説明

液体処理装置

【課題】ポーラスコンクリートを用いた重金属処理装置における固形物分離の問題を解決する。
【解決手段】重金属処理装置1は、流入する液体に含まれる固形物を分離する前処理槽2と、前処理槽2から流出する液体に含まれる重金属を分離する重金属処理槽3を備え、前処理槽2は、内部を流入室5と流出室6に仕切る仕切板25と、流入室5に形成された流入部5aと、流出室6に形成された流出部6aとを備え、流入室5には液体を反転させて上下方向の旋回流を生成するための誘導部9、9aが設けられ、スクリーン8は旋回流の側面に沿うように仕切板25に配置され、重金属処理槽3は、ポーラスコンクリート体10で仕切られた供給室11と排出室12を備え、供給室11に形成した供給部11aに流出部6aが連通し、排出室12に排出部12aが形成され、液体が供給室側からポーラスコンクリート体を通して排出室側に排出される際に、液体に含まれている重金属が分離される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は下水道管路を流れる排水や工場内の廃液処理施設等を流通する液体に含まれる重金属を分離する処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
都市部に敷設される下水道に流入する雨水などの排水は、その一部が雨水を貯留または浸透する設備などにより地中に貯留もしくは排出され、残りは河川に放流される。金属屋根や自動車が通過する道路などから下水道に流入する雨水排水中には、鉛、亜鉛、マンガン、クロム等の有害な多くの重金属が含まれている。
【0003】
このような重金属を含む雨水を、例えば浸透槽から地中に長期間排出を続けると、地中に次第に重金属が分散・蓄積し、土壌や地下水などの地下環境が悪化する。そのため雨水を地下浸透させる際には、出来るだけ重金属を雨水から分離除去することが望ましい。
【0004】
近年、排水中に含まれる重金属を吸着により分離する材料として、ポーラスコンクリートが注目されている。ポーラスコンクリートは微細な空隙が三次元網目状に連続している多孔性コンクリートであり、液体通過性と強いアルカリ性を有し、例えば水中でイオン態となって含有する重金属がポーラスコンクリートに接触すると、そのアルカリ環境により水酸化物として固形化して水から分離される。
【0005】
例えば特許文献1には、非硫酸態硫黄を含む高炉徐冷スラグをセメントや骨材に混合したポーラスコンクリートが記載されている。このポーラスコンクリートは空隙率が10〜50%の三次元網目状の多孔性コンクリートで液体透過性を有しており、重金属を含む液体と接触、または重金属を含む液体を通過させることにより、液体に含まれる重金属を効率よく分離することができる。
【0006】
なお、重金属を吸着して分離できるポーラスコンクリートは、上記特許文献1のほかに、特許文献2、特許文献3、特許文献4等にも記載されている。
【0007】
一方、雨水排水中には土砂、種々のゴミ類、紙類、落ち葉、等の固形物も混入しており、それら固形物が重金属を分離するポーラスコンクリートの表面や空隙部に付着すると、重金属の分離効率が低下するという問題がある。
【0008】
この問題を解決するため、固形物を分離するための前処理槽を設けた重金属処理装置が前記特許文献2に記載されている。この重金属処理装置は、重力沈降式の前処理槽とポーラスコンクリート板を内部に配置した重金属処理槽を連結して構成されている。
【0009】
特許文献2の重金属処理装置は、先ず前処理槽で液体に含まれている固形物の大部分をスクリーンで分離し、次いでその液体を重金属処理槽に供給し、液体がポーラスコンクリート板を通過する際に重金属を吸着して分離するようになっている。
【0010】
この重金属処理装置ではポーラスコンクリート板への固形物付着問題を解決するため、重金属処理槽内にポーラスコンクリート板を水平に配置し、前処理槽から流出する液体をポーラスコンクリート板の下側に供給し、供給された液体をポーラスコンクリート板の下方から上方に透過させ、少なくともポーラスコンクリート板の下面に付着した固形物を重力により剥離・落下しやすいようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第4141794号公報
【特許文献2】米国公開公報US2008/0121579
【特許文献3】特開平10−314723号公報
【特許文献4】特開平10−314720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし特許文献2に記載された重金属処理装置では、前処理槽におけるスクリーンに固形物が付着しやすく、付着した固形物の除去作業を比較的短い周期で実施する必要があるという別の問題が発生する。一般に、雨水排水処理はかなり長期間メンテナンスフリーとすることが求められているので、従来から慣用されているスクリーン式の分離装置をそのまま採用することはできない。
【0013】
そこで本発明は、ポーラスコンクリートを用いた重金属処理装置における固形物分離の問題を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決する第1の液体処理装置は、流入する液体に含まれる固形物を分離する前処理槽と、その前処理槽から流出する液体に含まれる重金属をポーラスコンクリート体により分離する重金属処理槽を備えた液体処理装置において、前処理槽は、その内部を流入室と流出室に仕切る仕切板と、仕切板に形成したスクリーンと、流入室に形成された流入部と、流出室に形成された流出部とを備え、流入室には流入部から流入する液体を反転させて該流入室内に上下方向の旋回流を生成するための誘導部が設けられ、スクリーンは前記生成する旋回流の側面に沿うように配置され、重金属処理槽は、ポーラスコンクリート体で仕切られた供給室と排出室を備え、供給室に形成した供給部に固形分離槽の流出部が連通し、排出室に液体の排出部が形成され、液体が供給室側からポーラスコンクリート体を通して排出室側に排出される際に、液体に含まれている重金属が分離されるように構成したことを特徴とするものである。
【0015】
また第2の液体処理装置は、上記第1の液体処理装置において、前処理槽の流入室と流出室は、互いに平行に配置した2枚の仕切板により仕切られ、各仕切板にスクリーンがそれぞれ形成され、流入室は2枚の仕切板の間に形成され、仕切板に形成したスクリーンの排出側における流出室に流出部が形成され、その流出部と重金属処理槽の供給部が連通していることを特徴とするものである
【0016】
また第3の液体処理装置は上記第1又は第2の液体処理装置において、前処理槽には流入室を上側の第1室と下側の第2室に区分する区分体が設けられ、その区分体に開口部が形成され、第1室に流入部と誘導部が形成され、スクリーンは第1室に生成する上下方向の旋回流の側面に沿うように配置され、第2室には開口部から下降してくる固形物が堆積できる堆積部が形成されることを特徴とするものである。
【0017】
また第4の液体処理装置は上記第1ないし第3の液体処理装置のいずれかにおいて、重金属処理槽内には貫通部を有する支持体が配置され、支持体の貫通部から筒状のポーラスコンクリート体が同軸的に延長され、供給室側から支持体の貫通部を経て流入する液体がポーラスコンクリート体の内側から外側に流通する際に、液体に含まれる重金属が分離されるように構成したことを特徴とするものである。
【0018】
また第5の液体処理装置は上記第1ないし第3の液体処理装置のいずれかにおいて、重金属処理槽の供給室と排出室は互いに平行に配置した板状の2枚のポーラスコンクリート体により仕切られ、供給室は2枚のポーラスコンクリート体の間に形成され、各ポーラスコンクリート体の排出側における排出室に排出部が形成され、供給室には供給部とその供給部から流入する液体を反転させて該供給室内に上下方向の旋回流を生成するための誘導部が設けられ、2枚のポーラスコンクリート体は前記生成する旋回流の側面に沿うように配置されていることを特徴とするものである。
【0019】
また第6の液体処理装置は上記第5の液体処理装置において、重金属処理槽には供給室を上側室と下側室に区分する区分体が設けられ、その区分体に開口部が形成され、上側室に供給部と誘導部が形成され、2枚のポーラスコンクリート体は上側室に生成する上下方向の旋回流の側面に沿うように配置され、下側室には開口部から下降してくる固形物が堆積できる堆積部が形成されることを特徴とするものである。
【0020】
また第7の液体処理装置は上記第1ないし第6の液体処理装置のいずれかにおいて、重金属処理装置に処理すべき液体を供給する液体供給管路にオーバフロー槽が設けられ、そのオーバフロー槽に前処理槽の流入部が連通され、重金属処理槽の排出部が液体を地下に浸透させる浸透槽に連通されていることを特徴とするものである。
【0021】
また第8の液体処理装置は上記第1ないし第7の液体処理装置のいずれかにおいて、前処理槽のスクリーンは、断面楔状の複数のウェッジワイヤを上下方向に配列したウェッジワイヤスクリーンで構成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明の第1の液体処理装置は、特殊な構造を有する新しいスクリーン式の前処理槽と重金属処理槽を組み合わせたこと特徴がある。すなわち該前処置槽はその内部を流入室と流出室に仕切る仕切板と、仕切板に形成したスクリーンと、流入室に形成された流入部と、流出室に形成された流出部とを備え、流入室には流入部から流入する液体を反転させて該流入室内に上下方向の旋回流を生成するための誘導部が設けられ、スクリーンは前記生成する旋回流の側面(この側面の意味は後述する)に沿うように配置されている。
【0023】
本発明にかかる前処理槽は、細かい固形物も高性能で効率よく分離できるので、下流側の重金属処理槽に設けたポーラスコンクリート体が固形物で目詰まりを生じることなく、長期間安定した連続運転が可能になる。また、流入室に流入する液体は内部に設けた誘導部の作用により上下方向の旋回流を生成し、その旋回流の側面に沿うようにスクリーンが配置されているので、固形物は液流と共にスクリーンの表面に沿って旋回しながら循環することになり、スクリーンに固形物が付着しにくい構成になっている。なお、仮に僅かな固形物が一時的にスクリーンの表面に付着したとしても、その付着固形物は旋回流で直ちに洗い流されて剥離するので、スクリーンは目詰まりを生じることなく長期間連続運転が可能になる。
【0024】
また第2の液体処理装置では、上記第1の液体処理装置において、前処理槽の流入室と流出室を互いに平行に配置した2枚の仕切板により仕切り、各仕切板にスクリーンをそれぞれ形成し、流入室を2枚の仕切板の間に形成し、仕切板に形成したスクリーンの排出側における流出室に流出部を形成し、その流出部と重金属処理槽の供給部を連通することができる。
【0025】
このように2枚の平行な仕切板にそれぞれスクリーンを配置し、その内側に上下方向の旋回流を生成させると、スクリーンの有効透過面積が1枚の場合に比べて2倍となるので単位容積あたりの処理応力も2倍になり、且つ、同じ旋回流で2枚のスクリーンに付着した固形物を左右同時に洗い流して剥離することができる。
【0026】
また第3の液体処理装置では、上記第1又は第2の液体処理装置において、前処理槽の流入室を上側の第1室と下側の第2室に区分する区分体を設け、その区分体に開口部を形成し、第1室に流入部と誘導部を形成し、スクリーンを第1室に生成する上下方向の旋回流の側面に沿うように配置し、第2室に開口部から下降してくる固形物が堆積できる堆積部を形成することができる。
【0027】
このように構成すると、第1室で分離された固形物は区分体に形成された開口部から第2室に誘導されて下降(落下もしくは排出)し、その際、第2室には固形物を再び上昇させるような他からの力は実質的に存在しないので、固形物が開口部から上昇して固形物を分離する第1室に戻る恐れはない。そのためスクリーンで分離された固形物が第1室の内部を長時間旋回流に乗って滞留する割合が小さくなり、結果として分離された固形物が第1室におけるスクリーンの表面に再付着する可能性も大幅に低下する。
【0028】
また第4の液体処理装置では、上記第1ないし第3のいずれかの液体処理装置において、重金属処理槽内に貫通部を有する支持体を配置し、支持体の貫通部から筒状のポーラスコンクリート体を同軸的に延長し、供給室側から支持体の貫通部を経て流入する液体がポーラスコンクリート体の内側から外側に流通する際に、液体に含まれる重金属が分離されるように構成することができる。
【0029】
このように構成すると、ポーラスコンクリート体における容積あたりの処理面積(液体流通面積)を大きくできるので、重金属処理槽をコンパクト化できる。
【0030】
また第5の液体処理装置では、上記第1ないし第3のいずれかの液体処理装置において、重金属処理槽の供給室と排出室を互いに平行に配置した板状の2枚のポーラスコンクリート体で仕切り、供給室を2枚のポーラスコンクリート体の間に形成し、各ポーラスコンクリート体の排出側における排出室に排出部を形成し、供給室には供給部とその供給部から流入する液体を反転させて該供給室内に上下方向の旋回流を生成するための誘導部を設け、2枚のポーラスコンクリート体を前記生成する旋回流の側面に沿うように配置することができる。
【0031】
このように2枚のポーラスコンクリート体を配置することにより、重金属槽の容積あたりのポーラスコンクリート体の処理面積(液体流通面積)を大きくできるので、重金属処理槽をコンパクト化できる。また、2枚のポーラスコンクリート体は生成する旋回流の側面に沿うように配置されるので、例え前処理槽のスクリーンを通過した微細な固形物が僅かに重金属処理槽に流入することがあったとしても、流入した固形物は旋回流によりポーラスコンクリート体の表面から常に洗い流されて剥離するので、ポーラスコンクリート体の表面に固形物が付着する可能性は低く、且つポーラスコンクリート体の表面から網目状の微細な孔にその固形物が侵入して目詰まりを生じる可能性も低くなる。
【0032】
また第6の液体処理装置では、上記第5の液体処理装置において、重金属処理槽の供給室を上側室と下側室に区分する区分体を設け、その区分体に開口部を形成し、上側室に供給部と誘導部を形成し、2枚のポーラスコンクリート体を上側室に生成する上下方向の旋回流の側面に沿うように配置し、下側室には開口部から下降してくる固形物が堆積できる堆積部を形成することができる。
【0033】
このように構成すると、上側で旋回流により分離された僅かな固形物は区分体に形成された開口部から下側室に誘導されて下降(落下もしくは排出)し、その際、下側室には固形物を再び上昇させるような他からの力は実質的に存在しないので、固形物が開口部から上昇して上側室に戻る恐れはない。そのためスクリーンで分離された固形物が上側室の内部を長時間旋回流に乗って滞留する割合が小さくなり、結果として分離された固形物が上側室におけるポーラスコンクリートの表面に再付着する可能性も大幅に低下する。
【0034】
また第7の液体処理装置では、上記第1ないし第6のいずれかの液体処理装置において、重金属処理装置に処理すべき液体を供給する液体供給管路にオーバフロー槽を設け、そのオーバフロー槽に前処理槽の流入部を連通し、液体を地下に浸透させる浸透槽に重金属処理槽の排出部を連通することができる。
【0035】
このように構成すると、液体供給管路に流れる液体の流量が重金属処理装置の処理能力を超えたときに、その超過分の液体をオーバフロー槽から例えば河川などにバイパスして放流することができる。そして重金属を分離した液体のみを浸透槽に排出して地下に浸透させることができる。
【0036】
また第8の液体処理装置では、上記第1ないし第7のいずれかの液体処理装置において、前処理槽のスクリーンを断面楔状の複数のウェッジワイヤを上下方向に配列したウェッジワイヤスクリーンで構成することができる。
【0037】
このようなウェッジワイヤスクリーンは微細な固形物も効率よく分離できるので、下流側の重金属処理槽に設けたポーラスコンクリート体が固形物で目詰まりを生じる可能性が一層低くなり、重金属処理槽をより長期間安定した連続運転することが可能になる。しかも、前処理槽で微細な固形物まで分離するウェッジワイヤスクリーンは、一般的な使用形態では固形物付着量もそれに応じて増大してしまうが、本発明のように上下旋回流を生成させて、その旋回流の側面に沿ってウェッジワイヤスクリーンを配置することにより、固形物の付着を効果的に防止できる。すなわち、微細な固形物の分離機能と付着防止機能の相反する目的を同時に達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施の形態となる重金属処理装置の第1実施例を模式的に示すもので、(a)は(b)のA−A断面図、(b)は(a)のB−B断面図である。
【図2】重金属処理装置の第2実施例を模式的に示すもので、(a)は(b)のC−C面図、(b)は(a)のD−D断面図である。
【図3】重金属処理装置の第3実施例を模式的に示すもので、(a)は(b)のE−E面図、(b)は(a)のF−F断面図である。
【図4】重金属処理装置の第4実施例を模式的に示すもので、(a)は(b)のG−G面図、(b)は(a)のH−H断面図である。
【図5】本発明の第5実施例を模式的に示すものである。
【図6】(a)はウェッジワイヤスクリーンを前方から見た斜視図であり、(b)はそれを斜め上方から見た斜視図である。
【図7】ウェッジワイヤスクリーンを構成するウェッジワイヤとスリットの部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
次に図面により本発明の実施例を説明する。以下説明する各実施例は本発明の液体処理装置を適用した重金属処理装置に係るものである。
【実施例1】
【0040】
図1は重金属処理装置の第1実施例を模式的に示すもので、(a)は(b)のA−A断面図、(b)は(a)のB−B断面図である。
【0041】
重金属処理装置1は前処理槽2と重金属処理槽3を備えている。なお本実施例では前処理槽2と重金属処理槽3が共通槽形式に構成されているが、両者を分離してそれぞれ独立した槽構造とし、その槽間を配管で連通することもできる。(後述する各実施例も同様である。)
【0042】
重金属処理槽1を構成する前処理槽2や重金属処理槽3の周壁や底板は、コンクリート製、繊維強化プラスチック製(FRP)、またはポリエチレン等の樹脂製とすることができる。また重金属処理装置1は図示のように開閉可能な蓋体4で覆うことができるが、この蓋体4は鉄板やステンレス板などの金属板、または上記の周壁などと同様な材料で作ることができる。
【0043】
本実施例に係る重金属処理装置1には、雨水排水や工場排水等の処理すべき液体が排水管など液体供給管路から供給されるが、液体供給管路が地上または地下に敷設される場合は、それに応じて重金属処理装置1も地上に設置または地表面を掘り下げて地下に設置することができる。しかし地下に設置する場合はメンテナンスの利便性から、地上から重金属処理装置1の上面に作業者が接近できるように設置することが望ましい。
【0044】
次に重金属処理装置1を構成する前処理槽2について説明する。前処理槽2には、その内部を流入室5と流出室6に仕切る2枚の仕切板25が垂直方向に且つ互いに平行に配置され、各仕切板25にそれぞれスクリーン8が形成されている。流入室5は2枚の仕切板25の内側と周壁7,7aで囲まれた空間に形成され、周壁7の上方に液体の流入部5aが形成されている。なお仕切板25とスクリーン8の組合せは一方のみ配置(旋回流の片側面に1組配置)することもできる。
【0045】
流入部5aは周壁7部分を貫通して形成され、そこに外部から液体供給管路の配管を装着できるようになっている。一方、流出室6は2枚の仕切板25の外側と周壁7,7a、7bに囲まれた2つの空間にそれぞれ形成され、各空間に面する周壁7aの上部に液体の流出部6aが形成されている。この流出部6aは周壁7a部分を貫通して形成される。なお本実施例では、流出部6aが前処理槽2に隣接する重金属処理槽3の供給部11aと兼用される。
【0046】
流入室5の内部には、流入部5aから水平方向に流入する流液を下方に反転させるための板状の誘導部9と、下方に反転した流液を流入部5a側に反転させる誘導部9aが設けられ、これら誘導部9,9aの方向転換助長作用により、流入室5内で流液に上下方向の旋回流が生成する。
【0047】
誘導部9,9aは鋼製、FRP製、ポリエチレン等の樹脂製、コンクリート等で作ることができる。これら誘導部9,9aは隅部側(外側)に膨出した円弧状とすることもできる。また場合によっては誘導部9aを省略することもでき、さらに誘導部9,9aのほかに周壁7の下端部と上端部の少なくとも一方にも同様な誘導部を設けることもできる。
【0048】
仕切板25は上記誘導部と同様な材質で作ることができる。また仕切板25に形成するスクリーン8は、この分野で慣用されているステンレス等の金属板にプレス加工で打ち抜きしたパンチングメタルで作られたパンチングメタルスクリーンを使用することができる。しかし金属板の厚さが数ミリ必要な場合には、その板厚に加工できる孔径も数ミリとなってしまうので、微細な固形物、例えば平均粒径が数ミクロン(μm)〜1mm程度の固形物を分離する場合は、そのような範囲の分離に適したウェッジワイヤスクリーンを使用することが望ましい。
【0049】
なお、パンチングメタルスクリーンを使用する場合のスクリーンの孔径は(1mm〜5mm)、開口率は(15%〜30%)程度がよい。またウェッジワイヤスクリーンを使用する場合のスクリーン目幅は(10μm〜1mm)、好ましくは(100μm〜500μm)程度がよい。
【0050】
なお、スクリーン8の縁部を直接側壁などに固定できる場合は、仕切板25を省略することもできる(以下の実施例も同様)。
【0051】
図1に示す例ではウェッジワイヤスクリーンを使用している。次にウェッジワイヤスクリーンについて具体的に説明する。
【0052】
図6(a)は(図1のスクリーン8として用いた)ウェッジワイヤスクリーン8の前方から見た斜視図であり、図6(b)はそれを斜め上方から見た斜視図である。ウェッジワイヤスクリーン8は断面楔状の複数のウェッジワイヤ8aを平行に配列して構成され、各ウェッジワイヤ8a間に10μm〜1mm程度の微小なスリット8bが形成されている。そして各ウェッジワイヤ8aは複数の支持棒8cに点溶接等により固定される。なお各ウェッジワイヤ8aおよび支持棒8cは例えばステンレス等の耐食性の金属材料で作られる。ウェッジワイヤスクリーン8に形成される各スリット8bは10μm〜1mm程度の固形物の通過を阻止し、スリット幅よりも小さい固形物を含む流液だけを通過させる。なおウェッジワイヤスクリーン8は、各ウェッジワイヤ8aの軸方向が前処理槽2の上下方向に一致するように仕切板25に設けられる。
【0053】
図7は図6に示すウェッジワイヤスクリーン8を構成するウェッジワイヤ8aとスリット8bの部分拡大断面図である。断面が楔状のウェッジワイヤ8aは所定間隔で互いに平行に配列しており、その頭部8dの面が流入室側の面の一部を形成する。その頭部8dの面から垂直方向に延長する楔の軸線Sは、矢印Lで示す流入室3の内側面に沿った上下方向の旋回流方向の下流側に傾斜している。そして旋回流方向Lと頭部8dの面との角度αは3度〜8度、通常5度程度に設定される。
【0054】
このように各ウェッジワイヤ8aの軸線Sを傾斜させると、図示のように、旋回流の上流側における頭部8dの端部8eが下流側における頭部8dの端部8fより流入室5の内側方向に突出する。そのため旋回流が各ウェッジワイヤ8aの突出した端部8eに衝突し、コアンダ効果によりスリット8bに効率よく引き込まれる。従って、ミクロン単位の固形物を分離すためにスリット幅を小さくするとスクリーンの開口率が非常に小さくはなるが、コアンダ効果により通液性が向上してスクリーンの開口率を実質的に増大させる効果を発揮する。このように通液性を向上させることが可能になると、微細な固形物を分離するためにスリット間隔を極めて小さくしても、分離処理能力をかなりのレベルに維持することができる。
【0055】
図1に示すウェッジワイヤスクリーン8は、上下方向の中間部分を境界として上下に区分されている。そして上側のウェッジワイヤスクリーン8と下側のウェッジワイヤスクリーン8における頭部8dの面から垂直方向に延長する楔の軸線Sは互いに逆方向に傾斜し、それぞれが矢印で示す流入室3の内側に沿った上下方向の旋回流方向の下流側に傾斜するようになっている。
【0056】
次に、重金属処理装置1を構成する重金属処理槽3について説明する。重金属処理槽3はポーラスコンクリート体10で仕切られた供給室11と排出室12を備えている。供給室11には前記前処理槽2の2つの流出部6aとそれぞれ兼用になる2つの供給部11aが形成され、排出室12を構成する周壁13の上部に液体の排出部12aが形成されている。なお排出部12aは周壁13部分を貫通して形成されるが、後述するように、この排出部12aには例えば雨水などを地下に浸透する浸透槽に連通する配管が接続される。
【0057】
重金属処理槽3の周壁内側に支持板14が水平方向に着脱自在に(もしくは固定状態で)配置され、その支持板14の中心部に貫通孔14aが形成されている。貫通孔14aには同軸的に沈降物取り出し用の筒体15が固定され、筒体15を取り囲むように9つのポーラスコンクリートブロック板10aが2段に積み重ねられ、これら複数のポーラスコンクリートブロック板10aによりポーラスコンクリート体10が構成される。なお各ポーラスコンクリートブロック板10aは、場合によって1段でもよく、あるいは3段以上積み重ねてもよい。
【0058】
ポ―ラスコンクリート体10は液体にイオン態様で含まれる重金属を、主としてアルカリ環境下に水酸化物化して液体から分離するもので、一般にはセメントと単一粒度の骨材を使用して常圧下で加圧成型するか、セメントに砂に発泡性物質を加えた原材料をオートクレーブ等で発砲させて成形することにより製造することができるが、例えば前記特許文献1(特許第4141794号)に記載されたコンクリートを板状の所定寸法に成形して使用することもできる。なお、本発明に使用するポーラスコンクリート体10の空隙率は10〜50%、特に20〜30%程度が望ましい。
【0059】
ポ―ラスコンクリート体10は、普通ポルトランドセメント、高炉セメント等の原材料にゼオライト、酸化鉄、水酸化鉄などの添加物を1種以上混入して製造することもできる。それら添加物を添加したものは、その添加物によるイオン交換能、触媒能、吸着能などの作用を追加的に利用することができる。なお添加物は粉末または粒状のものをコンクリート材料に添加することができる。また添加物を例えば樹脂バインダーと混合して板状に成形したもの、または粉末または粒状の添加物を水透過性の布製などの扁平な袋内に充填したものを、1枚のポーラスコンクリート板10の上に配置、もしくは2枚のポーラスコンクリート板10の間に配置してもよい。
【0060】
次に上記第1実施例の作用を説明する。前処理槽2の流入室5の上部に形成した流入部5aから液体が矢印のように流入室5内に供給されると、その液流は流入室5の内部で上下方向の旋回流を生成する。すなわち供給された液流は2枚の平行する仕切板25とそれに形成したスクリーン8の対向面でその両側を制限されながら、流入室5の上部を水平方向に流れ、下流側上部の誘導部9に誘導されて下降し、次いで下部の誘導部9aに誘導されて水平方向に方向転換し、流入室の下方を上流側に水平に流れてから周壁7に沿って上昇し流入部5a領域に戻るように循環する。そして上下方向の旋回流は流入部5aから液流が継続する限り持続的に生成する。
【0061】
上下方向の旋回流は上記のように流入室5内を循環するが、その旋回流を流れの束としてみたとき、流入部5aから水平方向に流れるときの旋回流の束の上面は下流側上部の誘導部9に誘導されて下降し、流入室5の下部を通って上流側に戻るときは上面になる。そしてスクリーン8はこのような旋回流の上下の面と垂直な側面に沿うように配置される。
【0062】
スクリーン8を通過した液流は流出室6に流入し、流出部6aを経て重金属処理槽3に供給される。一方、スクリーン8により流出室6側への通過を阻止された固形物は、そのまま上下方向の旋回流に乗って流入室5の内部を循環する。その際、一部の固形物はスクリーン8の表面に一時的に付着することがあるが、スクリーン8は上下方向の旋回流の側面に沿って配置されており、スクリーン8に一時的に付着した固形物は上下方向の旋回流で剥離されるので、スクリーン8が目詰まりを生じるおそれはない。
【0063】
旋回流に乗って流入室5内を循環する固形物のうち、比較的比重の大きいものは重力により次第に流入室5の底部に堆積していくが、浮遊性の微細な固形物はかなり長時間流入室5の内部を循環する。しかし前処理槽2を長期間連続運転したとしても、微細な固形物の積算量は流入室5の内容積に比べて僅かな値にしかならないので、前処理槽2の清掃のために運転停止間隔を短くする必要性は低く、ほとんどの場合実用上の問題はない。
【0064】
前処理槽2から流出部6a(供給部11a)を経て重金属処理槽3の下方に形成された供給室11に流入した流液は、そこから上昇して水平に配置されたポーラスコンクリート体10を透過し、排出室12から排出部12aを経て外部に排出する。そして流液がポーラスコンクリート体10の網目状の微細な連続する空隙(連続空隙)を通過する際に、イオン態の重金属はポーラスコンクリート体10のアルカリ環境下において水酸化物化して固形物として分離され、清浄な液流となって排出部12aから排出される。
【0065】
ポーラスコンクリート体10の板厚は、液体の平均流速において微細な孔内に滞留する重金属由来の固形物が下流側まで達しない範囲に設定することが望ましく、対応する一般的な流量としては、ポーラスコンクリート体の表面積1m当たり800〜900リットル/毎分として、前記空隙率の範囲のポーラスコンクリート体10の板厚としては、安全率を考慮して20cm〜30cm程度の範囲に設定すれば十分である。
【0066】
一般に下水道排水の流量は雨の影響や時間帯により周期的に変化し、一時的に停滞することが多い。流量が存在するときにはポーラスコンクリート体10の孔内に固形物が次第に付着していくが、付着した固形物は雨が止んだ時等に流量が停滞(もしくは中断)した際に、下流側(ポーラスコンクリート体10の上側)の水が逆流して下方に洗い流される。またポーラスコンクリート体10は常に水中あるので、固形物がしていても乾燥しないのでポーラスコンクリート体10に固着することはない。そのためポーラスコンクリート体10は長期間運転しても、固形物付着量は極めてすくない。
【0067】
重金属処理装置1を長期間運転すると、前処理槽2の底部にはかなりの固形物が堆積し、重金属処理槽3の底部にもある程度の固形物や微細な沈降物が堆積する。そこで重金属処理装置1の運転を停止し、これら固形物を外部に回収する。回収作業は先ず重金属処理装置1の上部を閉鎖している蓋体4を開け、次いで前処理槽2の上方からその底部に堆積した固形物と雨水をバキューム吸引等により回収すると共に、重金属処理槽3の上方から筒体15を通してその底部に堆積した固形物や沈降物、雨水をバキューム吸引等により回収する。そして清掃後は、重金属処理装置1の内部に水を注水する必要があるが、ポーラスコンクリート体10の上部に給水車より清水を注水することで、清水はポーラスコンクリート体10の内部を通過しながら底部に流れるので、それによりポーラスコンクリート体10内部の連続空隙部が洗浄され浄化機能が回復される。
【実施例2】
【0068】
図2は重金属処理装置の第2実施例を模式的に示すもので、(a)は(b)のC−C面図、(b)は(a)のD−D断面図である。本実施例は図1に示す第1実施例の変形例であり、第1実施例と異なる部分は、前処理槽2に区分体を設けた点であり、そのほかの部分は同様に構成される。したがって、第1実施例と同じ部分は同一符号(番号)を付し、重複する説明は省略する。
【0069】
本実施例では、前処理槽2の流入室5を上側の第1室20と下側の第2室21に区分する区分体22が設けられ、その区分体22に開口部23が形成される。第1室20には流入部5aが形成されると共に誘導部9,9aが設けられる。仕切板25のスクリーン8は第1室20に生成する上下方向の旋回流の側面に沿うように配置され、第2室21には開口部23から下降してくる固形物が堆積できる堆積部24が形成される。
【0070】
次に本実施例の特徴部分である前処理槽2の作用を説明する。前処理槽2の流入室5の上部に形成した流入部5aから矢印のように液体が流入室5内に供給されると、その液流は流入室5の内部で上下方向の旋回流を生成する。スクリーン8を通過した液流は流出室6に流入し、その流出部6aを経て重金属処理槽3に供給される。一方、スクリーン8により流出室6側への通過を阻止された固形物は、そのまま上下方向の旋回流に乗って流入室5の内部を循環する。
【0071】
第1室20を旋回流に乗って循環する固形物は、循環のたびに少しずつ区分体22の開口部23から下方の第2室21に下降し、その堆積部24に堆積していく。したがって固形物分離機能を有する第1室20内を循環する固形物量は常に低いレベルに維持される。
【実施例3】
【0072】
図3は重金属処理装置の第3実施例を模式的に示すもので、(a)は(b)のE−E面図、(b)は(a)のF−F断面図である。本実施例は図1に示す第1実施例の変形例であり、第1実施例と異なる部分は、重金属処理槽2に設けられるポーラスコンクリート体10の形状が相違する点であり、そのほかは同様に構成される。したがって、第1実施例と同じ部分は同一符号(番号)を付し、重複する説明は省略する。
【0073】
本実施例では、重金属処理槽3の内部に配置されるポーラスコンクリート体10の形状が筒状になっている。重金属処理槽3の内壁には板状の支持体30が着脱自在に(または固定状態で)配置され、その支持体30にポーラスコンクリート体10が支持されている。具体的には、支持体30の中央部に形成された4つの円形の貫通孔30aの位置から筒状(本実施例では円筒状)のポーラスコンクリート体10が4本それぞれ同軸的に且つ支持体30に対して垂直に延長されている。
【0074】
本実施例における支持体30は、上記筒状のポーラスコンクリート体10と同じ材質のポーラスコンクリートで作られており、支持体30部分でも重金属を吸着できるようになっている。そしてその支持体30の貫通孔31の周縁に形成した環状溝(図示せず)に筒状のポーラスコンクリート体10の下部を嵌めこんで支持している。しかしこの支持体30はステンレス等の金属板やFRPなどで構成してもよい。
【0075】
なお本実施例では、前処理槽2が図1の第1実施例と同じように構成されているが、この前処理槽2は図2の第2実施例における前処理槽2と同じ構成であってもよい。
【0076】
次に本実施例の特徴部分である重金属処理槽3の作用を説明する。前処理槽2からその流出部6a(もしくは重金属処理槽3の供給部11a)を経て重金属処理槽3の下方に形成された供給室11に流入した流液の一部は上昇し、水平に配置された支持体30を下側から上側に透過して排出室12に排出し、残りの大部分の流液は4本のポーラスコンクリート体10の内側を上昇してその周壁を内側から外側に透過して排出室12に排出する。そして流液がポーラスコンクリート体10等を透過する際に、イオン態の重金属はポーラスコンクリート体10等のイオン吸着機能により吸着されて分離され、清浄な液流となって排出室12から排出部12aを経て外部に排出される。
【0077】
重金属処理装置1を長期間運転すると、重金属処理槽3の底部にもある程度の固形物や微細な沈降物が堆積する。そこで重金属処理装置1の運転を停止して固形物を外部に回収する。具体的には先ず重金属処理装置1の上部を閉鎖している蓋体4を開け、次いで重金属処理槽3の上方からその底部に堆積した固形物や沈降物を筒状のポーラスコンクリート体10を通してバキューム吸引等により回収する。
【実施例4】
【0078】
図4は重金属処理装置の第4実施例を模式的に示すもので、(a)は(b)のG−G面図、(b)は(a)のH−H断面図である。本実施例は図2に示す第2実施例の変形例であり、第2実施例と異なる部分は、前処理槽1に設けられる流入室5の周壁部分、及び重金属処理槽2に設けられるポーラスコンクリート体10の配置構造であり、そのほかの部分は同様に構成される。したがって、第2実施例と同じ部分は同一符号(番号)を付し、重複する説明は省略する。
【0079】
本実施例の前処理槽2は、その流入室5を上側の第1室20と下側の第2室21に区分する区分体22が設けられ、その区分体22に開口部23が形成されている。第1室20は周壁7から横方向に互いに平行に延長する2枚の仕切板25と、その仕切板25に形成したスクリーン8と、各スクリーン8の下流側の端縁間を閉鎖する仕切板25と、区分体22とで囲まれた内部空間により構成される。そして周壁7の上部に流入部5aが形成され、第1室20の内部に誘導部9,9aが設けられる。
【0080】
第2室21は槽底板、周壁7、仕切板25および区分体22とで囲まれた内部空間により構成され、その内部には開口部23から下降してくる固形物が堆積できる堆積部24が形成される。
【0081】
2枚のスクリーン8は、第1室20内の誘導部9,9aにより生成する上下方向の旋回流の側面に沿うように配置され、2枚のスクリーン8の排出側(下流側)に流出室6が形成され、その流出室6の上部に流出部6a(供給部11a)が形成されている。
【0082】
本実施例の重金属処理槽3は、供給室11と排出室12が互いに平行に配置された板状の2枚のポーラスコンクリート体10により仕切られる。供給室11にはそれを上側室40と下側室41に区分する区分体42が設けられ、その区分体42に開口部43が形成される。具体的には、上側室40は互いに平行に配置した2枚のポーラスコンクリート体10、周壁7a、中壁45および区分体42の内部空間に形成され、下側室41は周壁7,7a、中壁45、区分体42および槽底板の内部空間に形成される。そして下側室41には開口部43から下降してくる固形物や沈降物が堆積できる堆積部44が形成される。ポーラスコンクリート体10の空隙率は10〜50%、特に20〜30%程度が望ましい。
【0083】
上側室40に供給部11a(前処理槽2の排出部6aと兼用)が形成されると共に、供給部11aから流入する液体を反転させて該供給室内に上下方向の旋回流を生成するための誘導部46,46aが設けられる。一方、排出室12には排出部12aが形成される。そして2枚のポーラスコンクリート体10は前記生成する旋回流の側面に沿うように配置されている。
【0084】
なお本実施例では、前処理槽2と重金属処理槽3のいずれも区分体22または区分体42を設けているが、場合によってはこれら区分体22,42のいずれか、またはいずれも省略することができる。
【0085】
次に本実施例の重金属処理装置1の作用を説明する。前処理槽2の流入室5の上部に形成した流入部5aを経て矢印のように液体が流入室5内に供給されると、その液流は誘導部9,9aにより方向転換して流入室5の内部で上下方向の旋回流を生成する。スクリーン8を通過した液流は流入室6に流入し、流出部6aを経て重金属処理槽3に供給される。一方、スクリーン8により流出室6側への通過を阻止された固形物は、そのまま上下方向の旋回流に乗って流入室5の内部を循環する。
【0086】
第1室20を旋回流に乗って循環する固形物は、循環のたびに少しずつ区分体22の開口部23から下方の第2室21に下降し、その堆積部24に堆積していく。したがって固形物分離機能を有する第1室20内を循環する固形物量は常に低いレベルに維持される。
【0087】
次に、重金属処理槽3の供給部11aから矢印のように供給室11内に水平方向に流液が供給されると、その液流は誘導部46,46aにより方向転換して供給室11の内部で上下方向の旋回流を生成する。
【0088】
上下方向の旋回流は上記のように供給室11内を循環するが、その旋回流を流れの束としてみたとき、供給部により11aから水平方向に流れるときの旋回流の束の上面は下流側上部の誘導部46に誘導されて下降し、供給室11の下部を通って上流側に戻るときは上面になる。そして2枚のポーラスコンクリート体10はこのような旋回流の上下の面と垂直な両側面に沿うように配置される。
【0089】
流液が2枚のポーラスコンクリート体10を通過して排出室12側に流出する際に、液体に含まれている重金属が例えば水酸化物化して分離される。前処理槽2から微細な固形物が供給室11に混入したとき、その固形物は2枚のポーラスコンクリート体10を通過できずに、そのまま上下方向の旋回流に乗って供給室11の内部を循環する。
【0090】
その際、一部の固形物はポーラスコンクリート体10の表面に一時的に付着することがあるが、ポーラスコンクリート体10は上下方向の旋回流の側面に沿って配置されているので、一時的に付着した固形物は上下方向の旋回流で剥離され、ポーラスコンクリート体10が目詰まりするおそれはない。旋回流に乗って流入室5内を循環する固形物は、区分体42の開口部43から次々と下降して下側室41の堆積部44に堆積する。なお本実施例における区分体42は省略してもよい。
【実施例5】
【0091】
図5は本発明の第5実施例を模式的に示すものである。本実施例では、重金属処理装置1に処理すべき液体を供給する液体供給管路50の配管にオーバフロー槽51が設けられ、そのオーバフロー槽51に前処理槽2の流入部5aが連通される。また重金属処理槽3の排出部12aが液体を地下に浸透させる浸透槽52に連通される。
【0092】
オーバフロー槽51には堰53が設けられる。そして堰53の上流側と前処理槽2の流入部5aが連通し、堰53の下流側は河川等に放流する下流側配管が連通する。なお堰53は前処理槽2に流入する液流がその処理能力を超えた分を下流側にオーバフローさせる高さに調整できるようになっている。このように構成すると、大雨時などにおいて重金属処理装置1の処理能力を超える排水が流入したときに、重金属処理装置1が安全運転を継続できるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明の重金属処理装置は、一般道路や高速道路、建物の金属屋根、金属製構築物などから流れてくる雨水に含まれている重金属、または工場排水などに含まれている重金属を分離して、環境に影響を与えない液流にして地下に浸透させる資源循環分野に利用できる。
【符号の説明】
【0094】
1 重金属処理装置
2 前処理槽
3 重金属処理槽
4 蓋体
5 流入室
5a 流入部
6 流出室
6a 流出部
7、7a、7b 周壁
8 スクリーン
8a ウェッジワイヤ
8b スリット
8c 支持棒
8d 頭部
8e、8f 端部
9、9a 誘導部
10 ポーラスコンクリート体
10a ポーラスコンクリートブロック板
11 供給室
11a 供給部
12 排出室
12a 排出部
13 周壁
14 支持板
14a 貫通孔
15 筒体
20 第1室
21 第2室
22 区分体
23 開口部
24 堆積部
25 仕切板
30 支持体
31 貫通孔
40 上側室
41 下側室
42 区分体
43 開口部
44 堆積部
46、46a 誘導部
50 液体供給管路
51 オーバフロー槽
52 浸透槽
53 堰

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入する液体に含まれる固形物を分離する前処理槽と、その前処理槽から流出する液体に含まれる重金属をポーラスコンクリート体により分離する重金属処理槽を備えた液体処理装置において、
前処理槽は、その内部を流入室と流出室に仕切る仕切板と、仕切板に形成したスクリーンと、流入室に形成された流入部と、流出室に形成された流出部とを備え、流入室には流入部から流入する液体を反転させて該流入室内に上下方向の旋回流を生成するための誘導部が設けられ、スクリーンは前記生成する旋回流の側面に沿うように配置され、
重金属処理槽は、ポーラスコンクリート体で仕切られた供給室と排出室を備え、供給室に形成した供給部に固形分離槽の流出部が連通し、排出室に液体の排出部が形成され、液体が供給室側からポーラスコンクリート体を通して排出室側に排出される際に、液体に含まれている重金属が分離されるように構成したことを特徴とする液体処理装置。
【請求項2】
請求項1において、前処理槽の流入室と流出室は、互いに平行に配置した2枚の仕切板により仕切られ、各仕切板にスクリーンがそれぞれ形成され、流入室は2枚の仕切板の間に形成され、仕切板に形成したスクリーンの排出側における流出室に流出部が形成され、その流出部と重金属処理槽の供給部が連通していることを特徴とする液体処理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前処理槽には流入室を上側の第1室と下側の第2室に区分する区分体が設けられ、その区分体に開口部が形成され、第1室に流入部と誘導部が形成され、スクリーンは第1室に生成する上下方向の旋回流の側面に沿うように配置され、第2室には開口部から下降してくる固形物が堆積できる堆積部が形成されることを特徴とする液体処理装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかにおいて、重金属処理槽内には貫通部を有する支持体が配置され、支持体の貫通部から筒状のポーラスコンクリート体が同軸的に延長され、供給室側から支持体の貫通部を経て流入する液体がポーラスコンクリート体の内側から外側に流通する際に、液体に含まれる重金属が分離されるように構成したことを特徴とする液体処理装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項3のいずれかにおいて、重金属処理槽の供給室と排出室は互いに平行に配置した板状の2枚のポーラスコンクリート体により仕切られ、供給室は2枚のポーラスコンクリート体の間に形成され、各ポーラスコンクリート体の排出側における排出室に排出部が形成され、供給室には供給部とその供給部から流入する液体を反転させて該供給室内に上下方向の旋回流を生成するための誘導部が設けられ、2枚のポーラスコンクリート体は前記生成する旋回流の側面に沿うように配置されていることを特徴とする液体処理装置。
【請求項6】
請求項5において、重金属処理槽には供給室を上側室と下側室に区分する区分体が設けられ、その区分体に開口部が形成され、上側室に供給部と誘導部が形成され、2枚のポーラスコンクリート体は上側室に生成する上下方向の旋回流の側面に沿うように配置され、下側室には開口部から下降してくる固形物が堆積できる堆積部が形成されることを特徴とする液体処理装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかにおいて、重金属処理装置に処理すべき液体を供給する液体供給管路にオーバフロー槽が設けられ、そのオーバフロー槽に前処理槽の流入部が連通され、重金属処理槽の排出部が液体を地下に浸透させる浸透槽に連通されていることを特徴とする液体処理装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれかにおいて、前処理槽のスクリーンは、断面楔状の複数のウェッジワイヤを上下方向に配列したウェッジワイヤスクリーンで構成されていることを特徴とする液体処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−20052(P2011−20052A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−167384(P2009−167384)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(000120146)株式会社ハネックス (56)
【Fターム(参考)】