説明

液体を分配する装置及び方法

【課題】
【解決手段】この液体分配装置は、上昇する蒸気流れと相互作用するよう下降する液体の流れをトレーをわたって均一に分配する機能を果たす。該液体分配装置は、液体の流れを下方の細長いトラフ4に送り出す供給管6を有している。液体排出穴18がトラフ4の床14に配置されている。有孔のv字形板20はトラフ4内に配置され、このため、供給管6からの液体は、トラフ4の床12に遭遇する前に、有孔のv字形板20を通過する。液体が有孔のv字形板20を通るとき、その流れは、低速度のより小さい流れに分割され、トラフ4を通って流れる液体のより均一な全体的な流量を提供する。次に、液体は、トラフ4をわたる実質的に均一な流量にて、トラフの排出出口18からトレー35の上面に送り出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体として、通常、物質移動カラム内にて使用される液体分配装置、及び該液体分配装置を使用して液体を分配する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
供給原材料成分の物質又は熱移動、分画又は分離及びその他の装置の作用の目的のため、気体及び液体が互いに接触する色々な型式の交換カラムが当該技術にて知られている。かかる交換カラム内での蒸気及び液体の向流の流れは、確立した蒸気−液体の接触方法となっている。実際の蒸気−液体の境界面は、カラム内にて蒸留トレー又は充填床を使用することを必要とする。液体は、トレー又は充填床の上方にて分配される一方、蒸気は、トレー又は充填床の下方にて分配される。トレーに降下し又は充填床を通って下方に滴下する液体は、蒸気−液体接触及び相互作用のため上方に上昇する蒸気に曝される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
カラムの内部の構成は、プロセス搭内にて生ずる蒸気−液体の境界面及び物質及びエネルギの同時的な移動の効率を決定する。均質な混合領域を形成する蒸留トレー又は充填床の対向し側部における蒸気及び液体を効果的に且つ均一に分配することは、効果的な作動にとっても極めて重要である。不均一な液体の分配は、上昇する蒸気流れと下降する液体流れとの間の接触及び物質移動を不良にする可能性がある。効率は作動コスト及び製造品質に直ちに変換されるから、今日、多くの設計のものが存在する。しかし、カラムの効率は、カラムの内部をわたる蒸気及び液体の分配効率によって制限される。例えば、蒸気又は液体の何れかが蒸留トレー又は充填床の一部分上にて均一に分配されなかった場合、その部分は、その完全な潜在能力まで使用されず、このため、作動効率及びコスト効果を低下させることになる。このため、トレー及び充填床自体を別にして、液体分配装置は、タワー内部の最も重要な装置である。タワーの性能の不良は、詰まり又は不均一な分配のような、液体の分配上の問題が原因となる場合がある。
【0004】
充填床を使用するとき、蒸気と液体との不均質な小さい相互作用領域を通して効率を損失する可能性がある。多くの高効率の充填設計は、シートの対向した波状部により画成された通路を通して蒸気−液体の向流の流れを必要とする。液体又は気体の当初の分配が特定の波形のパターンに入ることができない場合、液体及び蒸気が付勢され、満たされていない充填領域に移行し且つこの充填領域を通って相互作用する迄、充填装置内の貴重な表面積が損失する。その結果、効率は不良となる。充填領域をわたる液体の分配を良くすれば、この問題点は軽減され、また、充填領域をわたって液体を一層良く分配するためには、充填床分配装置に供給する分割ボックスの液体の均一な分配を向上させることが望ましい。カラムに入る液体が分割ボックスの各部分をわたってより均一に分配される場合、分割ボックスの各部分は、液体供給材を充填床分配装置により均一に送り出すことができる。本発明の新規な液体分配装置は、正確な量の液体を均一な分配状態にて充填床分配装置に供給する分割ボックスとして機能することができる。
【0005】
噴霧オリフィス、パイプ、有孔板、開口付きトラフ及びノズルのような、多くの先行技術の装置は、全体として、幾分かの蒸気及び幾分かの液体をトレー又は充填床分配装置の殆んどの部分に分配するのに効果的ではあるが、より精緻な分配装置を使用しなければ、通常、均一に分配することは実現できない。例えば、液体を単にトレーの頂部に噴霧する結果、トレーの特定の部分にて液体の流れは高濃度となり、その他の部分にて低濃度となることが多い。オリフィス分配装置は、全体として、詰まり易く、タワー内にて不均一な灌注となる。同様に、製造中に生ずる分配装置のパンの表面の凹凸は、幾つかの孔にて流れ抵抗を増大させ、又は、パンの底部に沿って液体の流れを誘発させ、このことは、明らかに不利なことである。全体として、その他の領域内の流れを減少させつつ、流れを1つの領域内にて収束させるいかなる流れの不規則性も作動効率にとって有害である。
【0006】
液体を等しく且つ均一にトレーに分配するアセンブリを提供することが望ましい。従来の設計の例は、米国特許第6,722,639号明細書及び米国特許第4,729,857号明細書を含む。米国特許第4,729,857号明細書は、液体を外方に噴出すべく形成された穴を有する下方にテーパーを付けた本体部分が形成された複数のトラフを有する、液体の流れ分配装置を教示する。そらせ板がトラフの下方にテーパーを付けた本体部分の外方に配設されて、液体の吐出分を受け取り且つその液体の流れを下方に均一に分配する。米国特許第6,722,639号明細書には、離間分離され且つ、カラムをわたって伸びる複数の細長いトラフを含む液体分配装置が教示されている。複数の液体排出穴が、トラフの側壁に配置され且つ、トラフの床の上方にて離間分離されることが好ましい1つ以上の予め選んだ平面内に配置されている。撥ねそらせ板は、トラフの側壁から外方に離間分離されており、また、排出穴を通ってトラフから出る液体を受け入れるよう配置された上側部分を含む。撥ねそらせ板の下側部分は、トラフの下方の平面内にて狭小な排出出口を形成し、液体を撥ねそらせ板から下方に位置する物質移動床に送り出す。撥ねそらせ板は、垂直方向に調節可能であり、物質移動床の上面にて支持し、排出された液体が物質移動床に直接、送り出され、これにより落下する液体が物質移動床を通って上方に流れる蒸気の流れ内に取り込まれる機会を少なくすることを目的とする。
【0007】
本発明は、特に、流れ管内の液体の速度が高速である状況にて、当該技術のものよりもより効率的である新規な液体分配アセンブリを提供する。この高効率の分配装置において、流れの等分配装置を通して液体の均一な流れが維持される。装置は、パターン化した開口を有するトラフと、トラフ内に配置された有孔のv字形板と、トラフの上方に配設された流れ管とを保持している。1つの好ましい実施の形態は、有孔のv字形板内に配置された分割器を更に有している。該装置は、蒸留トレーに対し液体を均一に分配するため使用することができる。幾つかの用途において、装置又は多数の装置セットは、充填した床分配装置に対し液体を均一に分配するための分割ボックスとして使用することができる。
【0008】
流れ管は、通常、特定のパターンにて配置された、排出開口を有する開放トラフに対し多相液体を送り出す。幾つかの実施の形態において、多数の流れ管は、液体を開放トラフの回路網に送り出すことができる。トラフは、物質移動カラム内にて一般に使用され、液体を上方の領域から受け取り且つ、その液体を均一にその下方のトレーに再分配する。しかし、流れ管が開放トラフ内に直接、排出する場合、液体は、不均一な流量にてトラフの開口から排出されるであろう。流れ管からの排出口と直接、整合したこれらの開口は、より高流量の液体を経験し、また、流れ管の排出口と整合していない開口は、より低流量の液体を経験する。本発明のv字形板がトラフ内に収納された状態にて、流れ管から排出する液体の流量は、分裂され且つ変更されて、v字形板の孔を通ってトラフ内に流れる液体はより均一となる。液体の流量の均一性は、有孔のv字形板に分割器が設けられる実施の形態において、更に向上する。1つの代替的な実施の形態において、多数のトラフは、液体を充填した床分配装置に均一に再分配する分割ボックスとして作用する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
1つの実施の形態において、本発明は、カラム内の開放した内部領域内に配置された1つ以上の蒸留トレーを有する物質移動カラム内にて使用される液体分配装置に関する。液体分配装置は、下降する液体の流れをトレーをわたって均一に分配し上昇する蒸気の流れと相互作用するようにする機能を果たす。液体分配装置は、カラムをわたって伸びる少なくとも1つの下方に位置する細長いトラフまで液体の流れを送り出す少なくとも1つの選択的な供給管を有している。トラフは、床によって相互に接続される離間分離した第一及び第二の側壁を有している。複数の液体排出穴が少なくとも床に配置されている。液体分配装置は、トラフ内に配置された有孔のv字形板を更に含み、このため、供給管からの液体は、トラフの床に遭遇する前に、有孔のv字形板を通過する。板は、「v」字形の形をしていることが好ましいが、W字形のような、v字形の多数のものとすることが考えられる。液体が有孔のv字形板を通るとき、その流れは、低速度のより小さい流れに分割され、トラフを通って流れるより均一な全体的な流量を提供する。次に、液体は、トラフをわたる実質的に均一な流量にて、トラフの排出出口から直接、トレーの上面に送り出される。
【0010】
1つの実施の形態において、液体分配装置は、板の長さに対して垂直に配置された中実な垂直分割器を更に保持しており、これらの分割器は、板の幅を跨ぎ且つ、v字形板により画成された容積内にて伸びている。分割器は、v字形板の長さに沿った領域を画成し且つ、領域の間にて液体の水平方向流れに対して少なくとも部分的なバリアを提供する。分割器は、v字形板内の液体レベルが特定のレベルに達したとき、液体が領域の間を流れるための径路を提供する領域的なオーバーフロー通路を選択的に許容する。更に別の実施の形態において、v字形板は、支え支持体によりトラフ内にて支持されている。
【0011】
本発明の別の実施の形態において、液体分配装置は、充填した床分配装置と、カラム内にて開放した内部領域内に配置された1つ以上の充填した床とを有する物質移動カラム内にて使用される。液体分配装置は、下降する液体の流れを充填した床分配装置をわたって均一に分配する分割ボックスとして機能する。この実施の形態において、複数のトラフ内に存在するトラフは、平行な関係にてカラムをわたって伸びており、トラフは、蒸気が隣接するトラフの間の間隔を通って上方に流れるのを許容するように離間分離されている。トラフからの液体は、トラフの下方にてカラム内に配置された充填した床分配装置に均一に分配される。
【0012】
本明細書の一部を形成し且つ、本明細書と共に読むべき添付図面において、同様の部品を表示するため色々な図にて同様の参照番号が使用されている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】トラフの床にて開口パターンを有するトラフを示す頂面図である。
【図2】流れ管と、v字形板と、分割器と、トラフとを含む、液体分配装置アセンブリの1つの実施の形態を示す、頂面図である。
【図3】蒸留トレー又は充填床分配装置の上方に配置されたカラム内の液体分配装置アセンブリを示す側面図である。
【図4】液体分配装置アセンブリの流れ管を支持するブラケットを示す端面図である。
【図5】流れ管と、v字形板と、分割器と、トラフとを含む液体分配装置アセンブリを示す端面図である。
【図6】液体分配装置アセンブリの有孔v字形板の拡大部分斜視図である。
【図7】液体分配装置アセンブリの分割器を示す端面図である。
【図8】v字形板が多数のv字形を有し、w字形となる、流体分割装置アセンブリの有孔v字形板を示す拡大部分斜視図である。
【図9a】トラフ及びv字形板の1つの実施の形態を示す断面端面図である。
【図9b】トラフ及びv字形板の別の実施の形態を示す断面端面図である。
【図10】液体分配装置アセンブリを示す断面側面図である。
【図11】液体分配装置アセンブリを示す断面端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
物質移動又は熱交換カラムは、本発明の1つ以上の液体分配装置及び1つ以上の蒸留トレーが配置される、開放した内部領域を画成する直立の円筒状シェルを含む。液体分配装置は、蒸留トレーの水平方向断面をわたって1つ以上の下降する液体の流れをより均一に分配するため使用される一方、蒸留トレーは、下降する液体の流れと1つ以上の上昇する蒸気の流れとの間の接触を促進する。幾つかのカラムは、トレーに代えて、1つ以上の物質移動床を採用する。物質移動床は、構造体とした、格子又はランダム充填として従来から知られたものにのみ限定されない、色々な既知の型式の物質移動装置を備えている。液体は、充填した床分配装置を使用して床に分配され、この充填した床分配装置には、通常、充填した床の分割ボックスから供給される。新規な液体分配装置は、より従来型式の充填した床の分離ボックスに代えて使用し、液体を充填した床分配装置により均一に分配することができる。
【0015】
カラムは、分画生成物を得ることを含んで、液体及び蒸気の流れを処理するため使用される型式のものである。カラムは、円筒状の形状又は多角形を含むその他の形状とすることができる。カラムは、任意の適宜な直径及び高さのものであり、また、カラム内に存在する流体及び状態に対して不活性であるすなわち別言すれば適合可能であることが好ましい、適宜に剛性な材料にて製造される。
【0016】
液体の流れは、カラムの高さに沿った適宜な位置に配置された供給管を通してカラムに向けられる。供給管は、通常、液体のみを運ぶが、液体と共に、又は液体に代えて、蒸気を運ぶこともできる。カラムは、蒸気生成物又は副産物を除去する少なくとも1つの頭上管と、液体生成物又は副産物をカラムから除去する底部の流れ排出管とを含んでいる。還流流れ管、リボイラー、凝縮器、蒸気ホーン及び同様のもののような、その他のカラムの構成要素も存在するものとすることができる。
【0017】
次に、図1、図2、図3及び図5を参照すると、液体分配装置2は、流れ管6内にて伝導された液体流れから液体を受け取る細長いトラフ4を含むことが好ましい。流れ管6は、液体を排出するため一連の出口穴24を有している。流れ管6は、トラフ4の上方に配置されて重力による液体の導入を助けることを許容する。流れ管6は、通常、5から91cm(2から36インチ)の範囲の直径を有するが、より大きい直径も適している。出口穴24の合計面積は、通常、流れ管6の断面積の50%以下である。流れ管6は、直線状、「T」字形の形状、及び「H」字形の形状のような、色々な形状のものとすることができ、又は、側支管を有する主排気マニホルドを備えることができる。
【0018】
トラフ4は、第一の方向に向けて水平に伸び且つ、カラムの直径又はその少なくとも実質的な一部分に相応する長さであることが好ましい。トラフ4は、床12により接続された対向した側壁8、10と、端部壁14、16とを有している。液体を少なくとも1つの蒸留トレーに送り出すため、複数の排出穴18が床12に設けられている。カラム3において、トラフは、通常、長手方向に伸びるカラム3の中心を通って配置される。トラフは、カラムを完全に又は実質的に横断して伸び、また、その端部にて、シェルの内面に溶接された上方リングのような手段により支持されることが好ましい。トラフの上方に配置された中間に位置するビームを使用し、トラフを流れ管に装着することにより、及び分配装置の支持格子を使用することによるような、その他の支持手段を使用することができる。トラフの寸法及び特定の構成は、所期の用途の特定の液体及び蒸気負荷の条件に適合するよう変更することができる。
【0019】
トラフ4は、床12に配置された複数の離間分離した液体排出穴18を含む。排出穴18は、特定のカラム及び蒸留トレーに合うよう特別に形成された予め選んだパターンにて配置されることが好ましい。排出穴18のパターンはトラフ4の長さに沿って伸びている。排出穴18は、通常、円形であり、同一の寸法であるが、その他の形状及び異なる寸法のものとすることができる。液体は、排出穴18を通って流れ、また、同様に、カラム3内に収納された蒸留トレー又は充填した床分配装置35まで下降する(蒸留トレー又は充填した分配装置の詳細は、図示していない)。
【0020】
液体分配装置2のトラフ4は、トラフの長さに沿って伸びる有孔のv字形板20を収容する。V字形板20は、液体中の乱流又はモーメントを少なくし又は解消すると同時に、蒸気を排気することを許容する。排出穴18と同様に、v字形板20の孔部分22は、通常、円形であり且つ、同一寸法であるが、その他の形状及び異なる寸法とすることができる。孔は、分割機能を実現するが、これと同時に、液体をv字形板内にて不当に止め且つ蓄積させないようにするのに十分な寸法をしている。孔22は、任意のパターンにて配置することができるが、v字形板20の完全な面の上方を伸びる均一なパターンにて離間分離されることが好ましい。本発明の1つの実施の形態において、孔22は、液体がv字形板20を通って流れるための開放領域として、v字形板の表面積の40%を提供する。V字形板20は、トラフ4により形成された容積内に伸びるが、トラフ4の床12に接触する程には伸びない。v字形板20の基部は、トラフ4内の液体ヘッドに隣接するが、そのヘッドよりも上方にならないようにすることが好ましい。1つの実施の形態において、v字形板の基部、すなわちv字形板の下方箇所は、トラフの床から15.24センチ(6インチ)である。勿論、この寸法は、設計に依存して変更することができる。
【0021】
1つの実施の形態において、v字形板は、側壁8から側壁10まで伸びるトラフ4の幅を跨ぐ。図5参照。別の実施の形態において、v字形板は、トラフ4内にて支持されているが、側壁8から側壁10までは伸びない。それに代えて、支え材30は、v字形板をトラフ4の容積内にて支持するため使用される。図9a及び図9bには、本発明の2つの異なる実施の形態の比較拡大図が示されている。図9aには、側壁8から側壁10まで伸びるv字形板20が示されている。図9bには、これに反して、側壁8から側壁10まで伸びる支え材30により支持されたv字形板20が示されている。設計の各々は、トラフを通して適正に排気することを許容する。図9aにおいて、側壁8、10の頂部に隣接するv字形板20の孔22は、蒸気が矢印32で示したv字形板を通って流れるのを許容する。v字形板22の基部に隣接するv字形板20の孔22は、液体が矢印34で示したようにv字形板を通って流れるのを許容する。図9bにおいて、支え材30は、蒸気を矢印32で示したトラフを通って排出することを可能にする。v字形板20の孔22は、液体が矢印34で示したv字形板を通って流れるのを許容する。
【0022】
必ずしも必要とされるものではないが、v字形板のv字形の基部が流れ管6の出口穴24と整合する位置に配置されたとき、最大効率が実現される。有孔のv字形板がw形状のような、v字形の多数を保持することは本発明の範囲に属する。図8参照。流れ管6が2列の出口穴を有するような状況にてw字形の形状は有益である。該板は、w字形を構成する第一のv字形の基部が流れ管の第1列の出口穴と整合し、また、w字形を構成する第二のv字形の基部が流れ管の第二の列の出口穴と整合するように、配置されよう。
【0023】
流体の流れが出口穴を通って流れ管から出るとき、その流れは、出口穴の下方の局部領域内にて主として垂直方向下方に流れる。その流れがトラフの床まで中断せずに続くならば、トラフの異なる排出穴を通る流体の量及び流体の速度は、排出穴の位置に依存して異なるものとなろう。例えば、流れ管の出口穴と垂直に整合した排出穴は、流れ管の出口穴と整合されていない排出穴よりも高速度で且つより多量の液体を提供するであろう。更に、流れ管を出て且つトラフの床を打撃する液体によって顕著な乱流が発生する。この乱流は、トラフの排出穴を通る液体を更に分裂させる。本発明は、v字形板を採用することにより、トラフの床の前方にて流体管の出口穴からの液体の流れを中断させる。v字形板は、流れ管から出る流体の流れの各々をトラフの床の上方にて均一に拡がる多数の小さい流れに分割する作用を果たす。更に、流体管からの流体の大きい流れを多くのより小さい流れに分割する作用の結果、液体の速度は低下し、また、トラフの床まで下降する多くの小さい流れの速度を等しくする。流体管からの流体の大きい流れを多くの小さい流れに分割することは、トラフの床における液体の乱流を著しく少なくする作用も果たす。その全体的な結果は、液体がトラフの床までより均一に且つより小さい乱流状態にて分配される一方、このことは、その他の液体分配装置の設計と比較して液体を床の排出穴を通してより均一に分配することを許容することになる。
【0024】
流れ管内の液体の構成及び速度に依存して、流れ管の出口穴から排出された液体の流れは、水平方向成分と、予想される垂直方向成分とを含むであろう。このため、流れは、流れ管からの出口穴と整合された垂直平面から離れるような角度にて外方に噴霧されるであろう。流れ管の出口穴からの液体流れの水平方向成分は、点検されないままであるとき、v字形板の異なる孔を通って流れる液体が異なる方向の流れモーメントを有し且つ、液体ヘッドの不均衡を形成することになろう。v字形板により形成された小さい流れは、液体を均一に分配することができず、また、異なる流れのモーメントの水平方向成分に依存して、トラフの部分内に多量に集中させるであろう。
【0025】
この問題点に対処するため、本発明の1つの実施の形態は、v字形板20により形成された容積内にて水平に収容された分割器34を採用する。分割器は、好ましくは、流れ管の出口穴の間にてv字形板の長さに沿って均一に離間分離されるものとする。分割器34は、v字形板の基部にて且つ、少なくとも部分的にv字形板の側部までv字形板と接触し、v字形板20の容積内に領域36を形成する。分割器34は、トラフの頂部に到達し且つ、図3に示したように、v字形板20及びトラフ4を越えて垂直に、流れ管6とv字形板20との間の空間内に伸びることができるようにするのに十分な高さを有する。分割器34とv字形板20との接触は、液体が分割器34とv字形板との間を流れず、また、少なくともv字形板34の基部付近まで、領域から領域へと流れないようなものである。分割器は、v字形板20(図5)により形成された容積の形状に順応するよう三角形の形状とすることができ、又は、分割器34は、領域的なオーバーフロー通路38(図11)を画成するようにするため五角形の多角形の形状とすることができる。領域的なオーバーフロー通路38は、液体が領域から領域へと流れるが、1つの領域内の液体ヘッドが領域的なオーバーフロー通路38のレベルまで異常に高く上昇しない状態においてのみ、その流れを許容する。このことは、不調、塵埃がv字形板の孔に詰まること及び同様のような状態にてトラフのオーバーフローを防止することになる。液体のレベルが領域的なオーバーフロー通路38よりも下方に止まる限り、領域36の間の液体の流れは分割器34によりブロックされる。流れ管6から出る液体がモーメントの水平方向−成分を有するとき、液体は、分割器34に衝撃を加え、分割器34の表面に沿って排出され、また、特定の領域36内に保持されるであろう。モーメントの水平方向成分は分裂され、このため孔22を通ってより均一な液体の分配状態が実現される。
【実施例】
【0026】
本発明の効果を実証するため、比較研究を行なった。3つの異なる装置を比較した。第一の装置は、v字形板を含まないものとした。それに代えて、水平方向の平坦な有孔板をトラフの内部に設置し、流れ管の出口穴からトラフの床の排出穴までの液体の流れを分裂させるようにした。同様の装置は、米国特許第5,209,875号明細書及び米国特許第5,573,714号明細書に記載されている。次の装置は、本発明のv字形板を含むものとした。最後の装置は、新規なv字形板を有し、また、流れ管の出口穴の間の位置にてv字形板の容積内にて垂直に配置された分割器を更に有するものとした。装置の各々は、同一の液体で同一の状態にて作動させた。3つの異なる液体ヘッドの深さ及びトラフの床における3つの異なる排出穴のパターンにて装置の各々の性能を9回分析した。3つの異なる排出穴のパターンをパターンA、B、Cとして標識する。実験の各々にて、トラフの床の排出穴から出る液体の流量を測定し、また、%(最大/最小)−1分配の計算を行なった。%分配が小さければ小さい程、液体の分配状態はより均一となる。採取したデータは表に掲げてある。
【0027】
【表1】

【0028】
データが示すように、v字形板及び分割器を有するv字形板は、別の液体分配装置と比較して優れた性能を示した。1つの実験を除く、全ての実験にて、v字形板を有する液体分配装置は共に、v字形板無しの液体分配装置よりもより均一な流量を有することが分った。多くの場合、その改良の程度は劇的である。この例は、特定の用途にて、v字形板又は分割器を有するv字形板を利用することは、液体の分配状態の均一さを向上させることができることを実証する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体分配装置において、
a)複数の液体排出穴(18)を有する床(12)により相互に接続された離間分離した第一の側壁(8)と、第二の側壁(10)とを有する少なくとも1つの細長いトラフ(4)と、
b)複数の孔(22)を有して、前記トラフ(4)の前記第一の側壁(8)と前記第二の側壁(10)との間に配置された少なくとも1つの細長いv字形板(20)とを備える、液体分配装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体分配装置において、出口穴(24)を有する流れ管(6)を更に備え、前記出口穴(24)が前記トラフ(4)と整合した状態にて、前記流れ管(6)は前記トラフ(4)の上方に位置される、液体分配装置。
【請求項3】
請求項1に記載の液体分配装置において、前記v字形板(20)は、ある容積を画成し、前記v字形板(20)により画成された前記容積内にて垂直に配置された複数の分割器(34)を更に備え、該分割器(34)は領域的なオーバーフロー通路(38)を画成する、液体分配装置。
【請求項4】
請求項3に記載の液体分配装置において、出口穴(24)を有する流れ管(6)を更に備え、前記出口穴(24)が前記トラフ(4)と整合した状態にて、前記流れ管(6)は前記トラフ(4)の上方に位置され、前記分割器(34)は、前記流れ管(6)の前記出口穴(24)の位置の間に配置される、液体分配装置。
【請求項5】
請求項1に記載の液体分配装置において、前記トラフ(4)の前記床(12)の液体排出穴(18)に隣接する少なくとも1つの物質移動床(35)を更に備える、液体分配装置。
【請求項6】
液体を分配する方法において、
a)液体を流れ管を通して伝導する工程と、
b)前記流れ管からの液体を前記流れ管の一連の出口穴を通して排出する工程と、
c)前記排出された液体をv字形板の孔を通して床によって相互に接続された離間分離した第一の側壁及び第二の側壁を有する細長いトラフ内に進める工程とを備え、前記床は複数の液体を排出する穴を有し、前記v字形板は前記第一の側壁と前記第二の側壁との間に配置され、
d)前記液体を前記トラフの前記床の前記液体排出穴を通して進める工程を備える、液体を分配する方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法において、前記トラフの前記床の前記液体排出穴からの前記液体に対し少なくとも1つの蒸留トレー又は1つの充填床を分配装置が接触する工程を更に備える、方法。
【請求項8】
請求項6に記載の方法において、前記流れ管から排出された前記液体を前記v字形板の領域内に案内する工程と、前記液体の流れの少なくとも一部分を領域の間にて制限する工程とを更に備え、前記領域は、前記v字形板により画成された容積内にて垂直に配置され且つ、前記流れ管の前記出口の間にて離間分離された分割器により画成される、方法。
【請求項9】
請求項6に記載の方法において、前記液体は、前記トラフの前記床の前記液体排出穴を通って進んだ後、実質的に水平方向モーメント成分が無く且つ、乱流が実質的に存在しない、方法。
【請求項10】
請求項6に記載の方法において、蒸気を前記v字形板を通して排気する工程を更に備える、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9a】
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【図9b】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2010−502422(P2010−502422A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−526797(P2009−526797)
【出願日】平成19年8月14日(2007.8.14)
【国際出願番号】PCT/US2007/075858
【国際公開番号】WO2008/027718
【国際公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(598055242)ユーオーピー エルエルシー (182)
【Fターム(参考)】