説明

消火器用の消火粉末の廃棄物の処理方法、ならびにそのような方法を用いて得られる肥料

【課題】 この発明は、農業用肥料への再利用を目的とする、消火器に充填された消火薬剤の粉末の廃棄物の処理方法を対象とする。
【解決手段】 この発明は、消火器に充填された消火薬剤の廃棄物を、特に砂糖の副産物を基材としており、より詳細には、たとえば蒸留滓または糖蜜を基材とする粘性凝集剤と混合し、つぎに、得られた混合物に、粉砕され、特に乾燥された植物、たとえばブドウの粉砕物などの、果実の粉砕物を基材とする乾燥剤を混合することからなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は消火器に充填された粉末(消火薬剤)の廃棄物の処理である。本発明は、そのような廃棄物の公共ごみ捨場への廃棄を避けるためにそれら廃棄物の再利用を目的とする処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、消火器の粉末(消火薬剤)は、硫酸およびリン酸アンモニウムを基材とする物質および/または硫酸カリウムなどを基材とする物質を含む。
通常、これらの粉末は、それらを湿気から保護し、最適化された消火作用を粉末に付与するために、シリコンあるいは類似の断熱物質で処理される。
【0003】
すると、そのような粉末の廃棄物の管理についての問題が生じる。
通常、そのような廃棄物の保管は特にクラス2の公共ごみ捨場において行われるが、そのような事態は避けるのが望ましい。
さらに消火器用の消火粉末をシリコンで処理すると、粉末に流動性が付与されるためシャベルによる粉末の攪拌が困難になり、その必然的結果として、揮発性を有し分散する傾向を有する粉末の閉じ込めが困難になる。
【0004】
上記消火器の粉末の廃棄物を活用するために、これらを農業用肥料に変換する潜在的肥沃化特性を利用することが提案された。
たとえば非特許文献欧州特許庁XP002345092には、消火器の粉末を、蒸留滓またはクエン酸の製造により生じる糖蜜の残余物由来の粘性液体物質と混合することから成る消火器の粉末の廃棄物の変換方法を開示している。得られる肥料を補完し満足のゆく農業形質的結果を得るために、補完的微量元素が添加される。また、液剤および/または粘性剤が添加された粉末状粒子で形成された他の肥沃化物質も提案された。たとえばフランス特許公報FR2723085(MEAC SA)は、糖蜜および/または水など、無機培地と防塵剤とを組み合わせた物質を提案している。さらに例として、日本特許公開公報平01−270583(株式会社飯田工業所)は、糖蜜または合成樹脂などの粘性剤と混合されたケイ酸マグネシウムの細かな粉末で形成された粒状肥料を提案している。さらに例として、日本特許公開公報2001−158685(王子コーンスターチ株式会社)は、金属くずおよびアミドン粉末から成る粒状肥料を提案している。さらに例として、日本特許公開公報昭56−084315(三菱化成工業株式会社)は、石膏粉末と糖蜜の混合物から成る粒状肥料を提案している。
【0005】
一般的に、そのような技術は、糖蜜が混合される粒状担体から肥料を得ることを内容とする。第1の短所は、これらの肥料が粒状であるため、肥料をペレット化することが困難であり、使用方法が微妙であることである。しかしながら、ペレット化が可能な粒状物質を使用すると、取扱者に対する刺激のリスクをきたす傾向がある。
【0006】
特に消火器の粉末の廃棄物の利用に関しては、より低コストで廃棄物から肥料への加工が行われるのが望ましい。しかしながら、粉末の粒状化段階では生産コストの上昇が生じるが、これは、得られた肥料を消火器の粉末の廃棄物以外の基本物質を基にして得られる肥料よりも競争力のあるものにするためには避けなければならない。さらに、得られた肥料は使用が容易であって、特に、エンドユーザーが直接使用できるものでなければならない。さらに、若い植物、または挿木も含めより多くの種類の植物に対し使用できる肥料を得ることが求められている。
【0007】
また、別の未解決な問題が生じる。これは土壌侵食および栄養分の枯渇に関する。したがって、土壌がその物理化学的特長を保持できるようにするためには、使用する肥料は効果的なものでなければならない。より詳細には、土壌は、有機物質、腐植土、粘土など反応性がきわめて高い要素、シリカおよび/または石灰分を含む細かな要素、鉄、アルミニウム、水と空気に溶けたカルシウムからなる化合物を含む。土壌は、肥料の使用を超越したところで、それ自身で植物に栄養分を与える役割を有する。土壌は土壌の溶液を保持し、いくつかの栄養要素を固定し、植物が消化できない要素から植物が直接消化できる要素への変換に寄与する微生物を含む。したがって肥料は土壌の保全に寄与することが望ましい。
【特許文献1】フランス特許第2723085号公報
【特許文献2】特開平1−270583号公報
【特許文献3】特開2001−158685号公報
【特許文献4】特開昭56−084315号公報
【非特許文献1】欧州特許庁XP002345092
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって本発明の全体的な目的は、消火器の粉末の廃棄物の取り扱いを容易にし、商品化が可能な製品として再利用することにより、廃棄を防止することができる消火器の粉末の廃棄物の処理方法を提供することである。
本発明によれば、ユーザーが容易に直接使用可能で、刺激のリスクがなく、土壌の保全を促進する効果的な肥料を安価に得ることができるそのような方法を提供することがねらいである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1の再利用を目的とする消火器用の粉末の廃棄物の処理方法の発明では、
肥料の製造に使用するため粉末を粘性凝集剤と混合することから成る段階を含み、より詳細には、粉末を粘性凝集剤と混合し、乾燥植物の粉砕物で混合物を乾燥することから成ることを特徴とする。
請求項2の発明では、
前記凝集剤が砂糖の副産物であることを特徴とする。
請求項3の発明では、
前記凝集剤が糖蜜であることを特徴とする。
請求項4の発明では、
前記凝集剤が甜菜の蒸留滓であることを特徴とする。
請求項5の発明では、
前記植物の粉砕物が果物の搾りかすであることを特徴とする。
請求項6の発明では、
前記植物の粉砕物がぶどうの搾りかすであることを特徴とする。
請求項7の発明では、
粉末、凝集剤、および乾燥植物の粉砕物の前記混合が、消火器の粉末については40%から90%までの間、粘性凝集剤については5%から30%までの間、植物の粉砕物については5%から30%までの間の比率で行われることを特徴とする。
また、請求項8の肥料の発明では、
請求項1から7のいずれか一項に記載の消火器用の粉末の廃棄物の処理方法を基にして得られる肥料であって、
90%から40%までの間の比率の消火器の粉末、5%から30%までの間の凝集剤、および5%から30%までの間の植物粉砕物から成ることを特徴とする。
請求項9の発明では、
消火器用の粉末、砂糖の副産物、および乾燥植物の粉砕物の混合で構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の解決手段は、チッ素、リン酸塩、およびカリウムが豊富な消火器の粉末(消火薬剤)の廃棄物の肥沃化効果を利用して、特に散布による農業用肥料として再利用することにある。
この目的のため全体としては、本発明により、消火器の粉末の廃棄物を、特に砂糖の副産物を基材とし、より詳細にはたとえば蒸留滓または糖蜜を基材とする粘性凝集剤と混合することが提案されている。この段階の処理においては、粒子の分散を防止し消火器の粉末の取り扱いを容易にするために、粉末は充分に凝集された状態にされる。
【0011】
得られた物質は、複合肥料を製造するための化学的および/または有機成分の合成肥料の製造者が使用することができる。第2段階では、得られた混合物に、特に、粉砕され乾燥された植物、たとえばブドウの粉砕物など果実の粉砕物を基材とする乾燥剤を混合することが提案された。その場合、得られた物質は農業従事者が肥料としてそのまま使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、この発明の消火器用の消火粉末の廃棄物の処理方法、ならびにそのような方法を用いて得られる肥料の実施の形態について説明する。
【実施例1】
【0013】
より一般的には、本発明の方法は、再利用を目的とする消火器に充填された消化薬剤の粉末、即ち、消火器の粉末の廃棄物の処理方法に関する。
この方法は、肥料の製造に使用するため消火器の消火薬剤の粉末を粘性凝集剤と混合することから成る段階を含む。
本発明によれば、本方法は、第1段階で、粉末を粘性凝集剤と混合し、乾燥植物の粉砕物で得られた混合物を乾燥することから成る。
【0014】
得られた肥料は、粉末と粘性剤との混合物を乾燥することにより、農業従事者が簡単に直接使用できる。この肥料は粉末状かつ水溶性であるので、肥料散布機で容易に使用することができる。
【0015】
乾燥剤を使用することにより、粉末と粘性剤との混合物に微細要素を加える必要がなくなる。
乾燥剤を使用することにより物質の細粒化段階が不要になり、生産コストを20%から30%節約することができる。
【0016】
さらに、乾燥植物の粉砕物を追加することにより、粉末と粘性剤との混合物に微細要素を加える必要がなくなる。
実際、乾燥植物の粉砕物、特に果実の粉砕物は腐食質含有有機物質が豊富であり、たとえば長時間作用型と呼ばれる有機チッ素、および腐食酸を含む。
さらに乾燥植物の粉砕物により、腐食質発生力が高い原料である有機無機肥料および有機土壌改良剤の成分要素として、土壌の保全が可能である。
より詳細には、植物の粉砕物により土壌の水分の保持が促進され、土壌構造が改良され、土壌の有機物質含有率が改善され、土壌の温度上昇が促進され、土壌の腐食に対する強度が改善され、微生物生体系が刺激される。
【0017】
好ましくは、凝集剤は、甜菜の糖蜜および/または蒸留滓など、砂糖の副産物が用いられる。
【0018】
また、植物の粉砕物は、果物の搾りかす(パルプ)、特にぶどうの搾りかすが好ましい。
【0019】
前記消火器の粉末、凝集剤、および乾燥植物の粉砕物の混合は、消火器の粉末については40%から90%までの間、粘性凝集剤については5%から30%までの間の比率で行われる。
この混合物に、特に5%から30%までの間の比率の乾燥植物の粉砕物が加えられる。
理想的には、前記粉末、凝集剤、および乾燥植物の粉砕物の混合は、消火器の粉末については80%から80%までの間、粘性凝集剤については5%から15%までの間の比率で行われる。この混合物に、特に5%から20%までの間の比率の乾燥植物の粉砕物が加えられる。
【0020】
40%から90%までの間の比率の消火器の粉末、5%から30%までの間の凝集剤、および5%から30%までの間の植物粉砕物から成ることを特徴とする、本発明の肥料が一般的に知られている。
【0021】
より詳細には、この肥料は消火器の粉末、砂糖の副産物、および乾燥植物の粉砕物の混合で構成される。これらの構成により、得られた肥料は液状であるが粉末状ではない形態となり、目や粘膜に対する刺激作用がなく、農業従事者による散布が可能である。
【0022】
第一の例によれば、得られた肥料の分量は、チッ素が10%、リン酸が20%であり、さらに別の例によれば、チッ素が7%から9%であり、うち0.6%が有機チッ素であり、酸化リンが7%から12%であり、カリウムが0.4%から1.4%である。
【0023】
このようにして得られた肥料は簡単に水に溶け、市販の通常の肥料散布装置から使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肥料の製造に使用するため粉末を粘性凝集剤と混合することから成る段階を含み、より詳細には、粉末を粘性凝集剤と混合し、乾燥植物の粉砕物で混合物を乾燥することから成ることを特徴とする、再利用を目的とする消火器用の粉末の廃棄物の処理方法。
【請求項2】
前記凝集剤が砂糖の副産物であることを特徴とする、請求項1に記載の消火器用の粉末の廃棄物の処理方法。
【請求項3】
前記凝集剤が糖蜜であることを特徴とする、請求項2に記載の消火器用の粉末の廃棄物の処理方法。
【請求項4】
前記凝集剤が甜菜の蒸留滓であることを特徴とする、請求項2に記載の消火器用の粉末の廃棄物の処理方法。
【請求項5】
前記植物の粉砕物が果物の搾りかすであることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の消火器用の粉末の廃棄物の処理方法。
【請求項6】
前記植物の粉砕物がぶどうの搾りかすであることを特徴とする、請求項5に記載の消火器用の粉末の廃棄物の処理方法。
【請求項7】
粉末、凝集剤、および乾燥植物の粉砕物の前記混合が、消火器の粉末については40%から90%までの間、粘性凝集剤については5%から30%までの間、植物の粉砕物については5%から30%までの間の比率で行われることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の消火器用の粉末の廃棄物の処理方法。
【請求項8】
90%から40%までの間の比率の消火器の粉末、5%から30%までの間の凝集剤、および5%から30%までの間の植物粉砕物から成ることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の消火器用の粉末の廃棄物の処理方法を基にして得られる肥料。
【請求項9】
消火器用の粉末、砂糖の副産物、および乾燥植物の粉砕物の混合で構成されることを特徴とする、請求項8に記載の肥料。

【公表番号】特表2008−521741(P2008−521741A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−541991(P2007−541991)
【出願日】平成17年11月25日(2005.11.25)
【国際出願番号】PCT/EP2005/056232
【国際公開番号】WO2006/056602
【国際公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(503459914)
【Fターム(参考)】