説明

消泡剤

【課題】
従来の消泡剤と同等以上の消泡性を発揮し、かつ薄い塗膜に塗装するための塗料に適用した場合でもハジキの発生が少ない消泡剤を提供すること。
【解決手段】
脂肪酸金属塩(A)、ポリオキシアルキレン化合物(B)及び多価アルコール脂肪酸エステル(C)を含有することを特徴とする消泡剤を用いる。脂肪酸金属塩(A)が式(1)で表される化合物を含んでなることが好ましい。

(R−COO)pM (1)

は炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数2〜30のアルケニル基、Mは1〜3価の金属原子、pは1〜3の整数。
ポリオキシアルキレン化合物(B)が式(2)で表される化合物であるが好ましい。
−(OA)n−OR (2)
は炭素数2〜30のアシル基、炭素数1〜30のアルキル基若しくはアルケニル基又は水素原子、Rは水素原子又は炭素数2〜30のアシル基、OAは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、nは2〜100の整数。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消泡剤に関する。さらに詳しくは、化学工業、食品工業、石油工業、土木建築工業、織物工業、紙パルプ工業、塗料工業、医薬品工業又は排水処理工程用等の分野において好適な消泡剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カルボン酸アルミニウム、芳香族炭素含有炭化水素油及びポリオキシアルキレン化合物を含有する消泡剤(特許文献1)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4038565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の消泡剤は、十分な消泡性(破泡、抑泡効果)を発揮するものの、薄い塗膜に塗装するための塗料に適用した場合(たとえば、塗膜の厚みが200μm以下)、ハジキが発生するという問題がある。すなわち発明の目的は、従来の消泡剤と同等以上の消泡性を発揮し、かつ薄い塗膜に塗装するための塗料に適用した場合でもハジキの発生が少ない消泡剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、本発明に達した。すなわち本発明の消泡剤の特徴は、脂肪酸金属塩(A)、ポリオキシアルキレン化合物(B)及び多価アルコール脂肪酸エステル(C)を含有することを要旨とする。
【0006】
本発明の製造方法の特徴は、上記に記載された消泡剤を製造する方法であって、
(1)脂肪酸金属塩(A)、ポリオキシアルキレン化合物(B)及び多価アルコール脂肪酸エステル(C)を攪拌下に加熱して、均一溶解液を得る加熱溶解工程(1)、
(2)均一溶解液を攪拌しつつ冷却して脂肪酸金属塩(A)を析出させて分散液を得る冷却工程(2)、及び
(3)均一分散液を冷却して、消泡剤を得る最終工程(3)を含む方法(10);
【0007】
(1)脂肪酸金属塩(A)及び多価アルコール脂肪酸エステル(C)の一部を攪拌下に加熱して、均一溶解液を得る加熱溶解工程(1)、
(2)均一溶解液を攪拌しつつ冷却して脂肪酸金属塩(A)を析出させて分散液を得る冷却工程(2)、及び
(3)均一分散液に、残りの多価アルコール脂肪酸エステル(C)を加え、冷却・攪拌して、消泡剤を得る最終工程(3)を含む方法(20);又は
【0008】
(1)脂肪酸金属塩(A)及び多価アルコール脂肪酸エステル(C)の一部を攪拌下に加熱して、均一溶解液を得る加熱溶解工程(1)、
(2)0〜40℃の調節した残りの多価アルコールエステル(C)に、攪拌しながら、均一溶解液を加えて、分散液を得る冷却工程(2)、及び
(3)均一分散液を冷却・攪拌して、消泡剤を得る最終工程(3)を含む方法(30)からなる点を要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の消泡剤は、従来の消泡剤に比べて、塗膜の厚みが200μm以下のような薄い塗膜に対しても、ハジキの発生が少なく、優れた消泡性能を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
脂肪酸金属塩(A)は、脂肪酸から水素原子を除いた残基と金属原子との塩で構成される。なお、脂肪酸金属塩には、塩及び錯体の両方の意味が含まれる。また、脂肪酸金属塩(A)は1種のみから構成されてもよいし、2種以上の混合物であってもよい。
【0011】
脂肪酸としては、飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸が含まれる。
金属原子としては、アルカリ金属(リチウム、ナトリウム及びカリウム等)、アルカリ土類金属(バリウム、カルシウム及びマグネシウム等)、遷移金属(亜鉛、ニッケル、鉄、銅、マンガン、コバルト、銀、金、白金、パラジウム、チタン、ジルコニウム及びカドミウム等)、周期律表13族金属(アルミニウム等)、同14族金属(錫及び鉛等)又はランタノイド金属(ランタン及びセリウム等)の原子が含まれる。
【0012】
このような脂肪酸金属塩(A)としては、一般式(1)で表される化合物が好ましい。

(R−COO)pM (1)

なお、Rは炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数2〜30のアルケニル基、Mは1〜3価の金属原子、pは1〜3の整数を表す。
【0013】
一般式(1)において、炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数2〜30のアルケニル基(R)のうち、炭素数1〜30のアルキル基としては、直鎖アルキル基及び分岐鎖アルキル基等が使用できる。
【0014】
直鎖アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、イコシル、ヘニコシル、ドコシル、トリコシル、テトラコシル、ヘプタコシル、ヘキサキシル、ヘプタコシル、オクタコシル、ノナコシル及びトリアコンシル等が挙げられる。
【0015】
分岐鎖アルキル基としては、イソプロピル、イソブチル、t−ブチル、イソペンチル、ネオペンチル、イソヘキシル、2−エチルヘキシル、イソトリデシル、イソテトラデシル、イソオクタデシル、イソトリアコンシル、2−エチルヘキシル、2−プロピルヘプチル、2−ブチルオクチル、2−ヘキシルデシル、2−オクチルドデシル、2−デシルテトラデシル、2−ドデシルヘキシル、2−ドデシルヘキサデシル、3,5,5−トリメチルヘキシル及び3,7,11−トリメチルドデシル等が挙げられる。
【0016】
また、(R)のうち、炭素数2〜30のアルケニル基としては、直鎖アルケニル基及び分岐アルケニル基等が使用できる。
【0017】
直鎖アルケニル基としては、ビニル、アリル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、トリデセニル、テトラデセニル、ペンタデセニル、ヘキサデセニル、ヘプタデセニル、オクタデセニル、ノナデセニル、イコセニル、ヘニコセニル、ドコセニル、トリコセニル、テトラコセニル、ヘプタコセニル、ヘキサキセニル、ヘプタコセニル、オクタコセニル、ノナコセニル及びトリアコンテニル等が挙げられる。
【0018】
分岐アルケニル基としては、イソブテニル、イソペンテニル、ネオペンテニル、イソヘキセニル、イソトリデセニル、イソオクタデセニル及びイソトリアコンテニル等が挙げられる。
【0019】
これらのうち、消泡性及びハジキの観点等から、直鎖アルキル基及び直鎖アルケニル基が好ましく、さらに好ましくは直鎖アルキル基、特に好ましくは炭素数8〜24の直鎖アルキル基、最も好ましくはドデシル及びオクタデシルである。
【0020】
1〜3価の金属原子(M)としては、上記の金属原子が含まれる。これらのうち、消泡性の観点等から、2価金属原子及び3価金属原子が好ましく、さらに好ましくは亜鉛原子、マグネシウム原子及びアルミニウム原子、特に好ましくはアルミニウム原子である。
【0021】
pは、1〜3の整数を表し、好ましくは2〜3の整数、さらに好ましくは3の整数である。
【0022】
脂肪酸金属塩(A)は、1種のpを持つ単一化合物でも、pが異なる複数の混合物でもよい。また、アルキル基又はアルケニル基の種類が異なる混合物でもよい。
【0023】
脂肪酸金属塩(A)としては、ラウリン酸亜鉛、ベヘン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム及びステアリン酸バリウムが好ましく例示できる。
このような好ましい脂肪酸金属塩(A)は市場からも容易に入手でき、たとえば以下の商品等が挙げられる。
【0024】
カルシウムステアレート、オブラートCA−65、パウダーベースL、ジンクベヘネート、アルミニウムステアレート300、アルミニウムステアレート600、アルミニウムステアレート900及びバリウムステアレート{日油(株)}
【0025】
ポリオキシアルキレン化合物(B)としては、ポリオキシアルキレン鎖を含む化合物であれば制限なく使用できる。ポリオキシアルキレン鎖を構成するオキシアルキレンとしては、炭素数2〜4のオキシアルキレン基(オキシエチレン、オキシプロピレン及びオキシブチレン)等が含まれる。
【0026】
ポリオキシアルキレン鎖には、1種類のオキシアルキレン基から構成されていてもよく、2種以上のオキシアルキレン基から構成されていてもよい。2種以上のオキシアルキレン基から構成される場合、結合様式はブロック、ランダム及びこれの混合のいずれでもよい。
【0027】
ポリオキシアルキレン化合物(B)としては、一般式(2)で表される化合物が好ましい。

−(OA)n−OR (2)

【0028】
は炭素数2〜30のアシル基、炭素数1〜30のアルキル基若しくはアルケニル基又は水素原子、Rは水素原子又は炭素数2〜30のアシル基、OAは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、nは2〜100の整数を表す。
【0029】
炭素数2〜30のアシル基としては、飽和カルボン酸アシル基及び不飽和カルボン酸アシル基が含まれる。
飽和カルボン酸アシル基としては、アセチル(エタノイル)、プロパノイル、ブタノイル、ペンタノイル、ヘキサノイル、ヘプタノイル、オクタノイル、ノナノイル、デカノイル、ウンデカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ペンタデカノイル、ヘキサデカノイル、ヘプタデカノイル、オクタデカノイル、ノナデカノイル、イコサノイル、エイコサノイル、ヘンイコサノイル、ヘンエイコサノイル、ドコサノイル、トリカサノイル、テトラコサノイル、ペンタコサノイル、ヘキサコサノイル、ヘプタコサノイル、オクタコサノイル、ノナコサノイル及びトリアコンタノイル等が挙げられる。
【0030】
不飽和カルボン酸アシル基としては、アクリロイル、メタクリロイル、クロトノイル、イソクロトノイル、ブテノイル、ブタジエノイル、ペンテノイル、ヘキセノイル、ヘプテノイル、オクテノイル、ノネノイル、デセノイル、ウンデセノイル、ドデセノイル、テトラデセノイル、オレロイル、エライジノイル、シクロペンタノイル、シクロヘキサノイル、シクロヘプタノイル、メチルシクロペンタノイル、メチルシクロヘキサノイル、メチルシクロヘプタノイル、シクロペンテノイル、2,4−シクロペンタジエノイル、シクロヘキセノイル、2,4−シクロヘキサジエノイル、シクロヘプテノイル、メチルシクロペンテノイル、メチルシクロヘキセノイル及びメチルシクロヘプテノイル等が挙げられる。
【0031】
炭素数1〜30のアルキル基及びアルケニル基としては、上記の一般式(1)のRと同じである。
【0032】
OAは、炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表し、オキシエチレン、オキシプロピレン及びオキシブチレンが含まれる。これらのうち、オキシエチレン及びオキシプロピレンが好ましい。
【0033】
OAには2種以上のオキシアルキレン基が含まれてもよい。2種以上のオキシアルキレン基が含まれる場合、ブロック状、ランダム状及びこれらの混合のいずれでもよいが、オキシエチレンとオキシプロピレンとのブロック状が好ましい。
【0034】
nは、2〜100の整数を表し、好ましくは2〜99の整数、さらに好ましくは3〜50の整数、特に好ましくは4〜30の整数である。この範囲であると、消泡性及びハジキがさらに向上する。
【0035】
一般式(2)で表される化合物としては、一般式(2−1)で表される化合物と、一般式(2−2)で表される化合物とを含むことが好ましい。
【0036】

’−(OA)n−OR’ (2−1)

”−(OA)n−OR” (2−2)

【0037】
’は炭素数2〜30のアシル基又は水素原子、R’は炭素数2〜30のアシル基、R”は炭素数1〜30のアルキル基若しくはアルケニル基、R”は水素原子又は炭素数2〜30のアシル基、OAは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、nは2〜100の整数を表す。
【0038】
炭素数2〜30のアシル基、炭素数1〜30のアルキル基若しくはアルケニル基、炭素数2〜4のオキシアルキレン基(OA)及びnとしては、上記の一般式(2)のものと同じである。
【0039】
’のうち、消泡性及びハジキの観点から、水素原子及び炭素数2〜22のアシル基が好ましく、さらに好ましくは水素原子、ドデカノイル、オクタデカノイル及びオレロイル、特に好ましくは水素原子及びオレロイルである。
【0040】
’のうち、消泡性及びハジキの観点から、炭素数2〜22のアシル基が好ましく、さらに好ましくはドデカノイル、オクタデカノイル及びオレロイル、特に好ましくはオレロイルである。
【0041】
”のうち、消泡性及びハジキの観点から、水素原子及びアルキル基が好ましく、さらに好ましくは水素原子及び直鎖アルキル基、特に好ましくは水素原子及び炭素数3〜8の直鎖アルキル基、最も好ましくは水素原子及びブチルである。
【0042】
”のうち、消泡性及びハジキの観点から、水素原子及び炭素数2〜22のアシル基が好ましく、さらに好ましくは水素原子、ドデカノイル、オクタデカノイル及びオレロイル、特に好ましくはオレロイルである。
【0043】
ポリオキシアルキレン化合物(B)としては、ポリオキシエチレングリコール(モノ、ジ)ラウリン酸エステル、ポリオキシエチレングリコール(モノ、ジ)オレイン酸エステル、ポリオキシエチレングリコール(モノ、ジ)ステアリン酸エステル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシプロピレンブチルエーテル、ポリオキシプロピレンデシルエーテル及びポリオキシプロピレンイソデシルエーテルが好ましく例示できる。
このような好ましいポリオキシアルキレン化合物(B)は市場からも容易に入手でき、たとえば以下の商品等が挙げられる。
【0044】
<ポリオキシエチレングリコール(モノ、ジ)ラウリン酸エステル、ポリオキシエチレングリコール(モノ、ジ)オレイン酸エステル、ポリオキシエチレングリコール(モノ、ジ)ステアリン酸エステル>
イオネット(登録商標)シリーズ(MS−400、MS−1000、MO−200、DL−200、DO−600、DS−400及びDS−4000等){三洋化成工業(株)品}
【0045】
<ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシプロピレンブチルエーテル>
エマルミン(登録商標)シリーズ(L−380、NL−110、CC−200及びCO−200等){三洋化成工業(株)}
【0046】
<ポリオキシプロピレンデシルエーテル、ポリオキシプロピレンイソデシルエーテル>
ブラウノンシリーズ(NDB−800、NDB−1400、IDEP−608及びIDEP−802等){青木油脂工業(株)}
【0047】
多価アルコール脂肪酸エステル(C)は、脂肪酸と多価アルコールとの部分エステル又は完全エステルが含まれる。
【0048】
脂肪酸としては、飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸が含まれる。
飽和脂肪酸としては、炭素数1〜30の飽和脂肪酸が含まれ、直鎖飽和脂肪酸及び分岐飽和脂肪酸が使用できる。
【0049】
直鎖飽和脂肪酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、セロチン酸及びメリシン酸等が挙げられる。
【0050】
分岐飽和脂肪酸としては、イソ酪酸、イソ吉草酸、ピバル酸及びイソステアリン酸等が挙げられる。
【0051】
不飽和脂肪酸としては、炭素数3〜30の直鎖不飽和脂肪酸が含まれ、直鎖不飽和脂肪酸及び分岐不飽和脂肪酸が使用できる。
【0052】
直鎖不飽和脂肪酸としては、アクリル酸、クロトン酸、ヘプテン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸及びトリアコンテン酸等が挙げられる。
【0053】
分岐不飽和脂肪酸としては、メタクリル酸、イソミリストレイン酸及びイソオレイン酸等が挙げられる。
【0054】
これらのうち、消泡性及びハジキの観点から、直鎖飽和脂肪酸及び直鎖不飽和脂肪酸が好ましく、さらに好ましくはラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、クロトン酸、ヘプテン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸及びオレイン酸、特に好ましくはミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸及びオレイン酸、最も好ましくはパルミチン酸、ステアリン酸、パルミトレイン酸及びオレイン酸である。
【0055】
多価アルコールとしては、ジオール、トリオール及び4価以上のポリオールが含まれる。
ジオールとしては、炭素数2〜6のジオールが含まれ、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、イソブチレングリコール及びシクロヘキサンジオール等が挙げられる。
【0056】
トリオールとしては、炭素数3〜6のトリオールが含まれ、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ヘキサントリオール及びシクロヘキサントリオール等が挙げられる。
【0057】
4価以上のポリオールとしては、ポリグリセリン{ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン及びペンタグリセリン等}、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビタン、ソルビトール、糖類{グルコース、ショ糖、キシリトール及びシュークロース等}及びセルロース系化合物{メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロース等}等が挙げられる。
【0058】
これらのうち、トリオール及び4価以上のポリオールが好ましく、さらに好ましくはトリオール、特に好ましくはトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン及びグリセリン、最も好ましくはグリセリンである。
【0059】
多価アルコール脂肪酸エステル(C)としては、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、トリメチロールプロパン脂肪酸エステル及びショ糖脂肪酸エステルが好ましく例示できる。
このような好ましい多価アルコール脂肪酸エステル(C)は市場からも容易に入手でき、たとえば以下の商品等が挙げられる。
【0060】
<グリセリン脂肪酸エステル>
レオドール(登録商標)シリーズ(MS−50、MS−60及びMS−165V等){花王(株)品}
NIKKOL(登録商標)シリーズ(MGU、MGM、AMV、ASEV、BV、MGIS、MGOL−70及びDGS−80等){日本ケミカルス(株)}
大豆油、ヤシ油、パーム油、アマニ油、綿実油及びナタネ油等{日清オイリオ(株)品}
【0061】
<ポリグリセリン脂肪酸エステル>
NIKKOL(商標登録)シリーズ(DGMS、Tetraglyn 1−SV、Tetraglyn 5−S、Hexaglyn 1−L、Hexaglyn 5−SV、Decaglyn 1−M、Decaglyn 2−ISV及びDecaglyn 5−HS等){日本ケミカルス(株)}
SYグリスターシリーズ(THL−3、THL−15、THL−17、THL−50及びCLT−707等){阪本薬品工業(株)品}
【0062】
<ソルビタン脂肪酸エステル>
イオネット(登録商標)シリーズ(S−80、S−60C、S−80及びS−85等){三洋化成工業(株)品}
【0063】
<トリメチロールプロパン脂肪酸エステル>
トリメチロールプロパントリカプリル酸エステル、トリメチロールプロパントリラウリン酸エステル及びトリメチロールプロパントリオレイン酸エステル等{三光化学工業(株)品}
【0064】
<ショ糖脂肪酸エステル>
リョートー(登録商標)シリーズ(S−070、S−170、S−1670、P−170、P−1670、O−170、O−1570、L−195、L−1695、B−370、ER−190及びPOS−135)等{三菱化学フーズ(株)}
【0065】
脂肪酸金属塩(A)の含有量(重量%)は、脂肪酸金属塩(A)、ポリオキシアルキレン化合物(B)及び多価アルコール脂肪酸エステルの(C)の合計重量に基づいて、0.1〜10が好ましく、さらに好ましくは0.2〜8、特に好ましくは0.5〜5である。この範囲であると、消泡性がさらに良好となり、かつハジキが少なくなる。
【0066】
ポリオキシアルキレン化合物(B)の含有量(重量%)は、脂肪酸金属塩(A)、ポリオキシアルキレン化合物(B)及び多価アルコール脂肪酸エステルの(C)の合計重量に基づいて、5〜50が好ましく、さらに好ましくは7〜42、特に好ましくは9〜30である。この範囲であると、消泡性がさらに良好となり、かつハジキが少なくなる。
【0067】
多価アルコール脂肪酸エステルの(C)の含有量(重量%)は、脂肪酸金属塩(A)、ポリオキシアルキレン化合物(B)及び多価アルコール脂肪酸エステルの(C)の合計重量に基づいて、40〜94が好ましく、さらに好ましくは50〜90、特に好ましくは65〜86である。この範囲であると、消泡性がさらに良好となり、かつハジキが少なくなる。
【0068】
本発明の消泡剤には、脂肪酸金属塩(A)、ポリオキシアルキレン化合物(B)及び多価アルコール脂肪酸エステル(C)以外に、他の構成成分(界面活性剤等)を含有してもよい。
界面活性剤としては、ノニオン型、カチオン型、アニオン型又は両性型の公知の界面活性剤が使用できる。
【0069】
ノニオン型界面活性剤としては、高級アルキルアミンのアルキレンオキシド付加体、高級脂肪酸アミドのアルキレンオキシド付加体、アセチレングリコールのアルキレンオキシド付加体及びポリオキシアルキレン変性シリコーン(ポリエーテル変性シリコーン)等が挙げられる。ただし、ノニオン界面活性剤に、上記のポリオキシアルキレン化合物(B)は含まれない。
【0070】
カチオン型界面活性剤としては、高級アルキルアミン塩、高級アルキルアミンアルキレンオキシド付加体、ソロミンA型カチオン界面活性剤、サパミンA型カチオン界面活性剤、アーコベルA型カチオン界面活性剤、イミダゾリン型カチオン界面活性剤、高級アルキルトリメチルアンモニウム塩、高級アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、サパミン型第4級アンモニウム塩及びピリジニウム塩等が挙げられる。
【0071】
アニオン型界面活性剤としては、脂肪酸アルカリ金属塩、脂肪酸アンモニウム塩、脂肪酸アミン塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸とその塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、N−アシルアルキルタウリン塩及びアルキルスルホコハク酸塩等が挙げられる。ただし、アニオン界面活性剤に、上記の脂肪酸金属塩(A)は含まれない。
【0072】
両性型界面活性剤としては、高級アルキルアミノプロピオン酸塩及び高級アルキルジメチルベタイン等が挙げられる。
【0073】
界面活性剤を含有する場合、この含有量(重量%)は、脂肪酸金属塩(A)、ポリオキシアルキレン化合物(B)及び多価アルコール脂肪酸エステル(C)の重量に基づいて、0.1〜20が好ましく、さらに好ましくは0.5〜10、特に好ましくは1〜5である。この範囲であると流動性がさらに良好となる場合がある。
【0074】
本発明の消泡剤は、公知の方法により製造でき、たとえば、次の方法等が適用できる。
<製造方法1>
(1)まず脂肪酸金属塩(A)、ポリオキシアルキレン化合物(B)及び多価アルコール脂肪酸エステル(C)を攪拌下に加熱して、均一溶解液を得る加熱溶解工程(1)、
(2)均一溶解液を攪拌しつつ冷却して脂肪酸金属塩(A)を析出させて分散液を得る冷却工程(2)、及び
(3)均一分散液を冷却して、本発明の消泡剤を得る最終工程(3)を含む方法(10)。
【0075】
<製造方法2>
(1)脂肪酸金属塩(A)及び多価アルコール脂肪酸エステル(C)の一部を攪拌下に加熱して、均一溶解液を得る加熱溶解工程(1)、
(2)均一溶解液を攪拌しつつ冷却して脂肪酸金属塩(A)を析出させて分散液を得る冷却工程(2)、及び
(3)均一分散液に、残りの多価アルコール脂肪酸エステル(C)を加え、冷却・攪拌して、本発明の消泡剤を得る最終工程(3)を含む方法(20)。
【0076】
<製造方法3>
(1)脂肪酸金属塩(A)及び多価アルコール脂肪酸エステル(C)の一部を攪拌下に加熱して、均一溶解液を得る加熱溶解工程(1)、
(2)0〜40℃の調節した残りの多価アルコールエステル(C)に、攪拌しながら、均一溶解液を加えて、分散液を得る冷却工程(2)、及び
(3)均一分散液を冷却・攪拌して、本発明の消泡剤を得る最終工程(3)を含む方法。
【0077】
加熱溶解工程(1)において、ポリオキシアルキレン化合物(B)及び多価アルコール脂肪酸エステル(C)の一部を使用し、残りのポリオキシアルキレン化合物(B)及び多価アルコール脂肪酸エステル(C)を後の工程で投入してもよい。
【0078】
冷却工程(2)の後に、ボールミル、ディスパーミル、ホモジナイザー又はゴーリンホモジナイザー等で微細化処理してもよい。
【0079】
加熱溶解工程(1)における加熱温度(℃)としては、使用する脂肪酸金属塩(A)の種類によって適宜決定されるが、80〜250が好ましく、さらに好ましくは90〜200、特に好ましくは100〜150、最も好ましくは110〜140である。
【0080】
冷却工程(2)における冷却温度(℃)は、90以下が好ましい。
【0081】
最終工程(3)における冷却温度(℃)は、40以下が好ましく、さらに好ましくは5〜40である。
【0082】
本発明の消泡剤は、水性発泡液に対して効果的であり、特に、化学工業、食品工業、石油工業、土木建築工業、織物工業、紙パルプ工業、医薬品工業又は排水処理工程用の消泡剤として好適である。
また、本発明の消泡剤は、カルボン酸アルミニウム、芳香族炭素含有炭化水素油及びポリオキシアルキレン化合物を含有する従来の消泡剤(特許文献1)等に比べて、生分解性にも優れるため、環境保護の観点から、従来、使用の問題や制限があった分野等にも適用できる。
【0083】
本発明の消泡剤の使用量は、発泡液体の種類、温度、濃度及び処理量等(発泡の程度等)により適宜増減することができるが、発泡液体の重量に基づいて、0.01〜10重量%が好ましく、さらに好ましくは0.1〜5重量%、特に好ましくは0.2〜2重量%である。
【実施例】
【0084】
次に、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下、特記しない限り、部は重量部を、%は重量%を意味する。
【0085】
<実施例1>
脂肪酸金属塩(a1){ジステアリン酸マグネシウム、オーラブライト(登録商標)MA−76、日油(株)}0.1部と、ポリオキシアルキレン化合物(b11){ポリオキシエチレン(重合度:20)グリコールジオレイン酸エステル、イオネットDO−1000、三洋化成工業(株)}50部と、多価アルコール脂肪酸エステル(c1){グリセリンモノステアリン酸エステル、レオドールMS−50、花王(株)}49.9部とを、ステンレス製容器に投入した後、ホモジナイザー(ハイフレックスディスパーサーHG−92G、タイテック(株)製)にて4000rpmで攪拌しつつ、150℃まで昇温し、この温度にてさらに3時間加熱攪拌をした。その後、得られた混合物を攪拌しながら、30℃まで空冷にて冷却し、本発明の消泡剤(1)を得た。
得られた消泡剤について、分散度試験[JIS K5600−2−5:1999(ISO 1524:1983に対応)]にて5ミクロン以上の粒の無いことを確認した。
【0086】
<実施例2>
「脂肪酸金属塩(a1)0.1部」、「ポリオキシアルキレン化合物(b11)50部」及び「多価アルコール脂肪酸エステル(c1)49.9部」を、「脂肪酸金属塩(a2){トリステアリン酸アルミニウム、アルミニウムステアレート900、日油(株)}1部」、「ポリオキシアルキレン化合物(b12){ポリオキシエチレン(重合度:9)グリコールモノステアリン酸エステル、イオネットMS−400、三洋化成工業(株)}5部」及び「多価アルコール脂肪酸エステル(c2){ナタネ油、日清オイリオグループ(株)}94部」に変更したこと以外、実施例1と同様にして、本発明の消泡剤(2)を得た。
得られた消泡剤について、分散度試験[JIS K5600−2−5:1999(ISO 1524:1983に対応)]にて5ミクロン以上の粒の無いことを確認した。
【0087】
<実施例3>
「脂肪酸金属塩(a1)0.1部」、「ポリオキシアルキレン化合物(b11)50部」及び「多価アルコール脂肪酸エステル(c1)49.9部」を、「脂肪酸金属塩(a3){モノステアリン酸アルミニウム、アルミニウムステアレート300、日油(株)}10部」、「ポリオキシアルキレン化合物(b13){ポリオキシエチレン(重合度:4)グリコールジラウリン酸エステル、イオネットDL−200、三洋化成工業(株)}50部」及び「多価アルコール脂肪酸エステル(c3){モノラウリンデカグリセリンエステル、NIKKOL Decaglyn 1−L、日光ケミカルス(株)}40部」に変更したこと以外、実施例1と同様にして、本発明の消泡剤(3)を得た。
得られた消泡剤について、分散度試験[JIS K5600−2−5:1999(ISO 1524:1983に対応)]にて5ミクロン以上の粒の無いことを確認した。
【0088】
<実施例4>
「脂肪酸金属塩(a1)0.1部」、「ポリオキシアルキレン化合物(b11)50部」及び「多価アルコール脂肪酸エステル(c1)49.9部」を、「脂肪酸金属塩(a4){ジラウリン酸亜鉛、ジンクラウレートGP、日油(株)}10部」、「ポリオキシアルキレン化合物(b21){ポリオキシプロピレン(重合度:40)ブチルエーテル、ニューポール(登録商標)LB−1715、三洋化成工業(株)}5部」及び「多価アルコール脂肪酸エステル(c4){ソルビタントリオレイン酸エステル、イオネットS−85、三洋化成工業(株)}85部」に変更したこと以外、実施例1と同様にして、本発明の消泡剤(4)を得た。
得られた消泡剤について、分散度試験[JIS K5600−2−5:1999(ISO 1524:1983に対応)]にて5ミクロン以上の粒の無いことを確認した。
【0089】
<実施例5>
「脂肪酸金属塩(a1)0.1部」、「ポリオキシアルキレン化合物(b11)50部」及び「多価アルコール脂肪酸エステル(c1)49.9部」を、「脂肪酸金属塩(a5){ジステアリン酸アルミニウム、アルミニウムステアレート600、日油(株)}0.5部」、「ポリオキシアルキレン化合物(b22){ポリオキシプロピレン(重合度:40)ブタノールエーテルとオレイン酸のエステル体}30部」及び「多価アルコール脂肪酸エステル(c5){トリメチロールプロパンカプリル酸エステル、三光化学工業株式会社}69.5部に変更したこと以外、実施例1と同様にして、本発明の消泡剤(5)を得た。
得られた消泡剤について、分散度試験[JIS K5600−2−5:1999(ISO 1524:1983に対応)]にて5ミクロン以上の粒の無いことを確認した。
【0090】
なお、ポリオキシアルキレン化合物(b22)は以下のようにして得た。
温度計、攪拌機、脱水用冷却装置を備えた4つ口フラスコ反応容器に、オレイン酸[試薬1級、和光純薬工業(株)]282部(1.00モル部)、ポリオキシプロピレン(重合度:40)ブチルエーテル[ニューポールLB−1715、三洋化成工業(株)]2256部(1.01モル部)及びパラトルエンスルホン酸[試薬特級、和光純薬工業(株)]8.6部(0.05モル部)を仕込み、反応容器内を窒素置換した後、反応混合物の温度を130℃に昇温し、生成する水を除去しながら20時間反応を行った。
そして、この反応物に酸化マグネシウム[キョーワード100、協和化学(株)]172部を添加して、100℃で1時間攪拌処理した後、減圧濾過により、酸化マグネシウムを除去して、ポリオキシアルキレン化合物(b22)を得た。
【0091】
<実施例6>
「脂肪酸金属塩(a1)0.1部」、「ポリオキシアルキレン化合物(b11)50部」及び「多価アルコール脂肪酸エステル(c1)49.9部」を、「脂肪酸金属塩(a6){ステアリン酸カルシウム、カルシウムステアレートGP、日油(株)}5部」、「ポリオキシアルキレン化合物(b11)40部」及び「多価アルコール脂肪酸エステル(c6){ショ糖ステアリン酸エステル(モノエステル体含有量:50%)、リョートーS−970、三菱化学フーズ(株)}55部」に変更したこと以外、実施例1と同様にして、本発明の消泡剤(6)を得た。
得られた消泡剤について、分散度試験[JIS K5600−2−5:1999(ISO 1524:1983に対応)]にて5ミクロン以上の粒の無いことを確認した。
【0092】
<実施例7>
脂肪酸金属塩(a1)1部と脂肪酸金属塩(a7){ステアリン酸バリウム、ステアリン酸バリウムGF、日油(株)}1部と、ポリオキシアルキレン化合物(b12)5部と、ポリオキシアルキレン化合物(b22)5部と、多価アルコール脂肪酸エステル(c1)40部及び多価アルコール脂肪酸エステル(c2)48部を、ステンレス容器に投入した後、ホモジナイザー(ハイフレックスディスパーサーHG−92G、タイテック(株)製)にて4000rpmで攪拌しつつ、150℃まで昇温し、この温度にてさらに、3時間加熱攪拌をした。その後、得られた混合物を攪拌しながら、30℃まで空冷にて冷却し、本発明の消泡剤(7)を得た。
得られた消泡剤について、分散度試験[JIS K5600−2−5:1999(ISO 1524:1983に対応)]にて5ミクロン以上の粒の無いことを確認した。
【0093】
<実施例8>
脂肪酸金属塩(a2)2部と、脂肪酸金属塩(a5)1部と、脂肪酸金属塩(a8){ベヘン酸亜鉛、ジンクベヘネート、日油(株)}1部と、ポリオキシアルキレン化合物(b11)10部と、ポリオキシアルキレン化合物(b21)10部及び多価アルコール脂肪酸エステル(c3)76部を、ステンレス容器に投入した後、ホモジナイザー(ハイフレックスディスパーサーHG−92G、タイテック(株)製)にて4000rpmで攪拌しつつ、150℃まで昇温し、この温度にてさらに3時間加熱攪拌をした。その後、得られた混合物を攪拌しながら、30℃まで空冷にて冷却し、本発明の消泡剤(8)を得た。
得られた消泡剤について、分散度試験[JIS K5600−2−5:1999(ISO 1524:1983に対応)]にて5ミクロン以上の粒の無いことを確認した。
【0094】
<比較例1>
脂肪酸金属塩(a1)0.1部とポリオキシアルキレン化合物(b11)50部及び炭化水素油(t1)[ピュアスピン(登録商標)G、コスモ石油ルブリカンツ(株)]49.9を、ステンレス容器に投入した後、ホモジナイザー(ハイフレックスディスパーサーHG−92G、タイテック(株)製)にて4000rpmで攪拌しつつ、150℃まで昇温し、この温度にてさらに3時間加熱攪拌をした。その後、得られた混合物を攪拌しながら、30℃まで空冷にて冷却し、比較用の消泡剤(H1)を得た。
得られた消泡剤について、分散度試験[JIS K5600−2−5:1999(ISO 1524:1983に対応)]にて5ミクロン以上の粒の無いことを確認した。
【0095】
<比較例2>
「脂肪酸金属塩(a1)0.1部」、「ポリオキシアルキレン化合物(b11)50部」及び「炭化水素油(t1)」を、「脂肪酸金属塩(a2)1部」、「ポリオキシアルキレン化合物(b12)5部」及び「炭化水素油(t1)94部」に変更したこと以外、比較例1と同様にして、比較用の消泡剤(H2)を得た。
得られた消泡剤について、分散度試験[JIS K5600−2−5:1999(ISO 1524:1983に対応)]にて5ミクロン以上の粒の無いことを確認した。
【0096】
<比較例3>
脂肪酸金属塩(a3)3部及び多価アルコール脂肪酸エステル(c1)97部を、ステンレス容器に投入した後、ホモジナイザー(ハイフレックスディスパーサーHG−92G、タイテック(株)製)にて4000rpmで攪拌しつつ、150℃まで昇温し、この温度にてさらに3時間加熱攪拌をした。その後、得られた混合物を攪拌しながら30℃まで空冷にて冷却し、比較用の消泡剤(H3)を得た。
得られた消泡剤について、分散度試験[JIS K5600−2−5:1999(ISO 1524:1983に対応)]にて5ミクロン以上の粒の無いことを確認した。
【0097】
実施例1〜8及び比較例1〜3で得た消泡剤の各成分の含有量を、表1にまとめた。
【0098】
【表1】

【0099】
<評価例1>
実施例1〜8及び比較例1〜3で得た消泡剤を用いて、以下のようにエマルション塗料を調製し、これらのエマルション塗料について、以下の方法により、消泡性及びハジキについて評価した。これらの結果を表3に示した。
【0100】
(1)エマルションベース塗料の調製
表2に示した原料組成にて、インペラー型羽根を装着したエクセルオートホモジナイザー(日本精器株式会社製、モデルED)を用いて、グラインディング及びレットダウンして塗料化とした。得られた塗料は上記と同様にして分散度試験により、5ミクロン以上の粒の無いことを確認した。
次いでこの塗料を、ストマー粘度計(JIS K5400−1990)で77KU(25℃)になるように、水で希釈してエマルションベース塗料を得た。
【0101】
【表2】

【0102】
(2)エマルション塗料の調製
エマルションベース塗料に、消泡剤を1重量%(対エマルションベース塗料)となるように加えて、インペラー型羽根を装着したエクセルオートホモジナイザーにて15〜25℃、2000rpm、3分間攪拌混合してエマルション塗料を得た。
また消泡剤を加えない塗料を作成し、エマルション塗料(消泡剤無添加)とした。
【0103】
(3)消泡性及びハジキの評価
ブリキ板{厚さ0.5mm、20×30cmにカット}をアセトン/布にて脱脂した後、ウェット膜厚200μmとなるようにエマルション塗料をローラー塗装した後、25℃、60%相対湿度に調整したコントロールルームにて1日間乾燥させて、塗膜表面を観察し以下の基準により消泡性及びハジキを評価した。
また、エマルション塗料を40℃にて1ケ月静置保管した後(エイジング後)、改めてインペラー型羽根を装着したエクセルオートホモジナイザーにて、15〜25℃、2000rpm、3分間攪拌混合してエイジング評価用のエマルション塗料を得、同様に消泡性及びハジキを評価した。
【0104】
<消泡性>
目視にて、泡痕の個数を確認した。
(数値の小さい方が消泡性が高いことを意味し好ましい)
【0105】
<ハジキ>
目視にて、ハジキ又はクレータリング痕の個数を確認した。
(数値の小さい方がハジキが少ないことを意味し好ましい)
【0106】
【表3】

【0107】
<評価例2>
実施例1〜8及び比較例1〜4で得た消泡剤を用いて、以下のように紙塗工用のコーティングカラーを調製した。これらのコーティングカラーについて、以下の方法により、消泡性及びハジキを評価し、これらの結果を表5に示した。
【0108】
(1)コーティングカラーベースの調製
表4に示した原料組成にて、インペラー型羽根を装着したエクセルオートホモジナイザー(日本精器会社製、モデルED)を用いて、コーティングカラーベースを作成した。
【0109】
【表4】

【0110】
(2)消泡性及びハジキの評価
コーティングカラーベースに、消泡剤を1%となるように加えて、インペラー型羽根を装着したエクセルオートホモジナイザーにて15〜25℃、2000rpm、10分間攪拌混合してコーティングカラーを得た。また、消泡剤を添加しないこと以外は上記の方法と同様にしてブランクコーティングカラー(消泡剤無添加)を得た。そして、これらのコーティングカラーについて、10分間攪拌直後のコーティングカラーの比重を、JIS K5600−2−4:1999(金属製比重瓶:比重カップ)に準じて測定した。比重が大きいほど泡のかみ込みが少なく、消泡性が良好であることを表している。
【0111】
また、ガラス板{厚さ5mm、20×30cmにカット}をアセトン/布にて脱脂した後、ウェット膜厚100μmとなるようにコーティングカラーをアプリケーターにて塗装した後、塗膜表面を観察し以下の基準によりハジキを評価した。
また、コーティングカラーを40℃にて1ケ月静置保管した後(エイジング後)、改めてインペラー型羽根を装着したエクセルオートホモジナイザーにて、15〜25℃、2000rpm、10分間攪拌混合してエイジング評価用のコーティングカラーを得、同様に消泡性及びハジキを評価した。
【0112】
<ハジキ>
目視にて、ハジキ痕の個数を確認した。
(数値の小さい方がハジキが少ないことを意味し好ましい)
【0113】
【表5】

【0114】
本発明の消泡剤を用いると、比較用の消泡剤を用いた塗料に比べ、薄い塗膜(100〜200μm)にした場合でも、高い消泡性を発揮できる上に、ハジキの発生が少なかった。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明の消泡剤は、あらゆる用途に用いることができるが、水性発泡液に対して効果的であり、例えば、化学工業、食品工業、石油工業、土木建築工業、織物工業、紙パルプ工業、塗料工業、医薬品工業又は排水処理工程用等の分野において好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪酸金属塩(A)、ポリオキシアルキレン化合物(B)及び多価アルコール脂肪酸エステル(C)を含有することを特徴とする消泡剤。
【請求項2】
脂肪酸金属塩(A)が一般式(1)で表される化合物を含んでなる請求項1に記載の消泡剤。

(R−COO)pM (1)

は炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数2〜30のアルケニル基、Mは1〜3価の金属原子、pは1〜3の整数を表す。
【請求項3】
ポリオキシアルキレン化合物(B)が一般式(2)で表される化合物である請求項1又は2に記載の消泡剤。

−(OA)n−OR (2)

は炭素数2〜30のアシル基、炭素数1〜30のアルキル基若しくはアルケニル基又は水素原子、Rは水素原子又は炭素数2〜30のアシル基、OAは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、nは2〜100の整数を表す。
【請求項4】
ポリオキシアルキレン化合物(B)が一般式(2−1)で表される化合物と、一般式(2−2)で表される化合物とを含んでなる請求項1〜3のいずれかに記載の消泡剤。

’−(OA)n−OR’ (2−1)

”−(OA)n−OR” (2−2)

’は炭素数2〜30のアシル基又は水素原子、R’は炭素数2〜30のアシル基、R”は炭素数1〜30のアルキル基若しくはアルケニル基、R”は水素原子又は炭素数2〜30のアシル基、OAは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、nは2〜100の整数を表す。
【請求項5】
多価アルコール脂肪酸エステル(C)が、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、トリメチロールプロパン脂肪酸エステル及びショ糖脂肪酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1〜4のいずれかに記載の消泡剤。
【請求項6】
脂肪酸金属塩(A)、ポリオキシアルキレン化合物(B)及び多価アルコール脂肪酸エステルの(C)の合計重量に基づいて、(A)の含有量が0.1〜10重量%、(B)の含有量が5〜50重量%及び(C)の含有量が40〜94である請求項1〜5のいずれかに記載の消泡剤。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載された消泡剤を製造する方法であって、
(1)脂肪酸金属塩(A)、ポリオキシアルキレン化合物(B)及び多価アルコール脂肪酸エステル(C)を攪拌下に加熱して、均一溶解液を得る加熱溶解工程(1)、
(2)均一溶解液を攪拌しつつ冷却して脂肪酸金属塩(A)を析出させて分散液を得る冷却工程(2)、及び
(3)均一分散液を冷却して、消泡剤を得る最終工程(3)を含む方法(10);

(1)脂肪酸金属塩(A)及び多価アルコール脂肪酸エステル(C)の一部を攪拌下に加熱して、均一溶解液を得る加熱溶解工程(1)、
(2)均一溶解液を攪拌しつつ冷却して脂肪酸金属塩(A)を析出させて分散液を得る冷却工程(2)、及び
(3)均一分散液に、残りの多価アルコール脂肪酸エステル(C)を加え、冷却・攪拌して、消泡剤を得る最終工程(3)を含む方法(20);又は

(1)脂肪酸金属塩(A)及び多価アルコール脂肪酸エステル(C)の一部を攪拌下に加熱して、均一溶解液を得る加熱溶解工程(1)、
(2)0〜40℃の調節した残りの多価アルコールエステル(C)に、攪拌しながら、均一溶解液を加えて、分散液を得る冷却工程(2)、及び
(3)均一分散液を冷却・攪拌して、消泡剤を得る最終工程(3)を含む方法(30)からなることを特徴とする製造方法。

【公開番号】特開2011−83715(P2011−83715A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−238980(P2009−238980)
【出願日】平成21年10月16日(2009.10.16)
【出願人】(000106438)サンノプコ株式会社 (124)
【Fターム(参考)】