説明

液中固形粒子分級装置

【課題】液体中の固形粒子を連続的に分級できる液中固形粒子分級装置を提供する。
【解決手段】本発明の液中固形粒子分級装置は、固形粒子を含む液体wから固形粒子を分級する液中固形粒子分級装置Sであって、固形粒子を含む液体wを供給するためのポンプ20と、液体wが流入する蛇管型もしくは螺旋型の円状管10eをもつ遠心分離機構10と、円状管10e内においてその中心軸O近くの遠心力が強く加わった側の液体wと中心軸Oから遠くの遠心力が弱く加わった側の液体wと当該両側間の液体wとを、遠心分離機構10の下流で遠心力の強弱に対応して、複数に分けて取り出す取水口11、12とを、備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば浄水場等で原水中の濁質分を凝集させる凝集剤を注入する制御を行うための水質計測器に係り、特に濁質分が凝集したフロックを分級するための液中固形粒子分級装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、浄水場等では、取水した原水に凝集剤を注入することで、原水中の濁質分を凝集させてフロックを形成させ、生成したフロックを沈殿池で沈降させ分離する凝集沈殿処理が行われている。フロックを沈降させ分離した沈殿水は、次段(下流)の浄水施設であるろ過池に導入されろ過され、ろ過水と不純物とに分離される。この凝集沈殿処理では、原水の水質、例えば濁質分の濃度などに応じて決定される凝集剤注入率が重要である。
【0003】
凝集沈殿処理では、一般に原水の水質(濁度、アルカリ度、pHなど)の測定結果から予め設定した凝集剤注入モデル式に従い凝集剤注入率を演算し、この凝集剤注入率に基づいた凝集剤を注入するフィードフォワード制御と、沈殿池出口での濁度の測定結果に基づいて、凝集剤注入率を補正するフィードバック制御を組み合わせたフィードフォワード・フィードバック制御が採用されている。
【0004】
しかし、凝集沈殿処理の特質上、すなわち濁質分を凝集剤でフロックに凝集させて重力によって自然沈殿させるという過程を経ることから、凝集剤を注入してから最終的な沈殿池出口の濁度として判明するまで約3〜4時間と時間遅れが大きい。このため、フィードバックによる凝集剤注入率の補正を困難としている。つまり、大きな時間遅れに起因して原水の水質が変動するなど適切な補正が困難となっている。
【0005】
そこで、時間遅れ短縮のため、凝集剤注入後の微小フロックを指標とする凝集剤注入制御方法が提案されている。この制御方法は凝集剤が注入された原水を、従来の沈殿地出口よりも早い段階で採水することによりフィードバック補正の時間遅れを短縮し、原水の水質が変動しても早期に凝集剤注入率の補正を可能とするものである。
【0006】
具体的には、凝集剤が注入された原水に微小フロックが多いと以降のフロック成長が遅くなり、結果的に沈殿池出口の濁度が高くなる。そこで、フィルタなどの分級手段により微小フロックを取得してその量を測定することで、高精度に凝集剤注入率の補正ができる。
【0007】
ここで、微小フロックの定量方法としては、例えば、固形成分のアルミニウム濃度を測定することなどが挙げられる。試料水(原水)中のアルミニウム濃度の測定方法としては、原子吸光光度法、ICP(Inductively Coupled Plasma)発光分光分析法、ICP質量分析法および吸光光度法などがある。このうち、吸光光度法としてエリオクロムシアニンレッド(C2315NaS、以下、ECRと称す)を呈色試薬として用いる方法がある。これは溶解性アルミニウムがpH4.6〜5.6の領域において、ECR試薬と呈色反応を起こし錯体を生成するので、その吸光度を求めることで定量するものである。
【0008】
この凝集剤注入制御方法を実現するためには、試料水(原水)中の微小フロックを連続して分級できる固形粒子分級装置が必要である。これらの微小フロックの含有比率を高める手段としては、例えば、ビーカに被処理水を採水して所定量の凝集剤を注入後、急速攪拌、緩速攪拌および静置を施し、上澄み液を採水する方法(ジャーテスト)がある。
【0009】
また、連続的に処理する方法として、特許文献1には、懸濁水や処理水が装置上部側から供給され、その下降流が流れる下降流路と、下降流路の下部を開口して設けられた下降流を上昇流に反転させる沈殿部と、沈殿部の上部に設けられた上昇流が流れる上昇流路とから構成された懸濁水分離処理システムが開示されている。
【0010】
特許文献2には、槽の底部位の中心に、上方向面を閉じた構造の採水口を配置し、槽の上部には、懸濁質濃度の低い液をオーバーフローさせて採水する手段を設置し、かつ採水した懸濁質濃度の高い液の少なくとも一部を槽の底部位から円周方向に吐出する手段、オーバーフローにより採水した液の少なくとも一部を槽の上部位から円周方向に吐出する手段、またはこれら両手段を設けて槽中を旋回流とする懸濁液分離装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2004−154690号公報
【特許文献2】特開平4−346803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上述のジャーテストはバッチ式であり、連続的に処理水を得ることができない。また、試験時間が20分程度必要のため、分級するまでに時間を要するという問題(課題)がある。
【0013】
前記の特許文献1、2は、微小フロックの分級自体は可能だが、分級するまでに時間を要するという問題(課題)がある。具体的には、特許文献1、2の構成では、分級に20分ほど要すると見込まれ、凝集剤注入制御のフィードバック補正に十分に対応できない。
【0014】
本発明は上記実状に鑑み、液体中の微小フロック(固形粒子)を連続的に分級できる液中固形粒子分級装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは上述した目的の達成に向けて、蛇管型もしくは螺旋型の遠心分離機構を備えた微小フロックを分級するための固形粒子分級装置を開発した。
【0016】
具体的な解決手段として、本発明の液中固形粒子分級装置は、固形粒子を含む液体から前記固形粒子を分級する液中固形粒子分級装置であって、前記固形粒子を含む液体を供給するためのポンプと、前記液体が流入する蛇管型もしくは螺旋型の円状管をもつ遠心分離機構と、前記円状管内においてその中心軸近くの遠心力が強く加わった側の液体と前記中心軸から遠くの遠心力が弱く加わった側の液体と当該両側間の液体とを、前記遠心分離機構の下流で前記遠心力の強弱に対応して、複数に分けて取り出す取水口とを、備えている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、液体中の微小フロック(固形粒子)を連続的に分級できる液中固形粒子分級装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係わる実施形態1の水中固形粒子分級装置を上から見た構成図である。
【図2】実施形態1の固形粒子分級装置の性能を示す図である。
【図3】実施形態2の複数回同じ流路で遠心分離可能な水中固形粒子分級装置を上方から見た構成図である。
【図4】実施形態3の円管の出口流路に分流板を設置した水中固形粒子分級装置を上方から見た構成図である。
【図5】(a)は実施形態4の水中固形粒子分級装置の正面視でU字型の遠心分離機構を上方から見た構成図(上面図)であり、(b)は(a)のA方向矢視図(正面図)である。
【図6】実施形態5の水中固形粒子分級装置の2重螺旋型の遠心分離機構を上方から見た構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の水中固形粒子分級装置の実施形態について添付図面を参照して説明する。
本実施形態の水中固形粒子分級装置は、試料水(液体)に含まれる濁質分が凝集したフロック(固形粒子)を蛇管型もしくは螺旋型の遠心分離機構にて遠心分離して、任意の粒径以下の固形粒子を多く含む水を採水することを特徴とする。
【0020】
<<実施形態1>>
図1は、本発明に係わる実施形態1の水中固形粒子分級装置を上から見た構成図である。
実施形態1の水中固形粒子分級装置Sは、原水の試料水wを供給するためのポンプ20と、供給される試料水w中のフロック(固形粒子)を分級する遠心分離機構10とを備え構成される。
【0021】
遠心分離機構10は、円管10e内を円状(図1の矢印α1)に流れる試料水wに含まれる固形粒子を円運動による遠心力によって分級する。なお、図1では円管10eの箇所を破線にて強調して示している。ちなみに、符号10oの部材は後記の実施形態3で説明する。
遠心分離機構10を構成する蛇管型もしくは螺旋型の円管10eの内径は、8mm以上が望ましい。
【0022】
何故なら、円管10eの内径が8mm以下の場合には流れの断面積が小さ過ぎ、上澄み液(固形粒子が比較的除去された水)と分離した固形粒子を多く含む高懸濁液とを、それぞれ分級処理水流出口11および高懸濁液流出口12から取り出すことが困難となるからである。
【0023】
これに対して、円管10eの内径が大きい場合、蛇管もしくは螺旋とする最小半径が増大して大きな設置スペースが必要となること、内径の小さい円管10eと比較して同じ流速で流す場合の必要流量が増加することなどから、円管10eの内径は20mm以内とするのが望ましい。
従って、遠心分離機構10の円管10eの内径は、8〜20mmの範囲が望ましいが、目的に応じて8〜20mmより大きくても小さくても構わない。
【0024】
本実施形態1では、一例としてポンプ20による試料水wの流量を15L(リットル)/min(分)、円管10eの内径を12mmとする。
蛇管もしくは螺旋管の円管10e内の流体の平均流速vは、流速=流量/流路断面積の関係から、以下の式(1)より演算される。
v=q/(π・(D/2)) (1)
【0025】
ここで、Dは円管10eの内径(m)であり、qは試料水wの流量(m/s)である。
本実施形態1の条件では、円管10e内を円状に流れる流体(試料水w)の円運動の接線方向の流速vは2.2m/sである。
試料水wに含まれる固形粒子に加わる遠心加速度aは、その移動速度(流速v)の2乗に比例する。遠心加速度aは次の式(2)で演算される。
【0026】
a=v/r (2)
ここで、rは円管10e(円管10e内の試料水w(固形粒子))までの回転軸Oからの距離(m)であり、本実施形態1では0.08mとする。遠心加速度aは回転軸Oからの距離rに反比例して増加する、すなわち距離rが小さいほど遠心加速度aが増加する。そのため、回転軸Oからの距離rが短くなるように遠心分離機構10の円管10eは設計することが好ましい。
【0027】
ところで、円管10e内の液体(試料水w)に加わる遠心加速度aが重力加速度gより小さい場合に、円管10eの延在方向によっては、円管10e内の液体の移動が阻害される怖れがある。そこで、重力加速度g以上の遠心加速度aを円管10e内の試料水wに付与することとしている。
【0028】
すなわち、円管10e内の流体(試料水w)の円移動(円運動)の接線方向の流速vと回転軸Oからの距離rが次の関係を満足するようにしている。
(a=)v/r>9.8m/s(g:重力加速度) (3)
本実施形態1の条件では、流体(試料水w)の流速vが2.2m/sであり、rが0.08mであることから、式(2)より遠心加速度aは、60.5m/sである。そのため、式(3)の関係は満足している。
【0029】
また、固形粒子の体積をVとし、dを固形粒子の粒径とすると、
V=(4/3)・π・(d/2) (4)
の関係がある。
なお、固形粒子に加わる遠心力fは、固形粒子の質量をmとすると、式(2)の遠心加速度aを用いて、
f(遠心力)=m・a (5)
と表される。
【0030】
固形粒子の質量mは、その体積Vに比例するので、式(2)、(4)より
f(遠心力)∝d/r (6)
の関係がある。
式(6)より、固形粒子に加わる遠心力fは、円管10eの回転軸Oからの距離rに反比例し、固形粒子の径dの3乗(d)に比例する。
【0031】
このように、固形粒子に加わる遠心力fは、距離rに反比例するので距離rが小さいほど遠心力fが大きい。すなわち、円管10e内の内側ほど遠心力fが大きい。一方、距離rが大きいほど遠心力fが小さい。すなわち、円管10e内の外側ほど遠心力fが小さい。
また、固形粒子に加わる遠心力fは、固形粒子の径dの3乗(d)に比例するので、固形粒子の径dが大きい程、著しく増加する。
【0032】
結果として、試料水wに含まれる固形粒子は、遠心分離機構10の円管10eを、図1の矢印α1のように進行(円運動)する過程において、円運動による遠心力fを受けて、相対的に質量mの小さいものは、式(5)より小さい力を受けるので、回転軸Oに近い側(回転軸Oからの距離rが小さい側)に移動する一方、質量mの大きいものは、式(5)より大きい力を受けるので、回転軸Oに遠い側(回転軸Oからの距離rが大きい側)に移動し、分級される。
【0033】
換言すれば、粒径dの大きな固形粒子ほど質量mが大きいので式(5)より大きな遠心力fを受けて、回転軸Oを基準とした円管10e内の外側(回転軸Oからの距離rが大きい側)、つまり遠心力が弱く加わる側へ移動する。一方、粒径dの小さな固形粒子ほど質量mが小さいので式(5)より小さな遠心力fを受けて、回転軸Oを基準とした円管10e内の内側(回転軸Oからの距離rが小さい側)、つまり遠心力が強く加わる側へ移動する。
【0034】
固形粒子の遠心力fが加わる方向への移動速度(w)は、次のストークスの式(7)で演算することが可能である。
w=a・((ρ−ρ)/(18・μ))・d (7)
ここで、aは遠心加速度であり、ρは固形粒子の密度(kg/m)、ρは流体(試料水w)の密度(kg/m)、μは流体(試料水w)の粘度(Pa・s)、dは固形粒子の粒径(m)である。
【0035】
式(7)より、固形粒子の径dが小さいほど、遠心力fが加わる方向への移動速度wが小さく、遠心力fが加わる方向への移動距離が小さい。一方、固形粒子の径dが大きいほど、遠心力fが加わる方向への移動速度wが大きく、遠心力fが加わる方向への移動距離が大きい関係にある。
【0036】
分級したい固形粒子の粒径を15μm、流体(試料水w)の密度1000kg/m、固形粒子の密度1600kg/m、流体(試料水w)の粘度1.0×10−3Pa・sとすると、式(7)を用いて、本実施形態1の条件では、固形粒子の遠心力fが加わる方向への移動速度(w)は27.2mm/min(分)となる。
【0037】
試料水wの遠心分離機構10内の滞留時間が1minであるとすると、回転軸Oを基準とした円管10eの内側、つまり遠心力が強くかかる側(回転軸Oからの距離rが小さい側)から27.2mmの位置の液には、主に、粒径dが15μm以下の固形粒子しか含まれていないことを意味する。これは、試料水wに含まれる全ての固形粒子が、円管10eでの流れの開始時に、回転軸Oを基準とした円管10eの内側、つまり遠心力が強くかかる側(回転軸Oからの距離rが小さい側)に存在しているとモデル化した場合である。
【0038】
また、式(7)から、試料水wに含まれる固形粒子の遠心力が加わる方向への移動速度wは、遠心加速度aと、固形粒子の粒径dの2乗とに比例する。そのため、粒径dの大きさと、式(2)より遠心加速度aを決定する流速vとで、遠心力が加わる方向の移動速度wが決定される。そして、移動速度wに移動時間を乗じて固形粒子の遠心力fが加わる方向への移動距離が求まる。
【0039】
式(2)より、遠心分離機構10の円管10e内の内側のrが小さい側の流体(試料水w)には遠心加速度aが大きく大きな遠心力fが加わる一方、円管10e内の外側のrが大きい側の流体(試料水w)には遠心加速度aが小さく小さな遠心力fが加わる。
従って、粒径dが大きい固形粒子は移動距離が大きいので、円管10e内の外側の遠心力fが小さく加わる側に移動する一方、粒径dが小さい固形粒子は移動距離が小さいので、円管10e内の内側の遠心力fが大きく加わる側に残存することになる。
【0040】
以上から、試料水wの流速v(式(2)参照)と、固形粒子が遠心力fを受けて移動する円管10e内の外側と内側との位置に対応する円管10eから流出後の取水の位置とを調整することで、任意の粒径以下の固形粒子を多く含む水を得ることが可能となる。
【0041】
これにより、遠心分離機構10の出口に設けられる直線状の出口流路10oの出口端には、遠心力が強く加わる側(円管10e内の内側のrが小さい側に対応)から遠心力が弱く加わる側(円管10e内の外側のrが大きい側に対応)へ、順に分級処理水流出口11、高懸濁液流出口12が取り付けられる。
【0042】
本実施形態1で使用している円管10eの内径は12mmであるため、少なくとも分級処理水流出口11および高懸濁液流出口12の幅、すなわち分級処理水流出口11、高懸濁液流出口12の遠心力が加わる方向の寸法s1、s2は合わせて12mm以内にならなければならない。
【0043】
本実施形態1の分級処理水流出口11の幅の寸法s1を3mmとすると、分級処理水流出口11で取水する試料水wの遠心分離機構10内の滞留時間は、前記したように、遠心力が加わる方向に1分間で27.2mm移動することから、少なくとも6.6s(秒)であればよい。このとき、流体の流速vが2.2m/sであるから、流速vの2.2m/sに6.6sを乗じて、円管10eの必要長さは14.6mとなる。
【0044】
以上の構成の固形粒子分級装置Sを用いることで、本発明の目的、すなわち任意の粒径以下の固形粒子を多く含む水(液体)を採水(採取)することができる。
図2は、実施形態1の水中固形粒子分級装置の性能を示す図である。
【0045】
ジャーテストと比較した場合、重力加速度gを用いるジャーテストと、遠心加速度aを用いる固形粒子分級装置Sとでは固形粒子にかかる加速度が、重力加速度gの9.8m/sに対して、遠心加速度aが60.5m/sで約6倍(60.5/9.8)であり、大きく異なる。
【0046】
そのため、実施形態1の固形粒子分級装置Sでは、重力加速度gの作用で上澄み液を採水する方法のジャーテストに比較し、加える加速度の違いから6倍速く分級することが可能となる。
従って、沈殿池出口の濁度に影響を与える微小フロックを、凝集剤注入制御の周期よりも短時間で連続的に分級することが可能となる。これにより、凝集剤注入後の微小フロックを指標とする凝集剤注入制御方法が実現できる。
【0047】
<<実施形態2>>
図3は、実施形態2の複数回同じ流路で遠心分離可能な水中固形粒子分級装置を上方から見た構成図である。
実施形態2の水中固形粒子分級装置2Sは、例えば実施形態1の14.6mの円管10eにて分級するのが容易でない場合、すなわち分級に使用する距離をとりたい場合、複数回同じ流路(管路)で遠心分離をするものである。
【0048】
実施形態2の水中固形粒子分級装置2Sは、遠心分離機構10の円管10eの入口に、式(2)より遠心力が強く加わる側、すなわち回転軸Oからの距離rが短い側から、遠心力が弱く加わる側の距離rが長い側に対応して、試料水流入口13、中間液流入口14、および高懸濁液流入口15が取り付けられる。
【0049】
遠心分離機構10の円管10eの出口には、遠心力が強く加わる側、すなわち回転軸Oからの距離rが短い側から長い側へ、分級処理水流出口11、中間液流出口16、および高懸濁液流出口12が取り付けられる。
ポンプ20は、水中固形粒子分級装置2Sで分級する試料水wを試料水流入口13から遠心分離機構10の円管10eに送水する。
【0050】
ポンプ30は、分級処理水流出口11から流出する分級された最も短い粒径の固形粒子を含む試料水wのうちの一部を再び中間液流入口14から遠心分離機構10の円管10eに送水する。分級処理水流出口11から流出するその他の最も短い粒径の固形粒子を含む試料水wは、採水口17から採水される。
【0051】
ポンプ40は、中間液流出口16から流出する分級された中間の長さの粒径の固形粒子を含む試料水wを再び中間液流入口14から遠心分離機構10の円管10eに向けて送水する。
ポンプ50は、高懸濁液流出口12から流出する分級された最も長い粒径の固形粒子を含む試料水wの一部を再び高懸濁液流入口15から遠心分離機構10の円管10eに送水する。高懸濁液流出口12から流出するその他の最も長い粒径の固形粒子を含む試料水wは、排水口18から排水される。
【0052】
次に、水中固形粒子分級装置2Sによる分級過程を時間経過に従って説明する。
水中固形粒子分級装置2Sで分級される固形粒子を含む試料水wは、ポンプ20により、試料水流入口13から遠心分離機構10に流入される。
流入した試料水wは、遠心分離機構10の円管10e内を、図3の矢印α1のように円状に流れ、試料水wに含まれる固形粒子は、回転軸Oを中心として外向きに円運動による遠心力fが加わる。
【0053】
前記したように、試料水wに含まれる固形粒子は、遠心分離機構10の円管10eを、図3の矢印α1のように進行する過程において、円運動による遠心力fを受けて、質量mの小さいものは、式(5)より小さい力を受けるので、相対的に回転軸Oに近い側に残存する一方、質量mの大きいものは、式(5)より大きい力を受けるので、相対的に回転軸Oに遠い側に移動し、分級される。
【0054】
そして、回転軸Oからの距離rが短い方から長い方に対応して、それぞれ取り付けられた分級処理水流出口11、中間液流出口16、および高懸濁液流出口12から、分級された固形粒子を含む試料水wが流出する。
分級処理水流出口11は、遠心分離機構10の円管10eの横断面の最も内側の位置(回転軸Oに近くrが小さい位置)に対応するので、式(5)、(6)より、質量mが小さい任意の粒径以下の固形粒子を多く含む水が通過(流出)する。
【0055】
この際、分級処理水流出口11から流出する任意の粒径以下の固形粒子を多く含む水の一部は、水質計測のため採水口17から採水される。そして、残りの分級処理水流出口11から流出する水は、ポンプ30により再度中間液流入口14から遠心分離機構10の円管10e内に流入する。
【0056】
固形粒子の粒径dは、式(4)により、固形粒子の体積V、すなわち質量mに3乗で影響するので、比較的大きな粒径dをもつ固形粒子は質量mが大である。円管10内では、固形粒子を含む試料水wの円運動により、質量mの違いにより固形粒子が遠心分離される。
よって、高懸濁液流出口12は、遠心分離機構10の円管10eの横断面の最も外側の位置(回転軸Oに遠いrが大きい位置)に対応するので、式(5)、(6)より、遠心分離した質量mが大きい比較的大きな粒径dをもつ固形粒子を多く含む水が通過(流出)する。
【0057】
高懸濁液流出口12から流出する比較的大きな粒径d(大きな質量m)をもつ固形粒子を多く含む水の一部は、排泥のため排水口18から排水される。残りの高懸濁液流出口12から流出する試料水wは、ポンプ50により再度、高懸濁液流入口15から遠心分離機構10の円管10e内に流入する。
【0058】
中間液流出口16は、遠心分離機構10の円管10eの横断面の外側と内側との中間の位置に対応するので、任意の粒径以下の固形粒子を多く含む試料水w以外、かつ、遠心分離した比較的大きな粒径d(大きな質量m)をもつ固形粒子を多く含む試料水w以外の試料水w、すなわち中間液が通過(流出)する。この際、中間液は、ポンプ40により再度、中間液注入口14から遠心分離機構10の円管10e内に流入する。
【0059】
以上のように、水中固形粒子分級装置2Sでは、試料水w(液体)を、円管10e内を循環させることで、複数回同じ流路で遠心分離することが可能である。そのため、本発明の目的である任意の粒径以下の固形粒子を多く含む水を、分級の精度を上げて採水することができる。
【0060】
また、循環時に分級後の流路より外側の流路から遠心分離機構10の円管10eに流入させることで、分級処理水流出口11から、より粒径の短い固形粒子を多く含む水を、採水口17から採水することが可能である。
なお、原理が同じならば複数回同じ流路で遠心分離をする方法は、実施形態2で例示した方法に限定されない。
【0061】
<<実施形態3>>
図1に示す実施形態1の遠心分離機構1においては、遠心分離機構10の円管10eで分級された試料水wは、直線状の出口流路10oに流出する。直線状の出口流路10oにおいては、円管10eで分級された試料が直線移動するため、遠心力を受けることなく、進行方向の圧力と下方への重力とが主に加わる。そのため、分級された遠心力が強く加わった側の試料水wと弱く加わった側の試料水wとが出口流路10oにおいて混合する可能性がある。
【0062】
図4は、実施形態3の円管の出口流路に分流板を設置した水中固形粒子分級装置を上方から見た構成図である。
そこで、実施形態3の水中固形粒子分級装置3Sは、実施形態1における遠心分離機構10の円管10eの出口流路10oにおいて、遠心力が強く加わった側の試料水wと弱く加わった側の試料水wとを混合しないよう分流するために、分流板19を設けている。
【0063】
水中固形粒子分級装置3Sでは、円管10eの出口流路10oに接合された円管10eの内側に対応する分級処理水流出口11および円管10eの外側に対応する高懸濁液流出口12の間の前側(上流側)に分流板19を設置している。
【0064】
これにより、出口流路10oの出口付近で、円管10eの内側を流れる比較的小さな粒径をもつ固形粒子を多く含む試料水wと、円管10eの外側を流れる遠心分離した比較的大きな粒径をもつ固形粒子を多く含む試料水wとが、分流板19により分離されることになり、両者が混合されない。
【0065】
分流板19の厚みは、分級された試料水wの流路(出口流路10o)に設けられるので、流路を妨げないようにできるだけ薄い方が望ましい。また、分流板19の円管10eに近い方に配置される先端部は、任意の粒径以下の比較的小さな粒径をもつ固形粒子を多く含む試料水wと比較的大きな粒径をもつ固形粒子を多く含む試料水wとの分離を行うため、抵抗とならないように鋭端となっていることが望ましい。
【0066】
図4では、分流板19を遠心分離機構10の円管10eの出口に接続される直線状の出口流路10oの下流側に配置する場合を例示したが、分流板19を遠心分離が作用している円管10eまたはその近傍まで延設(延長)してもよい。
【0067】
遠心分離が作用している部分またはその近傍まで分流板19を延長(延設)することで、直線状の出口流路10o内の下流に分流板19を配置した場合よりも、円管10eの内側を流れた任意の粒径以下の比較的小さな粒径をもつ固形粒子を多く含む試料水wと、円管10eの外側を流れた比較的大きな粒径をもつ遠心分離した固形粒子を多く含む試料水wとが、混合されるのをさらに抑制することが可能である。
【0068】
そのため、実施形態3は、分流板19を設けることにより、実施形態1と比較して遠心分離機構10の分級性能が向上する。
なお、実施形態3で説明した分流板19は、実施形態1の構成に適用した場合を例示したが、実施形態2の構成に適用してもよく、或いは、その他の構成にも適用可能である。
【0069】
<<実施形態4>>
図5(a)は、実施形態4の水中固形粒子分級装置の正面視でU字型の遠心分離機構を上方から見た構成図(上面図)であり、図5(b)は、図5(a)のA方向矢視図(正面図)である。
実施形態4の水中固形粒子分級装置4Sは、遠心分離機構10の形状を、正面視で図5(b)に示すように、第1円管10e1、第2円管10e2を並置(並設)してU字型としたものである。
【0070】
ポンプ20から送出される試料水wは、図5の矢印α41のように第1円管10e1内を円状に流れた後、図5の矢印α42のように第1円管10e1から第2円管10e2に向け流れ、第2円管10e2内に流入する。そして、図5の矢印α43のように第2円管10e2内を円状に流れ、分級処理水流出口11、高懸濁液流出口12から流出する。
固形粒子を含む試料水wは、第1円管10e1、第2円管10e2内を円状に流れることで、前記したように、遠心力を受けて分級される。
【0071】
そして、第1・第2円管10e1、10e2の各横断面の内側に対応する分級処理水流出口11から短い粒径の固形粒子を含む試料水wが流出し、採水される。また、第1・第2円管10e1、10e2の各横断面の外側に対応する高懸濁液流出口12から長い粒径の固形粒子を含む試料水wが流出し、排水される。
【0072】
遠心分離機構10の形状を、正面視でU字型(図5(b)参照)とすることで、実施形態1と比較して、遠心分離機構10のアスペクト比(縦横比)を下げることが可能となり、コンパクト化が図れる。
なお、図5では、遠心分離機構10を2つ並設(並置)し正面視でU字型とした場合を例示したが、3つ以上並設する構成とすることも可能である。
【0073】
<<実施形態5>>
図6は、実施形態5の水中固形粒子分級装置の2重螺旋型の遠心分離機構を上方から見た構成図である。
実施形態5の水中固形粒子分級装置5Sは、遠心分離機構10の形状を2重螺旋型(渦巻き型)とした場合である。
【0074】
水中固形粒子分級装置5Sは、遠心分離機構10を2重螺旋型(渦巻き型)の内側の第1円管10U1と、外側の第2円管10U2としている。
水中固形粒子分級装置Sでは、試料水wがポンプ20により遠心分離機構10に供給され、第1円管10U1内を円状に図6の矢印α51のように流れた後、第2円管10U2を円状に図6の矢印α52のように流れ、分級処理水流出口11、高懸濁液流出口12から流出する。
【0075】
固形粒子を含む試料水wは、第1円管10U1、第2円管10U2内をそれぞれ円状に流れることで、前記した如く、遠心力を受けて分級される。
そして、第1・第2円管10U1、10U2の横断面内側に対応する分級処理水流出口11から比較的短い粒径の固形粒子を含む試料水wが流出し、採水される。また、第1・第2円管10U1、10U2の横断面外側に対応する高懸濁液流出口12から比較的長い粒径の固形粒子を含む試料水wが流出し、排水される。
【0076】
実施形態5によれば、遠心分離機構10を2重螺旋型(渦巻き型)とすることで、実施形態1〜3と比較して、遠心分離機構10のコンパクト化が可能となる。
なお、図6では、遠心分離機構10を2重螺旋型(渦巻き型)とする場合を例示したが、3以上の多重螺旋型(多重渦巻き型)の構成とすることも可能である。
【0077】
なお、前記実施形態1〜5では、固形粒子(フロック)を含む試料水wを例示して説明したが、固形粒子を含む液体であればよく、本発明が適用される液体は特に限定されない。
また、前記実施形態1〜5では、各構成を個別に説明したが、実施形態1〜5の構成を適宜任意に組み合わせて構成してもよい。これにより、組み合わせた効果を奏する。
【0078】
以上、本発明の様々な実施形態を述べたが、その説明は限定的というよりは典型的であることを意図したものである。そして、本発明の範囲内でより多くの形態と実施が可能であることは、勿論である。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲内で様々な修正と変更が包含される。
【符号の説明】
【0079】
10 遠心分離機構
10e 円管(円状管)
10e1 第1円管(並設した円状管)
10e2 第2円管(並設した円状管)
10U1 第1円管(渦巻き状の円状管)
10U2 第2円管 (渦巻き状の円状管)
11 分級処理水流出口(取水口、分級後の流路)
12 高懸濁液流出口(取水口)
13 試料水流入口(遠心力が強く加わる側の流入口)
14 中間液流入口(分級後の流路より外側の流路)
15 高懸濁液流入口(遠心力が弱く加わる側の流入口)
16 中間液流出口(取水口)
17 採水口(採取手段)
18 排水口(排出手段)
19 分流板(分流部材)
20 ポンプ
30 ポンプ(循環手段)
40 ポンプ(循環手段)
50 ポンプ(循環手段)
a 遠心加速度
g 重力加速度
O 円状管の回転軸(中心軸)
r 回転軸からの距離
S 水中固形粒子分級装置(液中固形粒子分級装置)
v 円状管内の円状の流れの接線方向の液体の流速
w 試料水(液体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形粒子を含む液体から前記固形粒子を分級する液中固形粒子分級装置であって、
前記固形粒子を含む液体を供給するためのポンプと、
前記液体が流入する蛇管型もしくは螺旋型の円状管をもつ遠心分離機構と、
前記円状管内においてその中心軸近くの遠心力が強く加わった側の液体と前記中心軸から遠くの遠心力が弱く加わった側の液体と当該両側間の液体とを、前記遠心分離機構の下流で前記遠心力の強弱に対応して、複数に分けて取り出す取水口とを、
備えることを特徴とする液中固形粒子分級装置。
【請求項2】
請求項1記載の液中固形粒子分級装置において、
前記遠心分離機構による遠心分離により得られた液体のうちの一部を採取する採取手段と、
前記遠心分離機構による遠心分離により得られた液体のうちの一部を排出する排出手段と、
当該液体のうちの残りの液体を、前記遠心分離機構において複数回同じ流路で遠心分離するため、再び前記遠心分離機構に流入させる循環手段とを
備えることを特徴とする液中固形粒子分級装置。
【請求項3】
請求項2記載の液中固形粒子分級装置において、
前記遠心分離機構において遠心力が強く加わった側の液体と遠心力が弱く加わった側の液体と当該両側間の液体とを、再度前記遠心分離機構に流入する場合、
前記遠心分離機構の既通過により遠心力が強く加わった側の液体は、前記遠心分離機構で遠心力が強く加わる側に向かう流入口から前記遠心分離機構に流入させ、
前記遠心分離機構の既通過により遠心力が弱く加わった側の液体は、前記遠心分離機構で遠心力が弱く加わる側に向かう流入口から前記遠心分離機構に流入させる
ことを特徴とする液中固形粒子分級装置。
【請求項4】
請求項2記載の液中固形粒子分級装置において、
再度前記遠心分離機構に流入させる分級後の液体を、当該分級後の流路より外側の流路に向かうよう前記遠心分離機構に流入させる
ことを特徴とする液中固形粒子分級装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のうちの何れか一項記載の液中固形粒子分級装置において、
前記円状管内の円状の流れの接線方向の液体の流速v、前記円状管の前記中心軸から当該液体までの距離r、重力加速度gについて、 v/r>g の関係を満足し、
重力加速度以上の遠心加速度を前記円状管内の前記液体に加える
ことを特徴とする液中固形粒子分級装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のうちの何れか一項記載の液中固形粒子分級装置において、
前記遠心分離機構での遠心分離により得られた液体の取出口の上流に、前記遠心分離機構で前記中心軸に近くの遠心力が強く加わった側の液体と前記中心軸から遠くの遠心力が弱く加わった側の液体との間に当該両液体が混合しないよう分流するための分流部材を備える
ことを特徴とする液中固形粒子分級装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のうちの何れか一項記載の液中固形粒子分級装置において、
前記遠心分離機構の円状管を並設した
ことを特徴とする液中固形粒子分級装置。
【請求項8】
請求項1から請求項6のうちの何れか一項記載の液中固形粒子分級装置において、
前記遠心分離機構の円状管を渦巻き状とした
ことを特徴とする液中固形粒子分級装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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