説明

消臭性シリコーンゴムマット

【課題】 製造が容易で、シリコーンゴムに酸化チタンからなる光触媒材を混入してなる消臭性を付与したシリコーンゴムマットを提供する。
【解決手段】 シリコーンゴムに光触媒能を有する酸化チタンを混入してなる消臭性シリコーンゴムマットであって、シリコーンゴムと酸化チタンとの合計量に対して酸化チタンを5〜20重量%混入してなる。ここで、酸化チタンは粉末状としその比表面積が100〜300m2 /gであるものとするとよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーンゴムマット、特に消臭性を付与したシリコーンゴムマットに関する。
【背景技術】
【0002】
明所だけでなく暗所においても触媒機能を発揮する触媒機能材料として、特許文献1には、光触媒粉末と放射性鉱物粉末とを基材中に含み、好ましくは、光触媒粉末が酸化チタンであり、放射性鉱物粉末がモナズ石(モナザイト)であって、光触媒粉末100重量部に対して放射性鉱物粉末1〜50重量部を含有する触媒機能材料が開示されている。
実施例には、基材としてシリコーンゴム、光触媒粉末としてルチル型酸化チタン(平均粒径0.1〜0.5μm)、放射性鉱物粉末としてモナズ石粉末を用い、重量配合比でシリコーンゴム100部、酸化チタン30部混合したゴム材が示されている。
【0003】
しかし、このような多量の酸化チタンを含有せしめた場合、マット状乃至シート状のゴム製品を得るべくロールで混練する際に、粘度が高くなり過ぎて、混練作業に支障を来し、製造困難である。
この触媒機能材料は暗所においても触媒機能を発揮させるためにモナズ石(モナザイト)などからなる放射性鉱物粉末を含有せしめたことに特徴をもつものである。
【0004】
光触媒、特に酸化チタン粉末からなる光触媒は、日常生活において気になる臭気、特にたばこの臭い、猫などのペットから発生する臭いなど、を分解して消臭する機能をもつことが知られている。
このため、シリコーンゴムに光触媒材を混入してマット状に形成すれば、消臭性を付与したゴムマットとして、日常生活上便利である。
【特許文献1】特開2000−167397号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、製造が容易で、シリコーンゴムに酸化チタンからなる光触媒材を混入してなる消臭性を付与したシリコーンゴムマットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明による消臭性シリコーンゴムマットは、シリコーンゴムに光触媒能を有する酸化チタンを混入してなる消臭性シリコーンゴムマットであって、シリコーンゴムと酸化チタンとの合計量に対して酸化チタンを5〜20重量%混入してなること、を特徴としている。
ここで、酸化チタンは粉末状としその比表面積が100〜300m2 /gであるものとするとよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明による消臭性シリコーンゴムマットによれば、シリコーンゴムと酸化チタンとの合計量に対して酸化チタンを5〜20重量%混入してなるので、ロールでの混練作業中でも粘度がそれほど高くならず、製造が容易である。
また、酸化チタンは粉末状としその比表面積が100〜300m2 /gであるものとすれば、タバコ臭やペット臭の消臭効果を期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための最良の形態を具体的に説明する。本発明において、基材としては、シリコーンゴムを用いる。シリコーンゴムは、耐酸化性に優れ、耐候性にも優れているので、日光の当たる窓際、車内などでの使用に好適に用いることができる。他のゴム、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴムなどに比べ、ゴム自体の臭いが少なく、家庭内や車内で使用するには好都合である。また着色しやすくカラフルなものも製造可能である。シリコーンゴムは、耐酸化性に優れるので、酸化チタンかなる光触媒によって、基材が酸化分解されて劣化することなく、長期に亘り触媒能を維持できる。
【0009】
光触媒機能をもつものとして本発明では、酸化チタン粉末を用いる。酸化チタンに紫外線を当てると、光励起されて電子と正孔(ホール)が発生して種々の酸化還元反応を起こす。励起された電子は空気中の酸素と結合してスーパーオキサイドイオン(O2 - )を形成し、正孔は水と反応してヒドロキシラジカル(・OH)を形成すると考えられ、これら反応性の高い物質が媒介となって有機物を分解する。
【0010】
本発明で用いる酸化チタン粉末は、その比表面積が100〜300m2 /gの範囲のものが好ましい。比表面積が100m2 /g未満では、比表面積が小さく接触面積が小さくなるため、触媒能が不十分で消臭効果が小さくなる。一方、300m2 /gを超えるものは、粒子径が小さくなるため、製造困難となりコスト高となる。250〜300m2 /gの範囲のものがより好ましい。
【0011】
シリコーンゴムと酸化チタンとの合計量に対して酸化チタンを5〜20重量%混入する。5重量%未満では、含有量が少なすぎて消臭能が十分でなく、一方、20重量%を超えると、シリコーンゴムに酸化チタン粉末を混練する作業において粘度が高くなり過ぎて混練作業に支障を来す。好ましくは、10〜15重量%の範囲である。この範囲であれば、十分な消臭効果を期待でき、また、製造作業において、粘度もそれほど高くならず、製造作業に支障を来すこともない。
【0012】
シリコーンゴムマットを製造するには、原材料となるシリコーンゴムコンパウンドをゴム用二本ロールを用い、素練りして可塑化させ、これに酸化チタン粉末を添加して均一に分散するように混練する。次いで、型に入れて加熱、加圧成形すればよい。
【0013】
試験サンプルの作成
シリコーンゴムに混入する酸化チタン粉末としては、結晶子径、比表面積の異なる2種類のものを用いた。用いた酸化チタン粉末の特性を表1に示す。
【0014】
【表1】

【0015】
シリコーンゴムと酸化チタンとの合計量に対して粉体1の酸化チタン粉末を10重量%混入してシリコーンゴムマットを作成した。同様に、シリコーンゴムと酸化チタンとの合計量に対して粉体2の酸化チタン粉末を10重量%混入してシリコーンゴムマットを作成した。各シリコーンゴムマットの厚さは2mmとした。
【0016】
アセトアルデヒド分解試験
光触媒製品技術協議会(現光触媒工業会)が定めたガスバックb法に基づいて光触媒能の評価を行った。具体的には、図1に示すような試験装置を用いてアセトアルデヒド分解試験を行った。幅170cm×奥行80cm×高さ60cmのステンレス製のボックスを設け、このボックス内の上部に光源としてブラックライト(UV強度:1.0mW/cm2 )を配置し、3000mlのガスバッグ内にサンプルを設置しアセトアルデヒドガス(初期濃度700ppm)を封入する。光源とサンプルまでの距離は25cmとした。暗所吸着時間は15時間、所定時間経過後のガス濃度測定は、光音響マルチガスモニタ(INNOVA社製)を用いて行った。
粉体1を用いて作成したシリコーンゴムマット(サンプル1)、粉体2を用いて作成したシリコーンゴムマット(サンプル2)の他に、酸化チタン粉末を含有しないシリコーンゴムマット(ブランク)をサンプル3とした。各サンプルの寸法はφ130mm×厚さ約2mm、約21gである。その結果を表2に示す。
【0017】
【表2】

【0018】
また、アセトアルデヒド濃度、二酸化炭素濃度の経時変化を図2、図3のグラフに示す。
表2、図2、図3のグラフから分かるように、サンプル1では、アルデヒド分解能が高く、消臭性に優れていることが分かる。サンプル2では、アルデヒド分解能は低いが、長時間かければ(24時間以上)消臭性もある程度認められる。アルデヒドは、光触媒により二酸化炭素に酸化分解される。このため、アルデヒド濃度の減少に応じて二酸化炭素の濃度が増している。サンプル3は光触媒を含まないもので、時間が経過してもアルデヒド濃度、二酸化炭素濃度は実質的に変化しない。
サンプル1とサンプル2との差は、酸化チタンの結晶子径の大きさと比表面積である。シリコーンゴムは、ナノメートルサイズでみた場合、目が粗く、その目の隙間に結晶子径の小さな粉体1の粒子が入り込み易く、それにより混ざり易くなり、結果としてアルデヒド分解能に差が生じたのではないかと考えられる。
【0019】
タバコ臭の消臭試験1
シリコーンゴムに表1の粉体1からなる酸化チタン粉末を5重量%、10重量%、15重量%混入したシリコーンゴムマットを作成した。それぞれサンプル4、サンプル5、サンプル6とする。各サンプルの寸法は直径130mm×厚さ約2mm、約21gとした。図4に示すように、内寸が300mm×220mm×100mmの大きさの半透明のポリエステル製の蓋付きケースの中に、サンプルを置き、火のついたタバコを入れて密閉してタバコの臭いを充満させてから、蛍光灯(27W)の下に置き、各サンプルにつき、どれだけの時間の経過でタバコの臭いが消える(アセトアルデヒドガスが分解される)かの官能テストを行った。その結果を表3に示す。
【0020】
【表3】

【0021】
表3の結果から分かるように、各サンプルともに、時間の経過につれて臭いは弱くなっている。また、粉体1の混入割合が多くなるほど同じ時間経過後の消臭効果は大きくなっている。
完全に臭いを消し去るにはもう少し時間がかかるが、酸化チタン自体に即効性はないため、予測の範囲といえる。
【0022】
タバコ臭の消臭試験2
シリコーンゴムに表1の粉体1からなる酸化チタン粉末を1重量%、5重量%、10重量%、15重量%混入したシリコーンゴムマットを作成した。それぞれサンプル7、サンプル8、サンプル9、サンプル10とする。各サンプルの寸法は100mm×100mm×厚さ約1mm、約10gとした。
上記と同様、図4に示すように、内寸が300mm×220mm×100mmの大きさの半透明のポリエステル製の蓋付きケースの中に、サンプルを置き、タバコの煙を充満させてから、蛍光灯(27W)の下に置き、各サンプルにつき、どれだけの時間の経過でタバコの臭いが消える(アセトアルデヒドガスが分解される)かを臭いセンサーを用いて測定した。その結果を表4に示す。用いた臭いセンサーは、株式会社カルモア製、商品名「e−nose expert」で、数値は臭気指数(相対値)であり、数値が大きい方が臭いが強いことを示す。なお、蓋付きケース内にタバコの煙を入れていない状態での臭気指数は808であった。
【0023】
【表4】

【0024】
表4の結果から分かるように、各サンプルともに、時間の経過につれて臭いは弱くなっている。また、粉体1の混合割合が多くなるほど、同じ時間経過後の消臭効果は大きくなっている。これは、表3の官能テストの結果と略一致している。1重量%の混入では消臭効果は小さく、少なくとも5重量%以上の混入が必要といえる。より好ましくは、10〜15重量%であることが分かる。
【0025】
ペット臭の消臭試験1
図5に示すように、1DKのアパートの室内(8畳)にペット(猫1匹)を13年間飼い続けた女性宅の室内の最も紫外線が当たる出窓にサンプル11(シリコーンゴムに粉体1を10重量%混入したシリコーンゴムゴムマット、寸法500mm×20mm×3mm、300g)を置き、アンモニア臭及びアルデヒド臭(タバコ臭)の消臭効果確認の官能テストを行った。
サンプル11を置いて1〜2日経過後、ほとんど臭いが消えた。7日後には完全に臭いが消えた。このように、サンプル11はアルデヒド臭(タバコ臭)及びアンモニア臭にも高い消臭効果を示した。
【0026】
ペット臭の消臭試験2
図6に示すように、自宅室内(6畳)でペット(猫)を10匹飼っている(10匹中4匹は常時室内に、1匹は常時ケージ内に居る)女性宅の部屋でサンプル12(シリコーンゴムに粉体1を10重量%混入したシリコーンゴムマット)、サンプル13(シリコーンゴムに粉体2を10重量%混入したシリコーンゴムマット)を置いて消臭効果確認の官能テストを行った。各サンプルの寸法は500mm×100mm×3mm、150gであった。その結果を表5に示す。
【0027】
【表5】

【0028】
表5の結果から分かるように、各サンプルともに、時間の経過につれて臭いは弱くなっている。また、サンプル12はサンプル13に比べ、同じ時間経過後の消臭効果は大きいことが分かる。サンプル13の場合でも、日数の経過につれて消臭効果はあることが分かったが、サンプル12に比べ半分程度の効果であった。
【0029】
表2、図2、図3、表4の定量的な評価、表3、表5の官能テストの結果から分かるように、粉体2よりも粉体1の方が消臭効果が大きく好ましく、また、酸化チタンの混入量は5重量%より10重量%、15重量%と多いほうが好ましい。
【0030】
本発明によるシリコーンゴムマットは、室内や自動車内で用いる消臭性マットとして好適である。また、消臭性の他に、防汚性も有するので汚れ難く、汚れた場合でも水で容易に洗い流すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】アセトアルデヒド分解試験装置の概略説明図。
【図2】アセトアルデヒド濃度の経時変化を示すグラフ。
【図3】二酸化炭素濃度の経時変化を示すグラフ。
【図4】タバコ臭の消臭効果確認の官能テスト装置の概略説明図。
【図5】ペット臭の消臭効果確認の官能テストの概略説明図。
【図6】ペット臭の消臭効果確認の官能テストの概略説明図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーンゴムに光触媒能を有する酸化チタンを混入してなる消臭性シリコーンゴムマットであって、シリコーンゴムと酸化チタンとの合計量に対して酸化チタンを5〜20重量%混入してなることを特徴とする消臭性シリコーンゴムマット。
【請求項2】
酸化チタンは粉末状としその比表面積が100〜300m2 /gである請求項1記載の消臭性シリコーンゴムマット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−274015(P2009−274015A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−128080(P2008−128080)
【出願日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(508145883)株式会社ラスター (1)
【Fターム(参考)】