説明

消費電力予測装置、及び、工事用機器の制御装置

【課題】受電設備が設置される工事現場において、当該受電設備で消費される電力を早期から予測する。
【解決手段】
工事現場に設置された高圧受電設備毎に、第1時点から第2時点までの予測対象期間における消費電力を、第1時点が経過した後から継続的に予測する消費電力予測装置(入力ユニット11,制御盤17)であって、所定の単位電力が消費される毎に高圧受電設備側から送信される単位消費電力情報を受信する単位消費電力情報受信部(入力ユニット11)と、受信した単位消費電力情報に基づいて、予測対象期間の消費電力を予測する消費電力予測部(制御部34)とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工事現場での消費電力を予測する消費電力予測装置、及び、工事現場で使用される工事用機器の動作を制御する制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高圧受電設備(キュービクル)が設置される工事現場では、この高圧受電設備を介して各種の工事機器(シールドマシン、ボーリングマシン、電動オーガ、地盤改良装置、土壌浄化設備等)へ電力が供給される。高圧受電設備を使用するに際しては、電力会社と契約をする必要があり、契約電力の範囲内で電力を使用することができる。
【0003】
前述の工事機器は、供給された電力を消費することで動作する電気機器を備えている。例えば、シールドマシンは、シールドジャッキへ油を供給する電動機、油圧モータ、流量制御弁を備えた油供給源やカッターを回転駆動するカッターモータを備えている。また、土壌浄化設備は、液体を加熱するためのヒータを備えている。
【0004】
これらの油供給源、カッターモータ、ヒータといった電気機器は消費電力が大きいため、無制限に使用してしまうと消費電力が長時間に亘って契約電力を越えてしまう。これにより、配電線に過度な電流が流れてしまうなど、電力設備に負担を掛けてしまう虞がある。また、契約電力を越えてしまうと、より大きな電力に契約が自動的に更新され、基本料金が増額されてしまう。
【0005】
そこで、契約電力を越えないように、契約電力を越える直前に警報を発生させ、電気機器への電力の供給を一時的に停止させることが考えられる。しかし、電力の供給が急に停止されてしまうと、電動機やモータを動力とする工事機器も動作が停止され、不具合が生じる虞がある。例えば、シールドマシンで油供給源が停止されると推進力がなくなってしまうので、崩壊性の地山の場合には切羽からの土圧を受けることができずにバランスが崩れてしまう虞がある。
【0006】
また、電動機やモータを急に停止させると、その電動機等に対して大きな機械的ストレスが掛かってしまう。この点でも、契約電力を越える直前に電気機器への電力の供給を急に停止させることは好ましくない。
【0007】
特許文献1には、作業の効率化や省力化を目的として、シールドマシンの掘進速度に影響を及ぼす要因の状態値を検出器で検出し、検出器の検出結果が上限値を越える場合に、掘進用の油圧駆動源に対して減速の制御を行う装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−88479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1の装置では、検出器の検出結果が上限値を越えたか否かで制御を行っているため、電力の供給が急に遮断されてしまう虞がある。そうすると、切羽からの土圧とのバランスが崩れてしまう虞がある。また、電動機等の電気機器に過度な機械的ストレスを掛けてしまう虞もある。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、受電設備の消費電力を早期から予測することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するため、本発明は、工事現場に設置された受電設備毎に、第1時点から第2時点までの予測対象期間における消費電力を、前記第1時点が経過した後から継続的に予測する消費電力予測装置であって、所定の単位電力が消費される毎に前記受電設備側から送信される単位消費電力情報を受信する単位消費電力情報受信部と、受信した前記単位消費電力情報に基づいて、前記予測対象期間の消費電力を予測する消費電力予測部とを有することを特徴とする。
【0012】
本発明の消費電力予測装置によれば、受電設備側から送信される単位消費電力情報を第1時点の経過後から受信し、受信した単位消費電力情報に基づいて第2時点経過時の消費電力を事前に予測する。このため、受電設備から電力の供給を受けている工事機器に対し、消費電力を抑制するための制御を第2時点の経過前から開始することができる。
【0013】
前述の消費電力予測装置において、前記単位消費電力情報はパルス信号であり、前記消費電力予測部は、前記第1時点が経過した後から予測時点までに受信した前記パルス信号の数から、前記第2時点の経過時点における前記パルス信号の数を予測し、前記予測対象期間の消費電力を求めることが好ましい。この構成によれば、パルス信号のカウントという簡易な方法で予測対象期間の消費電力を予測することができる。
【0014】
前述の消費電力予測装置において、電力の供給を受けて動作する電気機器を備えた工事用機器の制御盤に設けられ、前記消費電力予測部で予測された前記予測対象期間の消費電力を表示する消費電力表示部を有することが好ましい。この構成によれば、消費電力表示部が工事用機器の制御盤に設けられるので、工事用機器を制御盤で制御する操作者に対して、消費電力の予測値を容易に認識させることができる。
【0015】
また、本発明は、工事現場に設置された受電設備から電力の供給を受ける工事用機器の動作を制御する制御装置であって、所定の単位電力が消費される毎に前記受電設備側から送信される単位消費電力情報を受信する単位消費電力情報受信部と、受信した前記単位消費電力情報に基づいて、第1時点から第2時点までの予測対象期間の消費電力を予測する消費電力予測部と、前記消費電力予測部で予測された前記予測対象期間の消費電力が予め定められた判断基準値を越えた場合に、前記工事用機器の消費電力が制御前よりも低くなるように前記工事用機器の動作を制御する機器制御部とを有することを特徴とする。
【0016】
本発明の工事用機器の制御装置によれば、受電設備側から送信される単位消費電力情報を第1時点の経過後から受信し、受信した単位消費電力情報に基づいて第2時点経過時の消費電力を事前に予測する。このため、受電設備から電力の供給を受けている工事機器に対し、消費電力を抑制するための制御を第2時点の経過前から自動的に開始することができる。その結果、工事機器に対する制御を緩やかに行うことができる。
【0017】
前述の制御装置において、前記工事用機器の動作を、操作者の手動操作に応じて制御する手動制御部を備え、前記機器制御部は、前記消費電力予測部で予測された前記予測対象期間の消費電力が、前記判断基準値を越えた場合に前記手動制御部による手動操作を無効とし、前記判断基準値を越えない場合に前記手動制御部による手動操作を有効とすることが好ましい。この構成によれば、消費電力の抑制期間中は、手動制御部による手動操作が無効になるため、消費電力を確実に抑制することができる。
【0018】
前述の制御装置において、前記工事用機器は、推進用の油を供給するための油供給源を備えたシールドマシンであり、前記機器制御部は、前記消費電力予測部で予測された前記予測対象期間の消費電力が前記判断基準値を越えた場合に、前記油供給源の消費電力が制御前よりも低くなるように前記油供給源の出力を抑制することが好ましい。この構成によれば、シールド工事において、油供給源への制御を緩やかに行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、受電設備が設置される工事現場において、当該受電設備の消費電力を早期から予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】シールドマシンの構成を説明するブロック図である。
【図2】シールドマシンの内部構造を説明するための断面図である。
【図3】制御盤が有する表示部及び入力部の例を説明する図である。
【図4】予測開始時点(第1時点)、予測終了時点(第2時点)、予測対象期間を説明する概念図である。
【図5】受電設備側のパルス検出器から送信されるパルスを説明する図である。
【図6】抑制モードにおける動作例を説明する概念図である。
【図7】段階制御期間における油供給源の制御を説明する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について説明する。図1に例示したシールドマシン1は、高圧受電設備2から電力の供給を受けて地盤内を掘進する工事用機器に相当する。
【0022】
まず、高圧受電設備2について説明する。図1に示す高圧受電設備2は、単位閉鎖型のものでありキュービクルとも呼ばれる。本実施形態の高圧受電設備2は、工事現場に設置されており、送電線3を通じて受電した高圧(6.6kV)の電気を動力用低圧(200V)や電灯用低圧(100V)に変圧し、変圧後の電気を配電線4を通じて工事現場の各電力機器に供給する。このため、高圧受電設備2は、配電盤、受電設備、変電設備等を備えており、これらの各部が金属製の箱内に収納されている。
【0023】
高圧受電設備2は、複合計器5を備えている。この複合計器5は、電力量を計測するものであり、例えば普通電力量計、無効電力量計、及び、最大需要電力計が一体化されている。この複合計器5にはパルス回路5aが設けられており、高圧受電設備2から所定の単位電力が供給される毎に、言い換えれば接続された負荷が所定の単位電力を消費する毎に、パルス信号が出力される。例えば1kWあたり2000個又は50000個のパルス信号が出力される。このパルス信号は、高圧受電設備2に設けられたパルス検出器6によって検出される。
【0024】
パルス検出器6は、複合計器5からのパルス信号に基づいて生成した単位パルス信号を、信号線7を通じてシールドマシン1へ送信する。単位パルス信号は、複合計器5のパルス信号と同期して出力される。すなわち、複合計器5からパルス信号が出力される毎に、パルス検出器6からも単位パルス信号が送信される。このため、単位パルス信号もまた、高圧受電設備2で単位電力が消費される毎に送信される信号であり、単位消費電力情報に相当する。
【0025】
シールドマシン1は、入力ユニット11と、カッターモータ12と、油供給源13と、エレクタ装置14と、スクリューコンベア15と、ベルトコンベア16と、制御盤17とを有している。これらの各部のうち、入力ユニット11と制御盤17の組は、消費電力予測装置に相当すると共に、工事用機器の制御装置に相当する。
【0026】
入力ユニット11は、パルス検出器6から送信された単位パルス信号を受信する部分であり、単位消費電力情報受信部に相当する。パルス検出器6と入力ユニット11とは、信号線7を通じて電気的に接続されている。そして、入力ユニット11で受信された単位パルス信号は制御盤17に入力され、制御に利用される(後述)。従って、入力ユニット11と制御盤17との間も電気的に接続されている。
【0027】
カッターモータ12は、図2に示すように、カッター21を回転させるための駆動源となる部分である。このカッター21は、シールドマシン1における掘削方向の前端部分に回転可能な状態で取り付けられており、回転によって切羽を切削する。
【0028】
油供給源13は、図2に示すシールドジャッキ22に対する油の供給を制御する装置である。シールドジャッキ22は、円筒状鋼殻部23の内周面に沿って多数設けられている。そして、油供給源13によって油が供給されると、各シールドジャッキ22は伸長する。ここで、シールドジャッキ22の後端は、既設のセグメント(図示せず)の前端面に当接されている。このため、各シールドジャッキ22を伸長させることで、既設のセグメントから反力を得てシールドマシン1は前進する。
【0029】
そして、各シールドジャッキ22へ供給される油の流量を増減することで、シールドマシン1の前進速度は増減することができる。また、掘削時において、カッター21は切羽に当接された状態になっているので、各シールドジャッキ22へ供給される油の流量を増減することで、カッタートルク、すなわちカッター21の回転に要する電力を増減することができる。
【0030】
エレクタ装置14は、セグメントをリング状に組み立てるための装置であり、図2に示すようにセグメントを把持する把持部24と、先端に把持部24が設けられたアーム部25とを有している。そして、アーム部25を回転させることにより、把持部24に把持されたセグメントを、周方向における任意の位置に移動させる。このため、エレクタ装置14は、アーム部25を回転駆動させるアーム駆動モータ(図示せず)を有している。
【0031】
スクリューコンベア15及びベルトコンベア16はいずれも、土砂を排出するための排土機構として機能する。図2に示すように、スクリューコンベア15は、カッター21の背面に区画されたカッターチャンバー26の土砂を、後方に排出する装置である。ベルトコンベア16は、スクリューコンベア15の後端から排出された土砂を、後方に搬送する装置である。そして、各コンベア15,16の動力はモータから得ている。すなわち、スクリューコンベア15はスクリューモータを有し、ベルトコンベア16は搬送モータを有している(何れも図示せず)。
【0032】
次に、制御盤17について説明する。制御盤17は、シールドマシン1の制御を行う装置であり、図1に示すように、表示部31、操作部32、計時部33、及び、制御部34を有している。
【0033】
表示部31は、シールドマシン1の運転に必要な各種の情報を表示する部分であり、本実施形態ではタッチパネル式の液晶表示装置によって構成されている。例えば、図3に示すように、表示部31には、グラフ表示領域31a、上限値表示領域31b、契約電力表示領域31c、積算値表示領域31d、予測値表示領域31e、及び、操作ボタン表示領域31fが設けられている。
【0034】
グラフ表示領域31aは、規定時間前(例えば120秒前)の予測値から最新の予測値までのトレンドをグラフ表示する部分である。上限値表示領域31bは、消費電力の抑制を自動的に行う抑制モードにおいて、制御上の上限値を表示する領域である。契約電力表示領域31cは、契約電力の値を表示する領域である。積算値表示領域31dは、単位パルス信号の積算によって求められた消費電力の積算値を表示する領域である。予測値表示領域31eは、制御部34が予測した予測消費電力を表示する領域である。操作ボタン表示領域31fは、操作ボタンの画像が表示される領域である。
【0035】
そして、各表示領域31a〜31eに表示される情報は制御部34から送られてくる。例えば、グラフ表示領域31aや予測値表示領域31eに表示される予測値は、制御部34による予測処理で求められるものである。上限値表示領域31bに表示される上限値や契約電力表示領域31cに表示される契約電力値は、制御部34が有する記憶装置(図示せず)に記憶されたものである。積算値表示領域31dに表示される消費電力の積算値は、制御部34が単位パルス信号をカウントすることによって得られるものである。
【0036】
操作部32は、シールドマシン1の運転に必要な各種の操作を行う部分であり、シールドマシン1の動作を操作者の手動操作に応じて制御する手動操作部32に相当する。この操作部32には、スイッチ、レバー、タッチパネルといった各種の入力装置が用いられる。図3で説明した液晶表示装置もまた、タッチパネル式であるため操作部32としても機能する。すなわち、操作ボタン表示領域31fが操作部32として機能する。
【0037】
計時部33は、現在時刻を示す時刻情報を出力する部分である。後述するように、本実施形態では、1時00分、2時00分といった正時と、1時30分、2時30分といった正時から30分経過した時刻のそれぞれで、シールドマシン1による消費電力が上限値(判断基準値)を越えないように機器の動作を制御している。このため、計時部33からの時刻情報によって、制御部34に正確な時刻の情報を認識させている。
【0038】
制御部34は、シールドマシン1における制御の中心となる部分であり、プログラムやデータを記憶する記憶装置と、プログラムやデータに則って各部の制御を行うCPUとを有している(何れも図示せず)。後述するように、この制御部34は、計時部33と共に、予測対象期間の消費電力を予測する消費電力予測部として機能する。また、消費電力の予測値に基づいてシールドマシン1(工事用機器)の動作を制御する機器制御部としても機能する。
【0039】
以下、制御盤17による制御、すなわちシールドマシン1における動作について説明する。なお、図4に示すように、本実施形態のシールドマシン1では、毎時00分(正時)と毎時30分とを規定時刻とし、この規定時刻における消費電力量が予め設定された上限値以下となるように各部の動作を制御している。すなわち、毎時00分と毎時30分の一方(第1時点)が経過した後、毎時00分と毎時30分の他方(第2時点)が到来するまでの30分間(予測対象期間)における消費電力を、第1時点が経過した後から継続的に予測する。
【0040】
図4の例において、第1時点を時刻ta、第2時点を時刻tbとすると、予測対象期間は期間T1となる。この場合、時刻taを経過した時点で、時刻tbにおける消費電力(高圧受電設備2が供給する電力)の予測が開始される。この予測は、時刻tbを経過する直前まで行われる。時刻tbを経過すると、第1時点が時刻tbに、第2時点が時刻tcに、予測対象期間が期間T2にそれぞれ切り替わる。従って、時刻tcにおける消費電力が予測される。以後は、同様にして予測対象となる時刻等が切り換えられる。例えば、時刻teを経過すると、第1時点が時刻teに、第2時点が時刻tfに、予測対象期間が期間T5にそれぞれ切り替わり、時刻tfにおける消費電力が予測される。
【0041】
従って、制御盤17の制御部34は、計時部33からの時刻情報に基づいて時刻をリアルタイムで認識し、毎時00分と毎時30分が経過する毎に、第1時点、第2時点、及び、予測対象期間を更新する。
【0042】
次に、各第2時点における消費電力の予測処理について説明する。前述したように、高圧受電設備2に設けられたパルス検出器6(図1を参照)からは、高圧受電設備2から単位電力が供給される毎に単位パルス信号(単位消費電力情報)が送信される。仮に、1kWの電力に対して2000個のパルス信号が出力される場合には、1つの単位パルス信号が0.5Wの電力に相当する。便宜上、以下の説明において、高圧受電設備2は、0.5Wの電力を供給する毎にパルス信号を出力し、パルス検出器6は、パルス信号を検出する毎に単位パルス信号を送信するものとして説明する。
【0043】
図5は、時刻ta(第1時点)から期間T11が経過した時刻ta´(現時点)における時刻tb(第2時点)での消費電力の予測(予測対象期間T1での消費電力の予測)を説明する概念図である。この図において、パルス検出器6からはN個の単位パルス信号が送信されている。この場合、期間T11における高圧受電設備2からの供給電力(=消費電力)は、0.5W×Nとなる。そうすると、時刻tbにおける消費電力の予測値Xは、0.5W×N×(T1/T11)となる。仮に、期間T11を15分とし、パルス数Nを200万個とすると、予測値Xは、0.5〔W/個〕×2000000〔個〕×(30〔分〕/15〔分〕)となる。すなわち、予測値Xとして2000kWが得られる。
【0044】
制御部34は、この計算を例えば1秒毎に繰り返し行う。このため、予測値Xは1秒毎に更新されることになる。この予測値Xは、時間の経過と共に変化をする。このように変化する予測値Xを、制御盤17に設けた表示部31の予測値表示領域31e(消費電力表示部)で表示することにより、シールドマシン1の操作者に、期間T1での予測消費電力を容易に認識させることができる。そして、操作者は、予測消費電力に応じてシールドマシン1の掘進速度を調整することにより、シールドマシン1で消費される電力を緩やかに調整することができる。
【0045】
例えば、操作者は、予測消費電力が高いと判断した場合、シールドジャッキ22に供給する油の量を抑え、掘進速度を遅くする。これにより、カッター21が切羽へ当接する押圧力を抑えることができ、油供給源13で消費される電力を抑制することができる。また、カッタートルクも抑えることができるので、カッターモータ12で消費される電力も抑制することができる。
【0046】
掘進速度を上昇させるためにシールドジャッキ22に供給する油の量を増やす場合、操作者は、表示部31の予測値表示領域31eに表示される消費電力の予測値Xと、契約電力表示領域31cに表示される契約電力とを確認しつつ操作を行う。例えば、予測値Xと契約電力とを比較しつつ、油供給源13の回転数を上昇させる。これにより、予測値Xが契約電力を越えない範囲で、掘進速度を上昇させることができる。
【0047】
以上、操作者のマニュアル操作による消費電力の抑制制御について説明したが、本実施形態のシールドマシン1では、操作部32で抑制モードを選択することにより、消費電力の抑制を自動的に行うことができる。以下、抑制モードでの動作について説明する。
【0048】
図6は、抑制モードにおける動作例を説明する概念図である。この図6において、横軸は時刻taから時刻tb間までの経過時間(すなわち予測対象期間T1)であり、縦軸は電力である。
【0049】
縦軸において、3本の仮想線が横軸方向に沿って描かれている。最も上の仮想線は契約電力を示し、上から2番目の仮想線は上側基準値を示し、最も下の仮想線は下側基準値を示す。本実施形態において、契約電力は3000kW、上側基準値は2800kW、下側基準値は2600kWである。
【0050】
上側基準値とは、シールドマシン1が有する電気機器への消費電力の抑制制御を開始するか否かを判断するための判断基準値である。すなわち、消費電力の予測値Xが上側基準値を越えた場合に、消費電力の抑制制御が開始される。従って、この上側基準値は、表示部31の上限値表示領域31bに表示される上限値と同じものである。また、下側基準値とは、消費電力の抑制制御を終了するか否かを判断するための判断基準値である。すなわち、消費電力の予測値Xが下側基準値以下になった場合に、消費電力の抑制制御が終了される。
【0051】
なお、この例では、判断基準値を、開始判断用の上側基準値と終了判断用の下側基準値とに分けて設定したが、開始と終了とで共通の判断基準値を用いてもよい。また、上記の数値はあくまで一例であり、任意に定めることができる。
【0052】
図6の例において、時刻ta(第1時点)が到来したことを計時部33からの時刻情報に基づいて認識すると、制御部34は、時刻tb(第2時点)における消費電力の予測値Xを算出する。予測値Xの算出処理は、マニュアル操作による消費電力の抑制制御で説明した通りであるため、ここでは説明を省略する。この算出処理は、繰り返し周期(例えば1秒)毎に繰り返し行われ、その都度予測値Xが更新される。図6には、それぞれの経過時間における予測値Xが記載されている。
【0053】
制御部34は、予測値Xを算出する毎に、上側基準値との比較を行う。そして、予測値Xが上側基準値を越えたと判断すると、強制的な消費電力の抑制制御を開始する。図6の例では、時刻txにおいて予測値Xが上側基準値を越えている。このため、時刻tx以降において段階制御期間Txとなり、制御部34は機器制御部として機能する。この場合、制御部34は、シールドマシン1における消費電力が制御前よりも低くなるようにシールドマシン1の動作を制御する。例えば、油供給源13によるシールドジャッキ22への油供給量を減らす制御を行う。この制御が開始されると、操作部32からの油供給源13に対する制御は無効化される。
【0054】
すなわち制御部34は、油供給源13の出力を抑制制御間隔が経過する毎に、規定量だけ低くする制御を行う。本実施形態では、図7に示すように、抑制制御間隔を10秒とするとともに規定量を油供給源13の最大出力の5%とし、段階的に油供給源13の出力を低下させている。具体的には、時刻txまでの油供給源13の出力が、最大出力の60%であったとすると、第1段階としてその出力を55%に設定する。
【0055】
油供給源13の出力変更後も、制御部34は、繰り返し周期(1秒)毎に予測値Xと上側基準値とを比較する。そして、予測値Xが下側基準値以下になるまで油供給源13の出力を段階的に低下させる。図7の例では、時刻txから10秒経過後に出力が50%に設定され、20秒経過後に出力が45%に設定され、30秒経過後に出力が40%に設定されている。なお、油供給源13の出力には下限値が定められており、完全には停止されない。これは、完全に停止させてしまうと、切羽からの土圧に耐えられなくなる虞があるからである。本実施形態では、油供給源13の出力下限値を5%に設定している。
【0056】
予測値Xが下側基準値以下になると、制御部34は、消費電力の抑制制御を終了する。図6の例では、時刻tyにおいて予測値Xが下側基準値まで低下している。これにより、段階制御期間Txが終了する。時刻ty以降において、油供給源13の強制的な出力低下は行われず、操作部32からの油供給源13に対する制御が有効になる。従って、操作者は、操作部32を通じて、油供給源13に出力上昇を指示することが可能になる。
【0057】
なお、図6の例では、時刻ty以降においても予測値Xが下がり続けている。これは、操作者が油供給源13に対する出力上昇の指示を行わなかったためである。そして、時刻tbにおいて消費電力は、契約電力よりも十分に低い値に抑えられている。その後は、同様にして、時刻tbを第1時点とし、時刻tc(図4を参照)を第2時点とする予測対象期間T3の制御が行われる。また、この例では一時的に予測値Xが契約電力を上回っているが、あくまで予測値Xであるので、実際の使用電力は契約電力を越えることはない。
【0058】
以上説明したように、本実施形態によれば、高圧受電設備2側から送信される単位パルス信号を(単位消費電力情報)を入力ユニット11で受信し、受信した単位パルス信号に基づいて、予測対象期間T1〜T5の消費電力を制御部34(消費電力予測部)で予測している。このため、シールドマシン1(工事機器)に対し、消費電力を抑制するための制御を、十分に余裕を持った状態で開始することができる。その結果、シールドマシン1が有する油供給源13に対する制御を緩やかに行うことでき、シールドマシン1に対する負担を軽減することができる。
【0059】
また、制御部34(消費電力予測部)は、受信したパルス信号の数に基づいて消費電力を予測しているので、パルス信号のカウントという簡易な方法で、予測対象期間T1〜T5の消費電力を予測することができる。
【0060】
また、表示部31(消費電力表示部)が、予測対象期間T1〜T5における消費電力の予測値を表示しているので、シールドマシン1の操作者に対して消費電力の予測値を容易に認識させることができる。
【0061】
また、本実施形態において、制御部34(機器制御部)は、予測対象期間T1〜T5における消費電力の予測値が上側基準値を越えた場合に、シールドマシン1における消費電力が制御前よりも低くなるように油供給源13の動作を制御しているので、消費電力を抑制するための油供給源13に対する制御を、自動的に開始することができる。
【0062】
また、制御部34(機器制御部)は、段階制御期間Txの間において、操作部32(手動制御部34)による手動操作を無効とし、段階制御期間Txが経過した後に操作部32による手動操作を有効としている。このように構成することで、消費電力を確実に抑制することができる。
【0063】
また、制御部34(機器制御部)は、予測対象期間T1〜T5における消費電力の予測値が上側基準値を越えた場合に、油供給源13の出力を抑制しているので、油供給源13への制御を緩やかに行うことができる。
【0064】
以上の実施形態の説明は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれる。例えば、次のように構成してもよい。
【0065】
予測制御を開始する第1時点と消費電力が予測される第2時点とに関し、本実施形態では毎時00分と30分に設定したが、第1時点及び第2時点については、任意に定めることができる。同様に、予測対象期間T1〜T5についても、任意の長さに定めることができる。
【0066】
また、高圧受電設備2からの供給電力(負荷の消費電力)を示す単位消費電力情報に関し、上記の実施形態ではパルス検出器6からの単位パルス信号を用いたが、負荷の消費電力を示すものであれば、他の信号や情報を用いてもよい。例えば、負荷の消費電力を数値の情報で受信できる場合には、この数値を用いてもよい。また、複合計器5のパルス回路5aから出力されるパルス信号を用いてもよい。
【0067】
工事機器に関し、上記の実施形態ではシールドマシン1を例示し、電力を消費して動作する電気機器として油供給源13を例示したが、これらに限定されるものではない。例えば、ボーリングマシン、電動オーガ、地盤改良装置、土壌浄化設備等の工事機器であってもよい。また、油供給源13以外の電気機器(各種モータ,ヒータ)であってもよい。
【符号の説明】
【0068】
1…シールドマシン,2…高圧受電設備,3…送電線,4…配電線,5…複合計器,5a…パルス回路,6…パルス検出器,7…信号線,11…入力ユニット,12…カッターモータ,13…油供給源,14…エレクタ装置,15…スクリューコンベア,16…ベルトコンベア,17…制御盤,21…カッター,22…シールドジャッキ,23…円筒状鋼殻部,24…把持部,25…アーム部,26…カッターチャンバー,31…表示部,31a…グラフ表示領域,31b…上限値表示領域,31c…契約電力表示領域,31d…積算値表示領域,31e…予測値表示領域,31f…操作ボタン表示領域,32…操作部,33…計時部,34…制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工事現場に設置された受電設備毎に、第1時点から第2時点までの予測対象期間における消費電力を、前記第1時点が経過した後から継続的に予測する消費電力予測装置であって、
所定の単位電力が消費される毎に前記受電設備側から送信される単位消費電力情報を受信する単位消費電力情報受信部と、
受信した前記単位消費電力情報に基づいて、前記予測対象期間の消費電力を予測する消費電力予測部とを有することを特徴とする消費電力予測装置。
【請求項2】
前記単位消費電力情報はパルス信号であり、
前記消費電力予測部は、前記第1時点が経過した後から予測時点までに受信した前記パルス信号の数から、前記第2時点の経過時点における前記パルス信号の数を予測し、前記予測対象期間の消費電力を求めることを特徴とする請求項1に記載の消費電力予測装置。
【請求項3】
電力の供給を受けて動作する電気機器を備えた工事用機器の制御盤に設けられ、前記消費電力予測部で予測された前記予測対象期間の消費電力を表示する消費電力表示部を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の消費電力予測装置。
【請求項4】
工事現場に設置された受電設備から電力の供給を受ける工事用機器の動作を制御する制御装置であって、
所定の単位電力が消費される毎に前記受電設備から送信される単位消費電力情報を受信する単位消費電力情報受信部と、
受信した前記単位消費電力情報に基づいて、第1時点から第2時点までの予測対象期間の消費電力を予測する消費電力予測部と、
前記消費電力予測部で予測された前記予測対象期間の消費電力が予め定められた判断基準値を越えた場合に、前記工事用機器の消費電力が制御前よりも低くなるように前記工事用機器の動作を制御する機器制御部と、
を有することを特徴とする工事用機器の制御装置。
【請求項5】
前記工事用機器の動作を、操作者の手動操作に応じて制御する手動制御部を備え、
前記機器制御部は、前記消費電力予測部で予測された前記予測対象期間の消費電力が、前記判断基準値を越えた場合に前記手動制御部による手動操作を無効とし、前記判断基準値を越えない場合に前記手動制御部による手動操作を有効とすることを特徴とする請求項4に記載の工事用機器の制御装置。
【請求項6】
前記工事用機器は、推進用の油を供給するための油供給源を備えたシールドマシンであり、
前記機器制御部は、前記消費電力予測部で予測された前記予測対象期間の消費電力が前記判断基準値を越えた場合に、前記油供給源の消費電力が制御前よりも低くなるように前記油供給源の出力を抑制することを特徴とする請求項4又は5に記載の工事用機器の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−34297(P2013−34297A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168744(P2011−168744)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(309036221)三菱重工メカトロシステムズ株式会社 (57)
【Fターム(参考)】