説明

消臭フィルター

【課題】種々の臭気成分、特にタバコ臭の臭気成分の中に特に多く含まれ、臭い成分として寄与の大きいアセトアルデヒド等のアルデヒド系ガス、ピリジン類、フェノール類に対して効果的に安定した消臭性能を発揮する消臭フィルターの提供。
【解決手段】成分(A)及び(B)を含有し、成分(A)中に担持される式(1)で表されるヒドロキシアミン化合物と成分(B)との質量比率が(0.065〜7.4):1である消臭フィルター。
成分(A):式(1)で表されるヒドロキシアミン化合物を担持させた粒子


〔R1はH、C1-5アルキル基又はC1-5ヒドロキシアルキル基。R2はH、C1-6アルキル基又はC1-5ヒドロキシアルキル基。R3及びR4はC1-5アルカンジイル基。〕
成分(B):(B1)架橋性ビニルモノマー及び(B2)含窒素芳香環を有するビニルモノマーを含むモノマー成分を共重合して得られる多孔質ポリマー粒子

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消臭フィルターに関し、詳しくは室内その他の空間において発生するタバコ臭等の生活臭に含まれる悪臭を消臭する機能を持つ消臭フィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
公共施設での禁煙が広がっているが、禁煙を行っていない公共施設や各家庭などの屋内空間、自動車内などでは、タバコ臭を取り除きたいという要望は依然として強いものがある。そのため、空気清浄機やエアコン、キャビンフィルターを中心に、運転時に循環する空気に対する消臭機能を付与したものが多くなっている。これらの消臭機能の多くは、臭気分子を吸着して脱臭する活性炭フィルターによるものである。
【0003】
しかしながら、活性炭フィルターの活性炭のみでは吸着量に限界があり、吸着量が飽和に達すると活性炭に吸着した臭気分子は吸着平衡によって脱離し再放出されるという問題がある。そのため、臭気成分に対して効果的に安定した消臭性能を発揮する消臭フィルターが求められている。
【0004】
特許文献1及び特許文献2では、アルデヒド系ガスや低級脂肪酸等に対して効果的に安定した消臭性能を発揮させるため、ヒドロキシアミン化合物を担持させた固体を含む消臭フィルターを開示している。
【0005】
また、特許文献3では架橋性ビニルモノマー及びヘテロ芳香環を有するビニルモノマーを含むモノマー成分を共重合して得られる消臭粒子が開示されている。この消臭粒子はフェノール類やスルフィド類等に対して優れた消臭能を発揮することが開示されている。
【0006】
特許文献4ではヒドラジン誘導体と多孔微粒子とバインダー樹脂を含有する消臭剤組成物が担持された織物が開示されている。この織物は風合いを損ねることなく、アルデヒド、アンモニア、酢酸等の化学物質、臭気物質の除去が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010-57955号公報
【特許文献2】特開2007-69198号公報
【特許文献3】特開2008-111090号公報
【特許文献4】特開2005-76145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、タバコの臭気は、アンモニア、アセトアルデヒド、低級脂肪酸以外にも、ピリジン類、フェノール類等、種々の成分の混じった複合臭であり、必ずしも従来の消臭フィルターで完全に消臭できているとはいえなかった。
【0009】
従って本発明は、種々の臭気成分、特にタバコ臭、及びその臭気成分中に特に多く含まれ、臭い成分として寄与の大きいピリジン類、フェノール類に対して効果的に安定した消臭性能を発揮する消臭フィルターを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、ヒドロキシアミン化合物を担持させた粒子と、架橋性ビニルモノマー及び含窒素芳香環を有するビニルモノマーを含むモノマー成分を共重合して得られる消臭粒子を含む消臭フィルターが、上記課題を解決する上で極めて有効であることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0011】
本発明は、以下の成分(A)及び(B)を含有し、成分(A)中に担持される一般式(1)で現されるヒドロキシアミン化合物と成分(B)との質量比率が0.065:1から7.4:1である消臭フィルターを提供するものである。
成分(A):下記一般式(1)で表されるヒドロキシアミン化合物を担持させた粒子
【0012】
【化1】

【0013】
〔式中、R1は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基を示し、R2は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基を示し、R3及びR4は、同一でも異なっていてもよい炭素数1〜5のアルカンジイル基を示す。〕
成分(B):成分(B1)及び(B2)を含むモノマー成分を共重合して得られる多孔質ポリマー粒子
(B1)架橋性ビニルモノマー
(B2)含窒素芳香環を有するビニルモノマー
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、種々の臭気成分、特にタバコ臭やピリジン系ガス、フェノール系ガスに対して効果的に安定した消臭性能を発揮する消臭フィルターを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔成分(A)〕
・ヒドロキシアミン化合物
成分(A)において担持成分として用いるヒドロキシアミン化合物は、前記一般式(1)で表される(以下、当該化合物を「ヒドロキシアミン化合物(1)」と称する)。一般式(1)において、R1は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基を示す。炭素数1〜5のアルキル基としては、直鎖又は分岐鎖のいずれであってもよく、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等が挙げられる。炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、3-ヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシブチル基、3-ヒドロキシブチル基、4-ヒドロキシブチル基等が挙げられる。これらのうち、R1としては、消臭性能及び入手性の観点から、水素原子、メチル基、エチル基、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基が好ましく、特に水素原子、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基が好ましい。
【0016】
2は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基を示す。炭素数1〜6のアルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基としては、R1の説明で例示したものが挙げられる。これらのうちR2としては、消臭性能及び入手性の観点から、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、ヒドロキシエチル基が好ましく、特に水素原子が好ましい。
【0017】
3及びR4は、炭素数1〜5のアルカンジイル基を示す。R3及びR4は、同一でも異なっていてもよいが、同一である方が好ましい。炭素数1〜5のアルカンジイル基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロパン-1,2-ジイル基(プロピレン基)、テトラメチレン基等が挙げられ、特にメチレン基が好ましい。
【0018】
ヒドロキシアミン化合物(1)の具体例としては、例えば、2-アミノ-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-ヒドロキシエチル-1,3-プロパンジオール、4-アミノ-4-ヒドロキシプロピル-1,7-ヘプタンジオール、2-(N-エチル)アミノ-1,3-プロパンジオール、2-(N-エチル)アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、2-(N-デシル)アミノ-1,3-プロパンジオール、2-(N-デシル)アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール等が挙げられる。これらのうち、消臭性能等の観点から、2-アミノ-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)、2-アミノ-2-ヒドロキシエチル-1,3-プロパンジオールから選ばれる1種以上が特に好ましく、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオールが最も好ましい。これらヒドロキシアミン化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
・担体粒子
成分(A)においてヒドロキシアミン化合物(1)の担体として使用する粒子は、良好な消臭効果、及びフィルターの不織布繊維等からの粉落ち防止の点から、質量平均粒径が100〜2000μmであることが好ましく、200〜800μmであることがより好ましく、200〜600μmであることが更に好ましい。なお、本明細書において質量平均粒径は、JIS K1474(活性炭試験法)の6.3に基づき粒度を求め、次に6.4に基づき粒度分布を求め、更に同項b)−7)に基づいて算出したものである。
【0020】
また、良好な消臭効果の点から、ヒドロキシアミン化合物(1)を担持させる粒子は、比表面積の大きいものが好ましい。この粒子の比表面積は、窒素吸着量から算出するBET1点法による値として、1〜3000m2/gが好ましく、500〜3000m2/gがより好ましく、更に500〜2500m2/gが好ましい。
【0021】
このような粒子として好ましいものとしては、活性炭、シリカ、シリカゲル、ケイ酸カルシウム、ゼオライト、ハイシリカゼオライト、酸化アルミニウム、セピオライト、酸化亜鉛、酸化チタン、発泡セルロースが挙げられる。これらのうち、活性炭、シリカ、シリカゲル、ケイ酸カルシウムが好ましく、特に活性炭が好ましい。
【0022】
・両性界面活性剤
成分(A)には、ヒドロキシアミン化合物(1)のほか、消臭効果の観点から更に両性界面活性剤を担持させることが好ましい。
【0023】
両性界面活性剤としては、アルキルジメチルアミンオキサイド等(アルキルアミド型を含む)のアミンオキサイド型;ラウリルアミノ脂肪酸ベタイン等のアルキルベタイン型;アルキルジメチルアミノ脂肪酸ベタイン型;ラウロイルアミドプロピルベタイン等のアミドベタイン型;2-アルキル-N-カルボキシメチルイミダゾリニウムベタイン、2-アルキル-N-カルボキシエチルイミダゾリニウムベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等のイミダゾリン型;N-2-ヒドロキシエチル-N-2-ラウリン酸アミドエチル-β-アラニン、N-2-ヒドロキシエチル-N-2-ヤシ油脂肪酸アミドエチル-β-アラニン等のアミドアミン型;アルキルジエチレントリアミノ酢酸塩型等が挙げられる。これらのうち、アミンオキサイド型両性界面活性剤が好ましく、なかでもアルキルジメチルアミンオキサイドが好ましく、特にラウリルアミドプロピルアミン-N,N-ジメチル-N-オキサイド、ラウリルジメチルアミンオキサイドが好ましい。
【0024】
両性界面活性剤を担持させる場合、その使用量は、良好な消臭効果の点から、ヒドロキシアミン化合物(1)の質量に対し0.05〜2倍が好ましく、0.1〜1倍がより好ましく、更に0.2〜0.5倍が好ましい。
【0025】
担体粒子に対するヒドロキシアミン化合物(1)の担持量は、アルデヒド系ガスの吸収能及びアルデヒド系ガスとその他の悪臭成分の吸着性のバランスの観点から、担体粒子1g当たり0.001〜3gが好ましく、0.01〜1gがより好ましい。また、両性界面活性剤を更に担体に担持させる場合、両性界面活性剤の担持量は、担体粒子1g当たり0.00005〜6gが好ましい。
【0026】
・担持方法
成分(A)において、ヒドロキシアミン化合物(1)及び両性界面活性剤を担体に担持させる方法は、特に限定されないが、あらかじめ両者を水やエタノール等の溶媒に溶解あるいは分散させて、両者を含有する溶液(処理液)を調製し、この処理液を担体に付着させ、加熱乾燥すれば、容易に均一に担持させることができる。処理液中におけるヒドロキシアミン化合物(1)及び両性界面活性剤の含有量は、良好な効率の観点から、両者の合計で0.5〜95質量%が好ましい。また、例えば、浸漬により担体に処理液を付着させる場合には、担体:処理液=1:0.1〜1:10の質量比率で浸漬することが好ましい。加熱乾燥温度は、例えば50〜120℃とすれば、短時間で乾燥を終えることができる。
【0027】
この処理液の溶媒は、水、エタノールが好ましく、適宜、多価アルコール類、pH調整剤、その他有機溶剤、界面活性剤等を添加することができる。
【0028】
このうち多価アルコール類としては、例えば、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。これらのうち、グリセリン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールが好ましい。用いられる多価アルコール類の量は、ヒドロキシアミン化合物(1)1gに対して、好ましくは0.1〜2gである。
【0029】
〔成分(B)〕
・(B1)架橋性ビニルモノマー
成分(B)の多孔質ポリマー粒子の構成モノマー成分である(B1)架橋性ビニルモノマーは、ビニル基を二つ以上有するモノマーである。例えば、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられ、ジビニルベンゼンが好ましい。モノマー成分中の架橋性ビニルモノマーの割合が大きいほど、BET比表面積が大きい粒子が得られる。全モノマー成分中における(B1)架橋性ビニルモノマーの割合は5質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、50質量%以上が更に好ましい。上限は98質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましい。
【0030】
・(B2)含窒素芳香環を有するビニルモノマー
成分(B)の多孔質ポリマー粒子の構成モノマー成分である(B2)含窒素芳香環を有するビニルモノマーは、ビニル基及び含窒素芳香環を含む化合物であれば何れでもよい。含窒素芳香環とは、芳香環化合物の環構成原子として炭素原子以外に窒素原子を含む環をいい、例えばピリジン、ピロール、キノリン等の窒素原子を環に1個有するもの、イミダゾール、ピリミジン、ピラジン、ピラゾール等の窒素原子を環に2個有するものが例示される。これらの中でもピリジン、イミダゾール、ピリミジンが好ましい。含窒素芳香環を有するビニルモノマーとしては、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、1-ビニルイミダゾール、2-ビニルピリミジン等が挙げられ、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジンが好ましい。
【0031】
悪臭成分に対する十分な吸着能を有するものとするため、全モノマー成分中の(B2)含窒素芳香環を有するビニルモノマーの割合は十分に大きいことが好ましく、1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましく、4質量%以上が更に好ましい。また、多孔質ポリマー粒子のBET比表面積を大きくすることで吸収効果を高める場合には、全モノマー成分中の(B2)含窒素芳香環を有するビニルモノマーの割合は50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。
【0032】
・(B1)と(B2)との質量比
フェノール類などの悪臭に対する消臭性能の観点から、(B1)架橋性ビニルモノマーと(B2)含窒素芳香環を有するビニルモノマーとの質量比は、3:2〜99:1が好ましく、1:1〜10:1がより好ましく、特に2:1〜4:1が好ましい。
【0033】
・(B3)他のモノマー
成分(B)の多孔質ポリマー粒子は、モノマー成分として、(B1)架橋性ビニルモノマー及び(B2)含窒素芳香環を有するビニルモノマー以外に、更に(B3)これらと共重合可能な他のモノマーを用いることができる。
【0034】
このようなモノマーとしては、例えば芳香族系ビニルモノマー、不飽和酸エステル、不飽和酸等が挙げられる。芳香族系ビニルモノマーとしては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ビニルベンジルクロライド等が例示され、不飽和酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸グリシジル等が例示され、不飽和酸としては、(メタ)アクリル酸が例示される。また、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等も用いることができる。これらの中では芳香族系ビニルモノマーが好適であり、特にスチレンが好ましい。(B3)モノマーは、いずれかを単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0035】
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとはアクリレート又はメタクリレートを、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸又はメタクリル酸を意味する。
【0036】
消臭性能の観点から好ましい成分(B)の多孔質ポリマー粒子として、ジビニルベンゼンと2−ビニルピリジンの共重合体が挙げられる。
【0037】
成分(B)の多孔質ポリマー粒子のBET比表面積は、(B1)架橋性ビニルモノマーの割合や、重合に用いる有機溶剤の選定により任意に設定することができるが、大きいほど消臭効果が高い。高い物理消臭能を有するものとする観点から、10m2/g以上であり、50m2/g以上が好ましく、200m2/g以上がより好ましい。なおBET比表面積は、後記実施例に示すBET1点法により求めた値である。
【0038】
多孔質ポリマー粒子の粒径は特に規定されず、用いられる消臭製品に応じて適当なものを選定することができるが、消臭効果及び不織布繊維からの粉落ち防止の面から、体積平均粒径で100〜2000μmの範囲が好ましく、200〜800μmの範囲がより好ましく、200〜600μmの範囲が更に好ましい。
【0039】
成分(B)の多孔質ポリマー粒子は、上記モノマー(B1)及びモノマー(B2)、更に必要に応じてモノマー(B3)を含有するモノマー成分の混合物を共重合することにより得ることができる。
【0040】
〔成分(A)と成分(B)の質量比〕
フィルター中には成分(A)と成分(B)の両方が含まれている必要がある。成分(A)中に担持されるヒドロキシアミン化合物(1)と成分(B)との質量比は、0.065:1〜7.4:1であり、良好な消臭効果の観点から0.2:1〜3.6:1が好ましく、更に0.35:1〜1.3:1が好ましい。
【0041】
〔成分(C)〕
更に生活臭における様々な臭気成分に対する消臭の観点から、フィルター中には成分(A)と成分(B)に加え、成分(C)として、ヒドロキシアミン化合物(1)を担持しておらず、BET比表面積が1〜3000m2/gである粒子を含有させてもよい。この粒子は、質量平均粒径が100〜2000μmであることが好ましく、200〜800μmであることがより好ましく、200〜600μmであることが更に好ましい。また、BET比表面積が500〜3000m2/gであることがより好ましく、500〜2500m2/gであることが更に好ましい。
【0042】
このような粒子として好ましいものとしては、活性炭、シリカ、シリカゲル、ケイ酸カルシウム、ゼオライト、ハイシリカゼオライト、酸化アルミニウム、セピオライト、酸化亜鉛、酸化チタン、発泡セルロースが挙げられる。好ましいものとしては活性炭、シリカ、シリカゲル、ケイ酸カルシウム、ゼオライト、ハイシリカゼオライト、セピオライトが挙げられ、特に活性炭が好ましい。
【0043】
成分(C)を含有させる場合には、アルデヒド系ガスの吸収能及びアルデヒド系ガスとその他の悪臭成分の吸着性のバランスの観点から、成分(A)の担体粒子及び成分(C)の合計量に対する成分(A)に担持されるヒドロキシアミン化合物(1)の質量比が、1:0.001〜1:3であることが好ましく、1:0.01〜1:1であることがより好ましい。また、成分(A)に両性界面活性剤を更に担体に担持させる場合、成分(A)の担体粒子と成分(C)の合計量に対する両性界面活性剤の質量比は、1:0.00005〜1:6が好ましい。
【0044】
成分(A)、成分(B)、成分(C)の比率は、良好な消臭効果の観点から、成分(C)を含有させるか否かにかかわらず、成分(B)の質量を1とした場合、成分(A)及び成分(C)の合計量が、質量比で0.3〜50とすることが好ましく、1.5〜50とすることがより好ましく、2.5〜20とすることが更に好ましい。また、成分(A)の全体と成分(B)との質量比は、良好な消臭効果の点から、98:2〜30:70が好ましく、更に96:4〜58:42が好ましく、特に90:10〜70:30が好ましい。
【0045】
〔代表的な構成例〕
本発明の消臭フィルターの代表的な構成例としては、成分(A)と成分(B)を含む組成物を、フィルターを構成する繊維構造物に固定化したもの等が挙げられる。
【0046】
上記フィルターを構成する繊維構造物の材質としては、任意のものが使用できるが、不織布、紙、あるいはこれらの複合物等が好ましい。特に消臭性能の観点から不織布が好ましい。また、これら繊維構造物を構成する繊維としては、合成樹脂繊維、無機繊維、天然パルプ等が挙げられる。
【0047】
不織布としては、具体的には、スパンボンド法、メルトブロー法、遠心力法、フラッシュ紡糸法、高電圧乾式紡糸法、フィルム法等の直接製布法、エアレイ法、カード法、ガーネット機(反毛機)法等の乾式法、抄紙と同様の湿式法により製造される不織布が挙げられ、繊維間の結合方法としては、接着剤法、熱融着法、超音波接着法、ニードルパンチ法、スパンレース法、ステッチボンド法等が挙げられる。
【0048】
紙としては、具体的には、薄葉紙(例えば、ティシュペーパー、トイレットペーパー、ナプキン、タオル紙)、包装紙、塗工紙(例えば、アート紙、コート紙)、非塗工紙、印刷紙、図面紙、ラミネート紙、和紙等が挙げられ、また、ダンボール構造紙、ハニカム構造紙、白板紙、黄板紙、チップボール紙、コルゲート紙、紙幣原紙及び台紙等の板紙も挙げられる。
【0049】
合成樹脂繊維としては、具体的には、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリスチレン繊維等が挙げられる。
【0050】
無機繊維としては、具体的には、アルミナ繊維、活性炭繊維、炭素繊維、ガラス繊維、ジルコニア繊維、アルミナ・シリカ繊維等が挙げられる。
【0051】
天然パルプとしては、具体的には、木材パルプ、靭皮繊維、葦パルプ、バガスパルプ、ワラパルプ、竹パルプ等が挙げられる。
【0052】
不織布、紙以外に、樹脂、金属、活性炭等のフィルム、シート等の成形品を使用することも可能である。
【0053】
〔製造方法〕
本発明の消臭フィルターを製造する方法としては、
1)成分(A)と成分(B)を混合する工程
2)得られた成分(A)と成分(B)を含む混合物を、フィルターを構成する繊維構造物表面に均一に散布、又は繊維構造物の繊維間に充填する工程
3)表面に成分(A)と成分(B)の混合物を散布又は充填した繊維とは別の、フィルターを構成する繊維で、2)で得られた繊維をサンドイッチ状に挟み込む工程
を含む製造方法が好ましい。
【0054】
フィルターに成分(C)を更に含有させる場合、1)の工程で成分(A)と成分(B)を混合する際、同時に成分(C)などのその他の成分を混合し、得られた混合物を、フィルター表面を構成する繊維構造物に対し均一に散布又は充填してもよい。また、成分(A)及び(B)とは別に2)の工程の前、又は2)の工程の後に、成分(C)を別途、繊維構造物に対し均一に散布又は充填させてもよい。更に成分(A)及び(B)を散布又は充填させた繊維構造物とは別の繊維構造物に対し(C)を均一に散布又は充填した後、3)の工程で成分(A)及び(B)を散布又は充填させた繊維構造物と、成分(C)を均一に散布又は充填した繊維構造物を共に挟み込んでもよい。
【0055】
消臭基材の均一分布の観点から、1)の工程で成分(A)と成分(B)を混合する際、同時に成分(C)などのその他の成分を混合し、得られた混合物を、フィルター表面を構成する繊維表面に均一に散布する製造方法が好ましい。
【0056】
2)の工程で成分(A)及び成分(B)を散布又は充填させる際、成分(A)及び(B)の固定化を確実にするために、バインダー溶液を散布してもよいが、消臭性能を向上させる観点から、バインダー溶液を散布せずに固定化することが好ましい。
【0057】
また、多くの層を積層することによってフィルター中のヒドロキシアミン化合物(1)等を増やすことができる。例えば、10〜100g/m2の不織布に、成分(A)及び(B)、又は更に成分(C)を含む混合物を10〜300g/m2固定し、この不織布を2〜10枚積層すれば、優れた消臭性能を有する消臭フィルターが得られる。
【0058】
本発明の消臭フィルターが対象とするガスによって、成分(A)及び(B)、更には成分(C)以外に、その他の消臭剤を併用することも可能である。その他の消臭剤は、ヒドロキシアミン化合物(1)等と共に前記処理液に含有させて用いてもよいし、又はヒドロキシアミン化合物等とは別個に処理液を調製して、前記処理液と同様にして用いてもよいし、本発明の消臭フィルター等に用いるフィルターを作製する際に、フィルターに含有させてもよい。
【0059】
その他の消臭剤の例としては、下記(1)〜(11)が挙げられる。これらその他の消臭剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(1) 酸化鉄、硫酸鉄、塩化鉄、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、酸化銀、酸化銅等の金属化合物
(2) 乳酸、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸、マレイン酸、マロン酸、エチレンジアミンポリ酢酸、アルカン(又はアルケン)-1,2-ジカルボン酸、シクロアルカン(又はシクロアルケン)-1,2-ジカルボン酸、ナフタレンスルホン酸等のカルボン酸類;ウンデシレン酸亜鉛、2-エチルヘキサン酸亜鉛、リシノール亜鉛等の脂肪酸金属類
(3) カテキン、ポリフェノール、緑茶抽出物、マッシュルームエキス、木酢液、竹酢液等の植物抽出物系の消臭剤
(4) 鉄、銅等の金属クロロフィリンナトリウム、鉄、銅、コバルト等の金属フタロシアニン、鉄、銅、コバルト等のテトラスルホン酸フタロシアニン等、二酸化チタン、可視光応答型ニ酸化チタン(窒素ドープ型等)の触媒型消臭剤
(5) α、β、γ-シクロデキストリン、そのメチル誘導体、ヒドロキシプロピル誘導体、グルコ シル誘導体、マルトシル誘導体等のシクロデキストリン類
(6)ミリスチン酸エステル類、パルミチン酸エステル類、フタル酸エステル類、アジピン酸エステル類、セバシン酸エステル類、クエン酸エステル類等の悪臭の保留効果があるとされるエステル油剤
(7) アクリル酸ポリマー、マレイン酸ポリマー、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、芳香族スルフォン酸ホルマリン縮合物等のポリマー
(8) 多孔メタクリル酸ポリマー、多孔アクリル酸ポリマー等のアクリル酸系ポリマー、多孔ジビニルベンゼンポリマー等の芳香族系ポリマー、それらの共重合体等の合成の多孔質ポリマー
(9) キチン、キトサン等の天然の多孔質ポリマー
(10) 銀担持ゼオライト、銀担持カンクリナイト、銀担持多孔スチレン−ジビニルベンゼンービニルピリジンポリマー等金属担持多孔質物質
【0060】
他の機能性の剤、例えば抗菌剤、防カビ剤、抗ウイルス剤、昆虫忌避剤、香料等も各種用途に応じて組み合わせて使うことができる。
【0061】
〔用途〕
本発明の消臭フィルターは、タバコ臭、体臭、調理油臭、排泄物臭等の生活悪臭の消臭効果が望まれる分野で利用可能である。本発明の消臭フィルターは、特にタバコ臭やピリジン系ガス、フェノール系ガスに対して有効である。
【0062】
本発明の消臭フィルターの具体的な用途としては、電力を使うものとして、家庭用、施設用、自動車用の空気清浄機、エアコンディショナー、電池式の据え置き消臭剤、コンセントイン方式の消臭機等が挙げられ、電力を使わないものとして、家庭用、施設用の換気口取り付けタイプの消臭フィルター、据え置き型の消臭剤等が挙げられる。
【0063】
本発明の消臭フィルターは、空気清浄機やエアコンに搭載する際には、粒子除去を目的とするHEPAフィルターの等のフィルターや、抗菌、抗ウィルスを目的とカテキンフィルター等のフィルターと一体化することもできる。
【実施例】
【0064】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により制限されるものではない。
【0065】
〔製造例1:(ジビニルベンゼン/2-ビニルピリジン)共重合体多孔質粒子(B)-1の製造〕
4L容のSUS製反応槽に、ポリビニルアルコール(ゴーセノールEG-40、日本合成化学社製)の0.19質量%水溶液を1596g加えた。一方、2-ビニルピリジン 148g、ジビニルベンゼン(純度81%)445g及びヘプタン296gの混合溶液に11gの2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルアゾバレロニトリル)を溶解させて均一になるまで混合し、これを反応槽に加えた。 アンカー翼を用い、190rpmで反応液を攪拌しながら、60℃で6時間重合反応を行い、ポリマー粒子の分散液を得た。この分散液を濾過し、更に乾燥を行い、584gのポリマー粒子(以下、「粒子(B)-1」という)を得た。得られたポリマー粒子は体積平均粒径393μmであり、237m2/gのBET比表面積を有していた。
【0066】
BET比表面積は、フローソーブ2300(島津製作所製)を用いてBET1点法により求めた。吸着ガスは窒素30体積%、ヘリウム70体積%のガスを用いた。試料の前処理として、120℃で10分間、吸着ガスの流通を行った。その後、試料が入ったセルを液体窒素で冷却し、吸着完了後室温まで昇温し、脱離した窒素量から試料の表面積を求めた。試料の質量を除して比表面積を求めた。
【0067】
ポリマー粒子の体積平均粒径の測定にはLA-920(堀場製作所製)を用いた。平均粒子は分散媒にエタノールを用い、相対屈折率1.20+0.00iとして、体積平均粒径を測定した。
【0068】
〔製造例2:ヒドロキシアミン化合物担持粒子(A)-1の製造〕
2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオールを、下記処方になるようにイオン交換水に溶解した。この水溶液を「処理液X」とする。
<処理液X>
2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール 6質量%
イオン交換水 バランス
合計100質量%
【0069】
活性炭(質量平均粒径400μm、比表面積:1950m2/g):処理液X=1:3の割合で、上記処理液Xを活性炭に含浸させた後、80℃で2時間乾燥させ、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール担持活性炭(以下、「粒子(A)-1」という)を得た。
【0070】
〔製造例3:ヒドロキシアミン化合物担持粒子(A)-2の製造〕
2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオールとラウリルアミドプロピルアミン-N,N-ジメチル-N-オキサイドを下記処方になるようにイオン交換水に溶解した。この水溶液を「処理液Y」とする。
<処理液Y>
2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール 6質量%
ラウリルアミドプロピルアミン-N,N-ジメチル-N-オキサイド 1.7質量%
イオン交換水 バランス
合計100質量%
【0071】
活性炭(質量平均粒径400μm、比表面積:1950m2/g):処理液Y=1:3の割合で、上記処理液Yを活性炭に含浸させた後、80℃で2時間乾燥させ、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオールとアミンオキサイド型界面活性剤を担持した活性炭(以下、「粒子(A)-2」という)を得た。
【0072】
実施例1〜11
粒子(A)-1又は粒子(A)-2と、粒子(B)-1とを、表1に記載の割合で混合し、分散機で均一に分散させた。得られた混合物を、ニードルパンチ不織布(PET繊維、PP/PE繊維混綿、65g/m2)上に280g/m2相当になるよう、均一に積層し、消臭シートを得た。このシートをニードルパンチ不織布によって挟み込み、フィルター加工を行った。
【0073】
実施例12〜15
粒子(A)-2と粒子(B)-1に加え、ヒドロキシアミン化合物を担持していない活性炭(質量平均粒径400μm、比表面積:1830m2/g)を表1に記載の割合で混合し、分散機で均一に分散させた。得られた混合物をニードルパンチ不織布(PET繊維、PP/PE繊維混綿、65g/m2)上に280g/m2相当になるよう、均一に積層し、消臭シートを得た。このシートをニードルパンチ不織布によって挟み込み、フィルター加工を行った。
【0074】
比較例1
粒子(A)-2のみを不織布上に均一に分散した以外は実施例5と同様にして消臭シートを作製し、フィルター加工を行った。
【0075】
比較例2
粒子(B)-1のみを不織布上に均一に分散した以外は実施例5と同様にして消臭シートを作製し、フィルター加工を行った。
【0076】
比較例3〜4
粒子(A)-2、と粒子(B)-1を表1に記載の割合で混合した以外は実施例5と同様にして消臭シートを作製し、フィルター加工を行った。
【0077】
比較例5
粒子(B)-1の代わりに、(スチレン/ジビニルベンゼン)共重合体多孔質粒子(三菱化学社製:商品名セパビーズSP207、体積平均粒径400μm(市販品を粉砕し作製)、比表面積630m2/g)を使用した以外は実施例7と同様にして消臭シートを作製し、フィルター加工を行った。
【0078】
比較例6
粒子(A)-2とヒドロキシアミン化合物を担持していない活性炭を表1に記載の割合で混合した以外は実施例12と同様にして消臭シートを作製し、フィルター加工を行った。
【0079】
比較例7
粒子(A)の代わりに、ポリエチレンイミン(日本触媒社製エポミン:品番P-1000(アミン価18mmol/g)を活性炭(質量平均粒径400μm、比表面積:1950m2/g)1gあたり0.083g(アミン価1.49mmol/g相当;溶液Xの2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオールの添着量と同じアミン価)使用した以外は実施例6と同様にして消臭シートを作製し、フィルター加工を行った。
【0080】
比較例8
ポリ(ジビニルベンゼン/2-ビニルピリジン)共重合多孔質粒子とヒドロキシアミン化合物を担持していない活性炭を表1に記載の割合で混合した以外は実施例12と同様にして消臭シートを作製し、フィルター加工を行った。
【0081】
試験例1 臭気強度の評価
2m3の評価ボックスの中で、タバコ0.5cm(フィルター部分からカット)を燃焼させた。燃焼開始から5分後にタバコを取り出し、実施例1〜15及び比較例1〜8で得られた消臭フィルターを市販空気清浄機に取り付け、評価ボックスの中で中モード(風量2.0m/秒)で5分間運転させた。その後、評価ボックスの嗅ぎ窓から、評価ボックス内のニオイの官能評価を行った。官能評価は臭気判定士6名で行い、以下に記載の6段階臭気強度で0.5刻みで評価し、平均値を採用した。
この結果を表1に示す。
【0082】
・臭気強度評価基準
0:無臭
1:やっと感知できるニオイ
2:何のニオイであるかが判る弱いニオイ
3:楽に感知できるニオイ
4:強いニオイ
5:強烈なニオイ
【0083】
〔快不快度の評価方法〕
2m3の評価ボックスの中で、タバコ0.5cm(フィルター部分からカット)を燃焼させた。燃焼開始から、5分後にタバコを取り出し、実施例1〜15及び比較例1〜8で得られた消臭フィルターを市販空気清浄機にとりつけ、中モードで運転し(風量2.0m/秒)5分運転させた後、評価ボックスの嗅ぎ窓から、評価ボックス内のニオイの官能評価を行った。官能評価は臭気判定士6名で行い、以下に記載の7段階快不快度で0.5刻みで評価し、平均値を採用した。この結果を表1に示す。
【0084】
<快不快度評価基準>
−4:極端に不快
−3:非常に不快
−2:不快
−1:やや不快
0:快でも不快でもない
1:やや快
2:快
【0085】
表1より、成分(A)の絶対量が最も多い比較例1や成分(B)の絶対量が最も多い比較例2よりも、成分(A)、成分(B)それぞれの絶対量は減少しても、特定比率で組み合わせた実施例の方が、タバコ臭消臭の効果感が大きいことが明確に分かる。
【0086】
【表1】

【0087】
試験例2 臭気成分ごとの消臭効果の評価
2m3の評価ボックスの中で、タバコ0.5cm(フィルター部分からカット)を燃焼させた。燃焼開始から5分後にタバコを取り出し、実施例12及び比較例6で得られた消臭フィルターを市販空気清浄機に取り付け、評価ボックスの中で中モード(風量2.0m/秒)で5分間運転させた。その後、評価ボックス内の臭気をテドラーバッグに3L採取した。これを原臭とする。この原臭をそれぞれ3倍、10倍、30倍、100倍、300倍、1000倍と3倍希釈及び10倍希釈系列の下降法により無臭空気で希釈した。希釈した臭気をTenax TA Adsorbent(登録商標,GERSTEL社製)に1L吸着させ、におい嗅ぎガスクロマトグラフィーで分離し、分析した希釈倍率において、ピリジン系ガス、フェノール系ガスそれぞれの臭気の有無を判定した。
臭気の有無の評価は臭気判定士3名で行い、ピリジン系ガスとしてピリジン、フェノール系ガスとしてグアヤコールの臭気を感じなくなる希釈倍率を測定した。
この結果を表2に示す。
【0088】
【表2】

【0089】
試験例3 時間ごとの消臭効果評価
2m3の評価ボックスの中で、タバコ0.5cm(フィルター部分からカット)を燃焼させた。燃焼開始から5分後にタバコを取り出し、実施例12、比較例6及び比較例8で得られた消臭フィルターを市販空気清浄機に取り付け、評価ボックスの中で中モード(風量2.0m/秒)で3分間、5分間、15分間、及び60分間運転させた。その後、評価ボックスの嗅ぎ窓から、評価ボックス内のニオイの官能評価を行った。
官能評価は臭気判定士6名で行い、以下に記載の7段階快臭気強度度で0.5刻みで評価し、平均値を採用した。この結果を表3に示す。
【0090】
・臭気強度評価基準
0:無臭
1:やっと感知できるニオイ
2:何のにおいであるかが判る弱いニオイ
3:楽に感知できるニオイ
4:強いニオイ
5:強烈なニオイ
【0091】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分(A)及び(B)を含有し、成分(A)中に担持される一般式(1)で表されるヒドロキシアミン化合物と成分(B)との質量比率が0.065:1から7.4:1である消臭フィルター。
成分(A):下記一般式(1)で表されるヒドロキシアミン化合物を担持させた粒子
【化1】

〔式中、R1は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基を示し、R2は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基を示し、R3及びR4は、同一でも異なっていてもよい炭素数1〜5のアルカンジイル基を示す。〕
成分(B):成分(B1)及び(B2)を含むモノマー成分を共重合して得られる多孔質ポリマー粒子
(B1)架橋性ビニルモノマー
(B2)含窒素芳香環を有するビニルモノマー
【請求項2】
成分(A)における担体粒子の質量平均粒径が、100〜2000μmである請求項1記載の消臭フィルター。
【請求項3】
成分(A)における担体粒子の比表面積が、1〜3000m2/gである請求項1又は2記載の消臭フィルター。
【請求項4】
成分(A)が、一般式(1)で表されるヒドロキシアミン化合物を担持させた活性炭に、更に両性界面活性剤を担持させたものである請求項1〜3のいずれかに記載の消臭フィルター。
【請求項5】
成分(B)が、(ジビニルベンゼン/2-ビニルピリジン)共重合体多孔質粒子である請求項1〜4のいずれかに記載の消臭フィルター。
【請求項6】
成分(B)の体積平均粒径が200〜1000μmである請求項1〜5のいずれかに消臭フィルター。
【請求項7】
更に、ヒドロキシアミン化合物を担持していない比表面積1〜3000m2/gの粒子を含有する請求項1〜6のいずれかに記載の消臭フィルター。

【公開番号】特開2012−120637(P2012−120637A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272714(P2010−272714)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】