説明

液体収容タンク

【課題】気泡の巻き込みを効果的に防ぐことができ、ポリウレタン樹脂発泡体の製造装置のように、気泡の巻き込みによる影響が大きい分野において特に好適な液体収容タンクを提供する。
【解決手段】底面に排出口15Aを有する液体収容タンク10Aにおいて、排出口15Aの上方を覆う傘部22Aと前記傘部22Aを排出口15Aから一定の高さに位置させる固定手段25Aとよりなる気泡混入防止装置21Aを設けた。排出口15Aと傘部22Aとの距離を20〜80mmとすると共に、傘部22Aを、排出口15Aの直径の1倍〜5倍の直径を有する円盤状からなるものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気泡混入防止装置を備える液体収容タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、ポリウレタン樹脂発泡体を製造する場合、図9に示すような液体収容タンク50に液体を収容し、液体収容タンク50の排出口51に接続されたポンプ(図示せず)で液体収容タンク50から液体を発泡注入機(図示せず)へ供給して発泡注入機の攪拌装置で攪拌し、反応混合液として吐出している。なお、ポリウレタン樹脂発泡体の製造においては、通常、ポリイソシアネート成分側の液体収容タンクと、ポリオール成分側の液体収容タンクの2つ設けられ、それぞれの液体収容タンクから発泡注入機の攪拌装置へ液体が移送される。
【0003】
しかし、タンク内の液体が少なくなってくると、渦巻きを形成しながら排出口51から液体が排出されるようになり、その際に泡が液体に巻き込まれるようになる。液体に泡が巻き込まれると、ポンプによる液体の移送量に変動を生じ、一定量を安定して移送し難くなる。特に、ポリウレタン樹脂発泡体の製造においては、2つのタンクから移送される液体を攪拌装置によって所定の比率で混合する必要があり、液体の移送量が変化して混合比率に変化を生じるとポリウレタン樹脂発泡体を一定の品質で得られなくなる。
【0004】
なお、原子力発電設備の分野では蒸気と気体を分離する気液分離タンクにおいて、液体の水平方向の旋回流を阻止して蒸気に含まれるミスト(水分)を捕捉することを目的として、垂直方向(上下方向)の板部材からなるミスト捕捉手段を排出口に設けることが提案されている。しかし、このミスト捕捉手段を、ポリウレタン樹脂発泡体の製造装置における液体収容タンクに用いたところ、得られるポリウレタン樹脂発泡体にピンホールが発生するなど、良好な品質のものを一定して得るのが難しいことが判明した。これは、気液分離タンクでは、ミストを捕捉することを目的としているため、気泡の巻き込みが適度に低減されていれば充分な効果が得られるのに対して、ポリウレタン樹脂発泡体の製造においては、化学反応によってポリウレタン樹脂発泡体を形成するため、気泡の巻き込みによる影響を一層受けやすく、ミスト捕捉手段では気泡の巻き込み防止が不十分であることによると推測される。
【0005】
【特許文献1】特開2003−240892号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであって、気泡の巻き込みを効果的に防ぐことができ、ポリウレタン樹脂発泡体の製造装置のように、気泡の巻き込みによる影響が大きい分野において特に好適な液体収容タンクの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、底面に排出口を有する液体収容タンクにおいて、前記排出口の上方を覆う傘部と前記傘部を前記排出口から一定の高さに位置させる固定手段とよりなる気泡混入防止装置を備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1において、前記排出口と前記傘部との距離が、20〜80mmであることを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1または2において、前記傘部が、前記排出口の直径の1倍〜5倍の直径を有する円盤状からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、タンク内の液体が減少しても、前記排出口の上方を覆う傘部により、液体に気泡が巻き込まれるのを、効果的に防止することができる。また、傘部により、原料に含まれている溶存エアーや気泡の吸い込みも防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は本発明の第1実施形態に係る液体収容タンクの縦断面図、図2は同第1実施形態における気泡混入防止装置の斜視図及び断面図、図3は第2実施形態に係る液体収容タンクの縦断面図、図4は同第2実施形態における気泡混入防止装置の斜視図及び断面図、図5は第3実施形態に係る液体収容タンクの縦断面図、図6は同第3実施形態における気泡混入防止装置の斜視図及び断面図、図7は同第4実施形態に係る液体収容タンクの縦断面図、図8は同第4実施形態における気泡混入防止装置の斜視図及び断面図である。
【0012】
図1に示す第1実施形態の液体収容タンク10Aは、タンク本体11Aと、気泡混入防止装置21Aを備える。
【0013】
前記タンク本体11Aは、底面12Aを有する筒状の基体13Aと、前記基体13Aの上部に蓋をする蓋部14Aとよりなる。前記底面12Aの略中央には、上下方向に排出口15Aが形成されている。前記排出口15Aは、前記タンク本体11Aの内外を連通して前記底面12Aの外部へ筒状に突出しており、タンク本体11A外部の筒状部に開閉バルブBが設けられている。前記排出口15Aは、前記開閉バルブBを介してポンプ(図示せず)と接続され、さらに所定の装置(例えばポリウレタン樹脂発泡体の製造装置における攪拌装置)と接続され、前記タンク本体11A内の液体が所定の装置へ移送可能とされる。また、前記蓋部14Aには、液体注入口16Aが形成され、図示しない液体供給装置と接続される。なお、前記蓋部14Aを開けて液体を注入するタンクにおいては前記液体注入口16Aが不要とされる。
【0014】
前記気泡混入防止装置21Aは、前記タンク本体11A内において前記排出口15Aの上方に設けられる。前記気泡混入防止装置21Aは、前記タンク本体11Aに収容された液体が前記排出口15Aから排出される際に、液体に気体が巻き込まれるのを防止するためのもので、図2にからも容易に理解されるように、前記排出口15Aの上方を覆う傘部22Aと、前記傘部22Aを前記底面12Aの排出口15Aから一定の高さh(図1に示す)とするための固定手段25Aとよりなる。
【0015】
前記傘部22Aは、前記排出口15Aの真上を覆うことのできる大きさ及び形状からなる。本実施例では、前記傘部22Aは円盤状で構成されている。前記傘部22Aが円盤状のものは、前記傘部22Aの周縁で液体が乱流を生じ難いため、特に好ましい。さらに、前記円盤状の傘部22Aは、前記排出口15Aの直径(内径)dの1倍〜5倍の直径Dを有するものが好ましい。前記範囲より小さいと排出口15Aの上方を確実に覆えなくなって、液体排出時に前記排出口15Aの上方に渦が形成され、気泡の巻き込み混入防止効果が少なくなる。一方、前記範囲より大きいと前記傘部22Aが大きくなりすぎ、タンク内部の設計上不便であるだけでなく、部材費用も嵩むこととなる。
【0016】
前記固定手段25Aは、前記傘部22Aを前記底面12Aの排出口15Aから一定の高さhに固定するものであり、前記傘部22Aを柱部材で下方から支える構造からなる。本実施例の固定手段25Aは、前記排出口15Aを跨ぐように起立して設けられた柱部材としての起立板26Aで構成され、前記起立板26Aの上端に前記傘部22Aが載置固定されている。前記起立板26Aは、前記排出口15Aの中心から放射状に形成され、前記排出口15Aからの液体の排出を妨げないようにされている。
【0017】
前記底面12Aの排出口15Aからの前記傘部22Aの高さ(傘部22Aの上端までの距離)hは、20〜80mmが好ましい。前記高さ(距離)hが20mm未満の場合、前記排出口15Aと傘部22A間の隙間が少なくなり、前記排出口15Aからの液体の排出が妨げられるようになる。特に前記液体収容タンク10Aに収容される液体が、ポリウレタン樹脂発泡体の製造に用いられるポリイソシアネート成分のように粘度が比較的高いものである場合には、前記排出口15Aと傘部22A間の隙間が小さくなると、排出が極端に妨げられるようになる。一方、前記高さ(距離)hが80mmを超える場合には、前記排出口15Aの上方を前記傘部22Aで覆う効果が小さくなり、泡の巻き込み混入防止効果が得難くなる。さらに、前記傘部22Aと前記底面12Aとの距離が大になることから、前記固定手段25Aが大きくなって過剰の部品が必要になり、しかも液体の排出時に加わる圧力に耐える強度設計も必要となり、コストが増大するようになる。
【0018】
図3に示す第2実施形態の液体収容タンク10Bは、タンク本体11Bと、気泡混入防止装置21Bを備える。なお、前記タンク本体11Bは、前記第1実施形態のタンク本体11Aと同様の構成からなる。符号12Bは底面、13Bは基体、14Bは蓋体、15Bは排出口、16Bは液体注入口である。
【0019】
前記第2実施形態の気泡混入防止装置21Bは、図4からよりよく理解されるように、円盤状の傘部22Bが、固定手段25Bで前記底面12Bの排出口15Bから一定の高さhに固定されている。前記傘部22Bの大きさ及び前記排出口15Bからの前記傘部22Bの高さ(距離)hは、第1実施形態の場合と同様である。前記固定手段25Bは、前記排出口15Bの中心に立設された柱部材としての棒状体26Bで構成され、前記棒状体26Bの上端に前記傘部22Bが載置固定されている。前記棒状体26Bは、下部の水平軸部27Bにより前記排出口15Bに固定されている。
【0020】
図5に示す第3実施形態の液体収容タンク10Cは、タンク本体11Cと、気泡混入防止装置21Cを備える。なお、前記タンク本体11Cは、前記第1実施形態のタンク本体11Aと同様の構成からなる。符号12Cは底面、13Cは基体、14Cは蓋体、15Cは排出口、16Cは液体注入口である。
【0021】
前記第3実施形態の気泡混入防止装置21Cは、図6からよりよく理解されるように、円盤状の傘部22Cが、板状体からなる固定手段25Cで前記底面12Cの排出口15Cから一定の高さhに固定されている。前記傘部22Cの大きさ及び前記排出口15Cからの前記傘部22Cの高さ(距離)hは、第1実施形態の場合と同様である。前記固定手段25Cは、前記排出口15Cの両縁に立設された柱部材としての平行な板状体26C,26Cで構成され、前記板状体26C,26Cの上端に前記傘部22Cが載置固定されている。
【0022】
図7に示す第4実施形態の液体収容タンク10Dは、タンク本体11Dと、気泡混入防止装置21Dを備える。なお、前記タンク本体11Dは、前記第1実施形態のタンク本体11Aと同様の構成からなる。符号12Dは底面、13Dは基体、14Dは蓋体、15Dは排出口、16Dは液体注入口である。
【0023】
前記第4実施形態の気泡混入防止装置21Dは、図8からよりよく理解されるように、平面視長方形の平板状からなる傘部22Dが、固定手段25Dで前記底面12Dの排出口15Dから一定の高さhに固定されている。なお、前記傘部22Dは平面視正方形とされる場合もある。前記傘部22Dの大きさは、平面寸法が、一辺の長さを前記排出口15Dの直径(内径)dの1倍〜5倍とするものが好ましい。前記範囲より小さいと排出口15Dの上方を確実に覆えなくなって、液体排出時に前記排出口15Dの上方に渦が形成され、気泡の巻き込み混入防止効果が得難くなる。一方、前記範囲より大きいと前記傘部22Dが大きくなりすぎ、タンク内部の設計上不便であるだけでなく、部材費用も嵩むこととなる。また、前記排出口15Dからの前記傘部22Dの高さ(距離)hは、第1実施形態の場合と同様である。前記固定手段25Dは、前記排出口15Dの両縁に平行に立設された柱部材としての板状体26D,26Dで構成され、前記板状体26D,26Dの上端に前記傘部22Dが載置固定されている。
【実施例】
【0024】
ポリウレタン樹脂発泡体の液体原料であるポリイソシアネートを収容する液体収容タンクの一実施例について説明する。横断面積5.1m、高さ2044mm、底面中央に内径80mmの排出口が形成されたタンク本体の排出口に、図1及び図2に示した気泡混入防止装置21Aを設けて液体収容タンクを構成した。円盤状の傘部は直径(図2のD)が240mm(排出口の直径(図2のd)の3倍)、排水口の開口部上端(タンクの底面の排水口)から傘部の上端までの高さ(図1のh)は50mmである。この液体収容タンクに、ポリイソシアネートとしてトルエンジイソシアネート(T−80、異性体率80:20、25℃の粘度3mPas)を、タンクの底面から高さ1635mmまで投入した。そして、排水口に接続された移送ポンプ(能力;30000g/min、帝国ポンプ株式会社製)で27000g/minで移送させ、タンク内の液体(トルエンジイソシアネート)の高さが最初の3割になった時点で、移送された液体(トルエンジイソシアネート)について気泡の存在を目視確認したところ、気泡の混入は認められなかった。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態に係る液体収容タンクの縦断面図である。
【図2】同第1実施形態における気泡混入防止装置の斜視図及び断面図である。
【図3】第2実施形態に係る液体収容タンクの縦断面図である。
【図4】同第2実施形態における気泡混入防止装置の斜視図及び断面図である。
【図5】第3実施形態に係る液体収容タンクの縦断面図である。
【図6】同第3実施形態における気泡混入防止装置の斜視図及び断面図である。
【図7】同第4実施形態に係る液体収容タンクの縦断面図である。
【図8】同第4実施形態における気泡混入防止装置の斜視図及び断面図である。
【図9】従来の液体収容タンクの縦断面図である。
【符号の説明】
【0026】
10A,10B,10C,10D 液体収容タンク
11A,11B,11C,11D タンク本体
15A,15B,15C,15D 排出口
21A,21B,21C,21D 気泡混入防止装置
22A,22B,22C,22D 傘部
25A,25B,25C,25D 固定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面に排出口を有する液体収容タンクにおいて、
前記排出口の上方を覆う傘部と前記傘部を前記排出口から一定の高さに位置させる固定手段とよりなる気泡混入防止装置を備えたことを特徴とする液体収容タンク。
【請求項2】
前記排出口と前記傘部との距離が、20〜80mmであることを特徴とする請求項1に記載の液体収容タンク。
【請求項3】
前記傘部が、前記排出口の直径の1倍〜5倍の直径を有する円盤状からなることを特徴とする請求項1または2に記載の液体収容タンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−145343(P2007−145343A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−339660(P2005−339660)
【出願日】平成17年11月25日(2005.11.25)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】