消化管内における剤形の崩壊を評価する方法、装置及びコンピュータプログラム製品
本発明は、流体によって満たされるため、且つ剤形を収容するための、セルを囲む壁部を備え、第一の状態と第二の状態との間で壁部を繰り返し変形させるために壁部の外部に配置された加圧可能な区画であって、第一の状態におけるセルの容積は第二の状態におけるセルの容積よりも大きい加圧可能な区画をさらに備えている、消化管内における剤形の崩壊を評価するための装置に関し、この装置は、セルからの、若しくはセル内への流体の流れを定量的に制御するため、及び/又は壁部が剤形に働かせる接触力を定量的に制御するための制御手段をも備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消化管内における剤形の崩壊を評価する方法、消化管内における剤形の崩壊を評価するための装置、及び消化管内における剤形の崩壊を評価するためのコンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬化合物及び栄養補給剤を、これら化合物及び/又は補給剤を備えている錠剤のような剤形を摂取させることによって、身体に投与することができる。通常、体内でのこれら剤形成分の取り込みの速度及び程度は、消化管(GI tract)の様々な部位に存在する条件に影響される。成分の生物学的有効性の向上を可能とするために、消化管内での剤形の挙動の知見、とりわけ剤形の崩壊及び/又は剤形からの活性成分の放出の知見を得ることが重要である。
【0003】
このような知見を得るための重要な方法はモデルの利用であり、このモデルにおいて剤形は、消化管(の様々な部位)に存在している生理的条件に晒される。通常、このような生理的条件は、化合物(例えば摂取物質、塩分、酵素、代謝産物)のpH、温度、及び存在/濃度のような環境的パラメータによって、並びに消化管の一部の壁部の収縮の力、範囲、持続期間、速度及び頻度のような力学的パラメータによって区別することができる。
【0004】
特許文献1は、胃及び小腸内の生理的条件を模倣するモデルを説明している。この、いわゆる「TNO摂取モデル」(TIM)は、消化管の様々な区画(例えば胃、十二指腸、空腸、及び回腸)を表す様々なチャンバを備えている。これらチャンバそれぞれが、pH、温度、ぜん動運動、力学的な混合、消化酵素と胆汁と膵液との分泌、及び膜による消化生成物の吸収それぞれを、内部においてシミュレートするように設計されている。
【0005】
モデルの区画はガラスジャケットを備え、このガラスジャケットは柔軟な膜/スリーブを包囲しており、この柔軟な膜/スリーブ内にはキームスが存在している。ジャケットと膜との間の空間内における(水の)圧力を変化させることにより、膜を圧迫及び緩和することができ、これによってキームスは混合され、蠕動運動をシミュレートすることができる。これら蠕動運動は、ある区画から次の区画へキームスを輸送するために用いられる。さらに、環境パラメータのモニタリング、キームスの輸送、様々な消化液の分泌、並びに消化生成物及び水の除去を、連続的に制御することができる。
【0006】
これまで、TIMの使用は、力学的パラメータの模倣よりも環境的パラメータの模倣に焦点を合わせていた。消化管の様々な部位における力学的パラメータは、消化管内での剤形の崩壊に重大な役割を果たす場合がある。従って、現実的な力学的パラメータをも組み込むことは重要な改良であり、これにより、消化管の様々な部位に対する現実的な力学的条件下での時間内の剤形の崩壊を検討することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許第0642382号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、消化管内における剤形の崩壊を評価するための既知の装置の代替物としての役割を果たすことができる新しい装置を提供することである。とりわけ、本発明の目的は、消化管をより正確にシミュレートする装置を提供することである。
【0009】
より具体的には、本発明の目的は、消化管内における剤形からの成分の放出を評価することに適した装置を提供することである。
【0010】
さらなる目的は、消化管内における剤形の崩壊を評価する新しい方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
ここで、所定の加圧可能な区画を特有の制御手段と組み合わせて利用することが可能であることが見出された。
【0012】
従って、本発明は、消化管内における剤形の崩壊を評価する方法であって、
・剤形を、壁部によって囲まれたセル内に配置するステップと、
・壁部を、第一の状態と第二の状態との間で繰り返し変形させるステップであって、それ ぞれ加圧及び減圧によって、第一の状態におけるセルの容積は、第二の状態におけるセ ルの容積よりも大きく、この壁部の外部に加圧可能な区画が配置されているステップと 、
・壁部が剤形にかける接触力を定量的に制御するステップと、
を備えている方法に関する。
【0013】
本発明はさらに、消化管内における剤形の崩壊を評価するための装置であって、流体によって満たされるため、且つ剤形を収容するための、セルを囲む壁部を備え、第一の状態と第二の状態との間で壁部を繰り返し変形させるために壁部の外部に配置された加圧可能な区画であって、第一の状態におけるセルの容積は第二の状態におけるセルの容積よりも大きい、加圧可能な区画をさらに備えている装置に関し、この装置は、壁部が剤形にかける接触力を定量的に制御するための制御手段をも備えている。
【0014】
壁部の2つの状態の間における変形は、加圧可能な区画内への気体若しくは液体の導入、又は加圧可能な区画外への気体若しくは液体の引き抜きによって達成される。壁部の変形に起因してセルの容積は変化し、加圧可能な区画内への気体又は液体の導入は結果としてセルの容積を減少させ、加圧可能な区画外への気体又は液体の吸引は結果としてセルの容積を増加させる。セル内の容積の減少又は増加の結果として、セル内に存在する流体は、それぞれ、セル外へ押し出され、セル内へ引き込まれる。加圧可能な区画内の圧力を制御することにより、セルは収縮するか、または弛緩する。
【0015】
第一の状態及び第二の状態は、セル容積の減少及びセル容積の増加からなるサイクルの間における、壁部の極限位置である。従ってサイクルとは、第一の状態から第二の状態への壁の変形と、それに続く、次のサイクルの第一の状態に達するまでの逆の変形とを意味する。複数の後続のサイクルが実行される際に、後続のサイクルにおける第一の状態を、先行するサイクルにおける第一の状態と同じにすることができ、即ち、複数のサイクルの第一の状態を同じ変形に合致させることができ、これにより、複数のサイクルは同じセル容積を有して開始する。しかしながら、後続のサイクルの第一の段階を、先行するサイクルの第一の段階とは異なって選択することもできる。同様に、後続のサイクルの第二の段階を、先行するサイクルの第二の段階と同じにする、又は異ならせることも可能である。後続のサイクルの第一の段階、及び後続のサイクルの第二の段階におけるこのような変化によって、セル容積の大きさを独立してサイクル毎に変化させることができる。本発明の目的のために、第一の状態におけるセルの容積は第二の状態におけるセルの容積よりも大きい。
【0016】
壁部は、例えば気体又は液体の導入又は吸い出しを中断した際に、サイクルの第一の状態と第二の状態との間の中間状態にあるであろうことが理解される。このような作動は、結果として、セルの容積の段階的な減少及び増加をそれぞれもたらす。
【0017】
加圧可能な区画内に導入される気体又は液体の量及び流速と、壁部によって剤形にかけられる圧力との定量的な制御によって、制御された形で剤形に力をかけることが可能となる。とりわけ、力学的な力を剤形にかけるとともに再生し、且つ、このことからは独立して、消化管における生理的条件と同様の生理的条件下における剤形の周囲の流体の流体機構を制御することが可能となった。
【0018】
ここで本発明の実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して記載する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明による装置の実施形態の側面概略図である。
【図2a】崩壊ユニット1aが第一の状態にある、図1に示された装置の崩壊ユニット1aのより詳細な側面概略図である。
【図2b】崩壊ユニット1aが第二の状態にある、図1に示された装置の崩壊ユニット1aのより詳細な側面概略図である。
【図3a】本発明による装置の壁部分の断面図である。
【図3b】本発明によるさらなる装置の壁部分の断面図である。
【図3c】本発明によるさらなる装置の壁部分の断面図である。
【図3d】本発明によるさらなる装置の壁部分の断面図である。
【図3e】本発明によるさらなる装置の壁部分の断面図である。
【図3f】本発明によるさらなる装置の壁部分の断面図である。
【図4】複数の加圧可能な区画を備えている本発明による装置の実施形態の側面概略図である。
【図5】本発明による方法の実施形態のフローチャートである。
【図6】本発明による装置のさらなる実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図は、本発明による好ましい実施形態の単なる概略図である。図において、同じ参照符号は、同等の、又は対応した部分を参照している。
【0021】
図1は、崩壊ユニット1aと制御手段1bとを備えている本発明による装置1の第一の実施形態の断面概略図を示している。装置1は、消化管内における剤形2の崩壊を評価するために配置されている。それに加えて、崩壊ユニット1aは、硬質の外壁部と軟質の内壁部4とを有しているチャンバ3を備えている。代替物、例えば単なる軟質の壁部分を有しているタイヤが、チャンバ3に対して存在する。チャンバ3の軟質の壁部4はセル5を画定し、このセル5は軟質の壁部4によって囲まれている。作動中に、セル5は、崩壊を評価される剤形2を備える。とりわけ、壁部4は、剤形を収容するためのセルを主に取り囲んでいるポケットを形成している。
【0022】
セル5の軟質の壁部4は、(崩壊していない)剤形2が開口部6を通過することを妨げるのに十分小さい開口部6を備えている。セル5は―開口部6を介して―さらなるセル7と流体連通しており、両セルは、キームス(chyme)のモデル又は別の流体としての流体8によって満たされている。さらなるセル7は、バルーン又はコンテナとして実施することができる。
【0023】
さらに、崩壊ユニット1aは加圧可能な区画9を備え、この加圧可能な区画9はチャンバ3及び軟質の壁部4によって画定されている。加圧可能な区画9は、この加圧可能な区画9内の圧力を計測するための計測手段10を備えている。計測手段10は、装置1における任意の構成要素である。セル5内の力センサを用いて、剤形に直接かけられている力を計測することができ、これにより例えば制御手段1bを較正することができる。
【0024】
崩壊ユニット1aは制御手段1bに作動可能に接続され、この制御手段1bは、加圧可能な区画9内への気体若しくは液体の導入、又は加圧可能な区画9外への気体若しくは液体の引き出しそれぞれを定量的に制御するように設計されている。作動可能に接続されているということは、崩壊ユニット1aから制御手段1bへの、及び反対に制御手段1bから崩壊ユニット1aへの気体又は液体の輸送を可能とする、作動可能な接続が存在していることを意味している。作動可能な接続の一例は、チューブ、ホース又はパイプのような、気体又は液体を輸送可能なガイドを備えたリンク11’である。また、崩壊ユニット1a及び制御手段1bを1つの単一ユニットに統合することができ、この場合、リンク11’のような引き延ばされた形状のリンクの存在は必要とされない。
【0025】
制御手段1bは、加圧可能な区画9を加圧及び減圧するための加圧手段を備え、この加圧手段はプランジャ11と、プランジャポンプ12と、このプランジャポンプ12を動かすためのステッピングモータ21とを含んでいる。当然のことながら、別の液圧アクチュエータ(hydraulic actuator)を適用して、制御可能な形で区画9を加圧及び減圧することもできる。さらに、別のタイプのアクチュエータ、例えば機械式アクチュエータ又は空圧式アクチュエータを用いて区画9内の圧力を変更することが可能である。制御手段は、プランジャポンプ12を動かすためのステッピングモータ21を制御可能であるコンピュータ13をさらに備えている。コンピュータ13は、計測手段10からデータを受信可能であってもよい。計測手段10が装置1中に存在している場合、図1に示されているように、この計測手段は加圧可能な区画9内に存在していてもよい。しかしながら、この計測手段10はセル5内又はプランジャポンプ12内に存在することもできる。区画9内の圧力を、プランジャポンプ12を適用する代わりに、その他の方法、例えばバルブ及び流量計の採用によって配置することができることにさらに留意すべきである。
【0026】
加圧可能な区画9内への気体又は液体の導入は、結果として、軟質の壁部4の変形をもたらして、セル5の容積の減少を生じさせる。同様に、加圧可能な区画9外への気体又は液体の引き出しは、結果として、軟質の壁部4の変形をもたらして、セル5の容積の増加を生じさせる。気体又は液体の導入と、それに続く、加圧可能な区画9からの気体又は液体の引き出しとによる軟質の壁部4の変形は、サイクルを規定している。セル容積の減少及びセル容積の増大からなるサイクル中の壁部4の極限位置は、崩壊ユニット1aの第一の状態及び第二の状態とそれぞれ称される。サイクルにおけるセル5の容積の変化に続いて、キームスは開口部を通じてセルの外に、又はセルの中それぞれに、流れる。さらなるセル7からセル内に流体が動く流体連通の方向は、方向Aとして規定される。セル5からさらなるセル7内に流体が動く流体連通の方向は、方向Bとして規定される。プランジャポンプの対応する動きの方向は、A’及びB’として示されている。
【0027】
壁部4は、通常ポリシロキサンのような軟質の材料から作られている。ポリシロキサンの利点は透明であることであり、このことは、カメラのような光学的手段による、剤形の崩壊のリアルタイムモニタリングを可能とする。
【0028】
壁部4は、予め形成された折り畳まれた部分を備えることができる。このような部分の利点は、基本的に再現可能な方法で壁部の折り畳みを達成できることである。基本的に再現可能な方法とは、壁部の変形の方法において結果的に生じる変化が、流体の流れの計測精度及び/又は制御精度に対して重要ではないということを意味している。
【0029】
図は非対称なセルを示しているが、実際の状況においては、セルを縦軸に対して対称とすることができる。
【0030】
図2a及び図2bそれぞれは、崩壊ユニット1aのより詳細な断面概略図を示している。図2aは、第一の状態にある崩壊ユニット1aを示し、加圧可能な区画9は減圧されている。図2bは、第二の状態にある崩壊ユニット1aを示し、加圧可能な区画9は加圧されている。この点において、図1が、第一の状態及び第二の状態にそれぞれ対応している位置間の任意の位置にある崩壊ユニット1aを示していることに留意すべきである。剤形2は、第一の状態において、第二の状態におけるよりも小さい絞り力を受ける。
【0031】
本発明による装置において、セルを、壁部の開口部を介して、さらなるセルとの流体連通状態とすることができる。さらなるセルは、キームス又はキームスのモデルを備えることができる。図1、図2a及び図2bは本発明の複数の実施形態を示し、ここでセルは開口部6を備えている。
【0032】
図3a〜図3fそれぞれは、本発明による装置1の壁部分4’の断面図を示し、この断面図は、開口部6に向かう流体連通方向A、Bに沿ったものである。
【0033】
従来の装置の欠点は、評価されるべき剤形が流体の流れに晒された際に、その後異なる場所に容易に移動することが多いということである。このことは、特に崩壊装置の特定の場所に焦点を合わせた電気的機器を利用する場合に、剤形の崩壊を観察することを難しくする。さらに、別の(所定ではない)場所における剤形の崩壊は、崩壊が起こる条件の制御を難しくし、乏しい計測再現性をもたらす。この問題は、軟質のネット内に剤形を捕捉することで解決することができ、この軟質のネットは、意図した位置に(又は意図した位置の近くに)剤形を保ち、且つより小さく断片化された剤形の構成要素を流れによって消失させることを可能とする。
【0034】
一実施形態においては、本発明による装置は開口部6を備え、この開口部6は、剤形がさらなるセルに流れることを防ぐために配置されている。とりわけ開口部6は、剤形と、崩壊の間に形成された少なくとも主な剤形の断片とがさらなるボリュームに流れることを防ぐために配置されている。開口部は、例えば、ネット、バー及びふるいからなるグループから選択された1つ以上の要素を備えることができる。
【0035】
剤形がさらなるボリュームに流れることを防ぐために配置される開口部を備えている本発明による装置の利点は、剤形‐又は少なくとも、崩壊の間に形成された剤形の主な破片‐が、セル5からさらなるセル7内へキームスとともに流れることが妨げられることである。このようにして軟質のネットの使用を回避できることは、さらなる利点である。
【0036】
本発明による装置が開口部6を備えている場合には、このような開口部は、少なくとも剤形の最も長い寸法が流体連通方向に垂直な開口部6の断面の最も長い寸法よりも長いという意味で、又は少なくとも剤形の最も短い寸法が流体連通方向に垂直な開口部6の断面の最も短い寸法よりも長いという意味で、崩壊が評価されることになる剤形よりも通常小さい。
【0037】
好ましい実施形態においては、開口部6は、流体連通方向に対して垂直なスリット形状を為している。このような開口部は、例えば図3a〜図3eに示されるような開口部である。スリット形状の開口部は、放射状に延在する複数の脚部、例えば放射状に延在する2つの脚部(図3a〜図3b)、放射状に延在する3つの脚部(図3c)、又は放射状に延在する4つの脚部(図3d)を有することが可能であり、これら脚部は円周方向に略均一に分配されている。特定の実施形態においては、開口部6は、流体連通方向A、Bに垂直な平面に方向付けられたディスク形状(図3f)とすることができる。
【0038】
別の実施形態においては、セルは複数の開口部、具体的にはスリット形状の複数の開口部、より具体的には放射状に延在するスリット形状の複数の開口部、より一層具体的には、円周方向に略均一に分配されている、放射状に延在するスリット形状の複数の開口部(図3e)を備えることができる。
【0039】
好ましい実施形態においては、軟質の壁部4は、略環状の開口部を持つ1つの開放端を有する円筒状のスリーブ又はチューブの形状を有しており、この開放端は開口部6、とりわけ図3a〜図3fのいずれかに示されているような開口部6の形状に絞られている。このような壁部を備えているセルにおいては、断面における壁部の輪郭の直径は、開口部6に向かって移動する場合に次第に減少する。断面におけるセルの面積が次第に減少する場合、セル内に存在する剤形は、軟質の壁部に対して同じ位置に実質的に留まり、このことは再生可能な加圧を可能にする。
【0040】
一実施形態においては、開口部6は(又は存在する場合、複数の開口部6は)調節可能とすることができる。とりわけ、開口部6が、略環状の開口部を絞ることにより作成された開口部である場合、開口部をさらに絞ることにより、又は開口部への絞り力を少なくとも部分的に解放することにより、調節を容易に実行することができる。
【0041】
制御手段1bによる気体又は液体の導入及び引き出しを、導入される気体又は液体の流速及び量において定量的に制御することができる。気体又は液体の流速を、気体又は液体の量から独立的して制御することができるので、サイクルの持続時間と振幅とを独立的に制御することが可能である。このことは本発明の重要な利点である。例えば、比較的少量の気体又は液体の導入及び引き出しの際に、使用者は、この導入及び引き出しを高速で行うか又は低速で行うか、という選択肢を有する。このことは結果的に、比較的小さい振幅を有するとともに、短い又は長い持続時間のいずれかをそれぞれ有する後続のサイクルをもたらす。別の方法においては、気体又は液体を比較的低速で導入及び引き出す際に、使用者は、気体又は液体の量が小さい状態で行うか又は大きい状態で行うか、という選択肢を有する。この場合、このことは結果的に、大きい振幅又は小さい振幅のいずれかをそれぞれ有する、長い持続時間の後続のサイクルをもたらす。これに関連して、高速とは、第一の状態から第二の状態への推移が比較的早く実行されることを意味していることに留意すべきである。
【0042】
上述から、サイクルの振幅が、このサイクルの第一及び第二の状態における壁部の変形間の差によって決定され、生じ得る最も大きな振幅が、軟質の壁部が加圧可能な区画9の完全な加圧から完全な加圧まで変形することができる全範囲であるということが得られる。サイクルの振幅が、崩壊ユニット1aによって生じ得る最も大きな振幅未満である場合には、このようなサイクルを、軟質の壁部が変形できる全範囲に属する様々な範囲に亘って行う選択肢がある。壁部が剤形に接触した際に剤形に働く力は、壁部4に加えられた力に依存している。従って、剤形に働く様々な異なる範囲の力と組み合わせて、特有の持続時間と特有の振幅とを有する所定のサイクルを実行することが可能である。
【0043】
従って、本発明による装置のこの特性は、壁部4の変形の頻度、速度、及び振幅を、剤形に働く力から独立して制御することを可能にする。同様に、流体の流れを制御することは、壁部の変形のシーケンスの回数(sequence frequency)及び速度を設定すること、並びに/又はサイクル間の圧力差を設定することを含むことができる。流体機構が変形の頻度、速度及び振幅によって実質的に完全に決定されるので、本発明による装置は、剤形に働く力の関数として流体機構を研究することを可能にする。このことは、本発明の大きな利点である。さらに、セルから、及びセル内への流体の流れの定量的な制御とは別に、壁部が剤形に働かせる接触力を制御することができる。加えて、プロセスを定量的に制御することは、時間の経過に伴って制御の設定を調節又は保持できるという意味で、動的又は静的とすることができる。
【0044】
加圧可能な区画9を加圧及び減圧するための媒体は、液体又は気体とすることができる。媒体は、気体と比較すると低い液体の圧縮率が崩壊ユニット1aに対するより直接的な制御を可能とするので、好ましくは液体である。
【0045】
2つのセル間の流体連通の方向は、基本的に、重力の方向に対して任意の方向とすることができる。とりわけ、方向Aは重力の方向に対して0度〜90度の範囲の、好ましくは重力の方向に対して0度〜30度の範囲の、より好ましくは重力の方向に対して0度〜10度の範囲の角度を為す。
【0046】
本発明による装置は、加圧状態と減圧状態との間において壁部を繰り返し変形させるために壁部の外部に配置された、複数の加圧可能な区画9を備えることができる。複数の加圧可能な区画9の利点は、軟質の壁部4の変形をより正確に制御できることである。別の利点は、剤形の場所に亘って、より良好な制御を保持できることである。図4は、加圧可能な区画9a及び9bを備えている本発明による装置の一例を示している。複数の加圧可能な区画9を有するので、例えば、加圧可能な区画9bを比較的減圧された状態に保ち、これにより剤形2への力を低く保つとともに、主に加圧可能な区画9aを介して流体の流れを誘導することが可能となる。このような配置は、剤形2に働く圧力から独立的に、壁部4の変形の頻度及び振幅をさらに良好に制御することを可能にする。
【0047】
装置の較正は、セルの容積の、プランジャポンプ12のプランジャ11の位置に対する依存性に対して実行することができる。このような較正は、例えば、(1)最後の、さらなるセル7を開口部6から取り除き、次いで(2)加圧可能な区画9を加圧状態にして、次いで(3)装置の開口部6を、液体で満たされた容器、好ましくは計量ジョッキに持ち込んで、開口部が液位以下になるように、即ち開口部が液体に接触するようにして、次いで(4)加圧可能な区画9の減圧の間に容器からセル内に引き出された液体の量に対して、複数の様々なプランジャ位置を決定する、ことにより実行することができる。決定は、計量ジョッキ内の液位を読み取ることにより、容易に実行することができる。
【0048】
代替的な方法においては、較正は、減圧状態にあるセルを液体で満たすことと、次いで加圧可能な区画9を加圧する間にセルから容器内に放出された液体の量に対する、複数の様々なプランジャ位置を決定することとを備えることが理解される。
【0049】
加圧可能な区画9内の流体が気体のように比較的高い圧縮率を有している場合、装置の較正を、加圧可能な区画9内の圧力の、プランジャポンプ12のプランジャ11の位置に対する依存性に関して実行することもできる。例えばこのような較正は、プランジャ位置の範囲に対して加圧可能な区画9内の圧力を決定することにより実行することができる。圧力の計測は、例えば計測手段10によって実行することができ、この計測手段10を加圧可能な区画9内に存在させることができる(図1も参照されたい)。
【0050】
通常、加圧可能な区画9内の圧力の、プランジャポンプ12のプランジャ11の位置に対する依存性は、加圧及び減圧のために用いられる媒体のタイプによって決定される。例えば、所定のプランジャ位置において加圧可能な区画9内に生成された圧力は、通常、液体を用いる場合よりも気体を用いる場合の方が低い。
【0051】
加圧可能な区画9内の圧力の、プランジャポンプ12のプランジャ11の位置に対する依存性を、軟質の壁部4の特性、例えば軟質の壁部4の剛性によってさらに決定することができる。
【0052】
また、装置の較正は、剤形に働く圧力の、加圧可能な区画内に存在する圧力に対する依存性に関して実行することができる。このような較正は、例えばセル5内、とりわけ崩壊の評価の間に剤形が配置されるセル内の位置にフォースメータを配置することにより実行することができる。
【0053】
本発明による有利な実施形態においては、方法は、例えば分析を目的として、剤形の崩壊の程度を表すデータを集めるステップをも含む。
【0054】
さらに、本発明は、消化管内における剤形の崩壊を評価するためのコンピュータプログラムに関し、このコンピュータプログラム製品は、壁部によって囲まれているセルからの、及びセル内への流体の流れを定量的に制御するステップ、並びに/又はセル内に配置された剤形に壁部が働かせる接触力を定量的に制御するステップをプロセッサに実行させるためのコンピュータ可読のコードを備え、壁部は、第一の状態と第二の状態との間で繰り返し変形させられ、第一の状態におけるセルの容積は、第二の状態におけるセルの容積よりも大きい。
【0055】
コンピュータプログラム製品は、CD又はDVDのようなデータ記録媒体に格納された、コンピュータが実行可能な命令のセットを備えることができる。また、プログラム制御可能なコンピュータが上述において定義された方法を実行することを可能にする、コンピュータが実行可能な命令のセットは、リモートサーバから、例えばインターネットを介してダウンロードするために利用可能とすることもできる。消化管内における剤形の崩壊を評価する方法は、FPGA及び/又はASIC構成要素のような専用のハードウェア構造を用いて実行することができる。さもなくばこの方法は、例えば、セルからの、及びセル内への流体の流れを定量的に制御するステップ、及び/又は壁部が剤形に働かせる接触力を定量的に制御するステップをコンピュータシステムのプロセッサに実行させるための命令を備えているコンピュータプログラム製品を用いて、少なくとも部分的に実行することも可能である。
【0056】
図5は、本発明による方法の実施形態のフローチャートを示している。この方法は、消化管内における剤形の崩壊の評価用に用いられる。方法は、流体によって満たされているとともに壁部によって囲まれたセル内に剤形を配置するステップ(100)、第一の状態と第二の状態との間で壁部を加圧及び減圧それぞれによって繰り返し変形させるステップであって、第一の状態におけるセルの容積は第二の状態における容積よりも大きく、加圧可能な区画がこの壁部の外部に配置されているステップ(110)、並びにセルからの、及びセル内への流体の流れを定量的に制御するステップ(120)及び/又は壁部が剤形にかける接触力を定量的に制御するステップを備えている。
【0057】
図6は、本発明による装置のさらなる実施形態を示している。ここで、装置には、区画9内の圧力が所定の最大レベルを超えないことを保証するための圧力制御ユニットが設けられている。加えて、圧力制御ユニットには、プランジャ11と区画9とを相互接続しているリンク11’内の圧力を計測する、液柱計のような圧力センサ22が設けられている。所定の最大圧力レベルに達したことが検出された場合、プランジャ11のような加圧手段を制御している制御手段1bに信号を送ることにより、圧力を下げることができる。或いは、圧力制御ユニットは、バルブのような、リンク11’を減圧させるためのローカル装置を含むことができる。また、圧力制御ユニットには膨張ベッセル(expansion vessel)20を設けることが可能であり、これにより区画9内の最大圧力を設定することができる。
【0058】
本発明は、本明細書に記載された実施形態に限定されない。多くの変形が可能であることが理解される。
【0059】
加圧可能な区画における超過圧力を防ぐ安全システムを適用することにより、本発明による装置の前記区画に望ましくない高い内圧がかかることを本質的に妨げる。さらに、最大超過圧力レベルを選択することにより、剤形に対する最大接触力を比較的簡単な方法で設定することができる。
【0060】
本発明による装置は、単なる消化管内における剤形の崩壊の評価用だけでなく、消化管の病的な極限状態の研究用にも用いることができることに留意すべきである。
【0061】
別のこのような変形例は、当業者には明らかであり、添付の特許請求の範囲に記載されたような本発明の技術的範囲内にあると考えられる。
【符号の説明】
【0062】
1 装置
1a 崩壊ユニット
1b 制御手段
2 剤形
3 チャンバ
4 軟質の壁部
5 セル
6 開口部
7 さらなるセル
8 流体
9 加圧可能な区画
10 計測手段
11 プランジャ
12 プランジャポンプ
13 コンピュータ
20 膨張ベッセル
21 ステッピングモータ
22 圧力センサ
【技術分野】
【0001】
本発明は、消化管内における剤形の崩壊を評価する方法、消化管内における剤形の崩壊を評価するための装置、及び消化管内における剤形の崩壊を評価するためのコンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬化合物及び栄養補給剤を、これら化合物及び/又は補給剤を備えている錠剤のような剤形を摂取させることによって、身体に投与することができる。通常、体内でのこれら剤形成分の取り込みの速度及び程度は、消化管(GI tract)の様々な部位に存在する条件に影響される。成分の生物学的有効性の向上を可能とするために、消化管内での剤形の挙動の知見、とりわけ剤形の崩壊及び/又は剤形からの活性成分の放出の知見を得ることが重要である。
【0003】
このような知見を得るための重要な方法はモデルの利用であり、このモデルにおいて剤形は、消化管(の様々な部位)に存在している生理的条件に晒される。通常、このような生理的条件は、化合物(例えば摂取物質、塩分、酵素、代謝産物)のpH、温度、及び存在/濃度のような環境的パラメータによって、並びに消化管の一部の壁部の収縮の力、範囲、持続期間、速度及び頻度のような力学的パラメータによって区別することができる。
【0004】
特許文献1は、胃及び小腸内の生理的条件を模倣するモデルを説明している。この、いわゆる「TNO摂取モデル」(TIM)は、消化管の様々な区画(例えば胃、十二指腸、空腸、及び回腸)を表す様々なチャンバを備えている。これらチャンバそれぞれが、pH、温度、ぜん動運動、力学的な混合、消化酵素と胆汁と膵液との分泌、及び膜による消化生成物の吸収それぞれを、内部においてシミュレートするように設計されている。
【0005】
モデルの区画はガラスジャケットを備え、このガラスジャケットは柔軟な膜/スリーブを包囲しており、この柔軟な膜/スリーブ内にはキームスが存在している。ジャケットと膜との間の空間内における(水の)圧力を変化させることにより、膜を圧迫及び緩和することができ、これによってキームスは混合され、蠕動運動をシミュレートすることができる。これら蠕動運動は、ある区画から次の区画へキームスを輸送するために用いられる。さらに、環境パラメータのモニタリング、キームスの輸送、様々な消化液の分泌、並びに消化生成物及び水の除去を、連続的に制御することができる。
【0006】
これまで、TIMの使用は、力学的パラメータの模倣よりも環境的パラメータの模倣に焦点を合わせていた。消化管の様々な部位における力学的パラメータは、消化管内での剤形の崩壊に重大な役割を果たす場合がある。従って、現実的な力学的パラメータをも組み込むことは重要な改良であり、これにより、消化管の様々な部位に対する現実的な力学的条件下での時間内の剤形の崩壊を検討することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許第0642382号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、消化管内における剤形の崩壊を評価するための既知の装置の代替物としての役割を果たすことができる新しい装置を提供することである。とりわけ、本発明の目的は、消化管をより正確にシミュレートする装置を提供することである。
【0009】
より具体的には、本発明の目的は、消化管内における剤形からの成分の放出を評価することに適した装置を提供することである。
【0010】
さらなる目的は、消化管内における剤形の崩壊を評価する新しい方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
ここで、所定の加圧可能な区画を特有の制御手段と組み合わせて利用することが可能であることが見出された。
【0012】
従って、本発明は、消化管内における剤形の崩壊を評価する方法であって、
・剤形を、壁部によって囲まれたセル内に配置するステップと、
・壁部を、第一の状態と第二の状態との間で繰り返し変形させるステップであって、それ ぞれ加圧及び減圧によって、第一の状態におけるセルの容積は、第二の状態におけるセ ルの容積よりも大きく、この壁部の外部に加圧可能な区画が配置されているステップと 、
・壁部が剤形にかける接触力を定量的に制御するステップと、
を備えている方法に関する。
【0013】
本発明はさらに、消化管内における剤形の崩壊を評価するための装置であって、流体によって満たされるため、且つ剤形を収容するための、セルを囲む壁部を備え、第一の状態と第二の状態との間で壁部を繰り返し変形させるために壁部の外部に配置された加圧可能な区画であって、第一の状態におけるセルの容積は第二の状態におけるセルの容積よりも大きい、加圧可能な区画をさらに備えている装置に関し、この装置は、壁部が剤形にかける接触力を定量的に制御するための制御手段をも備えている。
【0014】
壁部の2つの状態の間における変形は、加圧可能な区画内への気体若しくは液体の導入、又は加圧可能な区画外への気体若しくは液体の引き抜きによって達成される。壁部の変形に起因してセルの容積は変化し、加圧可能な区画内への気体又は液体の導入は結果としてセルの容積を減少させ、加圧可能な区画外への気体又は液体の吸引は結果としてセルの容積を増加させる。セル内の容積の減少又は増加の結果として、セル内に存在する流体は、それぞれ、セル外へ押し出され、セル内へ引き込まれる。加圧可能な区画内の圧力を制御することにより、セルは収縮するか、または弛緩する。
【0015】
第一の状態及び第二の状態は、セル容積の減少及びセル容積の増加からなるサイクルの間における、壁部の極限位置である。従ってサイクルとは、第一の状態から第二の状態への壁の変形と、それに続く、次のサイクルの第一の状態に達するまでの逆の変形とを意味する。複数の後続のサイクルが実行される際に、後続のサイクルにおける第一の状態を、先行するサイクルにおける第一の状態と同じにすることができ、即ち、複数のサイクルの第一の状態を同じ変形に合致させることができ、これにより、複数のサイクルは同じセル容積を有して開始する。しかしながら、後続のサイクルの第一の段階を、先行するサイクルの第一の段階とは異なって選択することもできる。同様に、後続のサイクルの第二の段階を、先行するサイクルの第二の段階と同じにする、又は異ならせることも可能である。後続のサイクルの第一の段階、及び後続のサイクルの第二の段階におけるこのような変化によって、セル容積の大きさを独立してサイクル毎に変化させることができる。本発明の目的のために、第一の状態におけるセルの容積は第二の状態におけるセルの容積よりも大きい。
【0016】
壁部は、例えば気体又は液体の導入又は吸い出しを中断した際に、サイクルの第一の状態と第二の状態との間の中間状態にあるであろうことが理解される。このような作動は、結果として、セルの容積の段階的な減少及び増加をそれぞれもたらす。
【0017】
加圧可能な区画内に導入される気体又は液体の量及び流速と、壁部によって剤形にかけられる圧力との定量的な制御によって、制御された形で剤形に力をかけることが可能となる。とりわけ、力学的な力を剤形にかけるとともに再生し、且つ、このことからは独立して、消化管における生理的条件と同様の生理的条件下における剤形の周囲の流体の流体機構を制御することが可能となった。
【0018】
ここで本発明の実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して記載する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明による装置の実施形態の側面概略図である。
【図2a】崩壊ユニット1aが第一の状態にある、図1に示された装置の崩壊ユニット1aのより詳細な側面概略図である。
【図2b】崩壊ユニット1aが第二の状態にある、図1に示された装置の崩壊ユニット1aのより詳細な側面概略図である。
【図3a】本発明による装置の壁部分の断面図である。
【図3b】本発明によるさらなる装置の壁部分の断面図である。
【図3c】本発明によるさらなる装置の壁部分の断面図である。
【図3d】本発明によるさらなる装置の壁部分の断面図である。
【図3e】本発明によるさらなる装置の壁部分の断面図である。
【図3f】本発明によるさらなる装置の壁部分の断面図である。
【図4】複数の加圧可能な区画を備えている本発明による装置の実施形態の側面概略図である。
【図5】本発明による方法の実施形態のフローチャートである。
【図6】本発明による装置のさらなる実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図は、本発明による好ましい実施形態の単なる概略図である。図において、同じ参照符号は、同等の、又は対応した部分を参照している。
【0021】
図1は、崩壊ユニット1aと制御手段1bとを備えている本発明による装置1の第一の実施形態の断面概略図を示している。装置1は、消化管内における剤形2の崩壊を評価するために配置されている。それに加えて、崩壊ユニット1aは、硬質の外壁部と軟質の内壁部4とを有しているチャンバ3を備えている。代替物、例えば単なる軟質の壁部分を有しているタイヤが、チャンバ3に対して存在する。チャンバ3の軟質の壁部4はセル5を画定し、このセル5は軟質の壁部4によって囲まれている。作動中に、セル5は、崩壊を評価される剤形2を備える。とりわけ、壁部4は、剤形を収容するためのセルを主に取り囲んでいるポケットを形成している。
【0022】
セル5の軟質の壁部4は、(崩壊していない)剤形2が開口部6を通過することを妨げるのに十分小さい開口部6を備えている。セル5は―開口部6を介して―さらなるセル7と流体連通しており、両セルは、キームス(chyme)のモデル又は別の流体としての流体8によって満たされている。さらなるセル7は、バルーン又はコンテナとして実施することができる。
【0023】
さらに、崩壊ユニット1aは加圧可能な区画9を備え、この加圧可能な区画9はチャンバ3及び軟質の壁部4によって画定されている。加圧可能な区画9は、この加圧可能な区画9内の圧力を計測するための計測手段10を備えている。計測手段10は、装置1における任意の構成要素である。セル5内の力センサを用いて、剤形に直接かけられている力を計測することができ、これにより例えば制御手段1bを較正することができる。
【0024】
崩壊ユニット1aは制御手段1bに作動可能に接続され、この制御手段1bは、加圧可能な区画9内への気体若しくは液体の導入、又は加圧可能な区画9外への気体若しくは液体の引き出しそれぞれを定量的に制御するように設計されている。作動可能に接続されているということは、崩壊ユニット1aから制御手段1bへの、及び反対に制御手段1bから崩壊ユニット1aへの気体又は液体の輸送を可能とする、作動可能な接続が存在していることを意味している。作動可能な接続の一例は、チューブ、ホース又はパイプのような、気体又は液体を輸送可能なガイドを備えたリンク11’である。また、崩壊ユニット1a及び制御手段1bを1つの単一ユニットに統合することができ、この場合、リンク11’のような引き延ばされた形状のリンクの存在は必要とされない。
【0025】
制御手段1bは、加圧可能な区画9を加圧及び減圧するための加圧手段を備え、この加圧手段はプランジャ11と、プランジャポンプ12と、このプランジャポンプ12を動かすためのステッピングモータ21とを含んでいる。当然のことながら、別の液圧アクチュエータ(hydraulic actuator)を適用して、制御可能な形で区画9を加圧及び減圧することもできる。さらに、別のタイプのアクチュエータ、例えば機械式アクチュエータ又は空圧式アクチュエータを用いて区画9内の圧力を変更することが可能である。制御手段は、プランジャポンプ12を動かすためのステッピングモータ21を制御可能であるコンピュータ13をさらに備えている。コンピュータ13は、計測手段10からデータを受信可能であってもよい。計測手段10が装置1中に存在している場合、図1に示されているように、この計測手段は加圧可能な区画9内に存在していてもよい。しかしながら、この計測手段10はセル5内又はプランジャポンプ12内に存在することもできる。区画9内の圧力を、プランジャポンプ12を適用する代わりに、その他の方法、例えばバルブ及び流量計の採用によって配置することができることにさらに留意すべきである。
【0026】
加圧可能な区画9内への気体又は液体の導入は、結果として、軟質の壁部4の変形をもたらして、セル5の容積の減少を生じさせる。同様に、加圧可能な区画9外への気体又は液体の引き出しは、結果として、軟質の壁部4の変形をもたらして、セル5の容積の増加を生じさせる。気体又は液体の導入と、それに続く、加圧可能な区画9からの気体又は液体の引き出しとによる軟質の壁部4の変形は、サイクルを規定している。セル容積の減少及びセル容積の増大からなるサイクル中の壁部4の極限位置は、崩壊ユニット1aの第一の状態及び第二の状態とそれぞれ称される。サイクルにおけるセル5の容積の変化に続いて、キームスは開口部を通じてセルの外に、又はセルの中それぞれに、流れる。さらなるセル7からセル内に流体が動く流体連通の方向は、方向Aとして規定される。セル5からさらなるセル7内に流体が動く流体連通の方向は、方向Bとして規定される。プランジャポンプの対応する動きの方向は、A’及びB’として示されている。
【0027】
壁部4は、通常ポリシロキサンのような軟質の材料から作られている。ポリシロキサンの利点は透明であることであり、このことは、カメラのような光学的手段による、剤形の崩壊のリアルタイムモニタリングを可能とする。
【0028】
壁部4は、予め形成された折り畳まれた部分を備えることができる。このような部分の利点は、基本的に再現可能な方法で壁部の折り畳みを達成できることである。基本的に再現可能な方法とは、壁部の変形の方法において結果的に生じる変化が、流体の流れの計測精度及び/又は制御精度に対して重要ではないということを意味している。
【0029】
図は非対称なセルを示しているが、実際の状況においては、セルを縦軸に対して対称とすることができる。
【0030】
図2a及び図2bそれぞれは、崩壊ユニット1aのより詳細な断面概略図を示している。図2aは、第一の状態にある崩壊ユニット1aを示し、加圧可能な区画9は減圧されている。図2bは、第二の状態にある崩壊ユニット1aを示し、加圧可能な区画9は加圧されている。この点において、図1が、第一の状態及び第二の状態にそれぞれ対応している位置間の任意の位置にある崩壊ユニット1aを示していることに留意すべきである。剤形2は、第一の状態において、第二の状態におけるよりも小さい絞り力を受ける。
【0031】
本発明による装置において、セルを、壁部の開口部を介して、さらなるセルとの流体連通状態とすることができる。さらなるセルは、キームス又はキームスのモデルを備えることができる。図1、図2a及び図2bは本発明の複数の実施形態を示し、ここでセルは開口部6を備えている。
【0032】
図3a〜図3fそれぞれは、本発明による装置1の壁部分4’の断面図を示し、この断面図は、開口部6に向かう流体連通方向A、Bに沿ったものである。
【0033】
従来の装置の欠点は、評価されるべき剤形が流体の流れに晒された際に、その後異なる場所に容易に移動することが多いということである。このことは、特に崩壊装置の特定の場所に焦点を合わせた電気的機器を利用する場合に、剤形の崩壊を観察することを難しくする。さらに、別の(所定ではない)場所における剤形の崩壊は、崩壊が起こる条件の制御を難しくし、乏しい計測再現性をもたらす。この問題は、軟質のネット内に剤形を捕捉することで解決することができ、この軟質のネットは、意図した位置に(又は意図した位置の近くに)剤形を保ち、且つより小さく断片化された剤形の構成要素を流れによって消失させることを可能とする。
【0034】
一実施形態においては、本発明による装置は開口部6を備え、この開口部6は、剤形がさらなるセルに流れることを防ぐために配置されている。とりわけ開口部6は、剤形と、崩壊の間に形成された少なくとも主な剤形の断片とがさらなるボリュームに流れることを防ぐために配置されている。開口部は、例えば、ネット、バー及びふるいからなるグループから選択された1つ以上の要素を備えることができる。
【0035】
剤形がさらなるボリュームに流れることを防ぐために配置される開口部を備えている本発明による装置の利点は、剤形‐又は少なくとも、崩壊の間に形成された剤形の主な破片‐が、セル5からさらなるセル7内へキームスとともに流れることが妨げられることである。このようにして軟質のネットの使用を回避できることは、さらなる利点である。
【0036】
本発明による装置が開口部6を備えている場合には、このような開口部は、少なくとも剤形の最も長い寸法が流体連通方向に垂直な開口部6の断面の最も長い寸法よりも長いという意味で、又は少なくとも剤形の最も短い寸法が流体連通方向に垂直な開口部6の断面の最も短い寸法よりも長いという意味で、崩壊が評価されることになる剤形よりも通常小さい。
【0037】
好ましい実施形態においては、開口部6は、流体連通方向に対して垂直なスリット形状を為している。このような開口部は、例えば図3a〜図3eに示されるような開口部である。スリット形状の開口部は、放射状に延在する複数の脚部、例えば放射状に延在する2つの脚部(図3a〜図3b)、放射状に延在する3つの脚部(図3c)、又は放射状に延在する4つの脚部(図3d)を有することが可能であり、これら脚部は円周方向に略均一に分配されている。特定の実施形態においては、開口部6は、流体連通方向A、Bに垂直な平面に方向付けられたディスク形状(図3f)とすることができる。
【0038】
別の実施形態においては、セルは複数の開口部、具体的にはスリット形状の複数の開口部、より具体的には放射状に延在するスリット形状の複数の開口部、より一層具体的には、円周方向に略均一に分配されている、放射状に延在するスリット形状の複数の開口部(図3e)を備えることができる。
【0039】
好ましい実施形態においては、軟質の壁部4は、略環状の開口部を持つ1つの開放端を有する円筒状のスリーブ又はチューブの形状を有しており、この開放端は開口部6、とりわけ図3a〜図3fのいずれかに示されているような開口部6の形状に絞られている。このような壁部を備えているセルにおいては、断面における壁部の輪郭の直径は、開口部6に向かって移動する場合に次第に減少する。断面におけるセルの面積が次第に減少する場合、セル内に存在する剤形は、軟質の壁部に対して同じ位置に実質的に留まり、このことは再生可能な加圧を可能にする。
【0040】
一実施形態においては、開口部6は(又は存在する場合、複数の開口部6は)調節可能とすることができる。とりわけ、開口部6が、略環状の開口部を絞ることにより作成された開口部である場合、開口部をさらに絞ることにより、又は開口部への絞り力を少なくとも部分的に解放することにより、調節を容易に実行することができる。
【0041】
制御手段1bによる気体又は液体の導入及び引き出しを、導入される気体又は液体の流速及び量において定量的に制御することができる。気体又は液体の流速を、気体又は液体の量から独立的して制御することができるので、サイクルの持続時間と振幅とを独立的に制御することが可能である。このことは本発明の重要な利点である。例えば、比較的少量の気体又は液体の導入及び引き出しの際に、使用者は、この導入及び引き出しを高速で行うか又は低速で行うか、という選択肢を有する。このことは結果的に、比較的小さい振幅を有するとともに、短い又は長い持続時間のいずれかをそれぞれ有する後続のサイクルをもたらす。別の方法においては、気体又は液体を比較的低速で導入及び引き出す際に、使用者は、気体又は液体の量が小さい状態で行うか又は大きい状態で行うか、という選択肢を有する。この場合、このことは結果的に、大きい振幅又は小さい振幅のいずれかをそれぞれ有する、長い持続時間の後続のサイクルをもたらす。これに関連して、高速とは、第一の状態から第二の状態への推移が比較的早く実行されることを意味していることに留意すべきである。
【0042】
上述から、サイクルの振幅が、このサイクルの第一及び第二の状態における壁部の変形間の差によって決定され、生じ得る最も大きな振幅が、軟質の壁部が加圧可能な区画9の完全な加圧から完全な加圧まで変形することができる全範囲であるということが得られる。サイクルの振幅が、崩壊ユニット1aによって生じ得る最も大きな振幅未満である場合には、このようなサイクルを、軟質の壁部が変形できる全範囲に属する様々な範囲に亘って行う選択肢がある。壁部が剤形に接触した際に剤形に働く力は、壁部4に加えられた力に依存している。従って、剤形に働く様々な異なる範囲の力と組み合わせて、特有の持続時間と特有の振幅とを有する所定のサイクルを実行することが可能である。
【0043】
従って、本発明による装置のこの特性は、壁部4の変形の頻度、速度、及び振幅を、剤形に働く力から独立して制御することを可能にする。同様に、流体の流れを制御することは、壁部の変形のシーケンスの回数(sequence frequency)及び速度を設定すること、並びに/又はサイクル間の圧力差を設定することを含むことができる。流体機構が変形の頻度、速度及び振幅によって実質的に完全に決定されるので、本発明による装置は、剤形に働く力の関数として流体機構を研究することを可能にする。このことは、本発明の大きな利点である。さらに、セルから、及びセル内への流体の流れの定量的な制御とは別に、壁部が剤形に働かせる接触力を制御することができる。加えて、プロセスを定量的に制御することは、時間の経過に伴って制御の設定を調節又は保持できるという意味で、動的又は静的とすることができる。
【0044】
加圧可能な区画9を加圧及び減圧するための媒体は、液体又は気体とすることができる。媒体は、気体と比較すると低い液体の圧縮率が崩壊ユニット1aに対するより直接的な制御を可能とするので、好ましくは液体である。
【0045】
2つのセル間の流体連通の方向は、基本的に、重力の方向に対して任意の方向とすることができる。とりわけ、方向Aは重力の方向に対して0度〜90度の範囲の、好ましくは重力の方向に対して0度〜30度の範囲の、より好ましくは重力の方向に対して0度〜10度の範囲の角度を為す。
【0046】
本発明による装置は、加圧状態と減圧状態との間において壁部を繰り返し変形させるために壁部の外部に配置された、複数の加圧可能な区画9を備えることができる。複数の加圧可能な区画9の利点は、軟質の壁部4の変形をより正確に制御できることである。別の利点は、剤形の場所に亘って、より良好な制御を保持できることである。図4は、加圧可能な区画9a及び9bを備えている本発明による装置の一例を示している。複数の加圧可能な区画9を有するので、例えば、加圧可能な区画9bを比較的減圧された状態に保ち、これにより剤形2への力を低く保つとともに、主に加圧可能な区画9aを介して流体の流れを誘導することが可能となる。このような配置は、剤形2に働く圧力から独立的に、壁部4の変形の頻度及び振幅をさらに良好に制御することを可能にする。
【0047】
装置の較正は、セルの容積の、プランジャポンプ12のプランジャ11の位置に対する依存性に対して実行することができる。このような較正は、例えば、(1)最後の、さらなるセル7を開口部6から取り除き、次いで(2)加圧可能な区画9を加圧状態にして、次いで(3)装置の開口部6を、液体で満たされた容器、好ましくは計量ジョッキに持ち込んで、開口部が液位以下になるように、即ち開口部が液体に接触するようにして、次いで(4)加圧可能な区画9の減圧の間に容器からセル内に引き出された液体の量に対して、複数の様々なプランジャ位置を決定する、ことにより実行することができる。決定は、計量ジョッキ内の液位を読み取ることにより、容易に実行することができる。
【0048】
代替的な方法においては、較正は、減圧状態にあるセルを液体で満たすことと、次いで加圧可能な区画9を加圧する間にセルから容器内に放出された液体の量に対する、複数の様々なプランジャ位置を決定することとを備えることが理解される。
【0049】
加圧可能な区画9内の流体が気体のように比較的高い圧縮率を有している場合、装置の較正を、加圧可能な区画9内の圧力の、プランジャポンプ12のプランジャ11の位置に対する依存性に関して実行することもできる。例えばこのような較正は、プランジャ位置の範囲に対して加圧可能な区画9内の圧力を決定することにより実行することができる。圧力の計測は、例えば計測手段10によって実行することができ、この計測手段10を加圧可能な区画9内に存在させることができる(図1も参照されたい)。
【0050】
通常、加圧可能な区画9内の圧力の、プランジャポンプ12のプランジャ11の位置に対する依存性は、加圧及び減圧のために用いられる媒体のタイプによって決定される。例えば、所定のプランジャ位置において加圧可能な区画9内に生成された圧力は、通常、液体を用いる場合よりも気体を用いる場合の方が低い。
【0051】
加圧可能な区画9内の圧力の、プランジャポンプ12のプランジャ11の位置に対する依存性を、軟質の壁部4の特性、例えば軟質の壁部4の剛性によってさらに決定することができる。
【0052】
また、装置の較正は、剤形に働く圧力の、加圧可能な区画内に存在する圧力に対する依存性に関して実行することができる。このような較正は、例えばセル5内、とりわけ崩壊の評価の間に剤形が配置されるセル内の位置にフォースメータを配置することにより実行することができる。
【0053】
本発明による有利な実施形態においては、方法は、例えば分析を目的として、剤形の崩壊の程度を表すデータを集めるステップをも含む。
【0054】
さらに、本発明は、消化管内における剤形の崩壊を評価するためのコンピュータプログラムに関し、このコンピュータプログラム製品は、壁部によって囲まれているセルからの、及びセル内への流体の流れを定量的に制御するステップ、並びに/又はセル内に配置された剤形に壁部が働かせる接触力を定量的に制御するステップをプロセッサに実行させるためのコンピュータ可読のコードを備え、壁部は、第一の状態と第二の状態との間で繰り返し変形させられ、第一の状態におけるセルの容積は、第二の状態におけるセルの容積よりも大きい。
【0055】
コンピュータプログラム製品は、CD又はDVDのようなデータ記録媒体に格納された、コンピュータが実行可能な命令のセットを備えることができる。また、プログラム制御可能なコンピュータが上述において定義された方法を実行することを可能にする、コンピュータが実行可能な命令のセットは、リモートサーバから、例えばインターネットを介してダウンロードするために利用可能とすることもできる。消化管内における剤形の崩壊を評価する方法は、FPGA及び/又はASIC構成要素のような専用のハードウェア構造を用いて実行することができる。さもなくばこの方法は、例えば、セルからの、及びセル内への流体の流れを定量的に制御するステップ、及び/又は壁部が剤形に働かせる接触力を定量的に制御するステップをコンピュータシステムのプロセッサに実行させるための命令を備えているコンピュータプログラム製品を用いて、少なくとも部分的に実行することも可能である。
【0056】
図5は、本発明による方法の実施形態のフローチャートを示している。この方法は、消化管内における剤形の崩壊の評価用に用いられる。方法は、流体によって満たされているとともに壁部によって囲まれたセル内に剤形を配置するステップ(100)、第一の状態と第二の状態との間で壁部を加圧及び減圧それぞれによって繰り返し変形させるステップであって、第一の状態におけるセルの容積は第二の状態における容積よりも大きく、加圧可能な区画がこの壁部の外部に配置されているステップ(110)、並びにセルからの、及びセル内への流体の流れを定量的に制御するステップ(120)及び/又は壁部が剤形にかける接触力を定量的に制御するステップを備えている。
【0057】
図6は、本発明による装置のさらなる実施形態を示している。ここで、装置には、区画9内の圧力が所定の最大レベルを超えないことを保証するための圧力制御ユニットが設けられている。加えて、圧力制御ユニットには、プランジャ11と区画9とを相互接続しているリンク11’内の圧力を計測する、液柱計のような圧力センサ22が設けられている。所定の最大圧力レベルに達したことが検出された場合、プランジャ11のような加圧手段を制御している制御手段1bに信号を送ることにより、圧力を下げることができる。或いは、圧力制御ユニットは、バルブのような、リンク11’を減圧させるためのローカル装置を含むことができる。また、圧力制御ユニットには膨張ベッセル(expansion vessel)20を設けることが可能であり、これにより区画9内の最大圧力を設定することができる。
【0058】
本発明は、本明細書に記載された実施形態に限定されない。多くの変形が可能であることが理解される。
【0059】
加圧可能な区画における超過圧力を防ぐ安全システムを適用することにより、本発明による装置の前記区画に望ましくない高い内圧がかかることを本質的に妨げる。さらに、最大超過圧力レベルを選択することにより、剤形に対する最大接触力を比較的簡単な方法で設定することができる。
【0060】
本発明による装置は、単なる消化管内における剤形の崩壊の評価用だけでなく、消化管の病的な極限状態の研究用にも用いることができることに留意すべきである。
【0061】
別のこのような変形例は、当業者には明らかであり、添付の特許請求の範囲に記載されたような本発明の技術的範囲内にあると考えられる。
【符号の説明】
【0062】
1 装置
1a 崩壊ユニット
1b 制御手段
2 剤形
3 チャンバ
4 軟質の壁部
5 セル
6 開口部
7 さらなるセル
8 流体
9 加圧可能な区画
10 計測手段
11 プランジャ
12 プランジャポンプ
13 コンピュータ
20 膨張ベッセル
21 ステッピングモータ
22 圧力センサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
消化管内における剤形(2)の崩壊を評価する方法であって、
剤形(2)を、流体によって満たされているとともに壁部(4)によって囲まれたセル(5)内に配置するステップと、
前記壁部(4)を、第一の状態と第二の状態との間で繰り返し変形させるステップであって、それぞれ加圧及び減圧によって、前記第一の状態における前記セル(5)の容積は、前記第二の状態における前記セル(5)の容積よりも大きく、前記壁部の外部に加圧可能な区画(9)が配置されているステップと、
前記壁部(4)が前記剤形に働かせる接触力を定量的に制御するステップと、
を備える方法。
【請求項2】
前記流体の流れを制御するステップが、
前記壁部の変形のシーケンスの回数、
前記壁部の変形の速度、並びに/又は
前記加圧可能な区画(9)内の、前記第一の状態及び前記第二の状態にそれぞれ対応する圧力間の圧力差
を設定するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記定量的に制御するステップは動的に実行されることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記剤形の崩壊の程度を表すデータを集めるステップをさらに備えている請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
消化管内における剤形の崩壊を評価する装置(1)であって、流体によって満たされるために、且つ剤形(2)を収容するための、セル(5)を囲む壁部(4)を備え、第一の状態と第二の状態との間で前記壁部(4)を繰り返し変形させるために前記壁部(4)の外部に配置され、前記第一の状態における前記セル(5)の容積は、前記第二の状態における容積よりも大きい、加圧可能な区画(9)をさらに備え、前記装置(1)は、前記壁部が前記剤形(2)に働かせる接触力を定量的に制御するための制御手段をも備えていることを特徴とする装置。
【請求項6】
前記加圧可能な区画を加圧及び減圧するための加圧手段をさらに備え、前記加圧手段は好ましくはプランジャポンプ(12)と、前記プランジャポンプを動かすためのステッピングモータ(21)と、を含んでいる請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記壁部(4)は、前記剤形(2)を収容するための、前記セル(5)を主に取り囲むポケットを形成していることを特徴とする請求項5又は6に記載の装置。
【請求項8】
前記壁部(4)は、予め形成された折り畳まれた部分を備えていることを特徴とする請求項5〜8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記セル(5)は、前記壁部における開口部(6)を介して、さらなるセル(7)と流体連通していることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記開口部(6)は、前記剤形(2)が前記さらなるセルに流れることを防ぐために配置されていることを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記開口部(6)はスリット形状であることを特徴とする請求項9又は10に記載の装置。
【請求項12】
前記スリットは放射状に延在する脚部を有し、前記脚部は円周方向に略均一に分配されていることを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記加圧された状態と前記減圧された状態との間で前記壁部(4)を繰り返し変形させるために前記壁部(4)の外部に配置された、複数の加圧可能な区画(9)をさらに備えていることを特徴とする請求項5〜13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
消化管内における剤形(2)の崩壊を評価するためのコンピュータプログラム製品であって、セル内に配置された前記剤形(2)に前記セル(5)を囲む壁部(4)が働かせる接触力を定量的に制御するステップをプロセッサに実行させるためのコンピュータ可読のコードを備え、前記壁部(4)は第一の状態と第二の状態との間で繰り返し変形させられ、前記第一の状態における前記セル(5)の容積は前記第二の状態における前記セル(5)の容積よりも大きいことを特徴とするコンピュータプログラム製品。
【請求項1】
消化管内における剤形(2)の崩壊を評価する方法であって、
剤形(2)を、流体によって満たされているとともに壁部(4)によって囲まれたセル(5)内に配置するステップと、
前記壁部(4)を、第一の状態と第二の状態との間で繰り返し変形させるステップであって、それぞれ加圧及び減圧によって、前記第一の状態における前記セル(5)の容積は、前記第二の状態における前記セル(5)の容積よりも大きく、前記壁部の外部に加圧可能な区画(9)が配置されているステップと、
前記壁部(4)が前記剤形に働かせる接触力を定量的に制御するステップと、
を備える方法。
【請求項2】
前記流体の流れを制御するステップが、
前記壁部の変形のシーケンスの回数、
前記壁部の変形の速度、並びに/又は
前記加圧可能な区画(9)内の、前記第一の状態及び前記第二の状態にそれぞれ対応する圧力間の圧力差
を設定するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記定量的に制御するステップは動的に実行されることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記剤形の崩壊の程度を表すデータを集めるステップをさらに備えている請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
消化管内における剤形の崩壊を評価する装置(1)であって、流体によって満たされるために、且つ剤形(2)を収容するための、セル(5)を囲む壁部(4)を備え、第一の状態と第二の状態との間で前記壁部(4)を繰り返し変形させるために前記壁部(4)の外部に配置され、前記第一の状態における前記セル(5)の容積は、前記第二の状態における容積よりも大きい、加圧可能な区画(9)をさらに備え、前記装置(1)は、前記壁部が前記剤形(2)に働かせる接触力を定量的に制御するための制御手段をも備えていることを特徴とする装置。
【請求項6】
前記加圧可能な区画を加圧及び減圧するための加圧手段をさらに備え、前記加圧手段は好ましくはプランジャポンプ(12)と、前記プランジャポンプを動かすためのステッピングモータ(21)と、を含んでいる請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記壁部(4)は、前記剤形(2)を収容するための、前記セル(5)を主に取り囲むポケットを形成していることを特徴とする請求項5又は6に記載の装置。
【請求項8】
前記壁部(4)は、予め形成された折り畳まれた部分を備えていることを特徴とする請求項5〜8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記セル(5)は、前記壁部における開口部(6)を介して、さらなるセル(7)と流体連通していることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記開口部(6)は、前記剤形(2)が前記さらなるセルに流れることを防ぐために配置されていることを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記開口部(6)はスリット形状であることを特徴とする請求項9又は10に記載の装置。
【請求項12】
前記スリットは放射状に延在する脚部を有し、前記脚部は円周方向に略均一に分配されていることを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記加圧された状態と前記減圧された状態との間で前記壁部(4)を繰り返し変形させるために前記壁部(4)の外部に配置された、複数の加圧可能な区画(9)をさらに備えていることを特徴とする請求項5〜13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
消化管内における剤形(2)の崩壊を評価するためのコンピュータプログラム製品であって、セル内に配置された前記剤形(2)に前記セル(5)を囲む壁部(4)が働かせる接触力を定量的に制御するステップをプロセッサに実行させるためのコンピュータ可読のコードを備え、前記壁部(4)は第一の状態と第二の状態との間で繰り返し変形させられ、前記第一の状態における前記セル(5)の容積は前記第二の状態における前記セル(5)の容積よりも大きいことを特徴とするコンピュータプログラム製品。
【図1】
【図2a】
【図2b】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図3d】
【図3e】
【図3f】
【図4】
【図5】
【図6】
【図2a】
【図2b】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図3d】
【図3e】
【図3f】
【図4】
【図5】
【図6】
【公表番号】特表2013−501947(P2013−501947A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−523580(P2012−523580)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【国際出願番号】PCT/NL2010/050500
【国際公開番号】WO2011/016726
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(511095850)ネーデルランドセ・オルガニサティ・フォール・トゥーヘパスト−ナトゥールウェテンスハッペライク・オンデルズーク・テーエヌオー (16)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【国際出願番号】PCT/NL2010/050500
【国際公開番号】WO2011/016726
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(511095850)ネーデルランドセ・オルガニサティ・フォール・トゥーヘパスト−ナトゥールウェテンスハッペライク・オンデルズーク・テーエヌオー (16)
【Fターム(参考)】
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