説明

海苔網活性処理装置

【課題】海苔の活性処理を確実に施すことができ、海苔の健康的な育成を図ることができ、コストも低廉である海苔網活性処理装置を提供すること。
【解決手段】船2上に配置された活性処理液槽4と、船2上に持ち上げられて船首側から後方に向けて搬送される海苔網101を上から押えて活性処理液槽4内の活性処理液中に浸漬させる海苔網上方押え部材5とを有し、当該海苔網上方押え部材5は、活性処理液槽4内に独立的に設置されており、海苔網101の長手方向端部の先端部側においては、船首部から後方に向けて持ち上げられて搬送される海苔網101の先端縁部を乗り越えて海苔網101の上面に乗上げ、海苔網101の先端縁部より後方側においては、海苔網101を上面側から押えて活性処理液槽4内の活性処理液中に浸漬させ、海苔網101の後端部側においては、船2の後方に向けて搬送される海苔網101の後端縁部を越えて海苔網101外へ出るように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海苔養殖場において海面部分に展張されている海苔網やこれに繁殖している海苔を洗浄したり、これらの海苔網や海苔に対して効果的な海苔の活性処理を施す海苔網活性処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、海苔養殖は海苔網に浮子を取付けて海面に浮かすように展張して錨で止める浮き流し方式や海中に立設した支柱に海苔網を展張した支柱方式によって行なわれている。
【0003】
この海苔養殖においては、海中に展張されている海苔網に珪藻類が付着して海苔網が汚れてしまい、海苔の成長が阻害されたり、病気に罹りやすくなり、育苗効率が低下するという不都合があった。そこで、健康な海苔を育成し、収穫率を向上させるために海苔網に対して活性処理を施している。
【0004】
本出願人は、特許第3193655号公報(特許文献1)により、このような海苔養殖において、動力推進機構を有する船を海面部分に展張されている海苔網の下面をくぐるように進行させて、前記海苔網を船体の船首部から後部へ相対移動させながら海苔網に対して活性処理を施し、更に後部案内部材をもってこの活性処理に有効な時間だけ前記海苔網を浮上させた後に海面の前記展張位置へ戻して再び展張させるようにするとともに、海苔網および海苔養殖施設を構成する綱類をスムースに通過させつつ前記綱類より上方位置に所望の部材を支持することができるとともに、構成が簡単であり、軽量で、コストも低廉な海苔養殖施設を構成する綱類通過装置を提案し、また、前記海苔養殖施設を構成する綱類通過装置を利用して海苔網浸漬体を処理液槽に対して常に所定位置関係に保持し、海苔網および前記綱類をスムーズに通過させることができ、海苔網を確実に処理液槽中の処理液中に浸漬通過させることができ、適正な処理を施すことのできる海苔網処理装置を提案し、また前記海苔養殖施設を構成する綱類通過装置を利用して活性処理や海苔の刈取りを施すことのできる海苔作業船を提案している。
【0005】
【特許文献1】特許第3193655号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
海苔網を船上に配置された活性処理液槽中の活性処理液内に浸漬させて活性処理を施すためには、特許文献1に示すように、海苔網を上から押さえ込んで活性処理液内に浸漬させる必要があり、装置の一層の簡略化が望まれていた。
【0007】
本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、海苔網を上から押えて活性処理液槽内の活性処理液中に浸漬させる海苔網上方押え部材を単独で活性処理液槽内に保持させることができるとともに、当該海苔網上方押え部材が船の進行に伴って後方に搬送される海苔網の先端部において下側から上面に乗り上げて海苔網を活性処理液内に浸漬させ、海苔網の後端部において海苔網の上面から下側に抜けて海苔網を通過させることができ、海苔の活性処理を確実に施すことができ、海苔の健康的な育成を図ることができ、コストも低廉である海苔網活性処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するため、本発明の海苔網活性処理装置は、浮き流し方式または支柱方式によって海面に展張されている海苔網に対して活性処理を施す海苔網活性処理装置であって、船上に配置された活性処理液槽と、船上に持ち上げられて船首側から後方に向けて搬送される前記海苔網を上から押えて前記活性処理液槽内の活性処理液中に浸漬させる海苔網上方押え部材とを有し、当該海苔網上方押え部材は、前記活性処理液槽内に独立的に設置されており、前記海苔網の長手方向端部の先端部側においては、前記船首部から後方に向けて持ち上げられて搬送される前記海苔網の先端縁部を乗り越えて海苔網の上面に乗上げ、前記海苔網の前記先端縁部より後方側においては、前記海苔網を上面側から押えて前記活性処理液槽内の活性処理液中に浸漬させ、前記海苔網の後端部側においては、船の後方に向けて搬送される前記海苔網の後端縁部を越えて海苔網外へ出るように形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、活性処理液槽内に独立的に設置されている海苔網上方押え部材が、船上に持ち上げられて船首側から後方に向けて搬送される海苔網の先端縁部を乗り越えて海苔網の上面に乗上げ、船の後方に向けて搬送される海苔網を活性処理液内に浸漬させた後に、海苔網の後端縁部を越えて海苔網外へ出ることができるので、海苔網上方押え部材を単独で活性処理液槽内に保持させることができるとともに、海苔の活性処理を確実に施すことができ、海苔の健康的な育成を図ることができ、コストも低廉なものとなる。
【0010】
また、本発明の海苔網活性処理装置においては、前記海苔網が2本の端部綱の間に海苔網の長手方向の両端部を対向させて配置され、当該海苔網の両端部の縁綱の両端部角隅部をそれぞれ手綱をもって前記端部綱に接続して海面に展張されており、前記海苔網上方押え部材は、前記海苔網の先端部側においては、前記船首部から後方に向けて順に持ち上げられて搬送される前記端部綱、2本の手綱および海苔網の先端部の縁綱からなる先端部側入口を通過して海苔網の上面に乗上げ、前記海苔網の後端部側においては、前記船首部から後方に向けて順に持ち上げられて搬送される前記海苔網の後端部の縁綱、2本の手綱および端部綱からなる後端部側出口を通過して海苔網外へ出るように形成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、活性処理液槽内に独立的に設置されている海苔網上方押え部材が、海苔網の展張構造に応じて形成される先端部側入口を通過して海苔網の上面に乗上げ、海苔網を活性処理液内に浸漬させた後に、後端部側出口より海苔網外へ出ることができるので、端部綱に手綱をもって接続されている海苔網に対しても海苔網上方押え部材によって確実に上から押えて活性処理液槽内の活性処理液中に浸漬させることができ、これにより海苔の活性処理を確実に施すことができ、海苔の健康的な育成を図ることができ、コストも低廉なものとなる。
【0012】
また、本発明の海苔網活性処理装置は、前記海苔網上方押え部材が、前記海苔網の先端部側において、前記船首部から後方に向けて順に持ち上げられて搬送される前記枠綱、2本の手綱および自重若しくは錘体の重量によって前記枠綱より下方に位置している海苔網の先端部の縁綱によって形成される前記先端部側入口より海苔網の上面に乗上げられることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、海苔網の先端部の縁綱が自重若しくは錘体の重量によって枠綱より下方に位置していることにより、先端部側入口が鉛直方向に開口するように形成され、その先端部側入口から海苔網上方押え部材が確実に海苔網の上面側に乗り上げることができ、海苔網が海苔網上方押え部材によって確実に活性処理液槽内の活性処理液中に浸漬させされ、海苔の活性処理が確実に施されることとなる。
【0014】
また、本発明の海苔網活性処理装置は、海苔網が浮き流し方式によって海に展張されており、端部綱が枠綱からなることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、浮き流し方式の海苔網に対して適正な海苔の活性処理を施すことができる。
【0016】
また、本発明の海苔網活性処理装置は、海苔網が支柱方式によって海面に展張されており、前記端部綱は浮子綱からなることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、支柱方式の海苔網に対して適正な海苔の活性処理を施すことができる。
【0018】
また、本発明の海苔網活性処理装置は、海苔網が、下方に垂設された2本の脚部と、これら脚部を連結する長辺とからなるコ字形状の剛体状の枠体であって前記長辺を並列するように配置されている複数の枠体と、前記各脚部の端部に枠体の並列方向両側に配設されて前記枠体を起立させる浮子と、前記各長辺に挿通され、前記各枠体を回動自在に支持する回動部材と、前記各回動部材に連結され、前記各枠体を連結する連結手段と、前記長辺の少なくとも一端側の脚部に配設されている各浮子の枠体の並列方向における一端側にそれぞれ連結されて前記各枠体を連結する転倒用連結手段とを有する干出装置の、前記各枠体間に吊り綱をもって吊り下げることにより張設されていることを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、干出装置を用いて展張されている海苔網に対して適正な海苔の活性処理を施すことができる。
【発明の効果】
【0020】
このように本発明の海苔網活性処理装置は構成され、作用するものであるから、海苔網を上から押えて活性処理液槽内の活性処理液中に浸漬させる海苔網上方押え部材を単独で活性処理液槽内に保持させることができるとともに、当該海苔網上方押え部材が船の進行に伴って後方に搬送される海苔網の先端部において下側から上面に乗り上げて海苔網を活性処理液内に浸漬させ、海苔網の後端部において海苔網の上面から下側に抜けて海苔網を通過させることができ、海苔の活性処理を確実に施すことができ、海苔の健康的な育成を図ることができ、コストも低廉とすることができる等の優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、本発明の海苔網活性処理装置の実施形態を図1から図 により説明する。
【0022】
図1から図10は本発明の海苔網活性処理装置の第1実施形態を示す。
【0023】
第1実施形態の海苔網活性処理装置1は、図1に示すように、海苔作業船2に搭載して形成されており、図1から図10においては浮き流し方式によって海面に展張されている海苔網101に対して活性処理を施す場合を示している。
【0024】
海苔作業船2は長方形の箱船状に形成されており、後部(図1の左側)には、自走用のエンジン3が設置されており、甲板部分には、船首部(図1の右側)からエンジン3の直前部分に至る矩形の活性処理液槽4が形成されている。この活性処理液槽4内には、船上に持ち上げられて船首側から後方に向けて搬送される海苔網101を上から押えて活性処理液槽4内の活性処理液4a(図9および図10参照)中に浸漬させる海苔網上方押え部材5が独立的に設置されている。
【0025】
海苔網上方押え部材5は金属棒材若しくは金属パイプ材を組み合わせて溶接することによって形成されている。海苔網上方押え部材5は金属棒材を略U字状に折り曲げ形成し、U字の中心線を海苔作業船2の中心線と平行とし、最下部に配置されるベース部材5aを有している。このベース部材5aは、U字の頂部を船首側に配置し、後端の平行部分を船尾側に配置し、平行部分を幅方向に前後2本の連結部材5b、5bによって連結して活性処理液槽4の底面上に載置される基底部5cとし、前記頂部を当該基底部から斜め上向きに傾斜させるとともに活性処理液槽4の前端縁より上方に伸びていて海苔網101の端縁部に乗り上げて海苔網101を活性処理液槽4内に導く導入部5dとしている。ベース部材5aと連結部材5bとの前後方向には2本の補強部材5e、5eが掛け渡されている。また、ベース部材5aの平行部分と2本の下部補強部材5e、5eのそれぞれの後端部からの立ち上がり部と、ベース部材5aの導入部の後部部分とに亘る略コ字状の上部補強部材5fが設けられている。また、上部補強部材5fの平行部分の各辺とベース部材5aの導入部の後部部分との間には、それぞれ位置規制部材5gが設けられている。この位置規制部材5gは活性処理液槽4の内面を外側に凹入させた凹部4aに入り込むように外側に屈曲させられていて、海苔網上方押え部材5が海苔作業船2の前後方向に移動することを防止している。また、各位置規制部材5gの幅方向端部と上部補強部材5fのコ字形の幅方向の両端部は、活性処理液槽4の内面と衝突しながら海苔網上方押え部材5の中心線を海苔作業船2の中心線と平行に保持するものである。
【0026】
海苔作業船2の船首部分には、海苔網を掬い上げるために船の前方海中まで伸びる略U字状の前方案内部材6が基端部を船首の両側部分にヒンジ6aをもって回動自在に取付られて、掬い上げ位置(図9の実線位置参照)と収納位置(同図の鎖線位置参照)とを選択できるようにされている。
【0027】
また、海苔作業船2の後部においては、海苔網101が円滑に通過できるように、エンジン3部分を後方案内部材7によって覆っている。
【0028】
次に、本第1実施形態による海苔の活性処理方法を説明する。
【0029】
図1から図10に示す浮き流し方式においては、養殖場において、2本の端部綱となる2本の枠綱102が海苔網101の長さより長い間隔をもって平行に海面に張られている。細長い海苔網101は網の周囲を太い縁綱104によって囲まれて形成されている。2本の枠綱102の間に海苔網101より広い幅の間隔で多数の浮子綱103が張設され、各浮子綱103の間において海苔網101がその両端部を枠綱102に対向させて配置され、海苔網101の両端部の縁綱104の両端部角隅部をそれぞれ手綱105をもって枠綱102に接続して海面に展張されている。海苔網101の側端部を形成する縁綱104部分は所定間隔毎に吊り綱106をもって浮子綱103に接続されている。浮子綱103には長手方向の所定間隔毎に浮子103aが取付されている。
【0030】
このようにして形成されている浮き流し方式の海苔網101に対する活性処理は、次のようにして行われる。
【0031】
まず、図5に示すように、前方案内部材6を海苔作業船2の船首より外に出した状態で船首を海苔網101に対面させる。
【0032】
続いて海苔作業船2を進行させると、図6に示すように、前方案内部材6が枠綱102、手綱105、海苔網101の長手方向端部の縁綱104、海苔網101の順に船上に持ち上げるようにしながら海苔網101の下に潜って進行する。これにより海苔網101の長手方向端部の先端部側においては、船首部から後方に向けて持ち上げられて搬送されることとなる。
【0033】
更に説明すると、前方案内部材6によって船上まで持ち上げられた枠綱102は海苔網上方押え部材5の導入部5dの上方を前方案内部材6および海苔作業船2の両舷側位置において下側から支持されながら案内されて通過する。
【0034】
続いて、2本の手綱105、105および海苔網101の長手方向端部の端縁部となる縁綱104が海苔網上方押え部材5の導入部5dにさしかかる。このとき、端縁部となる縁網104は自重(若しくは添設した錘体(図示せず)の重量も含めた重量)によりを鉛直高さが海苔網上方押え部材5の導入部5dの先端部の頂部より低くなる。これにより海苔網上方押え部材5の導入部5dの先端部の頂部は既に通過した枠綱102、2本の手綱105、105および海苔網101の長手方向端部の端縁部となる縁綱104によって形成される矩形の先端部側入口8の下から上に越えるようして海苔網101の上面側に乗上げる。
【0035】
その後、海苔作業船2の進行に伴って海苔網上方押え部材5の全体が先端部側入口8を通過して次第に海苔網101の上面に乗上げて行く。このとき枠綱102に対する2本の手綱105の取付位置の間隔H(図5参照)が海苔網上方押え部材5の平面透視図の幅W(図3、図5参照)より大きく、先端部側入口8を形成する枠綱102、2本の手綱105および海苔網101の縁綱104の合計長さによって形成し得る矩形の大きさが、海苔網上方押え部材5の正面透視の最大矩形の大きさより大きいので、海苔網上方押え部材5は当該先端部側入口8を余裕をもって通過して、全体が海苔網101の上面に乗り上がることとなる。なお、手綱105の長さを、長すぎず且つ短すぎない丁度よい長さにして、海苔網上方押え部材5の導入部5dが先端部側入口8部分に挿入された後に直ちに海苔網101の縁綱104に乗上げることができるように形成するとよい。不必要に長い手綱105が無くなり、海苔網上方押え部材5を確実に海苔網101に乗上げさせることができ、更に海苔網101の海面に対する展張効率を高くすることができる。これにより海苔網101は海苔網上方押え部材5の導入部5dの下側を通ることによって活性処理液槽4内の活性処理液内に導かれ、基底部5cによって更に活性処理液槽4内の底部に導かれる。
【0036】
その後、海苔網101の先端縁部より後方側においては、図7に示すように、海苔作業船2の進行に伴って海苔網上方押え部材5の全体が海苔網101を上面側から押えて活性処理液槽内の活性処理液中に浸漬させて船尾側に搬送させる。この時、海苔網101と浮子綱103とを連結する吊り綱106は前方案内部材6および海苔作業船2の両舷側位置において下側から支持されながら案内されて通過する(図10参照)。船尾側においては、海苔網上方押え部材5の基底部5d部分を船尾側に通過した海苔網101が、続いて船尾部分の後方案内部材7によってエンジン3より上に持ち上げられるようにして活性処理液槽4内の活性処理液から取出され、船尾部分の後方の海面に戻される。
【0037】
その後、海苔網101の搬送が進行し、海苔網101の後端部側に至ると、図8に示すように、海苔作業船2の船首部から後方に向けて順に持ち上げられて搬送される海苔網101の後端部の縁綱104、2本の手綱105および端部綱となる枠綱102からなる後端部側出口9を海苔網上方押え部材5が上から下に向けて通過して海苔網101外へ出る。その後、海苔網101の全体が海苔作業船2から出て船尾部分の後方の海面に戻される。
【0038】
このように本第1実施形態によれば、活性処理液槽4内に独立的に設置されている海苔網上方押え部材5が、船上に持ち上げられて船首側から後方に向けて搬送される海苔網101の先端縁部を乗り越えて海苔網101の上面に乗上げ、船2の後方に向けて搬送される海苔網101を活性処理液内に浸漬させた後に、海苔網101の後端縁部を越えて海苔網101外へ出ることができるので、海苔網上方押え部材5を自重によって単独で活性処理液槽4内に保持させることができるとともに、海苔の活性処理を確実に施すことができるし、海苔の健康的な育成を図ることができ、コストも低廉なものとなる。
【0039】
次に、図11に示す本発明の第2実施形態を説明する。
【0040】
本第2実施形態は、支柱を用いて海苔網を海面に展張している支柱方式について適用したものである。
【0041】
支柱方式においては、水深の浅い海の海底に適宜な間隔をおいて海苔網101幅より大きな適宜な幅間隔で立設された複数の支柱11、11へ、たるみの大きい吊り綱016により縁綱104と締結することにより係止されている。海苔 網101の長手方向に立設された支柱11と支柱11のほぼ中間位置の海苔網101の幅方向たる短手方向に、海苔網101に浮力を与え、さらに海苔網101の捻れを防止するために、軸方向に伸びるように形成された伸子棒12が、その両端を縁綱3に係止されて海苔の養殖場に展張されて設置されている。
【0042】
海苔網101の長手方向の端部においては、支柱11に浮力のある浮動環13を海面と一緒に上下動するように遊挿し、2つの浮動環13の間を途中に浮子107aを取付けた浮子綱107によって連結し、浮子綱107に対向している海苔網101の両端部の縁綱104の両端部角隅部をそれぞれ手綱105をもって浮子綱107に接続して海面に展張されている。
【0043】
前記各支柱11には、環状に形成された適宜な重さの海に没する沈降体14が装着されている。この沈降体14は、支柱11に吊り綱106を係止した後に支柱11へ遊嵌することにより配設されている。そして、沈降体14により、海苔網101を支柱11間に展張した際に、海苔網1012を海苔網101の短手方向(幅方向)の両外側に位置する支柱11の幅間隔の略中央に保持するようにしている。
【0044】
なお、各吊り綱106の支柱側端部は、浮子綱107と同様に支柱11に遊挿した浮動環13に固着するようにしてもよい。
【0045】
本実施形態においては、海苔網101の長手方向端部の先端部側入口および後端部出口が浮子綱107、2本の手綱105および海苔網101の端部の縁綱104によって矩形に形成されている。
【0046】
これらの先端部側入口および後端部出口が前記第1実施形態と同様の寸法条件を備えることにより、海苔網上方押え部材5が通過することができ、前記第1実施形態と同様に、海苔の活性処理を確実に施すことができるし、海苔の健康的な育成を図ることができ、コストも低廉なものとなる。
【0047】
また、海苔網101の端部を手綱105および浮子綱107を用いないで、吊り綱106を用いて支柱11に連結する場合には、先端部側入口および後端部出口が形成されないので、海苔網上方押え部材5は海苔網101の長手方向端部の縁綱104を乗り越えるようにして海苔網101の上面に乗り上がることとなる。
【0048】
次に、図12から図18に示す本発明の第3実施形態を説明する。
【0049】
本第3実施形態は、海苔網の干出装置を用いて海苔網を海面に展張している浮き流し方式について適用したものである。
【0050】
まず本第3実施形態に用いる海苔網の干出装置21は、図12から図15に示すように、長辺23と、この長辺23の両端から下方に一体的に垂設された脚部24,24を有する複数のコ字形状の剛体状の枠体22,22...が平行に配置されている。
【0051】
前記各枠体22,22...の長辺23の各両端部にはそれぞれ浮子26が配設されるとともに、各浮子26の内側には筒状の軸受状の回動部材27が長辺23を挿通するようにしてそれぞれ配設されている。隣接する前記各枠体2,2...は、前記各回動部材27においてそれぞれロープからなる連結手段28により相互に連結されている。前記各連結手段28は、前記各枠体22,22...の配列方向において各枠体22,22から延在して延在部28a,28bが設けられている。なお、前記各回動部材27は1つの長尺な筒体等でもよい。
【0052】
さらに、前記各脚部24,24の下端部は枠体22の配列方向に突出するT字状に2股に形成されており、このT字部25の両端部25a,25bにはそれぞれ枠体22を浮力をもって海面上に起立させる浮子31が配設されている。この浮子31としては脚部24から枠体22の並列方向両側に配設されて枠体22を起立させることができるものであればよく、図示している2個の浮子31を連続させて1個の浮子として形成してもよい。枠体22の長辺23の同一側端部に備えられている各浮子31の枠体22の並列方向における一端側部分を1本のロープからなる転倒用連結手段29a、29bによって相互に連結している。長辺23の反対側にある浮子31に対する転倒用連結手段29a、29bの連結位置は、各浮子31の枠体22の並列方向に対する反対側の端部とされて、各枠体22を反対方向に引き倒すことができるようにしている。一方の転倒用連結手段のみを設けてもよい。
【0053】
そして、前記各枠体22,22...の長辺23の中央には、隣接配置する各枠体22,22...間にわたって海苔網101が張設されいる。この海苔網101には、海苔網101の撓みを小さくするため一定の間隔毎に前記各枠体22,22...と平行に伸子棒12が配設されている。
【0054】
また、前記海苔網101は、前記各枠体22,22...の配列方向において一定の間隔毎に、吊り綱106によって前記各連結手段28に吊設されている。 本第3実施形態においては、各枠体22の長辺23と各連結手段28の連結位置と、海苔網101の縁綱104と吊り綱106とをもって連結しており、各連結手段28の連結位置の間の長辺23、2本の吊り綱106および海苔網101によって海苔網上方押え部材5が通過する貫通孔30が形成される。各連結手段28の連結位置の間隔H(図12参照)が海苔網上方押え部材5の平面透視図の幅W(図3、図5参照)より大きく、貫通孔30を形成する長辺23、2本の吊り綱106および海苔網101の幅の合計長さによって形成し得る矩形の大きさが、海苔網上方押え部材5の正面透視の最大矩形の大きさより大きいので、海苔網上方押え部材5は当該貫通孔30を余裕をもって通過して、全体が海苔網101の上面に乗り上がることとなる。なお、手綱105の長さを、長すぎず且つ短すぎない丁度よい長さにして、海苔網上方押え部材5の導入部5dが先端部側入口8部分に挿入された後に直ちに海苔網101の縁綱104に乗上げることができるように形成するとよい。
【0055】
本第3実施形態においては、海苔網の干出装置21を用いて多数の海苔網101を海面に展張して形成される。更に、図17に示す海苔作業船2aをもって海苔網101の海面に対する干出と浸漬並びに海苔網101に対する活性処理を行ったり、図18に示す海苔作業船2bによって、刈り取り機構37により成長した海苔を刈り取ったり、海苔網活性処理装置1によって海苔網101に活性処理を施したり、海苔網101の海面に対する干出と浸漬とを行ったされる。
【0056】
一方の図17に示す海苔作業船2aは、船体32の両側に前方の海中から船体32上、そして船体32の後方に延びる左右一対のガイド部材33を載置している。ガイド部材33の先端部は連結して略U字形に形成するとよい。このガイド部材33は海中の枠体22や海苔網101を掬い上げ、その後船首部分に搭載している海苔網活性処理装置1によって海苔網101に活性処理を施すとともに、枠体22と海苔網101とを海苔作業船2aの後方に移動させる。
【0057】
他方の図18に示す海苔作業船2bは、船体34の後部にエンジン35を設け、前後部にそれぞれ方向変換用のスラスタ36a、36bを設けている。更に、ガイド部材33を前方ガイド部材33aと後方ガイド部材33bとに分けている。一方の前方ガイド部材33aは図18に示す前方突出位置と船上に引き込んだ収納位置を移動自在に形成されている。船上の前方には、海苔網101から成長した海苔を刈取る公知の刈り取り機構37がガイド部材33の下方に設置されている。この刈り取り機構37によって刈取られた海苔は収納庫38内に収納されるようになっている。刈り取り機構37の後方には海苔網1301活性処理を施す本発明の海苔網活性処理装置1が配設されている。
【0058】
次に、前述した構成からなる本第3実施形態の作用について説明する。
【0059】
まず、海苔網の干出装置21を用いた海苔の養殖システムにおいては、図14に示すように、種付けされた海苔網101が海面に浸漬されている。
【0060】
そして、海苔網101を干出させて海苔網101を乾燥させ、殺菌および藻を死滅させる。このときには、例えば図17に示すように、海苔網の干出装置21のいずれか一方向図16においては左方から海苔作業船2aを侵入させる。
【0061】
そして、海苔作業船2aを海苔網101の干出装置21の枠体22の下方に潜るように侵入させることにより、海苔作業船2aのガイド部材33の先端部により海苔網の干出装置21の各枠体22,22...および海苔網101が海水中より掬い上げるようにして順次持ち上げられ、当該ガイド部材33上を各枠体22が長辺23を上に脚部24を下方に下げるようにして吊り下げながら後方に移動させられる。続いて、海苔作業船2aが通過すると、海苔作業船2aガイド部材33によって直立状態とされた各枠体22,22...が、各浮子31,31の浮力により直立状態のまま水面に着水して直立状態に起立させられていき、図14に示すように、各海苔網101が海中から空中部分へ干出される。
【0062】
各枠体22が本発明の海苔網活性処理装置1の海苔網上方押え部材5にさしかかると、海苔網上方押え部材5は長辺23、2本の吊り綱106および海苔網101によって形成されている貫通孔30を通過して海苔網101の上面に乗上げて行く。この際、各枠体22はガイド部材33に下から支持されて船尾に向けて移動し、海苔網101と吊り綱106が海苔網上方押え部材5の下方を通過することとなる。これにより前記各実施形態と同様に、海苔の活性処理を確実に施すことができるし、海苔の健康的な育成を図ることができ、コストも低廉なものとなる。
【0063】
次に、干出された海苔網101を浸漬させる場合には、各浮子31を連結している2本の転倒用連結手段29a、29bのいずれか一方を、転倒用連結手段29が浮子31に連結されている部分を脚部24の下端部に向かう方向に引っ張ることにより、各浮子31が転倒用連結部材29が連結されている部分が海水中に引き込まれるようにして各脚部24の下端部を中心として回動して各枠体22の全体が転倒されて、図16に示すように、海苔網101を海水に浸漬させることができる。この転倒用連結手段29を引っ張るのは、転倒用連結手段29を海苔作業船2aの船体32に連結したり、あるいは船体上の人員が保持して引くとよい。このとき、各枠体22,22...の長辺23に配設された各浮子26の浮力により、海苔網101が海中深く沈下することを防止して、海苔網101を海中の表層域に位置するようになっている。なお、この浮子26は省略することもできる。
【0064】
海苔の育成を行なう場合には1枚の海苔網101を海苔網の干出装置21に展張して行ない、海苔の育苗を行なう場合には複数枚の海苔網101を海苔網の干出装置21に展張して行なうこととなる。
【0065】
図18に示す海苔作業船2bを用いた場合においては、海苔網101を干出させる場合には、前記と同様にして前方ガイド部材33aの先端部を海水中に挿入させた状態で海苔作業船2bを各枠体22の下に潜行するようにして進行させることにより行なわれる。掬い上げられた海苔網101から刈り取り機構37によって成長した海苔を刈取って収納庫38に収納する。続いて、海苔が刈取られた海苔網101は、本発明の海苔網活性処理装置1において図17の場合に説明した処理と同様のにして所定の活性処理を施される。その後、各枠体22が浮子31によって海面に起立させられる。本実施形態の海苔作業船2bを用いる場合には、海苔の刈り取りと海苔網101の活性処理とを単独で行なうようにしてもよい。
【0066】
なお、海苔網上方押え部材5の海苔網101への乗り上げを容易にするために、ダミーの海苔網を海苔網101の長手方向の端部から長手方向に延長させて配置するとともに、当該ダミーの海苔網の端部を枠体22の間の中間に止めるようにしても良い。
【0067】
なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の海苔網活性処理装置の第1実施形態を示す斜視図
【図2】本発明の第1実施形態に用いる海苔網上方押え部材の斜視図
【図3】本発明の第1実施形態を搭載した海苔作業船の平面図
【図4】図3の船首部を切断した右側面図
【図5】本発明の第1実施形態による活性処理の初期状態を示す平面図
【図6】本発明の第1実施形態による活性処理の海苔網乗上げ初期状態を示す平面図
【図7】本発明の第1実施形態による活性処理の中間状態を示す平面図
【図8】本発明の第1実施形態による活性処理の最終状態を示す平面図
【図9】図7の9−9線に沿った断面図
【図10】図7の10−10線に沿った断面図
【図11】本発明の海苔網活性処理装置の第2実施形態を適用する支柱方式の海苔網の展張状態を示す斜視図
【図12】本発明の第3実施形態を適用する海苔網の干出装置の実施形態を示す平面図
【図13】図12の左側面図
【図14】図12の正面図
【図15】図12に示す海苔網の干出装置の一部を示す斜視図
【図16】図12に示す海苔網の干出装置の浸漬状態を示す側面図
【図17】図12に示す海苔網の干出装置の干出方法を示す概略図
【図18】海苔作業船の他の実施形態を示す側面図
【符号の説明】
【0069】
2 船
4 活性処理液槽
5 海苔網上方押え部材
101 海苔網

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮き流し方式または支柱方式によって海面に展張されている海苔網に対して活性処理を施す海苔網活性処理装置であって、
船上に配置された活性処理液槽と、船上に持ち上げられて船首側から後方に向けて搬送される前記海苔網を上から押えて前記活性処理液槽内の活性処理液中に浸漬させる海苔網上方押え部材とを有し、
当該海苔網上方押え部材は、前記活性処理液槽内に独立的に設置されており、前記海苔網の長手方向端部の先端部側においては、前記船首部から後方に向けて持ち上げられて搬送される前記海苔網の先端縁部を乗り越えて海苔網の上面に乗上げ、前記海苔網の前記先端縁部より後方側においては、前記海苔網を上面側から押えて前記活性処理液槽内の活性処理液中に浸漬させ、前記海苔網の後端部側においては、船の後方に向けて搬送される前記海苔網の後端縁部を越えて海苔網外へ出るように形成されている
ことを特徴とする海苔網活性処理装置。
【請求項2】
前記海苔網は、2本の端部綱の間に海苔網の長手方向の両端部を対向させて配置され、当該海苔網の両端部の縁綱の両端部角隅部をそれぞれ手綱をもって前記端部綱に接続して海面に展張されており、
前記海苔網上方押え部材は、前記海苔網の先端部側においては、前記船首部から後方に向けて順に持ち上げられて搬送される前記端部綱、2本の手綱および海苔網の先端部の縁綱からなる先端部側入口を通過して海苔網の上面に乗上げ、前記海苔網の後端部側においては、前記船首部から後方に向けて順に持ち上げられて搬送される前記海苔網の後端部の縁綱、2本の手綱および端部綱からなる後端部側出口を通過して海苔網外へ出るように形成されている
ことを特徴とする海苔網活性処理装置。
【請求項3】
前記海苔網上方押え部材は、前記海苔網の先端部側において、前記船首部から後方に向けて順に持ち上げられて搬送される前記端部綱、2本の手綱および自重若しくは錘体の重量によって前記端部綱より下方に位置している海苔網の先端部の縁綱によって形成される前記先端部側入口を通過して海苔網の上面に乗上げられることを特徴とする請求項2に記載の海苔網活性処理装置。
【請求項4】
前記海苔網は、浮き流し方式によって海面に展張されており、前記端部綱は枠綱からなることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の海苔網活性処理装置。
【請求項5】
前記海苔網は、支柱方式によって海面に展張されており、前記端部綱は浮子綱からなることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の海苔網活性処理装置。
【請求項6】
前記海苔網は、下方に垂設された2本の脚部と、これら脚部を連結する長辺とからなるコ字形状の剛体状の枠体であって前記長辺を並列するように配置されている複数の枠体と、前記各脚部の端部に枠体の並列方向両側に配設されて前記枠体を起立させる浮子と、前記各長辺に挿通され、前記各枠体を回動自在に支持する回動部材と、前記各回動部材に連結され、前記各枠体を連結する連結手段と、前記長辺の少なくとも一端側の脚部に配設されている各浮子の枠体の並列方向における一端側にそれぞれ連結されて前記各枠体を連結する転倒用連結手段とを有する干出装置の、前記各枠体間に吊り綱をもって吊り下げることにより張設されていることを特徴とする請求項1に記載の海苔網活性処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2009−112258(P2009−112258A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−289462(P2007−289462)
【出願日】平成19年11月7日(2007.11.7)
【出願人】(000110882)ニチモウ株式会社 (52)
【Fターム(参考)】