説明

液体中空容器

【課題】 各種の液体を収容した合成樹脂製の中空容器が、テーブル等の平坦な台上に置かれて、何らかの原因でテーブルや容器が外力を受けたとしても、台上で簡単に滑って動いたり、倒れたりすることがないように、滑りや転倒防止の機能や自立安定性を備えた構造の中空容器を提供する。
【解決手段】 熱可塑性合成樹脂をブロー成形して、口頸部に出し入れ自在な蓋体2を装着可能にした液状物を収容するのに適した中空容器1を形成して、前記中空容器の底部4がテーブル等の台面に接する接地面4a部分に、容器の動きを制する抵抗力を高めた摩擦機能またはテーブル等の台面上を濡らした液体を逃がす機能を有する接触部を形成して、テーブル等の台面上に液体で汚れた痕跡が残らないようにした液体収容容器を構成する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【技術分野】
【0001】
本願の発明は、使用頻度の高い各種の液状物質を収容するのに適した中空容器に係わるもので、中でも、液状物質が収容された中空容器に安定した自立性を付与するために、容器の底壁部に色々な形状、構造をした滑り防止や転倒防止の機能、衝撃を吸収する緩衝機能等を有する接触部を設けておくことにより、前記容器をテーブルその他の台面上に載置して使用する場合に、液状物が収容されている容器が滑って移動したり、倒れたりしないように、また、使った容器をテーブル上に戻す時に音が立たないように構成した、更には、容器の底部がテーブル等の台面に長く接していた部分に汚れた痕跡が残らないような構成をした液体中空容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から一般に使用されている各種の溶液が収容された各種の中空容器としては、台等の上に置き易いように底壁部を平坦な面に形成したり、成形面の上から底壁部の平坦な面の中央部分を僅かに内側へ窪ませた状態に成形するか、または、容器の性能面で耐圧性や耐衝撃性を持たせるために底壁部を内側あるいは外側へ略半球状に突出させた状態に形成すると共に、前記半球形状をした底部に幾つかの脚部を突設するか、あるいは、ベースカップを被着させる等の手段により、前記中空容器が安定した自立性を有するような構造に形成された中空容器が大半を占めている。
【0003】
しかし、このような構造をした中空容器は、その底部がテーブル等の台面に接する接地面は、滑らかなつるつるした状態をしているのが一般的であるから、このような容器の内部に各種の溶液が満たされているものを表面が滑らかなテーブル等の上に置いた場合には、容器の底壁面とテーブル面の両面とも滑らかであることから、両者の間の摩擦抵抗が非常に小さくて、容器は非常に滑り易い状態にあり、容器は動きだして転倒することがある。
【0004】
特に、これらの中空容器が合成樹脂から形成された軽量なものであったりする場合には、重心の移動が簡単であるからその傾向が著しく見られる。
従って、このような容器をテーブルその他の台上に置く場合に、注意を怠ったぞんざいな置き方をしたり、容器が置かれているテーブル等の台面が揺れたりすると、容器がテーブルや台の上を滑って移動したり、場合によっては、転倒したりすることが起きる。
【0005】
そこで、このような事態が発生するのを避けるための色々な工夫がなされて、テーブルその他の台面に接する中空容器の底壁部の接地面に、梨地加工やしぼ加工その他による色々な滑り止めとなる手段を施されたり、テーブル面に密着するための各種の手段を設けることにより、容器を滑らなくしたり、倒れなくする各種の発明が提案されている。
【0006】
例えば、図6に示したように、中空容器11の底部14の接地壁面に弱い粘着力を有する接着層15を設けておくことにより、該容器をテーブル等の台面に置いた際に、容器が台面に接着されたような状態に保てるようにしたものが、実開昭57−77131号に提案されている。
このような構造にした容器は、テーブル等の台上に置いたままで、テーブル等が少々揺れたり、動いたりするようなことがあっても、容器が倒れるような事態にまで至らないので安心である。
しかし、このような容器を形成するには、一度ブロー成形を終えた容器の底壁面に対して、再度接着層を形成するような作業をしなければならないので、製造のための工程を簡素化する点で改良の余地があり、更には、時間が立つに連れて底部の接着層が劣化したり、タイル等の濡れた面では粘着力の効果が薄れる恐れもある。
【0007】
また、図7に示すように、中空容器21の底部24の接地壁面に発泡層25を設けて、テーブル等の台面上に於ける容器の摩擦力を高めることにより滑り止めとなるようにしたものを、実開昭58−126950号に見ることができる。
上記のように中空容器の底部に発泡層を設けたものは、容器を載置する面がタイル等の濡れた面であっても、発泡層に水分等が吸い込まれて、容器が滑るようなことはなくて、緩衝効果も有していて便利である。
しかし、このような容器を形成するには、一度容器を成形した後で、容器の底部に発泡性の樹脂を塗布してから、更に、加熱して発泡させなければならないので、製造工程を簡素化するということは非常に困難である。
【0008】
そこで、容器が転倒するのを防止するための手段として、容器の底部に滑り止めを設けるのに、上記した発明のように中空容器の底部の接地壁面に接着層を設けたり、あるいは、発泡層を設けたりするのに代えて、図8に示すように、中空容器31の底部34の接地面をローレットもしくはナーリング等34aの刻設を施した中空容器を、出願人は実開昭55−41319号に提案している。
このような中空容器は、ポリエチレンテレフタレート樹脂製のプリフォームを単に二軸延伸ブロー成形して得られるものであるから、一度の成形工程を経て製造することができるので、前記した二つの発明のような容器に比べると、その製造コストの低減を図ることが可能である。
【0009】
ところで、このような中空容器は、半球形状に突出した底部に三箇所の脚部を突設させて形成した接地面にローレット部を設けて成形されたもので、炭酸飲料であるサイダーやビール等を収容するのに最適な耐圧性容器として提供することを目的としたものである。
従って、このような構造をした容器は、使用する度に硬い底部の接地面とテーブル面との衝突音が発したり、突設した脚部による自立安定性の面等に於いてやや難点がみられる。
また、醤油等の調味料が収容された容器の底部やテーブル等の台面が調味料や水、その他で濡れたのを、そのままの状態にして長い時間テーブル等の上に容器が置かれることになると、テーブル等の接地部分に液体が染み込んだり、固化した痕跡が現れて見た目が汚くなることがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本願発明は、上記したような問題点を改良して、醤油等の調味料、洗剤や液体化粧料その他の液状物を収容するのに適した中空容器を提供することを目的としたものである。
醤油等の調味料や洗剤等を収容した合成樹脂製の中空容器を、テーブル等の平坦な面をした台上に置いた場合に、何らかの原因でテーブルや容器が外力を受けたとしても、台上の容器が簡単に滑って動いたり、また、容器が倒れたりすることがないように、滑りや転倒防止の機能や自立安定性を備えた構造の中空容器を形成する。
また、容器が頻繁に使用される場合に、使用した容器をテーブル等の台上に戻す際に、容器の底部が台面に接する音ができるだけ発しないような緩衝機能を備えた構造にした中空容器を成形することを目的とする。
更には、醤油等の調味料や化粧料等が収容された中空容器が、水分や調味料等で濡れたテーブルの上に長い時間置かれたとしても、容器が接していた部分に汚れた痕跡が残らないような底部構造に成形された中空容器を提供する。
【課題を解決する手段】
【0011】
本願発明は、テーブル等の平滑な台面上に何時でも使用可能な状態に載置されている醤油や洗剤、化粧料等の液体が入っている容器を手に取って使用する時、あるいは、テーブル等の台上に使用可能なように載置する時などに、何らかの原因で手に触れた容器が滑ったり、また、テーブル等の台が動いたり、振動により容器が勝手にテーブル等の台上を移動したり、容器が倒れたりすることがないような中空容器を形成するために、これらの中空容器を、熱可塑性合成樹脂を用いたブロー成形により成形すると共に、該中空容器がテーブルその他の台面等に接する底部の接地面部分に、梨地やしぼ加工その他の加工により色々な形状をした滑り防止部や吸着部、衝撃吸収部等を形成して、テーブル等の台面上にできるだけ音を立てずに、安定した状態で載置できるような構造をした中空容器に成形する。
【発明の効果】
【0012】
本願発明は、上記したように容器の底壁部に摩擦抵抗や緩衝機能を備えた中空容器を構成するために、梨地やしぼ加工、その他の凹状または凸状の色々な形状や構造をした接触部や接触片からなる摩擦抵抗機能や衝撃吸収機能を容器の底壁部が接する接地面部分に設けた構造の中空容器に形成したことにより、テーブル等の台面上に置かれる中空容器が台面上で簡単に移動したり、転倒したりするようなことを無くすことができて、また、前記接触部の上端面部分を変形可能な柔軟性を有する形状にしたことにより、容器をテーブル面上に置く際の衝撃や衝撃音を和らげることもできて、また、台上の液体を逃がすこともできて、醤油等の調味料あるいは洗剤や化粧料を収容するのに最適な容器を提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本願発明の実施の形態について、最適な一つの実施例に基づいて図面を参照しつつ説明する。
本願発明は、図1に示すように、ポリエチレン等の軟質性の熱可塑性合成樹脂を用いてブロー成形を行って、内容物を出し入れ可能な蓋体を装着できて、醤油等の調味料、洗剤、化粧料その他の液状物を収容するのに適した一般的な中空容器1を成形すると共に、前記中空容器をテーブルその他の台面上に載置する場合に、テーブル面との衝撃音を立てたり、テーブル等の上を容器が移動したり、倒れたりすることがないように形成するために、前記中空容器1の底部4がテーブル等に接する接地面4a部分に、容器の滑りや転倒を防止する摩擦抵抗機能および容器の衝撃を吸収する緩衝機能等を備えた接触部が設けられた液体中空容器を成形する。
【0014】
このような液体容器は、一例として図1(a)に示すように、蓋体2を装着可能な口頸部と筒状の胴壁部3と底壁部4を設けて成形された中空容器1に於いて、図1(b)に示すように、中空容器の底壁部4の接地面4a部分に、細い線条の凸部または凹部とから形成されてなる接触部を設けることにより、摩擦抵抗が備わってテーブル等の上で容器が滑らなくなったり、転倒しなくなったりして、また、接触部の接触片の形状によっては、容器が衝突する衝撃音等を吸収する緩衝機能等を備えることにより、醤油や洗剤等を収容する中空容器を熱可塑性合成樹脂のブロー成形により成形したものである。
このように成形された中空容器1の底壁部4の接地面4a部分に、滑りや転倒を防止する摩擦抵抗機能や衝撃等を吸収する緩衝機能を有する接触部を設けるには、例えば、図2に示すように、容器の接地面4aに筋状の細い溝4bを刻設した状態の接触片に成形するか、または、図3に示すように、逆に接地面4aに細い突条4cを線状に突設した凹凸状の線条体からなる接触片に成形する。
【0015】
容器の底部に上記のような接触部が形成された本願発明の中空容器1が、テーブル面等に載置された場合には、底壁部の接地面4aに筋状に細い溝4bが刻設されたり、細い突条4cが線状に突設されているので、前記容器またはテーブルに何らかの外力が作用したとしても、底壁部に線状に形成された細い溝または細い突条の縁部とテーブル面との間で摩擦力が生じて、容器の動きに抵抗するように作用することになるので、テーブル面を容器が移動したり、倒れるような事態は回避される。
【0016】
また、上記のような構造にした本願発明の容器は、テーブル面や容器の底壁部が水等により濡れていたとしても、水など液体は表面張力の作用により前記細い溝4bや突条4cからなる多数の線状体の接触片の間に逃がされるので、容器の底部の接地面とテーブル面との間の摩擦力が小さくなるようなことはない。
なお、上記した容器の底壁部に設ける細い溝4bや突条4cを、底壁部の中心に対して少しばかり傾斜するように設けておくこことにより、外部からの力に対する摩擦抵抗が大きくなるので、底壁の接地面とテーブル面との間の摩擦力は、一層大きく作用するようになる。
【0017】
尚、本願発明に於いては、中空容器の底壁部4の接地面4a部分に摩擦機能や緩衝機能等をを付与するのに、上記したような細い線状溝構造の接触部を形成するのに代えて、図4に示すように、接地面4a部分に概略卵形状をした楕円形の小さな接触片4d、4eを多数突設させた状態の接触部を形成してもよい。
図4に於いては、卵型の大きい接触片4dの先端側を内向きにして設けると共に、前記接触片4dの間を埋めるように卵型の小さい接触片4eを設けてあるが、必ずしもこのような形状に限定されるものではなくて、同じ形状の接触片のみで形成されてもよい。
【0018】
また、上記したような卵形の楕円形に代えて、図5に示すように、容器の接地面4aに小さな円錐状をした接触片4fが多数突設した状態に接触部を形成してもよい。
上記したように形成された接触部の突起は、テーブル面等に接する上端部の接触面が小さな面からできているので、容器がテーブル面等に接触する時に衝撃を吸収し易くて、当たりを和らげることができるので、音の吸収等の緩衝力が大きくて、また、突起部とテーブル面と摩擦抵抗が損なわれることもないので、容器やテーブルに何らかの外力が作用した際に、テーブル上で容器が移動したり、倒れるようなこともない。
【0019】
そして、上記のような構造にした容器は、テーブル面や容器の底部が水等により濡れていた場合も、水などの液体は突起間の隙間に逃がされるので、接地面とテーブル面との間の摩擦抵抗が小さくなるようなことはないし、また、テーブル面に於ける容器の痕跡を目立たなくすることもできる。
また、上記のしたような形状をした接触片の上端部を少々軟らかで変形可能な柔軟性富むように形成しておけば、容器をテーブル等の上に載置する時に、容器がテーブル面に接触する時の衝撃や衝撃音を一層和らげることができて、手に持っている容器の感触がよくなる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
上記したように、本願発明は、醤油等の調味料、あるいは、洗剤や液体化粧料その他の液状物を収容するのに適した中空容器を得ることができて、また、これらの液状物を収容した容器をテーブル等の台上に載置しておいて、内容液を容器から少量ずつ頻繁に取り出して使用するのに適した液体容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】 本願発明の液体容器を示す斜視図(a)とその底面図(b)である。
【図2】 図1に示す容器底部の接地部に細い溝状の接触部を設けた底面図(a)の一部とその断面図(b)である。
【図3】 図1に示す容器の底部の接地部に細い突条の接触部を突設した底面図(a)の一部とその断面図(b)である。
【図4】 図1に示す容器の底部の接地部に卵形状の接触片を設けた底面図(a)の一部とその断面図(b)である。
【図5】 図1に示す容器の底部の接地部に円錐状の接触片を設けた底面図(a)の一部とその断面図(b)である。
【図6】 中空容器の底部に転倒防止用の接着層を設けた従来の液体容器を示す一部破断図である。
【図7】 中空容器の底部に発泡層を設けた従来の液体容器を示す斜視図(a)とその底部の断面図である。
【図8】 本願発明の先行例である中空容器を示す側面図の一部破断図(a)と底面図(b)である。
【符号の説明】
【0022】
1. 中空容器
2. 口頸部
3. 胴壁部
4. 底壁部
4a. 接地面
4b. 細い溝
4c. 細い突状
4d. 卵形の接触片(大)
4e. 卵形の接触片(小)
4f. 円錐状の接触片
15. 接着層
25. 発泡層
34a.ローレット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性合成樹脂のブロー成形により成形した液状物を収容するのに適した形状の中空容器であって、前記中空容器の底部がテーブル等の台面に接する接地面部分に、容器の動きを制する抵抗力を高めた機能または容器の底部に付着した液体を逃がす機能を有する接触部を形成してなることを特徴とする液体収容容器。
【請求項2】
前記接触部は、接地面部分に多数の細い筋状の溝を刻設するか、または、多数の細い突条を突設して、凹凸状の線状体で形成された接触片からなることを特徴とする請求項1に記載する液体収容容器。
【請求項3】
前記接触部は、接地面部分に多数の小さな接触片が突設されてなることを特徴とする請求項1に記載する液体収容容器。
【請求項4】
前記接触部は、表面が柔軟性を有するような形状に形成されてなることを特徴とする請求項1ないし請求項4に記載する液体収容容器。
【請求項5】
前記接触片は、容器の底部の中心に対して傾斜するように形成されてなることを特徴とする請求項1ないし請求項4に記載する液体収容容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−16071(P2006−16071A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−222618(P2004−222618)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】