消化管における吸着剤の経口デリバリー用の製剤
本発明は、哺乳動物の下部腸管への吸着剤の遅延および制御デリバリー用の製剤に関する。その製剤は、カラゲナンおよび活性炭などの吸着剤を包含する。本発明は、さらに、この製剤の使用、特に薬学的使用に関する。一態様では、障害のための処置として投与されるが、下部回腸、盲腸または結腸に到達すると副作用を有する医薬品の腸、特に結腸における副作用を除去または軽減するために、その製剤は使用される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳動物の下部腸管への吸着剤の遅延および制御デリバリー用の製剤に関する。本発明は、さらに、この製剤の使用、特に薬学的使用に関する。
【0002】
発明の背景
抗生物質が経口または非経口のいずれかで投与された場合、投与された用量のかなりの割合が活性型で下部回腸(late ileum)または結腸に到達し、結腸中に存在する細菌集団と密接に接触するようになる。この憂慮すべき結果は、何年にもわたり知られており、2009年9月に公表された「The bacterial challenge: time to react, A call to narrow the gap between multidrug-resistant bacteria in the EU and the development of new antibacterial agents(細菌の攻撃:行動を起こす時、EUにおける多剤耐性細菌と新しい抗細菌剤開発の間のギャップを縮めるための呼びかけ)」と呼ばれるECDC/EMEA合同技術レポートの主題を構成している。残留抗生物質は、結腸中に存在する細菌に選択圧をかけ、抗生物質耐性細菌の出現および発生を引き起こす。様々な抗生物質に対する耐性の遺伝的決定因子は、多くの場合にプラスミドおよびトランスポゾンなどの可動性遺伝因子と物理的に連結しているので、単一の抗生物質を用いた処置でいくつかの抗生物質耐性遺伝子の共存が選択されることが多く、抗生物質多重耐性がどのようにして非常に急速に出現できるかを説明している。
【0003】
この過程の結果として、抗生物質処置を受けた患者または動物に、抗生物質耐性細菌が非常に迅速および強力に定着するようになる。これは、耐性細菌によるさらなる合併感染症、ならびに他の細菌および最終的には環境への耐性の伝播を招くおそれがある。
【0004】
そのような耐性細菌の選択および伝播が地域社会および病院の両方における細菌の抗生物質耐性の伝播を顕著に増加させる主な要因であることが、今や広く受け入れられている。細菌耐性のレベルは、現在極めて高く、毎年増加し続け、世界的に公衆衛生上の大問題になっているが、そのことでヒトまたは動物のいずれかに利用可能な抗生物質を用いて処置することが非常に困難な感染症の大発生につながるおそれがあろう。
【0005】
抗生物質耐性細菌を産生することに加えて、活性型で結腸に到達する抗生物質は、また、共生的フローラの組成を顕著に変化させ、感受性細菌種を除去する。それらの細菌の中で、正常な被験体および動物の腸に大きな生理学的役割を果たすことが知られている感受性の嫌気性細菌が除去されるおそれがある。例えばそれらの細菌は、Clostridium difficileおよび/もしくはCandida spなどの潜在的に病原性の外来微生物ならびに/またはバンコマイシン耐性腸球菌などの多剤耐性外来細菌による定着を防止するように作用する。したがって、抗生物質処置後の下痢もしくはより重症型の偽膜性大腸炎、特に女性における性器カンジダ感染症、または入院患者、特に集中治療を受けている患者における抗生物質耐性全身感染症などの病的徴候および症状の出現につながるおそれがある抗生物質の有害作用を防止するためには、そのような有用細菌の除去を防止することが不可欠である。
【0006】
抗生物質処置のそのような有害作用を防止するための一方法は、盲腸および結腸に達する残留抗生物質を排除することであり、近年、この目標を達成する二つの異なるアプローチがあった。一つは、抗生物質を特異的に分解する酵素の消化管デリバリーであった(米国特許出願公開第20050249716号に記載されたものなど)。または、部位特異的腸デリバリー用の吸着剤製剤が、国際公開公報第2006/122835号および国際公開公報第2007/132022号の出願に提案されている。その吸着剤は、抗生物質が盲腸および結腸中の感受性細菌に影響する前にその抗生物質を隔離することによって作用する。抗生物質特異酵素に基づく前記アプローチに比べて、このアプローチで、除去されうる抗生物質のスペクトルを拡大することが可能になるであろう。吸着剤、特に活性炭は、低い密度、疎水性、濡れ性などのその物理化学的性質が原因で、製剤化が非常に大変な製品である。経口用量の部位特異的腸デリバリー用の活性炭を製剤化する試みは、活性炭の非常に低い凝集性が原因で、従来の直接圧縮を用いると不可能である。単純な湿式造粒および圧縮でさえも、低い吸着性および低い崩壊プロファイルを示す錠剤につながる。これらの問題を克服するために、酵素に基づくデリバリーシステムが計画されている。これらのシステムは、吸着剤を封入しているポリマーに結腸酵素が作用する結果として、それらのシステムが分解し、その後結腸中にそれらのシステムの内容物を放出することに基づく。代表的なシステムは、共生的フローラの細菌によって多くの哺乳動物の結腸中で産生されるペクチン分解酵素によって特異的に分解されるペクチンビーズを組み込んでいる(国際公開公報第2006/122835号に記載されているシステムなど)。しかしながら、このシステムは、低い吸着剤含量およびペクチンビーズ生産の大規模化が困難であるなどの制約を示す。また、結腸中に存在するペクチン分解酵素の量の変動は、吸着剤のデリバリーにおける変動につながった。優れた収率および吸着剤含量を有する錠剤などの単回投与剤形または多分散ペレット製剤のいずれかの固体剤形も提案された(国際公開公報第2007/132022号)。しかしながら、たとえ製剤を直接的に製造することができるとしても、その分解性および放出された吸着剤の吸着効率は、より満足な方法で改善することができよう。
【0007】
下部消化管における吸着剤の遅延放出に適しているが、それでも吸着剤の吸着特性を可能な限り保つ製剤を開発することが有利であろう。また、それ以上抗生物質が吸収されない消化管の場所および時間で吸着剤を放出する、改善された吸着剤放出プロファイルを有する製剤を製造することも有利であろう。このことで、経口経路によって同時投与された場合の吸着剤と、抗生物質または任意の他の医薬製品の正常な吸収過程との任意の相互作用が防止されるであろう。
【0008】
そのような製剤は、腸管から残留抗生物質および/またはそれらの活性代謝物を排除する一方で、多数の抗生物質と共に同時投与でき、下痢、腹痛、および細菌の抗生物質耐性などの望まれない抗生物質関連副作用を軽減できる点で有利であろう。下部消化管、特に下部回腸、盲腸、または結腸における吸着剤の特異的放出を提供する製剤を有することも有利であろう。
【0009】
そのような製剤は、また、下部回腸、盲腸および結腸における医薬品またはその代謝物の副作用を軽減または除去する点で有利であろう。そのような医薬品は、例えば、病状を処置するために投与されるが、下部消化管に到達すると、具体的には下部回腸、盲腸、または結腸において、副作用を有する薬剤である。そのような医薬品の代表的で非限定的な例には、イリノテカンおよびその代謝物SN−38、ジアセレイン、パンクレリパーゼ(Pancrease、Creon、Zenpepなど)、ロフルミラストもしくはシロミラストなどの慢性閉塞性肺疾患の処置に使用されるホスホジエステラーゼ4阻害剤、またはコルヒチンなどの有糸分裂阻害性抗炎症薬が挙げられる。
【0010】
さらに、そのような製剤は、いくつかの病状の発生の一因となる、下部消化管中の物質蓄積を特徴とする病状の処置に有利であろう。例えばその製剤は、非限定的に肝性脳症、過敏性腸症候群、慢性腎疾患、C. difficile関連下痢または抗生物質関連下痢などの状態の処置に有用なことがある。本明細書に開示された製剤によって吸着されうる代表的な物質には、非限定的にアンモニア、インドール、終末糖化産物(AGE)およびある種の細菌毒素が挙げられる。
【0011】
さらに一般に、本発明の製剤は、下部消化管、具体的には下部回腸、盲腸、または結腸におけるある種の物質の存在または過剰量での存在によって引き起こされ、維持され、かつ/または強化される、病的または病的ではない状態の処置に使用することができる。
【0012】
本発明は、そのような製剤ならびにその調製方法および使用方法を提供する。
【0013】
発明の概要
下部回腸、盲腸または結腸に吸着剤をデリバリーするために有用な製剤が提供される。一態様では、吸着剤とカラゲナンの混合物を、好ましくはペレットの形態で含む組成物が提供される。この態様の一局面では、吸着剤は活性炭であり、この態様の別の局面では、カラゲナンはκ−カラゲナンである。カラゲナンの量は、典型的には混合物の5重量%から25重量%の間、より好ましくは10重量%から20重量%の間の範囲内である。
【0014】
混合物を含む組成物は、コアを形成するために使用することができる。一態様では、吸着剤が下部腸管、すなわち下部回腸、盲腸および/または結腸において製剤から放出されるように、コアはコーティング層を備える。腸の所望の部分で放出可能にする代表的なコーティングには、pH依存性腸溶性ポリマー、結腸環境中で微生物の作用および/またはそこで見られる還元環境によって特異的に分解する材料(例えばアゾポリマーおよびジスルフィドポリマー、多糖、特にアミロースまたはペクチン(例えば、ペクチン酸カルシウムまたはペクチン酸亜鉛などの二価陽イオンと架橋結合したペクチン)、コンドロイチン硫酸およびグアーガム)が挙げられる。代表的なpH依存性腸溶性ポリマーには、セルロースアセテートトリメリテート(cellulose acetate trimellitate)(CAT)、セルロースアセテートフタレート(CAP)、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルおよびメタクリル酸ベースの陰イオン性コポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS)、メタクリル酸−アクリル酸エチルコポリマー、メタクリル酸−アクリル酸エチルコポリマー、メタクリル酸−メタクリル酸メチルコポリマー(1:1の比)、メタクリル酸−メタクリル酸メチルコポリマー(1:2の比)、ポリビニルアセテートフタレート(PVAP)およびシェラック樹脂が挙げられる。特に好ましいポリマーには、シェラック、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルおよびメタクリル酸ベースの陰イオン性コポリマー、ならびにメタクリル酸−メタクリル酸メチルコポリマー(1:2の比)が挙げられる。理想的には、ポリマーは、6.0以上、好ましくは6.5以上のpHで溶解する。
【0015】
別の態様では、コアと外部pH依存性層の間にさらなるコーティングが提供される。中間コーティングは、pH依存性ポリマー、pH非依存性水溶性ポリマー、pH非依存性不溶性ポリマー、およびその混合物を含めた多様なポリマーから形成することができる。
【0016】
代表的なpH依存性ポリマーには、シェラック型ポリマー、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルおよびメタクリル酸ベースの陰イオン性コポリマー、メタクリル酸−アクリル酸エチルコポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、ならびにヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS)が挙げられる。
【0017】
代表的なpH非依存性水溶性ポリマーには、PVPまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)もしくはヒドロキシプロピルセルロース(HPC)などの高分子量セルロースポリマーが挙げられる。
【0018】
代表的なpH非依存性不溶性ポリマーには、エチルセルロースポリマーまたはアクリル酸エチル−メタクリル酸メチルコポリマーが挙げられる。
【0019】
この態様の一局面では、pH非依存的に溶解するポリマー層には、ヒドロキシプロピルセルロースまたはエチルセルロースから成る群より選択される少なくとも1種のセルロース誘導体が挙げられる。この態様の別の局面では、pH非依存的に溶解するポリマー層は、メタクリル酸−アクリル酸エチルコポリマーとアクリル酸エチル−メタクリル酸メチルコポリマーの1:9〜9:1、好ましくは2:8〜3:7の混合物から作られる。
【0020】
その製剤は、腸、特に結腸における医薬品の副作用を除去または軽減するために使用することができる。それは、特に、障害のための処置として投与されるが、下部回腸、盲腸または結腸に到達すると副作用を有する医薬品の副作用を除去または軽減することを目的とする。例えば、その製剤は、抗生剤の抗生物質関連有害作用を除去もしくは軽減するか、下痢を排除するか、または抗生物質耐性の出現を除去することができる。その製剤は、また、以下の詳細な説明に述べられる医薬品などであるが、それだけではない多様な医薬品を除去することができる。その製剤は、抗生物質または別の医薬品と同時に投与することができる。
【0021】
その製剤は、また、マイコトキシン、エンドトキシンもしくはエンテロトキシンなどの細菌もしくは真菌毒素、または腸および/もしくは結腸中でClostridium difficileによって産生される毒素の作用を除去または軽減することができる。
【0022】
その製剤は、また、特にペットまたは農用動物における鼓腸、便臭、口臭または食物不耐性を軽減することができる。
【0023】
その製剤を調製する方法もまた開示される。
【0024】
以下の本発明の詳細な説明の中でさらなる目的および適用が明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】模擬結腸液中のNFAC(無配合活性炭)によるレボフロキサシンの吸着動態を示す図である。
【図2】シプロフロキサシンについての微生物アッセイの検量線作成:Log10シプロフロキサシン濃度と成長阻止直径の間の関係を示す図である。
【図3】微生物アッセイによって測定された、活性炭上へのシプロフロキサシンの吸着を示す図である。
【図4】子ブタ盲腸液中のNFACおよびDCP(脱製剤化された(deformulated)コーティング済みペレット)によるレボフロキサシンの吸着動態を示す図である。
【図5A】様々なpHでの活性炭からのレボフロキサシンの脱着を示す図である。脱着実験は、それぞれpH4.0(A)、7.0(B)および10.0(C)で行った。3回の測定の平均±SDを各データ点について示す。
【図5B】様々なpHでの活性炭からのレボフロキサシンの脱着を示す図である。脱着実験は、それぞれpH4.0(A)、7.0(B)および10.0(C)で行った。3回の測定の平均±SDを各データ点について示す。
【図5C】様々なpHでの活性炭からのレボフロキサシンの脱着を示す図である。脱着実験は、それぞれpH4.0(A)、7.0(B)および10.0(C)で行った。3回の測定の平均±SDを各データ点について示す。
【図6】二つの活性炭/レボフロキサシンの比におけるNFAC上および製剤化された炭上へのレボフロキサシンの吸着動態のin vitro比較を示す図である。
【図7】FS30Dをコーティングされたペレットから放出された炭上へのシプロフロキサシン吸着のBioDisプロファイルを示す図である。
【図8】L30D55/NE30DサブコートおよびFS30Dコーティングを有するペレットから放出された炭上に吸着されたシプロフロキサシンのBioDisプロファイルに関するコーティングの厚さの比較を示す図である。
【図9】(シプロフロキサシン吸着によって測定された)模擬回腸液(pH7.5)中における異なる種類のペレットの溶出プロファイルに関するFS30D、Aqoatまたはシェラックコーティングの比較を示す図である。
【図10】(シプロフロキサシン吸着によって測定された)模擬回腸液(pH7.5)中におけるペレットの溶出プロファイルに関するエチルセルロースコーティングの厚さの比較を示す図である。
【図11A】模擬回腸液(pH7.5)中における活性炭上へのイリノテカンの吸着動態を示す図である。
【図11B】1mM NaOH(pH12)中における活性炭上へのSN38の吸着動態を示す図である。
【図11C】SN38とイリノテカンの混合物を加えた子ブタ盲腸液中における活性炭上へのイリノテカンの吸着動態を示す図である。
【図11D】SN38とイリノテカンの混合物を加えた子ブタ盲腸液中における脱製剤化されたコーティング済みペレット上へのSN38の吸着動態を示す図である。
【図12】抗生物質に対する細菌耐性出現の低下に果たす放出ターゲティング活性炭のin vivo性能を示す図である − 実験計画。
【図13】群毎(n1=6、n2=11、n3=12)の便中シプロフロキサシン濃度平均値の変化を示す図である。このグラフにおいて、本発明者らは、また、各群について[平均−1.96×SEM;平均+1.96×SEM](式中、SEMは平均の標準誤差である)で定義される95%信頼区間を表示する。
【図14】群毎(n2=n3=12)の血漿中シプロフロキサシン濃度(ng/mL)の平均値の変化を示す図である。このグラフにおいて、本発明者らは、また、各群について[平均−1.96×SEM;平均+1.96×SEM](式中、SEMは平均の標準誤差である)で定義される95%信頼区間を表示する。
【図15】耐性細菌数:1日目から8日目までのベースラインから補正されたシプロフロキサシン耐性細菌数のlog10の平均曲線とX=0軸の間の網がけ面積によって表される、補正された個別のAUCciproD1−D8の平均を処置群毎に示す図である(n1=6、n2=11、n3=12)。
【図16】緩衝液(pH7.5)中の活性炭上へのCreonの吸着動態を示す図である。
【0026】
詳細な説明
本発明は、カラゲナンおよび吸着剤を包含する製剤に関する。その製剤は、吸着剤の経口投与ならびに下部腸管、すなわち下部回腸、盲腸および/または結腸における該吸着剤のデリバリーに適する。一態様では、カラゲナンおよび吸着剤は、混合物として存在し、その混合物を圧縮してコアを形成することができる(本明細書においてそのコアをさらに粒子またはペレットと呼ぶ)。
【0027】
コアは、一つまたは複数のコーティング層でコーティングすることができ、コーティング済みまたはコーティングされていないコアを使用して、錠剤、カプセル剤、丸剤などの薬物デリバリービヒクルを形成することができる。
【0028】
本発明の製剤は、腸管の所望の部分に、有利には下部回腸、盲腸または結腸において吸着剤をデリバリーするために有用な固体剤形である。外部および/または中間コーティングは、特に、本発明による製剤に加えて治療剤(例えば抗生物質)が経口投与されたときに、ホスト生物による該治療剤の正常な吸収過程に吸着剤が及ぼす影響を最小限にする(好ましくは完全に阻止する)ために提供される。加えて、またはその代わりに、そのように製剤化された吸着剤は、消化管中に存在する物質を小腸終末部までずっと非特異的に吸着しないようにされる。これは、吸着剤の作用が必要とされる腸の特定部分における不飽和吸着剤、完全またはほぼ完全に効率的な吸着剤の放出を招く。
【0029】
製剤を調製する方法、およびその製剤を使用した処置方法も開示される。製剤の個々の成分を、下記に詳細に説明する。
【0030】
抗生物質
「抗生物質」という用語は、細菌、真菌、または原生動物などの微生物を死滅させるか、またはその成長を阻害する物質を意味する。本発明により吸着されうる、代表的で非限定的な抗生物質には、アモキシシリン、アンピシリン、ピペラシリン、セファレキシン、セフィキシム、セフタジジム、セフロキシム、セフトリアキソン、セフォタキシム、セフチオフル、セフジニル、セフポドキシム、セフピロム、セフキノム、セフェピム、セフトビプロール、セフタロリム(Ceftarolime)、セフチオフル、イミペネム、エルタペネム、ドリペネム、メロペネムなどのβ−ラクタム系、および単独または他のβ−ラクタム系抗生物質と組み合わせて投与されるクラブラネート、スルバクタムまたはタゾバクタムなどのβ−ラクタマーゼ阻害剤;クロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、テトラサイクリン、ドキシサイクリンまたはミノサイクリンなどのテトラサイクリン系;タイロシン、エリスロマイシン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ロキシスロマイシン、テリスロマイシン、ジョサマイシン、オレアンドマイシン、スピラマイシン、クリンダマイシン、リンコマイシン、キヌプリスチンまたはダルホプリスチンなどのマクロライド系;ナリジクス酸、シプロフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、レボフロキサシン、モキシフロキサシン、エンロフロキサシン、サラフロキサシンまたはマルボフロキサシンなどのフルオロキノロン系;スルファメトキサゾール、スルファジアジンまたはスルファチアゾールなどのスルホンアミド系;ジヒドロ葉酸還元酵素阻害剤トリメトプリム;オキサゾロジノン(oxazolodinone)系抗生物質リネゾリド;またはフロルフェニコール、チアムリンもしくはチゲサイクリンなどの他の抗生物質が挙げられる。
【0031】
吸着剤
適切な吸着剤の例には、活性炭、ベントナイト、カオリン、モンモリロナイト、アタパルジャイト、ハロサイト、ラポナイトなどの粘土、コロイド状シリカ(例えばLudox(登録商標)AS−40)、メソ多孔性シリカ(MCM41)、フュームシリカ、ゼオライトなどのシリカ、タルク、コレステラミン(cholesteramine)など、スルホン化ポリスチレンなど、モノスルホン化およびポリスルホン化樹脂、ならびにBACTEC(登録商標)樹脂などの細菌検査に使用される樹脂などの、関心が持たれる任意の他の樹脂が挙げられる。これらの吸着剤の中で、活性炭USP(Merck, Franceまたは他の販売元)、カオリン(VWR, France)、アタパルジャイト(Lavollee, France)、ベントナイト(Acros Organics, France)、タルクUSP(VWR, France)などの医薬品等級の吸着剤を使用することが好ましいことがある。
【0032】
単回投与剤形を製造するための吸着剤の量は、処置されるホストならびに抗生物質(1種または複数)に対する吸着剤の全体的な能力および選択性に応じて変化することがある。単回投与剤形を製造するための吸着剤の量は、一般に所望の効果を生じる化合物の量である。所望の効果は、治療効果のことがあり、その製剤が投与されない場合に比べた、例えば消化管終末部、特に結腸において有害作用を引き起こす抗生物質、その代謝物、細菌毒素、または他の化合物の量における治療的に有意な減少のことがある。
【0033】
吸着剤の量は、ペレット全体の約1重量%〜約99重量%、好ましくはコア製剤の約50重量%〜約95重量%、最も好ましくは約65重量%〜約95重量%、特に約80重量%〜約95重量%の範囲である。
【0034】
特定の一態様では、活性炭が使用される。この態様の一局面では、活性炭は、優先的には1500m2/gよりも大きい、優先的には1600m2/gよりも大きい、最良には1800m2/gよりも大きい比表面積を有する。
【0035】
カラゲナン
カラゲナンは、海産性紅藻から抽出される天然起源の直鎖硫酸化多糖のファミリーである。それは、硫酸化および非硫酸化されたガラクトースユニットおよび3,6−アンヒドロガラクトース(3,6−AG)ユニットの繰り返しから作られた高分子量多糖である。それらのユニットは、交互のα1−3グリコシド結合およびβ1−4グリコシド結合によって結合している。ガラクトースユニット上のエステル硫酸基の数および位置が異なる、三つの基本型のカラゲナン、すなわちκ、ι、およびλ−カラゲナンが市販されている。
【0036】
一態様では、カラゲナンは、κ、ιおよびλ−カラゲナン、ならびにその混合物より選択することができる。この態様の一局面では、吸着剤は、κ−カラゲナンと混合される。特定の一態様では、混合物は、活性炭およびκ−カラゲナンを含む。
【0037】
好ましくは、カラゲナンの量は、吸着剤とカラゲナンの混合物の約15重量%から約25重量%の間、より好ましくは約10重量%から約20重量%の間である。本発明の特定の一態様によれば、カラゲナンの量は、混合物の約15重量%である。例えば、その混合物は、混合物全体に対して85重量%の吸着剤および15重量%のカラゲナンを含有しうる。そのような相当な量の吸着剤をカラゲナンと共に製剤化する可能性は予想外であり、消化管の所望の部分における大量の吸着剤、好ましくは活性炭のデリバリーを可能にする。
【0038】
本発明の特定の一態様によれば、活性炭とカラゲナンの混合物は、上記重量比で提供される。
【0039】
コア(またはペレット)は、技術者に公知の任意の適切な手段によって製造することができる。特に、該コアを製造するために造粒技法が適応される。例えばコアは、吸着剤とカラゲナンを上記比で混合し、水などの溶媒を添加して湿式造粒に続いて押出球状化またはワンポットペレット化に取りかかることによって得ることができる。残った水があれば、例えば従来技法を用いて、得られたペレットを乾燥することによって排除することができる。
【0040】
一態様では、本発明のコアまたはペレットは、250〜3000μm、特に500〜3000μmの範囲の重量平均粒子サイズを有する。いくつかの代表的なサイズ範囲が好ましいことがある。例えばコアサイズは、500から1000μmの間、または800から1600μmの間に含まれることがある。本発明に関連して、重量平均粒子サイズは、サイズが異なる画分に篩過し、その画分を秤量し、その重量から平均粒子サイズを計算することによって決定される。その方法は、本発明の分野の技術者に周知である。
【0041】
吸着剤、特に活性炭とカラゲナンの混合物が:
− 押出工程の間に大量輸送を可能にする適切な流動特性、
− 物質に対して限られた固着性を有する自己滑沢性、
− 押出物の形状を保つために十分な剛性、
− 押出物の堅さおよび押出物のスムーズな切断を可能にする十分な脆性、ならびに
− 良好な球状化を可能にする最小限の可塑性
などの良好な製剤性を有することが予想外に見出された。
【0042】
これらの有利な性質のどれも、先行技術に報告されていない。
【0043】
したがって本発明は、また、吸着剤、好ましくは活性炭とカラゲナン(特にκ−カラゲナン)の混合物を含む組成物に関する。さらなる一態様では、該混合物は、本出願においてペレットとも呼ばれる粒子(例えば押出球状化工程によって入手可能な密な混合物)の形態である。
【0044】
当業者は、コア組成物が、さらに抗粘着剤、結合剤、増量剤、希釈剤、着香料、着色料、滑沢剤、流動促進剤、保存料、収着剤および甘味料などの従来の賦形剤を包含することがあることを認識している。そのような賦形剤の量は、変化することがあるが、典型的にはペレットの0.1〜50重量%の範囲内である。もちろん、当業者は、添加された賦形剤がカラゲナンと吸着剤の混合物の有利な性質にマイナスの影響を及ぼさないようにこれらの量を適応させるであろう。
【0045】
外部腸溶コーティング
腸管の所望の部分で薬物が製剤から放出されるように、製剤のコアにコーティングを層状に重ねることができる。腸管の異なる部分に薬剤をデリバリーするために、当業者にいくつかのシステムが知られている。可能な、異なるシステムの包括的な総説は、Pinto et al., Int J Pharm. 2010 Aug 16;395(1-2):44-52に提供されている。
【0046】
本発明の特定の一態様では、下部腸管、すなわち下部回腸、盲腸および/または結腸において薬物が製剤から放出されるように、製剤のコアにコーティングを層状に重ねることができる。製剤が腸管の所望の部分、すなわち下部回腸、盲腸または結腸中に入るまで吸着剤を放出しないことを確実にする任意のコーティングを使用することができる。コーティングは、pH感受性、酸化還元感受性または特定の酵素もしくは細菌に感受性のコーティングより選択することができる。腸溶コーティングは、当業者に周知である(例えば、Chourasia MK and Jain SK, "Pharmaceutical approaches to colon targeted drug delivery systems", J Pharm PharmaceutSci 6(1): 33-66, 2003参照)。
【0047】
好ましいコーティング物質は、pH感受性の物質、すなわちpH依存性腸溶性ポリマーである。本出願の以下の部分から明らかなように、pH依存性腸溶性ポリマーの選択は、処置のレシピエント(本明細書において「処置されるホスト」とも呼ばれる)になる哺乳動物の消化管のpHプロファイルを考慮することによって行うことができる。
【0048】
「腸溶性ポリマー」という用語は、安定で、胃内および上部消化管で溶解しないが、消化管の所望の部分に達すると容易に溶解して、その中に含まれる活性物質を放出するポリマーを意味する。pH依存性腸溶性ポリマーの溶解性は、消化管全長にわたり見出される酸性またはアルカリ性の状態に依存する。
【0049】
特定の一態様では、pH依存性腸溶性ポリマーは、セルロースアセテートトリメリテート(CAT)、Aquateric(登録商標)などのセルロースアセテートフタレート(CAP)、Eudragit(登録商標)FS30Dなどのアクリル酸メチル、メタクリル酸メチルおよびメタクリル酸ベースの陰イオン性コポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、Aqoat(登録商標)などのヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS)LF、LG、MF、MGまたはHFグレード、Eudragit(登録商標)L100-55などのメタクリル酸−アクリル酸エチルコポリマー、Eudragit(登録商標)L30D-55などのメタクリル酸−アクリル酸エチルコポリマー、Eudragit(登録商標)L-100およびEudragit(登録商標)L12,5などのメタクリル酸−メタクリル酸メチルコポリマー(1:1の比)、Eudragit(登録商標)S-100およびEudragit(登録商標)S12,5などのメタクリル酸−メタクリル酸メチルコポリマー(1:2の比)、Sureteric(登録商標)およびOpadry(登録商標)などのポリビニルアセテートフタレート(PVAP)、ならびにSSB(登録商標)Aquagoldなどのシェラック樹脂より選択することができる。
【0050】
好ましい一態様では、外層に使用されるpH依存性腸溶性ポリマーは、6.0以上のpHで溶解する。なおより好ましくは、それは、7.0以上のpHで溶解する。これに関連して、ポリマーは、特に、SSB(登録商標)Aquagoldなどのシェラック、Eudragit(登録商標)FS30Dなどのアクリル酸メチル、メタクリル酸メチルおよびメタクリル酸ベースの陰イオン性コポリマー、Eudragit(登録商標)S-100およびEudragit(登録商標)S12,5などのメタクリル酸−メタクリル酸メチルコポリマー(1:2の比)、Aqoat(登録商標)AS-MF、MGもしくはHFグレードなどのHPMCAS、またはHP-55グレードなどのヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)から成る群より選択することができる。
【0051】
上に言及したEudragit(登録商標)コポリマーは、Evonikによって販売されている。それらの組成は、技術者に公知であって、特に、米国特許出願公開第2008/0206350号(米国特許出願第12/034,943号)から見出すことができる。
【0052】
pH依存性腸溶性ポリマーは、第一に、大部分の哺乳動物の消化管(GIT)上部から見出される酸性pHに耐える能力について、第二に、下部腸管、すなわち優先的に下部回腸、盲腸または結腸に活性薬剤をデリバリーする必要性を満たす能力について選択される。
【0053】
当業者は、多数の哺乳動物においてGITの生理機能がpH、長さ、および通過時間の全てに関して変動しうることを分かっている。下記の表1に、いくつかの哺乳動物の様々な生理学的特徴を表す。
【0054】
【表1】
【0055】
表1から、大部分の腸溶性ポリマーが上部小腸において溶解し始め、外部コーティングの厚さのおかげで、溶出が達成される時間までに吸着剤が下部腸管中に放出されることが分かる。
【0056】
コーティングの厚さは、腸管の所望の部分への吸着剤の放出を微調整するように適応させることができる。例えば、腸溶性ポリマー層は、製剤全体の重量の10重量%〜40重量%に相当することがある。好ましい一態様では、腸溶層の量は、製剤の合計重量の少なくとも15%である。好ましい一態様では、腸溶性ポリマー層は、製剤全体の約15重量%〜約35重量%、なおより好ましくは約15重量%〜約20重量%に相当する。特定の一態様では、腸溶性ポリマー層は、製剤全体の約15重量%の量で製剤中に存在する。
【0057】
本発明のコアをコーティングするために使用することのできる腸溶性ポリマーの種類および/または量は、実施例に提供されるようにBiodis溶出試験装置(USP III放出装置)を使用することによって選択することができる。
【0058】
pH依存性腸溶コーティングには、また、異なるpH依存性腸溶性ポリマーの様々な組み合わせが含まれうる。当業者は、この分野における彼らの一般知識を考慮して、そのようなpH依存性ポリマー混合物を選択することができる。例えば、上に引用されたChourasiaおよびJainの論文に言及されているように、Eudragit(登録商標)L100-55およびEudragit(登録商標)S100のような2種のメタクリル酸ポリマーの組み合わせを、本発明のコアの周囲に提供することができる。
【0059】
本発明の特定の一態様では、外部コーティングは、Eudragit FS30D、またはEudragit FS30DとEudragit L30D-55の、特に99:1から80:20の間に含まれる重量比(FS30D:L30D-55)の混合物を含有する。
【0060】
特定の一態様では、pH依存性腸溶性ポリマーは、
− シェラック、
− アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルおよびメタクリル酸ベースの陰イオン性コポリマー、
− Eudragit(登録商標)FS30Dなどのメタクリル酸メチル−メタクリル酸と、Eudragit(登録商標)L30D-55などのメタクリル酸−アクリル酸エチルコポリマーの99:1から80:20の間に含まれる比の混合物、ならびに
− メタクリル酸−メタクリル酸メチルコポリマー(1:2の重量比)
より選択される。
【0061】
さらなる特定の一態様では、本発明による製剤は:
− 活性炭とカラゲナン(好ましくはκ−カラゲナン)の混合物を含有するコア、ならびに
− Eudragit(登録商標)FS30Dなどのアクリル酸メチル、メタクリル酸メチルおよびメタクリル酸ベースの陰イオン性コポリマーの層
を含む。
【0062】
さらなる特定の一態様では、本発明による製剤は:
− 活性炭とカラゲナン(好ましくはκ−カラゲナン)の混合物を含有するコア、および
− Eudragit(登録商標)FS30Dなどのメタクリル酸メチル−メタクリル酸と、Eudragit(登録商標)L30D-55などのメタクリル酸−アクリル酸エチルコポリマーの99:1から80:20の間に含まれる比の混合物の層
を含む。
【0063】
別の特定の一態様では、本発明による製剤は、
− 活性炭とカラゲナン(好ましくはκ−カラゲナン)の混合物を含有するコア、および
− シェラック層
を含む。
【0064】
外部腸溶層が、当業者に公知の任意の適切な手段によってコア上に塗布されることがある。例えばその層は、コーティングの水溶液または溶媒溶液がコアペレット上にスプレードライによって塗布される古典的流動床技法を使用して塗布することができる。重量増加が達成されると、製剤を乾燥することができ、さらなるコーティングを塗布することができる。このように、スプレードライ技法を用いて複数のコーティングを連続的に塗布することができる。
【0065】
さらに、結腸領域は、還元状態を提供する嫌気性微生物の存在度が大きい。したがって、外部コーティングは、酸化還元感受性の物質を適切に含むことがある。そのようなコーティングは、例えば、フリーラジカル重合によって合成された、ジビニルアゾベンゼンと架橋結合した、スチレンとヒドロキシエチルメタクリレートのランダムコポリマーから成りうるアゾポリマーまたはジスルフィドポリマー(PCT/BE91/00006参照)を含むことがあり、そのアゾポリマーは、結腸中で酵素により特異的に分解される。
【0066】
結腸における放出を提供する他の物質は、アミロース、例えばアミロース−ブタン−1−オール複合体(ガラス状(glassy)アミロース)をEthocel水性分散液と混合することによって調製することができるコーティング組成物(Milojevic et awl., Proc. Int. Symp. Contr. Rel. Bioact. Mater. 20, 288, 1993)、またはガラス状アミロースの内部コーティングおよびセルロースもしくはアクリルポリマー物質の外部コーティングを含むコーティング製剤(Allwood et al GB 9025373.3)、結腸細菌酵素により分解される多糖であるペクチン(Ashford et al., Br Pharm. Conference, 1992, Abstract 13)がカルシウム(Rubenstein et al., Pharm. Res., 10, 258, 1993)または亜鉛(El-Gibaly, Int. J. Pharmaceutics, 232, 199, 2002)などの二価陽イオンによって網状構造を形成してゲル化したもの、コンドロイチン硫酸(Rubenstein er awl., Pharm.Res. 9, 276, 1992)および難消化性デンプン(Allwood et nl., PCT国際公開公報第89/11269号、1989年)、デキストランヒドロゲル(Hovgaard and Brondsted, 3rd Eur. Symp. Control. Drug Del., Abstract Book, 1994, 87)、ホウ砂改変グアーガムなどの改変グアーガム(Rubenstein and Gliko-Kabir, S.T.P. Pharma Sciences 5, 41-46, 1995)、P−シクロデキストリン(Siekeer al., Eu. J. Pharm.Biopharm. 40 (suppl), 335, 1994)、セロビオース、ラクツロース、ラフィノース、およびスタキオースなどのオリゴ糖に共有結合しているメタクリル酸ポリマーなどの合成オリゴ糖含有バイオポリマーを含むポリマー構築物が含まれるサッカリド含有ポリマー、または架橋結合しているコンドロイチン硫酸などの改変ムコ多糖などのサッカリド含有天然ポリマー;メタクリレート−ガラクトマンナン(Lehmann and Dreher, Proc. Int. Symp. Control. Rel. Bioact. Mater.18, 331, 1991)およびpH感受性ヒドロゲル(Kopecek et al., J. Control.Rel. 19, 121, 1992)である。難消化性デンプン、例えばガラス状アミロースは、上部消化管において酵素によって分解されないが、結腸において酵素によって分解されるデンプンである。
【0067】
中間コーティング
本発明の特定の一態様によると、上記製剤は、コアと外部腸溶コーティングの間に提供された少なくとも一つのさらなるコーティングを含む。このさらなる層(一つまたは複数)(「中間コーティング」とも呼ばれる)は、必要なときに吸着剤の放出をさらに遅延させるために提供される。中間コーティングは、特に、本発明による製剤に加えて治療剤(例えば抗生物質)が経口投与されたときに、ホスト生物による該治療剤の正常な吸収過程に吸着剤が及ぼす影響を最小限にする(好ましくは完全に阻止する)ために提供される。この態様は、特に、薬剤の最高血中濃度(Tmax)に達するために必要な時間の結果として、投与された治療剤が遅延吸収プロファイルを有する場合に適する。
【0068】
特定の一態様によると、中間コーティングが本発明のコア上に提供され、Eudragit(商標)FS30D(上に説明)などのpH依存性腸溶性ポリマーまたはEudragit(登録商標)FS30DとEudragit(登録商標)L30D-55の99:1から80:20の間に含まれる比の混合物を用いてさらなるコーティングが塗布される。pH依存性腸溶性ポリマーは、上部消化管に見出される酸性環境からコアを保護する。いったんpH依存性ポリマーが溶解すれば、中間コーティングのせいで吸着剤のさらなる遅延放出が得られる。
【0069】
中間コーティングは、pH依存性またはpH非依存性ポリマーを含有することがある。
【0070】
中間コーティングとして使用することができるpH依存性ポリマーのうち、例には、上の「外部腸溶層」の部に記載されたポリマー、特にSSB(登録商標)Aquagoldなどのシェラック型ポリマー、Eudragit(登録商標)FS30Dなどのアクリル酸メチル、メタクリル酸メチルおよびメタクリル酸ベースの陰イオン性コポリマー、Eudragit(登録商標)L30D-55などのメタクリル酸−アクリル酸エチルコポリマー、Aqoat AS-MF、MGもしくはHFグレードなどのHPMCAS、またはHP-55グレードなどのヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)が挙げられる。特定の一態様では、中間コーティングは、Eudragit(登録商標)FS30DとEudragit(登録商標)L30D-55の99:1から80:20の間に含まれる比の混合物などのpH依存性ポリマーの混合物のことがある。
【0071】
pH非依存性ポリマーは、緩徐水溶性ポリマーおよび水不溶性ポリマーより選択することができる。pH非依存性水溶性ポリマーの非限定的な例には、ポリビニルピロリドン(PVP)、およびヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)などの高分子量セルロースポリマーが挙げられる。pH非依存性不溶性ポリマーのさらなる非限定的な例には、エチルセルロースポリマーおよびアクリル酸エチル−メタクリル酸メチルコポリマー(Eudragit(登録商標)NE30Dなど)が挙げられる。
【0072】
本発明の特定の一態様では、中間コーティングは、ポリマーの混合物を含有する。第一の選択肢では、ポリマーの混合物は、同じタイプのポリマーを含む。例えば、混合物は、pH依存性ポリマーを別のpH依存性ポリマーと共に、pH非依存性可溶性ポリマーを別のpH非依存性可溶性ポリマーと共に、またはpH非依存性不溶性ポリマーを別のpH非依存性不溶性ポリマーと共に含むことがある。別の選択肢では、ポリマーの混合物は、異なるタイプのポリマーを含む。混合物は、pH依存性ポリマーをpH非依存性ポリマー(水溶性または不溶性のいずれか)と共に、pH非依存性可溶性ポリマーをpH非依存性不溶性ポリマーと共に、またはpH依存性ポリマーをpH非依存性可溶性ポリマーおよびpH非依存性不溶性ポリマーと共に含むことがある。例えば、中間コーティングは、Eudragit(登録商標)L30D55とEudragit(登録商標)NE30Dの混合物などのpH依存性ポリマーとpH非依存性ポリマーの混合物を(例えば、約1:9から約9:1の間、特に約2:8から約3:7の間の重量比で)含むことがある。
【0073】
好ましいコーティングおよびコーティング成分の重量比は、当業者が、例えば実施例に提供されたようにその投与剤形の放出プロファイルを評価することによって、容易に決定することができる(例えば実施例8参照)。
【0074】
約1から約2時間の間にTmaxを有する、経口経路によって与えられる医薬品、例えば抗生物質(シプロフロキサシンなど)用に、本発明によるコアに、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルおよびメタクリル酸ベースの陰イオン性コポリマーなど(Eudragit(登録商標)FS30Dなど)の単一のpH依存性ポリマーをコーティングすることができる。吸着剤の放出は、約4〜6時間後にin vitroおよびin vivoで(特にヒト被験体において)達成され、そのことが吸着剤と抗生物質または別の医薬品の正常な吸収過程との相互作用を制限する。残留抗生物質が胆汁排泄または腸膜排泄後に消化管から見出されるような抗生物質の非経口投与後に、同種の製剤を投与することができる。この場合、吸着剤と抗生物質の吸収過程とが相互作用するリスクはない。
【0075】
吸収遅延型(2時間よりも大きなTmax)の医薬品、特に第三世代セファロスポリン系などの抗生物質が、上記のような遅延デリバリーシステムで製剤化された吸着物質と同時に経口経路によって与えられる場合、吸着剤の放出をさらに遅らせることが好ましいことがある。これは、例えば、まず約1から約3%の間のエチルセルロース(合計製剤に対するw/w)、好ましくは1.5〜2.5%(合計製剤に対するw/w)、より好ましくは2%のエチルセルロース、またはEudragit(登録商標)L30D-55とEudragit(登録商標)NE30Dの混合物(合計製剤に対して10〜40w/w%の間、好ましくは15〜35w/w%の間)をコアにコーティングし、少なくとも15%(合計製剤に対するw/w)のEudragit(登録商標)FS30Dをさらにコーティングすることによって達成することができる。
【0076】
特定の一態様では、中間コーティングは、BioDis溶出試験装置(USP III放出装置)などを用いたin vitro検査によって測定されるように、吸着剤の放出に約20分〜約2時間の遅れを達成するために選択される。このシステムでは、JantratidらによってPharm.Res. 25 (2008), 1663-1676に記載されているように、消化管の異なる区域に対応するpH、緩衝能および浸透圧をもたらす組成物を有する約200mLの溶解液(dissolution media)を満たしたガラスチューブに投与剤形が連続的に入れられる。これは、哺乳動物で検査する前にin vivo放出の十分なシミュレーションを可能にし、pH、食後対空腹状態、および様々な他の生理条件を検査することができる。BioDisシステムを用ると、当業者が所望の予定された遅延放出を達成するために、製剤を微調整することが可能である。
【0077】
上記によれば、本発明の特定の一態様は:
− 吸着剤とカラゲナンの混合物を含むコア
− pH依存性腸溶性ポリマーの外層、および
− コアと外装の間に提供される中間コーティング
を含む製剤に関する。
【0078】
特定の一態様では、本発明は:
− 活性炭とカラゲナン(好ましくはκ−カラゲナン)の混合物を含むコア、
− HPMC、エチルセルロース、およびEudragit(登録商標)L30D-55などのメタクリル酸−アクリル酸エチルコポリマーとEudragit(登録商標)NE30Dなどのアクリル酸エチル−メタクリル酸メチルコポリマーの(例えば1:9〜9:1、好ましくは2:8〜3:7の混合比の)混合物から成る群より選択される中間コーティング、ならびに
− Eudragit(登録商標)FS30Dなどのアクリル酸メチル、メタクリル酸メチルおよびメタクリル酸ベースの陰イオン性コポリマーの外層
を含む製剤に関する。
【0079】
別の特定の態様では、本発明の製剤は:
− 活性炭とカラゲナン(好ましくはκ−カラゲナン)の混合物を含むコア、
− 1〜3%のエチルセルロース中間コーティング、好ましくは1.5〜2.5%のエチルセルロースコーティング、最も好ましくは2%エチルセルロース中間コーティング(合計製剤に対するw/w)、ならびに
− 15%(合計製剤に対するw/w)の、Eudragit(登録商標)FS30Dなどのアクリル酸メチル、メタクリル酸メチルおよびメタクリル酸ベースの陰イオン性コポリマーの外層
を含む。
【0080】
さらなる特定の一態様では、本発明の製剤は:
− 活性炭とカラゲナン(好ましくはκ−カラゲナン)の混合物を含むコア、
− メタクリル酸−アクリル酸エチルコポリマー(Eudragit(登録商標)L30D-55など)とアクリル酸エチル−メタクリル酸メチルコポリマー(Eudragit(登録商標)NE30Dなど)の2:8〜3:7混合物から作られた、15〜35%(合計製剤に対するw/w)の中間コーティング、ならびに
− 15%(合計製剤に対するw/w)の、Eudragit(登録商標)FS30Dなどのアクリル酸メチル、メタクリル酸メチルおよびメタクリル酸ベースの陰イオン性コポリマーの外層
を含む。
【0081】
別の特定の態様では、本発明の製剤は:
− 活性炭とカラゲナン(好ましくはκ−カラゲナン)の混合物を含むコア、
− 1〜3%のエチルセルロース中間コーティング、好ましくは1.5〜2.5%のエチルセルロースコーティング、最も好ましくは2%のエチルセルロース中間コーティング(合計製剤に対するw/w)、ならびに
− Eudragit(登録商標)FS30Dなどのメタクリル酸メチル−メタクリル酸と、Eudragit(登録商標)L30D-55などのメタクリル酸−アクリル酸エチルコポリマーの99:1から80:20の間に含まれる比の混合物の、15%〜35%(合計製剤に対するw/w)の外層
を含む。
【0082】
さらなる特定の一態様では、本発明の製剤は:
− 活性炭とカラゲナン(好ましくはκ−カラゲナン)の混合物を含むコア、
− メタクリル酸−アクリル酸エチルコポリマー(Eudragit(登録商標)L30D-55など)とアクリル酸エチル−メタクリル酸メチルコポリマー(Eudragit(登録商標)NE30Dなど)の2:8〜3:7混合物から作られた、15〜35%(合計製剤に対するw/w)の中間コーティング、ならびに
− Eudragit(登録商標)FS30Dなどのメタクリル酸メチル−メタクリル酸と、Eudragit(登録商標)L30D-55などのメタクリル酸−アクリル酸エチルコポリマーの99:1から80:20の間に含まれる比の混合物の、15%〜35%(合計製剤のw/w)の外層
を含む。
【0083】
投与剤形
別の局面では、本発明は、カラゲナンおよび1種または複数種の薬学的に許容されうる添加剤と一緒に製剤化された、治療有効量の1種または複数種の上記吸着剤を含む、薬学的に許容されうる投与剤形を提供する。下に詳細に説明するように、本発明の投与剤形は、特に固体形態での投与用に製剤化することができる。
【0084】
本明細書に使用されるような「治療有効量」という語句は、ある所望の治療効果を生成するために有効な、1種または複数種の上記化合物、1種または複数種の上記化合物を含む材料または製剤の量を意味する。
【0085】
「薬学的に許容されうる」という語句は、本明細書において、合理的な便益/リスク比に見合って、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症なしに健全な医学的判断の範囲内でヒトおよび動物の組織と接触した使用に適する、化合物、物質、製剤、および/または投与剤形を表すために採用される。
【0086】
本明細書に使用されるような「薬学的に許容されうる添加剤」という語句は、固体増量剤、希釈剤、ある器官または身体部分から、別の器官または身体部分に主題化合物を運搬または輸送することに関与する賦形剤などの、薬学的に許容されうる物質、製剤またはビヒクルを意味する。各添加剤は、製剤の他の成分と適合性であって、患者に有害でないという意味で「許容されうる」ものでなければならない。
【0087】
活性炭のin vivo分散を改善するために、上記のような腸溶性ポリマーで個々にコーティングされたペレットなどの複数のユニットを含有する投与剤形が、好ましいことがある。そのようなペレットは、例えば流動床システムを用いてその表面にコーティングを直接行うことができることから、より実用的な適応性を示す。
【0088】
湿潤剤、乳化剤および滑沢剤(ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムなど)、ならびに着色料、離型剤(release agent)、コーティング剤、甘味料、香味料および着香料、保存料および抗酸化剤も、また、投与剤形中に存在することがある。
【0089】
本発明の投与剤形には、経口投与に適する投与剤形が挙げられる。製剤は、好都合には単位投与剤形として提示することができ、薬学分野で周知の任意の方法によって調製することができる。
【0090】
経口投与に適する本発明の投与剤形は、それぞれ予定された量の吸着剤製剤を含有するカプセル剤、錠剤、サシェ剤(sachet)の形態のことがある。
【0091】
錠剤は、場合により1種または複数種の補助成分と共に、圧縮または成形によって製造することができる。圧縮された錠剤は、結合剤(例えば、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、滑沢剤、不活性希釈剤、保存料、崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウム、架橋型カルボキシメチルセルロースナトリウムまたは多糖)、界面活性剤または分散剤を使用して調製することができる。成形された錠剤は、水などの不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化合物の混合物を適切な機械で成形することによって製造することができる。
【0092】
上記の固体投与剤形は、単一ユニットまたは多ユニットを含む最終投与剤形中に組み合わせることができる。多ユニットの例には、多層錠、錠剤含有カプセル、ペレット剤、顆粒剤などが挙げられる。
【0093】
本発明のコアに、外層および場合により上に提供されたような中間コーティングをコーティングすることができる。コーティングされた製剤(外部腸溶コーティングをコーティングされ、中間コーティングを含むもしくは含まない)またはコーティングされていないコアを、さらに、錠剤、カプセル剤などのユニット薬物投与剤形中に組み合わせることができ、それに、効果的な遅延放出のためのコーティング材料をさらにコーティングすることができ、その材料には、非限定的にヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロースポリマー、ポリビニルピロリドン;ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメリテートなどのコポリマー、ならびに商品名Eudragit(登録商標)(Rohm Pharma; Westerstadt、Germany)で市販されているアクリル酸のポリマーおよびコポリマー、好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチルおよび/またはメタクリル酸エチルから形成したもの、ならびに他のメタクリル樹脂、例えばEudragit(登録商標)L30D-55およびL100-55(pH5.5以上で可溶)、Eudragit(登録商標)L-100(pH6.0以上で可溶)、Eudragit(登録商標)S(高度のエステル化の結果としてpH7.0以上で可溶)、およびEudragit FS30D、メタクリル酸、アクリル酸メチルおよびメタクリル酸メチルの陰イオン性コポリマー;エチルセルロース、セルロースアセテート;Eudragit(登録商標)NE、RLおよびRS(異なる程度の透過性および拡張性を有する水不溶性ポリマー)、酢酸ビニル、ビニルアセテートフタレート、ビニルアセテート−クロトン酸コポリマー、およびエチレン−酢酸ビニルコポリマー;ビニルポリマー、ならびに;アゾポリマー、ペクチン、キトサン、アミロースおよびグアーガムなどの酵素分解可能なポリマー;ゼインおよびシェラックが挙げられる。
【0094】
特定のコーティング材料のために好ましいコーティング重量は、当業者が、異なる量の様々なコーティング材料を用いて調製された錠剤、ペレットおよび顆粒剤についての個々の放出プロファイルを評価することによって容易に決定することができる。
【0095】
所望の放出特性を生じるのは、材料の組み合わせ、方法および適用形態である。
【0096】
コーティング製剤は、可塑剤、顔料、着色料、安定化剤、流動化剤などの従来の添加剤を包含することがある。可塑剤は、普通はコーティングの脆弱性を軽減するために存在し、全般にポリマーの乾燥重量に対して約5wt%〜50wt%に相当する。典型的な可塑剤の例には、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリアセチン、フタル酸ジメチルフ、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、セバシン酸ジブチル、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリエチル、ヒマシ油およびアセチル化モノグリセリドが挙げられる。安定化剤は、好ましくは分散物中の粒子を安定化するために使用される。典型的な安定化剤は、ソルビタンエステル、ポリソルベートおよびポリビニルピロリドンなどの非イオン系乳化剤である。流動化剤は、フィルム形成および乾燥の間に粘着効果を低下させるために推奨され、全般にコーティング溶液中のポリマー重量に対して約0wt%〜100wt%に相当する。一つの効果的な流動化剤はタルクである。ステアリン酸マグネシウムおよびモノステアリン酸グリセロールなどの他の流動化剤も使用することができる。二酸化チタンなどの顔料も使用することができる。シリコーン(例えばシメチコン)などの少量の消泡剤も、コーティング製剤に添加することができる。
【0097】
これらの投与剤形は、任意の適切な投与経路により、治療のためにヒトおよび動物に投与することができる。
【0098】
本発明の投与剤形中の吸着剤の実際の投薬レベルは、特定の患者、製剤、および投与方式について患者に有毒にならずに、腸管中の任意の残留抗生物質または他の医薬品もしくは毒素の効果的な除去を行うように変動させることができる。
【0099】
選択された投薬レベルは、採用される本発明の特定の化合物の活性、投与時間、採用される特定の化合物の排泄または代謝速度、処置の期間、採用される特定の化合物と共に使用される他の薬物、化合物および/または材料、処置される患者の年齢、性別、体重、状態、全身の健康状態および病歴、ならびに医学の分野で周知の類似の要因などの多様な要因に依存する。
【0100】
当技術分野で通常の技術を有する医師または獣医師は、必要な薬学的製剤の有効量を容易に決定して処方することができる。例えば、医師または獣医師は、薬学的製剤に採用される本発明の化合物の用量を、所望の治療効果を達成するために必要なレベルよりも低いレベルで開始し、所望の効果が達成されるまで投薬量を徐々に増加させることができよう。
【0101】
全般に、本発明の化合物の適切な1日用量は、治療効果を生じるために有効な最低用量の化合物の量である。そのような有効用量は、全般に上記要因に依存する。
【0102】
所望により、活性化合物の有効1日用量は、1日にわたり適切な間隔で別々に投与される2、3、4、5、または6個以上の分割用量として、場合により単位投与剤形として投与することができる。
【0103】
既述のように、本発明による製剤は、治療剤、特に抗生物質(それだけではないが)の有害作用を除去するための方法に使用されることがある。この方法の特定の態様によれば、本発明の製剤および治療剤は、同時に投与される。このように吸着剤の量は、それを必要とする被験体に投与される治療剤の量に適合されることがある。この場合、吸着剤と抗生剤の間の重量比は、1を超える、より好ましくは2を超える、なおより好ましくは3を超える、最も好ましくは9を超えることがある。
【0104】
「処置」という用語は、予防、治療および治癒も包含するつもりである。
【0105】
この処置を受けている被験体は、霊長類、特にヒト、および他の哺乳動物、例えばウマ、ウシ、ブタおよびヒツジなどの、必要とする任意の動物であり;家禽およびペットも全般に当該処置のレシピエントになることがある。
【0106】
動物への本発明による製剤の投与は、好ましくは、動物の食物中にそれを包含させることによって実施される。これは、好ましくは本発明の製剤を有効量で含有する適切な飼料プレミックスを調製し、そのプレミックスを混込んで完全な飼料日量にすることによって達成される。したがって本発明は、また、上記食物および製剤を含む動物食物プレミックスに関する。本発明は、また、本発明による製剤を含む動物食物飼料日量に関する。
【0107】
適用
治療適用:
本発明による製剤は、吸着剤の腸デリバリーが適切な状態および障害を処置するために使用することができる。したがって、本発明は、また、医薬として使用するための上記製剤に関する。
【0108】
本発明による製剤は、任意の薬物、その代謝物もしくはプロドラッグ、または毒素を吸着し、したがって腸管から排除するために使用することができる。これは、活性薬物の経口または非経口投与後に行われることがあり、それらが下部腸管および/または結腸に到達したときに、処置されている被験体における有害作用を限定または減少させるために有用なことがあろう。
【0109】
それにより、本発明は、薬物が結腸に到達する前または薬物が結腸に到達するときに、好ましくは薬物が盲腸に到達する前または薬物が盲腸および近位結腸に到達するときに、腸管中の薬物を除去するための方法に使用するための、上記製剤に関する。
【0110】
本発明は、さらに、薬物が結腸に到達する前または薬物が結腸に到達するときに、好ましくは薬物が盲腸に到達する前または薬物が盲腸および近位結腸に到達するときに、腸管中の薬物を除去するための方法であって、それを必要とする患者に本発明による製剤を投与することを含む方法を提供する。
【0111】
さらに本発明は、腸管中の薬物の副作用を軽減または除去するための方法に使用するための、上記製剤を提供するが、その際、その製剤は、薬物が結腸に到達する前または薬物が結腸に到達するときに、好ましくは薬物が盲腸に到達する前または薬物が盲腸および近位結腸に到達するときに、その薬物を除去する。
【0112】
「薬物」、「治療剤」および「医薬品」、ならびにそれから派生する用語は、本明細書において互換的に使用され、ヒトまたは動物に投与されたときに所望の生物学的または薬理学的効果を提供する化合物を表す。
【0113】
本発明による製剤を用いて処置されうる状態および障害は、抗生物質耐性の発生、C. difficile(または他の病原性細菌)の抗生物質処置関連発生、抗生物質処置関連真菌感染または抗生物質処置関連下痢などの、抗生物質への結腸曝露に起因するものでありうる。吸着剤は、残留抗生物質を吸着し、本発明による製剤は、抗生物質を投与されたことのある、投与されている、または将来投与される患者に治療有効投薬量で投与することができる。吸着剤中/上に吸着できる任意の抗生物質を不活性化することができ、その抗生物質は、いったん完全に吸着されると抗生物質活性を有さない。吸着されうる抗生物質クラスの代表的な例には、β−ラクタム系、サイクリン系、マクロライド系、キノロン系、アミノグリコシド系、グリコペプチド系、スルホンアミド系、フェニコール系、フラン系、ポリペプチド系、オキサゾリドン系およびホスホマイシン、リファンピンなどの抗生物質が挙げられる。
【0114】
したがって本発明は、また、好ましくは残留抗生物質が結腸に到達する前またはそれが結腸に到達するときに、腸管中の残留抗生物質を除去するための方法に使用するための、上記製剤に関する。より好ましくは、製剤は、好ましくは残留抗生物質が盲腸に到達する前またはそれが盲腸および近位結腸に到達するときに、腸管中の残留抗生物質を除去するための方法に使用される。本発明によれば、吸着剤は、好ましくは抗生物質が吸収される腸部分(十二指腸および空腸)と共生細菌に有害作用が起こる腸部分(盲腸および結腸)の間にデリバリーされる。本発明は、さらに、好ましくは残留抗生物質が結腸に到達する前またはそれが結腸に到達するときに、最も好ましくはそれが盲腸に到達する前またはそれが盲腸および近位結腸に到達するときに、腸管中の残留抗生物質を除去するための方法であって、それを必要とする被験体に本発明の製剤の有効量を投与することを含む方法に関する。
【0115】
本発明は、さらに、腸管中の抗生剤の有害作用を除去するための、特に抗生物質耐性の発生、C. difficile(または他の病原性細菌)の抗生物質処置関連発生、抗生物質処置関連真菌感染または抗生物質処置関連下痢を除去するための方法に使用するための、上記製剤に関する。本発明は、さらに、腸管中の抗生剤の有害作用を除去するための方法であって、それを必要とする被験体に本発明の製剤の有効量を投与することを含む方法に関する。
【0116】
別の態様では、本発明の製剤は、下部腸管に到達したときに、特に結腸に到達したときに副作用を有する医薬品を用いて処置された障害を患う患者に投与される。下に詳しく説明するように、イリノテカンは、そのような挙動を有する代表的な化合物である。
【0117】
特定の態様では、その製剤は、結腸以外の患者の体内で関連レセプターに結合して障害を処置するが、結腸中のレセプターに結合すると副作用を生じるような医薬品を用いて処置される障害を患う患者に投与される。例えば結腸は、中枢神経系にも存在するコリン作動性セロトニンレセプターを包含する。コリン作動性レセプターに結合する薬剤を用いた処置は、その化合物が結腸中のレセプターに結合するならば副作用を生じることがある。本発明の製剤とそのようなレセプターに結合する薬剤の同時投与は、これらの副作用を最小化または除去することができる。
【0118】
したがって本発明は、また、障害の処置として投与されるが、下部回腸、盲腸または結腸に到達すると副作用を有する医薬品の腸管、特に結腸における副作用を除去するための方法に使用するための、上記製剤に関する。本発明は、これらの副作用を緩和または除去することができる。本発明は、さらに、医薬品、特に障害の処置として投与されるが、下部回腸、盲腸または結腸に到達すると副作用を有する医薬品の腸管、特に結腸における副作用を除去するための方法であって、それを必要とする被験体に本発明の製剤の有効量を投与することを含む方法に関する。特に、本発明は、医薬品を用いた処置によって誘導される炎症および/または下痢を緩和または除去するために使用することができる。
【0119】
イリノテカンは、障害のための処置として投与されるが、それおよび/またはその代謝物が下部回腸、盲腸または結腸に到達すると副作用を有する医薬品の例示的で非限定的な一例である。本発明の特定の一態様は、イリノテカン誘導下痢、特にイリノテカン誘導遅発性下痢を除去または軽減するための製剤を提供する。
【0120】
天然アルカロイドであるカンプトテシンの半合成アナログであるイリノテカン(CPT−11としても知られている)は、トポイソメラーゼI阻害剤である7−エチル−10−ヒドロキシカンプトテシン(SN−38)の可溶性プロドラッグであり、プロドラッグ型よりも1000倍強力なin vitro抗腫瘍活性を有する。イリノテカンは、より詳細には1998年にFDAによって転移性結腸直腸ガンのために認可されている。それは、大部分は併用治療方式で第一選択として、または5−フルオロウラシル(5−FU)に基づく治療の失敗後に単剤として使用される。しかしながら、遅発性下痢は、イリノテカンの主な用量制限毒性であることが見出されている。SN−38の腸内蓄積は、イリノテカン誘導後期下痢の主な原因である。
【0121】
より全般的に、下痢は、化学療法剤を用いた臨床処置の間の副作用として発生することが多い。この有害作用は、最も一般的には5−フルオロウラシル、シスプラチンまたはイリノテカンなどの化学療法剤に関連する。特に、イリノテカンの投与による遅発性下痢は、持続するおそれがあり、脱水および電解質不均衡につながることがあり、場合によってはイリノテカンの投与を改変、中断または中止しなければならないほど十分に重症(グレード3または4の下痢)になるおそれがある。下痢は、患者についての問題症状を構成し、それがイリノテカンの用量またはイリノテカンの投与回数の減少を誘発しうることから、下痢は、投与された用量に高度に依存するイリノテカンの治療効率を損なうおそれがある。
【0122】
この副作用の重要性および頻度のしるしは、下痢が起こった場合のロペラミドによる処置用のプロトコールがイリノテカンのラベルにさえ表示されているという事実である。実際にヒトにおいて、いったん下痢が開始したならば、下痢を軽減または防除するためにロペラミド(腸運動を緩徐にし、腸を通過した水および電解質の移動に影響する薬剤)の集中的即時投与が用いられる。しかしながら、ロペラミドはそれ自体が、腸閉塞を誘導するなどの副作用を有する(Hanauer, SB, Rev Gastroenterol Disord. 8 (2008), 15-20)。
【0123】
活性炭を用いたイリノテカン誘導下痢の予防が、以前に提案されている(Michael et al., Journal of Clinical Oncology, Vol. 22, No. 21, November 1, 2004)。しかしながら、その処置は、無配合活性炭の経口投与にあった。これは、この吸着剤の非特異的性質にどちらも関係する少なくとも二つの問題を提起する。これらの問題の一つは、活性炭が消化管を進むときに活性炭が消化物によって飽和する可能性があることである。イリノテカンおよび/またはその代謝物がそれらの望まれない作用を誘発する場所でそれらの強い吸着を得るために、腸管終末部に最大限に活性な吸着剤を提供することが好ましいであろう。第二の問題は、経口投与される薬物を含みうる多剤処置レジメンの範囲内でイリノテカンが投与されることが多いという事実に関係する。特に、イリノテカンは、5−フルオロウラシルおよびロイコボリンと共に投与することができ;他の薬物が様々な理由から必要に応じて処置に加えられることがある。これに関連して、同時投与された薬物(一つまたは複数)を吸着剤が吸着することで、それらの薬物がその用途である所望の効果を誘発することが阻止されることがあるので、無配合活性炭の同時投与は望ましくない。
【0124】
本発明は、さらなる有害作用も毒性も誘発せずに、イリノテカンの有害作用、特にイリノテカン誘導下痢(最も詳細にはイリノテカン誘導遅発性下痢)を除去または軽減可能にする点で有利である。さらに、本発明のお陰でイリノテカンは、イリノテカンの有害作用の除去のために投薬レジメンを変更する必要がないことから、その最も有効な治療用量で使用することができる。イリノテカン療法を受けている患者での下痢症状を予防することにおいて、本発明の製剤は、下痢の発生率、重症度、および/もしくは持続時間を減少させ、患者の生活の質を改善し、下痢に関係する入院を回避し、かつ/またはイリノテカン用量の低下、処置の中断もしくは中止を防止する潜在性を有する。
【0125】
本発明の方法は、また、イリノテカンの代謝物、特にSN−38の除去または減少、および当該イリノテカン代謝物の有害作用の除去または軽減を提供する。
【0126】
当業者は、これらの利点が、下部消化管に到達したときに有害作用を誘発するイリノテカン以外の分子、特に下痢を誘導する分子を用いた治療にも提供されることを認識している。そのような分子は、トポテカンなどのカンプトテシンの他のアナログおよび誘導体、ならびにガン化学療法に使用される他の薬物の可能性があろう。
【0127】
疼痛および痛風性関節炎の処置に使用される薬物であるコルヒチンは、本発明による除去が有利であろう医薬品の別の代表例である。
【0128】
血圧薬(カルシウムチャネルブロッカー)、疼痛薬(特に麻薬)、抗うつ薬、アルミニウムおよびカルシウムを含有する制酸薬、抗パーキンソン薬、鎮痙薬、利尿薬、および抗痙攣薬との有害薬物反応を理由とする消化管の問題が通例報告されていること、ならびに多数の種類の薬物が便秘に関連することも知られている。多くの場合に、便秘は持続し、副作用がやっかいなことから、患者は処置を中断する。リスペリドンなどの薬物は、巨大結腸などの結腸障害を伴うおそれがある(Lim et al, Singapore Med J 2002, Vol 43(10) : 530-532)。本発明の製剤は、これらの問題を処置するためにそれを必要とする患者に投与することができる。
【0129】
したがって特定の一態様では、本発明は、腸管、特に結腸における治療剤、例えば化学療法剤、特にイリノテカンおよびその誘導体(特にその代謝物SN−38)の副作用を除去するための方法に使用するための、上記製剤に関する。本発明は、さらに、治療剤、例えば化学療法剤、特にイリノテカンおよびその誘導体(特にその代謝物SN−38)が下部回腸、盲腸または結腸に到達したときに、腸管、特に結腸におけるその治療剤の副作用を除去するための方法であって、それを必要とする被験体に本発明の製剤の有効量を投与することを含む方法に関する。
【0130】
本発明は、さらに、化学療法剤、特にイリノテカンを用いてガン(特に転移性結腸直腸ガン)を処置するための方法であって、それを必要とする患者に
− 化学療法剤の有効量、および
− 本発明による製剤の有効量
を投与することを含む方法に関する。
【0131】
本発明は、また、治療剤、例えば化学療法剤、特にイリノテカンの用量を減少、使用を中止または中断する必要性を軽減または除去するための方法であって、該治療剤による治療を必要とする患者に本発明による製剤を投与することを含む方法に関する。
【0132】
本発明による製剤は、本発明による下部消化管から除去するつもりの治療剤の投与前、投与と共にまたは投与後に投与されることがある。好ましくは、本発明による製剤は、治療剤の前または治療剤と一緒に投与される。例えば、被験体は、抗生物質(または別の治療剤、例えばイリノテカンのような化学療法剤など)および本発明による製剤を同時に服用する。
【0133】
したがって例えば、治療剤および本発明による製剤は、同時または連続的(本発明の製剤が治療剤の投与前または投与後に投与される)に、1日1回または数回反復で1日または数日間投与されることがある。本発明の製剤の投与は、治療剤の投与前に始まり、該治療剤の投与後まで継続されることがある。
【0134】
さらに、本発明の製剤は、また、除去されるべき有害作用の開始前または後に、好ましくは開始前に投与されることがある。例示的な一態様では、本発明の製剤は、患者がイリノテカン、コルヒチン、またはその他のような下痢誘導性治療剤を用いて処置される前に投与される。本発明の製剤は、治療剤の投与の1または2日前および投与後に1回または複数回、例えば4または6時間毎に1または数日間投与することができる。
【0135】
特定の好ましい一態様では、イリノテカンを用いた患者の処置に関連して、本発明の製剤は、患者にイリノテカンが投与される前に、例えば1または2日前に1日1回または数回(例えば食事の度に)投与され、製剤の投与は、イリノテカンの投与日に、イリノテカンの投与の少なくとも4日後に、好ましくは1日数回継続される。理想的には、イリノテカンまたはその代謝物の全ての微量残留物が患者の腸管から除去されることを確かめるために、処置は、イリノテカンの投与後4から10日の間、好ましくは7日間継続される。
【0136】
本発明は、また、下部腸管における存在が望まれない治療剤を含む少なくとも一つの第1の製剤および上記吸着剤を含有する製剤を含むキットに関する。本発明は、さらに、そのキットの製剤を、それを必要とする被験体に投与することを含む上記方法の一つに使用するための、本発明によるキットに関する。その製剤は、連続的に(次々と)または同時に、好ましくは同時に投与される。
【0137】
本発明は、さらに、それを必要とする被験体における病状を処置するための方法であって:
− 疾患の処置に有用な医薬品、特に抗生物質(または上記のように下部腸管に到達すると副作用を有する任意の他の医薬品)を被験体に投与すること、および
− 下部腸管(すなわち下部回腸、盲腸または結腸)における医薬品の量を除去または減少させるために、本発明による製剤を連続的(医薬品の投与前もしくは後)にまたは同時にのいずれかで同被験体に投与すること
を含む方法に関する。
【0138】
本発明の製剤に加えて、病状の処置に使用することのできる医薬品の代表的な、非限定的な例には、抗腫瘍剤、例えばイリノテカンまたはトポテカンのようなカンプトテシン誘導体などのトポイソメラーゼI阻害剤、ジアセレインなどの抗炎症化合物またはインターロイキン−1阻害剤、パンクレリパーゼ(Pancrease、Creon、Zenpepなど)、ロフルミラストまたはシロミラストなどの慢性閉塞性肺疾患(COPD)の処置に使用される選択的ホスホジエステラーゼ−4阻害剤、およびコルヒチンなどの有糸分裂阻害活性を有する化合物が挙げられる。
【0139】
上記のように、本発明による製剤の含有物は、大部分の種類の治療剤の吸収プロファイルに、特に大部分の抗生剤に適合させることができる。結果として、吸着剤の放出は、正常な治療剤吸収過程との無相互作用を達成するために最も確実で首尾一貫している。したがって、そして上に提供するように、治療剤、例えば抗生物質が完全に吸収されてその治療効果を発揮した後の予定された時間にデリバリーを行うように、吸着剤のデリバリーを遅延させることができる。これは、上部腸管における保護と効率的な吸着剤遅延放出の両方を提供する特定のコーティングによって達成される。これは、上述の一般および特異的アプローチよりも大きく非常に革新的な利点を提供する。
【0140】
投与の順序は、また、当業者によって適合させることができる。例えば薬学的処置は、経口経路と異なる経路による医薬品の投与を含むことがある。例えば医薬品は、注射(例えば静脈内、動脈内、くも膜下腔内、筋肉内注射)によるなどの非経口経路によって投与することができる。この場合、当業者が、消化管中の医薬品の排泄タイミングのその知識により、本発明の製剤の投与タイミングを適合させる。
【0141】
その製剤は、また、結腸での細菌または真菌毒素の作用を被る患者に投与されることがある。そのような毒素の例には、Clostridium difficile(世界中で抗生物質後下痢の主原因であると考えられている)により産生されるものなどのマイコトキシン、エンドトキシンまたはエンテロトキシンが挙げられる。この態様では、吸着剤は、毒素を吸着するために治療有効薬用量で投与される。
【0142】
したがって本発明は、また、結腸における細菌または真菌毒素の作用を除去するための方法に使用するための、上記製剤に関する。本発明は、さらに、結腸に対する細菌または真菌毒素の作用を除去するための方法であって、それを必要とする被験体に本発明の製剤の有効量を投与することを含む方法に関する。
【0143】
さらに本発明は、また、いくつかの病状の発生の原因となる、下部消化管における物質の蓄積を特徴とする病状を処置するための方法に使用するための上記製剤に関する。例えば、その製剤は、非限定的に肝性脳症、過敏性腸症候群、慢性腎疾患、C. difficile関連下痢または抗生物質関連下痢などの状態の処置に有用でありうる。本明細書に開示された製剤によって吸着することのできる代表的な物質には、非限定的にアンモニア、インドール、終末糖化産物(AGE)およびある種の細菌毒素が挙げられる。
【0144】
本発明の製剤は、慢性腎疾患(CKD)を患う患者に投与することができる。終末糖化産物(AGE)、フェノール(例えばp−クレシルスルフェート)およびインドール(例えばインドキシルスルフェート)は、腸管を経由して体内において発生または導入される代表的な毒素であり、その毒素はCKDに関係するおそれがある。したがって特定の一態様では、本発明は、CKDを処置するための方法に使用するための、上に定義された製剤に関する。本発明は、さらに詳細には、尿毒症性貯留溶質の生成に関与する毒素を除去するための方法に使用するための上記製剤に関する。本発明は、さらに、尿毒症性貯留溶質の生成に関与する毒素の作用を除去するための方法であって、それを必要とする被験体に本発明の製剤の有効量を投与することを含む方法に関する。さらに詳細には、本発明は、下部腸管(すなわち下部回腸、盲腸または結腸)におけるAGE、フェノール(例えばp−クレシルスルフェート)および/またはインドール(例えばインドキシルスルフェート)の量の除去または減少に関する。
【0145】
本発明の製剤は、さらに、炎症性腸疾患(IBD)、特に潰瘍性大腸炎またはクローン病を患う患者に投与することができる。本発明の製剤のおかげで、今や、過剰の非特異的粘膜細菌、または一酸化窒素、酸素ラジカル、プロスタグランジン、ロイコトリエン、ヒスタミン、プロテアーゼ、およびマトリックスメタロプロテイナーゼなどの腸粘膜中に蓄積する攻撃性の代謝物およびメディエーターを吸着することで腸内の共生的フローラを組み立て直すことによって免疫寛容を誘導または再建することが可能である。したがって本発明は、IBD、特に潰瘍性大腸炎またはクローン病を患う患者における免疫寛容を誘導または再建するための方法に使用するための、上記製剤に関する。したがって本発明は、また、IBD、特に潰瘍性大腸炎またはクローン病を処置するための方法であって、それを必要とする患者に本発明による製剤を投与することを含む方法に関する。本発明は、さらに、過剰の非特異的粘膜細菌、または一酸化窒素、酸素ラジカル、プロスタグランジン、ロイコトリエン、ヒスタミン、プロテアーゼ、およびマトリックスメタロプロテイナーゼなどの腸粘膜中に蓄積する攻撃性の代謝物およびメディエーターの量を除去または減少させるための方法に使用するための、上記製剤に関する。
【0146】
本発明による製剤は、また、肝性脳症(HE)を処置するために使用することができる。窒素化合物である循環腸由来毒素、特にアンモニアが、この障害に主要な役割を果たすと考えられる。本発明による製剤は、例えば、細菌により産生されるアンモニアを吸着するために、それを必要とする患者の腸管に使用することができる。このように、本発明は、窒素化合物、特にアンモニアの除去または減少を必要とする被験体の消化管からその窒素化合物を除去または減少させるための上記製剤に関する。本発明は、また、窒素化合物、特にアンモニアの量の除去または減少を必要とする被験体の消化管からその量を除去または減少させるための方法であって、該患者に上記製剤の治療有効量を投与することを含む方法に関する。
【0147】
処置対象の被験体が動物、例えばペットまたは農用動物である場合、本発明による製剤は、食物中に組み入れられることがある。例えば、医療用食物(または薬用食物)を治療用製剤として使用するつもりならば、本発明による製剤を抗生物質なしにまたは抗生物質と共にその食物に組み入れることができる。または、本発明による製剤は、食品添加物として役立つプレミックス食物の形態のことがある。
【0148】
獣医学的適用:
本発明による製剤は、被験体の腸管の特定部分で吸着剤を放出することが可能である。上述のように、被験体は、ペットまたは農用動物のことがある。例えば被験体は、ブタ、イヌ、ネコ、ウマまたはニワトリのことがある。
【0149】
吸着剤は、治療に関連して有用なことに加えて、広範囲の分子を除去可能である。したがって、本発明による製剤は、下部腸管における吸着剤の放出が有利であろう方法で実行されることがある。
【0150】
例えば、本発明による製剤は、鼓腸(例えばH2Sの吸着による)、便臭(例えばアンモニアの吸着による)、口臭、食物不耐性などを軽減するために使用されることがある。
【0151】
本発明は、さらに、以下の非限定的な実施例を参考にして理解されよう。
【0152】
実施例
実施例1:模擬結腸液中の活性炭によるレボフロキサシンの吸着動態
レボフロキサシン溶液(50μg/ml)を無配合活性炭(NFAC)と共に模擬結腸液(50mMリン酸ナトリウム緩衝液pH6.0、100mM NaCl)中で静かに混合しながら37℃でインキュベーションした。NFAC対レボフロキサシンの比は、3:1または10:1のいずれかであった。
【0153】
0、0.5、1および2時間インキュベーションした後に試料を回収し、遠心分離し、濾過し、上清中に残ったレボフロキサシンの量をその287nmでの吸光度によって測定した。
【0154】
図1に示すように、レボフロキサシンに対するNFACの比が最低のときでさえ、30分のインキュベーション後に全ての抗生物質が炭上に吸着された。
【0155】
実施例2:シプロフロキサシンおよびレボフロキサシンの微生物アッセイ
微生物アッセイは、抗生物質の生物学的活性、すなわちそれが指標細菌株の成長を阻害する能力を測定することにある。このために、指標株としてE. coli CIP7624株を含有するDifco液5で寒天プレートを作製した。寒天プレート表面に直接載せたペーパーディスク上に、測定対象の抗生物質を含有する試料20μlをスポットした。37℃で18時間インキュベーション後に、ペーパーディスク周囲の、細菌の成長が抗生物質の存在によって阻止された範囲の直径を測定した。
【0156】
図2に示すように、抗生物質溶液の濃度の対数(log10μg/ml)と成長阻止直径(mm)の間に直線関係がある。アッセイは、0.04〜5μg/mlのシプロフロキサシンで直線的であった。
【0157】
無配合活性炭懸濁液20μlをディスク上にスポットしたとき、成長阻止は観察されず、このアッセイにおいて炭単独が細菌の成長に作用を及ぼさなかったことが示された。
【0158】
同液および指標株を使用して、レボフロキサシンについて類似のアッセイを設定したが、このアッセイでは0.15〜10μg/mlのレボフロキサシンで直線的な応答が得られた(示さず)。
【0159】
実施例3:微生物アッセイにより測定された、活性炭によるシプロフロキサシンの吸着動態
シプロフロキサシン溶液(50μg/ml)を改変模擬結腸液(18.7mMマレイン酸、84mM NaCl、pH6.0)中で150μg/ml活性炭と共にインキュベーションした。試料を様々な時点で回収し、遠心分離し、上清中に残留するシプロフロキサシン量を実施例2に記載された微生物アッセイによって測定した。図3に示すように、結果は、抗生物質濃度を分光光度的に測定した、実施例1に記載された実験と本質的に同じであった。ほとんど全ての抗生物質が1時間以内に炭上に吸着された。0時間に回収されたと表示された試料が、実際にはシプロフロキサシンと炭の間の約1分の接触を表すことは注目に値する。活性炭は、この短時間ですでに70%近い抗生物質を吸着していた。
【0160】
実施例4:盲腸液中の活性炭によるレボフロキサシンの吸着動態
活性炭が抗生物質とin vivoで相互作用する条件を模倣するために、本発明者らは、健康な子ブタの盲腸から採集された腸液の存在下で活性炭上へのレボフロキサシンの吸着を測定した(ex vivo条件)。
【0161】
レボフロキサシン(800μg/ml)を等体積の子ブタ盲腸液と共に静かに撹拌しながら37℃で2時間予備インキュベーションした。同じように、無配合活性炭、または同等の活性炭を80mg/ml含有する、脱製剤化された製品(脱製剤化されたコーティング済みペレット、またはDCP)の懸濁液を上記と同じ条件で等体積の子ブタ盲腸液と共にインキュベーションした。脱製剤化は、下記実施例6に提供されたように実施する。次に、抗生物質および炭の盲腸液懸濁液を等体積で混合し、静かに撹拌しながら37℃で最大5時間インキュベーションした。これは、100:1の炭対レボフロキサシンの比に相当した。表示した時間に、試料を回収し、遠心分離し、上清中に残留する、遊離の活性抗生物質の量を上記微生物アッセイによって測定した。図4に、約半分の抗生物質が盲腸液上に吸着され、1時間までに平衡に到達したことを示す。活性炭の存在下で、遊離の活性抗生物質が1時間後に上清中に残留せず、高い量の実際の腸液の存在下であっても、活性炭が効率的にレボフロキサシンを吸着できたことが示された。この実験は、さらに、活性炭が当該ex vivo条件下でレボフロキサシンを吸着する能力に活性炭の製剤が影響しなかったことを示している。
【0162】
2匹の異なる子ブタから抽出した盲腸液を用いて実験を行った。3個組の決定に関する平均±SDを示す。
【0163】
実施例5:異なる条件におけるレボフロキサシンの脱着
実施例4に記載されたように、レボフロキサシン(200μg/mlの最終濃度)を、子ブタ盲腸液の存在下で無配合活性炭(NFAC)または脱製剤化されたコーティング済みペレット(DCP)上に吸着させたが、例外としてこれらの実験では活性炭対レボフロキサシンの比を50:1とした。レボフロキサシンを盲腸液および炭と共に2時間インキュベーションした後に、液を遠心分離し、炭および盲腸液の粒子を含有するペレット3回洗浄し、最終的に100mM NaClを含有する50mMリン酸ナトリウム緩衝液中でpH4.0、7.0または10.0において22℃で静かに撹拌しながら最大30日間インキュベーションした。盲腸液を用いるが、活性炭の不在下で対照実験を行い、最初のインキュベーションと同体積で解離実験を行った。表示された時間に、試料を回収し、遠心分離し、液中に放出された遊離の活性抗生物質の量を、上清から微生物アッセイによって測定した。
【0164】
図5に、一部の抗生物質が材料から盲腸液中に経時的に放出されたこと、およびこの量がpH4.0および7.0よりもpH10.0の方がずっと重大であったことを示す。より少量のレボフロキサシンがNFACの存在下で放出された。全く驚くべきことに、pH4.0および7.0で、DCPの存在下で放出された活性炭の量は、検出限界(0.15μg/mlレボフロキサシン)未満であった。pH10.0では、レボフロキサシンの放出は測定可能であったが、本実験では最初の抗生物質量の1%に相当する2μg/mlを超えなかった。したがって、天然液中で遭遇しそうなpH値で、DCP中に含有される活性炭からのレボフロキサシンの解離を測定することはできなかった。
【0165】
実施例1:活性炭上への他の抗生物質の吸着有効性
アッセイ条件は、以下の通りであった:
− 結腸の浸透圧に調整した、pH6のリン酸緩衝食塩水(PBS)中で実験を行い、
− 初期量200μg/ml(または薬物の最大溶解度に応じてそれ未満)の抗生物質を試験し、
− 3/1〜10/1の活性炭/抗生物質比を試験し、
− 37℃で2時間インキュベーション(15mlポリプロピレンチューブ、低速回転20rpm)し、
− 0.5時間、1時間および2時間目に試料採取し、
− UV/可視分光光度分析によって残留(すなわち未吸着)抗生物質量を決定した。
【0166】
結果を表1および2に示す。
【0167】
【表2】
【0168】
【表3】
【0169】
上記表に示されるように、大部分の被験抗生物質が、ヒトにおいて臨床的に関連すると推定することのできる比で活性炭上に著しく吸着できる。in vitroのデータは、ex vivoのデータとよく相関し、データが文献から入手可能な場合、便中に見出される残留抗生物質の量を活性炭製剤で容易に排除できることが分かる。
【0170】
実施例7:医薬製剤化
異なる医薬製剤化過程を試験することによって、活性炭の部位特異的デリバリー用の経口投与剤形の実現性を検討した。その目的は、炭の吸着特性をまだできる限り保ちながら下部消化管における活性炭の遅延放出に適するガレノス剤形を開発することであった。
【0171】
活性炭は、低密度、疎水性、湿潤性などのその物理化学的性質のせいで、製剤化が非常に大変な製品である。ヒト投与のための治療用量で、本発明に記載された目的の使用のために炭を製剤化する試みは、活性炭の非常に低い凝集性のせいで従来の直接圧縮を利用しては不可能であった。単純な湿式造粒および圧縮でさえも、乏しい吸着性を示す錠剤につながる。しかしながら、本発明者らは、非常に良好な安定性および崩壊性を誘起して、溶液中への活性炭の急速で効率的な分散が得られるデリバリーシステムにどうにか大量の活性炭を処方した。さらに、活性炭の吸着性は、記載された製剤で保たれている。
【0172】
下記表に、湿式造粒に続く押出球状化によって得られたペレットの一例を示す。
【0173】
【表4】
【0174】
これらのペレットは、本実施例にわたり使用された製剤のコアを形成する。
【0175】
次に、これらのペレットに例えばEudragit(登録商標)FS30DまたはEudragit(登録商標)L30D55(Evonik, Darmstadt, Germany)などの特異的pH依存性ポリマーコーティングをコーティングする。
【0176】
製剤化された活性炭および無配合活性炭が模擬結腸条件で様々な抗生物質を吸着する能力を吸着動態研究で研究した。
【0177】
このために、活性炭のコーティング済みペレットを最初に緩衝液(50mMリン酸ナトリウム緩衝液、80mM NaCl、pH7.5)中で37℃で少なくとも30分間脱製剤化した。無配合活性炭(NFAC)の懸濁液もこの緩衝液で調製した。次に、脱製剤化されたペレット(製剤)の懸濁液およびNFAC懸濁液の吸着能を、レボフロキサシン溶液(レボフロキサシン)を用いて試験した。
【0178】
図6に、一例としてNFACおよび脱製剤化されたペレット上へのレボフロキサシンのいくつかの吸着動態の比較を示す。これらの実験は、前実施例と同様に20%Eudragit FS30Dをコーティングしたペレットを用いて行った。
【0179】
3:1および10:1という二つの検討された比のNFAC対レボフロキサシンおよび脱製剤化されたペレット対レボフロキサシンを示す。レボフロキサシン溶液から作られた対照試料も、吸着動態の間に分析した。
【0180】
脱製剤化されたペレットおよびNFAC上のレボフロキサシンの完全吸着が、10:1の比では60分後に観察される。製剤上への吸着は、3:1の比でほぼ完全であり、NFAC上へは完全である。したがって活性炭の吸着性は、製剤化過程を経ても本質的に維持される。
【0181】
時間、温度および湿度の限られた影響を製剤の大量貯蔵条件で観察することができた。崩壊時間および1時間後のシプロフロキサシン吸着の測定によって決定されたように、大量貯蔵条件で、室温で9ヶ月後に優れた安定性が得られた。
【0182】
より正確には、保存されたペレットは、既知量のシプロフロキサシンを添加された模擬結腸液(50mMリン酸ナトリウム緩衝液、80mM NaCl、pH7.5)中で崩壊した。ペレットの崩壊動態をモニタリングした。ペレットが崩壊して活性炭を放出すると、溶液のシプロフロキサシン濃度が減少する。下の表4に示した結果は、異なる試料採取時間における液中のシプロフロキサシンの残留率を表す。これらの結果は、ペレットの崩壊性が大量貯蔵条件で9ヶ月間維持されることを証明している。
【0183】
【表5】
【0184】
実施例8:活性炭のin vitro放出プロファイルおよびシプロフロキサシンの吸着動態
炭製剤に伴う主な課題の一つは、最大の吸着効率を可能にする、液中への炭ペレットの崩壊プロファイルである。上述の製剤が、濃度50μg/mLのシプロフロキサシンを添加されたいくつかの模擬腸液を使用してBioDis溶出試験装置(USP III放出装置)で試験されている。この実験で、様々な消化管区間のpH、緩衝能および浸透圧を反映する組成の液中で表示時間だけ連続的にインキュベーションすることによって、約73mgのコーティング済みペレットをBioDisシステムで溶出させた。各液の試料を回収し、分析して残留シプロフロキサシン濃度を決定した。シプロフロキサシンは、製剤から放出された活性炭によってのみ吸着されたことから、シプロフロキサシンの吸着を製剤からの活性炭の放出の代用として取り扱った。
【0185】
模擬消化管液を下に説明する:
模擬胃液:34.2mM NaCl、pHをHClで1.6に調整。
模擬十二指腸および近位空腸液:19.1mMマレイン酸、70mM NaCl、31.6mM NaOH、pH=6.5
模擬中部および下部空腸液:25mM HEPES、121.6mM NaCl、pHを7.0に調整
模擬回腸液:18mM HEPES、132.1mM NaCl、pHを7.5に調整
模擬結腸液:18.7mMマレイン酸、83.7mM NaCl、25.6mM NaOH、pHを6.0に調整
【0186】
図7に示すように、コーティング実施例として、FS30Dでコーティングされたカラゲナンベースの炭製剤は、pH7.5に到達するまで炭の放出を示さなかった。次に、シプロフロキサシンの吸着は非常に急速で、炭の分散から半時間以内に完了した。
【0187】
実施例9:他の可能性のある製剤
抗生物質は、哺乳動物において異なる吸収プロファイルを有し、初期に吸収されるものもあれば、後期に吸収されるものもある。後者は、2〜4時間後にその最大血漿中濃度に到達する。抗生物質の正常な吸収過程に対する任意の影響を避けるために、より遅延した吸着剤のデリバリーを可能にする製剤を開発することができる。
【0188】
そのような遅延放出を達成するために、ペレット製剤を速すぎる崩壊から防止し、使用されるポリマーの種類に応じて崩壊を30分〜2時間遅延させるサブコートを、そのペレット製剤にコーティングした。
【0189】
複数のコーティング技法を用いて様々な製剤を実現した。下記表5に、コーティングの組み合わせのいくつかの例を示す。
【0190】
【表6】
【0191】
pH7.5の模擬回腸液中でこれらのペレットを用いて溶出試験を行い、当該液中でのペレットの分散動態を評価し、得られた遅延を比較した。回腸液に50μg/mLシプロフロキサシンを添加し、各試料採取時間に溶液中に残った残留シプロフロキサシンの量を定量し、シプロフロキサシンの吸着を活性炭放出の代用として採用した。
【0192】
消化管を通過するペレットの進行を模倣するために、上記のようにこれらのペレットを用いてBioDis試験も行った。これは、ペレットからの炭の遅延放出のより詳細な特徴づけを可能にした。
【0193】
図8〜10に、表5に記載された製剤のいくつかからの、シプロフロキサシンの吸着として測定された炭の放出を説明する。
【0194】
図8から分かるように、ペレットの最終重量の35%w/wに相当するL30D55/NE30Dポリマー混合物から作られた第1のコーティング(サブコート)は、シプロフロキサシンの遅延吸着を誘起し、外側FS30Dコートを有するように作られた製剤に比べて、炭が約30分だけ炭の遅延放出を示したことを意味する。
【0195】
図9から分かるように、Aqoatでコーティングされたペレットは、等量のFS30Dでコーティングされたペレットよりも約30分速い溶出を示した。シプロフロキサシンの吸着は、1時間以内に完了した。シェラックでコーティングされたペレットでは、フィルムについて遅延溶出が観察され、炭ペレットの崩壊は少なくとも2時間延長した。
【0196】
図10から分かるように、様々な厚さのエチルセルロースコーティングの効果をペレットの溶出に関して評価した。2%エチルセルロースにある中間コートは、20% FS30Dコーティングに比べて約40分〜1時間だけ有意に遅延した活性炭の放出を誘導した。
【0197】
そのような製剤は、吸着剤の遅延型延長放出を提供する上で関心が持たれる可能性がある。
【0198】
実施例10:活性炭上へのイリノテカンおよびSN−38のin vitro吸着動態
活性炭上へのイリノテカンおよびその活性代謝物SN−38の吸着動態をin vitroで決定した(それぞれ図11Aおよび11B)。
【0199】
活性炭がイリノテカン(初濃度200g/mL)を吸着する能力を、模擬回腸液(18mM HEPES、132.1mM NaCl、NaOHでpH7.5に調整)中で評価した。活性炭およびイリノテカンの各比率は、イリノテカンに対して3:1および10:1であった。試料を遠心分離し、濾過し、10倍希釈してから、分光光度計を使用してイリノテカンの吸光度を368nmで測定することによって、吸着していないイリノテカンの濃度を決定した。図11Aから分かるように、3:1の比の活性炭/イリノテカンでイリノテカンの半量が約12分で吸着した。完全な吸着は、10:1の比の活性炭/イリノテカンで約15分で達成された。
【0200】
図11Bに、活性炭がSN−38を吸着する能力を示す。SN−38を0.01M NaOH(pH12)に50μg/mLの濃度で溶解させた。遠心分離および濾過の後に、吸着していないSN−38を、分光光度計を使用してその411nmの吸光度によって検出した。図11Bから分かるように、SN38の吸着は、10:1の活性炭/SN−38の比で約30分で完了した。
【0201】
活性炭(NFAC)(図11C)および脱製剤化されたコーティング済みペレット(DCP)(20%のFS30Dコーティング)から放出された炭(図11D)上へのイリノテカンおよびその代謝物SN−38の吸着動態を子ブタ盲腸液中でex vivoで決定した。
【0202】
子ブタ盲腸液に250μg/mlイリノテカンおよび50μg/ml SN-38を添加し、37℃で2時間予備インキュベーションした。NFACまたはDCPを、1:1希釈した子ブタ盲腸液と共に37℃で2時間予備インキュベーションした。NFAC/イリノテカンの比は、10:1、50:1であり、NFAC/SN38の比は、10:1、50:1、100:1および250:1であり、DCP由来活性炭対イリノテカンおよびSN38の比は、10:1および50:1であった。
【0203】
これらの二つの予備インキュベーション混合物を混ぜ合わせた後に、表示時間のあいだ静かに撹拌しながら37℃でインキュベーションを実施した。試料を回収し、遠心分離し、上清を濾過し、イリノテカンおよびSN38の存在をHPLCにより分析した。
【0204】
実施例11:抗生物質に対する細菌耐性の出現の減少に果たす、放出ターゲティング活性炭のin vivo性能
抗生物質処置が行われた間に放出ターゲティング活性炭(活性炭のコーティング済みペレット)が細菌耐性の出現を減少させる能力の概念証明(POC)試験を、生後4週間で離乳した子ブタにおいて行い、その試験をその2週間後の試験に含めた。
【0205】
この試験は、炭遅延放出製剤が、
− 便中抗生物質濃度を減少させ、
− 消化管フローラ中の細菌耐性の出現を防止し、
− 正常な抗生物質吸収過程を維持する
効力を実証するために、微生物およびPK/PDデータを評価するための、生活相(in-life phase)については非盲検であるが処置については盲検化された無作為化比較試験であった。
【0206】
被検抗生物質は、フルオロキノロンであるシプロフロキサシンであり、このin vivo POCを実施するためにそれを1.5mg/kg/日の用量で経口投与した。この種の試験は、Da Volterraによって考慮された任意の抗生物質に適用可能であろう。便中抗生物質濃度の減少および細菌耐性の出現の評価に使用された方法は、Da Volterraによって開発されたものである。実験をGLP条件下で行った。同じバッチからの子ブタは、誕生以来抗生物質で処置されたことはなかった。
【0207】
実験計画を図12に示す。
【0208】
この研究の主要評価項目は以下の通りであった:
薬物動態の基準:
− 1日目から9日目の間の便中シプロフロキサシン濃度の曲線下面積(AUC)の自然対数(logAUCD1−D9)の比較により、コーティング済みペレット存在下または不在下の便中シプロフロキサシン濃度を比較する。
SASソフトウェアを使用した台形アプローチによって1日目から9日目の間のAUCを計算し、記述統計解析し、t検定によって群間比較した(logAUCD1−D9に関して)。
− 以下を比較することによって、コーティング済みペレットの存在下または不在下の血漿中シプロフロキサシン濃度を比較する
○ 0時間と最終観察値に対応する時間Tlastの間の血漿中シプロフロキサシン濃度の曲線下面積(AUC)の自然対数(logAUC)(AUC0−lastの選択は、AUC0−∞についての推定値に対する比率が非常に高いことによって説明することができる)
○ 血漿中最高シプロフロキサシン濃度(Cmax)(logCmax)の自然対数
【0209】
ノンコンパートメントアプローチ(NCA)、線形/対数台形法によって、WinNonLinソフトウェア(バージョン5.2)を用いてCmaxおよびAUCを算出し、これを行った。0時間の血漿中シプロフロキサシン濃度を0ng/mLと見なした。次に、Log AUCおよびlogCmaxを計算し、記述統計解析した。
【0210】
薬力学の基準:
−1/1日目に対して基準化した、(処置)1日〜6日目のシプロフロキサシンおよびナリジクス酸に耐性のEnterobacteriaceae数のAUCを比較することによって、コーティング済みペレットの存在下または不在下でのシプロフロキサシンによる処置後の耐性細菌数を比較する。細菌数は、1/10希釈した便100μlをDrigaski寒天液上に蒔くことによって得られた。シプロフロキサシンおよびナリジクス酸に耐性のEnberobacteriaceae数は、希釈した便を、2ml/lシプロフロキサシンおよび20ml/lナリジクス酸を有するDrigaski寒天液上に蒔くことによって得られた。耐性Enterobacteriaceae数の検出限界は、1.00×102CFU/gであった。ベースラインは、処置前の平均耐性細菌数に関して計算し、曲線下面積は、ベースラインとシプロフロキサシン耐性Enterobacteriaceae数のlog10の曲線の間の面積である。
【0211】
結果
シプロフロキサシンに付随するコーティング済みペレットは、子ブタにおけるシプロフロキサシンの便中残留濃度を減少することが可能であった。その減少は統計的に有意であった。便中シプロフロキサシン濃度の結果の比較を図13に示し、表6に要約する。
【0212】
【表7】
【0213】
群2(シプロフロキサシン/プラセボ)と群3(シプロフロキサシン/コーティング済みペレット)の間のAUCD1−D9の差は、比較のt検定により統計的に有意であった(p値<0.0001)。
【0214】
群1(プラセボ/プラセボ)と群2(シプロフロキサシン/プラセボ)の間、および群1(プラセボ/プラセボ)と群3(シプロフロキサシン/Dav−132)の間にも有意差があった(どちらもp値<0.0001)。
【0215】
シプロフロキサシン投与に付随するコーティング済みペレットの投与は、血漿中シプロフロキサシン濃度に有意な変化を招かなかった。血漿中シプロフロキサシン濃度に関する結果を図14に示し、それらを表7に要約する。
【0216】
【表8】
【0217】
結果から、logAUCおよびlogCmaxに関してこれら2群の間に有意差がないことが示される(それぞれt検定のp値=0.28および0.51)。シプロフロキサシンと一緒にコーティング済みペレットを投与することで、便中シプロフロキサシンの残留濃度が原因で細菌耐性の低下が生じた(図15参照)。
【0218】
便中シプロフロキサシン耐性Enterobacteriaceae数は、子ブタをシプロフロキサシンで処置すると有意に増加する。シプロフロキサシンと共に投与された本発明による炭製剤は、表8に示すように細菌耐性の出現を有意に減少させた。対照群(プラセボ/プラセボ)は、耐性の出現を示さなかった。
【0219】
【表9】
【0220】
結論
結果から、本発明による製剤は:
− 子ブタによる耐容性が良好であり、
− 経口シプロフロキサシンと一緒に5日間投与後に便中シプロフロキサシン濃度を有意に低下させることが可能で、
− 抗生物質処置に対する細菌耐性の出現を有意に減少させることが可能で、
− 正常なシプロフロキサシン吸収過程への妨害がないことを示すことが可能な
ことが示された。
【0221】
実施例12:活性炭上への膵臓酵素のin vitro吸着動態
膵臓酵素を含有する医薬であるCreonの活性炭上への吸着動態をin vitroで決定した(図16)。活性炭上への酵素の吸着度は、タンパク質定量アッセイ(Bradford法)を用いて評価した。活性炭が膵臓酵素(1mg/mLのCreon)を吸着する能力を、緩衝液(50mMリン酸ナトリウム緩衝液、80mM NaCl、pH7.5に調整)中で評価した。活性炭とCreonのそれぞれの比率は、9:1、15:1および25:1であった。試料を遠心分離し、上清を濾過し、残留タンパク質量は、Bradfordタンパク質アッセイを用いて定量した。1mg/ml Creon溶液、および3mg/ml活性炭懸濁液をそれぞれ陽性対照および陰性対照として使用した。図16から分かるように、酵素の完全な吸着が、15:1の比では2時間で、25:1の比では1時間で得られた。
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳動物の下部腸管への吸着剤の遅延および制御デリバリー用の製剤に関する。本発明は、さらに、この製剤の使用、特に薬学的使用に関する。
【0002】
発明の背景
抗生物質が経口または非経口のいずれかで投与された場合、投与された用量のかなりの割合が活性型で下部回腸(late ileum)または結腸に到達し、結腸中に存在する細菌集団と密接に接触するようになる。この憂慮すべき結果は、何年にもわたり知られており、2009年9月に公表された「The bacterial challenge: time to react, A call to narrow the gap between multidrug-resistant bacteria in the EU and the development of new antibacterial agents(細菌の攻撃:行動を起こす時、EUにおける多剤耐性細菌と新しい抗細菌剤開発の間のギャップを縮めるための呼びかけ)」と呼ばれるECDC/EMEA合同技術レポートの主題を構成している。残留抗生物質は、結腸中に存在する細菌に選択圧をかけ、抗生物質耐性細菌の出現および発生を引き起こす。様々な抗生物質に対する耐性の遺伝的決定因子は、多くの場合にプラスミドおよびトランスポゾンなどの可動性遺伝因子と物理的に連結しているので、単一の抗生物質を用いた処置でいくつかの抗生物質耐性遺伝子の共存が選択されることが多く、抗生物質多重耐性がどのようにして非常に急速に出現できるかを説明している。
【0003】
この過程の結果として、抗生物質処置を受けた患者または動物に、抗生物質耐性細菌が非常に迅速および強力に定着するようになる。これは、耐性細菌によるさらなる合併感染症、ならびに他の細菌および最終的には環境への耐性の伝播を招くおそれがある。
【0004】
そのような耐性細菌の選択および伝播が地域社会および病院の両方における細菌の抗生物質耐性の伝播を顕著に増加させる主な要因であることが、今や広く受け入れられている。細菌耐性のレベルは、現在極めて高く、毎年増加し続け、世界的に公衆衛生上の大問題になっているが、そのことでヒトまたは動物のいずれかに利用可能な抗生物質を用いて処置することが非常に困難な感染症の大発生につながるおそれがあろう。
【0005】
抗生物質耐性細菌を産生することに加えて、活性型で結腸に到達する抗生物質は、また、共生的フローラの組成を顕著に変化させ、感受性細菌種を除去する。それらの細菌の中で、正常な被験体および動物の腸に大きな生理学的役割を果たすことが知られている感受性の嫌気性細菌が除去されるおそれがある。例えばそれらの細菌は、Clostridium difficileおよび/もしくはCandida spなどの潜在的に病原性の外来微生物ならびに/またはバンコマイシン耐性腸球菌などの多剤耐性外来細菌による定着を防止するように作用する。したがって、抗生物質処置後の下痢もしくはより重症型の偽膜性大腸炎、特に女性における性器カンジダ感染症、または入院患者、特に集中治療を受けている患者における抗生物質耐性全身感染症などの病的徴候および症状の出現につながるおそれがある抗生物質の有害作用を防止するためには、そのような有用細菌の除去を防止することが不可欠である。
【0006】
抗生物質処置のそのような有害作用を防止するための一方法は、盲腸および結腸に達する残留抗生物質を排除することであり、近年、この目標を達成する二つの異なるアプローチがあった。一つは、抗生物質を特異的に分解する酵素の消化管デリバリーであった(米国特許出願公開第20050249716号に記載されたものなど)。または、部位特異的腸デリバリー用の吸着剤製剤が、国際公開公報第2006/122835号および国際公開公報第2007/132022号の出願に提案されている。その吸着剤は、抗生物質が盲腸および結腸中の感受性細菌に影響する前にその抗生物質を隔離することによって作用する。抗生物質特異酵素に基づく前記アプローチに比べて、このアプローチで、除去されうる抗生物質のスペクトルを拡大することが可能になるであろう。吸着剤、特に活性炭は、低い密度、疎水性、濡れ性などのその物理化学的性質が原因で、製剤化が非常に大変な製品である。経口用量の部位特異的腸デリバリー用の活性炭を製剤化する試みは、活性炭の非常に低い凝集性が原因で、従来の直接圧縮を用いると不可能である。単純な湿式造粒および圧縮でさえも、低い吸着性および低い崩壊プロファイルを示す錠剤につながる。これらの問題を克服するために、酵素に基づくデリバリーシステムが計画されている。これらのシステムは、吸着剤を封入しているポリマーに結腸酵素が作用する結果として、それらのシステムが分解し、その後結腸中にそれらのシステムの内容物を放出することに基づく。代表的なシステムは、共生的フローラの細菌によって多くの哺乳動物の結腸中で産生されるペクチン分解酵素によって特異的に分解されるペクチンビーズを組み込んでいる(国際公開公報第2006/122835号に記載されているシステムなど)。しかしながら、このシステムは、低い吸着剤含量およびペクチンビーズ生産の大規模化が困難であるなどの制約を示す。また、結腸中に存在するペクチン分解酵素の量の変動は、吸着剤のデリバリーにおける変動につながった。優れた収率および吸着剤含量を有する錠剤などの単回投与剤形または多分散ペレット製剤のいずれかの固体剤形も提案された(国際公開公報第2007/132022号)。しかしながら、たとえ製剤を直接的に製造することができるとしても、その分解性および放出された吸着剤の吸着効率は、より満足な方法で改善することができよう。
【0007】
下部消化管における吸着剤の遅延放出に適しているが、それでも吸着剤の吸着特性を可能な限り保つ製剤を開発することが有利であろう。また、それ以上抗生物質が吸収されない消化管の場所および時間で吸着剤を放出する、改善された吸着剤放出プロファイルを有する製剤を製造することも有利であろう。このことで、経口経路によって同時投与された場合の吸着剤と、抗生物質または任意の他の医薬製品の正常な吸収過程との任意の相互作用が防止されるであろう。
【0008】
そのような製剤は、腸管から残留抗生物質および/またはそれらの活性代謝物を排除する一方で、多数の抗生物質と共に同時投与でき、下痢、腹痛、および細菌の抗生物質耐性などの望まれない抗生物質関連副作用を軽減できる点で有利であろう。下部消化管、特に下部回腸、盲腸、または結腸における吸着剤の特異的放出を提供する製剤を有することも有利であろう。
【0009】
そのような製剤は、また、下部回腸、盲腸および結腸における医薬品またはその代謝物の副作用を軽減または除去する点で有利であろう。そのような医薬品は、例えば、病状を処置するために投与されるが、下部消化管に到達すると、具体的には下部回腸、盲腸、または結腸において、副作用を有する薬剤である。そのような医薬品の代表的で非限定的な例には、イリノテカンおよびその代謝物SN−38、ジアセレイン、パンクレリパーゼ(Pancrease、Creon、Zenpepなど)、ロフルミラストもしくはシロミラストなどの慢性閉塞性肺疾患の処置に使用されるホスホジエステラーゼ4阻害剤、またはコルヒチンなどの有糸分裂阻害性抗炎症薬が挙げられる。
【0010】
さらに、そのような製剤は、いくつかの病状の発生の一因となる、下部消化管中の物質蓄積を特徴とする病状の処置に有利であろう。例えばその製剤は、非限定的に肝性脳症、過敏性腸症候群、慢性腎疾患、C. difficile関連下痢または抗生物質関連下痢などの状態の処置に有用なことがある。本明細書に開示された製剤によって吸着されうる代表的な物質には、非限定的にアンモニア、インドール、終末糖化産物(AGE)およびある種の細菌毒素が挙げられる。
【0011】
さらに一般に、本発明の製剤は、下部消化管、具体的には下部回腸、盲腸、または結腸におけるある種の物質の存在または過剰量での存在によって引き起こされ、維持され、かつ/または強化される、病的または病的ではない状態の処置に使用することができる。
【0012】
本発明は、そのような製剤ならびにその調製方法および使用方法を提供する。
【0013】
発明の概要
下部回腸、盲腸または結腸に吸着剤をデリバリーするために有用な製剤が提供される。一態様では、吸着剤とカラゲナンの混合物を、好ましくはペレットの形態で含む組成物が提供される。この態様の一局面では、吸着剤は活性炭であり、この態様の別の局面では、カラゲナンはκ−カラゲナンである。カラゲナンの量は、典型的には混合物の5重量%から25重量%の間、より好ましくは10重量%から20重量%の間の範囲内である。
【0014】
混合物を含む組成物は、コアを形成するために使用することができる。一態様では、吸着剤が下部腸管、すなわち下部回腸、盲腸および/または結腸において製剤から放出されるように、コアはコーティング層を備える。腸の所望の部分で放出可能にする代表的なコーティングには、pH依存性腸溶性ポリマー、結腸環境中で微生物の作用および/またはそこで見られる還元環境によって特異的に分解する材料(例えばアゾポリマーおよびジスルフィドポリマー、多糖、特にアミロースまたはペクチン(例えば、ペクチン酸カルシウムまたはペクチン酸亜鉛などの二価陽イオンと架橋結合したペクチン)、コンドロイチン硫酸およびグアーガム)が挙げられる。代表的なpH依存性腸溶性ポリマーには、セルロースアセテートトリメリテート(cellulose acetate trimellitate)(CAT)、セルロースアセテートフタレート(CAP)、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルおよびメタクリル酸ベースの陰イオン性コポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS)、メタクリル酸−アクリル酸エチルコポリマー、メタクリル酸−アクリル酸エチルコポリマー、メタクリル酸−メタクリル酸メチルコポリマー(1:1の比)、メタクリル酸−メタクリル酸メチルコポリマー(1:2の比)、ポリビニルアセテートフタレート(PVAP)およびシェラック樹脂が挙げられる。特に好ましいポリマーには、シェラック、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルおよびメタクリル酸ベースの陰イオン性コポリマー、ならびにメタクリル酸−メタクリル酸メチルコポリマー(1:2の比)が挙げられる。理想的には、ポリマーは、6.0以上、好ましくは6.5以上のpHで溶解する。
【0015】
別の態様では、コアと外部pH依存性層の間にさらなるコーティングが提供される。中間コーティングは、pH依存性ポリマー、pH非依存性水溶性ポリマー、pH非依存性不溶性ポリマー、およびその混合物を含めた多様なポリマーから形成することができる。
【0016】
代表的なpH依存性ポリマーには、シェラック型ポリマー、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルおよびメタクリル酸ベースの陰イオン性コポリマー、メタクリル酸−アクリル酸エチルコポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、ならびにヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS)が挙げられる。
【0017】
代表的なpH非依存性水溶性ポリマーには、PVPまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)もしくはヒドロキシプロピルセルロース(HPC)などの高分子量セルロースポリマーが挙げられる。
【0018】
代表的なpH非依存性不溶性ポリマーには、エチルセルロースポリマーまたはアクリル酸エチル−メタクリル酸メチルコポリマーが挙げられる。
【0019】
この態様の一局面では、pH非依存的に溶解するポリマー層には、ヒドロキシプロピルセルロースまたはエチルセルロースから成る群より選択される少なくとも1種のセルロース誘導体が挙げられる。この態様の別の局面では、pH非依存的に溶解するポリマー層は、メタクリル酸−アクリル酸エチルコポリマーとアクリル酸エチル−メタクリル酸メチルコポリマーの1:9〜9:1、好ましくは2:8〜3:7の混合物から作られる。
【0020】
その製剤は、腸、特に結腸における医薬品の副作用を除去または軽減するために使用することができる。それは、特に、障害のための処置として投与されるが、下部回腸、盲腸または結腸に到達すると副作用を有する医薬品の副作用を除去または軽減することを目的とする。例えば、その製剤は、抗生剤の抗生物質関連有害作用を除去もしくは軽減するか、下痢を排除するか、または抗生物質耐性の出現を除去することができる。その製剤は、また、以下の詳細な説明に述べられる医薬品などであるが、それだけではない多様な医薬品を除去することができる。その製剤は、抗生物質または別の医薬品と同時に投与することができる。
【0021】
その製剤は、また、マイコトキシン、エンドトキシンもしくはエンテロトキシンなどの細菌もしくは真菌毒素、または腸および/もしくは結腸中でClostridium difficileによって産生される毒素の作用を除去または軽減することができる。
【0022】
その製剤は、また、特にペットまたは農用動物における鼓腸、便臭、口臭または食物不耐性を軽減することができる。
【0023】
その製剤を調製する方法もまた開示される。
【0024】
以下の本発明の詳細な説明の中でさらなる目的および適用が明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】模擬結腸液中のNFAC(無配合活性炭)によるレボフロキサシンの吸着動態を示す図である。
【図2】シプロフロキサシンについての微生物アッセイの検量線作成:Log10シプロフロキサシン濃度と成長阻止直径の間の関係を示す図である。
【図3】微生物アッセイによって測定された、活性炭上へのシプロフロキサシンの吸着を示す図である。
【図4】子ブタ盲腸液中のNFACおよびDCP(脱製剤化された(deformulated)コーティング済みペレット)によるレボフロキサシンの吸着動態を示す図である。
【図5A】様々なpHでの活性炭からのレボフロキサシンの脱着を示す図である。脱着実験は、それぞれpH4.0(A)、7.0(B)および10.0(C)で行った。3回の測定の平均±SDを各データ点について示す。
【図5B】様々なpHでの活性炭からのレボフロキサシンの脱着を示す図である。脱着実験は、それぞれpH4.0(A)、7.0(B)および10.0(C)で行った。3回の測定の平均±SDを各データ点について示す。
【図5C】様々なpHでの活性炭からのレボフロキサシンの脱着を示す図である。脱着実験は、それぞれpH4.0(A)、7.0(B)および10.0(C)で行った。3回の測定の平均±SDを各データ点について示す。
【図6】二つの活性炭/レボフロキサシンの比におけるNFAC上および製剤化された炭上へのレボフロキサシンの吸着動態のin vitro比較を示す図である。
【図7】FS30Dをコーティングされたペレットから放出された炭上へのシプロフロキサシン吸着のBioDisプロファイルを示す図である。
【図8】L30D55/NE30DサブコートおよびFS30Dコーティングを有するペレットから放出された炭上に吸着されたシプロフロキサシンのBioDisプロファイルに関するコーティングの厚さの比較を示す図である。
【図9】(シプロフロキサシン吸着によって測定された)模擬回腸液(pH7.5)中における異なる種類のペレットの溶出プロファイルに関するFS30D、Aqoatまたはシェラックコーティングの比較を示す図である。
【図10】(シプロフロキサシン吸着によって測定された)模擬回腸液(pH7.5)中におけるペレットの溶出プロファイルに関するエチルセルロースコーティングの厚さの比較を示す図である。
【図11A】模擬回腸液(pH7.5)中における活性炭上へのイリノテカンの吸着動態を示す図である。
【図11B】1mM NaOH(pH12)中における活性炭上へのSN38の吸着動態を示す図である。
【図11C】SN38とイリノテカンの混合物を加えた子ブタ盲腸液中における活性炭上へのイリノテカンの吸着動態を示す図である。
【図11D】SN38とイリノテカンの混合物を加えた子ブタ盲腸液中における脱製剤化されたコーティング済みペレット上へのSN38の吸着動態を示す図である。
【図12】抗生物質に対する細菌耐性出現の低下に果たす放出ターゲティング活性炭のin vivo性能を示す図である − 実験計画。
【図13】群毎(n1=6、n2=11、n3=12)の便中シプロフロキサシン濃度平均値の変化を示す図である。このグラフにおいて、本発明者らは、また、各群について[平均−1.96×SEM;平均+1.96×SEM](式中、SEMは平均の標準誤差である)で定義される95%信頼区間を表示する。
【図14】群毎(n2=n3=12)の血漿中シプロフロキサシン濃度(ng/mL)の平均値の変化を示す図である。このグラフにおいて、本発明者らは、また、各群について[平均−1.96×SEM;平均+1.96×SEM](式中、SEMは平均の標準誤差である)で定義される95%信頼区間を表示する。
【図15】耐性細菌数:1日目から8日目までのベースラインから補正されたシプロフロキサシン耐性細菌数のlog10の平均曲線とX=0軸の間の網がけ面積によって表される、補正された個別のAUCciproD1−D8の平均を処置群毎に示す図である(n1=6、n2=11、n3=12)。
【図16】緩衝液(pH7.5)中の活性炭上へのCreonの吸着動態を示す図である。
【0026】
詳細な説明
本発明は、カラゲナンおよび吸着剤を包含する製剤に関する。その製剤は、吸着剤の経口投与ならびに下部腸管、すなわち下部回腸、盲腸および/または結腸における該吸着剤のデリバリーに適する。一態様では、カラゲナンおよび吸着剤は、混合物として存在し、その混合物を圧縮してコアを形成することができる(本明細書においてそのコアをさらに粒子またはペレットと呼ぶ)。
【0027】
コアは、一つまたは複数のコーティング層でコーティングすることができ、コーティング済みまたはコーティングされていないコアを使用して、錠剤、カプセル剤、丸剤などの薬物デリバリービヒクルを形成することができる。
【0028】
本発明の製剤は、腸管の所望の部分に、有利には下部回腸、盲腸または結腸において吸着剤をデリバリーするために有用な固体剤形である。外部および/または中間コーティングは、特に、本発明による製剤に加えて治療剤(例えば抗生物質)が経口投与されたときに、ホスト生物による該治療剤の正常な吸収過程に吸着剤が及ぼす影響を最小限にする(好ましくは完全に阻止する)ために提供される。加えて、またはその代わりに、そのように製剤化された吸着剤は、消化管中に存在する物質を小腸終末部までずっと非特異的に吸着しないようにされる。これは、吸着剤の作用が必要とされる腸の特定部分における不飽和吸着剤、完全またはほぼ完全に効率的な吸着剤の放出を招く。
【0029】
製剤を調製する方法、およびその製剤を使用した処置方法も開示される。製剤の個々の成分を、下記に詳細に説明する。
【0030】
抗生物質
「抗生物質」という用語は、細菌、真菌、または原生動物などの微生物を死滅させるか、またはその成長を阻害する物質を意味する。本発明により吸着されうる、代表的で非限定的な抗生物質には、アモキシシリン、アンピシリン、ピペラシリン、セファレキシン、セフィキシム、セフタジジム、セフロキシム、セフトリアキソン、セフォタキシム、セフチオフル、セフジニル、セフポドキシム、セフピロム、セフキノム、セフェピム、セフトビプロール、セフタロリム(Ceftarolime)、セフチオフル、イミペネム、エルタペネム、ドリペネム、メロペネムなどのβ−ラクタム系、および単独または他のβ−ラクタム系抗生物質と組み合わせて投与されるクラブラネート、スルバクタムまたはタゾバクタムなどのβ−ラクタマーゼ阻害剤;クロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、テトラサイクリン、ドキシサイクリンまたはミノサイクリンなどのテトラサイクリン系;タイロシン、エリスロマイシン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ロキシスロマイシン、テリスロマイシン、ジョサマイシン、オレアンドマイシン、スピラマイシン、クリンダマイシン、リンコマイシン、キヌプリスチンまたはダルホプリスチンなどのマクロライド系;ナリジクス酸、シプロフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、レボフロキサシン、モキシフロキサシン、エンロフロキサシン、サラフロキサシンまたはマルボフロキサシンなどのフルオロキノロン系;スルファメトキサゾール、スルファジアジンまたはスルファチアゾールなどのスルホンアミド系;ジヒドロ葉酸還元酵素阻害剤トリメトプリム;オキサゾロジノン(oxazolodinone)系抗生物質リネゾリド;またはフロルフェニコール、チアムリンもしくはチゲサイクリンなどの他の抗生物質が挙げられる。
【0031】
吸着剤
適切な吸着剤の例には、活性炭、ベントナイト、カオリン、モンモリロナイト、アタパルジャイト、ハロサイト、ラポナイトなどの粘土、コロイド状シリカ(例えばLudox(登録商標)AS−40)、メソ多孔性シリカ(MCM41)、フュームシリカ、ゼオライトなどのシリカ、タルク、コレステラミン(cholesteramine)など、スルホン化ポリスチレンなど、モノスルホン化およびポリスルホン化樹脂、ならびにBACTEC(登録商標)樹脂などの細菌検査に使用される樹脂などの、関心が持たれる任意の他の樹脂が挙げられる。これらの吸着剤の中で、活性炭USP(Merck, Franceまたは他の販売元)、カオリン(VWR, France)、アタパルジャイト(Lavollee, France)、ベントナイト(Acros Organics, France)、タルクUSP(VWR, France)などの医薬品等級の吸着剤を使用することが好ましいことがある。
【0032】
単回投与剤形を製造するための吸着剤の量は、処置されるホストならびに抗生物質(1種または複数)に対する吸着剤の全体的な能力および選択性に応じて変化することがある。単回投与剤形を製造するための吸着剤の量は、一般に所望の効果を生じる化合物の量である。所望の効果は、治療効果のことがあり、その製剤が投与されない場合に比べた、例えば消化管終末部、特に結腸において有害作用を引き起こす抗生物質、その代謝物、細菌毒素、または他の化合物の量における治療的に有意な減少のことがある。
【0033】
吸着剤の量は、ペレット全体の約1重量%〜約99重量%、好ましくはコア製剤の約50重量%〜約95重量%、最も好ましくは約65重量%〜約95重量%、特に約80重量%〜約95重量%の範囲である。
【0034】
特定の一態様では、活性炭が使用される。この態様の一局面では、活性炭は、優先的には1500m2/gよりも大きい、優先的には1600m2/gよりも大きい、最良には1800m2/gよりも大きい比表面積を有する。
【0035】
カラゲナン
カラゲナンは、海産性紅藻から抽出される天然起源の直鎖硫酸化多糖のファミリーである。それは、硫酸化および非硫酸化されたガラクトースユニットおよび3,6−アンヒドロガラクトース(3,6−AG)ユニットの繰り返しから作られた高分子量多糖である。それらのユニットは、交互のα1−3グリコシド結合およびβ1−4グリコシド結合によって結合している。ガラクトースユニット上のエステル硫酸基の数および位置が異なる、三つの基本型のカラゲナン、すなわちκ、ι、およびλ−カラゲナンが市販されている。
【0036】
一態様では、カラゲナンは、κ、ιおよびλ−カラゲナン、ならびにその混合物より選択することができる。この態様の一局面では、吸着剤は、κ−カラゲナンと混合される。特定の一態様では、混合物は、活性炭およびκ−カラゲナンを含む。
【0037】
好ましくは、カラゲナンの量は、吸着剤とカラゲナンの混合物の約15重量%から約25重量%の間、より好ましくは約10重量%から約20重量%の間である。本発明の特定の一態様によれば、カラゲナンの量は、混合物の約15重量%である。例えば、その混合物は、混合物全体に対して85重量%の吸着剤および15重量%のカラゲナンを含有しうる。そのような相当な量の吸着剤をカラゲナンと共に製剤化する可能性は予想外であり、消化管の所望の部分における大量の吸着剤、好ましくは活性炭のデリバリーを可能にする。
【0038】
本発明の特定の一態様によれば、活性炭とカラゲナンの混合物は、上記重量比で提供される。
【0039】
コア(またはペレット)は、技術者に公知の任意の適切な手段によって製造することができる。特に、該コアを製造するために造粒技法が適応される。例えばコアは、吸着剤とカラゲナンを上記比で混合し、水などの溶媒を添加して湿式造粒に続いて押出球状化またはワンポットペレット化に取りかかることによって得ることができる。残った水があれば、例えば従来技法を用いて、得られたペレットを乾燥することによって排除することができる。
【0040】
一態様では、本発明のコアまたはペレットは、250〜3000μm、特に500〜3000μmの範囲の重量平均粒子サイズを有する。いくつかの代表的なサイズ範囲が好ましいことがある。例えばコアサイズは、500から1000μmの間、または800から1600μmの間に含まれることがある。本発明に関連して、重量平均粒子サイズは、サイズが異なる画分に篩過し、その画分を秤量し、その重量から平均粒子サイズを計算することによって決定される。その方法は、本発明の分野の技術者に周知である。
【0041】
吸着剤、特に活性炭とカラゲナンの混合物が:
− 押出工程の間に大量輸送を可能にする適切な流動特性、
− 物質に対して限られた固着性を有する自己滑沢性、
− 押出物の形状を保つために十分な剛性、
− 押出物の堅さおよび押出物のスムーズな切断を可能にする十分な脆性、ならびに
− 良好な球状化を可能にする最小限の可塑性
などの良好な製剤性を有することが予想外に見出された。
【0042】
これらの有利な性質のどれも、先行技術に報告されていない。
【0043】
したがって本発明は、また、吸着剤、好ましくは活性炭とカラゲナン(特にκ−カラゲナン)の混合物を含む組成物に関する。さらなる一態様では、該混合物は、本出願においてペレットとも呼ばれる粒子(例えば押出球状化工程によって入手可能な密な混合物)の形態である。
【0044】
当業者は、コア組成物が、さらに抗粘着剤、結合剤、増量剤、希釈剤、着香料、着色料、滑沢剤、流動促進剤、保存料、収着剤および甘味料などの従来の賦形剤を包含することがあることを認識している。そのような賦形剤の量は、変化することがあるが、典型的にはペレットの0.1〜50重量%の範囲内である。もちろん、当業者は、添加された賦形剤がカラゲナンと吸着剤の混合物の有利な性質にマイナスの影響を及ぼさないようにこれらの量を適応させるであろう。
【0045】
外部腸溶コーティング
腸管の所望の部分で薬物が製剤から放出されるように、製剤のコアにコーティングを層状に重ねることができる。腸管の異なる部分に薬剤をデリバリーするために、当業者にいくつかのシステムが知られている。可能な、異なるシステムの包括的な総説は、Pinto et al., Int J Pharm. 2010 Aug 16;395(1-2):44-52に提供されている。
【0046】
本発明の特定の一態様では、下部腸管、すなわち下部回腸、盲腸および/または結腸において薬物が製剤から放出されるように、製剤のコアにコーティングを層状に重ねることができる。製剤が腸管の所望の部分、すなわち下部回腸、盲腸または結腸中に入るまで吸着剤を放出しないことを確実にする任意のコーティングを使用することができる。コーティングは、pH感受性、酸化還元感受性または特定の酵素もしくは細菌に感受性のコーティングより選択することができる。腸溶コーティングは、当業者に周知である(例えば、Chourasia MK and Jain SK, "Pharmaceutical approaches to colon targeted drug delivery systems", J Pharm PharmaceutSci 6(1): 33-66, 2003参照)。
【0047】
好ましいコーティング物質は、pH感受性の物質、すなわちpH依存性腸溶性ポリマーである。本出願の以下の部分から明らかなように、pH依存性腸溶性ポリマーの選択は、処置のレシピエント(本明細書において「処置されるホスト」とも呼ばれる)になる哺乳動物の消化管のpHプロファイルを考慮することによって行うことができる。
【0048】
「腸溶性ポリマー」という用語は、安定で、胃内および上部消化管で溶解しないが、消化管の所望の部分に達すると容易に溶解して、その中に含まれる活性物質を放出するポリマーを意味する。pH依存性腸溶性ポリマーの溶解性は、消化管全長にわたり見出される酸性またはアルカリ性の状態に依存する。
【0049】
特定の一態様では、pH依存性腸溶性ポリマーは、セルロースアセテートトリメリテート(CAT)、Aquateric(登録商標)などのセルロースアセテートフタレート(CAP)、Eudragit(登録商標)FS30Dなどのアクリル酸メチル、メタクリル酸メチルおよびメタクリル酸ベースの陰イオン性コポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、Aqoat(登録商標)などのヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS)LF、LG、MF、MGまたはHFグレード、Eudragit(登録商標)L100-55などのメタクリル酸−アクリル酸エチルコポリマー、Eudragit(登録商標)L30D-55などのメタクリル酸−アクリル酸エチルコポリマー、Eudragit(登録商標)L-100およびEudragit(登録商標)L12,5などのメタクリル酸−メタクリル酸メチルコポリマー(1:1の比)、Eudragit(登録商標)S-100およびEudragit(登録商標)S12,5などのメタクリル酸−メタクリル酸メチルコポリマー(1:2の比)、Sureteric(登録商標)およびOpadry(登録商標)などのポリビニルアセテートフタレート(PVAP)、ならびにSSB(登録商標)Aquagoldなどのシェラック樹脂より選択することができる。
【0050】
好ましい一態様では、外層に使用されるpH依存性腸溶性ポリマーは、6.0以上のpHで溶解する。なおより好ましくは、それは、7.0以上のpHで溶解する。これに関連して、ポリマーは、特に、SSB(登録商標)Aquagoldなどのシェラック、Eudragit(登録商標)FS30Dなどのアクリル酸メチル、メタクリル酸メチルおよびメタクリル酸ベースの陰イオン性コポリマー、Eudragit(登録商標)S-100およびEudragit(登録商標)S12,5などのメタクリル酸−メタクリル酸メチルコポリマー(1:2の比)、Aqoat(登録商標)AS-MF、MGもしくはHFグレードなどのHPMCAS、またはHP-55グレードなどのヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)から成る群より選択することができる。
【0051】
上に言及したEudragit(登録商標)コポリマーは、Evonikによって販売されている。それらの組成は、技術者に公知であって、特に、米国特許出願公開第2008/0206350号(米国特許出願第12/034,943号)から見出すことができる。
【0052】
pH依存性腸溶性ポリマーは、第一に、大部分の哺乳動物の消化管(GIT)上部から見出される酸性pHに耐える能力について、第二に、下部腸管、すなわち優先的に下部回腸、盲腸または結腸に活性薬剤をデリバリーする必要性を満たす能力について選択される。
【0053】
当業者は、多数の哺乳動物においてGITの生理機能がpH、長さ、および通過時間の全てに関して変動しうることを分かっている。下記の表1に、いくつかの哺乳動物の様々な生理学的特徴を表す。
【0054】
【表1】
【0055】
表1から、大部分の腸溶性ポリマーが上部小腸において溶解し始め、外部コーティングの厚さのおかげで、溶出が達成される時間までに吸着剤が下部腸管中に放出されることが分かる。
【0056】
コーティングの厚さは、腸管の所望の部分への吸着剤の放出を微調整するように適応させることができる。例えば、腸溶性ポリマー層は、製剤全体の重量の10重量%〜40重量%に相当することがある。好ましい一態様では、腸溶層の量は、製剤の合計重量の少なくとも15%である。好ましい一態様では、腸溶性ポリマー層は、製剤全体の約15重量%〜約35重量%、なおより好ましくは約15重量%〜約20重量%に相当する。特定の一態様では、腸溶性ポリマー層は、製剤全体の約15重量%の量で製剤中に存在する。
【0057】
本発明のコアをコーティングするために使用することのできる腸溶性ポリマーの種類および/または量は、実施例に提供されるようにBiodis溶出試験装置(USP III放出装置)を使用することによって選択することができる。
【0058】
pH依存性腸溶コーティングには、また、異なるpH依存性腸溶性ポリマーの様々な組み合わせが含まれうる。当業者は、この分野における彼らの一般知識を考慮して、そのようなpH依存性ポリマー混合物を選択することができる。例えば、上に引用されたChourasiaおよびJainの論文に言及されているように、Eudragit(登録商標)L100-55およびEudragit(登録商標)S100のような2種のメタクリル酸ポリマーの組み合わせを、本発明のコアの周囲に提供することができる。
【0059】
本発明の特定の一態様では、外部コーティングは、Eudragit FS30D、またはEudragit FS30DとEudragit L30D-55の、特に99:1から80:20の間に含まれる重量比(FS30D:L30D-55)の混合物を含有する。
【0060】
特定の一態様では、pH依存性腸溶性ポリマーは、
− シェラック、
− アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルおよびメタクリル酸ベースの陰イオン性コポリマー、
− Eudragit(登録商標)FS30Dなどのメタクリル酸メチル−メタクリル酸と、Eudragit(登録商標)L30D-55などのメタクリル酸−アクリル酸エチルコポリマーの99:1から80:20の間に含まれる比の混合物、ならびに
− メタクリル酸−メタクリル酸メチルコポリマー(1:2の重量比)
より選択される。
【0061】
さらなる特定の一態様では、本発明による製剤は:
− 活性炭とカラゲナン(好ましくはκ−カラゲナン)の混合物を含有するコア、ならびに
− Eudragit(登録商標)FS30Dなどのアクリル酸メチル、メタクリル酸メチルおよびメタクリル酸ベースの陰イオン性コポリマーの層
を含む。
【0062】
さらなる特定の一態様では、本発明による製剤は:
− 活性炭とカラゲナン(好ましくはκ−カラゲナン)の混合物を含有するコア、および
− Eudragit(登録商標)FS30Dなどのメタクリル酸メチル−メタクリル酸と、Eudragit(登録商標)L30D-55などのメタクリル酸−アクリル酸エチルコポリマーの99:1から80:20の間に含まれる比の混合物の層
を含む。
【0063】
別の特定の一態様では、本発明による製剤は、
− 活性炭とカラゲナン(好ましくはκ−カラゲナン)の混合物を含有するコア、および
− シェラック層
を含む。
【0064】
外部腸溶層が、当業者に公知の任意の適切な手段によってコア上に塗布されることがある。例えばその層は、コーティングの水溶液または溶媒溶液がコアペレット上にスプレードライによって塗布される古典的流動床技法を使用して塗布することができる。重量増加が達成されると、製剤を乾燥することができ、さらなるコーティングを塗布することができる。このように、スプレードライ技法を用いて複数のコーティングを連続的に塗布することができる。
【0065】
さらに、結腸領域は、還元状態を提供する嫌気性微生物の存在度が大きい。したがって、外部コーティングは、酸化還元感受性の物質を適切に含むことがある。そのようなコーティングは、例えば、フリーラジカル重合によって合成された、ジビニルアゾベンゼンと架橋結合した、スチレンとヒドロキシエチルメタクリレートのランダムコポリマーから成りうるアゾポリマーまたはジスルフィドポリマー(PCT/BE91/00006参照)を含むことがあり、そのアゾポリマーは、結腸中で酵素により特異的に分解される。
【0066】
結腸における放出を提供する他の物質は、アミロース、例えばアミロース−ブタン−1−オール複合体(ガラス状(glassy)アミロース)をEthocel水性分散液と混合することによって調製することができるコーティング組成物(Milojevic et awl., Proc. Int. Symp. Contr. Rel. Bioact. Mater. 20, 288, 1993)、またはガラス状アミロースの内部コーティングおよびセルロースもしくはアクリルポリマー物質の外部コーティングを含むコーティング製剤(Allwood et al GB 9025373.3)、結腸細菌酵素により分解される多糖であるペクチン(Ashford et al., Br Pharm. Conference, 1992, Abstract 13)がカルシウム(Rubenstein et al., Pharm. Res., 10, 258, 1993)または亜鉛(El-Gibaly, Int. J. Pharmaceutics, 232, 199, 2002)などの二価陽イオンによって網状構造を形成してゲル化したもの、コンドロイチン硫酸(Rubenstein er awl., Pharm.Res. 9, 276, 1992)および難消化性デンプン(Allwood et nl., PCT国際公開公報第89/11269号、1989年)、デキストランヒドロゲル(Hovgaard and Brondsted, 3rd Eur. Symp. Control. Drug Del., Abstract Book, 1994, 87)、ホウ砂改変グアーガムなどの改変グアーガム(Rubenstein and Gliko-Kabir, S.T.P. Pharma Sciences 5, 41-46, 1995)、P−シクロデキストリン(Siekeer al., Eu. J. Pharm.Biopharm. 40 (suppl), 335, 1994)、セロビオース、ラクツロース、ラフィノース、およびスタキオースなどのオリゴ糖に共有結合しているメタクリル酸ポリマーなどの合成オリゴ糖含有バイオポリマーを含むポリマー構築物が含まれるサッカリド含有ポリマー、または架橋結合しているコンドロイチン硫酸などの改変ムコ多糖などのサッカリド含有天然ポリマー;メタクリレート−ガラクトマンナン(Lehmann and Dreher, Proc. Int. Symp. Control. Rel. Bioact. Mater.18, 331, 1991)およびpH感受性ヒドロゲル(Kopecek et al., J. Control.Rel. 19, 121, 1992)である。難消化性デンプン、例えばガラス状アミロースは、上部消化管において酵素によって分解されないが、結腸において酵素によって分解されるデンプンである。
【0067】
中間コーティング
本発明の特定の一態様によると、上記製剤は、コアと外部腸溶コーティングの間に提供された少なくとも一つのさらなるコーティングを含む。このさらなる層(一つまたは複数)(「中間コーティング」とも呼ばれる)は、必要なときに吸着剤の放出をさらに遅延させるために提供される。中間コーティングは、特に、本発明による製剤に加えて治療剤(例えば抗生物質)が経口投与されたときに、ホスト生物による該治療剤の正常な吸収過程に吸着剤が及ぼす影響を最小限にする(好ましくは完全に阻止する)ために提供される。この態様は、特に、薬剤の最高血中濃度(Tmax)に達するために必要な時間の結果として、投与された治療剤が遅延吸収プロファイルを有する場合に適する。
【0068】
特定の一態様によると、中間コーティングが本発明のコア上に提供され、Eudragit(商標)FS30D(上に説明)などのpH依存性腸溶性ポリマーまたはEudragit(登録商標)FS30DとEudragit(登録商標)L30D-55の99:1から80:20の間に含まれる比の混合物を用いてさらなるコーティングが塗布される。pH依存性腸溶性ポリマーは、上部消化管に見出される酸性環境からコアを保護する。いったんpH依存性ポリマーが溶解すれば、中間コーティングのせいで吸着剤のさらなる遅延放出が得られる。
【0069】
中間コーティングは、pH依存性またはpH非依存性ポリマーを含有することがある。
【0070】
中間コーティングとして使用することができるpH依存性ポリマーのうち、例には、上の「外部腸溶層」の部に記載されたポリマー、特にSSB(登録商標)Aquagoldなどのシェラック型ポリマー、Eudragit(登録商標)FS30Dなどのアクリル酸メチル、メタクリル酸メチルおよびメタクリル酸ベースの陰イオン性コポリマー、Eudragit(登録商標)L30D-55などのメタクリル酸−アクリル酸エチルコポリマー、Aqoat AS-MF、MGもしくはHFグレードなどのHPMCAS、またはHP-55グレードなどのヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)が挙げられる。特定の一態様では、中間コーティングは、Eudragit(登録商標)FS30DとEudragit(登録商標)L30D-55の99:1から80:20の間に含まれる比の混合物などのpH依存性ポリマーの混合物のことがある。
【0071】
pH非依存性ポリマーは、緩徐水溶性ポリマーおよび水不溶性ポリマーより選択することができる。pH非依存性水溶性ポリマーの非限定的な例には、ポリビニルピロリドン(PVP)、およびヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)などの高分子量セルロースポリマーが挙げられる。pH非依存性不溶性ポリマーのさらなる非限定的な例には、エチルセルロースポリマーおよびアクリル酸エチル−メタクリル酸メチルコポリマー(Eudragit(登録商標)NE30Dなど)が挙げられる。
【0072】
本発明の特定の一態様では、中間コーティングは、ポリマーの混合物を含有する。第一の選択肢では、ポリマーの混合物は、同じタイプのポリマーを含む。例えば、混合物は、pH依存性ポリマーを別のpH依存性ポリマーと共に、pH非依存性可溶性ポリマーを別のpH非依存性可溶性ポリマーと共に、またはpH非依存性不溶性ポリマーを別のpH非依存性不溶性ポリマーと共に含むことがある。別の選択肢では、ポリマーの混合物は、異なるタイプのポリマーを含む。混合物は、pH依存性ポリマーをpH非依存性ポリマー(水溶性または不溶性のいずれか)と共に、pH非依存性可溶性ポリマーをpH非依存性不溶性ポリマーと共に、またはpH依存性ポリマーをpH非依存性可溶性ポリマーおよびpH非依存性不溶性ポリマーと共に含むことがある。例えば、中間コーティングは、Eudragit(登録商標)L30D55とEudragit(登録商標)NE30Dの混合物などのpH依存性ポリマーとpH非依存性ポリマーの混合物を(例えば、約1:9から約9:1の間、特に約2:8から約3:7の間の重量比で)含むことがある。
【0073】
好ましいコーティングおよびコーティング成分の重量比は、当業者が、例えば実施例に提供されたようにその投与剤形の放出プロファイルを評価することによって、容易に決定することができる(例えば実施例8参照)。
【0074】
約1から約2時間の間にTmaxを有する、経口経路によって与えられる医薬品、例えば抗生物質(シプロフロキサシンなど)用に、本発明によるコアに、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルおよびメタクリル酸ベースの陰イオン性コポリマーなど(Eudragit(登録商標)FS30Dなど)の単一のpH依存性ポリマーをコーティングすることができる。吸着剤の放出は、約4〜6時間後にin vitroおよびin vivoで(特にヒト被験体において)達成され、そのことが吸着剤と抗生物質または別の医薬品の正常な吸収過程との相互作用を制限する。残留抗生物質が胆汁排泄または腸膜排泄後に消化管から見出されるような抗生物質の非経口投与後に、同種の製剤を投与することができる。この場合、吸着剤と抗生物質の吸収過程とが相互作用するリスクはない。
【0075】
吸収遅延型(2時間よりも大きなTmax)の医薬品、特に第三世代セファロスポリン系などの抗生物質が、上記のような遅延デリバリーシステムで製剤化された吸着物質と同時に経口経路によって与えられる場合、吸着剤の放出をさらに遅らせることが好ましいことがある。これは、例えば、まず約1から約3%の間のエチルセルロース(合計製剤に対するw/w)、好ましくは1.5〜2.5%(合計製剤に対するw/w)、より好ましくは2%のエチルセルロース、またはEudragit(登録商標)L30D-55とEudragit(登録商標)NE30Dの混合物(合計製剤に対して10〜40w/w%の間、好ましくは15〜35w/w%の間)をコアにコーティングし、少なくとも15%(合計製剤に対するw/w)のEudragit(登録商標)FS30Dをさらにコーティングすることによって達成することができる。
【0076】
特定の一態様では、中間コーティングは、BioDis溶出試験装置(USP III放出装置)などを用いたin vitro検査によって測定されるように、吸着剤の放出に約20分〜約2時間の遅れを達成するために選択される。このシステムでは、JantratidらによってPharm.Res. 25 (2008), 1663-1676に記載されているように、消化管の異なる区域に対応するpH、緩衝能および浸透圧をもたらす組成物を有する約200mLの溶解液(dissolution media)を満たしたガラスチューブに投与剤形が連続的に入れられる。これは、哺乳動物で検査する前にin vivo放出の十分なシミュレーションを可能にし、pH、食後対空腹状態、および様々な他の生理条件を検査することができる。BioDisシステムを用ると、当業者が所望の予定された遅延放出を達成するために、製剤を微調整することが可能である。
【0077】
上記によれば、本発明の特定の一態様は:
− 吸着剤とカラゲナンの混合物を含むコア
− pH依存性腸溶性ポリマーの外層、および
− コアと外装の間に提供される中間コーティング
を含む製剤に関する。
【0078】
特定の一態様では、本発明は:
− 活性炭とカラゲナン(好ましくはκ−カラゲナン)の混合物を含むコア、
− HPMC、エチルセルロース、およびEudragit(登録商標)L30D-55などのメタクリル酸−アクリル酸エチルコポリマーとEudragit(登録商標)NE30Dなどのアクリル酸エチル−メタクリル酸メチルコポリマーの(例えば1:9〜9:1、好ましくは2:8〜3:7の混合比の)混合物から成る群より選択される中間コーティング、ならびに
− Eudragit(登録商標)FS30Dなどのアクリル酸メチル、メタクリル酸メチルおよびメタクリル酸ベースの陰イオン性コポリマーの外層
を含む製剤に関する。
【0079】
別の特定の態様では、本発明の製剤は:
− 活性炭とカラゲナン(好ましくはκ−カラゲナン)の混合物を含むコア、
− 1〜3%のエチルセルロース中間コーティング、好ましくは1.5〜2.5%のエチルセルロースコーティング、最も好ましくは2%エチルセルロース中間コーティング(合計製剤に対するw/w)、ならびに
− 15%(合計製剤に対するw/w)の、Eudragit(登録商標)FS30Dなどのアクリル酸メチル、メタクリル酸メチルおよびメタクリル酸ベースの陰イオン性コポリマーの外層
を含む。
【0080】
さらなる特定の一態様では、本発明の製剤は:
− 活性炭とカラゲナン(好ましくはκ−カラゲナン)の混合物を含むコア、
− メタクリル酸−アクリル酸エチルコポリマー(Eudragit(登録商標)L30D-55など)とアクリル酸エチル−メタクリル酸メチルコポリマー(Eudragit(登録商標)NE30Dなど)の2:8〜3:7混合物から作られた、15〜35%(合計製剤に対するw/w)の中間コーティング、ならびに
− 15%(合計製剤に対するw/w)の、Eudragit(登録商標)FS30Dなどのアクリル酸メチル、メタクリル酸メチルおよびメタクリル酸ベースの陰イオン性コポリマーの外層
を含む。
【0081】
別の特定の態様では、本発明の製剤は:
− 活性炭とカラゲナン(好ましくはκ−カラゲナン)の混合物を含むコア、
− 1〜3%のエチルセルロース中間コーティング、好ましくは1.5〜2.5%のエチルセルロースコーティング、最も好ましくは2%のエチルセルロース中間コーティング(合計製剤に対するw/w)、ならびに
− Eudragit(登録商標)FS30Dなどのメタクリル酸メチル−メタクリル酸と、Eudragit(登録商標)L30D-55などのメタクリル酸−アクリル酸エチルコポリマーの99:1から80:20の間に含まれる比の混合物の、15%〜35%(合計製剤に対するw/w)の外層
を含む。
【0082】
さらなる特定の一態様では、本発明の製剤は:
− 活性炭とカラゲナン(好ましくはκ−カラゲナン)の混合物を含むコア、
− メタクリル酸−アクリル酸エチルコポリマー(Eudragit(登録商標)L30D-55など)とアクリル酸エチル−メタクリル酸メチルコポリマー(Eudragit(登録商標)NE30Dなど)の2:8〜3:7混合物から作られた、15〜35%(合計製剤に対するw/w)の中間コーティング、ならびに
− Eudragit(登録商標)FS30Dなどのメタクリル酸メチル−メタクリル酸と、Eudragit(登録商標)L30D-55などのメタクリル酸−アクリル酸エチルコポリマーの99:1から80:20の間に含まれる比の混合物の、15%〜35%(合計製剤のw/w)の外層
を含む。
【0083】
投与剤形
別の局面では、本発明は、カラゲナンおよび1種または複数種の薬学的に許容されうる添加剤と一緒に製剤化された、治療有効量の1種または複数種の上記吸着剤を含む、薬学的に許容されうる投与剤形を提供する。下に詳細に説明するように、本発明の投与剤形は、特に固体形態での投与用に製剤化することができる。
【0084】
本明細書に使用されるような「治療有効量」という語句は、ある所望の治療効果を生成するために有効な、1種または複数種の上記化合物、1種または複数種の上記化合物を含む材料または製剤の量を意味する。
【0085】
「薬学的に許容されうる」という語句は、本明細書において、合理的な便益/リスク比に見合って、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症なしに健全な医学的判断の範囲内でヒトおよび動物の組織と接触した使用に適する、化合物、物質、製剤、および/または投与剤形を表すために採用される。
【0086】
本明細書に使用されるような「薬学的に許容されうる添加剤」という語句は、固体増量剤、希釈剤、ある器官または身体部分から、別の器官または身体部分に主題化合物を運搬または輸送することに関与する賦形剤などの、薬学的に許容されうる物質、製剤またはビヒクルを意味する。各添加剤は、製剤の他の成分と適合性であって、患者に有害でないという意味で「許容されうる」ものでなければならない。
【0087】
活性炭のin vivo分散を改善するために、上記のような腸溶性ポリマーで個々にコーティングされたペレットなどの複数のユニットを含有する投与剤形が、好ましいことがある。そのようなペレットは、例えば流動床システムを用いてその表面にコーティングを直接行うことができることから、より実用的な適応性を示す。
【0088】
湿潤剤、乳化剤および滑沢剤(ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムなど)、ならびに着色料、離型剤(release agent)、コーティング剤、甘味料、香味料および着香料、保存料および抗酸化剤も、また、投与剤形中に存在することがある。
【0089】
本発明の投与剤形には、経口投与に適する投与剤形が挙げられる。製剤は、好都合には単位投与剤形として提示することができ、薬学分野で周知の任意の方法によって調製することができる。
【0090】
経口投与に適する本発明の投与剤形は、それぞれ予定された量の吸着剤製剤を含有するカプセル剤、錠剤、サシェ剤(sachet)の形態のことがある。
【0091】
錠剤は、場合により1種または複数種の補助成分と共に、圧縮または成形によって製造することができる。圧縮された錠剤は、結合剤(例えば、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、滑沢剤、不活性希釈剤、保存料、崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウム、架橋型カルボキシメチルセルロースナトリウムまたは多糖)、界面活性剤または分散剤を使用して調製することができる。成形された錠剤は、水などの不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化合物の混合物を適切な機械で成形することによって製造することができる。
【0092】
上記の固体投与剤形は、単一ユニットまたは多ユニットを含む最終投与剤形中に組み合わせることができる。多ユニットの例には、多層錠、錠剤含有カプセル、ペレット剤、顆粒剤などが挙げられる。
【0093】
本発明のコアに、外層および場合により上に提供されたような中間コーティングをコーティングすることができる。コーティングされた製剤(外部腸溶コーティングをコーティングされ、中間コーティングを含むもしくは含まない)またはコーティングされていないコアを、さらに、錠剤、カプセル剤などのユニット薬物投与剤形中に組み合わせることができ、それに、効果的な遅延放出のためのコーティング材料をさらにコーティングすることができ、その材料には、非限定的にヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロースポリマー、ポリビニルピロリドン;ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメリテートなどのコポリマー、ならびに商品名Eudragit(登録商標)(Rohm Pharma; Westerstadt、Germany)で市販されているアクリル酸のポリマーおよびコポリマー、好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチルおよび/またはメタクリル酸エチルから形成したもの、ならびに他のメタクリル樹脂、例えばEudragit(登録商標)L30D-55およびL100-55(pH5.5以上で可溶)、Eudragit(登録商標)L-100(pH6.0以上で可溶)、Eudragit(登録商標)S(高度のエステル化の結果としてpH7.0以上で可溶)、およびEudragit FS30D、メタクリル酸、アクリル酸メチルおよびメタクリル酸メチルの陰イオン性コポリマー;エチルセルロース、セルロースアセテート;Eudragit(登録商標)NE、RLおよびRS(異なる程度の透過性および拡張性を有する水不溶性ポリマー)、酢酸ビニル、ビニルアセテートフタレート、ビニルアセテート−クロトン酸コポリマー、およびエチレン−酢酸ビニルコポリマー;ビニルポリマー、ならびに;アゾポリマー、ペクチン、キトサン、アミロースおよびグアーガムなどの酵素分解可能なポリマー;ゼインおよびシェラックが挙げられる。
【0094】
特定のコーティング材料のために好ましいコーティング重量は、当業者が、異なる量の様々なコーティング材料を用いて調製された錠剤、ペレットおよび顆粒剤についての個々の放出プロファイルを評価することによって容易に決定することができる。
【0095】
所望の放出特性を生じるのは、材料の組み合わせ、方法および適用形態である。
【0096】
コーティング製剤は、可塑剤、顔料、着色料、安定化剤、流動化剤などの従来の添加剤を包含することがある。可塑剤は、普通はコーティングの脆弱性を軽減するために存在し、全般にポリマーの乾燥重量に対して約5wt%〜50wt%に相当する。典型的な可塑剤の例には、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリアセチン、フタル酸ジメチルフ、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、セバシン酸ジブチル、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリエチル、ヒマシ油およびアセチル化モノグリセリドが挙げられる。安定化剤は、好ましくは分散物中の粒子を安定化するために使用される。典型的な安定化剤は、ソルビタンエステル、ポリソルベートおよびポリビニルピロリドンなどの非イオン系乳化剤である。流動化剤は、フィルム形成および乾燥の間に粘着効果を低下させるために推奨され、全般にコーティング溶液中のポリマー重量に対して約0wt%〜100wt%に相当する。一つの効果的な流動化剤はタルクである。ステアリン酸マグネシウムおよびモノステアリン酸グリセロールなどの他の流動化剤も使用することができる。二酸化チタンなどの顔料も使用することができる。シリコーン(例えばシメチコン)などの少量の消泡剤も、コーティング製剤に添加することができる。
【0097】
これらの投与剤形は、任意の適切な投与経路により、治療のためにヒトおよび動物に投与することができる。
【0098】
本発明の投与剤形中の吸着剤の実際の投薬レベルは、特定の患者、製剤、および投与方式について患者に有毒にならずに、腸管中の任意の残留抗生物質または他の医薬品もしくは毒素の効果的な除去を行うように変動させることができる。
【0099】
選択された投薬レベルは、採用される本発明の特定の化合物の活性、投与時間、採用される特定の化合物の排泄または代謝速度、処置の期間、採用される特定の化合物と共に使用される他の薬物、化合物および/または材料、処置される患者の年齢、性別、体重、状態、全身の健康状態および病歴、ならびに医学の分野で周知の類似の要因などの多様な要因に依存する。
【0100】
当技術分野で通常の技術を有する医師または獣医師は、必要な薬学的製剤の有効量を容易に決定して処方することができる。例えば、医師または獣医師は、薬学的製剤に採用される本発明の化合物の用量を、所望の治療効果を達成するために必要なレベルよりも低いレベルで開始し、所望の効果が達成されるまで投薬量を徐々に増加させることができよう。
【0101】
全般に、本発明の化合物の適切な1日用量は、治療効果を生じるために有効な最低用量の化合物の量である。そのような有効用量は、全般に上記要因に依存する。
【0102】
所望により、活性化合物の有効1日用量は、1日にわたり適切な間隔で別々に投与される2、3、4、5、または6個以上の分割用量として、場合により単位投与剤形として投与することができる。
【0103】
既述のように、本発明による製剤は、治療剤、特に抗生物質(それだけではないが)の有害作用を除去するための方法に使用されることがある。この方法の特定の態様によれば、本発明の製剤および治療剤は、同時に投与される。このように吸着剤の量は、それを必要とする被験体に投与される治療剤の量に適合されることがある。この場合、吸着剤と抗生剤の間の重量比は、1を超える、より好ましくは2を超える、なおより好ましくは3を超える、最も好ましくは9を超えることがある。
【0104】
「処置」という用語は、予防、治療および治癒も包含するつもりである。
【0105】
この処置を受けている被験体は、霊長類、特にヒト、および他の哺乳動物、例えばウマ、ウシ、ブタおよびヒツジなどの、必要とする任意の動物であり;家禽およびペットも全般に当該処置のレシピエントになることがある。
【0106】
動物への本発明による製剤の投与は、好ましくは、動物の食物中にそれを包含させることによって実施される。これは、好ましくは本発明の製剤を有効量で含有する適切な飼料プレミックスを調製し、そのプレミックスを混込んで完全な飼料日量にすることによって達成される。したがって本発明は、また、上記食物および製剤を含む動物食物プレミックスに関する。本発明は、また、本発明による製剤を含む動物食物飼料日量に関する。
【0107】
適用
治療適用:
本発明による製剤は、吸着剤の腸デリバリーが適切な状態および障害を処置するために使用することができる。したがって、本発明は、また、医薬として使用するための上記製剤に関する。
【0108】
本発明による製剤は、任意の薬物、その代謝物もしくはプロドラッグ、または毒素を吸着し、したがって腸管から排除するために使用することができる。これは、活性薬物の経口または非経口投与後に行われることがあり、それらが下部腸管および/または結腸に到達したときに、処置されている被験体における有害作用を限定または減少させるために有用なことがあろう。
【0109】
それにより、本発明は、薬物が結腸に到達する前または薬物が結腸に到達するときに、好ましくは薬物が盲腸に到達する前または薬物が盲腸および近位結腸に到達するときに、腸管中の薬物を除去するための方法に使用するための、上記製剤に関する。
【0110】
本発明は、さらに、薬物が結腸に到達する前または薬物が結腸に到達するときに、好ましくは薬物が盲腸に到達する前または薬物が盲腸および近位結腸に到達するときに、腸管中の薬物を除去するための方法であって、それを必要とする患者に本発明による製剤を投与することを含む方法を提供する。
【0111】
さらに本発明は、腸管中の薬物の副作用を軽減または除去するための方法に使用するための、上記製剤を提供するが、その際、その製剤は、薬物が結腸に到達する前または薬物が結腸に到達するときに、好ましくは薬物が盲腸に到達する前または薬物が盲腸および近位結腸に到達するときに、その薬物を除去する。
【0112】
「薬物」、「治療剤」および「医薬品」、ならびにそれから派生する用語は、本明細書において互換的に使用され、ヒトまたは動物に投与されたときに所望の生物学的または薬理学的効果を提供する化合物を表す。
【0113】
本発明による製剤を用いて処置されうる状態および障害は、抗生物質耐性の発生、C. difficile(または他の病原性細菌)の抗生物質処置関連発生、抗生物質処置関連真菌感染または抗生物質処置関連下痢などの、抗生物質への結腸曝露に起因するものでありうる。吸着剤は、残留抗生物質を吸着し、本発明による製剤は、抗生物質を投与されたことのある、投与されている、または将来投与される患者に治療有効投薬量で投与することができる。吸着剤中/上に吸着できる任意の抗生物質を不活性化することができ、その抗生物質は、いったん完全に吸着されると抗生物質活性を有さない。吸着されうる抗生物質クラスの代表的な例には、β−ラクタム系、サイクリン系、マクロライド系、キノロン系、アミノグリコシド系、グリコペプチド系、スルホンアミド系、フェニコール系、フラン系、ポリペプチド系、オキサゾリドン系およびホスホマイシン、リファンピンなどの抗生物質が挙げられる。
【0114】
したがって本発明は、また、好ましくは残留抗生物質が結腸に到達する前またはそれが結腸に到達するときに、腸管中の残留抗生物質を除去するための方法に使用するための、上記製剤に関する。より好ましくは、製剤は、好ましくは残留抗生物質が盲腸に到達する前またはそれが盲腸および近位結腸に到達するときに、腸管中の残留抗生物質を除去するための方法に使用される。本発明によれば、吸着剤は、好ましくは抗生物質が吸収される腸部分(十二指腸および空腸)と共生細菌に有害作用が起こる腸部分(盲腸および結腸)の間にデリバリーされる。本発明は、さらに、好ましくは残留抗生物質が結腸に到達する前またはそれが結腸に到達するときに、最も好ましくはそれが盲腸に到達する前またはそれが盲腸および近位結腸に到達するときに、腸管中の残留抗生物質を除去するための方法であって、それを必要とする被験体に本発明の製剤の有効量を投与することを含む方法に関する。
【0115】
本発明は、さらに、腸管中の抗生剤の有害作用を除去するための、特に抗生物質耐性の発生、C. difficile(または他の病原性細菌)の抗生物質処置関連発生、抗生物質処置関連真菌感染または抗生物質処置関連下痢を除去するための方法に使用するための、上記製剤に関する。本発明は、さらに、腸管中の抗生剤の有害作用を除去するための方法であって、それを必要とする被験体に本発明の製剤の有効量を投与することを含む方法に関する。
【0116】
別の態様では、本発明の製剤は、下部腸管に到達したときに、特に結腸に到達したときに副作用を有する医薬品を用いて処置された障害を患う患者に投与される。下に詳しく説明するように、イリノテカンは、そのような挙動を有する代表的な化合物である。
【0117】
特定の態様では、その製剤は、結腸以外の患者の体内で関連レセプターに結合して障害を処置するが、結腸中のレセプターに結合すると副作用を生じるような医薬品を用いて処置される障害を患う患者に投与される。例えば結腸は、中枢神経系にも存在するコリン作動性セロトニンレセプターを包含する。コリン作動性レセプターに結合する薬剤を用いた処置は、その化合物が結腸中のレセプターに結合するならば副作用を生じることがある。本発明の製剤とそのようなレセプターに結合する薬剤の同時投与は、これらの副作用を最小化または除去することができる。
【0118】
したがって本発明は、また、障害の処置として投与されるが、下部回腸、盲腸または結腸に到達すると副作用を有する医薬品の腸管、特に結腸における副作用を除去するための方法に使用するための、上記製剤に関する。本発明は、これらの副作用を緩和または除去することができる。本発明は、さらに、医薬品、特に障害の処置として投与されるが、下部回腸、盲腸または結腸に到達すると副作用を有する医薬品の腸管、特に結腸における副作用を除去するための方法であって、それを必要とする被験体に本発明の製剤の有効量を投与することを含む方法に関する。特に、本発明は、医薬品を用いた処置によって誘導される炎症および/または下痢を緩和または除去するために使用することができる。
【0119】
イリノテカンは、障害のための処置として投与されるが、それおよび/またはその代謝物が下部回腸、盲腸または結腸に到達すると副作用を有する医薬品の例示的で非限定的な一例である。本発明の特定の一態様は、イリノテカン誘導下痢、特にイリノテカン誘導遅発性下痢を除去または軽減するための製剤を提供する。
【0120】
天然アルカロイドであるカンプトテシンの半合成アナログであるイリノテカン(CPT−11としても知られている)は、トポイソメラーゼI阻害剤である7−エチル−10−ヒドロキシカンプトテシン(SN−38)の可溶性プロドラッグであり、プロドラッグ型よりも1000倍強力なin vitro抗腫瘍活性を有する。イリノテカンは、より詳細には1998年にFDAによって転移性結腸直腸ガンのために認可されている。それは、大部分は併用治療方式で第一選択として、または5−フルオロウラシル(5−FU)に基づく治療の失敗後に単剤として使用される。しかしながら、遅発性下痢は、イリノテカンの主な用量制限毒性であることが見出されている。SN−38の腸内蓄積は、イリノテカン誘導後期下痢の主な原因である。
【0121】
より全般的に、下痢は、化学療法剤を用いた臨床処置の間の副作用として発生することが多い。この有害作用は、最も一般的には5−フルオロウラシル、シスプラチンまたはイリノテカンなどの化学療法剤に関連する。特に、イリノテカンの投与による遅発性下痢は、持続するおそれがあり、脱水および電解質不均衡につながることがあり、場合によってはイリノテカンの投与を改変、中断または中止しなければならないほど十分に重症(グレード3または4の下痢)になるおそれがある。下痢は、患者についての問題症状を構成し、それがイリノテカンの用量またはイリノテカンの投与回数の減少を誘発しうることから、下痢は、投与された用量に高度に依存するイリノテカンの治療効率を損なうおそれがある。
【0122】
この副作用の重要性および頻度のしるしは、下痢が起こった場合のロペラミドによる処置用のプロトコールがイリノテカンのラベルにさえ表示されているという事実である。実際にヒトにおいて、いったん下痢が開始したならば、下痢を軽減または防除するためにロペラミド(腸運動を緩徐にし、腸を通過した水および電解質の移動に影響する薬剤)の集中的即時投与が用いられる。しかしながら、ロペラミドはそれ自体が、腸閉塞を誘導するなどの副作用を有する(Hanauer, SB, Rev Gastroenterol Disord. 8 (2008), 15-20)。
【0123】
活性炭を用いたイリノテカン誘導下痢の予防が、以前に提案されている(Michael et al., Journal of Clinical Oncology, Vol. 22, No. 21, November 1, 2004)。しかしながら、その処置は、無配合活性炭の経口投与にあった。これは、この吸着剤の非特異的性質にどちらも関係する少なくとも二つの問題を提起する。これらの問題の一つは、活性炭が消化管を進むときに活性炭が消化物によって飽和する可能性があることである。イリノテカンおよび/またはその代謝物がそれらの望まれない作用を誘発する場所でそれらの強い吸着を得るために、腸管終末部に最大限に活性な吸着剤を提供することが好ましいであろう。第二の問題は、経口投与される薬物を含みうる多剤処置レジメンの範囲内でイリノテカンが投与されることが多いという事実に関係する。特に、イリノテカンは、5−フルオロウラシルおよびロイコボリンと共に投与することができ;他の薬物が様々な理由から必要に応じて処置に加えられることがある。これに関連して、同時投与された薬物(一つまたは複数)を吸着剤が吸着することで、それらの薬物がその用途である所望の効果を誘発することが阻止されることがあるので、無配合活性炭の同時投与は望ましくない。
【0124】
本発明は、さらなる有害作用も毒性も誘発せずに、イリノテカンの有害作用、特にイリノテカン誘導下痢(最も詳細にはイリノテカン誘導遅発性下痢)を除去または軽減可能にする点で有利である。さらに、本発明のお陰でイリノテカンは、イリノテカンの有害作用の除去のために投薬レジメンを変更する必要がないことから、その最も有効な治療用量で使用することができる。イリノテカン療法を受けている患者での下痢症状を予防することにおいて、本発明の製剤は、下痢の発生率、重症度、および/もしくは持続時間を減少させ、患者の生活の質を改善し、下痢に関係する入院を回避し、かつ/またはイリノテカン用量の低下、処置の中断もしくは中止を防止する潜在性を有する。
【0125】
本発明の方法は、また、イリノテカンの代謝物、特にSN−38の除去または減少、および当該イリノテカン代謝物の有害作用の除去または軽減を提供する。
【0126】
当業者は、これらの利点が、下部消化管に到達したときに有害作用を誘発するイリノテカン以外の分子、特に下痢を誘導する分子を用いた治療にも提供されることを認識している。そのような分子は、トポテカンなどのカンプトテシンの他のアナログおよび誘導体、ならびにガン化学療法に使用される他の薬物の可能性があろう。
【0127】
疼痛および痛風性関節炎の処置に使用される薬物であるコルヒチンは、本発明による除去が有利であろう医薬品の別の代表例である。
【0128】
血圧薬(カルシウムチャネルブロッカー)、疼痛薬(特に麻薬)、抗うつ薬、アルミニウムおよびカルシウムを含有する制酸薬、抗パーキンソン薬、鎮痙薬、利尿薬、および抗痙攣薬との有害薬物反応を理由とする消化管の問題が通例報告されていること、ならびに多数の種類の薬物が便秘に関連することも知られている。多くの場合に、便秘は持続し、副作用がやっかいなことから、患者は処置を中断する。リスペリドンなどの薬物は、巨大結腸などの結腸障害を伴うおそれがある(Lim et al, Singapore Med J 2002, Vol 43(10) : 530-532)。本発明の製剤は、これらの問題を処置するためにそれを必要とする患者に投与することができる。
【0129】
したがって特定の一態様では、本発明は、腸管、特に結腸における治療剤、例えば化学療法剤、特にイリノテカンおよびその誘導体(特にその代謝物SN−38)の副作用を除去するための方法に使用するための、上記製剤に関する。本発明は、さらに、治療剤、例えば化学療法剤、特にイリノテカンおよびその誘導体(特にその代謝物SN−38)が下部回腸、盲腸または結腸に到達したときに、腸管、特に結腸におけるその治療剤の副作用を除去するための方法であって、それを必要とする被験体に本発明の製剤の有効量を投与することを含む方法に関する。
【0130】
本発明は、さらに、化学療法剤、特にイリノテカンを用いてガン(特に転移性結腸直腸ガン)を処置するための方法であって、それを必要とする患者に
− 化学療法剤の有効量、および
− 本発明による製剤の有効量
を投与することを含む方法に関する。
【0131】
本発明は、また、治療剤、例えば化学療法剤、特にイリノテカンの用量を減少、使用を中止または中断する必要性を軽減または除去するための方法であって、該治療剤による治療を必要とする患者に本発明による製剤を投与することを含む方法に関する。
【0132】
本発明による製剤は、本発明による下部消化管から除去するつもりの治療剤の投与前、投与と共にまたは投与後に投与されることがある。好ましくは、本発明による製剤は、治療剤の前または治療剤と一緒に投与される。例えば、被験体は、抗生物質(または別の治療剤、例えばイリノテカンのような化学療法剤など)および本発明による製剤を同時に服用する。
【0133】
したがって例えば、治療剤および本発明による製剤は、同時または連続的(本発明の製剤が治療剤の投与前または投与後に投与される)に、1日1回または数回反復で1日または数日間投与されることがある。本発明の製剤の投与は、治療剤の投与前に始まり、該治療剤の投与後まで継続されることがある。
【0134】
さらに、本発明の製剤は、また、除去されるべき有害作用の開始前または後に、好ましくは開始前に投与されることがある。例示的な一態様では、本発明の製剤は、患者がイリノテカン、コルヒチン、またはその他のような下痢誘導性治療剤を用いて処置される前に投与される。本発明の製剤は、治療剤の投与の1または2日前および投与後に1回または複数回、例えば4または6時間毎に1または数日間投与することができる。
【0135】
特定の好ましい一態様では、イリノテカンを用いた患者の処置に関連して、本発明の製剤は、患者にイリノテカンが投与される前に、例えば1または2日前に1日1回または数回(例えば食事の度に)投与され、製剤の投与は、イリノテカンの投与日に、イリノテカンの投与の少なくとも4日後に、好ましくは1日数回継続される。理想的には、イリノテカンまたはその代謝物の全ての微量残留物が患者の腸管から除去されることを確かめるために、処置は、イリノテカンの投与後4から10日の間、好ましくは7日間継続される。
【0136】
本発明は、また、下部腸管における存在が望まれない治療剤を含む少なくとも一つの第1の製剤および上記吸着剤を含有する製剤を含むキットに関する。本発明は、さらに、そのキットの製剤を、それを必要とする被験体に投与することを含む上記方法の一つに使用するための、本発明によるキットに関する。その製剤は、連続的に(次々と)または同時に、好ましくは同時に投与される。
【0137】
本発明は、さらに、それを必要とする被験体における病状を処置するための方法であって:
− 疾患の処置に有用な医薬品、特に抗生物質(または上記のように下部腸管に到達すると副作用を有する任意の他の医薬品)を被験体に投与すること、および
− 下部腸管(すなわち下部回腸、盲腸または結腸)における医薬品の量を除去または減少させるために、本発明による製剤を連続的(医薬品の投与前もしくは後)にまたは同時にのいずれかで同被験体に投与すること
を含む方法に関する。
【0138】
本発明の製剤に加えて、病状の処置に使用することのできる医薬品の代表的な、非限定的な例には、抗腫瘍剤、例えばイリノテカンまたはトポテカンのようなカンプトテシン誘導体などのトポイソメラーゼI阻害剤、ジアセレインなどの抗炎症化合物またはインターロイキン−1阻害剤、パンクレリパーゼ(Pancrease、Creon、Zenpepなど)、ロフルミラストまたはシロミラストなどの慢性閉塞性肺疾患(COPD)の処置に使用される選択的ホスホジエステラーゼ−4阻害剤、およびコルヒチンなどの有糸分裂阻害活性を有する化合物が挙げられる。
【0139】
上記のように、本発明による製剤の含有物は、大部分の種類の治療剤の吸収プロファイルに、特に大部分の抗生剤に適合させることができる。結果として、吸着剤の放出は、正常な治療剤吸収過程との無相互作用を達成するために最も確実で首尾一貫している。したがって、そして上に提供するように、治療剤、例えば抗生物質が完全に吸収されてその治療効果を発揮した後の予定された時間にデリバリーを行うように、吸着剤のデリバリーを遅延させることができる。これは、上部腸管における保護と効率的な吸着剤遅延放出の両方を提供する特定のコーティングによって達成される。これは、上述の一般および特異的アプローチよりも大きく非常に革新的な利点を提供する。
【0140】
投与の順序は、また、当業者によって適合させることができる。例えば薬学的処置は、経口経路と異なる経路による医薬品の投与を含むことがある。例えば医薬品は、注射(例えば静脈内、動脈内、くも膜下腔内、筋肉内注射)によるなどの非経口経路によって投与することができる。この場合、当業者が、消化管中の医薬品の排泄タイミングのその知識により、本発明の製剤の投与タイミングを適合させる。
【0141】
その製剤は、また、結腸での細菌または真菌毒素の作用を被る患者に投与されることがある。そのような毒素の例には、Clostridium difficile(世界中で抗生物質後下痢の主原因であると考えられている)により産生されるものなどのマイコトキシン、エンドトキシンまたはエンテロトキシンが挙げられる。この態様では、吸着剤は、毒素を吸着するために治療有効薬用量で投与される。
【0142】
したがって本発明は、また、結腸における細菌または真菌毒素の作用を除去するための方法に使用するための、上記製剤に関する。本発明は、さらに、結腸に対する細菌または真菌毒素の作用を除去するための方法であって、それを必要とする被験体に本発明の製剤の有効量を投与することを含む方法に関する。
【0143】
さらに本発明は、また、いくつかの病状の発生の原因となる、下部消化管における物質の蓄積を特徴とする病状を処置するための方法に使用するための上記製剤に関する。例えば、その製剤は、非限定的に肝性脳症、過敏性腸症候群、慢性腎疾患、C. difficile関連下痢または抗生物質関連下痢などの状態の処置に有用でありうる。本明細書に開示された製剤によって吸着することのできる代表的な物質には、非限定的にアンモニア、インドール、終末糖化産物(AGE)およびある種の細菌毒素が挙げられる。
【0144】
本発明の製剤は、慢性腎疾患(CKD)を患う患者に投与することができる。終末糖化産物(AGE)、フェノール(例えばp−クレシルスルフェート)およびインドール(例えばインドキシルスルフェート)は、腸管を経由して体内において発生または導入される代表的な毒素であり、その毒素はCKDに関係するおそれがある。したがって特定の一態様では、本発明は、CKDを処置するための方法に使用するための、上に定義された製剤に関する。本発明は、さらに詳細には、尿毒症性貯留溶質の生成に関与する毒素を除去するための方法に使用するための上記製剤に関する。本発明は、さらに、尿毒症性貯留溶質の生成に関与する毒素の作用を除去するための方法であって、それを必要とする被験体に本発明の製剤の有効量を投与することを含む方法に関する。さらに詳細には、本発明は、下部腸管(すなわち下部回腸、盲腸または結腸)におけるAGE、フェノール(例えばp−クレシルスルフェート)および/またはインドール(例えばインドキシルスルフェート)の量の除去または減少に関する。
【0145】
本発明の製剤は、さらに、炎症性腸疾患(IBD)、特に潰瘍性大腸炎またはクローン病を患う患者に投与することができる。本発明の製剤のおかげで、今や、過剰の非特異的粘膜細菌、または一酸化窒素、酸素ラジカル、プロスタグランジン、ロイコトリエン、ヒスタミン、プロテアーゼ、およびマトリックスメタロプロテイナーゼなどの腸粘膜中に蓄積する攻撃性の代謝物およびメディエーターを吸着することで腸内の共生的フローラを組み立て直すことによって免疫寛容を誘導または再建することが可能である。したがって本発明は、IBD、特に潰瘍性大腸炎またはクローン病を患う患者における免疫寛容を誘導または再建するための方法に使用するための、上記製剤に関する。したがって本発明は、また、IBD、特に潰瘍性大腸炎またはクローン病を処置するための方法であって、それを必要とする患者に本発明による製剤を投与することを含む方法に関する。本発明は、さらに、過剰の非特異的粘膜細菌、または一酸化窒素、酸素ラジカル、プロスタグランジン、ロイコトリエン、ヒスタミン、プロテアーゼ、およびマトリックスメタロプロテイナーゼなどの腸粘膜中に蓄積する攻撃性の代謝物およびメディエーターの量を除去または減少させるための方法に使用するための、上記製剤に関する。
【0146】
本発明による製剤は、また、肝性脳症(HE)を処置するために使用することができる。窒素化合物である循環腸由来毒素、特にアンモニアが、この障害に主要な役割を果たすと考えられる。本発明による製剤は、例えば、細菌により産生されるアンモニアを吸着するために、それを必要とする患者の腸管に使用することができる。このように、本発明は、窒素化合物、特にアンモニアの除去または減少を必要とする被験体の消化管からその窒素化合物を除去または減少させるための上記製剤に関する。本発明は、また、窒素化合物、特にアンモニアの量の除去または減少を必要とする被験体の消化管からその量を除去または減少させるための方法であって、該患者に上記製剤の治療有効量を投与することを含む方法に関する。
【0147】
処置対象の被験体が動物、例えばペットまたは農用動物である場合、本発明による製剤は、食物中に組み入れられることがある。例えば、医療用食物(または薬用食物)を治療用製剤として使用するつもりならば、本発明による製剤を抗生物質なしにまたは抗生物質と共にその食物に組み入れることができる。または、本発明による製剤は、食品添加物として役立つプレミックス食物の形態のことがある。
【0148】
獣医学的適用:
本発明による製剤は、被験体の腸管の特定部分で吸着剤を放出することが可能である。上述のように、被験体は、ペットまたは農用動物のことがある。例えば被験体は、ブタ、イヌ、ネコ、ウマまたはニワトリのことがある。
【0149】
吸着剤は、治療に関連して有用なことに加えて、広範囲の分子を除去可能である。したがって、本発明による製剤は、下部腸管における吸着剤の放出が有利であろう方法で実行されることがある。
【0150】
例えば、本発明による製剤は、鼓腸(例えばH2Sの吸着による)、便臭(例えばアンモニアの吸着による)、口臭、食物不耐性などを軽減するために使用されることがある。
【0151】
本発明は、さらに、以下の非限定的な実施例を参考にして理解されよう。
【0152】
実施例
実施例1:模擬結腸液中の活性炭によるレボフロキサシンの吸着動態
レボフロキサシン溶液(50μg/ml)を無配合活性炭(NFAC)と共に模擬結腸液(50mMリン酸ナトリウム緩衝液pH6.0、100mM NaCl)中で静かに混合しながら37℃でインキュベーションした。NFAC対レボフロキサシンの比は、3:1または10:1のいずれかであった。
【0153】
0、0.5、1および2時間インキュベーションした後に試料を回収し、遠心分離し、濾過し、上清中に残ったレボフロキサシンの量をその287nmでの吸光度によって測定した。
【0154】
図1に示すように、レボフロキサシンに対するNFACの比が最低のときでさえ、30分のインキュベーション後に全ての抗生物質が炭上に吸着された。
【0155】
実施例2:シプロフロキサシンおよびレボフロキサシンの微生物アッセイ
微生物アッセイは、抗生物質の生物学的活性、すなわちそれが指標細菌株の成長を阻害する能力を測定することにある。このために、指標株としてE. coli CIP7624株を含有するDifco液5で寒天プレートを作製した。寒天プレート表面に直接載せたペーパーディスク上に、測定対象の抗生物質を含有する試料20μlをスポットした。37℃で18時間インキュベーション後に、ペーパーディスク周囲の、細菌の成長が抗生物質の存在によって阻止された範囲の直径を測定した。
【0156】
図2に示すように、抗生物質溶液の濃度の対数(log10μg/ml)と成長阻止直径(mm)の間に直線関係がある。アッセイは、0.04〜5μg/mlのシプロフロキサシンで直線的であった。
【0157】
無配合活性炭懸濁液20μlをディスク上にスポットしたとき、成長阻止は観察されず、このアッセイにおいて炭単独が細菌の成長に作用を及ぼさなかったことが示された。
【0158】
同液および指標株を使用して、レボフロキサシンについて類似のアッセイを設定したが、このアッセイでは0.15〜10μg/mlのレボフロキサシンで直線的な応答が得られた(示さず)。
【0159】
実施例3:微生物アッセイにより測定された、活性炭によるシプロフロキサシンの吸着動態
シプロフロキサシン溶液(50μg/ml)を改変模擬結腸液(18.7mMマレイン酸、84mM NaCl、pH6.0)中で150μg/ml活性炭と共にインキュベーションした。試料を様々な時点で回収し、遠心分離し、上清中に残留するシプロフロキサシン量を実施例2に記載された微生物アッセイによって測定した。図3に示すように、結果は、抗生物質濃度を分光光度的に測定した、実施例1に記載された実験と本質的に同じであった。ほとんど全ての抗生物質が1時間以内に炭上に吸着された。0時間に回収されたと表示された試料が、実際にはシプロフロキサシンと炭の間の約1分の接触を表すことは注目に値する。活性炭は、この短時間ですでに70%近い抗生物質を吸着していた。
【0160】
実施例4:盲腸液中の活性炭によるレボフロキサシンの吸着動態
活性炭が抗生物質とin vivoで相互作用する条件を模倣するために、本発明者らは、健康な子ブタの盲腸から採集された腸液の存在下で活性炭上へのレボフロキサシンの吸着を測定した(ex vivo条件)。
【0161】
レボフロキサシン(800μg/ml)を等体積の子ブタ盲腸液と共に静かに撹拌しながら37℃で2時間予備インキュベーションした。同じように、無配合活性炭、または同等の活性炭を80mg/ml含有する、脱製剤化された製品(脱製剤化されたコーティング済みペレット、またはDCP)の懸濁液を上記と同じ条件で等体積の子ブタ盲腸液と共にインキュベーションした。脱製剤化は、下記実施例6に提供されたように実施する。次に、抗生物質および炭の盲腸液懸濁液を等体積で混合し、静かに撹拌しながら37℃で最大5時間インキュベーションした。これは、100:1の炭対レボフロキサシンの比に相当した。表示した時間に、試料を回収し、遠心分離し、上清中に残留する、遊離の活性抗生物質の量を上記微生物アッセイによって測定した。図4に、約半分の抗生物質が盲腸液上に吸着され、1時間までに平衡に到達したことを示す。活性炭の存在下で、遊離の活性抗生物質が1時間後に上清中に残留せず、高い量の実際の腸液の存在下であっても、活性炭が効率的にレボフロキサシンを吸着できたことが示された。この実験は、さらに、活性炭が当該ex vivo条件下でレボフロキサシンを吸着する能力に活性炭の製剤が影響しなかったことを示している。
【0162】
2匹の異なる子ブタから抽出した盲腸液を用いて実験を行った。3個組の決定に関する平均±SDを示す。
【0163】
実施例5:異なる条件におけるレボフロキサシンの脱着
実施例4に記載されたように、レボフロキサシン(200μg/mlの最終濃度)を、子ブタ盲腸液の存在下で無配合活性炭(NFAC)または脱製剤化されたコーティング済みペレット(DCP)上に吸着させたが、例外としてこれらの実験では活性炭対レボフロキサシンの比を50:1とした。レボフロキサシンを盲腸液および炭と共に2時間インキュベーションした後に、液を遠心分離し、炭および盲腸液の粒子を含有するペレット3回洗浄し、最終的に100mM NaClを含有する50mMリン酸ナトリウム緩衝液中でpH4.0、7.0または10.0において22℃で静かに撹拌しながら最大30日間インキュベーションした。盲腸液を用いるが、活性炭の不在下で対照実験を行い、最初のインキュベーションと同体積で解離実験を行った。表示された時間に、試料を回収し、遠心分離し、液中に放出された遊離の活性抗生物質の量を、上清から微生物アッセイによって測定した。
【0164】
図5に、一部の抗生物質が材料から盲腸液中に経時的に放出されたこと、およびこの量がpH4.0および7.0よりもpH10.0の方がずっと重大であったことを示す。より少量のレボフロキサシンがNFACの存在下で放出された。全く驚くべきことに、pH4.0および7.0で、DCPの存在下で放出された活性炭の量は、検出限界(0.15μg/mlレボフロキサシン)未満であった。pH10.0では、レボフロキサシンの放出は測定可能であったが、本実験では最初の抗生物質量の1%に相当する2μg/mlを超えなかった。したがって、天然液中で遭遇しそうなpH値で、DCP中に含有される活性炭からのレボフロキサシンの解離を測定することはできなかった。
【0165】
実施例1:活性炭上への他の抗生物質の吸着有効性
アッセイ条件は、以下の通りであった:
− 結腸の浸透圧に調整した、pH6のリン酸緩衝食塩水(PBS)中で実験を行い、
− 初期量200μg/ml(または薬物の最大溶解度に応じてそれ未満)の抗生物質を試験し、
− 3/1〜10/1の活性炭/抗生物質比を試験し、
− 37℃で2時間インキュベーション(15mlポリプロピレンチューブ、低速回転20rpm)し、
− 0.5時間、1時間および2時間目に試料採取し、
− UV/可視分光光度分析によって残留(すなわち未吸着)抗生物質量を決定した。
【0166】
結果を表1および2に示す。
【0167】
【表2】
【0168】
【表3】
【0169】
上記表に示されるように、大部分の被験抗生物質が、ヒトにおいて臨床的に関連すると推定することのできる比で活性炭上に著しく吸着できる。in vitroのデータは、ex vivoのデータとよく相関し、データが文献から入手可能な場合、便中に見出される残留抗生物質の量を活性炭製剤で容易に排除できることが分かる。
【0170】
実施例7:医薬製剤化
異なる医薬製剤化過程を試験することによって、活性炭の部位特異的デリバリー用の経口投与剤形の実現性を検討した。その目的は、炭の吸着特性をまだできる限り保ちながら下部消化管における活性炭の遅延放出に適するガレノス剤形を開発することであった。
【0171】
活性炭は、低密度、疎水性、湿潤性などのその物理化学的性質のせいで、製剤化が非常に大変な製品である。ヒト投与のための治療用量で、本発明に記載された目的の使用のために炭を製剤化する試みは、活性炭の非常に低い凝集性のせいで従来の直接圧縮を利用しては不可能であった。単純な湿式造粒および圧縮でさえも、乏しい吸着性を示す錠剤につながる。しかしながら、本発明者らは、非常に良好な安定性および崩壊性を誘起して、溶液中への活性炭の急速で効率的な分散が得られるデリバリーシステムにどうにか大量の活性炭を処方した。さらに、活性炭の吸着性は、記載された製剤で保たれている。
【0172】
下記表に、湿式造粒に続く押出球状化によって得られたペレットの一例を示す。
【0173】
【表4】
【0174】
これらのペレットは、本実施例にわたり使用された製剤のコアを形成する。
【0175】
次に、これらのペレットに例えばEudragit(登録商標)FS30DまたはEudragit(登録商標)L30D55(Evonik, Darmstadt, Germany)などの特異的pH依存性ポリマーコーティングをコーティングする。
【0176】
製剤化された活性炭および無配合活性炭が模擬結腸条件で様々な抗生物質を吸着する能力を吸着動態研究で研究した。
【0177】
このために、活性炭のコーティング済みペレットを最初に緩衝液(50mMリン酸ナトリウム緩衝液、80mM NaCl、pH7.5)中で37℃で少なくとも30分間脱製剤化した。無配合活性炭(NFAC)の懸濁液もこの緩衝液で調製した。次に、脱製剤化されたペレット(製剤)の懸濁液およびNFAC懸濁液の吸着能を、レボフロキサシン溶液(レボフロキサシン)を用いて試験した。
【0178】
図6に、一例としてNFACおよび脱製剤化されたペレット上へのレボフロキサシンのいくつかの吸着動態の比較を示す。これらの実験は、前実施例と同様に20%Eudragit FS30Dをコーティングしたペレットを用いて行った。
【0179】
3:1および10:1という二つの検討された比のNFAC対レボフロキサシンおよび脱製剤化されたペレット対レボフロキサシンを示す。レボフロキサシン溶液から作られた対照試料も、吸着動態の間に分析した。
【0180】
脱製剤化されたペレットおよびNFAC上のレボフロキサシンの完全吸着が、10:1の比では60分後に観察される。製剤上への吸着は、3:1の比でほぼ完全であり、NFAC上へは完全である。したがって活性炭の吸着性は、製剤化過程を経ても本質的に維持される。
【0181】
時間、温度および湿度の限られた影響を製剤の大量貯蔵条件で観察することができた。崩壊時間および1時間後のシプロフロキサシン吸着の測定によって決定されたように、大量貯蔵条件で、室温で9ヶ月後に優れた安定性が得られた。
【0182】
より正確には、保存されたペレットは、既知量のシプロフロキサシンを添加された模擬結腸液(50mMリン酸ナトリウム緩衝液、80mM NaCl、pH7.5)中で崩壊した。ペレットの崩壊動態をモニタリングした。ペレットが崩壊して活性炭を放出すると、溶液のシプロフロキサシン濃度が減少する。下の表4に示した結果は、異なる試料採取時間における液中のシプロフロキサシンの残留率を表す。これらの結果は、ペレットの崩壊性が大量貯蔵条件で9ヶ月間維持されることを証明している。
【0183】
【表5】
【0184】
実施例8:活性炭のin vitro放出プロファイルおよびシプロフロキサシンの吸着動態
炭製剤に伴う主な課題の一つは、最大の吸着効率を可能にする、液中への炭ペレットの崩壊プロファイルである。上述の製剤が、濃度50μg/mLのシプロフロキサシンを添加されたいくつかの模擬腸液を使用してBioDis溶出試験装置(USP III放出装置)で試験されている。この実験で、様々な消化管区間のpH、緩衝能および浸透圧を反映する組成の液中で表示時間だけ連続的にインキュベーションすることによって、約73mgのコーティング済みペレットをBioDisシステムで溶出させた。各液の試料を回収し、分析して残留シプロフロキサシン濃度を決定した。シプロフロキサシンは、製剤から放出された活性炭によってのみ吸着されたことから、シプロフロキサシンの吸着を製剤からの活性炭の放出の代用として取り扱った。
【0185】
模擬消化管液を下に説明する:
模擬胃液:34.2mM NaCl、pHをHClで1.6に調整。
模擬十二指腸および近位空腸液:19.1mMマレイン酸、70mM NaCl、31.6mM NaOH、pH=6.5
模擬中部および下部空腸液:25mM HEPES、121.6mM NaCl、pHを7.0に調整
模擬回腸液:18mM HEPES、132.1mM NaCl、pHを7.5に調整
模擬結腸液:18.7mMマレイン酸、83.7mM NaCl、25.6mM NaOH、pHを6.0に調整
【0186】
図7に示すように、コーティング実施例として、FS30Dでコーティングされたカラゲナンベースの炭製剤は、pH7.5に到達するまで炭の放出を示さなかった。次に、シプロフロキサシンの吸着は非常に急速で、炭の分散から半時間以内に完了した。
【0187】
実施例9:他の可能性のある製剤
抗生物質は、哺乳動物において異なる吸収プロファイルを有し、初期に吸収されるものもあれば、後期に吸収されるものもある。後者は、2〜4時間後にその最大血漿中濃度に到達する。抗生物質の正常な吸収過程に対する任意の影響を避けるために、より遅延した吸着剤のデリバリーを可能にする製剤を開発することができる。
【0188】
そのような遅延放出を達成するために、ペレット製剤を速すぎる崩壊から防止し、使用されるポリマーの種類に応じて崩壊を30分〜2時間遅延させるサブコートを、そのペレット製剤にコーティングした。
【0189】
複数のコーティング技法を用いて様々な製剤を実現した。下記表5に、コーティングの組み合わせのいくつかの例を示す。
【0190】
【表6】
【0191】
pH7.5の模擬回腸液中でこれらのペレットを用いて溶出試験を行い、当該液中でのペレットの分散動態を評価し、得られた遅延を比較した。回腸液に50μg/mLシプロフロキサシンを添加し、各試料採取時間に溶液中に残った残留シプロフロキサシンの量を定量し、シプロフロキサシンの吸着を活性炭放出の代用として採用した。
【0192】
消化管を通過するペレットの進行を模倣するために、上記のようにこれらのペレットを用いてBioDis試験も行った。これは、ペレットからの炭の遅延放出のより詳細な特徴づけを可能にした。
【0193】
図8〜10に、表5に記載された製剤のいくつかからの、シプロフロキサシンの吸着として測定された炭の放出を説明する。
【0194】
図8から分かるように、ペレットの最終重量の35%w/wに相当するL30D55/NE30Dポリマー混合物から作られた第1のコーティング(サブコート)は、シプロフロキサシンの遅延吸着を誘起し、外側FS30Dコートを有するように作られた製剤に比べて、炭が約30分だけ炭の遅延放出を示したことを意味する。
【0195】
図9から分かるように、Aqoatでコーティングされたペレットは、等量のFS30Dでコーティングされたペレットよりも約30分速い溶出を示した。シプロフロキサシンの吸着は、1時間以内に完了した。シェラックでコーティングされたペレットでは、フィルムについて遅延溶出が観察され、炭ペレットの崩壊は少なくとも2時間延長した。
【0196】
図10から分かるように、様々な厚さのエチルセルロースコーティングの効果をペレットの溶出に関して評価した。2%エチルセルロースにある中間コートは、20% FS30Dコーティングに比べて約40分〜1時間だけ有意に遅延した活性炭の放出を誘導した。
【0197】
そのような製剤は、吸着剤の遅延型延長放出を提供する上で関心が持たれる可能性がある。
【0198】
実施例10:活性炭上へのイリノテカンおよびSN−38のin vitro吸着動態
活性炭上へのイリノテカンおよびその活性代謝物SN−38の吸着動態をin vitroで決定した(それぞれ図11Aおよび11B)。
【0199】
活性炭がイリノテカン(初濃度200g/mL)を吸着する能力を、模擬回腸液(18mM HEPES、132.1mM NaCl、NaOHでpH7.5に調整)中で評価した。活性炭およびイリノテカンの各比率は、イリノテカンに対して3:1および10:1であった。試料を遠心分離し、濾過し、10倍希釈してから、分光光度計を使用してイリノテカンの吸光度を368nmで測定することによって、吸着していないイリノテカンの濃度を決定した。図11Aから分かるように、3:1の比の活性炭/イリノテカンでイリノテカンの半量が約12分で吸着した。完全な吸着は、10:1の比の活性炭/イリノテカンで約15分で達成された。
【0200】
図11Bに、活性炭がSN−38を吸着する能力を示す。SN−38を0.01M NaOH(pH12)に50μg/mLの濃度で溶解させた。遠心分離および濾過の後に、吸着していないSN−38を、分光光度計を使用してその411nmの吸光度によって検出した。図11Bから分かるように、SN38の吸着は、10:1の活性炭/SN−38の比で約30分で完了した。
【0201】
活性炭(NFAC)(図11C)および脱製剤化されたコーティング済みペレット(DCP)(20%のFS30Dコーティング)から放出された炭(図11D)上へのイリノテカンおよびその代謝物SN−38の吸着動態を子ブタ盲腸液中でex vivoで決定した。
【0202】
子ブタ盲腸液に250μg/mlイリノテカンおよび50μg/ml SN-38を添加し、37℃で2時間予備インキュベーションした。NFACまたはDCPを、1:1希釈した子ブタ盲腸液と共に37℃で2時間予備インキュベーションした。NFAC/イリノテカンの比は、10:1、50:1であり、NFAC/SN38の比は、10:1、50:1、100:1および250:1であり、DCP由来活性炭対イリノテカンおよびSN38の比は、10:1および50:1であった。
【0203】
これらの二つの予備インキュベーション混合物を混ぜ合わせた後に、表示時間のあいだ静かに撹拌しながら37℃でインキュベーションを実施した。試料を回収し、遠心分離し、上清を濾過し、イリノテカンおよびSN38の存在をHPLCにより分析した。
【0204】
実施例11:抗生物質に対する細菌耐性の出現の減少に果たす、放出ターゲティング活性炭のin vivo性能
抗生物質処置が行われた間に放出ターゲティング活性炭(活性炭のコーティング済みペレット)が細菌耐性の出現を減少させる能力の概念証明(POC)試験を、生後4週間で離乳した子ブタにおいて行い、その試験をその2週間後の試験に含めた。
【0205】
この試験は、炭遅延放出製剤が、
− 便中抗生物質濃度を減少させ、
− 消化管フローラ中の細菌耐性の出現を防止し、
− 正常な抗生物質吸収過程を維持する
効力を実証するために、微生物およびPK/PDデータを評価するための、生活相(in-life phase)については非盲検であるが処置については盲検化された無作為化比較試験であった。
【0206】
被検抗生物質は、フルオロキノロンであるシプロフロキサシンであり、このin vivo POCを実施するためにそれを1.5mg/kg/日の用量で経口投与した。この種の試験は、Da Volterraによって考慮された任意の抗生物質に適用可能であろう。便中抗生物質濃度の減少および細菌耐性の出現の評価に使用された方法は、Da Volterraによって開発されたものである。実験をGLP条件下で行った。同じバッチからの子ブタは、誕生以来抗生物質で処置されたことはなかった。
【0207】
実験計画を図12に示す。
【0208】
この研究の主要評価項目は以下の通りであった:
薬物動態の基準:
− 1日目から9日目の間の便中シプロフロキサシン濃度の曲線下面積(AUC)の自然対数(logAUCD1−D9)の比較により、コーティング済みペレット存在下または不在下の便中シプロフロキサシン濃度を比較する。
SASソフトウェアを使用した台形アプローチによって1日目から9日目の間のAUCを計算し、記述統計解析し、t検定によって群間比較した(logAUCD1−D9に関して)。
− 以下を比較することによって、コーティング済みペレットの存在下または不在下の血漿中シプロフロキサシン濃度を比較する
○ 0時間と最終観察値に対応する時間Tlastの間の血漿中シプロフロキサシン濃度の曲線下面積(AUC)の自然対数(logAUC)(AUC0−lastの選択は、AUC0−∞についての推定値に対する比率が非常に高いことによって説明することができる)
○ 血漿中最高シプロフロキサシン濃度(Cmax)(logCmax)の自然対数
【0209】
ノンコンパートメントアプローチ(NCA)、線形/対数台形法によって、WinNonLinソフトウェア(バージョン5.2)を用いてCmaxおよびAUCを算出し、これを行った。0時間の血漿中シプロフロキサシン濃度を0ng/mLと見なした。次に、Log AUCおよびlogCmaxを計算し、記述統計解析した。
【0210】
薬力学の基準:
−1/1日目に対して基準化した、(処置)1日〜6日目のシプロフロキサシンおよびナリジクス酸に耐性のEnterobacteriaceae数のAUCを比較することによって、コーティング済みペレットの存在下または不在下でのシプロフロキサシンによる処置後の耐性細菌数を比較する。細菌数は、1/10希釈した便100μlをDrigaski寒天液上に蒔くことによって得られた。シプロフロキサシンおよびナリジクス酸に耐性のEnberobacteriaceae数は、希釈した便を、2ml/lシプロフロキサシンおよび20ml/lナリジクス酸を有するDrigaski寒天液上に蒔くことによって得られた。耐性Enterobacteriaceae数の検出限界は、1.00×102CFU/gであった。ベースラインは、処置前の平均耐性細菌数に関して計算し、曲線下面積は、ベースラインとシプロフロキサシン耐性Enterobacteriaceae数のlog10の曲線の間の面積である。
【0211】
結果
シプロフロキサシンに付随するコーティング済みペレットは、子ブタにおけるシプロフロキサシンの便中残留濃度を減少することが可能であった。その減少は統計的に有意であった。便中シプロフロキサシン濃度の結果の比較を図13に示し、表6に要約する。
【0212】
【表7】
【0213】
群2(シプロフロキサシン/プラセボ)と群3(シプロフロキサシン/コーティング済みペレット)の間のAUCD1−D9の差は、比較のt検定により統計的に有意であった(p値<0.0001)。
【0214】
群1(プラセボ/プラセボ)と群2(シプロフロキサシン/プラセボ)の間、および群1(プラセボ/プラセボ)と群3(シプロフロキサシン/Dav−132)の間にも有意差があった(どちらもp値<0.0001)。
【0215】
シプロフロキサシン投与に付随するコーティング済みペレットの投与は、血漿中シプロフロキサシン濃度に有意な変化を招かなかった。血漿中シプロフロキサシン濃度に関する結果を図14に示し、それらを表7に要約する。
【0216】
【表8】
【0217】
結果から、logAUCおよびlogCmaxに関してこれら2群の間に有意差がないことが示される(それぞれt検定のp値=0.28および0.51)。シプロフロキサシンと一緒にコーティング済みペレットを投与することで、便中シプロフロキサシンの残留濃度が原因で細菌耐性の低下が生じた(図15参照)。
【0218】
便中シプロフロキサシン耐性Enterobacteriaceae数は、子ブタをシプロフロキサシンで処置すると有意に増加する。シプロフロキサシンと共に投与された本発明による炭製剤は、表8に示すように細菌耐性の出現を有意に減少させた。対照群(プラセボ/プラセボ)は、耐性の出現を示さなかった。
【0219】
【表9】
【0220】
結論
結果から、本発明による製剤は:
− 子ブタによる耐容性が良好であり、
− 経口シプロフロキサシンと一緒に5日間投与後に便中シプロフロキサシン濃度を有意に低下させることが可能で、
− 抗生物質処置に対する細菌耐性の出現を有意に減少させることが可能で、
− 正常なシプロフロキサシン吸収過程への妨害がないことを示すことが可能な
ことが示された。
【0221】
実施例12:活性炭上への膵臓酵素のin vitro吸着動態
膵臓酵素を含有する医薬であるCreonの活性炭上への吸着動態をin vitroで決定した(図16)。活性炭上への酵素の吸着度は、タンパク質定量アッセイ(Bradford法)を用いて評価した。活性炭が膵臓酵素(1mg/mLのCreon)を吸着する能力を、緩衝液(50mMリン酸ナトリウム緩衝液、80mM NaCl、pH7.5に調整)中で評価した。活性炭とCreonのそれぞれの比率は、9:1、15:1および25:1であった。試料を遠心分離し、上清を濾過し、残留タンパク質量は、Bradfordタンパク質アッセイを用いて定量した。1mg/ml Creon溶液、および3mg/ml活性炭懸濁液をそれぞれ陽性対照および陰性対照として使用した。図16から分かるように、酵素の完全な吸着が、15:1の比では2時間で、25:1の比では1時間で得られた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラゲナンと混合された吸着剤を、好ましくはペレットの形態で含む組成物。
【請求項2】
吸着剤が活性炭である、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
カラゲナンがκ−カラゲナンである、請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
カラゲナンの量が、組成物の5重量%から25重量%の間、より好ましくは10重量%から20重量%の間に含まれる、請求項1〜3のいずれか一項記載の組成物。
【請求項5】
− 請求項1〜4のいずれか一項記載の組成物を含有するコア、および
− 吸着剤が腸管の所望の部分で製剤から放出されるように、該コアの周囲に形成された外部コーティング層
を含む製剤。
【請求項6】
− 請求項1〜4のいずれか一項記載の組成物を含有するコア、および
− 吸着剤が下部腸管中で製剤から放出されるように、該コアの周囲に形成された外部コーティング層
を含む、請求項5記載の製剤。
【請求項7】
外部コーティングがpH依存性腸溶性ポリマーである、請求項6記載の製剤。
【請求項8】
pH依存性腸溶性ポリマーが、セルロースアセテートトリメリテート(CAT)、セルロースアセテートフタレート(CAP)、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルおよびメタクリル酸ベースの陰イオン性コポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS)、メタクリル酸−アクリル酸エチルコポリマー、メタクリル酸−アクリル酸エチルコポリマー、メタクリル酸−メタクリル酸メチルコポリマー(1:1の比)、メタクリル酸−メタクリル酸メチルコポリマー(1:2の比)、ポリビニルアセテートフタレート(PVAP)ならびにシェラック樹脂から成る群より選択される、請求項7記載の製剤。
【請求項9】
ポリマーが、6.0以上のpHで溶解する、請求項7または8記載の製剤。
【請求項10】
pH依存性ポリマーが、
− シェラック、
− ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート
− ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート
− アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルおよびメタクリル酸ベースの陰イオン性コポリマー、ならびに
−メタクリル酸−メタクリル酸メチルコポリマー(1:2の比)
から成る群より選択される、請求項9記載の製剤。
【請求項11】
外部コーティングが、メタクリル酸メチル−メタクリル酸と、メタクリル酸−アクリル酸エチルコポリマーの99:1から80:20の間に含まれる比の混合物である、請求項6記載の製剤。
【請求項12】
さらなるコーティングが、コアと外部pH依存性層の間に提供され、該さらなるコーティングが、特に、
− pH依存性ポリマー、特にシェラック型ポリマー、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルおよびメタクリル酸ベースの陰イオン性コポリマー、メタクリル酸−アクリル酸エチルコポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS)、
− PVPまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)もしくはヒドロキシプロピルセルロース(HPC)などの高分子量セルロースポリマーなどのpH非依存性水溶性ポリマー、
− エチルセルロースポリマーまたはアクリル酸エチル−メタクリル酸メチルコポリマーなどのpH非依存性不溶性ポリマー、ならびに
− pH依存性ポリマーと、エチルセルロースまたはアクリル酸エチル−メタクリル酸メチルコポリマー(NE30D)などの水不溶性pH非依存性ポリマーの混合物
から成る群より選択される、請求項6〜11のいずれか一項記載の製剤。
【請求項13】
pH非依存的に溶解するポリマー層が、ヒドロキシプロピルセルロースまたはエチルセルロースから成る群より選択される少なくとも1種のセルロース誘導体を含む、請求項12記載の製剤。
【請求項14】
pH非依存性的に溶解するポリマー層が、メタクリル酸−アクリル酸エチルコポリマーとアクリル酸エチル−メタクリル酸メチルコポリマーの1:9〜9:1、好ましくは2:8〜3:7の混合物から作られる、請求項12記載の製剤。
【請求項15】
障害のための処置として投与される医薬品であって、該医薬品またはその代謝物もしくは誘導体が下部回腸、盲腸または結腸に到達すると副作用を有する該医薬品の腸管、特に結腸における副作用を除去または軽減するための方法に使用するための、請求項6〜14
のいずれか一項記載の製剤。
【請求項16】
抗生剤の抗生物質関連有害作用を除去もしくは軽減するための、特に抗生物質耐性の出現を除去もしくは軽減するための、または下痢を除去もしくは軽減するための方法に使用するための、請求項15記載の製剤。
【請求項17】
抗生物質および製剤が経口経路によって同時投与される、請求項16記載の製剤。
【請求項18】
医薬品が、抗腫瘍剤、例えばイリノテカンなどのトポイソメラーゼI阻害剤、ジアセレインなどの抗炎症化合物またはインターロイキン1阻害剤、パンクレリパーゼ、ロフルミラストまたはシロミラストなどの慢性閉塞性肺疾患(COPD)の処置に使用される選択的ホスホジエステラーゼ4阻害剤、ならびにコルヒチン、イリノテカンまたはその代謝物、特にSN−38などの抗炎症活性および抗有糸分裂活性を有する化合物から成る群より選択される、請求項15記載の製剤。
【請求項19】
マイコトキシン、エンドトキシンもしくはエンテロトキシンなどの細菌もしくは真菌毒素、または腸管内でClostridium difficileによって産生される毒素の作用を、それらが結腸に到達する前に除去するための方法に使用するための、請求項6〜14のいずれか一項記載の製剤。
【請求項20】
慢性腎疾患(CKD)、炎症性腸疾患(IBD)、特に潰瘍性大腸炎またはクローン病、および肝性脳症から成る群より選択される疾患を処置するための方法に使用するための、請求項6〜14のいずれか一項記載の製剤。
【請求項21】
下部腸管におけるAGE、フェノール(例えばp−クレシルスルフェート)、インドール(例えばインドキシルスルフェート)、一酸化窒素、酸素ラジカル、プロスタグランジン、ロイコトリエン、ヒスタミン、プロテアーゼ、マトリックスメタロプロテイナーゼまたは窒素化合物、特にアンモニアの量を除去または減少させるための方法に使用するための、請求項6〜14のいずれか一項記載の製剤。
【請求項22】
特にペットまたは農用動物における鼓腸、便臭、口臭または食物不耐性を軽減するための、請求項6〜14記載の製剤の使用。
【請求項1】
カラゲナンと混合された吸着剤を、好ましくはペレットの形態で含む組成物。
【請求項2】
吸着剤が活性炭である、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
カラゲナンがκ−カラゲナンである、請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
カラゲナンの量が、組成物の5重量%から25重量%の間、より好ましくは10重量%から20重量%の間に含まれる、請求項1〜3のいずれか一項記載の組成物。
【請求項5】
− 請求項1〜4のいずれか一項記載の組成物を含有するコア、および
− 吸着剤が腸管の所望の部分で製剤から放出されるように、該コアの周囲に形成された外部コーティング層
を含む製剤。
【請求項6】
− 請求項1〜4のいずれか一項記載の組成物を含有するコア、および
− 吸着剤が下部腸管中で製剤から放出されるように、該コアの周囲に形成された外部コーティング層
を含む、請求項5記載の製剤。
【請求項7】
外部コーティングがpH依存性腸溶性ポリマーである、請求項6記載の製剤。
【請求項8】
pH依存性腸溶性ポリマーが、セルロースアセテートトリメリテート(CAT)、セルロースアセテートフタレート(CAP)、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルおよびメタクリル酸ベースの陰イオン性コポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS)、メタクリル酸−アクリル酸エチルコポリマー、メタクリル酸−アクリル酸エチルコポリマー、メタクリル酸−メタクリル酸メチルコポリマー(1:1の比)、メタクリル酸−メタクリル酸メチルコポリマー(1:2の比)、ポリビニルアセテートフタレート(PVAP)ならびにシェラック樹脂から成る群より選択される、請求項7記載の製剤。
【請求項9】
ポリマーが、6.0以上のpHで溶解する、請求項7または8記載の製剤。
【請求項10】
pH依存性ポリマーが、
− シェラック、
− ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート
− ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート
− アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルおよびメタクリル酸ベースの陰イオン性コポリマー、ならびに
−メタクリル酸−メタクリル酸メチルコポリマー(1:2の比)
から成る群より選択される、請求項9記載の製剤。
【請求項11】
外部コーティングが、メタクリル酸メチル−メタクリル酸と、メタクリル酸−アクリル酸エチルコポリマーの99:1から80:20の間に含まれる比の混合物である、請求項6記載の製剤。
【請求項12】
さらなるコーティングが、コアと外部pH依存性層の間に提供され、該さらなるコーティングが、特に、
− pH依存性ポリマー、特にシェラック型ポリマー、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルおよびメタクリル酸ベースの陰イオン性コポリマー、メタクリル酸−アクリル酸エチルコポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS)、
− PVPまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)もしくはヒドロキシプロピルセルロース(HPC)などの高分子量セルロースポリマーなどのpH非依存性水溶性ポリマー、
− エチルセルロースポリマーまたはアクリル酸エチル−メタクリル酸メチルコポリマーなどのpH非依存性不溶性ポリマー、ならびに
− pH依存性ポリマーと、エチルセルロースまたはアクリル酸エチル−メタクリル酸メチルコポリマー(NE30D)などの水不溶性pH非依存性ポリマーの混合物
から成る群より選択される、請求項6〜11のいずれか一項記載の製剤。
【請求項13】
pH非依存的に溶解するポリマー層が、ヒドロキシプロピルセルロースまたはエチルセルロースから成る群より選択される少なくとも1種のセルロース誘導体を含む、請求項12記載の製剤。
【請求項14】
pH非依存性的に溶解するポリマー層が、メタクリル酸−アクリル酸エチルコポリマーとアクリル酸エチル−メタクリル酸メチルコポリマーの1:9〜9:1、好ましくは2:8〜3:7の混合物から作られる、請求項12記載の製剤。
【請求項15】
障害のための処置として投与される医薬品であって、該医薬品またはその代謝物もしくは誘導体が下部回腸、盲腸または結腸に到達すると副作用を有する該医薬品の腸管、特に結腸における副作用を除去または軽減するための方法に使用するための、請求項6〜14
のいずれか一項記載の製剤。
【請求項16】
抗生剤の抗生物質関連有害作用を除去もしくは軽減するための、特に抗生物質耐性の出現を除去もしくは軽減するための、または下痢を除去もしくは軽減するための方法に使用するための、請求項15記載の製剤。
【請求項17】
抗生物質および製剤が経口経路によって同時投与される、請求項16記載の製剤。
【請求項18】
医薬品が、抗腫瘍剤、例えばイリノテカンなどのトポイソメラーゼI阻害剤、ジアセレインなどの抗炎症化合物またはインターロイキン1阻害剤、パンクレリパーゼ、ロフルミラストまたはシロミラストなどの慢性閉塞性肺疾患(COPD)の処置に使用される選択的ホスホジエステラーゼ4阻害剤、ならびにコルヒチン、イリノテカンまたはその代謝物、特にSN−38などの抗炎症活性および抗有糸分裂活性を有する化合物から成る群より選択される、請求項15記載の製剤。
【請求項19】
マイコトキシン、エンドトキシンもしくはエンテロトキシンなどの細菌もしくは真菌毒素、または腸管内でClostridium difficileによって産生される毒素の作用を、それらが結腸に到達する前に除去するための方法に使用するための、請求項6〜14のいずれか一項記載の製剤。
【請求項20】
慢性腎疾患(CKD)、炎症性腸疾患(IBD)、特に潰瘍性大腸炎またはクローン病、および肝性脳症から成る群より選択される疾患を処置するための方法に使用するための、請求項6〜14のいずれか一項記載の製剤。
【請求項21】
下部腸管におけるAGE、フェノール(例えばp−クレシルスルフェート)、インドール(例えばインドキシルスルフェート)、一酸化窒素、酸素ラジカル、プロスタグランジン、ロイコトリエン、ヒスタミン、プロテアーゼ、マトリックスメタロプロテイナーゼまたは窒素化合物、特にアンモニアの量を除去または減少させるための方法に使用するための、請求項6〜14のいずれか一項記載の製剤。
【請求項22】
特にペットまたは農用動物における鼓腸、便臭、口臭または食物不耐性を軽減するための、請求項6〜14記載の製剤の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2013−520467(P2013−520467A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−554336(P2012−554336)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【国際出願番号】PCT/EP2011/052682
【国際公開番号】WO2011/104275
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(507246969)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【国際出願番号】PCT/EP2011/052682
【国際公開番号】WO2011/104275
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(507246969)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]