説明

液体の濃縮方法及び装置

【課題】 液体に存在する金属を濃縮する方法、または溶液量を効果的に減少させられる方法等であって、良好な効果を奏するものを提供すること。
【解決手段】 金属を含む水に摩擦用混合物を添加し、前記摩擦用混合物を含む水を機械的に撹拌して熱を発生させ前記水を蒸発させることによって、前記金属と前記摩擦用混合物とを分離することを特徴とする濃縮方法によって達成される。このとき、摩擦用混合物としては、有機系の廃棄物(例えば、木くず、おがくず、パルプ、古紙(裁断屑、新聞紙、雑誌、段ボールなどを含む)など)を用いることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を濃縮する方法およびそのための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、メッキ産業で発生する廃液中には多くの重金属が含まれており、この廃液から重金属を有効に濃縮する方法が望まれている。また、屎尿処理に先立ち、効果的に容量を減少させることができれば、その後の処理操作を円滑に進められると考えられている。加えて、従来の固液分離法によって分離された固相部分にも相当の液体が含まれていることから、この固相部分から更に液体を取り除く方法が望まれていた。
【0003】
一般に、液体を濃縮する方法としては、液体のみを蒸発させる方法(製塩方法)、イオン交換膜を用いる方法、イオン交換と機械濃縮を組み合わせた方法(特許文献1)、電気泳動法(特許文献2)などが知られている。
しかしながら、いずれの方法についても十分な効果を奏するとは言えなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−095391号公報
【特許文献2】特開2000−354739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、液体に存在する金属を濃縮する方法、または液体の溶液量を効果的に減少させられる方法等であって、良好な効果を奏するものを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための発明に係る濃縮方法は、金属を含む水に摩擦用混合物を添加し、前記摩擦用混合物を含む水を機械的に撹拌して熱を発生させ前記水を蒸発させることによって、前記金属と前記摩擦用混合物とを分離することを特徴とする。
金属とは、固体状態で金属光沢・展性・延性をもち、種々の機械的工作を施すことができ、かつ電気および熱の良導体であるなどの性質をもつ物質の総称である。具体的には、リチウム・ナトリウム・カリウム・ルビジウムなどのアルカリ金属、ベリリウム・マグネシウム・カルシウム・ストロンチウム・バリウムなどのアルカリ土類金属、アルミニウム・タングステン・鉛・亜鉛・金・銀・銅・クロム・カドミウム・ニッケル・コバルトなどの非鉄金属などが含まれる。また、金属は単体であっても良く、合金、各種化合物の形態であっても良い。また、金属は、イオンとして水に溶解していても良く、微小な形態で懸濁していても良い。
【0007】
摩擦用混合物とは、撹拌によって熱を発生させるために水に混合させるものであって、有機系のものと無機系のものとに大別できる。このうち、有機系の摩擦用混合物とは、主として有機物によって構成された混合物であって、例えば木くず、おがくず、パルプ、古紙(裁断屑、新聞紙、雑誌、段ボールなどを含む)などが含まれるがこれらに限定されない。無機系の摩擦用混合物とは、主として無機物によって構成された混合物であって、例えばゼオライト・シリカなどが含まれるがこれらに限定されない。摩擦用混合物としては、有機系のものと無機系のものをそれぞれ単独で用いることができるし、適度に混合して用いることができる。無機系混合物を用いた場合には、良好に熱を発生させることができるので、水の蒸発操作を効率良く行うことができる。
【0008】
一方、有機系混合物を用いた場合には、装置の摩耗を防いで長期間に渡って使用できる。また、有機系混合物として、おがくず・木くず・古紙などの廃棄物を用いた場合には、(1)廃物利用を行いつつ、濃縮操作を行える、(2)濃縮後のものを焼却すれば金属を容易に取り出せるなどの効果がある。
機械的に撹拌するとは、熱を発生させるために、所定の装置を用いて水と摩擦用混合物とを撹拌することを意味する。熱を発生させることにより、水を蒸発させて容量を減少させ、或いは金属を濃縮できる。
【0009】
また、本発明の容量減少方法は、水分を含む被容量減少物に摩擦用混合物を添加し、前記摩擦用混合物を含む被容量減少物を機械的に撹拌して熱を発生させ前記水分を蒸発させることを特徴とする。
上記発明において、前記摩擦用混合物は、有機物であることが好ましい。
また、本発明に係る装置は、上記方法の発明の実施に用いるものであって、前記摩擦用混合部と水分とを混合する摩擦混合部と、この摩擦混合部に隣接し蒸気を取り出す蒸気取出部とを備え、前記摩擦混合部には、前記摩擦用混合物を混合すると共に内壁が円筒形の混合室と、この混合室内を貫通する回転軸と、この回転軸に設けられ前記混合室の内壁よりも僅かに小さな外径を備えた回転翼とが備えられ、前記蒸気取出部には、蒸気取出室と、この蒸気取出室内を貫通する上記回転軸と、この回転軸に設けられ内部の混合物を前記摩擦混合部側に送る粉体流出防止用のスクリューと、前記蒸気取出室に開口された蒸気取出口とが備えられ、前記混合室内に収容された摩擦用混合物と水を前記回転翼で混合および粉砕することで摩擦熱によって発熱させながら蒸気を発生させ、この蒸気を前記蒸気取出口から取り出すことを特徴とする。
【0010】
上記発明においては、前記蒸気取出口には発生した蒸気を冷ますことによって蒸留水を回収する液体回収器が設けられていると共に、前記水分を含有する被容量減少物が前記摩擦混合部に投入される前に、前記液体回収器からの熱を受け取ることで予熱される構成とすることが好ましい。このとき、(1)液体回収器の外周を回る熱吸収管が設けられており、前記被容量減少物が前記熱吸収管の内部を通過することで予熱される構成とすることができる。この場合には、被容量減少物が予熱される距離(或いは、時間)を長く設定できるので、被容量減少物の温度を高くすることができ、摩擦混合部での処理時間が短くて済む。
【0011】
また、(2)液体回収器の内側に貯留空間を設けておき、前記被容量減少物が前記貯留空間内で予熱される構成とすることができる。被容量減少物の粘度が高い場合または混合物が存在するような場合(例えば、屎尿または従来の方法で固液分離された後の固相部分など)には、管体内を通過させることが困難な場合があり得るが、貯留空間を設けることにより、そのような被容量減少物を予熱できる。この発明によれば、被容量減少物を予熱できるので、装置の熱効率が良好となる。
本発明を実施するためには、摩擦用混合物と被容量減少物の初期割合は、適宜に変更できるが、40%〜60%とすることが好ましい。また、摩擦用混合物と被容量減少物とを混合したときの含水率(水:摩擦用混合物)は、20%〜200%であることが好ましい。含水率が低すぎると、水分の減少によって摩擦混合部の内部温度が上がりすぎてしまうことがあり、一方、含水率が高すぎると、十分な摩擦熱が発生し難く、処理時間が長く掛かりすぎてしまうからである。
【0012】
また、本願発明に係る容量減少装置は、水分を含む被容量減少物を機械的に撹拌して熱を発生させ前記水分を蒸発させるものであって、前記被容量減少物を撹拌する摩擦混合部と、この摩擦混合部に隣接し蒸気を取り出す蒸気取出部とを備え、前記摩擦混合部には、前記被容量減少物を撹拌すると共に内壁が円筒形の混合室と、この混合室内を貫通する回転軸と、この回転軸に設けられ前記混合室の内壁よりも僅かに小さな外径を備えた回転翼とが備えられ、前記蒸気取出部には、蒸気取出室と、この蒸気取出室内を貫通する上記回転軸と、この回転軸に設けられ内部の被容量減少物を前記摩擦混合部側に送る粉体流出防止用のスクリューと、前記蒸気取出室に開口された蒸気取出口とが備えられ、前記混合室内に収容された被容量減少物を前記回転翼で撹拌することで摩擦熱によって発熱させながら蒸気を発生させ、この蒸気を前記蒸気取出口から取り出すことを特徴とする。
【0013】
この発明においては、前記蒸気取出口には発生した蒸気を冷ますことによって蒸留水を回収する液体回収器が設けられていると共に、前記水分を含有する被容量減少物が前記摩擦混合部に投入される前に、前記液体回収器からの熱を受け取ることで予熱される構成とすることが好ましい。このとき、(1)液体回収器の外周を回る熱吸収管が設けられており、前記被容量減少物が前記熱吸収管の内部を通過することで予熱される構成、または(2)液体回収器の内側に貯留空間を設けておき、前記被容量減少物が前記貯留空間内で予熱される構成とすることができる。
本発明の方法は、単独で用いることもできるし、従来公知の濃縮方法(例えば、イオン交換膜を用いる方法、電気泳動法など)によって適度に濃縮された溶液を更に濃縮するために、組み合わせて用いることもできる。
【0014】
本発明の濃縮方法は、例えば次のような用途に用いることができる。
1.有害な金属を濃縮して、廃液の容量を減少するために用いる。例えば、重金属を含んだ工場廃液(例えば、メッキ廃液など)を濃縮して、廃液の容量減少に用いられる。なお、廃液のpHが低い(または高い)場合には、本方法を用いる前に、中和処理を行うことが好ましい。
2.廃液などの被容量減少物の溶量を減少するために用いる。例えば、食品工場からの廃水、ビル廃水、工場廃水、食堂・レストランの廃水、人・動物などの糞尿を被容量減少物として、水分を蒸発させることで容量減少に用いられる。このとき、従来に微生物処理を行っていたグリーストラップをなくすことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、水を効果的に蒸発させられるので、金属を有効に濃縮することが可能となる。また、多量に水を含んだものの容量を大幅に減容させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態の第1の濃縮装置システムの概要を模式的に示す斜視図である。
【図2】濃縮装置の横断面図である。
【図3】濃縮装置の縦断面図である。
【図4】回転翼の構造を説明する図である。
【図5】回転翼の部分斜視図である。
【図6】回転翼の斜視図である。
【図7】第2の濃縮装置システムの概要を模式的に示す斜視図である。
【図8】第3の濃縮装置システムの概要を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施形態について、図表を参照しつつ説明するが、本発明の技術的範囲は、これらの実施形態によって限定されるものではなく、発明の要旨を変更することなく様々な形態で実施することができる。また、本発明の技術的範囲は、均等の範囲にまで及ぶものである。
【0018】
<第1の濃縮装置システム>
図1には、本実施形態の濃縮装置システム2の概要を示した。濃縮装置システム2には、濃縮装置1が設けられている。この濃縮装置1には、図1及び図2に示すように、中央に摩擦混合部10が備えられており、その一方側には蒸気取出部20が、他方側には材料供給部40が設けられている。摩擦混合部10には、減圧ポンプ60が接続されている。
摩擦混合部10には、混合室11と、混合室11の中央を横方向に貫通する回転軸30と、回転軸30に立設された回転翼15とが設けられている。
【0019】
混合室11は円筒形状であり、回転翼15の外径よりも僅かに大きな内径を備えている。混合室11の内径は60cm、幅30cmであり、エネルギー効率及び投入される摩擦用混合物と水の質量から適切なものとなっている。混合室11内は、回転翼15による摩擦用混合物と水との混合及び粉砕作用に伴って発熱するため、300℃までの温度に耐えるようになっている。また、混合室11の内壁には、摩擦用混合物と水による衝撃が加わるため、耐衝撃性が備えられている。
混合室11の下部には、混合室11内で粉砕された固体成分を必要に応じて回収するための粉体排出口11bが設けられている。粉体排出口11bには、蓋部12bが設けられている。粉体排出口11bと蓋部12bとの接触部分には、耐熱性と密閉性とを備えたパッキング材が設けられている。
【0020】
回転軸30は、材料供給部40と混合室11と蒸気取出部20を貫通すると共に、回転自在に設けられている。また、回転軸30はモータ50の駆動によって、回転される。回転軸30において混合室11に位置する部分には、図2に示すように、4枚の回転翼15が互いに相対する方向に立設されている。より詳細には、回転翼は、回転軸30の軸方向に横並びに中央に2枚、混合室11の側面一面側に半割れ状の回転翼15aが、他面側に棒状回転翼19の合計4枚の回転翼が配設されている。図3に示すように、回転翼15の先端位置は、混合室11の内壁よりも僅かに内側で回転するようになっており、回転軸30の回転によって、摩擦用混合物が粉砕されることで摩擦熱が発生する。
【0021】
図4及び図5に示すように、中央に配設された4枚の回転翼15は、先端部分に摩擦用混合物を粉砕するために幅広に形成された叩打部16を備えている。叩打部16には、摩擦用混合物と水を叩打するように軸心方向に沿って外方に傾斜された叩打面16aが設けられている。この形状によって、摩擦用混合物と水を回転軸30の軸心方向(図4における方向D1)であって、かつ混合室11の中心に向かって叩打することで、効率的な叩打及び粉砕を行える。
また、回転翼15の根元側(回転軸30との接続部分)には、回転方向へ向かう凸面17aを備えた曲面部17が設けられており、摩擦用混合物と水を周方向(図4における方向D2)に跳ね飛ばすことができる。曲面部17は肉厚に形成されており、回転軸30との接合が大きいブロック形状をなしているため強度の面で優れている。回転翼15の叩打面16aで回転軸30の軸芯方向D1へ向かって叩打された摩擦用混合物と水は、凸面17aにより周方向D2へ向かつて跳ね上げられる。この繰り返しによって、摩擦用混合物と水は、叩打面16aと凸面17aとの間を行き来することとなり、この空間に閉じ込められたようになり、粉砕及び発熱を高効率に行える。このように、摩擦用混合物と水が回転軸30に絡まるのを効果的に防止できる。
【0022】
半割れ状の回転翼15aも同様に、摩擦用混合物と水を叩打するように軸心方向に傾斜された叩打面を有しており、混合室11内部に向かって傾斜させた形状となっている。回転翼15a及ぴ棒状回転翼19は、摩擦用混合物と水を叩打すると共に、粉体が蒸気取出部20へ流出するのを防いでいる。
図6に示すように、回転翼15は、回転軸30を挟んで対向する方向(つまり、ほぼ180°離れた方向)に配置されている。こうして、回転翼15による叩打間隔が長くなることで、摩擦用混合物と水の混合室11における滞空時間が長くなり、水分が蒸発する時間が長く取れるようになっている。
【0023】
蒸気取出部20は混合室11の一方側に隣接されており、蒸気取出室21と、蒸気取出室21の内部を貫通する回転軸30と、回転軸30から径方向外側に設けられたスクリュー25と、蒸気取出室21に開口された蒸気取出口21aとを備えている。スクリュー25は、回転軸30の回転によって、内部の物質を混合室11の方向に移動させるように設定されている。蒸気取出部20では、回転軸30の回転に伴うスクリュー25の回転によって、粉体が混合室11から流出するのを防ぐことができる。
蒸気取出口21aは、図1に示すように、第二バルブ102及び第一圧力計111と接続されると共に、液体回収器70と接続されている。第二バルブ102は、大気開放可能とされている。また、第一圧力計111は、蒸気取出部20の内圧を計測できる。
【0024】
蒸気取出室21の外壁中央には、挿通口21bが設けられており、この挿通口21bには回転軸30が回転可能に挿通されている。挿通口21bの外方には、回転軸30の外周部分を密閉する密封部27が設けられている。密封部27には、密封材27bと、この密封材27bを固定する固定具27aが設けられている。こうして、密封部27により、回転軸30と挿通口21bとの間から蒸気が漏出されることを防止する。
混合室11において、蒸気取出部20とは逆の他方側には、材料供給部40が設けられている。材料供給部40には、材料供給室41と、材料供給室41の内部を貫通する回転軸30と、回転軸30から径方向外側に設けられたスクリュー43と、材料供給室41に開口された材料供給口41aとを備えている。スクリュー43は、回転軸30の回転によって、投入された摩擦用混合物と水を混合室11の方向に移動させるように設定されている。このように、蒸気取出部20と材料供給部40とは、摩擦混合部10を挟んで対称的な構造となっている。図2に示すように、二つのスクリュー25,43は、螺旋状の羽根が左右対称に設けられており、同軸上に備えられているので、回転軸30が一定方向へ回転することによって、スタリュー25が混合室11からの粉体の流出を防ぐと同時に、スクリュー43が摩擦用混合物と水を混合室11に供給する。
【0025】
両スクリュー25,43は、同ピッチとしても良いし、異なるピッチとすることもできる。回転軸30の回転数に応じて、スクリュー25の粉体流出防止作用と、スクリュー43の材料供給作用とのバランスを適当に設定できる。
材料供給部40の材料供給口41aの上方には、材料投入容器28が接続されている。材料供給部40と材料投入容器28との間には、第一バルブ101が設けられている。
材料供給口41aから投入された摩擦用混合物と水が材料供給室41を満たしており、スクリュー43の回転によって摩擦用混合物と水を混合室11へ押し込んでいくことにより、材料供給・粉砕・濃縮という一連の流れが連続して行われる。また、摩擦用混合物と水で材料供給室41が常に満たされているため、混合室11への空気流入が防止され、ほぽ無酸素状態で混合室11における粉砕が行われる。
【0026】
摩擦混合部10と減圧ポンプ60との間には、三個のバルブ103,104,105が設けられている。また、摩擦混合部10と減圧ポンプ60との間には、粉体回収容器61が備えられている。粉体回収容器61は、第四バルブ104と第五バルブ105との間に接続されている。両バルブ104,105と粉体回収容器61との間には第二圧力計112が設けられている。第二圧力計112は、粉体回収容器61の内圧を計測できる。粉体回収容器61と後述する送風機62とは第六バルブ106を介して接続されている。
粉体回収容器61の内部には集塵フィルタ61aが設けられており、蒸気取出室21から回収されてきた粉体が回収される。集塵フィルタ61aを交換する際には、第六バルブ106を開いて送風機62からの乾燥空気を利用して粉体回収容器61の蓋を開くことができる。送風機62は、大気を吸引して加熱除湿し乾燥空気を排出するドライエアーコンプレッサである。摩擦混合部10と送風機62との間には、第七バルブ107が設けられている。
なお、送風機62を設けない場合には、第六バルブ106を介して粉体回収容器61を大気開放可能としてもよい。この場合は、第六バルブ106を開放することで、粉体回収容器61の蓋を開くことができる。
【0027】
<第2の濃縮装置システム>
次に、図7を参照しつつ、第2の濃縮装置システム3について説明する。なお、第1の濃縮装置システム2と第2の濃縮装置システム3とにおいて、同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
この濃縮装置システム3では、液体回収器70からの熱を用いて、材料を予熱しておき、これを材料供給部40に投入することにより、エネルギーを効率的に用いることとしている。すなわち、液体回収器70は、濃縮装置1の蒸気取出部20と接続されており、蒸気取出部20から取り出された蒸気は、蒸気回収管95を通して液体回収器70の液体回収筒74に誘導される。蒸気回収管95の途中には、濃縮装置1からの蒸気を吸引し、液体回収器70に送る吸引ブロア96が設けられている。液体回収器70の内に導入された蒸気が冷却されて液化された後、バルブ90を開くことによって液体取出口73から液体を回収できる。バルブ90の下流側には、流量計181が設けられている。また、液体回収器70の外周には、熱吸収管76がコイル状に設けられている。熱吸収管76は、下方の導入口76aと上方の導出口76bに開放しており、導入口76aには汚水などの被容量減少物を導入するパイプ77が接続されている。
【0028】
パイプ77の途中には、被容量減少物を熱吸収管76および濃縮装置1に移送するポンプ78と、パイプ77を開閉するバルブ79が接続されている。導出口76bには、熱吸収管76を通って予熱された被容量減少物を濃縮装置1に移送するパイプ80が接続されている。パイプ80の途中には、流量計181とバルブ86とが接続されている。流量計181,181によって、混合室11への液体の流入量と、熱交換器70からの流出量とを管理することによって、混合室11内部の液体量を適当な範囲に維持できる。パイプ80の他端側は、材料供給室41の上方に設けられた材料供給口41bに接続されている。なお、ポンプ78は、パイプ77〜熱吸収管76〜パイプ80の途中のいずれかの位置に設けられていればよいので、パイプ80の途中において、導出口76bからの出口側に設けることもできる。
液体回収器70の上部には排気口75が設けられており、液体回収器70の内部が加圧状態となった場合に排気バルブ84を開くことにより圧力を開放できる。
【0029】
混合室11の上部には、圧力センサ82と温度センサ83が備えられている。圧力センサ82は、第一圧力計111と兼用することもできる。また、蒸気回収管95に設けられた排出バルブ85の直上には、蒸気温度センサ81が備えられている。
各センサ81,82,83、冷却ジャケット18(図7には示さず)、及びコントローラを連動させることで、混合室11内の温度・圧力及び回収蒸気の圧力・回収速度等を適宜コントロ―ルできる。即ち、温度センサ81を監視することで、蒸気の発生及び終了を検知できる。また、圧力センサ82及び温度センサ83により混合室11内の温度をコントロールでき、内部の摩擦用混合物の粉砕の程度及び液体成分の過度の加熱を防止できる。更に、圧力センサ82の監視と制御により、混合室11内への大気流入を防止できる。
また、濃縮装置1の下面側には、濃縮された被容量減少物を外方に取り出すための導出口97が設けられており、ここには排出バルブ98を備えたパイプ99が設けられている。パイプ99の他端側は、収納容器100が設けられている。
濃縮装置システム3の蒸気取出口には、第二バルブ102が備えられており、この第二バルブ102を開いて蒸気取出室21内部を清掃できる。
【0030】
次に、上記のように構成された濃縮装置システム3の動作について説明する。
まず、第一バルブ101を閉じた状態で(スクリュー43が回転していれば開けても良い)、材料投入容器28に摩擦用混合物を所定量(攪拌容積の10%〜80%、好ましくは30%〜60%)を入れる。このとき、濃縮装置1の排出バルブ98は閉じておく。回転翼15,15a,19を回転させて、第一バルブ101を開放し、材料投入容器28の摩擦用混合物を材料供給口41aから混合室11の内部へ導入する。摩擦用混合物の全てを濃縮装置1に導いた後、第一バルブ101を閉止し、排出バルブ85を開放し、材料供給口41bからの溶液導入を許容する。
【0031】
このとき、温度センサ83を読み取りながら、好適な温度領域80℃〜85℃となるようにバルブ86の開閉制御を行う。混合室11の内部温度が65℃以上かつ内部圧力が0.0Pa以上の状態のときに吸引ブロア96を起動させると同時に排出バルブ85を開放し、内部の蒸気を熱交換器70へと導き、蒸気を結露させて蒸留水とする。このとき溜まった蒸留水は、バルブ90の開放によって、外部に排出させる。
流量計181,181の読取り量に基づいて、混合室11への注入水と熱交換器70からの蒸留排水とを一定範囲に保持するように、排出流量を読み取り、注入量を決定する。
【0032】
濃縮作業の終了は、次の手順によって行われる。混合室11内の濃縮度が増すと、モータ50の回転動力の負荷電流が比例して増大する。電流値が通常操作時の5%〜60%増加したときに、濃縮作業が完了したと判断し、バルブ86を閉止して、液体回収器70側からの注水を止める。また、温度センサ82の温度が80℃〜100℃となったときに、排出バルブ98を開放し、混合室11内部のものを導出口97からパイプ99を通じて収納容器100に排出する。
その後、吸引ブロア96を停止し、排出バルブ85を閉止する。
【0033】
<第3の濃縮装置システム>
次に、図8を参照しつつ、第3の濃縮装置システム4について説明する。なお、第1の濃縮システム2〜第3の濃縮装置システム4において、同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
この濃縮装置システム4では、濃縮装置システム3と同様に、液体回収器120からの熱を用いて材料を予熱するが、その方式が異なっている。すなわち、濃縮装置システム4では、液体回収器120の内側に貯留空間123が設けられており、その貯留空間123の内部で被容量減少物を予熱する構成としてある。液体回収器120の外周には、熱交換管121がコイル状に回し付けられている。熱交換管121の上方は、蒸気回収管96からの蒸気を導入する導入口121aとされている。また、熱交換管121の下方は、冷却された液化した溶液を取り出す液体取出口73とされている。貯留空間123に被容量減少物を投入すると、熱交換管121に導入された蒸気の熱によって、被容量減少物を予熱できる。
【0034】
液体回収器120の下端側には、貯留空間123から連通する放出口130が設けられており、ここにはパイプ131が接続されている。パイプ131の他端側は、材料供給口41bに接続されている。排出バルブ85は、材料供給口41bの位置よりも高く設定することが好ましい。また、パイプ131の途中には、バルブ132が設けられている。
液体取出口73からは、バルブ90の開放によって、液化した蒸気が蒸留水として排出される。
本システム4においても、第2の濃縮システム3と同様の作用を奏することができる。
また、被容量減少物の粘度が高い場合または被容量減少物に混合物が存在するような場合には、第2の濃縮装置システム3では熱吸収管76(管体)内を被容量減少物が流れにくい事態が考えられるが、そのような場合にも被容量減少物を予熱できる。
【0035】
<実施例1>
摩擦用混合物として、2mm角程度のスギオガ粉12L(3kg)を使用した。また、被容量減少物として、醤油と食品残渣を混合したもの8L(8.5kg)を用いた。摩擦用混合物を混合室内へ投入し、回転速度1780rpmで回転翼を回転させながら、被容量減少物を2分間をかけて注入した。攪拌時の温度を80℃とし、4分間に渡って攪拌操作したところ、混合室内の温度が90℃に到達したので、混合室内の濃縮物を排出した。
上記濃縮操作時に熱交換器70から回収された蒸留水は透明であった。また、混合室内で濃縮された物は、スギオガ粉を摩擦用混合物として使用した為に少し匂いがあり、色は赤み掛かっていた。
<実施例2>
摩擦用混合物として、杉オガ粉18Lを使用した。被容量減少物として、海水8Lを用いた。杉オガ粉を混合室内へ投入し、回転速度1780rpmで回転翼を回転させながら、5分間をかけて容器内へ海水を注入した。撹拌時の温度を80℃に設定しておき、混合室内の温度が95℃に到達した後に内容物を排出した。回転操作時に排出された蒸気は、熱交換器で蒸留水として採取した。
その結果、杉オガ粉は乾燥しており、蒸留水は透明で塩分濃度は検出されなかった。
【0036】
<実施例3>
摩擦用混合物として、杉オガ粉18Lを使用した。被容量減少物として、食品工場排水8Lを用いた。杉オガ粉を混合室内へ投入し、回転速度1780rpmで回転翼を回転させながら、5分間をかけて容器内へ食品工場排水を注入した。撹拌時の温度を80℃に設定しておき、混合室内の温度が95℃に到達した後に内容物を排出した。回転操作時に排出された蒸気は、熱交換器で蒸留水として採取した。
その結果、杉オガ粉は乾燥しており、蒸留水は透明であった。
<実施例4>
摩擦用混合物として、桧葉18Lを用いた。被容量減少物として、水8Lを用いた。桧葉を混合室内へ投入し、回転速度1780rpmで回転翼を回転させながら、5分間をかけて容器内へ水を注入した。撹拌時の温度を80℃に設定しておき、混合室内の温度が83℃に到達した後に内容物を排出した。回転操作時に排出された蒸気は、熱交換器で蒸留水として採取した。
その結果、桧葉はゲル状となっていた。また、蒸留水は透明であった。
【0037】
<実施例5>
摩擦用混合物として、オカラ18Lを用いた。被容量減少物として、水8Lを用いた。オカラを混合室内へ投入し、回転速度1780rpmで回転翼を回転させながら、10分間をかけて容器内へ水を注入した。撹拌時の温度を80℃に設定しておき、混合室内の温度が90℃に到達した後に内容物を排出した。回転操作時に排出された蒸気は、熱交換器で蒸留水として採取した。
その結果、オカラはゲル状となっていた。また、蒸留水は透明であった。
<実施例6>
摩擦用混合物として、銀杏の葉18Lを用いた。被容量減少物として、水8Lを用いた。銀杏の葉を混合室内へ投入し、回転速度1780rpmで回転翼を回転させながら、15分間をかけて容器内へ水を注入した。撹拌時の温度を80℃に設定しておき、混合室内の温度が90℃に到達した後に内容物を排出した。回転操作時に排出された蒸気は、熱交換器で蒸留水として採取した。
その結果、銀杏の葉はゲル状となっていた。また、蒸留水は透明であった。
【0038】
<実施例7>
摩擦用混合物として、大豆10Lを用いた。被容量減少物として、水10Lを用いた。大豆を混合室内へ投入し、回転速度1780rpmで回転翼を回転させながら、10分間をかけて容器内へ水を注入した。撹拌時の温度を80℃に設定しておき、混合室内の温度が90℃に到達した後に内容物を排出した。回転操作時に排出された蒸気は、熱交換器で蒸留水として採取した。
その結果、大豆はゲル状となっていた。また、蒸留水は透明であった。
【符号の説明】
【0039】
1…濃縮装置
2,3,4…濃縮装置システム
10…摩擦混合部
11…混合室
15,15a,19…回転翼
20…蒸気取出部
24,43…スクリュー
30…回転軸
70,120…液体回収器
76…熱吸収管
95…蒸気回収管
123…貯留空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属を含む水に摩擦用混合物を添加し、前記摩擦用混合物を含む水を機械的に撹拌して熱を発生させ前記水を蒸発させることによって、前記金属と前記摩擦用混合物とを分離することを特徴とする濃縮方法。
【請求項2】
水分を含む被容量減少物に摩擦用混合物を添加し、前記摩擦用混合物を含む被容量減少物を機械的に撹拌して熱を発生させ前記水分を蒸発させることを特徴とする容量減少方法。
【請求項3】
前記摩擦用混合物は、有機系のものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の方法に用いられる装置であって、
前記摩擦用混合部と水分とを混合する摩擦混合部と、この摩擦混合部に隣接し蒸気を取り出す蒸気取出部とを備え、
前記摩擦混合部には、前記摩擦用混合物を混合すると共に内壁が円筒形の混合室と、この混合室内を貫通する回転軸と、この回転軸に設けられ前記混合室の内壁よりも僅かに小さな外径を備えた回転翼とが備えられ、
前記蒸気取出部には、蒸気取出室と、この蒸気取出室内を貫通する上記回転軸と、この回転軸に設けられ内部の混合物を前記摩擦混合部側に送る粉体流出防止用のスクリューと、前記蒸気取出室に開口された蒸気取出口とが備えられ、
前記混合室内に収容された摩擦用混合物と水を前記回転翼で混合および粉砕することで摩擦熱によって発熱させながら蒸気を発生させ、この蒸気を前記蒸気取出口から取り出すことを特徴とする装置。
【請求項5】
前記蒸気取出口には発生した蒸気を冷ますことによって蒸留水を回収する液体回収器が設けられていると共に、前記水分を含有する被容量減少物が前記摩擦混合部に投入される前に、前記液体回収器からの熱を受け取ることで予熱されることを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記液体回収器の外周を回る熱吸収管が設けられており、前記被容量減少物が前記熱吸収管の内部を通過することで予熱されることを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記液体回収器の内側に貯留空間を設けておき、前記被容量減少物が前記貯留空間内で予熱されることを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項8】
水分を含む被容量減少物を機械的に撹拌して熱を発生させ前記水分を蒸発させる容量減少装置であって、
前記被容量減少物を撹拌する摩擦混合部と、この摩擦混合部に隣接し蒸気を取り出す蒸気取出部とを備え、前記摩擦混合部には、前記被容量減少物を撹拌すると共に内壁が円筒形の混合室と、この混合室内を貫通する回転軸と、この回転軸に設けられ前記混合室の内壁よりも僅かに小さな外径を備えた回転翼とが備えられ、前記蒸気取出部には、蒸気取出室と、この蒸気取出室内を貫通する上記回転軸と、この回転軸に設けられ内部の被容量減少物を前記摩擦混合部側に送る粉体流出防止用のスクリューと、前記蒸気取出室に開口された蒸気取出口とが備えられ、前記混合室内に収容された被容量減少物を前記回転翼で撹拌することで摩擦熱によって発熱させながら蒸気を発生させ、この蒸気を前記蒸気取出口から取り出すことを特徴とする容量減少装置。
【請求項9】
前記蒸気取出口には発生した蒸気を冷ますことによって蒸留水を回収する液体回収器が設けられていると共に、前記水分を含有する被容量減少物が前記摩擦混合部に投入される前に、前記液体回収器からの熱を受け取ることで予熱されることを特徴とする請求項8に記載の容量減少装置。
【請求項10】
前記液体回収器の外周を回る熱吸収管が設けられており、前記被容量減少物が前記熱吸収管の内部を通過することで予熱されることを特徴とする請求項9に記載の容量減少装置。
【請求項11】
前記液体回収器の内側に貯留空間を設けておき、前記被容量減少物が前記貯留空間内で予熱されることを特徴とする請求項9に記載の容量減少装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−101868(P2011−101868A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−258456(P2009−258456)
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(304027349)国立大学法人豊橋技術科学大学 (391)
【出願人】(500019133)
【Fターム(参考)】