説明

液中微小電位測定用電極装置

【課題】 水中の動的な運動に対しても耐え得る液中微少電位測定用電極装置を提供する。
【解決手段】 ケース体2を筒状のケース本体3と蓋4とで構成し、この筒状のケース本体3の内部に、支持体5によって支持される電極7と、この電極7の周囲に形成される液室8とを備え、更に蓋4と液室8間にフィルタ14を備え、このフィルタ14を不織布で構成するとともに、蓋4のケース本体3へのネジ締めにより、押さえリング15を介してケース本体3のツバ12へフィルタ14を圧接固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液中の微小電位を測定する場合に使用する液中微小電位測定用電極装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水中での2点間の電位を測定するために、図2に示すように、2個の電極21,22を水中に入れ、電極21,22間の微小電位差を船24のデータ処理装置23で収集するという方法がある。このような水中の微小電位測定には、液を多孔質のガラス製のフィルタを介して電極に導入する電極装置が使用されている。
【0003】
ところで、一般に水中電位を測定する場合に使用する電極としては、電極本体を支持用絶縁体の表面に固定して一体的に構成した照合電極であって、電極本体の接液面を多数の小孔状開口を有する絶縁蓋で覆うようにした電極が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−61395号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水中の微小電位を測定するために使用される電極は、従来、フィルタとして多孔質ガラスが使用されている。しかしながら、水中で数nVの微小電位を測定するため、この種の多孔質ガラス製フィルタを用いたのでは、水中へ投下する際の衝撃及びケース運搬時において、フィルタが強度的に弱く、割れの発生等が生じ、微小電位の測定に弊害を及ぼすおそれがあるという問題がある。また、上記特許文献1に記載の電極を採用しても、上記問題点を解決することができない。
【0005】
この発明は上記問題点に着目してなされたものであって、水中へ投下する際の衝撃及びケース運搬時の衝撃に対しても耐え得る液中微小電位測定用電極装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の液中微小電位測定用電極装置は、構造体内部に、電極と、この電極の周囲に形成される液導入部と、液導入部と外部間に配置されるフィルタとを備える電極装置において、前記フィルタを不織布で構成している。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、フィルタとして、不織布を用いているので、液体透過性が高く、物理的な衝撃に対して強く、水中へ電極を投下する場合でも、割れの発生等を生じず、電極装置の性能を損なうことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、実施の形態により、この発明をさらに詳細に説明する。図1は、この発明の一実施形態を示す液中微小電位計測用電極装置の概略構成を示す断面図である。
【0009】
この実施形態電極装置1は、ケース本体3と蓋4からケース体2が構成されている。ケース本体3は筒状体であり、内部中央部分に支持体5でケース本体3内の内壁6に固定支持された電極7を有する。また、ケース木体3の筒状体内部の電極7の周囲に液室(液導入部)8が形成され、ここには3.5%のNacl水溶液が満たされる。
【0010】
また、ケース本体3の一端に設けられる開孔9よりコード線10が導かれ、コード線10の導線部11が電極7に接続されている。ケース本体3の他端筒内に内側に向けてツバ12が形成され、このツバ12の中央部に開孔13が形成されている。この開孔13を覆う態様で、不織布で形成されるフィルタ14が脱着自在に配置されている。
【0011】
不織布フィルタ14を押さえリング15を介して圧接するように、蓋3でケース本体2にネジ締めして固設するようにしている。もちろん、蓋3にも開孔16を設けている。
【0012】
この電極装置1を用いて、水中の微小電位を計測する場合は、図1に示すように、1対の電極装置1,1(図2の21,22)を水中に入れ、それぞれを所望の箇所へ設置する。水中に電極装置1,1を入れると、電極装置1,1外部の水と、電極装置1,1の液室8内の液が、開口13、フィルタ14、開口16を介して、流出入する。この状態で、一方、電極装置1から他方の電極装置1に微小電流が流れることにより、両電極1,1間の微小電位差を測定する。不織布フィルタ14は多孔質なので、液は自在に外部の水中と液室8間を流出入し、精度良く微小電位を測定できる。また、フィルタ14に外部力により衝撃が加えられても、割れたりすることはない。
【0013】
なお、上記実施形態では、海中を含む水中で微小電位を測定する場合について説明したが、この発明は水中以外の液中でも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の一実施形態である液中微小電位測定装置の電極の概略構成を示す断面図である。
【図2】一般的な液中微小電位測定方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0015】
1 電極装置
2 ケース体
3 ケース本体
4 蓋
5 支持体
6 内壁
7 電極
8 液室
9 開孔
10 コード線
11 導線部
12 ツバ
13 開孔
14 不織布フィルタ
15 押さえリング
16 開孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造体内部に、電極と、この電極の周囲に形成される液導入部と、液導入部と外部間に配置されるフィルタとを備える液中微小電位測定用電極装置において、
前記フィルタを不織布で構成したことを特徴とする液中微小電位測定用電極装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−19815(P2010−19815A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−183231(P2008−183231)
【出願日】平成20年7月14日(2008.7.14)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成16年度、防衛省、「UEPセンサシステム(その2)の研究試作」試作研究請負契約、産業技術力強化法第19条の適用を受けるもの)
【出願人】(390014306)防衛省技術研究本部長 (169)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)