説明

消泡剤、及び、水系水の消泡方法

【課題】四級アンモニウム塩等の発泡性の高い薬品存在下であっても、シリコーン系消泡剤成分の使用を不要ないし少量で充分なものとすると共に、高い消泡効果が得られる消泡剤を提供する。
【解決手段】シリコーン系消泡剤成分、及び/または、ポリエーテル系消泡剤成分と、脂肪族アルコキシレート系消泡剤成分とからなる消泡剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水系の消泡剤、特に、空調用、各種工業用などの開放循環冷却水系で用いられる消泡剤に関する。
【背景技術】
【0002】
冷却水系および排水処理などの水系において、微生物の繁殖あるいは、薬品の使用による発泡が生じ、泡の飛散やポンプ等のエアかみによる薬注不良などのトラブルが発生することがある。
【0003】
また、本発明者等は、微生物の繁殖を抑制するスライムコントロール剤として、四級アンモニウム塩(特許文献1)、四級ホスホニウム塩(特許文献2)等を提案している。これらは極めて高いスライムコントロール性を有している優れた薬剤であるが、発泡が激しいために開放循環冷却水系への応用が困難であった。
【0004】
ここで、従来から水系に使用されてきた消泡剤として代表的なものは、シリコーン系消泡剤が挙げられ、これらは、少量の添加で高い効果が得られるものの、水に難溶(分散性)であるために、入れすぎや長期間の使用により、これら消泡剤成分が土砂等の汚れを巻き込んで系内の機器、配管等へ付着し、特に冷却塔やその周辺の美観を損ない、また、熱交換効率の低下等のアクシデントを引き起こすこともあった。
【0005】
また、シリコーン系消泡剤以外にも、ポリエーテル系消泡剤やアルコール系の界面活性剤なども使用されてきた(特許文献3)が、これらでは少量の添加では充分な効果を発揮できないという欠点があった。
【特許文献1】特開平11−156366号公報
【特許文献2】特開2002−308713公報
【特許文献3】特開平9−308804号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記した従来の問題点を改善する、すなわち、四級アンモニウム塩等の発泡性の高い薬品存在下であっても、シリコーン系消泡剤の使用を不要ないし少量で充分なものとすると共に、高い消泡効果が得られる消泡剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の消泡剤は上記課題を解決するため、請求項1に記載の通り、シリコーン系消泡剤成分、及び/または、ポリエーテル系消泡剤成分と、脂肪族アルコキシレート系消泡剤成分とからなることを特徴とする消泡剤である。
【0008】
また、本発明の水系水の消泡方法は、請求項2に記載の通り、水系水にシリコーン系消泡剤、及び/または、ポリエーテル系消泡剤と、脂肪族アルコキシレート系消泡剤とを添加することを特徴とする水系水の消泡方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の消泡剤によれば、少量の添加で高い消泡効果が得られるので低コスト化が可能となり、かつ、水系の機器に付着して汚れや様々な問題を引き起こすシリコーン系消泡剤の使用を大幅に減らすことができる。特に、発泡性の高い他の薬剤の水系水への添加時に併用すれば特に効果的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の消泡剤は、シリコーン系消泡剤成分、及び/または、ポリエーテル系消泡剤成分と、脂肪族アルコキシレート系消泡剤成分とからなる。
【0011】
シリコーン系消泡剤成分と脂肪族アルコキシレート系消泡剤成分とは適宜の配合比で用いることができるが、通常、有効成分重量比で、1:1000〜1:2となるよう配合することが、少量の添加で高い効果(これら2種類の成分による相乗効果)を得られるので好ましい。さらに好ましい配合比は1:200〜1:10である。
【0012】
また、ポリエーテル系消泡剤成分と脂肪族アルコキシレート系消泡剤成分との組合せにおいても、適宜の配合比で用いることができるが、通常、有効成分重量比で、1:50〜50:1となるよう配合することが、少量の添加で高い効果(これら2種類の成分による相乗効果)を得られるので好ましい。さらに好ましい配合比は1:10〜10:1である。
【0013】
本発明において、上記シリコーン系消泡剤成分、ポリエーテル系消泡剤成分及び脂肪族アルコキシレート系消泡剤成分の3種の成分を同時に水系水に添加することもできるが、上記2種成分の組合せで充分高い効果が得られる。
【0014】
水系への添加量に関しては、脂肪族アルコキシレート系消泡剤とシリコーン系消泡剤との組合せにおいては、有効成分が水系水に対して0.1mg/L以上100mg/L以下となるように添加することが好ましく、より好ましい範囲は0.5mg/L以上20mg/L以下である。0.1mg/L未満での添加では充分な効果が得られない場合があり、また、100mg/L以上の高濃度となるように添加しても添加量の増加に見合う効果の増加は得られない。
【0015】
一方、脂肪族アルコキシレート系消泡剤とポリエーテル系消泡剤との組合せにおいては、水系への添加量は有効成分が水系水に対して0.1mg/L以上100mg/L以下となるように添加することが好ましく、より好ましい範囲は1mg/L以上40mg/L以下である。ここで、0.1mg/L未満での添加では充分な効果が得られない場合があり、また、100mg/L以上の高濃度となるように添加しても添加量の増加に見合う効果の増加は得られない。
【0016】
本発明の消泡剤は、その効果が損なわれない限り他の薬品、スライムコントール剤、殺アメーバー剤、殺菌剤、防食剤、防錆剤等と併用することができる。
【実施例】
【0017】
以下に本発明の消泡剤の実施例について説明する。
50mLのつくば市水に四級アンモニウム系の薬品(塩化ベンザルコニウム)を有効成分濃度として20mg/Lとなるよう、添加して、発泡性サンプルとした。
【0018】
このような発泡性サンプルに、それぞれ表1に示す消泡剤成分を表2に示す添加量で添加して、100mLのねじ口瓶に入れ、1分間振とうし、泡立ちの状態を目視にて確認した。結果を併せて表2に示した。
【0019】
【表1】

【0020】
【表2】

【0021】
表2により、本発明によれば、シリコーン系消泡剤成分を不要、ないし、その使用量を極めて少ないレベルに減らすことができ、かつ、消泡剤としての添加量も少ない量で高い泡立ち防止性を発揮することが判る。特に、発泡性の高いカチオン系スライムコントロール剤と併用した場合でも、少量の添加で充分な発泡抑制効果を発揮すると云う優れた効果が得られることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、四級アンモニウム塩等の発泡性の高い薬品存在下であっても、シリコーン系消泡剤の使用を不要ないし少量で充分なものとすると共に、少量の添加で高い消泡効果が得られる消泡剤であり、特に開放循環冷却水系で好適に用い得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン系消泡剤成分、及び/または、ポリエーテル系消泡剤成分と、脂肪族アルコキシレート系消泡剤成分とからなることを特徴とする消泡剤。
【請求項2】
水系水にシリコーン系消泡剤成分、及び/または、ポリエーテル系消泡剤成分と、脂肪族アルコキシレート系消泡剤成分とを添加することを特徴とする水系水の消泡方法。

【公開番号】特開2007−260540(P2007−260540A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−87887(P2006−87887)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000101042)アクアス株式会社 (66)
【Fターム(参考)】