説明

浸透性コンクリート組成物

本発明の対象は、水硬性結合剤と、フィラーと、重合体とを含有する浸透性コンクリート組成物であって、重合体として、20℃以下のガラス転移温度Tgを有する酢酸ビニル−エチレン−混合重合体が含まれていることを特徴とする浸透性コンクリート組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント、フィラー(Fuellstoff)及び重合体を含有する浸透性コンクリート組成物、該浸透性コンクリート組成物の製造方法並びに該浸透性コンクリート組成物の使用に関する。
【0002】
浸透性コンクリートは、空洞が豊富な粗粒(haufwerksporig)コンクリートである。浸透性コンクリートの空洞の容積は、10〜35容量%、好ましくは20〜25容量%である。粗粒細孔(Haufwerkspore)は、狭く限定された粒状物グループを有するフィラーの使用によって、かつほぼ完全に微細成分の割合を減らして得られる。通常は、唯一の粒状物グループのみが使用される(単粒、例えばSplitt 5/8mm)。浸透性コンクリートは、まさに骨材の個々の粒状物がその接触位置でのみ薄い硬化セメント層によって互いに接合されているだけで、圧縮後に個々の粒状物間の空洞が依然として塞がらない量のニートセメントを有している。開放気泡のコンクリート(浸透性コンクリート)は、特にインフラプロジェクトにおける騒音低下のために、例えば道路工事において、騒音の少ない車道を作るために使用される。その他に、浸透性コンクリートは、その開放気泡性のため、浸透可能な交通面、例えば駐車場、床面及び自転車道での排水のためにも使用される。前記の道路システムの長期耐用性は、その亀裂形成と粒子の割れ出し(ausbruch)に基づき限られたものである。この欠点を取り除くために、浸透性コンクリートはポリマー分散液で改質される。
【0003】
ポリマーを使用することにより、浸透性コンクリート層において、凍解安定性、亀裂強度の改善と粒子の割れ出しの低下がもたらされ、そのため浸透性コンクリート層の安定性と寿命が高まる。さらに重要なことは、コンクリートマトリクスの可撓性が十分に高められ、従って亀裂形成と粒状物の割れ出しが低減されるが、それと同時に機械的強度は保持されたままで、コンクリートの耐久性が十分に保証されることである。
【0004】
DE−OS1953158号において、一様な粒状物フラクションの粒状の無機骨材と、セメントなどの結合剤と、水溶性の巨大分子物質と、場合によりポリ酢酸ビニルなどの熱可塑性プラスチックの水性分散液から製造される透水性ポーラスコンクリートが記載されている。しかしながら、この系は、透水性の騒音吸収性の路面の耐久性への要求を満たしていない。それというのも、前記の水溶性の巨大分子物質は、雨水により洗出されることがあり、かつポリ酢酸ビニルは10℃未満というより低い温度で脆化するからである。
【0005】
DE102004006165号A1において、多層の開放気泡の床張材であって、その最上の開放気泡層が結合剤として1成分系又は2成分系のポリウレタン接着剤又はエポキシ接着剤を用いて構成される床張材が記載されている。複層での系全体の費用のかかる施工並びに結合剤としてポリウレタン接着剤又はエポキシ接着剤を使用して、セメントなどのより好ましい無機結合剤を用いないことにより、その床張材は高価なものとなり、広範に使用できない。さらに、ポリウレタン接着剤及びエポキシ接着剤は、環境的に問題がないわけではない。
【0006】
EP0710633号B1の対象は、ポリマー型の結合剤をアニオン性のスチレン/(メタ)アクリレート−共重合体の形で含有する浸透性コンクリートである。使用されるスチレン−アクリレート−コポリマーは、好ましくは35℃〜50℃の範囲の高い最低皮膜形成温度(MFT)を有するべきである。かかるスチレンコポリマーは、硬質ポリマーであって、それらは開放気泡のコンクリート層の可撓性を十分に高めず、不十分な亀裂固定特性を有する。高いMFTを有する硬質のスチレンアクリレートは10℃未満の低い温度で脆化して、その性能が損なわれるので、単粒コンクリート層において亀裂形成と粒状物の割れ出しがもたらされ、さらに不十分な耐久性が、特に冬期の後にもたらされる。
【0007】
WO2008/052482号A1においては、開放気泡のポリマー改質されたコンクリートからなる路面とかかる路面の製造方法が特許請求の範囲に記載されている。その構造は、下方層、付着ブリッジ(Haftbruecke)、浸透性コンクリート及び表面処理層からなっている。前記の浸透性コンクリート層又は付着ブリッジのポリマー改質のためには、任意のポリマー分散液が使用される。前記の構造は、表面処理層が浸透性コンクリート層の摩耗及び滑り抵抗の向上のために必要であるという欠点を有する。この表面処理層は、浸透性コンクリート層の細孔を部分的に塞ぎうるポリマー改質されたモルタルの形で塗工される。これは、騒音吸収特性と開放気泡構造の排水に悪影響を及ぼす。さらに、その塗工は、追加の作業工程を必要とし、経済性に悪影響を及ぼす。
【0008】
従って、本発明の課題は、亀裂形成及び粒状物の割れ出しが低減されるが、それによって機械的強度が悪影響を受けないように浸透性コンクリート組成物を改善することであった。更に、表面処理層の施与は省略できるべきであった。驚くべきことに、本発明による酢酸ビニル−エチレン−混合重合体は、浸透性コンクリートの曲げ引張強さと、それと共にその可撓性を、様々な気候条件(冷間でも温暖な温度でも)下で従来技術に比して高めることが判明した。
【0009】
本発明の対象は、水硬性結合剤と、フィラーと、重合体とを含有する浸透性コンクリート組成物であって、重合体として、20℃以下のガラス転移温度Tgを有する酢酸ビニル−エチレン−混合重合体が含まれていることを特徴とする浸透性コンクリート組成物である。
【0010】
好適な水硬性結合剤は、セメント、特にポルトランドセメント、アルミナセメント、トラスセメント、スラグセメント、マグネシアセメント、リン酸セメント又は高炉セメント並びに混合セメント(複合セメント)を含む群からの1種もしくはそれより多くのものである。ポルトランドセメント並びに種々のセメント種の混合セメント又はセメントの改善に導く物質、例えばポゾラン、例えばフライアッシュ又はシリカ粉を有する混合セメントが好ましい。好ましい混合セメントは、ポルトランドセメント−スラグセメントである。水硬性結合剤は、一般に、それぞれ浸透性コンクリート組成物の乾燥物の全質量に対して、10〜50質量%、好ましくは10〜30質量%の量で使用される。
【0011】
好適なフィラーは、砂利又は砕石、好ましくはできる限り一様な粒度分布を有するものである。粒度は、一般に、3〜25mm、好ましくは5〜11mmである。好適なフィラーのための例は、Edelsplitt 5/8、Splitt 5/8、Splitt 8/11及びRundkorn、特に好ましくはSplitt 5/8及びEdelsplitt 5/8である。フィラーは、一般に、それぞれ浸透性コンクリート組成物の乾燥物の全質量に対して、50〜85質量%、好ましくは60〜80質量%の量で使用される。
【0012】
好適な更なるフィラーは、砂である。粒度は、一般に、0〜4mm、好ましくは0〜2mmである。砂のための例は、珪砂、珪砂粉、Brechsand 0/2及びEdelbrechsand 0/0,25である。前記の砂は、それぞれ浸透性コンクリート組成物の乾燥物の全質量に対して、0.05〜20質量%、好ましくは1〜10質量%の少量で使用される。耐摩耗性の砂の使用によって、静止摩擦係数と、それと共に車道面上での自動車タイヤのグリップ性が高められる。
【0013】
浸透性コンクリート組成物の応用技術的特性は、混和剤の添加によって改善することができる。このための例は、繊維、増粘剤、顔料、気泡安定剤、消泡剤、硬化促進剤、疎水化剤、可塑剤、流動化剤、コンクリート密度の制御のための空気連行剤(Luftporenmittel)又はポンプ可能性の改善のためのポンプ助剤である。前記の添加剤の使用量は、当業者に公知である。
【0014】
好適な重合体は、20℃以下のガラス転移温度Tgを有する酢酸ビニル−エチレン−混合重合体である。好ましくは、エチレン含有率は、1〜25質量%である。上述の仕様の保護コロイド安定化された酢酸ビニル−エチレン−混合重合体が好ましい。ガラス転移温度Tgは、好ましくは−15℃〜+20℃、有利には−10℃〜+15℃、特に有利には−10℃〜+8℃、最も有利には−10℃〜0℃である。重合体のガラス転移温度Tgは、公知のようにして示差走査熱量測定(DSC)によって測定することができる。Tgは、またFoxの式によって近似的に見積もることもできる。Fox T.G.,Bull.Am.Physics Soc.1,3,page 123(1956)によれば、以下の式が適用される: 1/Tg=x/Tg+x/Tg+…+x/Tg[式中、xは、モノマーnの質量分率(質量%/100)を表し、そしてTgは、モノマーnのホモポリマーのケルビンにおけるガラス転移温度である]。単独重合体のためのTg値は、Polymer Handbook 2nd Edition,J.Wiley&Sons,New York(1975)に挙げられている。
【0015】
酢酸ビニル−エチレン−混合重合体は、更なるコモノマーを含んでよい。好適な更なるコモノマーは、3〜12個の炭素原子を有するカルボン酸のビニルエステル、アクリル酸もしくはメタクリル酸のエステル、塩化ビニルなどのビニルハロゲン化物、プロピレンなどのオレフィンの群からのコモノマーである。好適なビニルエステルは、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニル−2−エチルヘキサノエート、ビニルラウレート、1−メチルビニルアセテート、ビニルピバレート及び、9〜11個の炭素原子を有するα位で分枝したモノカルボン酸のビニルエステル、例えばVeoVa9(登録商標)又はVeoVa10(登録商標)(Resolution社の商品名)である。好適なメタクリル酸エステル又はアクリル酸エステルは、1〜15個の炭素原子を有する非分枝鎖状もしくは分枝鎖状のアルコールのエステル、例えばメチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ノルボルニルアクリレートである。これらのコモノマーは、場合により、混合重合体の全質量に対して、1〜30質量%の量で共重合される。
【0016】
場合により、混合重合体の全質量に対してさらに0.05〜10質量%の補助モノマーが共重合されてよい。補助モノマーのための例は、エチレン性不飽和モノカルボン酸及びジカルボン酸、好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸及びマレイン酸;エチレン性不飽和カルボン酸アミド及びカルボン酸ニトリル、好ましくはアクリルアミド及びアクリルニトリル;フマル酸及びマレイン酸のモノエステル及びジエステル、例えばジエチルエステル及びジイソプロピルエステル、並びに無水マレイン酸、エチレン性不飽和スルホン酸もしくはそれらの塩、好ましくはビニルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチル−プロパンスルホン酸である。更なる例は、予備架橋性コモノマー、例えば多エチレン性不飽和コモノマー、例えばジビニルアジペート、ジアリルマレエート、アリルメタクリレート又はトリアリルシアヌレート、又は後架橋性コモノマー、例えばアクリルアミドグリコール酸(AGA)、メチルアクリルアミドグリコール酸メチルエステル(MAGME)、N−メチロールアクリルアミド(NMA)、N−メチロールメタクリルアミド(NMMA)、N−メチロールアリルカルバメート、アルキルエーテル、例えばイソブトキシエーテル又はN−メチロールアクリルアミドの、N−メチロールメタクリルアミドの及びN−メチロールアリルカルバメートのエステルである。適しているのは、また、エポキシ官能性コモノマー、例えばグリシジルメタクリレート及びグリシジルアクリレートである。更なる例は、ケイ素官能性コモノマー、例えばアクリルオキシプロピルトリ(アルコキシ)シラン及びメタクリルオキシプロピルトリ(アルコキシ)シラン、ビニルトリアルコキシシラン及びビニルメチルジアルコキシシランであり、その際、アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基及びエトキシプロピレングリコールエーテル基が含まれていてよい。挙げられるのは、また、ヒドロキシ基又はCO基を有するモノマー、例えばメタクリル酸ヒドロキシアルキルエステル及びアクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、例えばヒドロキシエチル−、ヒドロキシプロピル−もしくはヒドロキシブチルアクリレート又は−メタクリレート並びにジアセトンアクリルアミド及びアセチルアセトキシ−エチルアクリレート又は−メタクリレートなどの化合物である。
【0017】
75〜90質量%の酢酸ビニルと10〜25質量%のエチレンとを有する共重合体;並びに
30〜90質量%の酢酸ビニルと1〜25質量%のエチレン及び1〜50質量%の1種もしくは複数種の他のコモノマーであってカルボン酸基中に3〜12個の炭素原子を有するビニルエステル、例えばビニルプロピオネート、ビニルラウレート、9〜11個の炭素原子を有するα位で分岐したカルボン酸のビニルエステル、例えばVeoVa9、VeoVa10、VeoVa11の群からのコモノマーとの混合重合体;及び
30〜90質量%の酢酸ビニル、1〜25質量%のエチレン及び好ましくは1〜60質量%の、1〜15個の炭素原子を有する非分枝鎖状もしくは分枝鎖状のアルコールの(メタ)アクリル酸エステル、特にメチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート又は2−エチルヘキシルアクリレートとの混合重合体;及び
30〜90質量%の酢酸ビニル、1〜30質量%のビニルラウレート又は9〜11個の炭素原子を有するα位で分岐したカルボン酸のビニルエステル、並びに1〜30質量%の、1〜15個の炭素原子を有する非分枝鎖状もしくは分枝鎖状のアルコールの(メタ)アクリル酸エステル、特にメチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート又は2−エチルヘキシルアクリレートとの混合重合体であって、更に1〜25質量%のエチレンを含むもの
が特に好ましく、その際、前記混合重合体は、更に、上述の補助モノマーを上述の量で含有してよく、かつ質量%の表記はそれぞれ足して100質量%となる。
【0018】
混合重合体の製造は、乳化重合法に従って行われ、その際、重合温度は、一般に、40℃〜100℃、好ましくは60℃〜90℃である。重合の開始は、乳化重合に慣用のレドックス開始剤組合せ物を用いて行われる。分子量の制御のために、重合の間に調節剤を使用してよい。重合は、好ましくは保護コロイドの存在下で行われる。
【0019】
好適な保護コロイドは、部分鹸化もしくは完全鹸化されたポリビニルアルコール;ポリビニルアセタール;ポリビニルピロリドン;水溶性の形の多糖類、例えばデンプン(アミロース及びアミロペクチン)、セルロース及びそのカルボキシメチル誘導体、メチル誘導体、ヒドロキシエチル誘導体、ヒドロキシプロピル誘導体;タンパク質、例えばカゼイン又はカゼイン塩、大豆タンパク質、ゼラチン;リグニンスルホネート;合成ポリマー、例えばポリ(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレートとカルボキシル官能性コモノマー単位との共重合体、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリビニルスルホン酸及びその水溶性コポリマー;メラミンホルムアルデヒドスルホネート、ナフタリンホルムアルデヒドスルホネート、スチレンマレイン酸コポリマー及びビニルエーテルマレイン酸コポリマー;カチオン性保護コロイド、例えば第四級アンモニウム基を有するモノマー単位を有するポリマーである。好ましくは、加水分解度80〜95モル%及び4%水溶液中でのヘップラーの粘度(Hoeppler−Viskositaet)1〜30mPas(20℃でのヘップラーによる方法、DIN53015)を有する部分鹸化されたポリビニルアルコールである。それらの保護コロイドは、一般に、モノマーの全質量に対して全体で1〜20質量%の量で重合に際して添加される。
【0020】
好ましくは乳化剤を添加せずに重合される。例外的な場合には、さらに追加で少量の乳化剤を、場合によりモノマー量に対して1〜5質量%で使用することが好ましいことがある。それにより得られる水性分散液は、30〜75質量%の、好ましくは50〜60質量%の固体含有率を有する。
【0021】
水中に再分散可能なポリマー粉末の製造のために、水性分散液を、場合により乾燥助剤として保護コロイドを添加した後に、例えば流動層乾燥、凍結乾燥又は噴霧乾燥によって乾燥させる。好ましくは、分散液は噴霧乾燥される。一般に、乾燥助剤は、分散液のポリマー成分に対して3〜30質量%の全体量で使用される。すなわち、乾燥過程の前の保護コロイドの全体量は、ポリマー割合に対して3〜30質量%であることが望ましく、好ましくはポリマー割合に対して5〜20質量%を使用してよい。好適かつ好ましい保護コロイドもしくは乾燥助剤は、好適として、そして好ましいとして挙げられた保護コロイドである。
【0022】
酢酸ビニル−エチレン−混合重合体、好ましくは保護コロイドで安定化された酢酸ビニル−エチレン−混合重合体は、浸透性コンクリート組成物中で1〜20質量%の量で、好ましくは5〜15質量%の量で使用され、その際、質量%の表記は、浸透性コンクリート組成物における水硬性結合剤の割合に対するものであり、かつ質量%の表記はそれぞれ足して100質量%となる。酢酸ビニル−エチレン−混合重合体は、その水性分散液の形で又はその水中に再分散可能なポリマー粉末の形で使用することができる。水性分散液の形での混合重合体の使用に際して、混合重合体の乾燥質量でのその割合が算定される。
【0023】
浸透性コンクリート組成物の製造のために、該組成物の成分は、水と一緒に混合される。水硬性結合剤に対する水量は、その際、組成物の水−セメント係数が、0.1〜0.6、好ましくは0.2〜0.4であるように計量される。
【0024】
浸透性コンクリート組成物は、通常の機器を用いて加工することができる。道路工事においては、例えばアスファルト工事に慣用のフィニッシャーが用いられる。浸透性コンクリート層と下地との付着性の改善のために、浸透性コンクリート層の施与の前に付着ブリッジを施与することができる。かかる付着ブリッジのための配合は、当業者に公知である。
【0025】
浸透性コンクリート組成物を、道路工事において、例えば車道舗装又は浸透可能な面の製造のために使用する他に、該組成物は、更に、水利工事で使用することができる。更なる使用は、コンクリート製の濾管、濾石及び濾板などのコンクリート製の濾過成形体の製造のため並びに騒音防止壁の製造のための使用である。
【0026】
基本的に、浸透性コンクリート中のポリマーには、その性能に関して高い要求が課されている。それというのも、該系の開放気泡に基づき、内側領域も激しく風化されるからである(コンクリートマトリクス全体の大きな表面領域を洗う)。上述の本発明による酢酸ビニル−エチレン−混合重合体の使用によって、単粒コンクリート層の可撓性が高められる。今までに使用されていたスチレンアクリレート混合重合体に対して、驚くべきことに、約5℃未満の低い屋外温度(秋、冬、早春)で、騒音吸収性の単粒層の可撓性が保持される(貯蔵1及び4を参照のこと)。酢酸ビニル−エチレン−混合重合体は、前記の条件下で、より高い温度(暖かな夏日、直接的な日光照射)でのそれに匹敵する曲げ引張強さを示す。スチレンアクリレート混合重合体及びより高いTgを有する酢酸ビニル−エチレン−混合重合体は、それに対して5℃未満の温度で脆化し、そしてそれにより制限された単粒コンクリート層のより低い可撓性(曲げ引張強さ)は、まさに寒い日には、より激しい亀裂形成と粒状物の割れ出しをもたらす。これは、さらに不十分な耐久性の形で、まさに冬期の後に現れる。
【0027】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するために用いられるものである:
浸透性コンクリートの製造のために、以下の配合を使用した:
17.4質量部のポルトランドセメント(CEM I 42.5 N)
82.4質量部のEdelsplitt 5/8mm
0.05質量部の消泡剤(Agitan P 801)
0.21質量部のコンクリート液状化剤(Melment F 10)
w/z=0.28
6kgの前記の乾燥混合物を、パグミルミキサ中で数秒間プレミックスした。引き続き、0.188kgの水を添加し、0.209kgのポリマー分散液(該分散液の水分は、水/セメント(w/z)に算入した)を添加した。全ての成分を、3分間混合した。引き続き3分間休止時間を設けてから、もう一回1分間混合した。
【0028】
以下の、それぞれ50%の固体含有率を有するポリマー分散液を試験した:
実施例1:
ガラス転移温度+5℃を有する酢酸ビニル−エチレン−共重合体(エチレン含有率:14質量%)の、ポリビニルアルコールで安定化された水性分散液
実施例2:
ガラス転移温度−7℃を有する酢酸ビニル−エチレン−共重合体(エチレン含有率:21質量%)の、ポリビニルアルコールで安定化された水性分散液
実施例3:
ガラス転移温度+13℃を有する酢酸ビニル−エチレン−VeoVa10−メチルメタクリレート−混合重合体(エチレン含有率:8質量%)の、ポリビニルアルコールで安定化された水性分散液
実施例4:
ガラス転移温度+6℃を有する酢酸ビニル−エチレン−VeoVa10−メチルメタクリレート−混合重合体(エチレン含有率:12質量%)の、ポリビニルアルコールで安定化された水性分散液
比較例1:
ガラス転移温度+21℃を有するスチレン−ブチルアクリレート−混合重合体の、アニオン的に安定化された水性分散液
試験体の製造:
1貯蔵当たりに、3つの試験体(寸法:40mmの高さ、40mmの幅、160mmの長さ)を製造した。そのために、コンクリート混合物を鋼製型枠に導入し、そして約24%の目標とされる空洞含有率に活荷重によって圧縮した。型枠を、シートで覆って、気候室(23℃/50%相対湿度)中で、型抜きまで24時間にわたり貯蔵した。
【0029】
計算上の空洞含有率の測定のために、曲げ引張強さの測定直前に角柱の質量を測定した。製造された試験体の空洞含有率については、気候室(23℃/50%相対湿度)中での貯蔵の際に28日の日数で、以下の値が測定された:
実施例1: 23.8%
実施例2: 24.0%
実施例3: 24.1%
実施例4: 23.7%
比較例1: 24.0%
曲げ引張強さは、3点の曲げ引張試験(試験体中央での単一負荷による荷重)においてDIN 1048−5に従ってもしくはDIN 12808−3により以下の貯蔵条件下で測定した:
貯蔵L1:
標準大気での貯蔵、標準大気(23℃/50%の相対湿度)で28日
23℃での曲げ引張強さの測定
貯蔵L2:
熱間貯蔵、標準大気で14日、70℃で14日
23℃での曲げ引張強さの測定
貯蔵L3:
凍解貯蔵、水及び25サイクルの凍解貯蔵
標準大気で7日、水(20℃)で21日、−20℃で4時間、水中+20℃で2時間、標準大気で3日
23℃での曲げ引張強さの測定
貯蔵L4:
標準大気での貯蔵、標準大気(23℃/50%の相対湿度)で28日、0℃で2日
0℃での曲げ引張強さの測定
それらの結果を、第1表にまとめる:
第1表:
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水硬性結合剤と、フィラーと、重合体とを含有する浸透性コンクリート組成物であって、重合体として、20℃以下のガラス転移温度Tgを有する酢酸ビニル−エチレン−混合重合体が含まれていることを特徴とする浸透性コンクリート組成物。
【請求項2】
保護コロイドで安定化された酢酸ビニル−エチレン−混合重合体が含まれていることを特徴とする、請求項1に記載の浸透性コンクリート組成物。
【請求項3】
ガラス転移温度Tgが−10℃〜+15℃であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の浸透性コンクリート組成物。
【請求項4】
ガラス転移温度Tgが−10℃〜+8℃であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の浸透性コンクリート組成物。
【請求項5】
ガラス転移温度Tgが−10℃〜0℃であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の浸透性コンクリート組成物。
【請求項6】
保護コロイドとして、加水分解度80〜95モル%及び4%水溶液中でのヘップラーの粘度1〜30mPasを有する部分鹸化されたポリビニルアルコールが含まれていることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の浸透性コンクリート組成物。
【請求項7】
75〜90質量%の酢酸ビニル及び10〜25質量%のエチレンを有する共重合体が含まれていることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の浸透性コンクリート組成物。
【請求項8】
30〜90質量%の酢酸ビニルと、1〜25質量%のエチレン及び1〜50質量%の1種もしくは複数種の更なるコモノマーであってカルボン酸基中に3〜12個の炭素原子を有するビニルエステルの群からのコモノマーとの混合重合体が含まれていることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の浸透性コンクリート組成物。
【請求項9】
30〜90質量%の酢酸ビニルと、1〜25質量%のエチレンと、1〜60質量%の、1〜15個の炭素原子を有する非分枝鎖状もしくは分枝鎖状のアルコールの(メタ)アクリル酸エステルとの混合重合体が含まれていることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の浸透性コンクリート組成物。
【請求項10】
30〜90質量%の酢酸ビニルと、1〜30質量%の、ビニルラウレート又は9〜11個の炭素原子を有するα位で分岐したカルボン酸のビニルエステルと、1〜30質量%の、1〜15個の炭素原子を有する非分枝鎖状もしくは分枝鎖状のアルコールの(メタ)アクリル酸エステルとの混合重合体であって、更に1〜25質量%のエチレンを含む混合重合体が含まれていることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の浸透性コンクリート組成物。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項に記載の浸透性コンクリート組成物を、道路工事又は水利工事において用いる使用。
【請求項12】
請求項1から10までのいずれか1項に記載の浸透性コンクリート組成物を、コンクリート製の濾過成形体又は騒音防止壁の製造のために用いる使用。

【公表番号】特表2012−510423(P2012−510423A)
【公表日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−539022(P2011−539022)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際出願番号】PCT/EP2009/066283
【国際公開番号】WO2010/063782
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】