説明

消化汚泥の処理装置

【課題】消化汚泥から、スケーリングの発生要因成分である高濃度の溶解性のリン酸イオンを効率よく短時間でMAPの固体粒子として回収することにより、消化汚泥を汚泥溶融設備などの汚泥処理施設へ送る送泥管内のスケール付着を防止する。
【解決手段】消化汚泥注入管4、マグネシウム化合物注入管5、曝気用の気体吹き込み管6、リン酸マグネシウムアンモニウム粒子を含んだ消化汚泥を引き抜くためのMAP引抜管7及び処理された消化汚泥を排出するための処理汚泥管8を備えるMAP反応塔3と、処理汚泥管8に接続しており、処理汚泥に含まれる微細なリン酸マグネシウムアンモニウム粒子を回収してMAP反応塔3に戻すためのMAP回収装置9と、MAP反応塔3のMAP引抜管7に接続しており、消化汚泥を濃縮するための液体サイクロンと、液体サイクロンからの濃縮液からリン酸マグネシウムアンモニウム粒子を分離・除去するスクリーンとからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、嫌気性消化汚泥から溶解性リン酸態リンを除去し、リン酸マグネシウムアンモニウムの固体粒子として回収し、消化汚泥を汚泥溶融設備などの汚泥処理施設へ送る送泥管内のスケール付着を防止できるようにした消化汚泥の処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下水処理施設より発生した汚泥を汚泥溶融設備などの汚泥処理施設に送泥する際に、汚泥中に含有されるリン酸イオン(PO3−)、マグネシウムイオン(Mg2+)、アンモニウムイオン(NH)が配管中において、リン酸マグネシウムアンモニウム(MgNHPO・6HO;以下MAPという。)を生成したり、リン酸イオン(PO3−)、カルシウムイオン(Ca2+)が反応してリン酸カルシウム化合物を生成し、配管内壁に析出することによりスケールを形成し、送泥管の口径を徐々に小さくし、最悪の場合にはやがてその送泥管の閉塞を招くといったおそれがあった。
【0003】
嫌気性消化槽により汚泥の減容を行なった後に、送泥する場合には、MAPを形成する各イオンの濃度が高く、上記の傾向が大きくなる。特に近年の下水処理施設の高度処理化に伴い、生物学的脱リン法を適用された汚泥は嫌気性消化により吐き出すリン酸イオン濃度が高くなり、送泥管の閉塞が加速されるおそれがあった。
【0004】
送泥管の閉塞障害を防ぐ方法として、従来では鉄系やアルミ系の無機凝集剤を多量に添加し、消化汚泥中のリン酸イオン濃度をMAP生成の飽和濃度以下に減少させ、MAP生成反応を抑制する方法が採用されてきたが、この方法であると多量の凝集剤を必要とし、また、多量の金属塩の混入により、後段の汚泥処理施設、特に汚泥溶融設備での耐火材への影響が懸念されていた。
【0005】
このような問題を解決する方法として、汚泥を輸送するための管路の上流にエアレーション装置を備え、このエアレーション装置で予め汚泥を曝気して脱炭酸によりpHを上昇させ、MAPの発生要因成分を取り除く方法(例えば、特許文献1参照)が知られている。しかしながら、ここに記載されている方法では、通常、消化汚泥中にはマグネシウムイオンモル数以上のリン酸イオンモル数が含有され、MAP反応はマグネシウムイオンとリン酸イオンの当量反応であることより、リン酸イオンが相当量残留することが予想され、かつ、MAPの回収を行なわないため、配管中で再溶解し、MAPを生成するおそれがあった。
【0006】
上記方法において生成したMAP粒子を遠心分離器により分離する方法(例えば、特許文献2参照)が知られている。しかしながら、この方法においても前記同様、消化汚泥に予め含有されるマグネシウムイオンをMAP反応に利用する方法であることより、リン酸イオンが相当量残留することが予想される。かつ、送泥前にMAP粒子を分離する方法についての記述はあるが、遠心分離濃縮物であることより当然、消化汚泥が多量に混入された状態であることが予想され、さらにMAP粒子の純度を高めるための分離方法についての記述はない。
【0007】
さらに、消化槽にマグネシウム源を添加し、生成したMAPの結晶を分離する処理方法及び処理装置(例えば、特許文献3参照)が知られている。しかしながら、ここに記載されている方法及び装置では、消化槽内に直接マグネシウム源を添加することにより、消化槽内でMAP反応が起こり、消化槽内でのMAPのスケーリングが助長されるおそれがある。一旦、消化槽内でのスケーリングによる障害が発生すると、処理施設全体の運転が停止するという大きな問題があった。
【0008】
さらに、消化槽とその後段のマグネシウム源の添加が可能なMAP熟成槽より構成される処理方法並びに処理装置(例えば、特許文献4参照)が知られている。しかしながら、ここに記載されている方法並びに装置では、微細なMAPを含む液を消化槽に返送する方法及び装置であることにより、消化槽内でのMAPの堆積またはスケーリングの原因となるおそれがあった。
【0009】
一方、従来よりアンモニウムイオン及びリン酸イオンを含む廃水に、マグネシウム化合物を添加し、通気によって廃水を撹拌し、MAPの固体粒子を生成させる方法及び装置(例えば、特許文献5参照)が知られている。
【0010】
さらに、液体サイクロンにより微細なMAP粒子を回収する装置(例えば、特許文献6参照)、生成したMAPの固体粒子をスクリーンにより効率よく回収する装置(例えば、特許文献7参照)が知られている。しかしながら、これらに記載されている装置は、消化汚泥脱水ろ液やし尿脱離液などの汚泥濃度が数千mg/L以下の廃水を対象としており、汚泥濃度が数万mg/L程度の汚泥を対象としたものではなく、汚泥高濃度におけるMAPの回収や分離についての知見は無かった。
【特許文献1】特開2000−271595号公報
【特許文献2】特開2001−162300号公報
【特許文献3】特開2004−941号公報
【特許文献4】特開2004−160300号公報
【特許文献5】特許第2578136号公報
【特許文献6】特許第3681073号公報
【特許文献7】特開平9−117774号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、消化汚泥から、スケーリングの発生要因成分である高濃度の溶解性のリン酸イオンを効率よく短時間でMAPの固体粒子として回収することにより、消化汚泥を汚泥溶融設備などの汚泥処理施設へ送る送泥管内のスケール付着を防止できる技術を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、このような課題を解決するために鋭意検討の結果、特定の装置より構成される消化汚泥の処理装置により、消化汚泥中に含まれるリン酸イオンを短時間で効率よく除去でき、汚泥混入の少ないMAPの固体粒子として、回収できるという事実を見出し、本発明に到達した。
【0013】
すなわち、本発明は、消化汚泥を注入するための消化汚泥注入管、マグネシウム化合物注入管、曝気用の気体吹き込み管、リン酸マグネシウムアンモニウム粒子を含んだ消化汚泥を引き抜くための引抜管及び処理された消化汚泥を排出するための処理汚泥管を備える反応塔と、この処理汚泥管に接続しており、処理汚泥に含まれる微細なリン酸マグネシウムアンモニウム粒子を回収して前記反応塔に戻すための回収装置と、前記反応塔の引抜管に接続しており、リン酸マグネシウムアンモニウム粒子を含む消化汚泥を濃縮するための液体サイクロンと、この液体サイクロンからの濃縮液からリン酸マグネシウムアンモニウム粒子を分離・除去するスクリーンとからなることを特徴とする消化汚泥の処理装置を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0014】
以上のように本発明によれば、消化汚泥からMAPなどのスケーリングの発生要因成分である高濃度のリン酸イオンを効率よく短時間でMAPの固体粒子として回収できることから、消化汚泥を汚泥溶融設備などの汚泥処理施設へ送る送泥管内のスケール付着を防止できる。さらに、枯渇資源とされるリン資源を回収することができ、肥効を持続する緩効性の化成肥料として有効利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、図面を用いて具体的に説明する。
本発明において対象となる消化汚泥は、リン酸イオン、アンモニウムイオンを含有するものであり、特に高濃度のリン酸イオンが含まれるものが好適である。このような消化汚泥の代表例としては、下水処理施設より発生する最初沈殿池汚泥(生汚泥)及び/又は、最終沈殿池汚泥(余剰汚泥)を減容化及び安定化するために適用される嫌気性消化槽より引き抜かれる消化汚泥(嫌気性消化汚泥)が挙げられる。
【0016】
次に、本発明の消化汚泥の処理装置について、図1のフローシートにより説明する。
嫌気性消化槽1より引き抜かれた消化汚泥を、本発明の処理装置2に供給する。処理装置2は、MAPを生成するためのMAP反応塔3を有し、このMAP反応塔3には、消化汚泥を注入するための消化汚泥注入管4、マグネシウム化合物を供給するためのマグネシウム化合物注入管5、曝気するための気体吹き込み管6、MAPの固体粒子と消化汚泥を引き抜くためのMAP引抜管7、及び処理汚泥管8を備えている。さらに、MAP反応塔3より流出した微細なMAPの固体粒子を回収するためのMAP回収装置9を有し、このMAP回収装置9により回収された微細なMAPの固体粒子はMAP反応塔3に回収MAP返送管10により返送される。さらに、MAP反応塔3よりMAP引抜管7を介して引き抜かれたMAPの固体粒子と消化汚泥の混合物より、MAPの固体粒子を分離するための分離装置11を有し、この分離装置11より分離された消化汚泥と微細なMAPの固体粒子は分離汚泥返送管12を介してMAP反応塔3に返送される。本発明においては、分離装置11が、混合物を濃縮するための液体サイクロンと、濃縮された混合物からMAPを分離するためのスクリーンからなることを特徴としている。なお、図1において、13は前記MAP回収装置9と汚泥処理の次工程14との間を繋ぐ液体サイクロン処理汚泥管、15は前記分離装置11より除去された分離MAP粒子である。
【0017】
次に、処理装置2を構成するMAP反応塔3、MAP回収装置9、分離装置11について詳細を説明する。
MAP反応塔3では、消化汚泥中に多量に含まれているリン酸イオンとアンモニウムイオンにリン酸イオンの当量より不足しているマグネシウム化合物を添加することにより、(1)式の反応式によりMAPを生成させ、固体粒子に成長させる。
PO3−+NH+Mg2++6HO→MgNHPO・6HO↓(MAP)…(1)
(1)式の反応はpHが高くなるほど、化学平衡反応は右側に移動し、消化汚泥中のリン酸態リン濃度は低下するので、苛性ソーダなどのアルカリ剤によりMAP反応塔3内のpH調整を行なってもよいが、通常、曝気により消化汚泥中の炭酸が追い出され、その結果pHが上昇するため、必ずしもpH調整を必要とはしない。(1)式の最適なpHは、通常は7.0〜9.5の範囲となるようにすることが好ましく、さらに7.5〜9.0の範囲が好ましく、8.0〜8.5の範囲が最も好ましい。
【0018】
添加するマグネシウム化合物としては、塩化マグネシウムや水酸化マグネシウムなどのマグネシウムを含有する化合物であれば特に限定されないが、それ自身がアルカリ剤であり、安価な水酸化マグネシウムの使用が好ましい。添加率としては、消化汚泥中に含有されているマグネシウムイオン濃度によるが、通常は、消化汚泥中の溶解性リン酸態リンのモル数に対して、マグネシウムのモル数が0.8〜2.5倍となるようにマグネシウム化合物を添加することが好ましく、さらに0.9〜2.0倍の範囲が好ましく、1.0〜1.5倍の範囲が最も好ましい。
【0019】
MAP反応塔3では、(1)式の化学反応を進行させるためにMAP反応塔3内を撹拌混合する必要がある。撹拌方法としては撹拌羽根の回転による機械的撹拌方法や、MAP反応塔3内のポンプによる循環混合方法など、特に限定されるものではないが、前記の通り、脱炭酸効果や反応効率を考慮すると空気撹拌式縦形二重円筒型反応塔が最も適する。
【0020】
次に、空気撹拌式縦形二重円筒型反応塔について、図2に基づき説明する。
MAP反応塔3は、MAP反応塔直胴部16と、その下部に位置するMAP反応塔円錐部17と、MAP反応塔直胴部16の上部に位置しMAP反応塔直胴部16より広径のMAP反応塔沈殿部18とから構成され、MAP反応塔沈殿部18の内部には、傾斜部分とMAP反応塔直胴部16との交点でスリットを形成するように、MAP反応塔円筒体19が設けられており、さらに、内部にMAP反応塔第2円筒体20が立設されている。
【0021】
MAP反応塔沈殿部18の傾斜部分及びMAP反応塔円錐部17の傾斜角としては、特に限定されるものではないが、固体粒子のスムーズな滑りを考慮すると、傾斜角45度以上が好ましく、さらに好ましくは60度以上が好ましい。
【0022】
また、MAP反応塔第2円筒体20の直径とMAP反応塔直胴部16の直径の比率(第2円筒体直径/MAP反応塔直胴部直径)としては、通常は0.2〜0.8の範囲となるように設計することが好ましく、さらに0.3〜0.7の範囲が好ましく、0.4〜0.6の範囲が最も好ましい。
【0023】
MAP反応塔3高さ(MAP反応塔直胴部16の高さ+MAP反応塔沈殿部18の高さ)とMAP反応塔直胴部16の直径との比率(MAP反応塔高さ/MAP反応塔直胴部直径)としては、通常は2〜7の範囲となるように設計することが好ましく、さらに2.5〜6の範囲が好ましく、3〜5の範囲が最も好ましい。
【0024】
本発明においては、消化汚泥を、消化汚泥注入管4によってMAP反応塔第2円筒体20の内部に供給する。消化汚泥供給量としては、MAP反応塔反応部容積(MAP反応塔直胴部16により形成される部分の容積+MAP反応塔円筒体19により形成される部分の容積)での汚泥滞留時間を通常は5〜90分の範囲に設定するのが好ましく、さらに10〜60分の範囲が好ましく、15〜40分の範囲が最も好ましい。
【0025】
MAP反応塔沈殿部18の内側とMAP反応塔円筒体19の外側で形成される固体粒子の重力沈降部分の水面積負荷は消化汚泥注入量に対して通常は5〜60m/m/日の範囲、好ましくは6〜50m/m/日の範囲、さらに好ましくは8〜40m/m/日の範囲とする。
【0026】
曝気用気体は、気体吹き込み管6からMAP反応塔3内に吹き込む。曝気用気体としては、炭酸ガスの含有量が少ない気体であれば特に限定されないが、通常は空気を使用する。気体吹き込み管6より供給される風量は、MAP反応塔直胴部16の断面積に対して、通常は5〜100m/m/時の範囲、好ましくは8〜70m/m/時の範囲、さらに好ましくは10〜50m/m/時の範囲とする。
【0027】
MAP反応塔3の内部において、MAPの結晶が生成、成長し固体粒子が形成される。MAPの固体粒子はMAP反応塔沈殿部18により沈降分離され、沈降分離したMAPはMAP反応塔沈殿部18の傾斜部分とMAP反応塔直胴部16との交点とMAP反応塔円筒体19との間で形成されたスリットよりMAP反応塔3内部に滑り込む。
【0028】
一方、沈降しなかったMAPとリン酸態リン濃度が低下した消化汚泥は、MAP反応塔沈殿部18の外側に取り巻く流出トラフに設置されたVノッチを越流し、処理汚泥管8よりMAP回収装置9へ供給される。
【0029】
MAP反応塔3の内部に蓄積したMAP粒子と消化汚泥は、3日〜2週間の間隔でMAP反応塔円錐部17の底部に気体吹き込み管6を介して接続したMAP引抜弁21を開け、MAP引抜管7より分離装置11へ供給される。
【0030】
MAP反応塔3の内部にMAPの種結晶を充填しておいてもよく、その場合は数日の間に粒径の大きなMAP粒子を得ることができる。
MAP回収装置9は、消化汚泥と微細なMAP粒子の混合物からMAP粒子を回収するものであり、スクリーンによる分離方法や遠心分離方法など、特に限定されるものではないが、消化汚泥とMAP粒子(真比重1.72)の比重差を利用した液体サイクロンが最も適する。
【0031】
処理汚泥管8を液体サイクロン中継槽22に接続して、一旦貯留し、液体サイクロン原汚泥供給ポンプ23により、液体サイクロン24Aの直胴部切線方向に供給する。液体サイクロン24Aの上流側の圧力が十分に高い場合は、液体サイクロン中継槽22や液体サイクロン原汚泥供給ポンプ23は不要となるが、通常、十分な供給速度を得るためには、液体サイクロン24Aでの圧損を考慮するとポンプによる圧送が必要となる。
【0032】
液体サイクロン24Aへの供給量は、液体サイクロン入口流速が、通常は1〜20m/secの範囲、好ましくは2〜10m/sec、さらに好ましくは3〜8m/secの範囲とする。液体サイクロン24Aに供給された消化汚泥と微細なMAP粒子の混合物は、液体サイクロン24Aの直胴部周壁に沿う回転流となって速度勾配に伴う剪断力が与えられ、液体サイクロン24Aの下部の円錐部へ進み、比重の大きなMAP粒子は最底部に達し、回収MAP返送ポンプ25により、回収MAP返送管26を経てMAP反応塔3へ返送される。返送量は液体サイクロン24Aへの供給量に対して、通常は1〜30%の範囲、好ましくは2〜20%、さらに好ましくは3〜10%の範囲とする。一方、MAP粒子の大部分を回収された消化汚泥は、液体サイクロン24Aの中央付近を渦流状態となって上昇し、液体サイクロン24Aの上部に接続した液体サイクロン処理汚泥管13より汚泥処理の次工程14に移送される。
【0033】
分離装置11は、MAP反応塔3内部より引き抜かれた消化汚泥とMAP粒子の混合物からMAP粒子を分離するものであり、比重差を利用した重力沈降法や遠心分離方法などがあるが、規定の目幅のスクリーンにより分離する方法が最も適する。
【0034】
MAP反応塔3内部に蓄積したMAP粒子と消化汚泥は、MAP引抜管7に接続したMAP引抜ポンプ27によりMAP分離機28へ供給される。MAP分離機28はスクリーンにより構成され、規定の目幅は、通常は0.1〜2mmの範囲、好ましくは0.15〜1.5mm、さらに好ましくは0.2〜1.0mmの範囲とする。スクリーンは断面が台形状であるウェッジワイヤーより構成されるものが目詰まりの防止に効果的であり、さらにスクリーンは平板状、円筒状の何れでもよいが、前記スクリーンを円筒体にし、円筒体内部より被分離混合物を供給し、円筒体を1分間に10〜60回転程度に回転させ、洗浄水により洗浄するいわゆるトロンメル形状のものが最も適する。
【0035】
分離装置11により分離された分離MAP粒子15はMAP分離機28の一端より排出される。一方、スクリーンを通過した消化汚泥と微細なMAP粒子は、分離汚泥移送ポンプ29によりMAP反応塔3へ返送される。
【0036】
分離装置11として、予め濃縮した後にMAP分離機28へ供給することにより、分離MAP粒子15中に比重の比較的小さな夾雑物の混入を防ぐことができ、洗浄水量を少なくできるなど、効率的な分離が可能となる。濃縮する方法としては、重力沈降による方法や遠心分離による方法などがあるが、前記液体サイクロン24Aと同様の液体サイクロン24Bにより濃縮し、濃縮MAP供給ポンプ30によりMAP分離機28へ供給する方法が最も適する。
【0037】
MAP引抜管7をMAP引抜ポンプ27に接続し、液体サイクロン24Bの直胴部切線方向に供給する。液体サイクロン24Bへの供給量は、液体サイクロン入口流速が、通常は1〜20m/secの範囲、好ましくは2〜10m/sec、さらに好ましくは3〜8m/secの範囲とする。液体サイクロン24Bに供給された消化汚泥とMAP粒子の混合物は、液体サイクロン24Bの直胴部周壁に沿う回転流となって速度勾配に伴う剪断力が与えられ、液体サイクロン24Bの下部の円錐部へ進み、比重の大きなMAP粒子は最底部に達し、濃縮MAP供給ポンプ30により、MAP分離機28へ供給される。供給量は液体サイクロン24Bへの供給量に対して、通常は1〜30%の範囲、好ましくは2〜20%、さらに好ましくは3〜10%の範囲とする。一方、MAP粒子の大部分を回収された消化汚泥は、サイクロン中央付近を渦流状態となって上昇し、液体サイクロン24B上部に接続した消化汚泥返送管31よりMAP反応塔3に返送される。
【0038】
MAP分離機28は前記記載のスクリーンを使用し、スクリーンを通過した消化汚泥と微細なMAP粒子は、分離汚泥移送ポンプ29によりMAP反応塔3へ返送される。
以上の装置により、消化槽にマグネシウム源を添加することなく、消化槽でのスケーリング障害を防止し、かつ、消化汚泥中のリン酸イオンを十分に除去すると同時に、緩効性化成肥料として有効利用可能な形態のMAP固体粒子として回収することができる。
【実施例】
【0039】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。
実施例1
MAP反応塔の直胴部の直径300mm、沈殿部の直径600mm、直胴部と沈殿部及び下部円錐部を合わせた全高1510mm、全容積160リットルであり、MAP反応塔内部には直胴部と沈殿部傾斜部分との交点にスリットを形成するように円筒体を設置し、さらに該スリットより上部に上端が位置するように直径155mmの第2円筒体を設置したMAP反応塔にpH7.8、リン酸態リン濃度150mg/リットル、汚泥濃度26000mg/リットル、アンモニア性窒素濃度1000mg/リットル含まれた消化汚泥を5m/日の流量で連続的に供給し、MAP反応塔底部より40リットル/分で連続的に空気で曝気し、リン酸態リン濃度150mg/リットルに対し、モル比で1.5となるように5%水酸化マグネシウムスラリーを連続的に供給した。
【0040】
MAP反応塔沈殿部よりオーバーフローした消化汚泥と微細MAP粒子の混合物を有効容量520リットルの液体サイクロン中継槽に溜め、この液体サイクロン中継槽により1分間に120回転の速度で常時撹拌した。液体サイクロン中継槽に設置したレベルスイッチにより液体サイクロン原汚泥供給ポンプを起動させ、120m/日の流量で、直胴部直径115mm、円錐部を合わせた全高550mmの回収用液体サイクロンに切線速度6.8m/秒で供給した。なお、液体サイクロンにより回収された微細なMAP粒子を多量に含む消化汚泥はMAP返送ポンプにより6m/日の流量で連続的にMAP反応塔へ返送した。
【0041】
上記の運転を1週間継続し、MAP反応塔下部より反応塔内部のMAP粒子と消化汚泥をMAP引抜ポンプにより120m/日の流量で、直胴部直径115mm、円錐部を合わせた全高550mmの濃縮用液体サイクロンに切線速度6.8m/秒で供給した。なお、液体サイクロンにより濃縮されたMAP粒子を多量に含む消化汚泥は濃縮MAP供給ポンプにより、2m/日の流量で内径200mm、長さ600mm、目開き0.3mmのドラム型ウェッジワイヤースクリーンに連続的に供給し、1分間に10回転の速度で回転させ、4m/日の洗浄水で連続的に洗浄し、スクリーンを通過した微細なMAP粒子と消化汚泥及び洗浄水は分離汚泥移送ポンプによりMAP反応塔へ返送した。一方、液体サイクロンの上部より流出した消化汚泥はMAP反応塔へ返送した。
【0042】
以上の方法により、回収用液体サイクロンの処理汚泥は、pH8.3程度まで上昇し、リン酸態リン濃度は20mg/リットル以下にまで低下した。なお、MAP分離スクリーンにより、0.3mm以上の固体粒子が得られ、X線回折の結果、MAP(リン酸マグネシウムアンモニウム;MgNHPO・6HO)であることが判明した。真空乾燥後、成分分析を行なった結果、く溶性リン酸(P)28%、く溶性苦土(MgO)15%、アンモニア性窒素(NH−N)5.4%を含み、カドミウム、水銀、鉛などの有害成分含有量は、肥料取締法に定める化成肥料の有害成分許容値を大幅に下回ることが判明した。
比較例1
実施例1で用いた消化汚泥と同じものを上記と同様なMAP反応塔により処理し、液体サイクロンにより流出した微細なMAP粒子を回収し、MAP反応塔底部より引き抜いたMAP粒子と消化汚泥の混合物を液体サイクロンにより濃縮せず、そのまま2m/日の流量で内径200mm、長さ600mm、目開き0.3mmのドラム型ウェッジワイヤースクリーンに連続的に供給し、1分間に10回転の速度で回転させ、4m/日の洗浄水で連続的に洗浄した場合、MAP反応塔処理汚泥のリン酸態リン濃度は20mg/リットル以下にまで低下したものの、スクリーンにより分離されたMAP粒子中には多量の夾雑物が混入された。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の消化汚泥の処理装置を示すフローシート図である。
【図2】本発明の消化汚泥の処理装置の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0044】
1 嫌気性消化槽
2 処理装置
3 MAP反応塔
4 消化汚泥注入管
5 マグネシウム化合物注入管
6 気体吹き込み管
7 MAP引抜管
8 処理汚泥管
9 MAP回収装置
10 回収MAP返送管
11 分離装置
12 分離汚泥返送管
13 液体サイクロン処理汚泥管
14 次工程
15 分離MAP粒子
16 MAP反応塔直胴部
17 MAP反応塔円錐部
18 MAP反応塔沈殿部
19 MAP反応塔円筒体
20 MAP反応塔第2円筒体
21 MAP引抜弁
22 液体サイクロン中継槽
23 液体サイクロン原汚泥供給ポンプ
24A 液体サイクロン
24B 液体サイクロン
25 回収MAP返送ポンプ
26 回収MAP返送管
27 MAP引抜ポンプ
28 MAP分離機
29 分離汚泥移送ポンプ
30 濃縮MAP供給ポンプ
31 消化汚泥返送管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
消化汚泥を注入するための消化汚泥注入管、マグネシウム化合物注入管、曝気用の気体吹き込み管、リン酸マグネシウムアンモニウム粒子を含んだ消化汚泥を引き抜くための引抜管及び処理された消化汚泥を排出するための処理汚泥管を備える反応塔と、この処理汚泥管に接続しており、処理汚泥に含まれる微細なリン酸マグネシウムアンモニウム粒子を回収して前記反応塔に戻すための回収装置と、前記反応塔の引抜管に接続しており、リン酸マグネシウムアンモニウム粒子を含む消化汚泥を濃縮するための液体サイクロンと、この液体サイクロンからの濃縮液からリン酸マグネシウムアンモニウム粒子を分離・除去するスクリーンとからなることを特徴とする消化汚泥の処理装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−244995(P2007−244995A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−71899(P2006−71899)
【出願日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【出願人】(000165273)月島機械株式会社 (253)
【出願人】(591030499)大阪市 (64)
【Fターム(参考)】