説明

海藻類の採集装置

【課題】砂等の異物吸引を防止しつつ、海藻類を滞りなく吸い上げて採集できる浅瀬でも使用可能な海藻類の採集装置を提供する。
【解決手段】ポンプ2と、ポンプ2に接続される排出配管3と、排出配管3に分岐して接続される吸引配管4と、吸引配管4の先端部に接続されるヘッド6とを備え、ヘッド6が先端に向かって断面積を大きくした筒状部7と、筒状部7の先端から前方に突出するスペーサ部8とで採集装置1を構成し、スペーサ部8が筒状部7の先端開口以上に外周側に広がるように、または、筒状部7の先端から真っ直ぐに、前方に突出し、かつ、内周側が完全な空洞状態であり、その先端を海藻類Aを吸引する吸引部とするとともに、側面相当部分にも吸引部を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海藻類の採集装置に関し、さらに詳しくは、砂等の異物吸引を防止しつつ、海藻類を滞りなく吸い上げて採集できる浅瀬でも使用可能な海藻類の採集装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、干潟などにアオサが大量発生することによる被害が報告されるようになった。例えば、アオサが砂浜を覆って景観を悪くする、腐敗して悪臭を発する、アサリの成育の障害になる等の問題が報告されている。アオサを除去するには、T字型の漁具(トンボ)を用いて人力で回収する方法があるが、多大な労力が必要となるため回収量は限定的になる。そこで、水草刈り取り船のような機械装置を用いて除去しようとすると、ある程度の水深が必要になる。それ故、アオサによる被害が大きく、最も回収作業を行ないたい浅瀬では使用することができない。
【0003】
そこで、ポンプに接続したホースを通じてアオサを吸引する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この方法では、装置をコンパクトにすることが可能なので、装置を小さな船に搭載すれば、浅瀬でも回収作業を行なうことができる。しかしながら、通常、ポンプは一定の吸引量で稼働しているので、アオサの吸引速度も一定になる。そのため、一度に多量のアオサを吸引してしまい、ホースにアオサが詰まって作業を中断しなければならないことがある。また、ホースの先端を水底に接近させ過ぎると、砂や貝類等の異物も一緒に吸引することがあり、作業効率を低下させる要因になる。特許文献1に記載されている発明では、吸引ホースの先端に通水孔を有する傘部を取り付けられているが、この傘部が水底に接すると、吸引口が塞がれて実質的にアオサを吸引することができなくなる。さらに、ポンプに工夫をしなければ、吸引したアオサがポンプ内で絡まって吸引効率が低下するという問題もある。
【0004】
上記のような問題はアオサに限ったことではなく、その他の海藻類についても当てはまり、有効な方法や装置が要望されていた。尚、本発明の海藻類とは、海藻類に類するものも包含するという意味である。したがって、いわゆる海藻だけでなく海草も含んでいる。また、湖沼河川に生息する水草類も含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−116319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、砂等の異物吸引を防止しつつ、海藻類を滞りなく吸い上げて採集できる浅瀬でも使用可能な海藻類の採集装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明の海藻類の採集装置は、ポンプと、このポンプに接続される排出配管と、この排出配管に分岐して接続される吸引配管と、この吸引配管の先端部に接続されるヘッドとを備え、前記ヘッドが先端に向かって断面積を大きくした筒状部と、この筒状部の先端から前方に突出したスペーサ部とで構成され、このスペーサ部が前記筒状部の先端開口以上に外周側に広がるように、または、前記筒状部の先端から真っ直ぐに、前方に突出し、かつ、内周側が完全な空洞状態であり、先端を吸引部とするとともに側面相当部分にも吸引部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、吸引配管の先端部に接続されるヘッドが、先端に向かって断面積を大きくした筒状部を有しているので、筒状部では海藻類は徐々に速い速度で吸引される。そのため、一度に多量の海藻類を吸引することによって、吸引配管を詰まらせるという不具合が生じ難くなり、滞りなく吸い上げることが可能になる。
【0009】
また、筒状部の先端から前方に突出したスペーサ部を有するので、筒状部が水底に接することがない。したがって、砂や貝類等の異物を吸引することを防止するには有利になる。このスペーサ部は、筒状部の先端開口以上に外周側に広がるように、または、筒状部の先端から真っ直ぐに、前方に突出し、かつ、内周側が完全な空洞状態であり、先端を吸引部とするとともに側面相当部分にも吸引部を有するので、海藻類がスペーサ部で引っ掛かり難くなっている。そして、仮に、スペーサ部の先端の吸引部が塞がったとしても、側面相当部分の吸引部から海藻類を吸引することができる。
【0010】
吸引配管は、ポンプに接続される排出配管に分岐して接続されているので、吸引された海藻類は、ポンプ内に流入せずに吸引配管から排出配管に流れる。そのため、海藻類がポンプ内で絡まる不具合が生じない。また、装置がコンパクトになるので、小さな船に搭載することができる。そのため、浅瀬においても採集作業を行なうことが可能になる。
【0011】
ここで、前記スペーサ部が、線状部材からなる枠体で構成されている仕様にすることもできる。この仕様では、内周側が完全な空洞状態で、先端および側面相当部分に吸引部を有するスペーサ部を容易に形成できる。しかも、吸引部を大きくすることが容易である。
【0012】
前記スペーサ部の前方への突出長さが可変である仕様にすることもできる。この仕様では、スペーサ部の有効長さを変更できる。そのため、対象となる海藻類の種類、水底の状況等に応じて、スペーサ部の有効長さを、異物吸引を防止しつつ滞りなく海藻類を吸引するために最適な値に設定することが容易になる。
【0013】
前記ヘッドが、前記吸引配管に対して管軸方向にスライド可能に設けられている仕様にすることもできる。この仕様では、筒状部の有効長さを変更できる。そのため、対象となる海藻類の種類等に応じて、筒状部の有効長さを、滞りなく海藻類を吸引するために最適な値に設定することが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の採集装置を例示する全体概要図である。
【図2】ヘッドを例示する斜視図である。
【図3】ヘッドの内部を縦断面で例示する説明図である。
【図4】ヘッドの変形例を示す断面図である。
【図5】ヘッドの別の変形例を示す斜視図である。
【図6】ヘッドの別の変形例を示す斜視図である。
【図7】ヘッドの別の変形例を示す断面図である。
【図8】ヘッドの別の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の海藻類の採集装置を、図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0016】
図1に例示するように、本発明の海藻類の採集装置1は、ポンプ2と、このポンプ2に接続される排出配管3と、この排出配管3に分岐して接続される吸引配管4と、この吸引配管4の先端部に接続されるヘッド6とを備えている。
【0017】
ヘッド6と吸引配管4との継目部分には、アーム11が取り付けられている。このアーム11を作業者が保持して動かすことにより、ヘッド6を所望の位置に移動させることができる。
【0018】
ポンプ2には吸水配管5も接続されていて、内部のロータが回転することにより、吸水配管5から海水Wを吸引して排出配管3から排出する。この海水Wの流れによって吸引配管4の内部圧力が低下し、吸引配管4を通じて排出配管3へ吸引ができるエジェクタータイプになっている。吸引配管4としては、可撓性ホースを用いるとよい。
【0019】
ヘッド6は、図2、図3に例示するように、先端に向かって断面積を大きくした筒状部7と、筒状部7の先端から前方に突出したスペーサ部8とで構成されている。この実施形態では、筒状部7は円錐台形状になっているが、その他の錐台形状を採用することもできる。
【0020】
スペーサ部8は、筒状部7の先端開口以上に外周側に広がるように前方に突出し、かつ、内周側が完全な空洞状態(何も存在しない状態)になっている。そして、筒状部7の先端は開口した状態になっている。即ち、スペーサ部8は、先端および後端が、横切る障害物がなく完全に開口した状態であり、先端と後端との間の内周側は空の状態になっている。
【0021】
この実施形態では、スペーサ部8が、鋼棒等の線状部材8aからなる枠体になっている。詳述すると、筒状部7の先端開口以上に外周側に広がるように前方に突出した複数本(この実施形態では4本)の線状部材8aと、これら線状部材8aを連結する線状部材8aとからなる枠体でスペーサ部8が構成されている。このスペーサ部8は、前方に突出する線状部材8aの先端部どうしが線状部材8aによって連結されているので、スペーサ部8が強固になり、変形し難くなっている。
【0022】
そして、開口した状態のスペーサ部8の先端が、海藻類Aを吸引する先端吸引部9になっている。前方に突出している複数本の線状部材8aの隣り合う線状部材8aどうしの間も開口した空間になっている。即ち、スペーサ部8の側面相当部分となるこの開口した空間は、海藻類Aを吸引する側面吸引部10になっている。
【0023】
スペーサ部8は、図4に例示するように、筒状部7の先端から真っ直ぐに前方に突出した仕様にすることもできる。
【0024】
スペーサ部8は、図5に例示するように、筒状部7の先端開口以上に外周側に広がるように前方に突出した複数本の線状部材8a、あるいは、筒状部7の先端から真っ直ぐに前方に突出した複数本の線状部材8aを有し、それぞれの線状部材8aの先端部を連結せずにそのままの状態にした仕様にすることもできる。この仕様では、開口した状態のスペーサ部8の先端(二点鎖線の内側部分)が、海藻類Aを吸引する先端吸引部9になる。また、複数本の線状部材8aの隣り合う線状部材8aどうしの間の開口した空間が側面吸引部10になる。
【0025】
スペーサ部8は線状部材8aで構成するだけでなく、図6に例示するように、面状部材を用いて構成することもできる。この実施形態では、先端を尖らせた部分を複数有する面状部材によってスペーサ部8が構成されている。この仕様では、開口した状態のスペーサ部8の先端(二点鎖線の内側部分)が、海藻類Aを吸引する先端吸引部9になる。また、複数の先端を尖らせた部分の隣り合うどうしの間の開口した空間が側面吸引部10になる。
【0026】
海藻類Aを採集する場合には、図1に例示するように、ポンプ2と、分離器12と、回収ケース13とを船14に搭載する。排出配管3の排出先に分離器12を配置し、分離器12の下方に回収ケース13を設置する。
【0027】
ポンプ2を稼働させると、吸水配管5から海水Wがポンプ2内に吸水されて排出配管3を通じて分離器12に排出される。これに伴って、吸引配管4を通じて吸引が行なわれる。ここで、アーム11を操作して、採集しようとする海藻類Aの位置にヘッド6を移動させて海藻類Aを吸引する。海藻類Aは海水Wとともに、スペーサ部8の先端吸引部9および側面吸引部10を通じて筒状部7に流入する。吸引された海藻類Aは、吸引配管4を通じて排出配管3から分離器12に海水Wとともに排出される。分離器12では海藻類Aのみが捕捉され、捕捉された海藻類Aは回収ケース13に回収される。
【0028】
筒状部7は先端に向かって断面積が大きくなっているので、一定回転数でポンプ2が稼動している状態では、海藻類Aは徐々に速い速度でヘッド6から吸引配管4に吸引される。即ち、スペーサ部8および筒状部7の先端部周辺では、海藻類Aが相対的に低速度で吸引され、次第に高速度で吸引配管4に吸引される。これにより、一度に多量の海藻類Aが吸引されなくなるので、吸引配管4を詰まらせるという不具合が生じ難くなり、滞りなく円滑に海藻類Aを吸い上げることができる。
【0029】
筒状部7の先端からはスペーサ8が前方に突出しているので、筒状部7が水底に接することがない。したがって、砂や貝類等の異物を吸引することを防止できるので、吸引効率を維持するには有利である。また、その海域にアサリ等の稚貝が生息していても吸引されないので環境保全の観点からも優れている。
【0030】
このスペーサ部8は、筒状部7の先端開口以上に外周側に広がるように、または、筒状部7の先端から真っ直ぐに、前方に突出し、かつ、内周側が完全な空洞状態になっていて、先端および後端が開口している。即ち、スペーサ部8の先端から後端までの間に、吸引した海藻類Aが引っ掛かるような障害物が存在しないので、海藻類Aの吸引効率を向上させるには益々有利になっている。
【0031】
そして、スペーサ部8は、先端吸引部9および側面吸引部10を有しているので、先端吸引部9が塞がったとしても、側面吸引部10から海藻類Aを吸引することができる。また、水底に伏している状態の海藻類Aを、スペーサ部8を用いて起き上がらせて吸引し易くすることもできる。
【0032】
吸引配管4の外径は、例えば50mm(40mm〜60mm)程度である。筒状部7の先端断面積A1は、例えば175cm2〜315cm2(外径150mm〜200mm)程度、筒状部7の後端断面積A2は、例えば12cm2〜30cm2(外径40mm〜60mm)程度、筒状部7の先端と後端との距離Lは例えば250mm〜600mm程度である。
【0033】
海藻類Aとしてアオサを吸引、採集する場合は、筒状部7の断面積変化率S=(A1−A2)/(A2×L)を0.01〜0.10程度にするとよい。S値を、この範囲に設定するとアオサを円滑に吸引、採集し易くなる。筒状部7内部での流速は、例えば0.5m/s〜12m/s程度の範囲である。
【0034】
吸引配管4は、排出配管3に分岐して接続されているので、吸引された海藻類Aは、ポンプ2内に流入せずに吸引配管4から排出配管3に流れる。そのため、海藻類Aがポンプ2内で絡まる不具合が生じない。
【0035】
また、ポンプ2はそれ程大きくなく、小さな船14に搭載できる程度の大きさなので採集装置1としてはコンパクトになり、浅瀬においても海藻類Aの採集作業を行なうことが可能になる。
【0036】
スペーサ部8が、線状部材8aからなる枠体で構成すると、内周側を完全な空洞状態にしつつ、先端吸引部9および側面吸引部10を容易に形成できる。しかも、これら吸引部9、10を大きくすることが容易になる。
【0037】
スペーサ部8は、図7に例示するように、前方への突出長さを可変にできる仕様にすることもできる。例えば、筒状部7に対してスペーサ部8を筒軸方向にスライド可能な構造にする。或いは、前方に突出したスペーサ部8自体(線状部材8a)を伸縮可能な構造にする。これにより、スペーサ部8の有効長さ(スペーサ部8の先端から筒状部7の先端までの距離)P1、P2を変化させることができる。対象となる海藻類Aの種類、水底の状況等に応じて、スペーサ部8の有効長さP1、P2を適正に設定することにより、異物吸引を防止しつつ滞りなく海藻類Aを吸引し易くなる。
【0038】
図8に例示するように、ヘッド6(筒状部7)を、吸引配管4に対して管軸方向にスライド可能に設けることできる。これにより、筒状部7の有効長さ(筒状部7の先端から吸引配管4の先端までの距離)H1、H2を変化させることができる。対象となる海藻類Aの種類等に応じて、筒状部7の有効長さH1、H2を適正に設定することにより、滞りなく海藻類Aを吸引し易くなる。
【0039】
本発明が採取対象とする海藻類Aとしては、アオサの他に海藻としてはワカメ、昆布、モズク等が挙げられる。海草としてはアマモ等が挙げられる。
【符号の説明】
【0040】
1 採集装置
2 ポンプ
3 排出配管
4 吸引配管
5 吸水配管
6 ヘッド
7 筒状部
8 スペーサ部
8a 線材
9 先端吸引部
10 側面吸引部
11 アーム
12 分離器
13 回収ケース
14 船
A 海藻類

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプと、このポンプに接続される排出配管と、この排出配管に分岐して接続される吸引配管と、この吸引配管の先端部に接続されるヘッドとを備え、前記ヘッドが先端に向かって断面積を大きくした筒状部と、この筒状部の先端から前方に突出したスペーサ部とで構成され、このスペーサ部が前記筒状部の先端開口以上に外周側に広がるように、または、前記筒状部の先端から真っ直ぐに、前方に突出し、かつ、内周側が完全な空洞状態であり、先端を吸引部とするとともに側面相当部分にも吸引部を有することを特徴とする海藻類の採集装置。
【請求項2】
前記スペーサ部が、線状部材からなる枠体で構成されている請求項1に記載の海藻類の採集装置。
【請求項3】
前記スペーサ部の前方への突出長さが可変である請求項1または2に記載の海藻類の採集装置。
【請求項4】
前記ヘッドが、前記吸引配管に対して管軸方向にスライド可能に設けられている請求項1〜3のいずれかに記載の海藻類の採集装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−17410(P2013−17410A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151989(P2011−151989)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(000219406)東亜建設工業株式会社 (177)
【Fターム(参考)】