説明

消臭材料およびその成形品

【課題】 優れた成形加工性と、高い消臭効果を併せもつ消臭材料を提供すること、また、そのような消臭材料よりなる成形品を提供すること。
【解決手段】 エチレン・不飽和カルボン酸共重合体からなる消臭材料、そのような消臭材料からなる成形品が提供される。エチレン・不飽和カルボン酸共重合体の不飽和カルボン酸単位含有量が1〜35重量%である消臭材料は好ましい態様である。また、不飽和カルボン酸がアクリル酸又はメタクリル酸である消臭材料も好ましい態様である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消臭材料およびその成形品に関する。特に、消臭性と成形加工性が共に要求される消臭機能をもつ樹脂成形品分野に好適に用いられる消臭材料に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂に消臭性機能を付与するため、従来、樹脂にフラボノイド、尿素誘導体等の有機消臭剤乃至ゼオライト、リン酸カルシウム等の無機消臭剤を練り込んだ消臭材料が知られている。また、2価金属イオンの消臭・抗菌性を利用して、コットンにメタアクリル酸をグラフト重合させてカルボキシル基を導入し、更に2価銅イオンを置換担持させた消臭繊維粉体を消臭剤とし、これと熱可塑性樹脂との消臭樹脂組成物(特許文献1)や、ポリオレフィンとα−β不飽和カルボン酸をグラフト重合して成る共重合体を、2価金属イオンで架橋したアイオノマーワックスを消臭剤とし、これと熱可塑性樹脂との消臭樹脂組成物(特許文献2)も知られている。
【0003】
しかしながら、これら、従来の消臭剤を樹脂に溶融混練した場合、有機系消臭剤の場合は混練、或いは成形加工時における変色、消臭性能の低下や成形品の外観不良、金属イオン系消臭剤の場合は消臭性能不足や成形性不良、また、無機系消臭剤の場合は分散性不良や成形性および、成形品の外観不良などいずれも問題点があり、高い消臭効果と優れた成形加工性を併せ持つ消臭材料が望まれていた。
【0004】
【特許文献1】特開2003−63913号公報
【特許文献2】特開2005−246053号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、優れた成形加工性と、高い消臭効果を併せもつ消臭材料を提供することを目的とする。また、本発明は、そのような消臭材料よりなる成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、成形加工性に優れたポリオレフィン系樹脂に高い消臭効果を付与するべく鋭意検討した結果、特定のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体が優れた成形加工性と、それ自体高い消臭機能を併せ持つことを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明によると、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体からなる消臭材料が提供される。
【0007】
また、本発明によると、前記消臭材料1〜60重量%と他の熱可塑性樹脂99〜40重量%とからなる組成物である消臭材料が提供される。
更に、本発明によると、上記消臭材料からなる成形品が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の消臭材料は、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体からなり、有機系消臭剤、無機系消臭剤等の消臭剤を配合せずとも、また、2価金属イオンを有しなくとも、消臭剤の分散不良、消臭材料の変色、消臭性能の低下或いは消臭性能不足、成形性不良や成形品の外観不良などの問題もなく、優れた成形加工性と高い消臭効果を併せもつ。
更に、本発明の消臭材料は、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体からなる消臭材料に、他の熱可塑性樹脂を混合した組成物としても優れた消臭材料として機能するので、各種の成形品として利用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明によるエチレン・不飽和カルボン酸共重合体からなる消臭材料において、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体としては、エチレンと不飽和カルボン酸の共重合体のみならず、エチレンと不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸エステルが共重合された3元共重合体であってもよい。
このような本発明の消臭材料であるエチレン・不飽和カルボン酸共重合体は、公知の例えば高温高圧下のラジカル重合法により得られる、エチレンと不飽和カルボン酸のランダム共重合体である。
【0010】
該共重合体における不飽和カルボン酸としては、具体的にはアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチルなどを挙げることができるが、特にアクリル酸またはメタクリル酸が好ましい。
また、該共重合体における不飽和カルボン酸エステルとしては、好ましくは不飽和カルボン酸の炭素原子数1〜8のアルキルエステルであり、より好ましくはアクリル酸またはメタクリル酸の炭素原子数1〜8のアルキルエステルである。具体的にはアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチルなどを挙げることができる。
【0011】
本発明において、優れた消臭性能と加工性を得るためには、上記エチレン・不飽和カルボン酸共重合体の不飽和カルボン酸含有量は、1〜35重量%、好ましくは10〜20重量%である。
【0012】
また、不飽和カルボン酸と共に不飽和カルボン酸エステルを用いる場合、不飽和カルボン酸エステルの含有量としては、不飽和カルボン酸と共に用いる場合は0.3〜25重量%、好ましくは0.5〜15重量%、さらに好ましくは1〜10重量%である。
【0013】
本発明におけるエチレン・不飽和カルボン酸共重合体の、JIS K7210−1999に準拠した、荷重2160g、温度190℃で測定されるメルトフローレート(MFR)は、成形加工性、機械的強度、或いは、該共重合体よりなる消臭材料を消臭剤として他の熱可塑性樹脂と混合して用いる場合の混和性などを考慮すると、好ましくは1〜1000g/10分、好ましくは5〜500g/10分、さらに好ましくは10〜100g/10分である。
【0014】
このような本発明におけるエチレン・不飽和カルボン酸共重合体として具体的には、例えば、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・マレイン酸共重合体、エチレン・フマル酸共重合体、エチレン・イタコン酸共重合体、エチレン・無水マレイン酸共重合体、エチレン・無水イタコン酸共重合体、エチレン・メタクリル酸・アクリル酸イソブチル共重合体、エチレン・メタクリル酸・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体などが挙げられる。
【0015】
これらのうち、好ましくは、エチレンとアクリル酸またはメタクリル酸との共重合体、または、これらと不飽和カルボン酸エステルの3元共重合体であり、具体的には、例えば、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸・アクリル酸イソブチル共重合体、エチレン・メタクリル酸・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体であり、より好ましくはエチレンとアクリル酸または、メタクリル酸との共重合体、具体的には、例えば、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体が挙げられる。
【0016】
本発明によれば、このようなエチレン・不飽和カルボン酸共重合体を消臭材料として用いると、高い消臭効果と良好な成形加工性を併せ持つ消臭材料を得ることができる。
また、本発明の消臭材料は、それ自体消臭剤として他の熱可塑性樹脂と混合して消臭材料として用いることもできる。他の熱可塑性樹脂を混合して用いる場合、その割合は、消臭性能および成形加工性の観点から、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体よりなる消臭材料1〜60重量%に対し他の熱可塑性樹脂99〜40重量%、好ましくはエチレン・不飽和カルボン酸共重合体よりなる消臭材料5〜50重量%に対し他の熱可塑性樹脂95〜50重量%のような混合割合で用いることができる。
【0017】
本発明の消臭材料と混合して用いられるエチレン・不飽和カルボン酸共重合体以外の他の熱可塑性樹脂としては、特に制限はないが、例えばポリオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリメチルメタクリレート、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリオレフィンエラストマーなどの1種または2種以上の組み合わせを例示することができる。
【0018】
これらの中でもポリオレフィン系樹脂が好ましく、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテンなどのα−オレフィン、ノルボルネン、シクロペンタジエン等の環状オレフィンの単独重合体、相互共重合体、或いはエチレンと酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステルの共重合体などであり、各種触媒を使用し、種々の方法で製造されたものが使用できる。具体的には、高圧法低密度ポリエチレン、線状中・低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、或いはエチレン・酢酸ビニル共重合体が混和性、成形加工性、消臭性の観点から好ましいものとして例示することができる。
【0019】
このような他の熱可塑性樹脂と、本発明のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体よりなる消臭材料とを混合して消臭材料を得るには、本発明の目的を損なわない限り、混合方法に特に制限はなく、公知の各種混合方法を用いることができる。例えば、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体よりなる消臭材料と他の熱可塑性樹脂とをバンバリーミキサー等のバッチ式混練機や単軸および2軸押出機、タンデム型混練機、コニーダー等の連続式混練機を用いて溶融混練することで、本発明のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体よりなる消臭材料と他の熱可塑性樹脂との組成物である消臭材料を得ることができる。
【0020】
また、本発明のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体よりなる消臭材料、またはこれと他の熱可塑性樹脂との組成物である消臭材料には、その目的および効果を損なわない範囲において、任意の他の添加剤を配合することができる。そのような他の添加剤としては、公知の各種添加剤を使用することができる。他の添加剤の例としては、有機系・無機系の消臭剤、ヒンダードフェノール系・リン系・硫黄系などの酸化防止剤、ヒンダードアミン系などの耐候安定剤、ベンゾフェノン系・ベンゾエート系・ベンゾトリアゾール系・トリアジン系などの紫外線吸収剤、帯電防止剤、スリップ剤、ブロッキング防止剤、無機充填剤、難燃剤、発泡剤、発泡助剤、架橋剤、架橋助剤、顔料などの着色剤などを挙げることができる。
【0021】
本発明の消臭材料は、高い消臭効果と優れた成形加工性を併せ持つので、これを用いて種々の成形品を得ることができる。
【0022】
本発明の消臭材料の成形加工方法としては、熱可塑性樹脂において用いられている公知の成形加工方法、例えば押出成形加工、射出成形加工、中空成形加工、プレス成形加工、真空成形加工などを適宜に用いることができる。また、このような成形加工方法により本発明の消臭材料をビーズ状物、フィルム類、シート類、容器類や管、チューブ、フィラメント類など任意の成形品に成形することができる。
【0023】
また、従来公知の押出ラミネーター、多層ブロー成形機などの多層成形機を用いることによって、本発明の消臭材料からなる層を少なくとも1層を含む多層成形品を製造することもできる。
【0024】
このような本発明の消臭材料を用いた成形品としては、好ましくはフィルム、シートまたは容器であり、より好ましくはフィルム、シートである。
【実施例】
【0025】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。本発明はこれらの例によって何ら制限されるものではない。
【0026】
実施例および比較例で用いた試料を以下に示す。
試料
(1)樹脂(A):エチレン・メタクリル酸共重合体(メタクリル酸含量:10重量%、MFR:35g/10分)
(2)樹脂(B):エチレン・メタクリル酸共重合体(メタクリル酸含量:15重量%、MFR:60g/10分)
(3)樹脂(C):エチレン・メタクリル酸共重合体(メタクリル酸含量:20重量%、MFR:60g/10分)
(4)樹脂(D):エチレン・アクリル酸共重合体(アクリル酸含量:15重量%、MFR:60g/10分)
(5)樹脂(E): 高圧法低密度ポリエチレン(密度:923kg/m3、MFR:3.7g/10分、(株)プライムポリマー製)
上記樹脂のMFRは、JIS K7210:1999に従い190℃、2160g荷重の条件で測定した。
【0027】
(実施例1)
ペレット形状の樹脂(A)を機械粉砕し、得られた樹脂粉体3gを3L容量の臭い袋(フレックサンプラー:近江オドエアーサービス(株)製)に入れ、アンモニアガス50ppmを充満させた。アンモニアガス注入直後と、23℃、50%RHの暗所にて3時間静置後の、アンモニアガス濃度(ppm)をガス検知管(アンモニア検知管 No.3La(株)ガステック製)により測定し、消臭性能を評価した。結果を表1に示す。
【0028】
(実施例2)
樹脂(A)に代えて樹脂(B)を用いた以外は、実施例1と同様にして、消臭性能を評価した。結果を表1に示す。
【0029】
(実施例3)
樹脂(A)に代えて樹脂(C)を用いた以外は、実施例1と同様にして、消臭性能を評価した。結果を表1に示す。
【0030】
(実施例4)
樹脂(A)に代えて樹脂(D)を用いた以外は、実施例1と同様にして、消臭性能を評価した。結果を表1に示す。
【0031】
(比較例1)
樹脂(A)に代えて樹脂(E)を用いた以外は、実施例1と同様にして、消臭性能を評価した。結果を表1に示す。
【0032】
(比較例2)
用いた臭い袋自体の消臭性能を評価(ブランクテスト)するため、試料を入れずに実施例1と同様にして消臭性能を評価した。結果を表1に示す。
いずれの実施例も、比較例に比べて、試験後のアンモニア残留率が低く、消臭効果が認められた。
【0033】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明により提供される消臭材料は、優れた成形加工性と高い消臭機能を持つ。本発明の消臭材料に公知の熱可塑性樹脂成形方法を適用することにより、ビーズ状物、フィルム類、シート類、容器類や管、チューブ、フィラメント類など任意の消臭機能を持つ成形品が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン・不飽和カルボン酸共重合体からなる消臭材料。
【請求項2】
エチレン・不飽和カルボン酸共重合体の不飽和カルボン酸単位含有量が1〜35重量%である請求項1に記載の消臭材料。
【請求項3】
エチレン・不飽和カルボン酸共重合体の不飽和カルボン酸がアクリル酸又はメタクリル酸である請求項1または2に記載の消臭材料。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の消臭材料1〜60重量%と他の熱可塑性樹脂99〜40重量%とからなる組成物である消臭材料。
【請求項5】
他の熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂である請求項4に記載の消臭材料。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の消臭材料からなる成形品。

【公開番号】特開2009−209333(P2009−209333A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−56804(P2008−56804)
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(000174862)三井・デュポンポリケミカル株式会社 (174)
【Fターム(参考)】