説明

液体ホーニング加工用ワーク旋回装置

【課題】液体ホーニング加工において、従来のワーク旋回は、エアシリンダーによってラック/ピニオンを駆動し、ワークを枢支軸を中心として旋回させ、ストッパに突き当てることにより、所望角度で停止させる仕組みが多く用いられていたが、装置全体が複雑化し、それに伴うコストアップも避けられなかった。
【解決手段】箱形をした加工室内1の対向した一対の側面3を貫通して、水平かつ同軸状に対向して軸支せしめられた基準ピン8と押付ピン9のそれぞれの先端部で加工対象物であるワーク16を両側から押圧保持する様になっており、基準ピン8の基部10には、加工室1外に固定されたロータリーアクチュエータの駆動軸15が同軸状に連結されており、駆動軸15によって基準ピン8を回動させることにより、ワーク16を任意の角度で旋回停止させられる様にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液体ホーニング加工用ワーク旋回装置、詳しくは、従来のものより、停止位置を多く設定出来、位置決め精度も良好な液体ホーニング加工用ワーク旋回装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
加工室内に保持された加工対象物に向って研磨材と水からなるスラリーを噴射して、表面研磨やバリ取りなどを行う液体ホーニング加工は、機械部品製造の際などに多く採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】なし
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】なし
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液体ホーニング加工において、対象物即ちワークの所望の部位、特にワークに形成されている穴交差部にスラリーを適切に衝突させるには、ワークと噴射ガンの相対位置を変更出来る様になっていることが必要であり、この目的の為、加工室内においてワークを旋回出来る様にしたものが多い。
【0006】
従来において、このワークの旋回には、エアシリンダーによってラック/ピニオンを駆動し、ワークを枢支軸を中心として旋回させ、ストッパに突き当てることにより、所望角度で停止させる仕組みが多く用いられていた。
【0007】
しかしながら、この方式では、ワークの停止位置を多く設定することがむずかしく、停止位置は最大でも3つが限度であり、4つ以上の停止位置を設けようとするには、噴射ノズルを動かす機構が別途必要となり、装置全体が複雑化し、それに伴うコストアップも避けられなかった。又、この方式では位置決め精度が悪く、装置の芯出しもむずかしかった。
【0008】
本発明は、液体ホーニング加工の際のワークの旋回に関する上記問題点を解決する為になされたものであり、位置決め精度が良く、装置の芯出しも容易で、停止位置が多く設定出来、しかも、位置決めの為のストッパをなくす事により、メンテナンス性も向上した新しい液体ホーニング加工用ワーク旋回装置を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
箱形をした加工室内の対向した一対の側面を貫通して、水平かつ同軸状に対向して軸支せしめられた基準ピンと押付ピンのそれぞれの先端部で加工対象物であるワークを両側から押圧保持する様になっており、基準ピンの基部には、加工室外に固定されたロータリーアクチュエータの駆動軸が同軸状に連結されており、該駆動軸によって基準ピンを回動させることにより、ワークを任意の角度で旋回停止させられる様して、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0010】
基準ピン及び押付ピンによってワークを両側から押圧保持し、ロータリーアクチュエータを駆動して基準ピンを所望の回転角だけ回転させ停止させることにより、ワークを順次所望の回転角だけ変位させつつ、図示を省略した噴射ノズルからスラリーをワークの所望部位に向かって噴射して、ワーク表面やワークに形成されている穴交差部のバリ取りや研磨等の加工作業を行う。
この際、駆動源としてロータリーアクチュエータを用いているので、従来のラック/ピニオン方式のものとは異なり、位置決め用のストッパーを必要とせず、ワークを任意の角度で自由に変位させることが可能で、噴射ノズルを動かす機構を別途用意する必要もなく、装置全体を簡略化することが可能で、それに伴い調整も容易で、メインテナンス性が向上し、故障のおそれも少なく、製造コストも低くすることが可能である。又、装置全体の構成が単純で、装置の芯出しも容易であり、ワークを正確に保持出来るので、精度の高い加工が可能となる効果を有し、高い実用性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明に係る液体ホーニング加工用ワーク旋回装置の実施例1の側面図。
【図2】この発明に係るワーク旋回装置によって加工を行うワークの一例であるクランクシャフトの側面図。
【図3】この発明に係る液体ホーニング加工用ワーク旋回装置の実施例1において、ワークを装着する前の状態の側面図。
【図4】同じく、ワークを装着して加工を行っている状態の側面図。
【図5】同じく、ワークを回転変位させて加工を行っている状態の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
液体ホーニング加工をする際に、加工室内においてワークをロータリーアクチュエータによって旋回させる様にした点に最大の特徴が存する。
【実施例1】
【0013】
図1はこの発明に係る液体ホーニング加工用ワーク旋回装置の実施例1の側面図である。
図中1は加工室であり、それぞれ対向した二対の側面3,3,4,4,及び上面5、下面6からなる略直方体状の箱形を呈しており、その内部空間2からスラリーが外部へ飛散しない様にする為、ほぼ密閉された状態になっている。
【0014】
そして、加工室1の一対の側面3,3を貫通して一対の軸受け7,7がそれぞれ対向して取付けられており、基準ピン8及び押付ピン9が、それぞれの基部10、11を加工室1外にそれぞれ位置させる様に、水平かつの同軸状に対向して位置せしめられ、軸受け7,7によって軸支されている。
【0015】
そして、軸受け7の下方からは、それぞれ基準ピン8及び押付ピン9と平行に、外側に向かってそれぞれ保持板12,12’が延設されており、基準ピン8の下方の保持板12上にはロータリーアクチュエータ13が載置固定されている。更に、このロータリーアクチュエータ13の駆動軸14は、基準ピン8の基部10に同軸状に連結され、該駆動軸14の回動に追随して基準ピン8も回転する様になっている。
【0016】
なお、ロータリーアクチュエータ13は、その本来の機能として、任意の回転角で、停止出来る様になっており、それに伴い基準ピン8も加工室1内において任意の回転角で停止で出来る様になっている。
【0017】
更に、基準ピン8の先端部15の軸芯には、加工対象物であるワーク16の端部17の軸芯に形成されている凹穿部18に嵌め込まれる突起20が形成されていると共に、前記先端部15の軸芯から外側に偏位した箇所にも突起21が形成されており、ワーク16の端部17の対応した位置に形成されている凹穿部19に嵌め込まれることにより、駆動軸14からワーク16に回転力が伝達される様になっている。
【0018】
なお、この実施例1において、図示されているワーク16は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどレシプロ機関のクランクシャフトであるが、両端を軸支して加工室1の内部空間2に保持出来る様な形状の部材であれば、他のものでも良いことはもちろんである。
【0019】
一方、押付ピン9側の保持板12’上には、押付ピン9の基部11が取付けられており、該押付ピン9の先端部22は、加工室1の内部空間2内において基準ピン9の先端部15と向かい合う様に位置せしめられており、更にこの押付ピン9は、図示を省略したエアシリンダ、電磁ソレノイド等の駆動源により、軸芯方向に先進/後退することが出来る様になっている。
【0020】
又、この押付ピン9の先端部22の軸芯には、ワーク16のもう一方の端部23の軸芯に形成されている凹穿部24に嵌め込まれる突起25が形成されている。
【0021】
この実施例は上記の通りの構成を有するものであり、図3に示す様に、押付ピン9を後退させた待機位置において、ワーク16を加工室1内に搬入し、基準ピン8及び押付ピン9と同軸状になる位置にワーク16の軸芯を位置させ、この状態で、押付ピン9を前進させて、ワーク16の先端部22に形成されている凹穿部24に押付ピン9の突起25を嵌め込むと共に、基準ピン8の凹穿部18にワーク16の突起20を、凹穿部19に突起21をそれぞれ嵌め込み、図4に示す様に、基準ピン8及び押付ピン9によってワーク16を両側から押圧して保持する。
【0022】
この状態で、ロータリーアクチュエータ13を駆動すれば、基準ピン8は所望の回転角だけ回転し、これに伴いワーク16も所望の回転角だけ変位する。従って、図4に示す状態や図5に示す状態になる様に、ワークを順次所望の回転角だけ変位させて、図示を省略した噴射ノズルからスラリーをワーク16の所望部位に向かって噴射してワーク16表面やワーク16に形成されている穴交差部のバリ取りや研磨等の加工作業を行う。
【0023】
そして、バリ取りや研磨等の加工作業が終了したなら、押付ピン9を後退させて、図3に示す状態に戻し、押付ピン9と基準ピン8とによるワーク16の押圧保持を解除し、ワーク16を加工室1から外部に搬出して作業を終了する。
【0024】
この様に、この発明に係る液体ホーニング加工用ワーク旋回装置においては、従来のラック/ピニオン方式のものとは異なり、位置決め用のストッパーを必要とせず、ワークを任意の角度で自由に変位させることが可能で、噴射ノズルを動かす機構を別途用意する必要もなく、装置全体を簡略化することが可能で、それに伴い調整も容易で、メインテナンス性が向上し、故障のおそれも少なく、製造コストも低くすることが可能である。又、装置全体の構成が単純で、装置の芯出しも容易であり、ワークを正確に保持出来るので、精度の高い加工が可能となる効果を有し、高い実用性を有している。
【産業上の利用可能性】
【0025】
クランクシャフトなどのエンジン部品や各種円筒状金属部品の穴交差部のバリ取りに利用可能である。
【符号の説明】
【0026】
1.加工室
2.内部空間
3.側面
4.側面
5.上面
6.下面
7.軸受
8.基準ピン
9.押付ピン
10.基部
11.基部
12.保持板
13.ロータリーアクチュエータ
14.駆動軸
15.先端部
16.ワーク
17.端部
18.凹穿部
19.凹穿部
20.突起
21.突起
22.先端部
23.端部
24.凹穿部
25.突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱形をした加工室内の対向した一対の側面を貫通して、水平かつ同軸状に対向して軸支せしめられた基準ピンと押付ピンのそれぞれの先端部で加工対象物であるワークを両側から押圧保持する様になっており、基準ピンの基部には、加工室外に固定されたロータリーアクチュエータの駆動軸が同軸状に連結されており、該駆動軸によって基準ピンを回動させることにより、ワークを任意の角度で旋回停止させられる様になっていることを特徴とする液体ホーニング加工用ワーク旋回装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−66984(P2013−66984A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208485(P2011−208485)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000003458)東芝機械株式会社 (843)