説明

浸漬米製造装置及び浸漬米製造方法

【課題】浸漬米の製造量を細かく調節するだけでなく、小分けされる浸漬米の量を高い精度で揃えることもできる浸漬米製造装置を提供する。
【解決手段】浸漬米製造装置を、環状経路Rに沿って循環移送される複数の浸漬槽100と、環状経路Rにおける米供給位置Pに到達した浸漬槽100に米を所定量ずつ供給していく米供給手段200と、環状経路Rにおける浸漬水供給位置Pに到達した浸漬槽100に浸漬水を所定量ずつ供給していく浸漬水供給手段300と、環状経路Rにおける米排出位置Pに到達した浸漬槽100から米を順次排出させる米排出手段400とを備えたものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に炊飯用の浸漬米を製造するための浸漬米製造装置と、浸漬米製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
米は、水の中に所定時間浸漬させてその内部に水分を充分含ませてから炊くと、美味しく炊くことができる。最低限必要な浸漬時間は、米を炊く季節や米の種類などによっても異なるが、通常、20分以上と言われている。ところが、米の浸漬は、時間を要するために、面倒に思われがちで、米を研ぎ洗いしてそのまま炊く人や、米を僅かな時間だけ水に浸漬させて炊く人も少なくない。このような実状に鑑みてか、浸漬処理を予め工場で施した米(浸漬米)が販売されるようになった。米に浸漬処理を施すための浸漬米製造装置は、これまでに種々のものが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、精白米を洗浄及び浸漬する洗浄部(洗米浸漬槽)と、洗浄及び浸漬が終了した精白米を乾燥する乾燥部と、乾燥が終了した精白米を密封する密封部と、各部間で米の搬送を行う搬送部とを備えた既洗浸漬米の製造装置が記載されている。これにより、保存が効く既洗浸漬米を消費者に提供することができるとされている。特許文献1の既洗浸漬米の製造装置において、米の洗浄と浸漬は同時に行われる。
【0004】
【特許文献1】特開平04−311358号公報(特許請求の範囲、[0013]、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の既洗浸漬米の製造装置は、大容量の洗米浸漬槽で一度に大量の米を洗浄して浸漬するものであったために、製造量を細かく調節することが困難なものであった。また、特許文献1の既洗浸漬米の製造装置は、浸漬処理が施されて吸水した状態の米を小分けするものとなっており、小分けされる米の量を高い精度で揃えることが困難なものとなっていた。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、浸漬米の製造量を細かく調節することのできる浸漬米製造装置を提供することを目的とする。また、小分けされる米の量を高い精度で揃えることの容易な浸漬米製造装置を提供することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、環状経路に沿って循環移送される複数の浸漬槽と、前記環状経路における米供給位置に到達した浸漬槽に米を所定量ずつ供給していく米供給手段と、前記環状経路における浸漬水供給位置に到達した浸漬槽に浸漬水を所定量ずつ供給していく浸漬水供給手段と、前記環状経路における米排出位置に到達した浸漬槽から米を順次排出させる米排出手段とを備えたことを特徴とする浸漬米製造装置を提供することによって解決される。
【0008】
ここで、米供給位置と浸漬水供給位置と米排出位置は、前記環状経路に沿って循環移送される浸漬槽が米供給位置−浸漬水供給位置−米排出位置−米供給位置の順か、浸漬水供給位置−米供給位置−米排出位置−浸漬水供給位置の順か、若しくは米供給位置・浸漬水供給位置(米供給位置と浸漬水供給位置とが同じ位置)−米排出位置−米供給位置・浸漬水供給位置の順で到達するように、前記環状経路上に配される。
【0009】
一の浸漬槽が米供給位置及び浸漬水供給位置の両方に到達してから米排出位置に到達するまでの時間は、前記一の浸漬槽で浸漬処理が施される時間に略一致する。以下においては、一の浸漬槽が米供給位置及び浸漬水供給位置の両方に到達してから米排出位置に到達するまでの時間を「浸漬時間」と呼ぶことがある。この浸漬時間は、米を浸漬する季節や米の種類などによって異なり、特に限定されないが、通常、20〜300分に設定される。米の食感は、浸漬時間が180分のときに最高となることが確認できている。
【0010】
米供給手段は、浸漬槽に米を所定量ずつ供給していくことのできる形態のものであれば特に限定されないが、米を濯ぎ洗いするための濯ぎ槽を備え、米を濯ぎ槽で所定量ずつ濯ぎ洗いしてから前記環状経路における米供給位置に到達した浸漬槽に所定量ずつ供給していくものであると好ましい。これにより、浸漬処理を施す前の米に濯ぎ洗いを施すことが可能になる。
【0011】
米供給手段が、米を殺菌水に接触させるための殺菌槽を備え、米を殺菌槽で所定量ずつ殺菌水に接触させてから濯ぎ槽で所定量ずつ濯ぎ洗いしていくものであることも好ましい。これにより、浸漬処理を施す前の米に殺菌処理を施すことが可能になる。殺菌槽は、濯ぎ槽と兼用であってもよいが、濯ぎ槽と別個に設けると好ましい。これにより、
米を濯ぎ洗いしている際に、次の米に殺菌処理を施すことが可能になり、浸漬米の製造効率を向上させることができる。
【0012】
濯ぎ槽は、米を所定量ずつ濯ぎ洗いしていくことのできる形態のものであれば特に限定されないが、米を受け入れるための米受入れ口と、濯ぎ水を排出するための濯ぎ水排出口と、濯ぎ洗いした米を排出するための米排出口とを有し、米の受入時にはその米受入れ口が上側に向けられ、米の濯ぎ洗い時にはその濯ぎ水排出口が下側に向けられ、米の排出時にはその米排出口が下側に向けられるものであると好ましい。これにより、米を濯ぎ洗いしてから水切りし浸漬槽へ米を供給するまでの工程を速やかに行うことができるようになる。
【0013】
米受入れ口と濯ぎ水排出口と米排出口の配置は、濯ぎ槽の形状などによっても異なり、特に限定されないが、濯ぎ槽が、一端部から中央部にかけて太くなり中央部から他端部にかけて細くなる略筒状体に形成され、濯ぎ槽の中央部に前記米受入れ口が設けられ、濯ぎ槽の一端部に前記濯ぎ水排出口が設けられ、濯ぎ槽の他端部に前記米排出口が設けられていると好ましい。これにより、米を濯ぎ洗いしてから水切りし浸漬槽へ米を供給するまでの工程をさらに速やかに行うことができるようになる。
【0014】
浸漬槽で浸漬処理を施されている米を攪拌するための攪拌手段が、前記環状経路におけるいずれかの位置に設けられていることも好ましい。これにより、浸漬槽の米に均一に浸漬処理を施すことが可能になる。また、浸漬水で米に着色する場合には、できあがる米の色むらを防止することも可能になる。攪拌手段は、前記環状経路における米供給位置にできるだけ近い箇所に設けるとよい。
【0015】
また、上記課題は、複数の浸漬槽を環状経路に沿って循環移送し、前記環状経路における米供給位置に到達した浸漬槽に米を所定量ずつ供給していき、前記環状経路における浸漬水供給位置に到達した浸漬槽に浸漬水を所定量ずつ供給していき、前記環状経路における米排出位置に到達した浸漬槽から米を順次排出させることを特徴とする浸漬米製造方法を提供することによっても解決される。上記した浸漬米製造装置は、この浸漬米製造方法を実施するのに好適なものとなっている。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によって、浸漬米の製造量を細かく調節することのできる浸漬米製造装置を提供することが可能になる。また、各ロット間で浸漬米の品質を一定に揃えることが容易な浸漬米製造装置を提供することも可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の浸漬米製造装置の好適な実施態様について、図面を用いてより具体的に説明する。図1は、本発明の浸漬米製造装置の好適な実施態様を示した側面図である。図2は、図1の浸漬米製造装置における殺菌槽210を鉛直面で切断した状態を示した断面図である。図3は、図1の浸漬米製造装置における濯ぎ槽220を示した斜視図である。図4は、図1の浸漬米製造装置における濯ぎ槽220を示した平面図である。図5は、図1の浸漬米製造装置における濯ぎ槽220を図4におけるA−A面で切断した状態を示した断面図である。図6は、濯ぎ槽220の内部に米を供給しているときの米供給手段200の周辺を示した側面図である。図7は、濯ぎ槽220の内部の米を濯ぎ洗いしているときの米供給手段200の周辺を示した側面図である。図8は、濯ぎ槽220を米供給位置Pの上方に移動させたときの米供給手段200の周辺を示した側面図である。図9は、米供給位置Pに到達した浸漬槽100の内部に米を供給しているときの米供給手段200の周辺を示した側面図である。図10は、図1の浸漬米製造装置における浸漬槽100を鉛直面で切断した状態を示した断面図である。図11は、動作開始時における米排出手段400を示した側面図である。図12は、浸漬槽反転動作開始時における米排出手段400を示した側面図である。図13は、浸漬槽反転動作終了時における米排出手段400を示した側面図である。
【0018】
[浸漬米製造装置]
本発明の浸漬米製造装置は、図1に示すように、環状経路Rに沿って循環移送される複数の浸漬槽100と、環状経路Rにおける米供給位置Pに到達した浸漬槽100に米を所定量ずつ供給していく米供給手段200と、環状経路Rにおける浸漬水供給位置Pに到達した浸漬槽100に浸漬水を所定量ずつ供給していく浸漬水供給手段300と、環状経路Rにおける米排出位置Pに到達した浸漬槽100から米を順次排出させる米排出手段400(図11〜図13を参照)とを備えたものとなっている。本実施態様の浸漬米製造装置において、米供給位置Pと浸漬水供給位置Pは、同じ場所に設定されている。
【0019】
[米供給手段]
米供給手段200は、環状経路Rにおける米供給位置Pに到達した浸漬槽100に米を供給するだけのものであってもよいが、本実施態様の浸漬米製造装置においては、図1に示すように、米を所定量ずつ殺菌水に接触させていく殺菌槽210と、殺菌槽210から排出された米を受け入れて濯ぎ水で所定量ずつ濯ぎ洗いしていく濯ぎ槽220とを備えたものとなっており、米を殺菌した後、濯ぎ洗いしてから浸漬槽100に供給するものとなっている。
【0020】
[米供給手段−殺菌槽]
殺菌槽210は、その形状を特に限定されるものではないが、本実施態様の浸漬米製造装置においては、図2に示すように、上端部が広く形成されて下端部が狭く形成された略錐形のものを用いている。殺菌槽210の上端部と下端部には、それぞれ開口が設けられている。上端部に設けられた開口は、米や浸漬水を殺菌槽210の内部に流し込むための流し込み口となっており、下端部に設けられた開口は、米や浸漬水を殺菌槽210の外部に排出するための排出口となっている。殺菌槽210の内面には、米が付着しにくい加工を施してもよい。これにより、殺菌槽210の中の米を残りなく濯ぎ槽220に移すことが可能になる。
【0021】
殺菌槽210の排出口は、栓211によって塞がれており、殺菌槽210で米に殺菌処理を施しているときには、殺菌槽210の内部から米や殺菌水が排出されないようになっている。栓211は、殺菌槽210の内部に挿入されたロッド212の下端部に固定されており、ロッド212は、その上端部をスプリング213によって上向きに付勢されている。このため、栓211は、ロッド212を下向きに押さない限りは、殺菌槽210の排出口を開かないようになっている。スプリング213は、その上端部をロッド212の上端部に係止され、その下端部を殺菌槽210の上端部に架け渡された板材214に係止されている。
【0022】
殺菌槽210の上方には、図1に示すように、殺菌槽210に殺菌水を供給するための殺菌水供給手段230が設けられている。殺菌水供給手段230は、殺菌槽210に殺菌水を供給できるものであれば特に限定されないが、本実施態様の浸漬米製造装置においては、殺菌水を貯蔵するための殺菌水貯蔵槽231と、殺菌水貯蔵槽231に貯蔵されている殺菌水を殺菌槽210に移送するための殺菌水送出管232とを備えたものとなっている。
【0023】
[米供給手段−濯ぎ槽]
濯ぎ槽220は、その形状を特に限定されるものではないが、本実施態様の浸漬米製造装置においては、図3〜図5に示すように、一端部から中央部にかけて太くなり、中央部から他端部にかけて細くなる略筒状体に形成されている。濯ぎ槽220の中央部には、殺菌槽210から排出された米を受け入れるための米受入れ口221が設けられている。また、濯ぎ槽220の一端部には、濯ぎ水を排出するための濯ぎ水排出口222が設けられており、濯ぎ槽220の他端部には、濯ぎ洗いした米を排出するための米排出口223が設けられている。
【0024】
このうち、濯ぎ水排出口222には、図5に示すように、網224が取り付けられており、濯ぎ水を排出する際に、濯ぎ水排出口222から米が排出されないようになっている。また、本実施態様の浸漬米製造装置において、濯ぎ水排出口222は、後述するように、濯ぎ槽220の内部に浸漬水を供給するための浸漬水供給口としても利用されるようになっているために、濯ぎ水排出口222には、浸漬水供給手段300から供給される水を漏れなく受け取ることができるように、濯ぎ水排出口222を広げるための筒状部225が設けられている。
【0025】
濯ぎ槽220の中央部の底面と両端部の底面とがなす角度θ(図5)は、特に限定されないが、設計の便宜上、通常、20°以上に設定される。角度θは、25°以上であると好ましく、30°以上であるとより好ましい。一方、角度θは、大きすぎると、濯ぎ槽220の内部にある米が中央部から移動しにくくなるおそれがあるために、通常、60°以下に設定される。角度θは、50°以下であると好ましく、40°以下であるとより好ましい。本実施態様の浸漬米製造装置においては、角度θを約34°に設定している。
【0026】
濯ぎ槽220は、図1に示すように、アーム240の先端部に揺動可能に軸支されている。アーム240の基端部は、浸漬米製造装置の基台に揺動可能に軸支されている。このため、濯ぎ槽220は、図6〜図9に示すように、その位置や傾きを変えることができるものとなっている。本実施態様の浸漬米製造装置において、濯ぎ槽220やアーム240には、図示省略の駆動手段が設けられており、濯ぎ槽220の位置や傾きを自動的に制御することができるようになっている。
【0027】
濯ぎ槽220の上方には、濯ぎ槽220に濯ぎ水を供給するための濯ぎ水供給手段250が設けられている。濯ぎ水供給手段250は、濯ぎ槽220に濯ぎ水を供給できるものであれば特に限定されないが、本実施態様の浸漬米製造装置においては、図1に示すように、濯ぎ水を貯蔵するための濯ぎ水貯蔵槽251と、濯ぎ水貯蔵槽251に貯蔵されている濯ぎ水を濯ぎ槽220に移送するための濯ぎ水送出管252とを備えたものとなっている。濯ぎ水送出管252の先端は、殺菌槽210の排出口近傍に接続されている。
【0028】
[浸漬水供給手段]
浸漬水供給手段300は、浸漬水供給位置Pに到達した浸漬槽100に浸漬水を供給できるものであれば特に限定されないが、本実施態様の浸漬米製造装置においては、図1に示すように、浸漬水を貯蔵するための浸漬水貯蔵槽301と、浸漬水貯蔵槽301に貯蔵されている浸漬水を浸漬槽100に移送するための浸漬水送出管302とを備えたものとなっている。
【0029】
[浸漬槽]
浸漬槽100は、図1に示すように、環状経路Rに沿って配された環状のチェーン500の所定箇所に揺動可能に軸支されており、チェーン500が回転駆動されると環状経路Rに沿って矢印aの向きに循環移送されるようになっている。チェーン500は、図示省略の駆動手段(モータなど)によって矢印aの向きに回転駆動される。チェーン500の代わりに、ベルトやワイヤなどを用いてもよい。浸漬槽100を配する間隔は、浸漬槽100の個数やチェーン500の長さなどによって異なり、特に限定されないが、本実施態様の浸漬米製造装置においては、長さ約8mのチェーン500を26等分する各箇所に浸漬槽100を軸支しており、浸漬槽100の間隔は、約30cmとなっている。
【0030】
浸漬槽100の循環移送は、断続的に停止させながら行ってもよいし、一定速度で連続的に行ってもよい。浸漬槽100の速度(浸漬槽100の速度が一定でない場合は平均の速度)は、浸漬時間と浸漬距離とに応じて適宜決定される。ここで、浸漬距離とは、浸漬槽100に米と浸漬水との両方が入れられた位置(図1の例では点P,P)から米排出位置Pまでの環状経路Rに沿った経路長を意味する。浸漬時間をTとし、浸漬距離をLとすると、浸漬槽100の速度はL/Tとなる。本実施態様の浸漬米製造装置においては、浸漬時間を80分に設定するために、浸漬槽100の速度を約7.9cm/分に設定している。浸漬距離は約6.3mとなっている。
【0031】
このとき、図14に示すように、複数の浸漬槽100が1組となって循環移送されると好ましい。図14は、並列に配された複数の浸漬槽100が1組となって循環移送される浸漬米製造装置を示した正面図である。これにより、浸漬米製造装置の処理能力の増大を図ることが可能になる。本実施態様の浸漬米製造装置においては、並列に配された5個の浸漬槽100が1組となって循環移送されるようになっている。このため、浸漬槽100の合計の個数は、130個となっている。本実施態様の浸漬米製造装置においては、殺菌槽210や濯ぎ槽220のほか、図1に示す殺菌水供給手段230や、濯ぎ水供給手段250や、浸漬水供給手段300や、水切り手段600も5個ずつ並列に設けられている。
【0032】
浸漬槽100の形状は、特に限定されないが、本実施態様の浸漬米製造装置においては、図10に示すように、上端部に開口を有するカップ状のものを採用している。米や浸漬水は、この開口から浸漬槽100の内部に供給され、この開口から浸漬槽100の外部に排出される。浸漬槽100の容積は、浸漬槽100に入れる米や浸漬水の量などを考慮して適宜決定され、特に限定されないが、通常、1〜10Lに設定される。本実施態様の浸漬米製造装置において、浸漬槽100の容積は約3Lとなっている。この浸漬槽100は、1kgの米と1.5〜2.0Lの浸漬水とを入れることを想定したものとなっている。
【0033】
[環状経路]
環状経路Rは、平面的(浸漬槽100が水平方向のみに動くよう)に設けてもよいが、本実施態様の浸漬米製造装置においては、図1に示すように、立体的(浸漬槽100が水平方向以外にも動くよう)に設けている。これにより、浸漬米製造装置の設置面積を小さくすることが可能になる。また、環状経路Rを細長く潰れた形状に形成しており、浸漬米製造装置のコンパクト化を図っている。さらに、環状経路Rを鉤状にカーブさせており、限られた空間内で環状経路Rの経路長をできるだけ長く確保できるようにしている。カーブを設ける数や場所は、環状経路Rに必要な経路長などを考慮して適宜決定される。さらにまた、環状経路Rは、環状経路Rの最下点(図1の例では点P)に到達した浸漬槽100の床面からの高さを60cm以上確保できるように設けており、床面にある埃などが浸漬槽100に混入するのを防止している。環状経路Rには、浸漬槽100で浸漬処理を施されている米を攪拌するための攪拌手段(図示省略)を設けてもよい。
【0034】
[米排出手段]
米排出手段400は、米排出位置Pに到達した浸漬槽100から米を排出することができるものであれば特に限定されないが、本実施態様の浸漬米製造装置においては、図11〜図13に示すように、ロボットアーム型のものを採用している。この米排出手段400は、第一シリンダ410と第二シリンダ420とを備えたものとなっている。第一シリンダ410は、点Qで浸漬米製造装置の構造躯体(図示省略)などに軸支されており、点Qで第二シリンダ420のピストンに軸着されている。また、第二シリンダ420は、点Qで浸漬米製造装置の構造躯体(図示省略)に連結されている。このため、第二シリンダ420のピストンが往復動すると、第一シリンダ410が点Qを中心に回転するようになっている。したがって、第一シリンダ410を回転させながら第一シリンダ410のピストンを往復動させることによって、該ピストンの先端に取り付けられた作用部411に円弧状の軌跡を描かせることができるようになっている。作用部411は、浸漬槽100の側板110に設けられたロッド111に掛止することが可能な形態のものとなっており、浸漬槽100を点Qを中心に回転させることができるようになっている。側板110は、浸漬槽100と一体的に動作するように浸漬槽100に固定されている。本実施態様の浸漬米製造装置において、米排出手段400は、浸漬槽100が米排出位置Pに到達すると自動的に動作するように設定されている。点Qを中心に回転してひっくり返った浸漬槽100からは、米だけでなく浸漬水も排出される。
【0035】
[水切り手段]
本実施態様の浸漬米製造装置は、浸漬槽100から排出された米を水切りするための水切り手段600を備えたものとなっている。水切り手段600は、図1に示すように、環状経路Rにおける米排出位置Pに到達した浸漬槽100の下方となる位置に設けられており、浸漬槽100から排出された米を直に受け取ることができるようになっている。
【0036】
[動作と使用方法]
次に、本実施態様の浸漬米製造装置の動作と使用方法について説明する。まず、精白された米を用意し、所定量(1kg)ごとに小分けして浸漬米製造装置の殺菌槽210の内部に供給する。米の計量や殺菌槽210への供給は、手作業で行ってもよいし、機械を用いて行ってもよい。このように、浸漬処理を施すよりも前に米を計量しておくことによって、小分けされる米の量を高い精度で揃えることが可能になる。
【0037】
殺菌槽210に所定量(1kg)の米が供給されると、殺菌水供給手段230によって殺菌槽210の内部に殺菌水が供給される。殺菌水の種類は、殺菌作用を有するものであれば特に限定されず、有機酸の水溶液などを用いることができるが、本実施態様の浸漬米製造装置においては、pHが3.0以下のクエン酸水を用いている。殺菌水の温度は、殺菌水の種類などによって異なり、特に限定されないが、本実施態様の浸漬米製造装置においては、クエン酸の殺菌作用が活発になる60℃前後に設定している。米に殺菌水に浸漬させる時間(殺菌時間)は、通常、30〜120秒に設定され、本実施態様の浸漬米製造装置においては、約60秒に設定している。
【0038】
米の殺菌が終わると、殺菌槽210の排出口を塞いでいた栓211が開き、殺菌槽210の中にあった米と殺菌水とが殺菌槽210の外部に排出される。殺菌槽210から排出された米と殺菌水は、図6に示すように、殺菌槽210の下方で水平に支持されている濯ぎ槽220の米受入れ口221から濯ぎ槽220の内部に供給される。
【0039】
濯ぎ槽220に米が供給されると、図7に示すように、濯ぎ槽220が傾けられ、濯ぎ水排出口222が下側に向けられる。米と殺菌水は、濯ぎ槽220の内部を下方(濯ぎ水排出口222が設けられている側)に移動して、このうち、殺菌水は、濯ぎ水排出口222に設けられている網224(図5)を通過して、濯ぎ水排出口222から濯ぎ槽220の外部へと排出される。米は、濯ぎ水排出口222に設けられている網224(図5)を通過せず、濯ぎ槽220の内部に留まる。
【0040】
濯ぎ槽220の濯ぎ水排出口222が下側に向けられると、濯ぎ水供給手段250によって濯ぎ槽220の内部に濯ぎ水が供給される。濯ぎ水の種類は、特に限定されないが、本実施態様の浸漬米製造装置においては、pHが6.8の上水を用いている。また、本実施態様の浸漬米製造装置において、濯ぎ水は、米受入れ口221から濯ぎ槽220の内部に供給されるようになっているが、米排出口223などから供給してもよい。濯ぎ水は、米に付着している殺菌水や米糠などを洗い落としながら濯ぎ槽220の内部を下方に移動し、濯ぎ水排出口222から濯ぎ槽220の外部へと排出される。
【0041】
米の濯ぎ洗いが終わると、図8に示すように、濯ぎ槽220が米供給位置Pの上方に移動し、図9に示すように、濯ぎ槽220が傾けられ、米排出口223が下側に向けられる。米は、濯ぎ槽220の内部を下方(米排出口223が設けられている側)に移動し、米排出口223から濯ぎ槽220の外部へと排出される。濯ぎ槽220から排出された米は、米供給位置Pに到達した浸漬槽100の内部へと供給される。
【0042】
このとき、浸漬水供給手段300によって濯ぎ槽220の内部に浸漬水を供給しながら濯ぎ槽220から米を排出すると好ましい。本実施態様の浸漬米製造装置において、浸漬水は、図9に示すように、上側に向けられた濯ぎ水排出口222から濯ぎ槽220の内部に供給されるようになっている。これにより、濯ぎ槽220の内壁に米が付着して残るのを防止するだけでなく、殺菌槽210に米を供給してから浸漬槽100に米や浸漬水を供給するまでの時間(以下において、「供給時間」と呼ぶことがある。)を短縮することも可能になる。本実施態様の浸漬米製造装置において、供給時間は3分以内になっている。濯ぎ槽220の内部に供給された浸漬水は、米排出口223から濯ぎ槽220の外部へと排出され、米供給位置Pに到達した浸漬槽100の内部へと供給される。
【0043】
浸漬水の種類は、特に限定されないが、本実施態様の浸漬米製造装置においては、pHが7前後の水道水を用いている。また、浸漬水の温度は、浸漬時間などによって異なり、特に限定されないが、高く設定しすぎると、米の食感が著しく悪くなるおそれがある。米の食感は、浸漬水の温度が0°のときに最も良くなることが確認できた。しかし、浸漬水の温度を低く設定しすぎると、米が水分を吸収しにくくなり、浸漬時間を長く確保しなければならなくなる。このため、本実施態様の浸漬米製造装置においては、浸漬水の温度を30℃に設定しており、80分の浸漬時間で米が水分を十分に吸収できるようにしている。赤飯などのおこわを製造する場合には、浸漬水に色付剤や味付剤を添加するとよい。
【0044】
米供給位置Pで米と浸漬水が供給された浸漬槽100は、環状経路Rに沿って循環移送される。浸漬槽100の内部の米は、浸漬水をゆっくりと吸収し、米排出位置Pに到達する頃には、適度に水分を吸収した状態となっている。浸漬槽100は、米排出位置Pに到達すると、米排出手段400によってひっくり返され、その内部から米と浸漬水とが排出される。米の排出は、浸漬槽100に水を吹き付けながら行うと好ましい。これにより、浸漬槽100に米が残るのを防止するだけでなく、浸漬槽100を洗浄することも可能になる。浸漬槽100から排出された米は、水切り手段600によって水切りされた後、図示省略の包装手段によって真空包装された後、製品として出荷される。
【0045】
[浸漬米製造方法]
最後に、本発明の浸漬米製造方法について説明する。本発明の浸漬米製造方法は、図1に示すように、複数の浸漬槽100を環状経路Rに沿って循環移送し、環状経路Rにおける米供給位置Pに到達した浸漬槽100に米を所定量ずつ供給していき、環状経路Rにおける浸漬水供給位置Pに到達した浸漬槽100に浸漬水を所定量ずつ供給していき、環状経路Rにおける米排出位置Pに到達した浸漬槽100から米を順次排出させるものとなっている。本発明の浸漬米製造方法は、上記の浸漬米製造装置を用いて好適に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の浸漬米製造装置の好適な実施態様を示した側面図である。
【図2】図1の浸漬米製造装置における殺菌槽を鉛直面で切断した状態を示した断面図である。
【図3】図1の浸漬米製造装置における濯ぎ槽を示した斜視図である。
【図4】図1の浸漬米製造装置における濯ぎ槽を示した平面図である。
【図5】図1の浸漬米製造装置における濯ぎ槽を図4におけるA−A面で切断した状態を示した断面図である。
【図6】濯ぎ槽の内部に米を供給しているときの米供給手段の周辺を示した側面図である。
【図7】濯ぎ槽の内部の米を濯ぎ洗いしているときの米供給手段の周辺を示した側面図である。
【図8】濯ぎ槽を米供給位置Pの上方に移動させたときの米供給手段の周辺を示した側面図である。
【図9】米供給位置Pに到達した浸漬槽の内部に米を供給しているときの米供給手段の周辺を示した側面図である。
【図10】図1の浸漬米製造装置における浸漬槽を鉛直面で切断した状態を示した断面図である。
【図11】図11は、動作開始時における米排出手段を示した側面図である。
【図12】浸漬槽反転動作開始時における米排出手段を示した側面図である。
【図13】浸漬槽反転動作終了時における米排出手段を示した側面図である。
【図14】並列に配された複数の浸漬槽が1組となって循環移送される浸漬米製造装置を示した正面図である。
【符号の説明】
【0047】
100 浸漬槽
110 側板
111 ロッド
200 米供給手段
210 殺菌槽
211 栓
212 ロッド
213 スプリング
214 板材
220 濯ぎ槽
221 米受入れ口
222 濯ぎ水排出口
223 米排出口
224 網
225 筒状部
230 殺菌水供給手段
231 殺菌水貯蔵槽
232 殺菌水送出管
240 アーム
250 濯ぎ水供給手段
251 濯ぎ水貯蔵槽
252 濯ぎ水送出管
300 浸漬水供給手段
301 浸漬水貯蔵槽
302 浸漬水送出管
400 米排出手段
410 第一シリンダ
411 作用部
412 連結部
420 第二シリンダ
500 チェーン
600 水切り手段
米供給位置
浸漬水供給位置
米排出位置
最下点
R 環状経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状経路に沿って循環移送される複数の浸漬槽と、前記環状経路における米供給位置に到達した浸漬槽に米を所定量ずつ供給していく米供給手段と、前記環状経路における浸漬水供給位置に到達した浸漬槽に浸漬水を所定量ずつ供給していく浸漬水供給手段と、前記環状経路における米排出位置に到達した浸漬槽から米を順次排出させる米排出手段とを備えたことを特徴とする浸漬米製造装置。
【請求項2】
一の浸漬槽が米供給位置及び浸漬水供給位置の両方に到達してから米排出位置に到達するまでの時間が20〜300分に設定された請求項1記載の浸漬米製造装置。
【請求項3】
米供給手段が、米を濯ぎ洗いするための濯ぎ槽を備え、米を濯ぎ槽で所定量ずつ濯ぎ洗いしてから前記環状経路における米供給位置に到達した浸漬槽に所定量ずつ供給していく請求項1又は2記載の浸漬米製造装置。
【請求項4】
米供給手段が、米を殺菌水に接触させるための殺菌槽を備え、米を殺菌槽で所定量ずつ殺菌水に接触させてから濯ぎ槽で所定量ずつ濯ぎ洗いしていく請求項3記載の浸漬米製造装置。
【請求項5】
濯ぎ槽が、米を受け入れるための米受入れ口と、濯ぎ水を排出するための濯ぎ水排出口と、濯ぎ洗いした米を排出するための米排出口とを有し、米の受入時にはその米受入れ口が上側に向けられ、米の濯ぎ洗い時にはその濯ぎ水排出口が下側に向けられ、米の排出時にはその米排出口が下側に向けられる請求項3又は4記載の浸漬米製造装置。
【請求項6】
濯ぎ槽が、一端部から中央部にかけて太くなり中央部から他端部にかけて細くなる略筒状体に形成され、濯ぎ槽の中央部に前記米受入れ口が設けられ、濯ぎ槽の一端部に前記濯ぎ水排出口が設けられ、濯ぎ槽の他端部に前記米排出口が設けられた請求項5記載の浸漬米製造装置。
【請求項7】
浸漬槽で浸漬処理を施されている米を攪拌するための攪拌手段が、前記環状経路におけるいずれかの位置に設けられた請求項1〜6いずれか記載の浸漬米製造装置。
【請求項8】
複数の浸漬槽を環状経路に沿って循環移送し、前記環状経路における米供給位置に到達した浸漬槽に米を所定量ずつ供給していき、前記環状経路における浸漬水供給位置に到達した浸漬槽に浸漬水を所定量ずつ供給していき、前記環状経路における米排出位置に到達した浸漬槽から米を順次排出させることを特徴とする浸漬米製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−135446(P2007−135446A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−332191(P2005−332191)
【出願日】平成17年11月16日(2005.11.16)
【出願人】(503398956)岡山パールライス株式会社 (1)
【Fターム(参考)】