説明

液体クロマトグラフ用ポンプ、および液体クロマトグラフ

【課題】吐出流量を変えても脈動を低減することが可能な液体クロマトグラフ用ポンプ、および液体クロマトグラフを提供する。
【解決手段】ポンプコントローラは、直列または並列に接続された第一のプランジャポンプと第二のプランジャポンプを略一定の周期で交互に吸入,圧縮動作を行わせ、少なくとも1つのプランジャポンプの加圧室は他よりも高圧状態にさせ、第一のプランジャと第二のプランジャのリフト量を調整して流量制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体クロマトグラフ用ポンプ、および液体クロマトグラフに係わる。
【背景技術】
【0002】
従来の液体クロマトグラフに用いられるポンプには、2台のプランジャポンプが直列、または並列に接続され、その第1プランジャポンプ及び第2プランジャポンプが協調動作して脈動を低減する構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。例えば、特許文献1に記載された構成では、第1プランジャポンプと第2プランジャポンプが直列に接続され、プランジャの往復動がカムで駆動される構成において、ポンプ動作のフェーズ1では、下流側ポンプ1aが吸入動作を行い(吐出流量0)、上流側ポンプ1bが流量Qで吐出し、合計の吐出量はQとなる。フェーズ2では、両ポンプとも流量Q/2で吐出し、合計吐出量はQとなる。フェーズ3では、上流側ポンプ1bが流量3Q/2で吸入動作を行い、下流側ポンプ1aが流量3Q/2+Qで吐出動作を行い、合計吐出量はQとなる。このようにして、各ポンプの吸入動作に関係なく、常に合計流量Qになるように安定して送液することで、脈動を低減するようにしている。
【0003】
また、プランジャの位置を検出するセンサと流量センサの検出値から、プランジャを駆動するモータの回転数を制御して、脈動の発生を抑制する技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載された発明では、ポンプの加工精度,組み立て精度,制御の精度について考慮されていない。例えば、プランジャポンプを駆動するカム機構のバックラッシや寸法上のガタ,製作精度,速度切替え時の振動等によって、少なからずとも周期的な脈動が発生する。このようにして発生した脈動は、液体クロマトグラフの分離カラムを通過する溶媒流量や溶媒の混合比率に変動を生じさせ、クロマトグラム上に表される検出結果の精度の低下を招く。そのため、実際の装置の構成を考慮して液体クロマトグラフ用ポンプの圧力脈動を小さく抑える技術が望まれている。
【0005】
液体クロマトグラフのポンプで発生した脈動を、分離カラムへ持ち込まないために、ミキサーや脈動吸収ダンパーを配管に設ける技術も知られている(例えば、特許文献3参照)。しかし、これらの装置は、特定周期の脈動の減衰には効果があるが、本願発明の対象である液体クロマトグラフ用ポンプは、駆動周期を変化させて吐出流量を制御するため、全ての周期の脈動を低減させることは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−180617号公報
【特許文献2】特開2007−113439号公報
【特許文献3】特開2008−264640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、吐出流量を変えても脈動を低減することが可能な液体クロマトグラフ用ポンプ、および液体クロマトグラフを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の実施態様は、直列または並列に接続された第一のプランジャポンプと第二のプランジャポンプと、ポンプコントローラとを備え、該ポンプコントローラは、直列または並列に接続された第一のプランジャポンプと第二のプランジャポンプを略一定の周期で交互に吸入,圧縮動作を行わせ、少なくとも1つのプランジャポンプの加圧室は他よりも高圧状態にさせ、第一のプランジャと第二のプランジャのリフト量を調整して流量制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、吐出流量を変えても脈動を低減することが可能な液体クロマトグラフ用ポンプ、および液体クロマトグラフを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】液体クロマトグラフの構成を示す構成図である。
【図2】各プランジャの変位,圧力,流量の時間変化を示すグラフである。
【図3】各プランジャの変位と速度の時間変化を示すグラフである。
【図4】第一のプランジャの変位の時間変化を示すグラフである。
【図5】各プランジャの変位と第一のポンプの圧力の時間変化を示すグラフである。
【図6】プランジャの変位,速度,加速度の時間変化を示すグラフである。
【図7】第1のプランジャおよび第2のプランジャの変位と速度の時間変化を示すグラフである。
【図8】液体クロマトグラフの構成を示す構成図である。
【図9】各プランジャの変位と第一のプランジャポンプの圧力の時間変化を示すグラフである。
【図10】液体クロマトグラフ用ポンプを2台使用して高圧グラジエントシステムを構築した液体クロマトグラフの構成を示す構成図である。
【図11】2つの溶媒液の流量と2つの液体クロマトグラフ用ポンプのそれぞれの第一プランジャのリフト量の時間変化の一例を示すグラフである。
【図12】図1に示す液体クロマトグラフ用ポンプに用いられるプランジャを駆動するカムのリフト量,カムの回転速度,カムの回転加速度,駆動モータの回転速度の時間変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明による実施例を、以下、図面を参照して説明する。
【0012】
〔実施例〕
はじめに、本発明の構成をまとめると、次のようになる。
【0013】
本発明による液体クロマトグラフ用ポンプは、直列または並列に接続された第一のプランジャポンプおよび第二のプランジャポンプと、第一のプランジャポンプの加圧室内を往復動する第一のプランジャと、第二のプランジャポンプの加圧室内を往復動する第二のプランジャと、回転動力を発生する少なくとも1つ以上の電動モータと、電動モータの回転動力を直線往復動力に変換して第一のプランジャおよび第二のプランジャに駆動力を与える動力伝達機構と、電動モータを制御するモータドライバと、第一のプランジャポンプの加圧室に設けられた第一の圧力センサと、第二のプランジャの下流側の通路に設けられた第二の圧力センサと、両圧力センサの測定値を読み取りモータドライバに指令を与えるポンプコントローラとを備え、ポンプコントローラは、第一のプランジャポンプと第二のプランジャポンプに略一定の周期で交互に吸入,圧縮動作を行わせ、1つのプランジャポンプの加圧室を他のプランジャポンプの加圧室よりも高圧状態にさせ、第一のプランジャと第二のプランジャのリフト量を調整して流量制御することを特徴とする。これにより、各プランジャポンプの吐出流量に拘束されずに、プランジャポンプの動作周期に同期した脈動を一定周期に発生させることができる。
【0014】
また、好ましくは、第二のプランジャの動作速度をゼロにする静止期間を設け、静止期間中は第一のプランジャポンプのみで高圧送液を行う構成とする。さらに好ましくは、ポンプコントローラは送液量に応じて前述の静止期間の長さ、および第一のプランジャのリフト量を調整する構成とする。こうすることにより、合計吐出量は第一のプランジャポンプのリフト量で制御することになり、流量制御が簡素になる。
【0015】
また、好ましくは、ポンプコントローラは、第一のプランジャポンプが吸引動作を終了するタイミングから、第二のプランジャポンプが圧縮動作を終了するタイミングまでの間に、第一のプランジャが動作速度ゼロの状態を所定の期間維持するようにポンプコントローラが制御する構成とする。これにより、プランジャポンプの吐出圧力,流量,溶媒の変化等で圧縮に要する時間が変動した場合においても、この待ち時間を調整してプランジャポンプの1サイクルの駆動周期を略一定に調整することができる。
【0016】
また、好ましくは、第一のプランジャの速度がゼロになるように制御しはじめるのは、第一のプランジャポンプの圧力が第二のプランジャポンプの圧力と略同等になった時点であることとする。こうすることにより、予圧縮操作を確実に行うことができる。
【0017】
また、好ましくは、ポンプコントローラは、圧力検出手段の検出値に応じて動作速度ゼロの期間を変化させ、第一のプランジャポンプおよび第二のプランジャポンプの駆動周期を略一定に維持する構成とする。こうすることにより、動作速度ゼロの期間、すなわち待ち時間を調整して、ポンプの駆動周期を目標値と一致させることが容易になる。
【0018】
また、好ましくは、第一のプランジャおよび第二のプランジャの加速度の絶対値に特定の上限値を設ける構成とする。こうすることにより、速度変化が滑らかになり、速度変化が発生するタイミングでバックラッシや振動等の影響が低減され、脈動が小さくなる。
【0019】
また、好ましくは、第一のプランジャポンプと第二のプランジャポンプの圧力が略同一になった時点で、一旦、両プランジャの速度をゼロにする構成とする。こうすることにより、送液するプランジャポンプが切替わるときに、断続的な速度変化が生じなくなり、脈動が小さくなる。
【0020】
また、好ましくは、第一の吐出通路と第二の吸入通路は連結し、第一の吸入通路と第一の吐出通路にそれぞれ逆止弁を設けた構成とする。すなわち、2つのプランジャポンプを直列に連結することであり、上述の駆動方法を効果的に実現できる。
【0021】
または、第一の吐出通路と第二の吐出通路を連結し、かつ、第一の吸入通路と第二の吸入通路も連結し、第一および第二の吸入通路と吐出通路内にそれぞれ逆止弁を設けた構成とする。すなわち、2つのプランジャポンプを並列に連結することであり、この構成でも上述の駆動方法を効果的に実現できる。
【0022】
また、好ましくは、第一の加圧室と、第二の加圧室に前記圧力検出手段をそれぞれ設ける構成とする。こうすることにより、第一のプランジャポンプと第二のプランジャポンプの圧力が略同一になる判断が確実に行える。
【0023】
また、好ましくは、第一の加圧室と、第二の吐出通路に圧力センサを設ける構成とする。こうすることにより、第二の加圧室と同等の圧力を第二の吐出通路で検出することができるので、圧力センサを第二の加圧室に設けることによるデッドボリュームを低減して、プランジャポンプの容積効率を向上することができる。
【0024】
また、好ましくは、複数種類の溶媒の濃度比を変化させながら送液するグラジエント運転モードにおいて、第一のプランジャポンプと第二のプランジャポンプの送液量が変化する際に、ポンプコントローラは、第一のプランジャと第二のプランジャのリフト量を調整して流量制御し、プランジャの駆動周期を略一定に保つように制御する構成とする。こうすることにより、グラジエント運転モードで時々刻々と変化する溶媒の混合比率に影響されることなく、脈動の発生周期を一定に保つことができ、その脈動の発生周期をダンパーやミキサーの効率のよい周期とすることで液体クロマトグラフシステム全体の特性を向上することができる。
【0025】
また、好ましくは、動力伝達機構はカムで構成され、カムのリフト量Lに対する回転角度θの微分値dL/dθが変化するカム位相において、電動モータの回転速度を変化させて、微分値dL/dθと電動モータの回転速度の積が、その前後の値と略一定になるカム位相がある構成とする。微分値dL/dθのプロファイルを調整することにより、電動モータの回転速度に所望の変化率を与えることができる。例えば、微分値dL/dθを瞬時に2倍にすると、モータの回転速度を瞬時に1/2にして、かつ吐出流速を一定に保つことができる。
【0026】
また、好ましくは、電動モータは2つあり、2つのプランジャポンプをそれぞれ独立に駆動できる構成とする。こうすることにより、様々な物性値の液体にも適切な予圧縮量を与え、脈動を低減する自由度を確保できる。
【0027】
また、好ましくは、第一の溶離液を送液する第一のポンプと、第二の溶離液を送液する第二のポンプと、第一の溶離液および第二の溶離液を混合するミキサーと、該ミキサーで混合された溶離液に試料を注入するインジェクタと、該インジェクタで試料が注入された溶離液をその成分に分離する分離カラムと、該分離カラムで試料が成分に分離された溶離液を流入させ、光を照射して成分を検出する検出器とを備えた液体クロマトグラフであって、第一のポンプおよび第二のポンプは、それぞれ、直列に接続された第一のプランジャポンプと第二のプランジャポンプと、ポンプコントローラとを備え、該ポンプコントローラは、第一のプランジャポンプと第二のプランジャポンプを略一定の周期で交互に吸入,圧縮動作を行わせ、少なくとも1つのプランジャポンプの加圧室は他よりも高圧状態にさせ、第一のプランジャポンプのプランジャと、第二のプランジャポンプのプランジャのリフト量を調整して流量制御することを特徴とする。このように、溶離液を2種類用いる場合には、それぞれの溶離液を送液するポンプを設け、それぞれのポンプが上述の本発明の特徴を備えたものとすることによって、脈動を低減することができる。
【0028】
以下、図面を用いて、本発明の実施例を説明する。
【0029】
図1は、液体クロマトグラフの構成を示す構成図である。図1において、液体クロマトグラフ用ポンプ1の主要な構成は、第一のプランジャポンプ101,第二のプランジャポンプ102,ポンプコントローラ50,モータドライバ106である。第一のプランジャポンプ101には、第一の吸入通路10,第一の吐出通路103,第一の加圧室12が形成されている。第一の吸入通路10と第一の吐出通路103の通路上には、逆止弁4と逆止弁5が配置されており、ばねによりそれぞれ一方向に保持され、溶媒液の流通方向を制限するチェック止弁となっている。第二のプランジャポンプ102には、第二の吸入通路104,第二の吐出通路11,第二の加圧室13が形成され、第一の吐出通路103と第二の吸入通路104は連結されている。すなわち、第一のプランジャポンプ101と第二のプランジャポンプ102は直列に配置され、第一のプランジャポンプ101が上流側に設置されている。第一のプランジャポンプ101には、加圧部材である第一のプランジャ2が、軸受71により摺動可能に保持されている。第二のプランジャポンプ102には、加圧部材である第二のプランジャ3が、軸受72により摺動可能に保持されている。
【0030】
電動モータ211の回転は、減速装置221により減速され、直動装置231により直線運動に変換されて、第一のプランジャ2を往復運動させる。同様に、電動モータ212の回転は、減速装置222により減速され、直動装置232により直線運動に変換されて、第二のプランジャ3を往復駆動させる。
【0031】
ここで、減速装置221と直動装置231は、これらを組み合わせることによって電動モータ211の回転動力を増幅して直線運動力に変換することから、広義に動力伝達機構装置と呼ぶことができる。減速装置221の具体例としては、平歯車,プーリー,遊星歯車,ウォームギヤ等などがある。減速装置を設ける理由は、電動モータのトルクを増大させるためであり、もし電動モータが十分なトルクを発生する能力があるならば、必ずしも設置する必要は無い。直動装置231の具体例としては、ボールねじ,カム,ラックピニオンなどがあり、本発明を実施するうえで特に限定はしない。シール61は、第一の加圧室12からの液漏れを防止し、シール62は、第二の加圧室13からの液漏れを防止している。ポンプコントローラ50は、圧力センサ60,105からの信号に基づき、モータドライバ106に指令値を与えて、電動モータ211,212に駆動電力を与える。
【0032】
溶媒液容器51の溶媒液は、第一の吸入通路10より第一のプランジャポンプ101の内部の第一の加圧室12に吸引され、続いて圧縮されて第一の吐出通路103と第二の吸入通路104を経て第二のプランジャポンプ102の第二の加圧室13に吸引され、続いて圧縮されて第二の吐出通路11から吐出された後、インジェクタ53で分析対象となる試料が注入される。試料が混合された溶媒液は、分離カラム54に入り、成分毎に分離された後に検出器55で成分分析のためのデータが検出される。分離カラム54には、微小なシリカゲル粒が充填されており、溶媒液がシリカゲル粒の隙間を流れる際の流体抵抗によって、プランジャポンプには数十MPaから百MPa超の負荷圧力が発生する。この負荷圧力の大きさは、分離カラムの径と通過流量に応じて異なる。
【0033】
図2は、各プランジャの変位,圧力,流量の時間変化を示すグラフであり、これを用いて液体クロマトグラフ用ポンプの運転方法について説明する。図2の横軸は時間、縦軸は、上から、第一のプランジャ2の変位,第二のプランジャ3の変位,圧力センサ105の検出圧力,圧力センサ60の検出圧力,第一のプランジャ2の押しのけ容積(流量に相当),第二のプランジャ3の押しのけ容積(流量に相当),第二の吐出通路11を通過する合計流量である。
【0034】
図2の第一のプランジャ2の変位と第二のプランジャ3の変位の時間的変化からわかるように、定常運転時は、第一のプランジャ2と第二のプランジャ3は交互に吸入動作と圧縮動作を行い、液体クロマトグラフ用ポンプの全体として、一定流量を切れ目がなく安定して送液する。第一のプランジャ2と第二のプランジャ3の動作は、ポンプコントローラ50がモータドライバ106に指令値を与えることによって、電動モータ211,212を駆動し、制御する。以下に、動作状態を説明する。
【0035】
第一のプランジャ2が吸入動作中は、第二のプランジャ3が圧縮動作し、分離カラム54へ溶媒液を送液する。このとき、第一のプランジャ2による押しのけ容積はゼロであり、第二のプランジャ3のみにより送液する。このとき、第二のプランジャ3の押しのけ容積をQ[mL/s(ミリリットル毎秒)]とすると、液体クロマトグラフ用ポンプの全体として、第二の吐出通路11を通過する流量はQ[mL/s]である。この押しのけ容積Q[mL/s]は、第二のプランジャ3の動作速度V[cm/s]とプランジャ断面積S[cm2]の積で計算される。
【0036】
その後、第一のプランジャ2は吸入動作終了し、所定の期間t1の間、停止し、その後、圧縮動作を開始する。そして、第一の加圧室12の圧力が第二の加圧室13と同等になった時点から、所定の期間t2の間、停止する。ここで、期間t2の停止タイミングは、ポンプコントローラ50によって判定される。例えば、ポンプコントローラ50は、圧力センサ105、および圧力センサ60の検出圧力を参照して、第一の加圧室12の圧力が第二の加圧室13と同等になったと判断することで、期間t2の停止タイミングを判定する。あるいは、運転条件に応じてあらかじめ定められた期間、例えば、圧力が同等になると予想される時間を停止タイミングとしてもよい。この間、第二のプランジャ3は一定速度で圧縮動作を続け、液体クロマトグラフ用ポンプの全体として、第二の吐出通路11を通過する流量はQ[mL/s]のまま維持される。
【0037】
その後、第二のプランジャ3は圧縮動作を終了し、吸入動作を開始すると、第一のプランジャ2は圧縮動作を開始する。第一のプランジャ2の押しのけ容積流量は、第二のプランジャ3が吸入する容積流量よりQ[mL/s]だけ大きくなるように制御し、液体クロマトグラフ用ポンプ1の全体としては差し引き一定の流量Q[mL/s]が第二の吐出通路11を通過する。ここで、第二のプランジャ3が圧縮動作を終了するタイミングは、ポンプコントローラ50によって決定判定される。
【0038】
その後、第二のプランジャ3が吸入動作を終了すると、所定の期間t3の間、停止する。その間、第一のプランジャ2は減速して圧縮動作を続ける。このときの第一のプランジャ2の押しのけ容積流量はQ[mL/s]とすることにより、液体クロマトグラフ用ポンプ1の全体としては差し引き一定の流量Q[mL/s]が第二の吐出通路11を通過する。ここで、第二のプランジャ3が吸入動作を終了するタイミングは、ポンプコントローラ50によって決定判定される。その後、第一のプランジャ2が圧縮動作を終了し、吸入動作を開始すると、第二のプランジャ3は圧縮動作を開始し、以降、同様の動作を繰り返す。
【0039】
図3は、各プランジャの変位と速度の時間変化を示すグラフであり、以下にポンプコントローラ50による流量制御方法について説明する。本実施例では、流量制御は、第一のプランジャ2および第二のプランジャ3のリフト量を調整することによって行う。第一のプランジャ2のリフト量は、主に、液体を吐出圧力まで昇圧(プレ圧縮と呼ぶ)するのに必要なリフト量L1と、プレ圧縮後の液体を圧送するリフト量L2との合計である。液体クロマトグラフ用ポンプ1の全体の流量が多い場合は、細線で示すように、リフト量L2を大きくする。このとき、リフト量L2の増大に伴い、第二のプランジャ3のリフト量L3も大きくする。また、期間t1や期間t2をバッファとして、全体の駆動周期Tが一定となるように調整する。これにより、プランジャポンプの駆動周期Tを変えずに流量を制御することができる。また、流量が少ない場合の駆動プロファイルを点線で示す。この場合はリフト量L2とリフト量L3が小さくなる。この場合でも、図に示される通り、プランジャポンプの駆動周期Tを一定に維持する。このように、制御流量に拘わらずプランジャポンプの駆動周期Tを一定にすることで、例えば、ダンパーの脈動吸収性能が良好な周波数帯域にプランジャポンプの駆動周期を一致させることで、脈動を低減することができる。
【0040】
図4は、第一のプランジャの変位の時間変化を示すグラフである。図4(a)は、第一のプランジャ2の動作速度がゼロになる期間t1を示し、期間t2はほぼゼロに設定した場合、図4(b)は、第一のプランジャ2の動作速度がゼロになる期間t2を示し、期間t1はほぼゼロに設定した場合である。期間t1および期間t2の長さは自由に設定できるので、必要に応じて図4に示すように、ポンプコントローラ50による制御の設定を行うことができる。
【0041】
図5は、各プランジャの変位と第一のプランジャポンプ101の圧力の時間変化を示すグラフであり、吐出圧が異なる場合のポンプコントローラ50による駆動プロファイルの例を示す。グラフの上から順に、第一のプランジャ2の変位,第二のプランジャ3の変位,第一のプランジャポンプ101の圧力を示す。第一のプランジャポンプ101の圧力は、圧力センサ60の検出圧力である。期間t1の経過後に、第一のプランジャ2が溶媒を圧縮し、吐出開始しはじめると、A点で第二のプランジャ3は吸引動作を開始し、B点まで吸引動作を続ける。細線で示す駆動プロファイルは高圧吐出の場合である。高圧にするためには長めのストロークを要するので、期間t1を短く、期間t3を長くし、第一のプランジャ2が圧縮中の第二のプランジャ3の吸引動作の開始点と終了点を遅らせる。点線で示す駆動プロファイルは低圧吐出の場合である。低圧にするためには短めのストロークを要するので、期間t1を長く、期間t3を短くし、第一のプランジャ2が圧縮中の第二のプランジャ3の吸引動作の開始点と終了点を早めるようにする。
【0042】
図6は、プランジャの変位,速度,加速度の時間変化を示すグラフであり、ポンプコントローラ50によるプランジャの駆動制御を説明するものである。細線は、加速度の絶対値の大きさに制限を設けない場合の例を示し、太線は加速度の絶対値の大きさに制限を設けた場合の例を示す。細線の加速度に制限を設けない場合、速度のプロファイルは、A点において瞬時に負の値からゼロに変化する。このような速度変化に要する時間がゼロの場合、加速度は、理論上無限大であるが、実際の値はアクチュエータの能力の許す限り非常に大きな値になる。このような運転方法を採用すると、アクチュエータから強い振動が発生したり、プランジャや配管等を通じて水撃や脈動が発生したりするので望ましくない。そこで、太線に示すように加速度に有限の上限値を設けて駆動プロファイルを設定する。一方、プランジャの速度は、太線で示すように、変化するのにある程度の時間を要することになる。その結果、プランジャの変位は滑らかな軌跡を描く。次に、図6のB点に於いては、細線と太線とも有限の加速度を設けているが、細線は断続的な加速度のプロファイルなのに対して、太線は連続的に加速度が変化するようにしている。このB点の太線のような駆動プロファイルは、2つのプランジャポンプが吸入,吐出を切り替えるときに採用すると、吐出切替え時に水撃が小さく抑えられる利点がある。ちなみに、図6に示すプランジャの各プロファイルは、図2,図3、または図5に示す第一のプランジャの期間t1の前と後の駆動プロファイルに適用することができる。
【0043】
図7は、第一のプランジャおよび第二のプランジャの変位と速度の時間変化を示すグラフであり、図5に示したA部とB部のプロファイルの詳細を示している。グラフは上から順に第一のプランジャ2の変位,第二のプランジャ3の変位,第一のプランジャ2の速度,第二のプランジャ3の速度である。上述のコンセプトに倣って加速度に上限値を設けたため、速度が滑らかに変化する。ここで特徴的なのは、第一のプランジャ2と第二のプランジャ3の速度は、互いに速度変化を打ち消すようにして変化することである。こうすることにより、速度が変化する過渡状態において、加速度の上限値を設けたまま、プランジャポンプが吐出する流量を一定に維持しつつプランジャ動作の切り替えが可能となる。
【0044】
図8は、液体クロマトグラフの構成を示す構成図であり、液体クロマトグラフ用ポンプ801は、第一のプランジャポンプ101と第二のプランジャポンプ102とが並列に接続されている構成を有している。溶媒液容器51からポンプへ向かう吸入通路は第一の吸入通路10と第二の吸入通路104とに分岐し、それぞれ第一のプランジャポンプ101と第二のプランジャポンプ102に接続する。また、第一の吐出通路103と第二の吐出通路11は、第二のプランジャポンプ102の下流側で接続されており、第一のプランジャポンプ101と第二のプランジャポンプ102で圧縮された液体は、第一の吐出通路103と第二の吐出通路11の接続部で合流し、分離カラム54へ向かう。第一のプランジャポンプ101には、第一の吸入通路10に逆止弁4が、第一の吐出通路103に逆止弁5が設けられ、第二のプランジャポンプ102には、第二の吸入通路104に逆止弁107が、第二の吐出通路11に逆止弁108が設けられている。第一のプランジャポンプ101の動作と第二のプランジャポンプ102の動作は、ポンプコントローラ50およびモータドライバ106によって個々に独立して制御されるので、それぞれのプランジャポンプは独立して液体を圧縮することができる。
【0045】
図1に示した実施例では、圧力センサ60を第二の吐出通路11に設けた例を示したが、図8に示すように加圧室に設けてもよい。すなわち、第一のプランジャポンプ101の第一の加圧室12に圧力センサ105が設けられ、第二のプランジャポンプ102の第二の加圧室13に圧力センサ60が設けられている。図1に示したような、圧力センサを吐出通路に設けることの利点は、加圧室に圧力センサを設置する場合に必要となる容積をなくすことで、デッドボリュームを極力抑えることができる点である。また、図8に示したような、圧力センサを加圧室に設けることの利点は、圧力センサを加圧室を含むポンプボディに直接差し込む構造により、吐出通路に設けるときの圧力センサ設置用の専用マウントを省略でき、コスト上有利である点である。一方、加圧室と吐出通路の圧力差は、実際には逆止弁の圧力損失程度しかなく、その影響を無視することができるため、圧力センサを設ける位置は、測定圧力の正確さによらずに選択してよい。
【0046】
図9は、図8に示したように2個のプランジャポンプを並列に接続した場合の、各プランジャの変位と第一のプランジャポンプ101の圧力の時間変化を示すグラフである。グラフは上から順に、第一のプランジャ2の変位,第二のプランジャ3の変位,第一の加圧室12の圧力,第二の加圧室13の圧力を示す。細線,太線,点線にて、それぞれ流量が大きい,中程度,小さいの3つの場合の駆動プロファイルについて、変位と圧力の時間変化を示している。基本動作としては、第一のプランジャ2が吸入動作中は第二のプランジャ3が圧縮動作を行い、第二のプランジャ3が吸入動作中は第一のプランジャ2が圧縮動作を行うように、ポンプコントローラ50が制御を行う。
【0047】
第一のプランジャ2は、吸入動作から圧縮動作に切り替わった直後は、第一の加圧室12の圧力が吐出圧力、すなわち第二の加圧室13の圧力に到達するまで吐出できないため、第二のプランジャ3が圧送動作を続ける。望ましくは、第一の加圧室12の圧力が第二の加圧室13の圧力に到達した時点で、一旦、第一のプランジャ2の動作速度をゼロにするのがよい。第二のプランジャポンプ102が圧送を終了し、第一のプランジャポンプ101が圧送をはじめるときは、第一のプランジャ2の速度を徐々に加速し、それに比例して第二のプランジャ3の速度を減速する。そうすることによって、吐出するポンプ間の切り替えがスムーズに行える。ポンプコントローラ50による各プランジャポンプの流量制御は、第一のプランジャ2のリフト量(L1+L2)と第二のプランジャ3のリフト量(L3a+L3b)を変化させることによって行うことができる。ここで、第一のプランジャ2と第二のプランジャ3の加圧部の径が同じであり、加圧室の容積等も同等の場合は、両プランジャのリフト量は同等になる(L1≒L3a,L2≒L2)。もし、一方のプランジャ直径が小さい場合は、その直径にほぼ反比例してリフト量は大きくなる。またプランジャポンプの吐出圧力を変化させる場合は、プレ圧縮のリフト量(L1,L3a)を変化させて対応することができる。
【0048】
図10は、液体クロマトグラフ用ポンプを2台使用して高圧グラジエントシステムを構築した液体クロマトグラフの構成を示す構成図である。グラジエント運転とは、2種類の溶媒液Aと溶媒液Bの混合比を、時間と共に階段状に変えていく運転方法のことであり、溶媒液容器511の溶媒液Aの流量Qaと、溶媒液容器512の溶媒液Bの流量Qbとの和である総送液流量を一定にしながら、流量Qaと流量Qbの比率を変える。
【0049】
図10において、第一の液体クロマトグラフ用ポンプ1001と、第二の液体クロマトグラフ用ポンプ1002とは、並列に接続されている。第一の液体クロマトグラフ用ポンプ1001の吐出通路に、脈動吸収ダンパー109を設け、第二の液体クロマトグラフ用ポンプ1002の吐出通路に、脈動吸収ダンパー110を設ける。それぞれの溶媒液は、ミキサー57で混合されてインジェクタ53へ送液され、試料を混合される。試料が混合された溶媒液は、分離カラム54に入り、成分毎に分離された後に検出器55で成分分析のためのデータが検出される。分離カラム54には、微小なシリカゲル粒が充填されており、溶媒液がシリカゲル粒の隙間を流れる際の流体抵抗によって、各プランジャポンプには数十MPaから百MPa超の負荷圧力が発生する。この負荷圧力の大きさは、分離カラムの径と通過流量に応じて異なる。
【0050】
第一の液体クロマトグラフ用ポンプ1001は、圧力センサ601,602の検出値をポンプコントローラ501に取り込み、モータドライバ1061を介して電動モータを制御し、プランジャを駆動する。第二の液体クロマトグラフ用ポンプ1002は、圧力センサ603,604の検出値をポンプコントローラ502に取り込み、モータドライバ1062を介して電動モータを制御し、プランジャを駆動する。ポンプコントローラ501,502は、上位コントローラ70と通信し、上位コントローラ70の指令値に基づき各液体クロマトグラフ用ポンプを制御する。
【0051】
図11は、2つの溶媒液の流量と2つの液体クロマトグラフ用ポンプのそれぞれの第一プランジャのリフト量の時間変化の一例を示すグラフである。総流量を例えば100とすると、グラジエント運転における流量の時間変化は、図11に示すように、最初はQa:Qb=1:99からスタートし、この比率が次は2:98,3:97,・・・,50:50,・・・,98:2,99:1と混合比を変えていく。これは100段階のグラジエントの場合であり、総送液流量を1mL/minとすると、最小流量及び分解能はこの1/100の10μL/minが要求される。この間、各ポンプの流量を徐々に増減させるには、図11の最下段に示すように、上位コントローラ70の指令により、プランジャのリフト量を増減させる必要がある。
【0052】
上位コントローラ70による以上の制御により、流量を変化させても各プランジャポンプの駆動周期はほぼ一定に保たれ、駆動周期に同期して脈動も発生する。しかし、溶媒液Aと溶媒液Bがミキサー57で混合されるとき、各溶媒液の脈動に起因する混合比の変動が抑えられ、クロマトグラム上での検出精度を向上させえることができる。また、もしミキサー57や脈動吸収ダンパー(図示せず)の脈動吸収性能が、特定の周波数帯で良好な特性を有している場合、各ポンプの駆動周期をその周波数帯にあわせて駆動することにより、溶媒液Aと溶媒液Bとをよく混合させることができ、その結果、分析精度を向上させることができる。ところで、混合する溶媒の組み合わせによっては、混合液の粘性や密度等の物性値が、混合比に対して非線形に変化する場合がある。この対応手法として、例えば、特開2004−137974号公報に記載されている手法が知られている。
【0053】
図12は、図1に示す液体クロマトグラフ用ポンプに用いられるプランジャを駆動するカムのリフト量,カムの回転速度,カムの回転加速度,駆動モータの回転速度の時間変化を示すグラフである。モータの回転運動をプランジャの直線運動へ変換する機構には、ボールねじやラックピニオン等の直動機構とカム機構とがある。直動機構の場合、基本的に回転軸の回転角度に比例して変位するので、プランジャの直線運動の速度や加速度を変える場合は、回転軸の回転を変化させて行われるだけなので、モータの回転の制御が困難で所望の制御を行えない場合がある。これに対して、カム機構の場合には、回転軸の回転の変化だけでなく、カムのプロファイルを変えることができるので、より幅広い制御を行うことが可能である。
【0054】
例えば、カムのリフト量をL、回転角度をθ、カムのリフト量Lの微分値をdL/dθ、カムの回転角速度をdθ/dtとすると、カムのリフト量Lの微分値dL/dθと、カムの回転角速度dθ/dtの積dL/dtによって、プランジャの速度が決まる。例えば、プランジャ速度を2倍に変化させる場合には、カムの回転角速度dθ/dtを2倍にしたり、カムのリフト量Lの微分値dL/dθを2倍にする等が考えられる。どの値をいくつに設定するかは、ポンプ構成によって適宜選択する。
【0055】
図12に示したカムのプロファイルは、図1に示した2個のプランジャを直列接続した構成に適用した場合の例である。基本的にモータの回転速度は一定に保ち、カムプロファイルの設計によってカムのリフト量,カムの回転速度,カムの回転加速度を制御する。また、カムの加速度プロファイルに上下限値を設け、速度プロファイルが滑らかに変化するように設定するとともに、図中の第一のプランジャが吸入動作を終了してから圧縮動作を開始する位相である予圧縮期間t0については、モータの回転速度を2倍にして、第二のプランジャのカム速度を1/2倍にする。こうする理由は、必要な予圧縮期間は、吐出する圧力や液体の物性値等によって異なるためであり、この期間についてはモータの回転制御によって臨機応変に対応する。この予圧縮期間t0が長い場合、例えば高圧まで圧縮する場合において、予圧縮終了までモータの回転速度を2倍速にすることにより、第二のプランジャのカム速度が1/2でも、第二のプランジャを等速で駆動し、一定流束の液体を圧送できる。この間に、第一のプランジャの予圧縮も倍速で進めれば、第一のプランジャの予圧縮期間を短縮できる。すなわち、第一のプランジャと第二のプランジャとは独立して動作制御させる必要が無いため、モータは1つで構成することが可能となる。
【0056】
以上述べたように、本発明の実施例によれば、2つのプランジャポンプを直列または並列に配置し、交互に吸入,圧縮を行い、絶え間なく一定流束の液送を行う液体クロマトグラフ用ポンプにおいて、少なくとも1つのプランジャポンプの加圧室は常に高圧状態にあり、ポンプコントローラは、第一のプランジャと第二のプランジャのリフト量を調整して流量制御する構成を採用する。この構成により、吐出流量を変えても脈動を低減することができ、分離カラムへ脈動を伝えなくすることができるので、液体クロマトグラフの分析精度の低下を防ぐことができる。
【符号の説明】
【0057】
1,801 液体クロマトグラフ用ポンプ
2 第一のプランジャ
3 第二のプランジャ
4,5,107,108 逆止弁
10 第一の吸入通路
11 第二の吐出通路
12 第一の加圧室
13 第二の加圧室
50,501,502 ポンプコントローラ
51,511,512 溶媒液容器
52 排出弁
53 インジェクタ
54 分離カラム
55 検出器
56 回収容器
57 ミキサー
60,105,601,602,603,604 圧力センサ
61,62 シール
70 上位コントローラ
71,72 軸受
101 第一のプランジャポンプ
102 第二のプランジャポンプ
103 第一の吐出通路
104 第二の吸入通路
106 モータドライバ
109,110 脈動吸収ダンパー
211,212 電動モータ
221,222 減速装置
231,232 直動装置
1001 第一の液体クロマトグラフ用ポンプ
1002 第二の液体クロマトグラフ用ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の吸入通路と第一の吐出通路に連通する第一の加圧室と、前記第一の加圧室内を往復動する第一のプランジャを備えた第一のプランジャポンプと、第二の吸入通路と第二の吐出通路に連通する第二の加圧室と、前記第二の加圧室内を往復動する第二のプランジャを備えた第二のプランジャポンプと、前記第一のプランジャポンプと前記第二のプランジャポンプを直列または並列に接続する連結流路と、回転動力を発生する少なくとも1つ以上の電動モータと、前記電動モータの回転動力を直線往復動力に変換して前記第一のプランジャおよび前記第二のプランジャに伝達する動力伝達機構と、前記電動モータを制御するモータドライバと、前記第一の加圧室または第二の加圧室、またはその下流側の通路に設けた少なくとも1つ以上の圧力検出手段と、前記圧力検出手段の測定値を読み取り、前記モータドライバに指令値を与えるとともに、前記第一のプランジャポンプと前記第二のプランジャポンプに略一定の周期で交互に吸入,圧縮動作を行わせ、少なくとも1つのプランジャポンプの加圧室は他のプランジャポンプの加圧室よりも高圧状態にさせ、前記第一のプランジャと前記第二のプランジャのリフト量を調整して流量制御するポンプコントローラとを備えたことを特徴とする液体クロマトグラフ用ポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載の液体クロマトグラフ用ポンプであって、前記第二のプランジャの動作速度をゼロにする静止期間を設け、前記静止期間中は前記第一のプランジャポンプのみで高圧送液を行うことを特徴とする液体クロマトグラフ用ポンプ。
【請求項3】
請求項2に記載の液体クロマトグラフ用ポンプであって、前記ポンプコントローラは、少なくとも送液量,圧力,媒体の種類,ポンプの運転状態に応じて前記静止期間の長さ、および前記第一のプランジャのリフト量を調整するように制御することを特徴とする液体クロマトグラフ用ポンプ。
【請求項4】
請求項1乃至3に記載の液体クロマトグラフ用ポンプであって、前記ポンプコントローラは、前記第一のプランジャポンプが吸引動作を終了するタイミングから、前記第二のプランジャポンプが圧縮動作を終了するタイミングまでの間に、前記第一のプランジャが動作速度ゼロの状態を所定の期間維持するように前記ポンプコントローラが制御することを特徴とする液体クロマトグラフ用ポンプ。
【請求項5】
請求項1乃至4に記載の液体クロマトグラフ用ポンプであって、前記ポンプコントローラは、前記第一のプランジャポンプの圧力が前記第二のプランジャポンプの圧力と略同等になった時点で、前記第一のプランジャの速度がゼロになるように制御することを特徴とする液体クロマトグラフ用ポンプ。
【請求項6】
請求項4乃至5に記載の液体クロマトグラフ用ポンプであって、前記ポンプコントローラは、前記動作速度ゼロの期間を変化させ、前記第一のプランジャポンプおよび前記第二のプランジャポンプの駆動周期を略一定に維持することを特徴とする液体クロマトグラフ用ポンプ。
【請求項7】
請求項1乃至6に記載の液体クロマトグラフ用ポンプであって、前記ポンプコントローラは、前記第一のプランジャおよび前記第二のプランジャの加速度の絶対値に特定の上限値を設けて制御することを特徴とする液体クロマトグラフ用ポンプ。
【請求項8】
請求項1乃至7に記載の液体クロマトグラフ用ポンプであって、前記ポンプコントローラは、前記第一のプランジャポンプと前記第二のプランジャポンプの圧力が略同一になった時点で、前記第一のプランジャおよび前記第二のプランジャの速度をゼロにすることを特徴とする液体クロマトグラフ用ポンプ。
【請求項9】
請求項1乃至8に記載の液体クロマトグラフ用ポンプであって、前記第一の吐出通路と前記第二の吸入通路は連結し、前記第一の吸入通路と前記第一の吐出通路にそれぞれ逆止弁を設けたことを特徴とする液体クロマトグラフ用ポンプ。
【請求項10】
請求項1乃至9に記載の液体クロマトグラフ用ポンプであって、前記第一の吐出通路と前記第二の吐出通路は連結し、かつ、前記第一の吸入通路と前記第二の吸入通路は連結し、第一の吸入通路,第二の吸入通路,第一の吐出通路,第二の吐出通路内のそれぞれに逆止弁を設けたことを特徴とする液体クロマトグラフ用ポンプ。
【請求項11】
請求項1乃至10に記載の液体クロマトグラフ用ポンプであって、前記第一の加圧室と、前記第二の加圧室に前記圧力検出手段がそれぞれ設けられたことを特徴とする液体クロマトグラフ用ポンプ。
【請求項12】
請求項1乃至11に記載の液体クロマトグラフ用ポンプであって、前記第一の加圧室と、前記第二の吐出通路に前記圧力検出手段がそれぞれ設けられたことを特徴とする液体クロマトグラフ用ポンプ。
【請求項13】
請求項1乃至12に記載の液体クロマトグラフ用ポンプであって、前記第一のプランジャポンプの送液量が変化し、前記第二のプランジャポンプの送液量が変化する際に、前記ポンプコントローラは、前記第一のプランジャと前記第二のプランジャのそれぞれのリフト量の調整により送液量を制御し、前記第一のプランジャおよび前記第二のプランジャの駆動周期を略一定に保つように制御することを特徴とする液体クロマトグラフ用ポンプ。
【請求項14】
請求項1乃至13に記載の液体クロマトグラフ用ポンプであって、前記動力伝達機構はカムで構成され、前記カムのリフト量Lに対する回転角度θの微分値dL/dθが変化するカム位相において、前記電動モータの回転速度を変化させて、前記微分値dL/dθと前記電動モータの回転速度の積が、その前後の値と略一定になるカム位相を用いて、前記動力伝達機構が構成されることを特徴とする液体クロマトグラフ用ポンプ。
【請求項15】
請求項1乃至14に記載の液体クロマトグラフ用ポンプであって、前記電動モータは2つあり、前記第一のプランジャポンプおよび前記第二のプランジャポンプをそれぞれ独立に駆動することを特徴とする液体クロマトグラフ用ポンプ。
【請求項16】
直列または並列に接続された第一のプランジャポンプと第二のプランジャポンプと、ポンプコントローラとを備え、該ポンプコントローラは、直列または並列に接続された第一のプランジャポンプと第二のプランジャポンプを略一定の周期で交互に吸入,圧縮動作を行わせ、少なくとも1つのプランジャポンプの加圧室は他よりも高圧状態にさせ、第一のプランジャと第二のプランジャのリフト量を調整して流量制御することを特徴とする液体クロマトグラフ用ポンプ。
【請求項17】
第一の溶離液を送液する第一のポンプと、第二の溶離液を送液する第二のポンプと、前記第一の溶離液および前記第二の溶離液を混合するミキサーと、該ミキサーで混合された溶離液に試料を注入するインジェクタと、該インジェクタで試料が注入された溶離液をその成分に分離する分離カラムと、該分離カラムで試料が成分に分離された溶離液を流入させ、光を照射して成分を検出する検出器とを備えた液体クロマトグラフにおいて、
前記第一のポンプおよび前記第二のポンプは、それぞれ、直列に接続された第一のプランジャポンプと第二のプランジャポンプと、ポンプコントローラとを備え、該ポンプコントローラは、前記第一のプランジャポンプと前記第二のプランジャポンプを略一定の周期で交互に吸入,圧縮動作を行わせ、少なくとも1つのプランジャポンプの加圧室は他よりも高圧状態にさせ、前記第一のプランジャポンプのプランジャと、前記第二のプランジャポンプのプランジャのリフト量を調整して流量制御することを特徴とする液体クロマトグラフ。
【請求項18】
第一の溶離液を送液する第一のポンプと、第二の溶離液を送液する第二のポンプと、前記第一の溶離液および前記第二の溶離液を混合するミキサーと、該ミキサーで混合された溶離液に試料を注入するインジェクタと、該インジェクタで試料が注入された溶離液をその成分に分離する分離カラムと、該分離カラムで試料が成分に分離された溶離液を流入させ、光を照射して成分を検出する検出器とを備えた液体クロマトグラフにおいて、
前記第一のポンプおよび前記第二のポンプは、それぞれ、第一の吸入通路と第一の吐出通路に連通する第一の加圧室,前記第一の加圧室内を往復動する第一のプランジャを備えた第一のプランジャポンプ,第二の吸入通路と第二の吐出通路に連通する第二の加圧室,前記第二の加圧室内を往復動する第二のプランジャを備えた第二のプランジャポンプ,前記第一のプランジャポンプと前記第二のプランジャポンプを直列に接続する連結流路,回転動力を発生する少なくとも1つ以上の電動モータ,前記電動モータの回転動力を直線往復動力に変換して前記第一のプランジャおよび前記第二のプランジャに伝達する動力伝達機構,前記電動モータを制御するモータドライバ,前記第一の加圧室と第二の加圧室の下流側の通路とに設けられた圧力検出器,前記圧力検出器の測定値を読み取り、前記モータドライバに指令値を与えるとともに、前記第一のプランジャポンプと前記第二のプランジャポンプに略一定の周期で交互に吸入,圧縮動作を行わせ、少なくとも1つのプランジャポンプの加圧室は他のプランジャポンプの加圧室よりも高圧状態にさせ、前記第一のプランジャと前記第二のプランジャのリフト量を調整して流量制御するポンプコントローラを備えたことを特徴とする液体クロマトグラフ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−32187(P2012−32187A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−169962(P2010−169962)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)