説明

液体包装容器

【課題】内容物注出の際に注出通路が閉塞しないようにし、内容物が適正に流れ出るようにする。
【解決手段】注出口部5における正面シート2または背面シート3の少なくとも一方のシートに、注出通路5の中心線9に対して凸シール部9から延ばした接線10が該接線10と中心線9とでなす角度で約30°から約60°の範囲で交わる中心線9上の位置にして、シートの厚さ方向に凸または凹となる凸部12を設け、該凸部12から中心線9に沿って筋押し線13を延設した。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、液体包装容器、特にシートの貼り合わせにより形成される液体包装容器に関するものである。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】従来から、合成樹脂製などによりなるボトルタイプの容器においてはその不要時における廃棄処理を行うことでゴミの増大や環境破壊を招き易いという点が問題となってきている。このような状況から近年、一般家庭での使用量が大きい台所用液体洗剤や洗濯用液体洗剤、液体柔軟剤、シャンプー、リンス、ボディーソープなどの商品に対しては、詰め替え用として環境への影響を考慮した素材を選択した容器であってかさ張り難い形状の液体用包装容器を用いて提供されるようになってきた。図5はその一例としての液体包装容器1を示しており、それぞれ積層構成とした正面シート2と背面シート3と底シート4からなり、容器底部に前記底シート4を介在させた状態で正面シート2と背面シート3とを貼り合わせ(例えば、ヒートシール)、容器底部の正面シート2の下辺と背面シート3の下辺との間を広げるようにして自立でき、また、容器上部では前記正面シート2と背面シート3との三周辺を相互に貼り合わせた形態としていて、この形態を一般にスタンディングパウチと称されている。そして、この液体包装容器1では、空容器に内容物を移し替えるに際しては容器上部の一方の隅部を切り取り、その切り口を空容器の口部に当てがいながら注ぎ入れるようにしている。そして、この内容物の注出が行い易いように、図示されているごとく、前記隅部に略嘴状の注出口部5を設けるようにしていて、正面シート2と背面シート3との周辺を貼り合わせ容器中央側に向けて凸形状とした二つの凸シール部6の間に注出通路7を配置させるとともに、前記注出口部5の上方および側方に段部8を形成(即ち、注出口部外縁形状を凹状に形成)し、この段部8を容器の口部に当てがわせるようにして、開封した注出口部5を容器口部内に差し入れることで、注出口部に対する前記注出口部のズレなどを抑えて安定した注出を行うことを目的とした工夫が提案されている。
【0003】しかしながら、液体包装容器が比較的柔軟なシートから形成されて形状変形し易いものであるため、注出口部を開封してから容器を傾けながらその注出口部を容器口部に差し入れようとする際、内容物が注出口部側に移動することで正面シートや背面シートが変形して注出口部における前記正面シートと背面シートとが密接し、注出通路が閉鎖されるという問題があった。そして、この注出通路が閉鎖されるという点に関して検討したところ、閉塞された注出口部周りを見ると図5に示すように、注出通路7の中心線9に対して上記凸シール部6から注出方向に向けて閉塞線が延びていて、この閉塞線を前記凸シール部6の容器内縁から延ばした接線10としてとられることができ、この接線10は、該接線10と前記中心線9とでなす角度αで約30°から約60°の範囲で形成されていた。このように注出通路の基部側で一対の閉塞線が山形状に形成されてしまい、内容物が注出通路内へ流れ込むのを阻害するようにしていた。さらに、注出のために液体包装容器全体を傾けたときに注出口部側に移動してきた内容物によって注出口部より上方のシール部分および下方のシール部分が押されると、図6に示すように、この両者のシール部分が近づく形となり、よって前記凸シール部6それぞれの部分から折れ曲がりながら注出口部5それぞれの上方側にシール縁5aと下方側のシール縁5bとが近づくような変形、即ち、注出口部5の基部11から開封口側にかけて全体的に樋状に折り曲がるという変形を生じ易く、これによっても注出通路の閉塞が生じるという点が確認された。そこで本発明は上記した事情に鑑み、内容物注出の際に注出通路が閉塞しないようにすることを課題とし、内容物が適正に流れ出るようにすることを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は上記課題を考慮してなされたもので、正面シートと背面シートとの辺部を貼り合わせて容器上部側に、注出通路が配置されている略嘴状の注出口部を有する液体包装容器において、前記注出口部における正面シートまたは背面シートの少なくとも一方のシートに、シートの厚さ方向に凸または凹となる凸部を設け、かつ、該凸部に連続する筋押し線を設けたことを特徴とする液体包装容器を提供して、上記課題を解消するものである。そして、本発明において、上記正面シートと背面シートとの周辺を貼り合わせ容器中央側に向けて凸形状とした二つの凸シール部の間に注出通路が配置されている略嘴状の注出口部を有し、前記注出口部における正面シートまたは背面シートの少なくとも一方のシートに、前記注出通路の中心線に対して前記凸シール部の容器内縁から注出方向に向けて延ばした接線が該接線と中心線とでなす角度で約30°から約60°の範囲で交わる中心線上の位置にして、シートの厚さ方向に凸または凹となる凸部が設けられ、該凸部から前記中心線に沿って筋押し線が容器収納領域側へ向けて延設されていることが良好である。また、本発明において、上記注出口部における正面シートまたは背面シートの少なくとも一方のシートに、前記注出通路の中心線に対して前記凸シール部の容器内縁から注出方向に向けて延ばした接線が該接線と中心線とでなす角度で約30°から約60°の範囲で交わる中心線の領域を間にして、上記凸部が一対設けられていることが良好であり、さらに、上記凸部を求心側にして複数本の筋押し線が該凸部から拡散するようにして延設されているものとすることができるものである。そして、上記注出口部の中心線と交わる開口予定線部が、上記凸部を横断する位置に設けられていることができるものである。
【0005】
【発明の実施の形態】つぎに本発明を図1から図4に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。なお、図5と図6に示す従来例と構成が重複する部分は同符号を付してその説明を省略する。本発明の液体包装容器1にあっては、注出口部6における正面シート2と背面シート3とに、注出通路7の中心線9に対して上記接線10が該接線10と中心線9とでなす角度αで約30°から約60°の範囲で交わる中心線上の位置にして、シート厚さ方向において容器外方に向けて突出した凸部12が一つずつ設けられている。この凸部12は前述した角度範囲の接線10と中心線9とで形成される交点の部分を全て含むようにした大きさに設けられており、注出口部6を開封した後に容器を傾けて内容物を注出する際に、上述した従来例では接線10の部分で閉塞線が形成されて注出通路7は閉じていたが、前記凸部12が存在することで注出通路7の内部では空間が形成されている状態のままであり、内容物が注出されるようになる。そして、内容物がその空間を通り始めることを切っ掛けとして内容物の流れの圧力などによって、一層、注出通路7が開かれるようにもなり、内容物は確実に注出できるようになる。
【0006】また、図示されているように、上記凸部12それぞれにはこの凸部12から前記中心線9に沿って筋押し線13が中心線9に沿うようにしながら容器中心側へ向けて延設されている(なお、図においては正面シートの凸部に筋押し線が連続している状態を示しているが、背面シートの凸部側においても同様にこの筋押し線が連続している)。前記筋押し線13は上記凸部12と同じようにシート厚さ方向において容器外方に向けて突出する断面形状とされたものであり、注出口部5の基部11を通って正面シート2と背面シート3とで形成された収納部領域までに達するようにして設けられている。このように筋押し線13が凸部12から容器中心側に向けて延設されているため、注出口部を開封して内容物の注出を行う際、内容物が注出口部側に移動してきた時点で、この正面シート側と背面シート側の筋押し線13の部分が稜線となるようにしながら収納領域側から前記基部11を通って注出口部5までが共に、容器開放に向けて凸となるように断面略山形に折れ曲がるようになり、注出通路の内部空間が閉塞されないようにしている。このように筋押し線13を設けているため、基部11辺りのシートの剛性が高まり、かつ、注出時に基部11側の正面シートや背面シートが容器外方に凸となる形状変形するようにしているため、従来のような基部11辺りで正面シートと背面シートとが共に同一方向に折れ曲がるというようなことが生じず、正面シートと背面シートとの密着を生じさせない。そして、注出時に上述したように筋押し線13を稜線として基部11での正面シートや背面シートが容器外方に向けて凸となる断面山形状になるため、注出口部5での注出通路7の内部が確実に開いた状態に形成され、内容物の注出が適正に行えるようになる。
【0007】図において14は開封予定線部であり、注出口部5の中心線9と交わるようにして注出口部5を横断しており、さらに、この開口予定線部14が上記凸部12を横断する位置に設けられている。これによって、開口予定線部14に沿って切断すれば、開封した時点で切断縁の位置に凸部12による空間が外方に対して開いた状態で表れ、上述したごとく、凸部12と筋押し線13との働きによって閉鎖されない注出通路7が外方と連通することとなり、より一層、内容物の注出が行い易くなる。
【0008】図3は他の例を示している。この図3(イ)、(ハ)に示されているように、上記筋押し線13は中心線9に沿った配置の一本のみに限定されるものではなく、上記凸部12を求心側にして複数本の筋押し線13が該凸部12から拡散するようにして延設せてもよい。また、図3(ロ)、(ハ)に示されているように、凸部12のシート方向から見た形状が円状や略長円状となるものに限定されず、略三角形状のものとしてもよい。さらに、凸部12、筋押し線13としてシート厚さ方向において容器外方に向けて凸となる断面形状のものを例示したが、この凸部12や筋押し線13は容器内方に向けて凸となる断面形状のものとしてもよい。上記凸部12にあっては、注出口部5における正面シート2と背面シート3との密着を抑える目的で形成されるものである。よって、凸部12は上記中心線9上に一つのみとすることに限定されない。図4はその例を示している。この例では、注出口部5における正面シート2または背面シート3の少なくとも一方のシートに、上記接線10と中心線9とでなす角度で約30°から約60°の範囲で交わる中心線9の領域を間にして、前記接線10に重なる位置で凸部12を一対設けている。このようにすることでも注出通路の閉塞を抑えることができ、(イ)に示されるごとく、二つの凸部12を中心線9を間にして対峙する配置とする他に、(ロ)に示すように、さらに一つの凸部12を中心線9の上に配置するなど、各種のレイアウトが可能である。なお、正面シートと背面シートとの両シートに凸部と筋押し線とが設けられる場合、正面シートの凸部や筋押し線と、背面シートの凸部や筋押し線とは、その位置、大きさ、長さを一致させる必要はない。また、上記各実施の例では、注出口部が凸シール部の間に配置されている構造のものを示したが、前記凸シール部を有さずに、容器上部の一端側を外方に向けて嘴状に延設させて注出口部を形成する容器であってもよい。
【0009】本発明の容器に使用する材料構成としては、下記のものを例として挙げることができる。
(1)
正面シート、背面シート:(外面)ポリエチレンテレフタレート(12μm)/アルミ箔(7μm)/延伸ナイロン(15μm)/線状低密度ポリエチレン(100μm)
底シート:(外面)ナイロン(25μm)/アルミ箔(7μm)/線状低密度ポリエチレン(120μm)
(2)
正面シート、背面シート:(外面)内面に蒸着層を設けたポリエチレンテレフタレート(12μm)/延伸ナイロン(15μm)/線状低密度ポリエチレン(130μm)
*蒸着層としてはアルミニウムなどの金属蒸着、アルミナ、シリカなどの無機化合物蒸着などを挙げることができる。
底シート:(外面)ナイロン(25μm)/線状低密度ポリエチレン(120μm)
(3)
正面シート、背面シート:(外面)内面に蒸着層を設けたポリエチレンテレフタレート(12μm)/外面に蒸着層を設けた延伸ナイロン(15μm)/線状低密度ポリエチレン(130μm)
底シート:(外面)ナイロン(25μm)/線状低密度ポリエチレン(120μm)
(4)
正面シート、背面シート:(外面)内面に蒸着層を設けたポリエチレンテレフタレート(12μm)/線状低密度ポリエチレン(150μm)
底シート:(外面)ナイロン(25μm)/線状低密度ポリエチレン(150μm)
(5)
正面シート、背面シート:(外面)ポリエチレンテレフタレート(12μm)/延伸ナイロン(15μm)/線状低密度ポリエチレン(130μm)
底シート:(外面)ナイロン(25μm)/線状低密度ポリエチレン(130μm)
(6)
正面シート、背面シート:(外面)ポリエチレンテレフタレート(12μm)/外面に蒸着層を設けた延伸ナイロン(15μm)/線状低密度ポリエチレン(130μm)
底シート:(外面)ナイロン(25μm)/線状低密度ポリエチレン(130μm)
(7)
正面シート、背面シート:(外面)延伸ナイロン(15μm)/線状低密度ポリエチレン(150μm)
底シート:(外面)延伸ナイロン(25μm)/線状低密度ポリエチレン(150μm)
【0010】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の液体包装容器によれば、正面シートと背面シートとの辺部を貼り合わせて容器上部側に、注出通路が配置されている略嘴状の注出口部を有する液体包装容器において、前記注出口部における正面シートまたは背面シートの少なくとも一方のシートに、シートの厚さ方向に凸または凹となる凸部を設け、かつ、該凸部に連続する筋押し線を設けたことを特徴とするものである。これによって、凸部の存在によって注出通路に空間が常時形成されるとともに、筋押し線によって補強される状態となり、注出時における注出口部のシート密着を招く折れ曲がりを防止することができる。また、本発明において、正面シートと背面シートとの周辺を貼り合わせ容器中央側に向けて凸形状とした二つの凸シール部の間に注出通路が配置されている略嘴状の注出口部を有し、前記注出口部における正面シートまたは背面シートの少なくとも一方のシートに、前記注出通路の中心線に対して前記凸シール部の容器内縁から注出方向に向けて延ばした接線が該接線と中心線とでなす角度で約30°から約60°の範囲で交わる中心線上の位置にして、シートの厚さ方向に凸または凹となる凸部が設けられ、該凸部から前記中心線に沿って筋押し線が容器収納領域側へ向けて延設されているものとすることができるものである。このように注出口部の中心線と凸シール部からの所要角度範囲の接線との交点部分やその交点部分を間にした位置に凸部を設けることで、注出口部における正面シートと背面シートとをより確実に密着させず、注出通路中に常時、空間が形成されることとなり、注出に際して内容物が適正にその注出通路を通って注出されるようになる。そして、前記凸部から筋押し線が連続して設けられているため、従来、注出時に注出通路を閉じるような変形が生じ易かった注出口部基部周りが、その筋押し線にて補剛されて、正面シート側や背面シート側への折れ曲がりがより確実に抑えられて、注出口部でのシートの密着が防止でき、また、注出の際に内容物が注出口部側に移動してきた時点で、基部や注出口部のでシートがこの筋押し線を稜線とする断面形状で容器外方へ折り出るようになり、注出通路が確実に開いて、内容物の流れ出しを良好にするなど、実用性に優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る液体包装容器の一例を示す説明図である。
【図2】一例における注出口部を開封した状態で示す説明図である。
【図3】他の例を示すもので、(イ)は長円状凸部に三本の筋押し線を連続させた例を示す説明図、(ロ)は三角状凸部に一本の筋押し線を連続させた例を示す説明図、(ハ)は三角状凸部に三本の筋押し線を連続させた例を示す説明図である。
【図4】同じく他の例を示す説明図である。
【図5】従来の液体包装容器を示す説明図である。
【図6】従来例において注出口部基部での折れ曲がりを示す説明図である。
【符号の説明】
1…液体包装容器
2…正面シート
3…背面シート
5…注出口部
6…凸シール部
7…注出通路
9…中心線
10…接線
11…基部
12…凸部
13…筋押し線
14…開口予定線部

【特許請求の範囲】
【請求項1】正面シートと背面シートとの辺部を貼り合わせて容器上部側に、注出通路が配置されている略嘴状の注出口部を有する液体包装容器において、前記注出口部における正面シートまたは背面シートの少なくとも一方のシートに、シートの厚さ方向に凸または凹となる凸部を設け、かつ、該凸部に連続する筋押し線を設けたことを特徴とする液体包装容器。
【請求項2】正面シートと背面シートとの周辺を貼り合わせ容器中央側に向けて凸形状とした二つの凸シール部の間に注出通路が配置されている略嘴状の注出口部を有し、前記注出口部における正面シートまたは背面シートの少なくとも一方のシートに、前記注出通路の中心線に対して前記凸シール部の容器内縁から注出方向に向けて延ばした接線が該接線と中心線とでなす角度で約30°から約60°の範囲で交わる中心線上の位置にして、シートの厚さ方向に凸または凹となる凸部が設けられ、該凸部から前記中心線に沿って筋押し線が容器収納領域側へ向けて延設されている請求項1に記載の液体包装容器。
【請求項3】上記注出口部における正面シートまたは背面シートの少なくとも一方のシートに、前記注出通路の中心線に対して前記凸シール部の容器内縁から注出方向に向けて延ばした接線が該接線と中心線とでなす角度で約30°から約60°の範囲で交わる中心線の領域を間にして、上記凸部が一対設けられている請求項1または2に記載の液体包装容器。
【請求項4】上記凸部を求心側にして複数本の筋押し線が該凸部から拡散するようにして延設されている請求項1から3の何れか一項に記載の液体包装容器。
【請求項5】上記注出口部の中心線と交わる開口予定線部が、上記凸部を横断する位置に設けられている請求項1から4の何れか一項に記載の液体包装容器。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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