートル以上を言う。好適な態様において、移動規制装置は、一端が海底に固定されたロープとされる。その他、海底に配置され、剛体からなる揚水管の底部を固定するベースもこの移動規制装置を構成することができる。海流増速管や揚水管の上部に作用する波力の影響を低減するため、このロープはダンパ装置を通じて海底に固定されることができる。好適な態様において、前記揚水管の深層水流出口の後方に配置されて海草を生育させる海草生育装置を有する。この海草生育装置は、揚水管の深層水流出口の後方へ海流により延在するネットにより構成される。なお、このネットの開口は非常に大きくてよい。これにより、海洋表層部において、太陽エネルギー及び二酸化炭素を効率よく回収することができる。好適な態様において、前記揚水管の深層水流出口の後方に配置されて内部に魚や貝類を保持する魚槽を有する。このようにすれば、大量のプランクトンを魚槽に供給できるので魚保持飼料を最小限としつつ必要な種類の魚の生産を増加することができる。魚槽は、たとえばネットにより覆われる海中スペースにより構成されることができる。好適な態様において、魚槽は、海草生育装置を兼ねることができる。すなわち、魚槽の構成するネットを海草の根の定着部材とすることができる。
【0013】
好適な態様において、前記深層水付勢装置は、前記深層部に配置されて前記海流の動圧を受ける方向へ開口する取水口と、前記取水口と前記揚水管の深層水流入口とを接続する連結筒部とを有し、前記連結筒部は、前記取水口から前記揚水管の深層水流入口へ向けて細くなっている。このようにすれば、揚水管の深層水流入口に海流の動圧を増倍して作用させることができ、簡素な機構にて大量の海洋深層水をリフトアップすることができる。
【0014】
好適な態様において、前記深層水付勢装置は、前記表層部に配置されて前記海流の動圧を受けない方向へ開口する放水口と、前記放水口と前記揚水管の深層水流出口とを接続する連結筒部とを有する。このようにすれば、連結筒部内の海洋深層水は、放水口周囲の前記海流のエゼクタ効果により放水口へ向けて吸引されるため、簡素な機構にて大量の海洋深層水をリフトアップすることができる。
【0015】
好適な態様において、前記深層水付勢装置は、前記表層部に配置されて前記海流が流入する海流流入口、及び、前記海流が流出する海流流出口を有して内部の前記海流を外部の海流よりも増速して内部の水圧を外部の水圧よりも相対的に低下させる海流増速管を有し、前記放水口は、前記海流増速管に連通する。このようにすれば、揚水管の深層水流出口の圧力減少効果を向上することができるため、海洋深層水のリフトアップ能力を向上することができる。海流増速管は、海流流入口から流入した海流は、ノズル構造により増速減圧される。このようにすれば、簡素な静止構造により、海洋深層水のリフトアップ能力を向上することができる。
【0016】
好適な態様において、前記揚水管は、略魚形断面を有する。魚形断面の頭部は海流の上流側に、尾部は海流の下流側に配置される。これにより、海流に対する揚水管の抗力を大幅に削減することができるので、海流による揚水管の移動を規制する移動規制装置、たとえばアンカー及びロープの費用を大幅に低減することができる。好適な態様において、前記揚水管は、半魚形断面を有する樋状管を二枚突き合わせて接合して構成される。これにより、揚水管の製造が容易となる。
【0017】
好適な態様において、前記揚水管は比重が1未満とされる。これにより、揚水管の姿勢が海流に押されて水平方向へ寝るのを良好に防止することができる。好適な態様において、前記海流増速管は比重が1未満とされる。これにより、ロープにより海流増速管を所定深度に容易に保持することができる。
【0018】
好適な態様において、前記揚水管の深層水流出口は前記深層水を水平方向より上向きに放出する。このようにすれば、揚水管の上端部に設けられた深層水流出口を海面より深く配置しても、日射光量が大きい海面近傍に海洋深層水を到達させることができるため、波浪などによる揚水管などの破損を防止することができる。
【0019】
好適な態様において、前記揚水管の深層水流出口の後方に延在する魚槽を有し、前記魚槽は、海流上流側にて海流流入可能に海流方向と略直角に延在する剛構造の上流側の剛性壁部と、海流下流側にて海流流出可能に海流方向と略直角に延在する剛構造の下流側の剛性壁部と、前記両剛性壁部を連結して海流方向に延在するネットとを有する。このようにすれば、魚槽への海流や波浪の影響を低減しつつ大規模な魚槽を構成することができる。
【0020】
好適な態様において、前記揚水管の上部近傍に設置されて大型障害物の接近を検出するセンサと、前記揚水管の上部近傍に設置されて警報を発する警報装置と、前記センサの出力信号に基づいて前記大型障害物の接近を検出した場合に前記警報装置に警報出力を指令する制御装置とを有する。大型障害物としては、船舶や大型魚類が挙げられる。大型障害物を検出するセンサとしてはソナーとして公知の水中超音波センサを採用することができる。警報としては、無線又は発光又は空中音波又は水中音波を採用することができる。このようにすれば、船舶又は大型魚類が揚水管に衝突してそれを破損させるの確率を低減することができる。また、このようにすれば、電力生産が容易でない海洋において、警報装置の消費電力を低減することができる。
【0021】
上記課題を解決する第2発明は、海洋の少なくとも表層部に配置される海洋生産装置において、多数の開口を有して内部の魚保持空間を区画する魚保持スペース区画体と、前記魚保持スペース区画体に固定されて前記魚保持空間の周囲に向けて音波を放射する魚脱出防止装置を有することを特徴としている。このようにすれば、波浪などによる破損や海洋生物が付着するネットの必要量を低減しつつ、大規模な魚槽を実現することができる。なお、指向性音波としては、魚の忌避効果が高い周波数たとえば超音波が好適である。
【0022】
なお、魚脱出防止装置として通電装置を用いてもよい。この通電装置は、前記開口における所定のギャップを隔てて配置された一対の電極対をもち、この電極対間に直流電流又は交流電流を流すことにより、魚の近接を阻止する。このようにすれば、ネット交換費用を低減することができる。音波エネルギー発生に必要な電力は、海流や波力のエネルギーを用いて生産することができる。更に説明すると、目が細かい漁網によりたとえば半径数キロメートルといった海域を囲んで海洋魚保持層を構成する際に、波浪や流木により漁網が破れたり、漁網に海洋生物が付着したりして漁網が沈降する不具合が生じる。また、一端が海底に固定されたロープによりこの漁網を海流中に保持する場合、ロープと漁網との接合部には漁網に作用する海流抗力全体が作用し、同様に漁網の上流部は、自己に作用する海流抗力に加えて漁網の下流部に作用する海流抗力に耐える必要がある。つまり、海流中にて大型の海洋魚槽を静止させる場合、漁網の強度を大幅に増大させる必要があり、設置、交換費用が増大する。これに対して、この発明によれば、漁網を簡単な構造とすることができるため、海流抗力や波浪エネルギーによる漁網の破損や疲労を大幅に低減するとともに、その設置、交換費用を大幅に低減することができる。
【0023】
好適な態様において、魚脱出防止装置は、一定インタバルにて完結的に上記音波又は電流を定常的に出力することができる。たとえば、5秒間に0.1秒間だけ出力を行うことができる。これにより、必要電力を大幅に低減することができる。また、魚脱出防止装置として魚保持スペース区画体の周囲に多数配置されている超音波放射装置や電極対は同時に音波又は電流を出力するのではなく、時間的に異なるタイミングで出力することができる。このようにすれば、電源を小型化することができる。また、魚保持スペース区画体内の魚に持続的な影響を与えることができる。
【0024】
好適な態様において、海洋生産装置を構成する構造物はロープとされ、このロープに所定間隔で設けられた多数の超音波放射装置が設けられる。各超音波放射装置は、魚保持空間を囲むように指向性の超音波を放射する。その他、海洋生産装置を構成する構造物は互いに所定間隔を隔てて平行配置され、それぞれ一定間隔にて電極が配置された導電性ロープとされる。一対のロープの電極間には電圧が印加される。これにより電極間の海水中に電流が流れるため、魚はこの電流を忌避する。このようにすれば、波浪などによる疲労が大きい海面直下のネット部分を省略することができるため、好適な態様において、前記魚保持スペース区画体に固定されて前記魚保持スペースからの魚の脱出行動を検出する魚脱出検出センサと、前記魚脱出検出センサの出力信号に基づいて前記魚の脱出行動を検出した場合に前記魚脱出防止装置の作動を指令する制御装置とを有する。このようにすれば、安定な電力生産が容易でない海洋において省電力をはかりつつ安価で大容量の魚槽を実現することができる。魚脱出検出センサとしては、通常の超音波魚群探知機を用いることができる。音波放射器が音波センサの一部を兼ねることもできる。ネット交換頻度を低減することができる。魚がネット内の魚槽に侵入する場合にこの強力超音波や電流を放射せず、魚の侵入を許可することも可能であるが、鮫などの有害魚類が魚保持空間に侵入するという問題が生じる。
【0025】
上記課題を解決する第3発明は、海洋の少なくとも表層部に配置される海洋生産装置において、波力エネルギーの大きさ及び大型障害物の接近を検出するセンサと、前記海洋生産装置の沈降を行う沈降装置と、前記波力エネルギーが所定しきい値を超えると判定した場合及び前記大型障害物が接近したと判定した場合の少なくとも一方において、前記沈降装置に沈降を指令する沈降制御装置とを備えることを特徴としている。波力エネルギーの大きさを検出するセンサとしては、たとえば水中構造物の表面に設置された圧力センサを採用することができる。これにより、波浪が大きい場合や大型障害物が接近する場合に揚水管や魚槽などの水中構造物を沈降させてその破損を防止し、波浪が小さい場合には揚水管などを上昇させて太陽エネルギー密度が高い海洋表層部へ海洋深層水を放出したり、魚槽をプランクトン生産が豊富な海洋表層部に上昇させることができる。沈降装置の沈降力は、揚水管の上部や海流増速管に設置された翼部に作用する海流力により発生させることができる。つまり、海流方向と翼の弦方向との角度(いわゆる迎え角)を調整することにより海流を受ける翼の抗力と揚力とが変化するため、海流増速管や揚水管の上部の深さを調整することができる。迎え角の変化は、たとえば海流増速管や揚水管の上部や翼内部に収容された流体の移動による重心位置の変位により実現できる。その他、揚水管の上部や海流増速管に作用する浮力を調整したり、海流増速管を海底に固定するロープの長さをロープ巻き取り機の回転量を調節することにより実現することができる。
【0026】
波力エネルギーの大きさを検出するセンサとしては、海流増速管や揚水管の上部に配置された圧力センサを用いることができる。これらの管に作用する波力エネルギーが大きいと、圧力センサが検出する圧力変動が大きくなるため、圧力変動の大きさが所定レベルを超える場合に波浪が大きいと判定することができる。また、この圧力センサが検出する平均圧力はこのセンサの海面からの深さに比例するため、沈降量も検出することができる。この第2発明の海洋生産装置は、生け簀などにも利用することができる。大型障害物の接近を検出するセンサは、通常のソナーのような水中超音波距離測定装置を採用することができる。
【0027】
上記説明した本発明の海洋生産装置の好適実施態様を以下に説明する。ただし、本発明は、以下の実施態様に限定されないことはもちろんである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
(全体構造)
図1は、この発明の海洋生産装置を説明する模式図である。この海洋生産装置は海洋深層水リフトアップ装置であって、取水装置1と、揚水管2と、放水装置3と、ロープ(移動規制装置)4とを有しており、海流中に斜めに立った状態にて配置されている。ロープ4の下端は、図示しない海底に固定されたアンカーに固定され、ロープ4の上端は、取水装置1及び放水装置3に固定されている。5は海面であり、6は海流であり、矢印は海流が流れる方向を示す。
【0029】
取水装置1は、深層水付勢装置として海洋の深層部に配置されている。この明細書では、海面50より50メートル未満の海水領域を表層部、海面下200メートルより深い海水領域を深層部と呼ぶ。深層部の海水を深層水又は海洋深層水と呼ぶ。取水装置1の比重は1未満とされ、取水装置1には浮力F1と海流60に対する抗力F2とを合成した力F3が作用している。なお、この明細書では、浮力は、真の浮力から重力を減算した力の差を言うものとする。取水装置1は、海流60の上流側に向けて開口する取水口11をもつ。取水口11に流入した深層水60aは、自己の動圧により取水口11の内部を通って揚水管2内に押し込まれ、揚水管2の内部を上昇し、放水装置3に到達する。
【0030】
揚水管2は、内部の深層水60aを含む全体の比重が1未満とされている。取水装置1には浮力F4と海流60に対する抗力F5とを合成した力F6が作用している。力F6の方向を揚水管2の長さ方向と略等しくすることにより、揚水管2に掛かる曲げ力を低減できるため、揚水管2の曲げ剛性を小さくすることができる。21は揚水管2の深層水流入口、22は揚水管2の深層水流出口である。
【0031】
放水装置(海流増速管)3は、海洋の表層部に配置されたいわゆるエゼクタ装置であり本発明で言う深層水付勢装置を構成している。放水装置3の比重は1未満とされ、放水装置3には浮力F7と海流60に対する抗力F8とを合成した力F9が作用している。放水装置3は、海流60の上流側に向けて開口する海流流入口31と、海流60の略下流側に向けて開口する海流流出口32とを有する。海流流入口31から放水装置3の内部に流入した海流は放水装置3の内部に形成されたノズル構造により減圧増速される。放水装置3の出口部をディフューザ構造としてもよい。揚水管2の深層水流出口22は放水装置3の減圧された内部に連結されているため、揚水管2内の海洋深層水は、揚水管2の深層水流出口22から放水装置3の内部に吸い出される。放水装置3の海流流出口32は、入口31から取り込んだ海流と、揚水管2から吸い込んだ海洋深層水を斜め上方へ吹き出す。これはプランクトン生産効率が高い海面直下に栄養塩類を吹き上げるとともに、海流増速管に対する波浪の影響を軽減するためである。
【0032】
取水装置1に接続されるロープ4の方向は、力F3の方向により規定され、放水装置3に接続されるロープ4の方向は力F9の方向により規定される。取水装置1に接続されるロープ4と、放水装置3に接続されるロープ4とは同じアンカーに接続されることが経済的である。揚水管2もロープ4にて固定してもよい。
【0033】
(取水装置1)
取水装置1の構造を図2〜図4を参照して説明する。図2は取水装置1の模式垂直断面図、図3は取水装置1の模式水平断面図、図4は取水装置1の上半分を正面から見た模式正面図である。
【0034】
取水装置1は、海流60の動圧が揚水管2に最大限に掛かるように海流60の上流側に向けて開口する取水口11と、この取水口11から後方へへ向けて次第に狭く形成された角錐形のラッパ管部12と、ラッパ管部12の上端面から上方へ伸びる案内翼13と、ラッパ管部12の下端面から下方へ伸びる案内翼14とを有している。案内翼13、14は、海流により海流が流れる方向とほぼ平行に配置され、これにより最大流量の海流が取水口11に押し込まれる。すなわち、案内翼13、14は飛行機の垂直尾翼と同様の取水装置1の姿勢保持機能をもつ。飛行機の水平尾翼と同様、水平方向に伸びる案内翼を取水装置1に設けてもよい。これにより取水装置1の姿勢は更に安定する。取水装置1の姿勢は、取水装置1の浮力F1、抗力F2、揚水管2から取水装置1に掛かる力、及びロープの引っ張り力と、これらの力の作用点により規定されるが、これらの力の設計自体は容易に解決可能な機械工学上の問題であり、取水装置1の姿勢は取水口11への海洋深層水の取り込みを最大限とするように維持されることができる。ラッパ管部12の海流方向と直角な方向の断面積は後方へ向けて連続的に狭くなっており、ラッパ管部(連結管部)12の出口は揚水管2の深層水流入口21に連結されている。これにより、揚水管2の深層水流入口21から揚水管2内に入る海洋深層水の速度は増大する。
【0035】
(揚水管2)
揚水管2の構造を図5を参照して説明する。図5は揚水管2の模式水平断面図である。揚水管2は両端に締結用のリブをもつポリエチレン被覆鋼板からなるチューブにより構成されており、揚水管2の水平断面は魚形となっている。これにより、海流に対する抗力が大幅に低減される。揚水管2は、図5のAーA断面で分断した形状の半魚形板を2枚締結してなる。23は揚水管2内に配置されたリブであり、リブ23は揚水管2に掛かる負圧に対抗して揚水管2の形状を維持している。このようにすれば、半魚形板を積層して輸送できるため、輸送コストを減らすことができる。
【0036】
(放水装置3)
放水装置3の構造を図6を参照して説明する。図6は放水装置3の模式垂直断面図、図7は海流上流側からみた放水装置3の模式部分正面図である。
【0037】
放水装置3は、上流側の海流流入口31と、下流側の海流流出口32とを連通する海流増速管33を有している。海流増速管33の上流部は、海流流入口31から下流側へ狭くなるノズル部34を有している。ノズル部34は海流流入口31から流入した海流を増速し、この増速によりノズル部34内は減圧される。ノズル部34の上部には浮力を発生させるための空気室35と、海洋深層水を蓄積する深層水室36とが形成されている。ノズル部34、空気室35及び深層水室36は、図7に示すように海流の向きと直角な水平方向へ長く延在している。深層水室36の下端は揚水管2の深層水流出口22に連結されている。揚水管2の深層水流出口22には、ノズル部34内へ突出する放水筒部37が固定され、放水筒部37の下流端には放水口38が設けられている。
【0038】
海流流入口31からノズル部34に流入した海流60は、ノズル部34の断面積の減少により、増速減圧されて放水筒部37の外周を通過し、その後、後方かつ斜め上方へ曲げられて海流流出口32から斜め上方へ放出される。ノズル部34の減圧により、放水筒部37内の深層水60aは放水口38から後方へ吸い出される。これにより、深層水室36は、揚水管2の深層水流出口22から深層水室36を通じて放水筒部37へ流入する。39は、深層水流出口22近傍に配置されてノズル部34から出た海流及び深層水60aを斜め上方へ偏向する偏向翼である。
【0039】
(警報装置)
上記した海洋深層水リフトアップ装置への船舶又は大型魚類の接近を回避するための警報装置5を図8を参照して説明する。この警報装置5は、放水装置3の上端に1乃至複数固定されて略水平方向へ超音波を定期的に放射し、船舶や大型魚類から反射した超音波を検出する超音波センサ51と、超音波センサ51が受け取った超音波信号に基づいて、船舶又は大型魚類の大きさ、位置を演算することによりそれらの接近を判定する演算装置52と、船舶又は大型魚類の接近を検出した場合に超音波周波数又は可聴周波数の音響エネルギーを水中に放射し、かつ、音響や点滅信号を海面に浮かべたブイから放射する警報装置53、54とを有している。これらの装置への電力給電のために、海流により駆動されるタービンに連結された発電機や、海水電池を含む各種電池や波浪エネルギー発電装置などが放水装置3に装備される。発電電力はバッテリに一時的に蓄電されることが好適である。超音波センサ51の検出原理は従来周知の超音波式魚群探知機と同じとすることができるため、更なる説明を省略する。これにより、船舶や大型魚類の接近時に相手に警報を発するため、海洋深層水リフトアップ装置への衝突を回避することができる。警報を発する代わりに、後述する沈降装置を作動させて海洋深層水リフトアップ装置やそれに付帯する装置を沈降させてもよい。
【0040】
(沈降装置)
上記した海洋深層水リフトアップ装置の沈降装置6を図9を参照して説明する。この沈降装置6は、圧力センサ61と、演算装置62と、巻き上げモータ63と、ロープ巻き取りドラム64とを有し、これらの装置61〜64は放水装置3に固定されている。圧力センサ61は、放水装置3の上端面又はその上方に突出する棒体に固定されて、水圧を検出する。
【0041】
演算装置62は、圧力センサ61が検出した水圧の変動の大きさすなわち、所定時間内の水圧の最小値と最大値との差の絶対値を検出し、この差の絶対値が所定しきい値を超えたら波浪が大きいと判定することができる。つまり、波浪が大きいと、圧力センサ61の検出圧力の変動量が大きくなるので、この現象を利用して波浪エネルギーを推定することができる。また、放水装置3が沈降すると、圧力センサ61に作用する検出圧力の変動が減少するため、放水装置3の沈降を停止することができる。更に、上記差の絶対値が第2のしきい値より小さくなったら波浪が小さいとして放水装置3を上昇させる。これにより、波浪が大きいときのみ、放水装置3を沈降させてその破損を防止することができる。また、圧力センサ61の検出圧力の平均値により放水装置3の深度を判定することもできる。演算装置62は、波浪が大きいと判定した場合には巻き上げモータ63を駆動してこの巻き上げモータ63と連結されたロープ巻き取りドラム64を巻き上げる。これにより、ロープ巻き取りドラム64はロープ4を巻き取り、放水装置3は沈降する。演算装置62は、波浪が小さいと判定した場合には巻き上げモータ63を逆回転させてロープ巻き取りドラム64からロープ4を引き出す。これにより、放水装置3は自己の浮力により上昇する。巻き上げモータ63は回転しない場合にロープ4を拘束するロープロック機構を備えることが好ましい。なお、放水装置3を昇降させると同じ原理で、取水装置1も同期して昇降させることが好適である。
【0042】
沈降装置6の変形例として、放水装置3に回動可能な水平翼を設けてもよい。この水平翼を回動させると、海流から水平翼が受ける抗力及び揚力が変化するため、放水装置3に作用する力の方向が変化し、沈降深さを調節することができる。なお、水平翼を回動させる代わりに、ロープ巻き取り機を用いて、放水装置3の上流端のロープ4を長くするか、下流端のロープ4を短くしてもよい。これにより、海流に対する取水装置1の迎え角が変化するため、同様の作用により放水装置3の深さを調整することができる。なお、放水装置3などに作用する波浪エネルギーを緩和するため、ロープ4にダンパを設けてもよい。
【0043】
沈降装置6の変形例として、圧力センサ61をソナー(超音波水中距離検出装置)を採用してもよい。このソナーにより海洋深層水リフトアップ装置の周辺に存在する船舶や大型魚類の位置を計測する。演算装置62は、計測した位置の変化から船舶や大型魚類が接近して衝突する可能性を判定し、衝突可能性が高い場合に、海洋深層水リフトアップ装置の沈降を指令する。なお、この沈降制御は、海洋深層水リフトアップ装置のみでなく、この海洋深層水リフトアップ装置近傍に設置される魚槽の沈降制御にも利用することができる。
【0044】
(魚槽兼海草生育装置)
放水装置3の下流側には、海洋生産装置である魚槽兼海草生育装置7が配置されている。魚槽兼海草生育装置7を図10を参照して説明する。図10は魚槽兼海草生育装置7の模式斜視図である。魚槽兼海草生育装置7の保持及び沈降制御は、放水装置3と同様であるため、その説明は省略する。
【0045】
魚槽兼海草生育装置7は、海流60の上流側にて海流流入可能に海流方向と略直角に延在する剛構造の上流側の剛性壁部71と、海流60の下流側にて海流流出可能に海流方向と略直角に延在する剛構造の下流側の剛性壁部72と、剛性壁部71、72を連結して海流方向に延在するネット73とを有する。剛性壁部71は、それぞれ海流方向と直角方向に延在する多数のポリエチレン被覆鋼管711、712、713を組み立ててなる。711は水平方向に延在するポリエチレン被覆鋼管、712は垂直方向に延在するポリエチレン被覆鋼管、713は斜め方向に延在するポリエチレン被覆鋼管である。
【0046】
剛性壁部72は、それぞれ海流方向と直角方向に延在する多数のポリエチレン被覆鋼管721、722、723を組み立ててなる。721は水平方向に延在するポリエチレン被覆鋼管、722は垂直方向に延在するポリエチレン被覆鋼管、723は斜め方向に延在するポリエチレン被覆鋼管である。
【0047】
剛性壁部71のポリエチレン被覆鋼管711と剛性壁部72のポリエチレン被覆鋼管721とは多数のロープ730により接続され、剛性壁部71のポリエチレン被覆鋼管712と剛性壁部72のポリエチレン被覆鋼管722とは多数のロープ731により接続されている。各ロープ730は横ロープ732により接続され、各ロープ731は横ロープ733により接続されて、ネット73を構成している。剛性壁部71、72及びネット73は、内部に魚保持空間をもつ魚槽兼海草生育装置7を構成している。上流側の剛性壁部71は、海洋深層水リフトアップ装置の放水装置3と同様にロープにより海底のアンカーに締結されるか、放水装置3に締結されている。ネット73及び下流側の剛性壁部72、海流により剛性壁部71の下流側に配置される。魚槽兼海草生育装置7の底面を構成するロープ730は、海草の根が定着する海草定着ベースを兼ねている。
【0048】
(魚脱出防止装置)
魚槽兼海草生育装置7に設けた魚脱出装置を図11、図12を参照して説明する。図11は魚槽兼海草生育装置7の側壁部(魚保持スペース区画体の一部)70に沿って設けられた魚脱出防止装置を示す模式平面図、図12は魚脱出防止装置の側壁部の一部を示す模式正面図である。
【0049】
8は、魚槽兼海草生育装置7の側壁部70に固定された指向性の超音波放射装置であり、この側壁部に沿って延在するケーブルから給電されている。矢印は超音波放射方向を示す。すなわち、超音波放射装置8は、側壁部70の延在方向へ超音波を放射する。これにより、魚槽兼海草生育装置7の内部の魚保持スペースSから魚槽兼海草生育装置7の側壁部70を超えて外部へ魚が逃げ出すのを防止することができる。魚保持スペースSの上端面及び下端面にも同様の構造が魚保持スペース区画体の残部として配置されており、これにより、魚が魚保持スペースSから外部に脱出するのが防止される。また、海洋生物の付着や交換費用が大きい漁網維持費用の低減も可能となる。なお、魚保持スペースSの上端面への超音波放射装置8の配置は省略可能である。また、超音波放射装置8の代わりに、平行配置された2本のロープにそれぞれ電極を設け、これらの電極間に電流を流して、魚の脱出を防止してもよい。77は魚槽兼海草生育装置7の側壁部をなすロープである。なお、超音波の代わりに、特定波長の音波たとえばイルカやシャチの発生声を放射してもよい。あるいは、一本のロープに所定間隔を隔てて多数の電極を設け、互いに隣接する電極間で通電を行ってもよい。
【0050】
(魚脱出防止装置の制御)
魚脱出防止装置である超音波放射装置8の制御を図13に示すブロック図を参照して説明する。
【0051】
魚脱出防止装置9は、魚槽兼海草生育装置7の側壁部70や上端面及び下端面近傍の魚の存在を検出するソナー91と、このソナー91の出力信号に基づいて魚保持スペース区画体近傍に魚が存在するか否かを判定し、魚保持スペース区画体近傍に魚が存在すると判定した場合に超音波放射装置8に超音波放射を指令する制御装置92と、超音波放射装置8とからなる。ソナー91は、指向性超音波を放射し、
対象で反射した超音波を検出して信号電圧に変換し、制御装置92に出力する。制御装置92は、放射時点から所定時間内における反射超音波に対応する信号電圧の大きさが所定レベルを超える場合に魚保持スペース区画体近傍に魚が存在すると判定し、超音波放射装置8に超音波放射を指令する。ただし、ロープや網などの存在のために、固定的に反射する超音波が存在するため、制御装置92は、一定大きさの反射超音波に相当する信号電圧を入力信号電圧から差し引いてもよい。これにより、安定な電力生産が容易でない海洋において省電力をはかりつつ安価で大容量の魚槽を実現することができる。
【0052】
なお、ソナー91から遠く離れた魚体からの反射超音波量は、近くの魚体からの反射超音波量よりも小さくなるため、制御置92は、ソナー91から魚体までの距離に応じて、入力信号電圧(反射超音波の量)を補正するようにしてもよい。その他、魚の位置の変化から魚が魚保持スペースから魚保持スペース区画体に接近中か、あるいは外部海洋から魚保持スペース区画体へ接近中かを判別し、後者の場合には超音波放射を停止して、魚を魚保持スペースに取り込むようにしてもよい。なお、多数のソナー91を分散配置し、各ソナー91が近傍の超音波放射装置8だけを制御するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】実施例の海洋深層水リフトアップ装置を示す模式縦側面図である。
【図2】取水装置の模式垂直断面図である。
【図3】取水装置の模式水平断面図である。
【図4】取水装置の上半分を正面から見た模式正面図である。
【図5】揚水管の模式水平断面図である。
【図6】放水装置の模式垂直断面図である。
【図7】放水装置の模式部分正面図である。
【図8】船舶又は大型魚類の接近回避のための警報装置を示すブロック図である。
【図9】海洋深層水リフトアップ装置の沈降装置を示すブロック図である。
【図10】魚槽兼海草生育装置の模式斜視図である。
【図11】魚脱出防止装置を示す模式平面図である。
【図12】魚脱出防止装置の側壁部の一部を示す模式正面図である。
【図13】魚脱出防止装置である超音波放射装置を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0054】
1 取水装置、2 揚水管、3 放水装置、4 ロープ、5 警報装置、6 沈降装置、7 魚槽兼海草生育装置、8 超音波放射装置、9 魚脱出防止装置、11 取水口、12 ラッパ管部、13、14 案内翼、21 深層水流入口、22 深層水流出口、23 リブ、31 海流流入口、32 海流流出口、33 海流増速管、34 ノズル部、35 空気室、36 深層水室、37 放水筒部、38 放水口、51 超音波センサ、52 演算装置、53 警報装置、61 圧力センサ、62 演算装置、63 モータ、64 ドラム、70 側壁部、71 剛性壁部、72 剛性壁部、73 ネット、91 ソナー、92 制御装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
海洋の少なくとも表層部に配置される海洋生産装置において、
海流が流れる前記海洋の表層部に開口する深層水流出口と、前記海洋の深層部に開口する深層水流入口と、前記表層部と前記深層部との間に配置されて前記深層水流入口から流入した前記海洋深層水を上方へ揚水した後、前記深層水流出口から排出させる筒部とを有する揚水管と、
前記揚水管の深層水流入口及び深層水流出口に連結されて前記海流のエネルギーに基づいて前記揚水管内の前記海洋深層水を上方に付勢する深層水付勢装置と、
前記揚水管及び深層水付勢装置の移動を規制する移動規制装置と、
を備えることを特徴とする海洋生産装置。
【請求項2】
請求項1記載の海洋生産装置において、
前記深層水付勢装置は、前記深層部に配置されて前記海流の動圧を受ける方向へ開口する取水口と、前記取水口と前記揚水管の深層水流入口とを接続する連結筒部とを有し、前記連結筒部は、前記取水口から前記揚水管の深層水流入口へ向けて細くなっている海洋生産装置。
【請求項3】
請求項1記載の海洋生産装置において、
前記深層水付勢装置は、前記表層部に配置されて前記海流の動圧を受けない方向へ開口する放水口と、前記放水口と前記揚水管の深層水流出口とを接続する連結筒部とを有する海洋生産装置。
【請求項4】
請求項3記載の海洋生産装置において、
前記深層水付勢装置は、前記表層部に配置されて前記海流が流入する海流流入口、及び、前記海流が流出する海流流出口を有して内部の前記海流を外部の海流よりも増速して内部の水圧を外部の水圧よりも相対的に低下させる海流増速管を有し、前記放水口は、前記海流増速管に連通する海洋生産装置。
【請求項5】
請求項1記載の海洋生産装置において、
前記揚水管は、略魚形断面を有する海洋生産装置。
【請求項6】
請求項1記載の海洋生産装置において、
前記揚水管の深層水流出口の後方に延在する魚槽を有し、前記魚槽は、海流上流側にて海流流入可能に海流方向と略直角に延在する剛構造の上流側の剛性壁部と、海流下流側にて海流流出可能に海流方向と略直角に延在する剛構造の下流側の剛性壁部と、前記両剛性壁部を連結して海流方向に延在するネットとを有する海洋生産装置。
【請求項7】
請求項1記載の海洋生産装置において、
前記揚水管の上部近傍に設置されて大型障害物の接近を検出するセンサと、
前記揚水管の上部近傍に設置されて警報を発する警報装置と、
前記センサの出力信号に基づいて前記大型障害物の接近を検出した場合に前記警報装置に警報出力を指令する制御装置と、
を有する海洋生産装置。
【請求項8】
海洋の少なくとも表層部に配置される海洋生産装置において、
多数の開口を有して内部の魚保持空間を区画する魚保持スペース区画体と、
前記魚保持スペース区画体に固定されて前記魚保持空間の周囲に向けて音波を放射する魚脱出防止装置を有することを特徴とする海洋生産装置。
【請求項9】
請求項8記載の海洋生産装置において、
前記魚保持スペース区画体に固定されて前記魚保持スペースからの魚の脱出行動を検出する魚脱出検出センサと、
前記魚脱出検出センサの出力信号に基づいて前記魚の脱出行動を検出した場合に前記魚脱出防止装置の作動を指令する制御装置とを有する海洋生産装置。
【請求項10】
請求項9記載の海洋生産装置において、
前記制御装置は、前記魚脱出検出センサの出力信号に基づいて外部の魚が前記水槽に侵入することを検出した場合に前記魚脱出防止装置の作動を禁止する海洋生産装置。
【請求項11】
海洋の少なくとも表層部に配置される海洋生産装置において、
波力エネルギーの大きさ及び大型障害物の接近を検出するセンサと、
前記海洋生産装置の沈降を行う沈降装置と、
前記波力エネルギーが所定しきい値を超えると判定した場合及び前記大型障害物が接近したと判定した場合の少なくとも一方において、前記沈降装置に沈降を指令する沈降制御装置と、
を備えることを特徴とする海洋生産装置。
【請求項1】
海洋の少なくとも表層部に配置される海洋生産装置において、
海流が流れる前記海洋の表層部に開口する深層水流出口と、前記海洋の深層部に開口する深層水流入口と、前記表層部と前記深層部との間に配置されて前記深層水流入口から流入した前記海洋深層水を上方へ揚水した後、前記深層水流出口から排出させる筒部とを有する揚水管と、
前記揚水管の深層水流入口及び深層水流出口に連結されて前記海流のエネルギーに基づいて前記揚水管内の前記海洋深層水を上方に付勢する深層水付勢装置と、
前記揚水管及び深層水付勢装置の移動を規制する移動規制装置と、
を備えることを特徴とする海洋生産装置。
【請求項2】
請求項1記載の海洋生産装置において、
前記深層水付勢装置は、前記深層部に配置されて前記海流の動圧を受ける方向へ開口する取水口と、前記取水口と前記揚水管の深層水流入口とを接続する連結筒部とを有し、前記連結筒部は、前記取水口から前記揚水管の深層水流入口へ向けて細くなっている海洋生産装置。
【請求項3】
請求項1記載の海洋生産装置において、
前記深層水付勢装置は、前記表層部に配置されて前記海流の動圧を受けない方向へ開口する放水口と、前記放水口と前記揚水管の深層水流出口とを接続する連結筒部とを有する海洋生産装置。
【請求項4】
請求項3記載の海洋生産装置において、
前記深層水付勢装置は、前記表層部に配置されて前記海流が流入する海流流入口、及び、前記海流が流出する海流流出口を有して内部の前記海流を外部の海流よりも増速して内部の水圧を外部の水圧よりも相対的に低下させる海流増速管を有し、前記放水口は、前記海流増速管に連通する海洋生産装置。
【請求項5】
請求項1記載の海洋生産装置において、
前記揚水管は、略魚形断面を有する海洋生産装置。
【請求項6】
請求項1記載の海洋生産装置において、
前記揚水管の深層水流出口の後方に延在する魚槽を有し、前記魚槽は、海流上流側にて海流流入可能に海流方向と略直角に延在する剛構造の上流側の剛性壁部と、海流下流側にて海流流出可能に海流方向と略直角に延在する剛構造の下流側の剛性壁部と、前記両剛性壁部を連結して海流方向に延在するネットとを有する海洋生産装置。
【請求項7】
請求項1記載の海洋生産装置において、
前記揚水管の上部近傍に設置されて大型障害物の接近を検出するセンサと、
前記揚水管の上部近傍に設置されて警報を発する警報装置と、
前記センサの出力信号に基づいて前記大型障害物の接近を検出した場合に前記警報装置に警報出力を指令する制御装置と、
を有する海洋生産装置。
【請求項8】
海洋の少なくとも表層部に配置される海洋生産装置において、
多数の開口を有して内部の魚保持空間を区画する魚保持スペース区画体と、
前記魚保持スペース区画体に固定されて前記魚保持空間の周囲に向けて音波を放射する魚脱出防止装置を有することを特徴とする海洋生産装置。
【請求項9】
請求項8記載の海洋生産装置において、
前記魚保持スペース区画体に固定されて前記魚保持スペースからの魚の脱出行動を検出する魚脱出検出センサと、
前記魚脱出検出センサの出力信号に基づいて前記魚の脱出行動を検出した場合に前記魚脱出防止装置の作動を指令する制御装置とを有する海洋生産装置。
【請求項10】
請求項9記載の海洋生産装置において、
前記制御装置は、前記魚脱出検出センサの出力信号に基づいて外部の魚が前記水槽に侵入することを検出した場合に前記魚脱出防止装置の作動を禁止する海洋生産装置。
【請求項11】
海洋の少なくとも表層部に配置される海洋生産装置において、
波力エネルギーの大きさ及び大型障害物の接近を検出するセンサと、
前記海洋生産装置の沈降を行う沈降装置と、
前記波力エネルギーが所定しきい値を超えると判定した場合及び前記大型障害物が接近したと判定した場合の少なくとも一方において、前記沈降装置に沈降を指令する沈降制御装置と、
を備えることを特徴とする海洋生産装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
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【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−189972(P2007−189972A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−12745(P2006−12745)
【出願日】平成18年1月20日(2006.1.20)
【出願人】(392029742)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月20日(2006.1.20)
【出願人】(392029742)
【Fターム(参考)】
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