説明

消火ノズル

【課題】外筒を回動させながら放水形態を変化させる場合に、外筒が放水形態を変化させる機能位置になると、回転操作力に対して抵抗が生じるようにし、夜間等の暗所においても、必要とする放水形態を正確に得ることができる消火ノズルを提供する。
【解決手段】外筒28の軸方向の位置を選んで噴射口30の開度を変えることで放水の形態を変化させることができる消火ノズルであって、前記外筒28がシャット位置にある状態でこの外筒28の後端部から露出する内筒23の外周面に、外筒28を回動させて放水の形態が変化する位置に移動した時点で、この外筒28の回動に抵抗を与えるOリング34aを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、消火ホースの先端に取付け、内筒に外嵌した外筒を回転操作することにより、複数の放水形態と放水の停止状態を選択できるようにした消火ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
図3(a)と(b)は、消火ホースの先端に取付けて使用する従来の消火ノズル1を示し、円筒状で内部が通水路2となる内筒3の後端部内周に、消火ホースを接続するための雌ねじ4を設け、この内筒3の先端に前記通水路2の先端からの放水が可能な状態で弁体5が設けられている。
【0003】
上記内筒3の途中から先端側に外筒6を外嵌し、前記外筒6の先端に内径が先端広がりに拡径する噴射口7とその内周に弁座8を設け、この外筒6の軸方向への移動により前記噴射口7を弁体5で開閉し、前記外筒6の軸方向の位置を選んで噴射口7の開度を変えることで、放水のシャットと放水形態を変化させることができるようになっている。
【0004】
上記内筒3と外筒6の嵌合面に、雄ねじとこれに螺合する雌ねじからなり、外筒6の回転操作でこの外筒6を内筒3に対して軸方向に移動させる送りねじ機構9を形成すると共に、内筒3と外筒6の嵌合面の止水を行う止水用Oリング10が組み込まれ、前記外筒6を内筒3に対して最先端側に移動させると、図3(a)のように、噴射口7が弁体5で閉鎖されて放水のシャットとなり、また、外筒6を回動させて後端側に移動させると、弁体5による噴射口7の開度が変化し、例えば、途中の位置で直射放水(図3(b)の一点鎖線)となり、全開の位置で噴霧放水(図3(b)の実線)となる。
【0005】
上記のように、消火ノズル1は、放水時に火勢の状態に合わせて放水の形態を変化させる必要が有り、外筒6を単に回しただけでは放水の形態が判別しにくいため、従来は、図
4に示すように、表示手段として、外筒6の後端部外周面と内筒の後端部外周面の一方に、放水の種類を示す文字や矢印(a)と、他方に位置決め目印(b)を表示し、外筒6を回動して文字や矢印(a)と目印(b)を合わせることにより、所望の放水形態が得られるようにしている。
【0006】
図4は、上記表示手段において、図4(a)はシャット位相を、図4(b)は直射放水、図4(c)は噴霧放水における文字や矢印(a)と位置決め目印(b)の位相の関係を示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記のような従来の消火ノズルは、外筒6を全閉位置と全開位置の間で回動させながら軸方向に移動させる場合に、その回転操作力は常に一定であるので、外筒6を回動操作していても、放水形態が変化する機能位置を手の感触で知ることができず、必要とする放水形態を正確に得るのに不便である。
【0008】
特に、上記した文字や矢印(a)と目印(b)の組合わせによる放水形態の表示手段では、夜間等の暗所において使用する場合に、表示手段の目視による確認は不可能に近く、このような条件では表示手段の機能を果たすことができないという問題がある。
【0009】
そこで、この発明の課題は、外筒を回動させながら軸方向に移動させて放水形態を変化させる場合に、外筒が放水形態を変化させる機能位置になると、回転操作力に対して抵抗が生じるようにし、放水形態が変化する機能位置を手の感触で知ることで、夜間等の暗所においても、必要とする放水形態を正確に得ることができる消火ノズルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、この発明は、内部が通水路となり、後端を消火ホースと接続する内筒の外側に外筒を、内筒に対する回転によって軸方向に移動するよう外嵌し、前記内筒の先端に弁体を設け、前記外筒の先端に形成した噴射口をこの外筒の軸方向への移動により前記弁体で開閉し、前記外筒の軸方向の位置を選んで噴射口の開度を変えることで放水の形態を変化させることができるようにした消火ノズルにおいて、前記外筒がシャット位置にある状態でこの外筒の後端部から露出する内筒の外周面に、外筒を回動させて放水の形態が変化する位置に移動した時点で、外筒の回動に抵抗を与える抵抗付与部材を設けた構成を採用したものである。
【0011】
上記抵抗付与部材がOリングによって形成され、このOリングが内筒の外周面に周設した凹溝に嵌め込んで取付けられ、外筒の後端部がこのOリングに当接することによって回動に抵抗を与えるようになっている構造とすることができる。
【0012】
ここで、上記内筒と外筒の嵌合面間には、外筒の回転操作でこの外筒を内筒に対して軸方向に移動させる送りねじ機構が形成され、かつ、内筒と外筒の嵌合面は止水部材によって止水され、前記外筒を内筒に対して最前端側に移動させると、噴射口が弁体で閉鎖されて放水のシャットとなり、この状態で、内筒の外周面に取付けた抵抗付与部材のOリングが外部に露出している。
【0013】
上記シャットの位置にある外筒を回動させ、直射放水の機能位置にまで軸方向に移動させると、この外筒の端部がOリングに当接するように内筒に対するOリングの取付け位置が設定され、外筒の端部がOリングに当接することにより、外筒の回動操作力に抵抗が生じ、これにより手に伝わった感触で直射放水の状態を確認することができる。
【0014】
また、外筒の端部がOリングに当接した状態で更に力を加えると、外筒の内径がOリングを圧縮して外嵌し、以後は、外筒を全開の噴霧放水の機能位置まで軽い力で移動させることができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明によると、内筒の外周面に、外筒を回動させて放水の形態が変化する位置に移動した時点で、外筒の回動に抵抗を与える抵抗付与部材を設けたので、外筒の端部がOリングに当接すると、外筒の回動操作力に抵抗が生じ、これが手に伝わった感触で放水形態が変化する機能位置を知ることができ、夜間等の暗所においても、必要とする放水形態を正確に得ることができる。
【0016】
また、抵抗付与部材にOリングを用いることにより、放水形態が変化する機能位置から次の放水形態の変化位置への外筒の移動が、Oリングに対して外筒の内径を外嵌させることで可能となり、放水形態の変化を従来と同様の操作で行えることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、この発明の実施の形態を図示例に基づいて説明する。
【0018】
図1(a)乃至(c)は、この発明に係る消火ノズル21の一例を示し、円筒状で内部が通水路22となる内筒(ノズル本体)23の後端部内周に消火ホースを接続するための雌ねじ24を形成し、前記内筒23の先端側に、内筒23の内周に消火水の流れを阻害しないように突設した複数のステー25で軸体26を、内筒23の先端から前方に突出するよう同軸心の配置で突設し、この軸体26の先端に前記通水路22の先端からの放水を許容する間隔をおいて円形の弁体27が設けられている。
【0019】
上記内筒23の途中から先端側外周面に回転と軸方向の移動が可能となるよう取付けた外筒(操作筒体)28は、内筒23に対して外嵌するストレートな円筒部28aの先端に、内径が先端広がりのテーパとなるノズル部28bを連成して形成され、前記内筒23と外筒28の円筒部28aの嵌合面に、一方に設けた雄ねじとこれに螺合するよう他方に設けた雌ねじからなり、外筒28の回動操作でこの外筒28を内筒23に対して軸方向に移動させる送りねじ機構29が形成されている。
【0020】
上記外筒28において、ノズル部28bの内径が噴射口30となり、その内径が弁座31になっていると共に、上記内筒23と外筒28の嵌合面間には、送りねじ機構29よりも後端側の位置に、この嵌合面間の止水を行う止水用Oリング32が組み込まれている。なお、外筒28の外周には、外筒28の回転操作が行ないやすいように、合成樹脂やゴムを用いて成形したグリップ部材33が外嵌状に固定してある。
【0021】
上記外筒28は、内筒23に対して最前進位置にあるとき、前記噴射口30の弁座31が弁体27に当接して閉弁となり、放水を停止したシャット状態になり、この外筒28を回動させて内筒23の後端側に移動させると、弁座31が弁体27から離反することで噴射口30が開いて放水開始となり、外筒28を移動ストローク全長の略途中の位置に移動させると、弁体27と噴射口30の位置関係が直射放水形態となる。
【0022】
この直射放水形態の位置から外筒28を更に後端側に移動させると、弁体27と噴射口30の位置関係が更に開くことで噴霧放水形態となる。
【0023】
このように、外筒28を回動させて軸方向の位置を選ぶことにより、シャットと直射、噴霧の放水形態に変化することになり、実際の使用時には火勢の状況に合わせてこれらの放水形態が選択されることになる。
【0024】
上記内筒23の外周面において、外筒28が最前進したシャット位置にある状態で、この外筒28の後端から露出する位置に、外筒28を回動させて放水の形態が変化する位置に移動した時点で、外筒28の回動に抵抗を与える抵抗付与部材34が設けられている。
【0025】
この抵抗付与部材34は、Oリング34aによって形成され、このOリング34aが内筒23の外周面に周設した凹溝35に嵌め込んで取付けられ、外筒28の後端部がこのOリング34aの最大外径部に当接することによって回動操作力に抵抗を与えるようになっている。
【0026】
上記抵抗付与部材34を設ける位置は、外筒28を直射放水形態の機能位置に移動させたとき、その後端がOリング34aに当接するように設定され、外筒28の後端部がOリング34aに当接すると、外筒28の回動操作力に抵抗が生じ、これが手に伝わった感触で放水形態が変化する位置を知ることができる。
【0027】
また、外筒28の後端部がOリング34aに当接した状態で更に回動力を加えると、外筒28の内径がOリング34aを圧縮して外嵌し、以後は、外筒28を全開の噴霧放水の機能位置まで軽い力で移動させることができることになる。
【0028】
なお、外筒28の放水形態の変化位置を目視でも確認できるよう、外筒28の後端部外周面と内筒23の後端部外周面の一方に、放水形態の種類を示すシャット、直射、噴霧等の文字や矢印(a)と、他方に目印(b)を表示し、外筒28を回動して文字と目印を合わせることにより、所望の放水形態が得られるようにしてもよい。
【0029】
この発明の消火ノズル21は、上記のような構成であり、内筒23の後端部に設けた雌ねじ24を消火ホースの先端に螺合することによって取付け、図1(a)に示すように、外筒28を内筒23に対して先端側の最前進位置にすれば、弁座31が弁体27に当接した閉弁状態となり、通水路22が先端で閉鎖されることにより、消火ホースから内筒23の通水路22に流入した消火水はシャットされる。
【0030】
このとき、図2(a)に示すように、外筒28の後端はOリング34aから離れた前方位置にあり、Oリング34aは内筒23の外面に露出している。
【0031】
このようなシャット状態で、外筒28を回動させ、送りねじ機構29の作用で外筒28を後端側に移動させ、図1(b)と図2(b)のように、外筒28の後端がOリング34aに当接すると、外筒28の回動操作力に抵抗が生じ、これを手に伝わった感触で知ることができ、従って、外筒28の後端がOリング34aに当接した感触を得た時点で外筒28の回動操作を停止すれば、外筒28は直射形態の位置で止まることになり、直射放水が得られることになる。
【0032】
このように、外筒28の回動操作力に生じた抵抗の感触で、直射放水形態を知ることができるので、夜間等の暗所においても、目視に頼らず、直射放水を正確に得ることができる。
【0033】
また、直射放水から外筒28を更に回動させて後端側に移動させると、図1(c)と図2(c)のように、外筒28の内径がOリング34aを圧縮してこれに外嵌することになり、外筒28を全開の噴霧放水の機能位置まで軽い力で移動させることができることになる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】(a)はこの発明に係る消火ノズルのシャット状態を示す一部縦断正面図、(b)は直射放水状態を示す一部縦断正面図、(c)は噴霧放水状態を示す一部縦断正面図
【図2】消火ノズルに設けた抵抗付与部材と外筒の位置関係を示し、(a)はシャット状態を示す拡大した縦断正面図、(b)は直射放水状態を示す拡大した縦断正面図、(c)は噴霧放水状態を示す拡大した縦断正面図
【図3】(a)は従来の消火ノズルを示すシャット状態の一部縦断正面図、(b)は噴霧放水状態の一部縦断正面図
【図4】消火ノズルに設けられている従来の表示手段を示し、(a)はシャット状態の正面図、(b)は直射放水状態の正面図、(c)は噴霧放水状態の正面図
【符号の説明】
【0035】
21 消火ノズル
22 通水路
23 内筒
24 雌ねじ
25 ステー
26 軸体
27 弁体
28 外筒
29 送りねじ機構
30 噴射口
31 弁座
32 止水用Oリング
33 グリップ部材
34 抵抗付与部材
34a Oリング
35 凹溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が通水路となり、後端を消火ホースと接続する内筒の外側に外筒を、内筒に対する回転によって軸方向に移動するよう外嵌し、前記内筒の先端に弁体を設け、前記外筒の先端に形成した噴射口をこの外筒の軸方向への移動により前記弁体で開閉し、前記外筒の軸方向の位置を選んで噴射口の開度を変えることで放水の形態を変化させることができるようにした消火ノズルにおいて、
前記外筒がシャット位置にある状態でこの外筒の後端部から露出する内筒の外周面に、外筒を回動させて放水の形態が変化する位置に移動した時点で、外筒の回動に抵抗を与える抵抗付与部材を設けたことを特徴とする消火ノズル。
【請求項2】
上記抵抗付与部材がOリングによって形成され、このOリングが内筒の外周面に周設した凹溝に嵌め込んで取付けられ、外筒の後端部がこのOリングに当接することによって回動に抵抗を与えるようになっていることを特徴とする請求項1に記載の消火ノズル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−29347(P2010−29347A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−193224(P2008−193224)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【出願人】(593157378)株式会社岩崎製作所 (6)
【Fターム(参考)】