説明

浸漬平膜ろ過装置

【課題】膜エレメントの汚れによる膜ろ過性能の低下を防止し、浸漬平膜ろ過装置全体としての膜ろ過性能の低下を防止する。
【解決手段】処理槽内の被処理水を膜ろ過する複数の膜エレメント14を処理槽内に垂直に並列配置させるとともに、処理槽内の上下方向に複数積層配置し、上下の膜エレメント14間の隙間を囲む筒状スペーサ30を備え、膜エレメント14の膜平面と交差する側の筒状スペーサ30の側面に、処理槽から筒状スペーサ30の内側へ被処理水を取り込む通水孔40を設けた浸漬平膜ろ過装置10である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浸漬平膜ろ過装置に係り、特に下水及び工業廃水などの被処理水を満たした処理槽に浸漬配置され、処理後の被処理水をろ過処理する浸漬平膜ろ過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下水及び工業廃水において有機成分を含む廃水を微生物で分解する活性汚泥処理が一般に用いられている。この活性汚泥処理の一方法として膜分離活性汚泥法があり、膜分離活性汚泥法では、反応処理後の被処理水と活性汚泥とを膜分離するため浸漬平膜ろ過装置を用いている。また、活性汚泥を用いず固液分離により処理する際も、固液分離手段として浸漬平膜を用いる浸漬平膜ろ過装置が用いられている。浸漬平膜ろ過装置は、特許文献1,2で開示されているように、被処理水で満たされた処理槽内に複数の膜エレメントが浸漬した状態で並列配置され、各膜エレメントを内部から被処理水を吸引することによりろ過水が得られる。各膜エレメントは処理槽内に所定の間隔を持って垂直に設置されており、その下方には、散気を行なうための散気手段が設けられる。散気を行う目的としては、(1)膜面に堆積する汚泥ケーキなどの固形物を除去して膜の閉塞を抑制する洗浄効果を得ること、(2)処理槽内に旋回流を起こして膜表面近傍に水流を与えるとともに処理槽内を攪拌すること、(3)処理槽内の被処理水が活性汚泥等の微生物を含有している場合は、好気処理のための酸素供給を行うこと、などである。これにより膜エレメントによるろ過処理を効率良く行うことができる。
【0003】
上記従来の浸漬平膜ろ過装置では、膜のろ過性能を維持するための空気散気の動力費が大きいという問題があった。これを解決するため、膜エレメントを槽内の上下に積層してフレームで支持し、下方に配置した散気手段より空気をまず下段の膜エレメントに供給し、ついで下段で使用した空気を上段の膜エレメントでも使用できるようにした装置が特許文献3に開示されている。これにより膜モジュール当たり使用する空気量を大幅に削減することができる。また、上下の膜エレメントの間に筒状のスペーサを設け、下段で使用した散気空気が膜エレメントの外部に逃げることなく、上段の膜エレメントに利用できるようにした構造が特許文献4に開示されている。
【特許文献1】特開2001−162141号公報
【特許文献2】特開2000−237551号公報
【特許文献3】特開平8−57269号公報
【特許文献4】特開平11−57426号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献3,4に示すような上下多段の膜エレメントの場合、まず下段の膜モジュールで被処理水のろ過が行なわれるが、散気空気とともにろ過分離後の汚泥およびろ過分離されなかった被処理水が上段の膜エレメントに供給され、それによって、上段の膜モジュールでろ過する被処理水は下段の膜モジュールに比べて被処理水中の汚泥量が増加、すなわち被処理水が濃縮されていることになるため、上段の膜モジュールほど濃度の高い被処理水をろ過することとなり、汚泥による汚染が進行し易く、上下の膜モジュール間で膜の汚れ方に差が生じ、このため上段の膜エレメント/モジュールほど被処理水のろ過性能が低下してしまうという問題があった。
【0005】
そこで本発明は、上記従来技術の問題点を解決するため、筒状スペーサ内の被処理水の濃縮を低減することを目的としている。また本発明は浸漬平膜ろ過装置全体としての膜ろ過性能の低下を防止することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の浸漬平膜ろ過装置は、処理槽内の被処理水を膜ろ過する複数の膜エレメントを前記処理槽内に垂直に並列配置させるとともに、前記処理槽内の上下方向に複数積層配置し、上下の前記膜エレメント間の隙間を囲む筒状スペーサを備えた浸漬平膜ろ過装置において、前記膜エレメントの膜平面と交差する側の前記筒状スペーサの側面に、前記処理槽から前記筒状スペーサの内側へ前記被処理水を取り込む通水孔を設けたことを特徴としている。
【0007】
この場合において、前記通水孔は前記筒状スペーサの側面の半分より上方に配置してあることが好ましい。
また前記通水孔を設けた前記筒状スペーサの側面面積に対する前記通水孔の開口面積の比率が1%〜30%であるのが好ましい。
さらに前記通水孔の上部には前記筒状スペーサの側面から外側下方に傾斜させた庇を設けてもよい。また前記庇の下方であって、前記膜エレメントの側面に補助散気手段を設けてもよい。
【0008】
本発明の浸漬平膜ろ過装置は、処理槽内の被処理水を膜ろ過する複数の膜エレメントを前記処理槽内に垂直に並列配置させるとともに、前記処理槽内の上下方向に複数積層配置し前記膜エレメントの下方に散気手段を設けた浸漬平膜ろ過装置において、上下の前記膜エレメント間の隙間を囲むとともに、前記膜エレメントの膜平面と交差する側の側面を上方から下方に向かってテーパ状に拡径させた筒状スペーサを設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、上段及び下段の膜エレメントの間に設置された筒状スペーサの一部に、筒状スペーサ外部から内部へ被処理水を取り込むための通水孔を設けている。このため浸漬平膜ろ過装置の膜モジュールを上下に多段に積層して設置しても、下段膜モジュールによって濃縮された被処理水を希釈して、上段の膜モジュールがろ過する被処理水の濃縮を低減できる。よって浸漬平膜ろ過装置全体としての膜ろ過性能の低下を防止できる。
【0010】
また、請求項2に記載しているように筒状スペーサの側面の半分より上方に通水孔を設けていることにより、通水孔から流入した被処理水の流れにより散気手段から均一に上昇してきた散気空気を乱すことなく上段膜モジュールに供給することができる。さらに下段膜モジュールを通過した散気空気が通気孔を介して筒状スペーサ外部に漏れることがない。よって効果的に上段の膜モジュールに散気空気を提供することができる。
【0011】
請求項3では通水孔の開口率を1%〜30%としているが、この開口率は下段膜モジュールによって濃縮された被処理水を希釈できる量、例えば下段膜モジュールで集水した処理水に相当する量の被処理水がスペーサ内へ供給できるように設定している。このため下段膜モジュールによって膜ろ過されず濃縮された被処理水を効果的に希釈できる。また上記開口率によれば通水孔から筒状スペーサ外部の被処理水が内部へ流れ込んでも散気手段により均一に散気された散気空気の流れが乱されることがなく、上段膜モジュールに散気空気を均一に供給できる。
【0012】
請求項4では通水孔の上部に前記筒状スペーサの側面から外側下方に傾斜させた庇を設けているが、これは下段膜モジュールの外側側面を沿って上昇する散気空気を通水孔から筒状スペーサ内へ取り込み、上段膜モジュールへ供給する散気空気量を増加させて膜モジュールの洗浄効果を高めることができる。
【0013】
さらに請求項5では開口部上部に庇を設けた構成に加え、庇の下方であって、膜エレメントすなわち下段膜モジュールの側面に補助散気手段を設けている。このため、通気孔から筒状スペーサ内部に供給する散気空気量を増加でき、上段膜エレメントの洗浄効果をさらに高めることができる。
【0014】
請求項6では、上下の前記膜エレメント間の隙間を囲むとともに、前記膜エレメントの膜平面と交差する側の側面を上方から下方に向かってテーパ状に拡径させた筒状スペーサを設けているが、これは筒状スペーサ外の被処理水を下段膜モジュールの側面に沿って筒状スペーサ内に上向に流入できる。よって筒状スペーサ内の被処理水を希釈できるとともに、下段膜モジュールを通過した散気空気を乱すことなく均一に分布させたまま上段膜モジュールに供給できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下添付図面に従って、本発明に係る浸漬平膜ろ過装置の好ましい実施の形態について説明する。
図1は本発明の浸漬平膜ろ過装置の構成概略を示す図である。同図(1)は(2)矢印B方向の浸漬平膜ろ過装置の断面図を示し、同図(2)は斜視図をそれぞれ示している。
【0016】
本発明の浸漬平膜ろ過装置10は、下水及び工業廃水などの被処理水を満たした処理槽に浸漬配置され、複数の膜エレメント14を備えている。
膜エレメント14は平板状の濾膜であり、複数枚の膜エレメント14の濾膜面を互いに平行となるように所定間隔を開けて並列に配置して膜モジュール16を形成している。
【0017】
本発明の浸漬平膜ろ過装置10は、前記膜モジュール16を処理槽の上下方向に積層(段積み)させて上段膜モジュール16a及び下段膜モジュール16bの多段形成としている。
【0018】
また下段膜モジュール16bの下方には散気手段20を配置している。散気手段20は並列配置した膜エレメント14と同様に膜エレメント14の下方に沿って、複数の散気管を並列に直線上に配置している。散気手段20は、膜モジュール16に洗浄用の空気を供給し、膜表面に汚泥などの固形物が付着して閉塞するのを防止している。また散気手段20は散気空気量を任意に調整可能に構成することもできる。
【0019】
浸漬平膜ろ過装置10内の上下方向に積層して配置された膜モジュール16の間には、筒状スペーサ30が設置されている。筒状スペーサ30は下段膜モジュール16bと上段膜モジュール16aを予め設定した所定間隔を離間させたスペースである。
【0020】
筒状スペーサ30には、通水孔40を設けている。通水孔40は図1(1)に示すように膜モジュール16の一対の側面、すなわち平板状の膜エレメント14の膜平面と交差する側(矢印A)に面する筒状スペーサ30の側面に形成している。通水孔40は処理槽内の被処理水を筒状スペーサ30内に供給可能な開口である。
【0021】
上記構成による浸漬平膜ろ過装置の作用について以下説明する。
処理槽において活性汚泥により生物処理された、又は凝集処理された被処理水は、処理槽内に浸漬配置された浸漬平膜ろ過装置10の散気手段20が供給する散気空気によるエアリフトにより下段膜モジュール16bの下面から流入する。すなわち被処理水は下段膜モジュール16bの複数の膜エレメント14bの間から上向流となり下段膜モジュール16b間を流れる。このとき膜エレメント14bによりろ過分離が行われ活性汚泥などの被処理水と分離して処理水を得る。処理水は膜エレメントの上部に設けた図示しない集水管を介して反応槽外へ排出される。一方、下段膜モジュール16bを通過した活性汚泥などのろ過分離されなかった被処理水は下段膜モジュール16bの上部に形成した筒状スペーサ30に流入する。
【0022】
筒状スペーサ30の側面すなわち、平板状の膜エレメント14の膜平面と交差する側には通水孔40を開口してあり、この通水孔40から筒状スペーサ30外の被処理水が筒状スペーサ30内部へ流入する。このため下段膜モジュール16bのろ過分離によって濃縮された被処理水を上段膜モジュール16aへ到達する前に希釈することができる。
【0023】
ところで散気手段20による散気空気は、背景技術で示したように散気を行う目的、一例として膜エレメントを効果的に洗浄するため、均一に分散させて膜モジュール16へ供給する必要がある。よって通水孔40から被処理水を筒状スペーサ30内へ供給するにはこの点も考慮しなければならない。以下本実施形態では通水孔の取り付け位置を膜エレメント間の通水量と、散気空気の流れの様子の観点から説明する。
【0024】
図2は膜エレメント間を通過する散気空気の通気量の説明図である。膜モジュールを構成する複数の膜エレメントは、膜面を互いに平行となるように所定間隔を開けて並列に配置して処理槽に浸漬している。このとき膜エレメントの両縁部は散気空気があたりにくく、膜エレメントの中央部に比べてこの部分の汚染が比較的進行し易い。
【0025】
そこで筒状スペーサ30の側面に対して上部開口、下部開口、上下両方開口、開口なしの4つのケースを設定し、同図(1)に示すように膜モジュール16を構成する膜エレメント14間であって縁部領域1〜9の散気空気の通気量を測定した。
【0026】
図2(2)は膜エレメントの縁部の通気量を示すグラフである。同グラフは縦軸:通気量(L/min)、横軸:縁部領域1〜9をそれぞれ示している。
まず通水孔を設けない開口なしの筒状スペーサの膜エレメント管の通気量は、曲線aで示すように縁部領域1,9を除き通気量0.4〜0.6(L/min)の範囲であり、上端領域全域において略均一に散気空気が供給されている。これは開口(通水孔)からの被処理水の流入による影響がなく、下段膜モジュールからの散気空気が略均一に上段膜モジュールに流入するためと考えられる。
【0027】
次に上下両方開口及び下部開口の筒状スペーサをそれぞれ曲線b,曲線cに示す。図示のように縁部領域1〜9のいずれも通気量は0.3(L/min)以下であり、膜エレメントの縁部領域を通過する散気空気の通気量が開口なしと比べて著しく減少しているのがわかる。
【0028】
ここで下部開口の散気空気の流れの様子について図3の浸漬平膜ろ過装置の筒状スペーサの部分拡大図を用いて説明する。同図(1)は筒状スペーサの下部に開口した通水孔の散気空気の流れを示している。筒状スペーサ30の下部に通水孔40を開口した場合、通水孔40から矢印bに示すように被処理水が筒状スペーサ30内に流入する。このとき被処理水が通水孔40を通過する際、筒状スペーサ30の側面に対して交差する方向から流入する。流入した被処理水は下段膜モジュール16bを通過した散気空気の流れを矢印cに示すようにスペーサ中央に押し込むとともに、筒状スペーサ30の上方のスペースにおいて渦流を形成する。そうすると、下段膜モジュール16bを通過した散気空気はスペーサ中央に集中してしまい、上段膜モジュール16aの下端dに示す領域に散気空気が流れなくなり、下端dのろ過分離において活性汚泥が付着し易くなる。このように散気空気の分散に偏りが生じてしまい、膜エレメントの縁部よりも中央部に散気空気が集中して通過し、両縁部における散気空気の通気量が減少するものと考えられる。
【0029】
ここで上部開口の散気空気の流れの様子について以下説明する。図3(2)は筒状スペーサの上部に開口した通水孔の散気空気の流れを示している。図示のように、筒状スペーサ30の上部に通水孔40を開口した場合、通水孔40から矢印eに示すように被処理水が筒状スペーサ30内に流入する。このとき被処理水が通水孔40を通過する際、筒状スペーサ30の側面に対して交差する方向から流入する。そして通水孔40から流入した被処理水は下段膜モジュール16bを通過した被処理水の流れfの流れとともに直ちに上段膜モジュール16aへ流入する。したがって前述(1)の矢印cで示したような筒状スペーサ30の中央に散気空気が集中する現象が起こらず、下段膜モジュール16bを通過した散気空気は均一に分散された状態で分散状態を乱すことなく、上段膜モジュール16aに供給することができる。よって筒状スペーサの上部に通水孔を設けると散気空気が均一に分散されるものと考えられる。
【0030】
本発明では筒状スペーサに開口した通水孔によって被処理水を希釈するとともに、散気空気の流れを乱さないように被処理水を供給する必要があるため、筒状スペーサ30へ取り付ける通水孔40の位置を具体的に以下のように特定している。
【0031】
まず通水孔40の取り付け位置は、膜エレメントの膜平面と交差する側の前記筒状スペーサ30の側面に開口し、その位置は側面の半分より上方に設定している。より好ましくは1/3以上に形成すると効果的である。これにより散気手段から均一に上昇してきた散気空気を乱すことなく上段膜モジュールに供給することができる。また下段膜モジュールを通過した散気空気が通水孔を介して外部に漏れることがない。
【0032】
また通水孔40の開口率は、通水孔を設けた筒状スペーサの側面面積に対して、通水孔の開口面積を1%〜30%としている。これは、上記範囲以下では、筒状スペーサ内部に充分な被処理水が供給されず濃縮された被処理水を充分に希釈できない。また上記範囲以上では、筒状スペーサ内部に過剰な被処理水が供給され散気空気の流れが片寄ってしまう。
【0033】
さらに通水孔40の形状は、筒状スペーサ30の側面に矩形に開口している。この他、前述の開口率を考慮しながら、被処理水を希釈できるとともに、筒状スペーサ30の散気空気の流れを乱さなければ、図示している形状にこだわる必要はなく、例えば図4に示すように筒状スペーサ30の側面に矩形の複数の開口となる通水孔40Aを水平方向となる直線上に並べて配置しても良い。また通水孔は筒状スペーサに必要とされる強度を維持しつつ、加工費が最小となるように設計すればよい。
【0034】
図5は実施形態に係る浸漬平膜ろ過装置の第1変形例の説明図である。図5は浸漬平膜ろ過装置10Aの正面断面を示している。図示のように、浸漬平膜ろ過装置10Aの下方には膜モジュール16を洗浄等するための散気手段20を設けている。散気手段20からの散気空気の一部には下段膜モジュール16bの外側側面を沿って流れる散気空気がある。この下段膜モジュール16bの外側を流れる散気空気を筒状スペーサ30の中に取り込むために、通水孔40の上部に庇50を設けている。庇50は、筒状スペーサ30の側面から外部へ斜め下方に傾斜させている。この庇50を設けることにより、被処理水を希釈するとともに、上段膜モジュール16aへより多くの散気空気が供給され、上段膜モジュール16aの膜ろ過性能を安定させることができる。
【0035】
図6は実施形態に係る浸漬平膜ろ過装置の第2変形例の説明図である。図6は浸漬平膜ろ過装置10Bの正面断面を示している。図示のように第2変形例の浸漬平膜ろ過装置10Bと第1変形例の浸漬平膜ろ過装置10Aと異なる構成は、庇50の下方に補助散気手段60を設けている点である。図5に示す庇50は、下段膜モジュール16bの外側側面に沿って流れる散気空気を筒状スペーサ30内に取り込むために斜め下方に傾斜させている。下段膜モジュール16bに沿って流れる散気空気は、処理条件によって異なるため、筒状スペーサ30内に供給される散気量が一定しないことがある。そこで第2変形例の浸漬平膜ろ過装置10Bは、庇50の下方であって、下段膜モジュール16bの側面に補助散気手段60を設置している。これにより、補助散気手段60からの散気空気は、下段膜モジュール16bの外側側面に沿って浮上し、庇50から、筒状スペーサ30内に供給される。よって、上段膜モジュール16aへより多くの散気空気が供給され、上段膜モジュール16aの膜ろ過性能を安定させることができる。
【0036】
図7は実施形態に係る浸漬平膜ろ過装置の第3変形例の説明図である。図7は浸漬平膜ろ過装置10Cの正面断面を示している。図示のように、浸漬平膜ろ過装置10Cの筒状スペーサ30Aは、膜エレメントの膜平面と交差する側の一対の側面をテーパ状に下方に拡径させて、断面視台形状に形成している。そして、筒状スペーサ30Aの下面には通水孔40Bを形成している。その他の構成は図5の装置構成と同一であり、同一の作用効果を示し、その説明を省略する。これにより筒状スペーサ30A内には、矢印gに示すように筒状スペーサ30Aの下面から被処理水が流入し、筒状スペーサ30A内の被処理水を希釈することができる。このとき流入する被処理水は、矢印gのように下段膜モジュール16bの側面に沿って、筒状スペーサ30A下面の通水孔40Bから流入するため、筒状スペーサ30A内の散気空気の流れ(矢印h)を乱すことがない。
【0037】
このような浸漬平膜ろ過装置によれば、下段膜モジュールを通過した被処理水を効果的に希釈することができるとともに、上段膜モジュールに流入する散気空気の分布を均一にすることができる。したがって上段膜モジュールの汚れの局所的な進行あるいは膜全体の汚れの進行を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の浸漬平膜ろ過装置の説明図である。
【図2】膜エレメント間を通過する散気空気の通気量の説明図である。
【図3】浸漬平膜ろ過装置の筒状スペーサの部分拡大図を示している。
【図4】通水孔の説明図である。
【図5】浸漬平膜ろ過装置の第1変形例の説明図である。
【図6】浸漬平膜ろ過装置の第2変形例の説明図である。
【図7】浸漬平膜ろ過装置の第3変形例の説明図である。
【符号の説明】
【0039】
10………浸漬平膜ろ過装置、14………膜エレメント、16………膜モジュール、20………散気手段、30………筒状スペーサ、40………通水孔、50………庇、60………補助散気手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理槽内の被処理水を膜ろ過する複数の膜エレメントを前記処理槽内に垂直に並列配置させるとともに、前記処理槽内の上下方向に複数積層配置し、上下の前記膜エレメント間の隙間を囲む筒状スペーサを備えた浸漬平膜ろ過装置において、
前記膜エレメントの膜平面と交差する側の前記筒状スペーサの側面に、前記処理槽から前記筒状スペーサの内側へ前記被処理水を取り込む通水孔を設けたことを特徴とする浸漬平膜ろ過装置。
【請求項2】
前記通水孔は前記筒状スペーサの側面の半分より上方に配置してあることを特徴とする請求項1に記載の浸漬平膜ろ過装置。
【請求項3】
前記通水孔を設けた前記筒状スペーサの側面面積に対する前記通水孔の開口面積の比率が1%〜30%であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の浸漬平膜ろ過装置。
【請求項4】
前記通水孔の上部には前記筒状スペーサの側面から外側下方に傾斜させた庇を設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1に記載の浸漬平膜ろ過装置。
【請求項5】
前記庇の下方であって、前記膜エレメントの側面に補助散気手段を設けたことを特徴とする請求項4に記載の浸漬平膜ろ過装置。
【請求項6】
処理槽内の被処理水を膜ろ過する複数の膜エレメントを前記処理槽内に垂直に並列配置させるとともに、前記処理槽内の上下方向に複数積層配置し前記膜エレメントの下方に散気手段を設けた浸漬平膜ろ過装置において、
上下の前記膜エレメント間の隙間を囲むとともに、前記膜エレメントの膜平面と交差する側の側面を上方から下方に向かってテーパ状に拡径させた筒状スペーサを設けたことを特徴とする浸漬平膜ろ過装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−284422(P2008−284422A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−129416(P2007−129416)
【出願日】平成19年5月15日(2007.5.15)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】