説明

消火栓装置

【課題】消火栓装置の開放構造を簡単にしてコストを低減すると共に扱い易くする。
【解決手段】内部に消火栓弁と消火ホースを収納した消火栓装置10の収納箱前面の開口部14に下側にロールスクリーン装置26を配置し、ロールスクリーン装置26から不燃性又は難燃性のスクリーン24のよる巻き出し又は巻き込みにより開口部14を開閉自在とする。スクリーン開閉操作部30は、ロールスクリーン装置26から巻き出したスクリーン24の先端の支持部材28を保持して開口部14を閉鎖しており、ハンドルレバー32を回動操作すると支持部材28の保持が解除され、スクリーン24をロールスクリーン装置26に巻き取って開放させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災時の消火活動に使用される消火ホースと消火栓弁を収納した消火栓装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物内で発生した火災を消火するための消火栓装置としては例えば図12乃至図14に示すのもが知られている。
【0003】
図12は従来の消火栓装置の正面図であり、消火栓装置100は金属製の収納箱102の前面に、図示しない蝶番構造等を介して開閉自在に消火栓扉104を設け、また消火栓扉104の上部には通報パネル106が設けられ、ここに発信機108、赤色表示灯110、及び内蔵した警報用スピーカに対応して音響孔112を設けている。
【0004】
赤色表示灯110は常時点灯し、消火栓装置100の設置場所が遠方から視認できるようにしている。火災時には、発信機108中央に設けたボタンを押圧操作することでボタン内側のスイッチをオンすると、発信信号が監視室の防災受信盤に送信されて防災受信盤の報知部から火災警報が報知出力されると共に、防災受信盤から引き出された制御線に接続されて各所に設置された地区音響端末に対して地区音響信号が送られて所定の各場所でも警報音が出力される。
【0005】
図13は図12に示した消火栓装置100の消火栓扉104を取り外してた状態で内部構造を示した説明図であり、収納箱102の内部には消火栓弁114が配置され、消火栓弁114には先端にノズル118を装着した消火ホース116が連結接続され、図示の如くホルダー120に折り畳み状態で掛けることで引き出し自在に収納している。図14はこの消火栓扉104を開放した状態であり、図13に示した内部構造は省略している。
【0006】
通常時、消火栓装置100の消火栓扉104は図12に示した如く閉じられており、適宜の扉ロック機構等により閉状態に維持されている。そして火災が発生した場合には、扉ロック機構等を操作して扉閉状態を解除して図14のように消火栓扉104を開き、例えば一人がノズル118を持ちながら消火ホース116を引き出して火災発生場所(消火対象)に向かい、もう一人が発信機108を操作して通報すると共に消火栓弁114を開放操作するといったように、二人ないしそれ以上で消火活動を行う。これは、ホースの引出中に消火栓弁114を開放すると、水圧とその反動等によりホースが適切に引き出せなくなったり、危険が生じたりするといった問題を回避するため、また使用中、消火栓扉の開放を人の手で維持する必要がある等のためである。
【0007】
このように、少なくとも二人操作を必要とする消火栓装置は1号消火栓として法的に規格が定められており、一方、一人操作を可能とする消火栓として放水による反動力を抑えると共に保形ホースを使用した2号消火栓も法的に規格が定められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−38231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、従来、このような消火栓装置を使用した消火活動における統計結果として、火災発生時の消火栓の使用例に対し奏功率は10%に留まることが報告されている。これはスプリンクラー消火設備の奏功率が60〜70%にあることと対比すると、消火栓の奏功率はかなり低い結果となっている。
【0010】
このように消火栓装置の奏功率が低い要因は、消火栓装置は通常時、図12に示したように消火栓扉104が閉じていて内部を見ることができないため、図13に示すような消火栓弁と消火ホースを収納した内部構造が充分知られておらず、また、火災が発生した場合に図14のように消火栓扉104を開いても、角度によっては扉に遮られて内部が見えづらいために扱い難いことに起因している。また、消火栓扉104の前にものが置かれている場合などには、扉が迅速に開放できないといったことも考えられる。
【0011】
また金属製の消火栓扉を使用して堅牢に閉鎖している印象を強く与えるため、日常的に消火栓扉を開いて内部を確認するといったことは行われにくく必要時に扱いがわかりにくい要因のひとつともなっている。
【0012】
また、従来の消火栓装置は、耐火構造を実現するために、金属製の収納箱に同じく金属製の消火栓扉を設けており、開閉構造やロック構造等が複雑であるだけでなく所定以上の強度も求められ、コスト的に高価になるという問題もあった。
【0013】
本発明は、上記問題点を解決し、消火栓装置の開閉構造を簡単にして扱い易くすると共にコストも低減する消火栓装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、前面に開口した収納箱の内部に消火ホースを収納した消火栓装置に於いて、
収納箱前面の開口部に、開口部のいずれかの開口端に配置したロールスクリーン装置による巻き出し又は巻き込みにより開閉自在な不燃性又は難燃性のスクリーンを配置したことを特徴とする。
【0015】
ここで、ロールスクリーン装置を開口部の下端に配置し、
開口部の上端にスクリーン開閉操作部を配置し、
スクリーン開閉操作部は、ロールスクリーン装置から巻き出したスクリーンの先端を開口部の上端に保持して開口部を閉鎖すると共に、所定の開放操作によりスクリーンの先端保持を解除してロールスクリーン装置に巻き取って開放させる構造を備える。
【0016】
ロールスクリーン装置を開口部の一方の側端に配置し、
開口部の他方の側端にスクリーン開閉操作部を配置し、
スクリーン開閉操作部は、ロールスクリーン装置から巻き出したスクリーンの先端を開口部の他方の側端に保持して開口部を閉鎖すると共に、所定の開放操作によりスクリーンの先端保持を解除してロールスクリーン装置に巻き取って開放させる構造を備える。
【0017】
スクリーン開閉操作部は、
テーパ面に対する部材の当接又はハンドルレバーの回動操作により引き込まれる出没自在なラッチ爪を備えた操作部本体と、
スクリーン先端に設けた棒状の支持部材に装着したラッチ穴を備えたラッチ金具と、
を備え、
ラッチ金具のラッチ穴に操作部本体スのラッチ爪を挿入した状態でスクリーンを閉鎖状態に保持し、ハンドルレバーの回動操作によりラッチ爪をラッチ穴から抜いてスクリーンを開放させる。
【0018】
開口部の周縁に、スクリーンの先端に設けた支持部材の両端を嵌め入れて案内移動させるガイド部を設ける。
【0019】
シャッター扉を構成する部材を例えば透明或いは半透明状とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、消火栓弁と消火ホースを収納した収納箱の開口を、ロールスクリーン装置から巻き出した不燃性又は難燃性のスクリーンで覆うようにしたため、従来の金属製の消火栓扉に比べ、構造が大幅に簡略化されると共に軽量化され、コストダウンを図ることができる。
【0021】
またスクリーン開閉部の操作によりスクリーン先端の保持を解除してロールスクリーン装置に巻き取って開口部を開くことから、従来扉開放に伴って必要としていた消火栓装置前方側のスペースを不要とすることができ、即ち従来の消火栓扉のように、扉開放の際、当該扉が装置前側に突出することがなく、また消火栓弁や消火ホース等を収納した内部構造を外部から容易に確認することができ、その結果、取扱いが容易となり、消火栓装置による消火活動の奏功率を高めることが期待できる。
【0022】
またロールスクリーンを構成する部材を例えば透明或いは半透明状として外部から内部構造を視認可能とすることで、常時から内部構造を目にする機会を増やすことができるので、必要時の取扱に対する抵抗感を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明による消火栓装置の実施形態を正面から示した説明図
【図2】図1の消火栓装置のスクリーン閉鎖状態と開放状態の縦断面を示した説明図
【図3】図1の消火栓装置の横断面を3段階に分けて示した説明図
【図4】図1のロールスクリーン装置を取り出して示した説明図
【図5】図4のロールスクリーン装置の巻取り機構を取り出して示した説明図
【図6】スクリーン開閉操作部に対するスクリーン先端の保持構造を示した説明図
【図7】スクリーン開閉操作部の操作手順を示した説明図
【図8】スクリーンを途中まで開いた状態を示した説明図
【図9】スクリーンの全開状態を示した説明図
【図10】スクリーンを横開きする本発明による消火栓装置の他の実施形態を正面から示した説明図
【図11】図10の消火栓装置におけるスクリーンの全開状態を示した説明図
【図12】従来の消火栓装置を示した正面図
【図13】従来の消火栓装置について消火栓扉を取り外して内部構造を示した説明図
【図14】従来の消火栓装置について消火栓扉の開放状態を示した説明図
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は本発明による消火栓装置の実施形態を例示した説明図である。図1において、本実施形態の消火栓装置10は、内部に図13の従来例と同様に、消火栓弁と消火ホースを収納した金属製の収納箱12を備え、収納箱12前面開口14の下部側に配置したロールスクリーン装置26から不燃性又は難燃性の繊維シートからなるスクリーン24を上部に巻き出して(引き出して)当該開口14を閉鎖している。
【0025】
ロールスクリーン装置26から巻き出されたスクリーン24の先端(上端)には棒状の支持部材28が装着されており、支持部材28の軸両端はそれぞれ、開口14の左右両内側(収納箱12の内部側)に、収納箱上下方向に沿ってスリット状に形成されたガイド溝52に、スリット方向に略直交して所定長さを非固定に差し込まれ、左右方向の移動を規制されつつガイド溝52(スリット)に沿って上下方向に案内移動可能になっている。
【0026】
支持部材28の軸方向略中央にはフック金具28(図2)が設けられ、スクリーン開閉操作部30の後述するフック爪54を、フック金具28のフック穴56に押圧挿通させ、これによりスクリーン24を閉鎖状態に保持している。
【0027】
消火栓装置10を使用する際には、ハンドルレバー32を例えば下向き(右回り)に回動操作すると、フック金具28からフック爪54が抜けて(挿通状態が解除されて)支持部材28の保持が解除され、ロールスクリーン装置26がスクリーン24を自動的に巻き取り、開口14が開放される。
【0028】
また収納箱12の上部には通報パネル16が設けられ、ここに発信機18、赤色表示灯20、及び内臓したスピーカなどに対応する音響孔22を設けている。
【0029】
図2は図1の消火栓装置の本発明に係る概略構造を縦断面で示しており、図2(A)はスクリーン閉鎖状態、図2(B)はスクリーン開放状態である。
【0030】
図2(A)において、収納箱12前面側開口14の下部にはロールスクリーン装置26が配置されており、ロールスクリーン装置26からはスクリーン24が上方に巻き出され、先端に設けた支持部材28のフック金具40(図2(B)参照)を、開口14の上部、収納箱12の内側に配置したスクリーン開閉操作部30で保持している。
【0031】
ロールスクリーン装置26は後述するようにコイルバネを内蔵しており、スクリーン24の巻き出しに伴うローラパイプの回転でコイルバネを巻き込み、スクリーン24を巻き出して開口14を閉鎖した状態でも、巻き込む方向の力を継続的に(常時)スクリーン24に加えている。
【0032】
スクリーン24を閉鎖状態に保持しているスクリーン開閉装置30は、操作部本体となる操作ボックス50から外部にハンドルレバー32を取り出しており、ハンドルレバー32を回動操作するとフック金具40の保持が解除され、スクリーン24は上述した巻き込み方向の力への抗力を失うため、ロールスクリーン装置26によりガイド溝に52沿って自動的に下方に巻き取られ、図2(B)に示すように、開口14は開放状態となる。
【0033】
図3は図1の図1の消火栓装置の本発明に係る概略構造を横断面で示しており、図3(A)は底部側、図4(B)はスクリーン先端位置(支持部材28を設けた位置)、図3(C)はスクリーン開閉操作部30の位置を示している。
【0034】
図3(A)に示した収納箱12の底部側については、開口14の背後(収納箱12内部前面側)にロールスクリーン装置26が配置されている。また図3(B)のスクリーン先端位置については、スクリーン先端に設けた支持部材28の軸方向略中央内側(収納箱12内部側)にフック金具40が張り出し形成され、支持部材28の両端は開口14の両側内側に形成したガイド溝52に案内移動自在に差し込まれている。
【0035】
更に図3(C)のスクリーン開閉装置30の位置については、支持部材28に設けたフック金具40のフック穴56に、スクリーン開閉操作部30の操作ボックス50の側面に設けたフック爪54が挿通して保持している。フック爪54はハンドルレバー32を下向きに回動すると操作ボックス50内部に引き込まれ、フック金具40のフック穴56から抜けて保持を解除する。
【0036】
図4は図1の消火栓装置10に設けたロールスクリーン装置26を取り出して示している。ロールスクリーン装置26は基台36の左右両側にサイドホルダ38を起立し、両サイドホルダ38の間にローラパイプ34を回転自在に支持し、ローラバイプ34にはスクリーン24の下端が固定された状態で巻き込まれている。
【0037】
スクリーン24の上端には支持部材28が装着され、支持部材28の左右両端はガイド部28aとなり、収納箱開口両側に形成されたスリット状のガイド溝52にそれぞれ所定長さを差し込まれる。なお、ガイド部28aには必要に応じてガイドローラを装着することで、ガイド溝をより滑らかに案内移動可能としても良い。
【0038】
支持部材28の軸方向略中央にはフック金具40が設けられ、収納箱12の開口14側に配置されたスクリーン開閉操作部30と協動してスクリーンの開閉を行う。なお、スクリーン24を巻き出して行う開口14の閉鎖は、スクリーン上端の支持部材28を手で持って、先述のコイルバネによる巻き取り方向の力に抗して引き上げることになるが、この操作を容易にするため、支持部材28の前方(収納箱前面外部側)に適宜の把手を設けるようにしても良い。
【0039】
図5はロールスクリーン装置26要部の内部構造概略を例示している。図5において、基台36に起立されたサイドホルダ38の内側(他方のサイドホルダ38に対向する側)には固定フランジ44が配置され、固定フランジ44と同軸に固定軸42が延在されている。固定軸42の軸方向所定位置には回転フランジ46が固定軸42の周囲に回転自在に配置され、回転フランジ46の外周に、円筒(中空パイプ)状に形成したロールバイプ34の内周を固定している。
【0040】
固定フランジ44と回転フランジ46との間には図示の如く固定軸42と同軸にコイルバネ48が配置され、コイルバネ48の左端は固定フランジ44に固定され、コイルバネ48の右端は回転フランジ46に固定されている。
【0041】
コイルバネ48はローラパイプ34にスクリーンを巻き取った初期位置でフリー状態又は初期的な巻込み状態にあり、スクリーンの巻き出し操作に伴うローラバイプ34の回転によりコイルバネ48が巻き込まれ、コイルバネ48がこれに抗して復元しようとする性質により、スクリーン24の巻き出し量に応じてローラパイプ34にスクリーン24の巻き取り方向の回転力を蓄積する。
【0042】
なお、図5では基本的な構造例を示したが、これに加えコイルバネ48に蓄積した力でスクリーンを巻き込んで停止する際の衝撃を吸収する制動機能を備えた停止機構や、適宜のスクリーン巻き出し位置で巻き込みを停止して保持するクラッチ機構などを必要に応じて設けることができる。このような構造が例えば、特開2009−102916号公報に記載されている。
【0043】
図6は図1の消火栓装置10におけるスクリーン開閉操作部30に対するスクリーン上端の保持構造を取り出して示した説明図である。スクリーン24の上端に設けた支持部材28は中空のパイプ部材であり、その軸方向略中央(図3(C)に示したフック爪54に対応する位置)に、プレート部材を延在したフック金具40を固定しており、フック金具40にはフック爪54が挿通自在となるよう、矩形のフック穴56が開口している。
【0044】
一方、収納箱12の開口14側に固定されるスクリーン開閉操作部30は、操作ボックス50から消火栓装置10の外側前方に向けて取り出した操作軸にハンドルレバー32を取付けており、また操作ボックス50の側面にはフック爪54を突出させている。
【0045】
フック爪54はフック金具40が下方から当接する側の面を、先端に向かって上方に傾いたテーパ面としており、フック金具40を下側から押し当てるとフック金具40がこのテーパ面に沿って徐々に上方へ移動しつつ、一方フック爪54は操作ボックス50の内蔵バネ(図示省略)の押し出し力(フック爪54を突出させる力)に抗して操作ボックス50内に押し込まれ、フック穴56がフック爪54を挿通可能な位置に至ると、内蔵バネの押し出し力への抗力が失われることによりフック爪54が押し出されて(突出して)フック穴56に挿通保持される。
【0046】
またハンドルレバー32を図示の水平位置から下向きに回動すると、操作ボックス50内のリンク機構又はカム機構(図示省略)を介してフック爪54が操作ボックス50内に引き込まれ、フック金具40の保持を解除することができる。このようなフック金具40とスクリーン開閉操作部30の組合せによる機構構造は、例えば一般的なドアハンドルに使用されているドア開閉操作機構と同様の構造を利用できる。
【0047】
特に本実施形態のスクリーン開閉操作部30は、日常生活で使用しているドア開閉のハンドルレバーと同様の構造であることから、ハンドルレバー32の操作に違和感が全くなく、火災という非常時であっても抵抗感無く簡単且つ確実に操作してスクリーン24を開くことができる。
【0048】
図7は図6に示したスクリーン開閉操作部の操作手順を示した説明図である。図7(A)はスクリーン24により開口を閉鎖した状態であり、スクリーン24の上部の支持部材28に設けたフック金具40のフック穴56にスクリーン開閉操作部30のフック爪54を挿通して保持している。
【0049】
図7(B)はスクリーンの開放操作であり、スクリーン開閉装置30のハンドルレバー32を矢印で示すように回動操作するとフック爪54が操作ボックス50内に引き込まれ、フック金具40の保持が解除される。
【0050】
図7(C)はスクリーンの開放の初期段階であり、フック金具40の保持解除に伴いクリーン24は下部に配置しているロールスクリーン装置26による巻き込み作用により下降して収納箱12の前面開口14を外部に開放することになる。
【0051】
図8はスクリーンの開放途中の状態を示した説明図であり、図9にスクリーンの全開状態を示している。図9の全開状態に示すように、スクリーン24は下部に配置したロールスクリーン装置26に巻き込まれるため、従来の扉のように収納箱12の前方に対する飛び出し部分が発生せず、スクリーン24が開いた収納箱12の内部に図13の従来例と同様に収納しているノズル付き消火ホースの引き出しや消火栓弁の操作に容易に着手することができる。また消火作業が終了した後に消火ホースを元に戻す収納復旧作業も、収納箱12の前方に対する飛び出し部分がないことから、容易に行うことができる。
【0052】
図10は本発明による消火栓装置の他の実施形態をスクリーンの閉鎖状態で示した説明図であり、また図11にスクリーンの開放状態を示しており、本実施形態にあっては、スクリーンを横方向に開閉するようにしたことを特徴とする。
【0053】
図10において、本実施形態の消火栓装置10は、内部に図13の従来例と同様に、消火栓弁と消火ホースを収納した金属製の収納箱12を備え、収納箱12の前面の開口14の右側にロールスクリーン装置26を配置し、ロールスクリーン装置26から横方向(図示の例では左向き)に不燃性又は難燃性の繊維シートからなるスクリーン24を引き出し、スクリーン24の先端(左端)に設けた支持部材28を開口14の左側に配置したスクリーン開閉部30に保持して閉鎖状態としている。
【0054】
スクリーン24の先端(左端)に設けた支持部材28の上下両端は開口14の上下内側に形成されたガイド溝54に差し込まれており、ガイド溝54に沿って左右方向に案内移動される。
【0055】
支持部材28には、図11のスクリーン開放状態に示すように、フック穴を備えたフック金具28が設けられ、スクリーン開閉操作部30のフック爪54にフック金具40を挿通させ、これにより図10のようにスクリーン24を閉鎖状態に保持している。
【0056】
消火栓装置10を使用する際には、図10に示すように、ハンドルレバー32を例えば右回りに回動操作すると、フック金具40のフック穴56からフック爪54が抜けて支持部材28の保持が解除され、ロールスクリーン装置26がスクリーン24を右側に案内移動して巻き取り、図11のように開口14が開放される。
【0057】
図10及び図11の実施形態におれるロールスクリーン装置26及びスクリーン開閉操作部30の詳細は、図4〜図7に示したと同じであり、その配置方向が相違しているのみである。
【0058】
なお図1の実施形態はロールスクリーン装置26を開口14の下部に配置した場合を例にとっているが、他の実施形態として、ロールスクリーン装置26を開口14の上部に配置しても良い。この場合、スクリーン開閉操作部30は開口14の下部に配置することになるが、ハンドルレバー32などの操作部は開口側部や上部の操作し易い位置に設け、ワイヤ連結などによるリンク機構を介した操作構造とすれば良い。
【0059】
また図10の実施形態にあっては、ロールスクリーン装置26を開口右側に配置し、スクリーン開閉操作部30を開口14の左側に配置した場合を例にとっているが、左右逆の配置としても良い。
【0060】
また上記の実施形態に示したスクリーン開閉操作部は一例であり、スクリーン先端の支持部材を保持して開口をスクリーンで閉鎖し、所定の操作により支持部材の保持を解除してスクリーンを開く構造であれば、例えばマグネットを利用した機構その他適宜の構造を適用できる。
【0061】
また上記の実施形態は、コイルバネを使用してスクリーンを巻き取るロールクリーン装置を使用しているが、モータ駆動によりスクリーンを巻き取る電動型のロールスクリーン装置を使用しても良い。
【0062】
また、上記の実施形態は二人操作を行う消火栓を例にとっているが、一人操作を行う消火栓についても同様に適用できる。また、人の手によって、通常閉鎖されている収納箱の内部に収納された各種装置等を取り出したり操作したりする消火栓装置である限りにおいて、収納箱の内部に設ける装置類は任意であり、例えば上記実施形態のものに加え消火ポンプの起動スイッチボタン等を設けた消火栓装置についても同様に適用できる。
【0063】
また本発明の適用対象となる消火栓装置は屋内型に限らない。更に、上記各実施形態で示した消火栓装置の、例えば収納箱に内蔵されるホース類や消火栓弁、通報パネル部の構成及び配置その他、扉部分以外の構成についても任意であり、適宜の構成を採用して良い。要するに、消火栓装置の開口部に対しロールスクリーン装置とスクリーン開閉操作部を用いた開閉構造を設け、本願の課題の一部又は全部を解決し、或いは若干でも改善するものであれば良い。
【0064】
また、スクリーンに使用する繊維シートは不燃性或いは難燃性素材であれば良く、金属繊維を用いることも妨げない。
【0065】
また、図1の実施形態にあっては、ハンドルレバー32のレバー先端を右側に向けて配置し、下向きに回動操作(右回り)して開放しているが、ハンドルレバー32のレバー先端を左側に向けて配置し、下向きに回動操作(左回り)して開放するようにしても良い。
【0066】
また本発明は、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に、上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0067】
10:消火栓装置
12:収納箱
14:開口
16:通報パネル
18:発信機
20:赤色表示灯
22:音響孔
24:スクリーン
26:ロールスクリーン装置
28:支持部材
28a:ガイド部
30:スクリーン開閉操作部
32:ハンドルレバー
34:ローラパイプ
36:基台
38:サイドホルダ
40:フック金具
42:固定軸
44:固定フランジ
46:回転フランジ
48:コイルバネ
50:操作ボックス
52:ガイド溝
54:フック爪
56:フック穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面に開口した収納箱の内部に消火ホースを収納した消火栓装置に於いて、
前記収納箱前面の開口部に、前記開口部のいずれかの開口端に配置したロールスクリーン装置による巻き出し又は巻き込みにより開閉自在な不燃性又は難燃性のスクリーンを配置したことを特徴とする消火栓装置。
【請求項2】
請求項1記載の消火栓装置に於いて、
前記ロールスクリーン装置を前記開口部の下端に配置し、
前記開口部の上端にスクリーン開閉操作部を配置し、
前記スクリーン開閉操作部は、前記ロールスクリーン装置から巻き出した前記スクリーンの先端を前記開口部の上端に保持して前記開口部を閉鎖すると共に、所定の開放操作により前記スクリーンの先端保持を解除して前記ロールスクリーン装置に巻き取って開放させる構造を備えたことを特徴する消火栓装置。
【請求項3】
請求項1記載の消火栓装置に於いて、
前記ロールスクリーン装置を前記開口部の一方の側端に配置し、
前記開口部の他方の側端にスクリーン開閉操作部を配置し、
前記スクリーン開閉操作部は、前記ロールスクリーン装置から巻き出した前記スクリーンの先端を前記開口部の他方の側端に保持して前記開口部を閉鎖すると共に、所定の開放操作により前記スクリーンの先端保持を解除して前記ロールスクリーン装置に巻き取って開放させる構造を備えたことを特徴する消火栓装置。
【請求項4】
請求項2又は3記載の消火栓装置に於いて、前記スクリーン開閉操作部は、
テーパ面に対する部材の当接又はハンドルレバーの回動操作により引き込まれる出没自在なラッチ爪を備えた操作部本体と、
前記スクリーン先端に設けた棒状の支持部材に装着したラッチ穴を備えたラッチ金具と、
を備え、
前記ラッチ金具のラッチ穴に前記操作部本体スのラッチ爪を挿入した状態で前記スクリーンを閉鎖状態に保持し、前記ハンドルレバーの回動操作により前記ラッチ爪を前記ラッチ穴から抜いて前記スクリーンを開放させることを特徴とする消火栓装置。
【請求項5】
請求項2又は3記載の消火栓装置に於いて、前記開口部の周縁に、前記スクリーンの先端に設けた支持部材の両端を嵌め入れて案内移動させるガイド部を設けたことを特徴とする消火栓装置。
【請求項6】
請求項2記載消火栓装置に於いて、前記スクリーンを透明或いは半透明状としたことを特徴とする消火栓装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−239485(P2012−239485A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109102(P2011−109102)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000003403)ホーチキ株式会社 (792)
【Fターム(参考)】