液体吐出装置の駆動ユニット及び駆動ユニットの配線状態検出方法
【課題】 接続される2つの基板に跨って設けられる配線について、基板間の接続箇所の接続状態を容易に検出することができる液体吐出装置の駆動ユニットとその配線状態検出方法とを提供する。
【解決手段】 圧電アクチュエータ12において、各第1低電位バイアス線31から下側定電位電極47へ至る途中の箇所と、各第1高電位バイアス線33から上側定電位電極46へ至る途中の箇所との間の夫々には、活性部40とは独立した2つの静電容量CA,CBが形成されており、第3低電位配線84及び第3高電位配線87の各開放側端子は、液体吐出時に下側定電位電極47及び上側定電位電極46をバイアスする電位の入力端子を成すと共に、両端子間のインピーダンス測定値から配線の接続状態を検出する測定端子をも成している。
【解決手段】 圧電アクチュエータ12において、各第1低電位バイアス線31から下側定電位電極47へ至る途中の箇所と、各第1高電位バイアス線33から上側定電位電極46へ至る途中の箇所との間の夫々には、活性部40とは独立した2つの静電容量CA,CBが形成されており、第3低電位配線84及び第3高電位配線87の各開放側端子は、液体吐出時に下側定電位電極47及び上側定電位電極46をバイアスする電位の入力端子を成すと共に、両端子間のインピーダンス測定値から配線の接続状態を検出する測定端子をも成している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタ装置などの液体吐出装置の駆動ユニット、及びその配線状態検出方法に関し、特に、2つの基板に渡る配線の接続箇所における接続状態を検出することができる構成及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出装置の一例として、ノズル孔から液体(インク)を被記録体へ吐出する液体吐出ヘッドを備えたインクジェット式のプリンタ装置が知られている。該プリンタ装置が備える液体吐出ヘッドは、圧力室とノズル孔とを結ぶチャンネルが複数形成された流路ユニットと、圧力室内のインクに吐出圧力を付与する駆動ユニットとを有している。そして液体吐出ヘッドは、タンクから供給されたインクを複数の圧力室に分配し、全圧力室のなかから一又は複数の圧力室に対しパルス状の圧力を付与する。これにより、圧力が付与された圧力室と連通しているノズル孔から液体を吐出させ、被記録体に付着させて画像を形成する。ここで、圧力室内のインクに圧力を付与する駆動ユニットの一例として、駆動回路が実装されたフレキシブル基板に圧電アクチュエータを接続したものがある。
【0003】
圧電アクチュエータは、例えば特許文献1に示されるように、各圧力室に対向して個別に配置された個別電極と、複数の圧力室に跨って形成された共通電極と、これら個別電極及び共通電極で挟まれた圧電セラミックスから成る圧電層とが、複数積層された構成となっている。そして、流路ユニットの上面にて開口する圧力室を上方から覆うようにして、絶縁層を挟んで流路ユニットに接合される。
【0004】
また、圧電アクチュエータに接続されるフレキシブル基板は、駆動回路と圧電アクチュエータとの間の配線構造が汎用品ではまかなえず、圧電アクチュエータの仕様に合わせたものを使用する必要があるため、一般的に高価になりがちである。そこで特許文献2ではフレキシブル基板を2分割し、駆動回路が実装されて圧電アクチュエータに接続されるCOF(Chip On Film)と、該COFからプリンタ本体側へ延びる汎用FPC(Flexible Print Cable)とから構成したものを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−195047号公報
【特許文献2】特開2007−196404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年では上述したものとは異なり、個別電極の他に低電位共通電極及び高電位共通電極の2種類の共通電極を備える圧電アクチュエータも提案されており、この場合、フレキシブル基板には、低電位共通電極及び高電位共通電極の夫々に電位をバイアスすべく低電位配線と高電位配線とが設けられる。
【0007】
また、圧電アクチュエータ内の全ての低電位共通電極及び高電位共通電極に対して可及的に均一に低電位及び高電位を夫々付与すべく、低電位配線及び高電位配線の夫々を二手に分けてフレキシブル基板の両端部に形成し、これらを圧電アクチュエータの両端部にて、低電位共通電極及び高電位共通電極に接続することが考えられる。そして、この場合における低電位配線と高電位配線の構成は、FPC上で1本から2本に分岐しCOF上ではこの分岐に対応させて2本設ける構成とすることが考えられる。即ち、COFには2本の低電位配線(第1低電位配線)と2本の高電位配線(第1高電位配線)とを形成し、FPCにはこれらと接続される2本の低電位配線(第2低電位配線)と2本の高電位配線(第2高電位配線)とを形成し、更にFPCでは、これら2本の低電位配線を1本に合流した低電位配線(第3低電位配線)とし、同様に2本の高電位配線を1本に合流した高電位配線(第3高電位配線)とする構成である。これにより、低電位共通電極及び高電位共通電極での電圧降下による影響を抑制し、圧電アクチュエータの全領域において、低電位共通電極及び高電位共通電極の夫々に、略均一の低電位及び高電位を付与することができる。
【0008】
ここで、このような構成にした場合、上記の通り各共通電極への電位を均一化できる等のメリットを有する一方、COF上の低電位配線及び高電位配線とFPC上の低電位配線及び高電位配線との各接続箇所に不備があった場合に、これを検出するのが困難である。例えば、COF側の2本の低電位配線は低電位共通電極を通じて導通しているため、FPC側の2本の低電位配線を合流しない構成であれば、FPC側の2本の低電位配線間に電圧計を接続することにより1つの閉回路が形成される。従って、電圧計での測定値が所定未満であれば、COFとFPCとの接続箇所が適正に接続されていると判断でき、所定以上であれば接続箇所が断線していると判断できる。しかしながら、FPC側の2本の低電位配線を合流した構成の場合、上記のように電圧計を介装して閉回路を形成することができないため、容易にはCOFとFPCとの接続箇所の不備を検出することができない。また、高電位配線についてのCOFとFPCとの接続箇所の不備を検出する場合にも同じことが言える。
【0009】
なお、FPC上の2本の低電位配線(又は高電位配線)から別途配線を引き出して電圧計を接続するための端子を設けることも考えられるが、近年要望されている駆動ユニットの小型化に逆行するものであり、好ましくない。そして、このような事情は、インクジェット式プリンタ装置に限らず、同様の構成の駆動ユニットを備える液体吐出装置の全般においても同様である。
【0010】
そこで本発明は、接続される2つの基板に跨って設けられる配線について、基板間の接続箇所の接続状態を容易に検出することができる液体吐出装置の駆動ユニットと、該駆動ユニットの配線状態検出方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る駆動ユニットの配線状態検出方法は、低電位電極、高電位電極、及び駆動電極が圧電層を挟んで積層されたアクチュエータに、前記低電位電極に接続される2本の第1低電位配線と前記高電位電極に接続される2本の第1高電位配線とを有する第1シート基材が接続され、更に、該第1シート基材に、前記各第1低電位配線に接続される2本の第2低電位配線と前記各第1高電位配線に接続される2本の第2高電位配線とを有する第2シート基材が接続され、前記2本の第2低電位配線及び前記2本の第2高電位配線は、前記第2シート基材上で夫々合流して各1本の第3低電位配線及び第3高電位配線を形成して成る液体吐出装置の駆動ユニットの配線状態検出方法であって、前記駆動ユニットが有する前記第3低電位配線と前記第3高電位配線との間に測定器を接続し、両配線間のインピーダンス測定値を取得するステップと、前記第1低電位配線と前記第2低電位配線との間、及び前記第1高電位配線と前記第2高電位配線との間が、何れも電気的に接続されている状態での、前記第3低電位配線と前記第3高電位配線との間のインピーダンスである基準インピーダンスと、前記インピーダンス測定値とを比較するステップとを備えている。
【0012】
また、本発明に係る液体吐出装置の駆動ユニットは、ノズル孔から液体を吐出させる圧力が付与される圧力室に対応して設けられ、低電位にバイアスされる低電位電極、高電位にバイアスされる高電位電極、及び経時的に変化する駆動電位が付与される駆動電極が、圧電層を挟んでこの順に積層された活性部を有するアクチュエータと、前記低電位電極に接続される2本の第1低電位配線、及び前記高電位電極に接続される2本の第1高電位配線を有し、前記アクチュエータに接続される第1シート基材と、前記各第1低電位配線に接続される2本の第2低電位配線、前記各第1高電位配線に接続される2本の第2高電位配線、前記2本の第2低電位配線が合流して成す第3低電位配線、及び前記2本の第2高電位配線が合流して成す第3高電位配線を有し、前記第1シート基材に接続される第2シート基材とを備え、前記アクチュエータにおいて、前記各第1低電位配線から前記低電位電極へ至る途中の箇所と、前記各第1高電位配線から前記高電位電極へ至る箇所との間の夫々には、前記活性部とは独立した2つの静電容量が形成されており、前記第3低電位配線及び前記第3高電位配線の各開放側端子は、液体吐出時に前記低電位電極及び前記高電位電極をバイアスする電位の入力端子を成すと共に、前記静電容量を介したインピーダンス測定値から、前記第1低電位配線及び前記第1高電位配線と第2低電位配線及び第2高電位配線との間の接続状態を検出する測定端子をも成している。
【0013】
このような構成とすることにより、第1低電位配線及び第1高電位配線が圧電アクチュエータ内の静電容量を介して接続されるため、第3低電位配線及び第3高電位配線の開放側端子間にインピーダンス測定器を接続すれば、閉回路を形成することができる。従って、第1シート基材及び第2シート基材に跨って設けられる低電位配線及び高電位配線の接続箇所、即ち、第1シート基材上の第1低電位配線及び第1高電位配線と第2シート基材上の第2低電位配線及び第2高電位配線との接続箇所について、適正に接続されているか否かを検出することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、接続される2つの基板に跨って設けられる配線について、基板間の接続箇所の接続状態を容易に検出することができる液体吐出装置の駆動ユニットと、該駆動ユニットの配線状態検出方法とを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】液体吐出装置たるプリンタ装置の要部を示す模式的平面図である。
【図2】プリンタ装置が備える液体吐出ヘッドの構成を示す分解斜視図である。
【図3】流路ユニットと圧電アクチュエータとが接合された状態でのヘッド本体を、図2のIII-III線(後述するノズル行方向に沿った線)で切断したときの構成を示す断面図である。
【図4】流路ユニットと圧電アクチュエータとが接合された状態でのヘッド本体を、図2のIV-IV線(即ち、ノズル列方向に沿った線)で切断したときの構成を示す断面図である。
【図5】圧電アクチュエータの平面図である。
【図6】図2に示すフレキシブル基板13の構成を示す図面であり、(a)はCOFの概略底面図、(b)はFPCの概略平面図を示している。
【図7】配線状態を検出する際の駆動ユニットの等価回路を示す図面である。
【図8】駆動ユニットの配線状態を検出する手順を示すフローチャートである。
【図9】上述したのとは異なる構成を備えた駆動ユニットのヘッド本体を、ノズル行方向に沿った線で切断したときの構成を示す断面図である。
【図10】図9に示した駆動ユニットにおいて配線状態を検出する際の該駆動ユニットの等価回路を示す図面である。
【図11】更に異なる構成を備えた駆動ユニットのヘッド本体を、ノズル列方向に沿った線で切断したときの構成を示す断面図である。
【図12】図11に示した駆動ユニットにおいて配線状態を検出する際の該駆動ユニットの等価回路を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態に係る液体吐出装置及びその製造方法について、液体吐出装置の一例であるインクジェットプリンタ装置(以下、「プリンタ装置」と称する)に適用したとき場合を例にとり、図面を参照しつつ説明する。但し、本発明はプリンタ装置への適用に限定されるものではなく、インク以外の液体を吐出する液体吐出装置全般に対しても適用できることを付言しておく。
【0017】
[プリンタ装置の全体構成]
図1は、液体吐出装置たるプリンタ装置100の要部を示す模式的平面図である。図1に示すように、プリンタ装置100は、左右方向へ延びる一対のガイドレール102,103が略平行に配設されており、このガイドレール102,103に液体供給ユニット104が走査方向にスライド可能に支持されている。ガイドレール103の左右の端部付近には一対のプーリ105,106が設けられ、液体供給ユニット104は、このプーリ105,106に巻き掛けられたタイミングベルト107に接合されている。一方のプーリ106には正逆回転駆動するモータ(図示せず)が設けられており、そのプーリ106が正逆回転駆動することでタイミングベルト107が左方向及び右方向へと往復移動可能になっており、これに伴って液体供給ユニット104がガイドレール102,103に沿って左右方向へ往復走査される。
【0018】
プリンタ装置100には、4つのインクカートリッジ108が交換のために挿脱可能にして装着されている。そして、液体供給ユニット104には、これらのインクカートリッジ108から4色の有色インク(例えば、ブラック、シアン、マゼンダ、イエロー)を夫々供給すべく、可撓性を有する4本のインク供給チューブ109が接続されている。液体供給ユニット104の下部には液体吐出ヘッド2(図2参照)が搭載されており、その下方で走査方向と直角する方向(紙送り方向)に搬送される被記録体(例えば、記録用紙)に向けて液体吐出ヘッド2からインク(液体)を吐出し、この被記録体に画像を形成することができるようになっている。
【0019】
[液体吐出ヘッドの概略構成]
図2はプリンタ装置100が備える液体吐出ヘッド2の構成を示す分解斜視図である。この図2に示すように、液体吐出ヘッド2は、圧電アクチュエータ12を上方から流路ユニット11に接合して成るヘッド本体15と、このヘッド本体15の上部にて圧電アクチュエータ12に接合されたフレキシブル基板13とを備えている。また、流路ユニット11は、複数のプレート部材が積層された構成となっている。図6は配線板の底面図である。
【0020】
図3は、流路ユニット11と圧電アクチュエータ12とが接合された状態でのヘッド本体15を、図2のIII-III線(後述するノズル行方向に沿った線)で切断したときの構成を示す断面図である。図3に示すように、流路ユニット11はその下面にて開口する複数のノズル孔55を有しており、該ノズル孔55は、或一方向に延びる一又は複数の列を成すようにして複数配設されている。1つのノズル列に並ぶノズル孔55は、互いに所定間隔をおいて配置されて同色の液体(インク)が吐出されるようになっている。このノズル列は、該ノズル列と略直交する方向に適宜間隔で配置され、本実施の形態では、吐出される液体の色ごとに6列ずつ設けられている。
【0021】
以下、ノズル列の延びる方向を「ノズル列方向X」といい、このノズル列方向Xに対するノズル行方向を「ノズル行方向Y」という。なお、液体吐出ヘッド2は、ノズル行方向Yに往復走査される。
【0022】
流路ユニット11の内部には、液体を一時的に貯留する共通貯留室であるマニホールド51と、マニホールド51と各ノズル85とを個別に連通する複数のチャンネルとが形成されている。チャンネルは、各ノズル85に対応して設けられて液体を一時的に貯留する圧力室53、マニホールド51と圧力室53とを連通する絞り部52、及びノズル85と圧力室53とを連通するディセンダ孔54などの各空間で構成されている。
【0023】
図2に示すように、流路ユニット11の上面には液体タンク(図示せず)に接続されている液体供給口17が液体の色別に設けられている。液体タンクから各液体供給口17に供給された液体は、流路ユニット11内のマニホールド51に流入し、絞り部52を介して圧力室53に至る。そして、圧力室53内の液体が、圧電アクチュエータ12の駆動により吐出圧を受けると、その圧力波はディセンダ孔54を通じてノズル孔55近傍の液体にも伝搬し、該ノズル孔55から液体が吐出されるようになっている。
【0024】
[圧電アクチュエータ]
図4は、流路ユニット11と圧電アクチュエータ12とが接合された状態でのヘッド本体15を、図2のIV-IV線(即ち、ノズル列方向に沿った線)で切断したときの構成を示す断面図であり、図5は、圧電アクチュエータ12の平面図である。
【0025】
図3及び図4に示すように、圧電アクチュエータ12は、流路ユニット11の上面に積層接合され、流路ユニットの上面に開口している圧力室53を閉塞している。この圧電アクチュエータ12は、圧電材料(例えば、PZT)で構成される圧電層23と、該圧電層23が上面に積層されると共に流路ユニット11の上面に接合されるベース層24とを備えており、圧電層23は更に、上側圧電層21及び下側圧電層22の上下二層で構成されている。また、上側圧電層21の上面には、各圧力室53に対応して個別電極(駆動電極)42が設けられ、上側圧電層21と下側圧電層22との間には、各個別電極42に対応して(即ち、各圧力室53に対応して)上側定電位電極(高電位電極)46が設けられている。更に、下側圧電層22とボトム層24との間には下側定電位電極(低電位電極)47が設けられている。なお、以下では、圧電アクチュエータ12を構成する圧電層23の積層方向を「積層方向Z」という。
【0026】
上記各電極のうち、個別電極42は、圧力室53と対向するように上側圧電層21の上面にてノズル列方向Xに沿って略一定間隔で並設され、ノズル行方向Yには千鳥状にずれて配置されている。各個別電極42の一部はノズル行方向Yに突出しており、この突出部がフレキシブル基板13の個別電極接続ランド60(図6参照)に接続される接続端子41となっている。
【0027】
上側定電位電極46は、下側圧電層22の上面にてノズル列方向Xに沿って略一定間隔で並んでおり、そうして形成された上側定電位電極46の列は、ノズル行方向Yに複数並設されている。そのため、上側定電位電極46と個別電極42とは積層方向Zに重複して設けられている。また、圧電アクチュエータ12に具備される全ての上側定電位電極46は電気的に接続されており、全ての上側定電位電極46に対して共通電位が付与されるようになっている。
【0028】
下側定電位電極47は、ノズル列方向Xに沿って並ぶ圧力室53に共通の電極となるように、ノズル列方向Xに沿って延びる帯状に形成されており、下側定電位電極47と上側定電位電極46と個別電極42とは積層方向Zに重複している。圧電アクチュエータ12に具備される全ての下側定電位電極47は電気的に接続されており、全ての下側定電位電極47に対して共通電位が付与されるようになっている。
【0029】
ここで、図4の断面図に示すように、上側定電位電極46のノズル列方向Xの寸法は、個別電極42のノズル列方向Xの寸法よりも小さく、且つ、積層方向Zに沿って見ると、上側定電位電極46は個別電極42のノズル列方向Xの略中央に配置されている。従って、個別電極42のノズル列方向Xの略中央部分では、個別電極42と上側定電位電極46と下側定電位電極47とが積層方向Zに重複している。このように圧電アクチュエータ12において個別電極42と上側定電位電極46との間に上側圧電層21が挟まれている部分を、以下、「第一活性部36」という。一方、個別電極42のノズル列方向Xの両端部分では、個別電極42と下側定電位電極47とが積層方向Zに重複しており、これらの電極の間には上側定電位電極46が存在しない。このように圧電アクチュエータ12において個別電極42のノズル列方向Xの両端部分と下側定電位電極47との間に上側圧電層21及び下側圧電層22が挟まれている部分を、以下、「第二活性部37,37」という。
【0030】
図5に示すように、圧電アクチュエータ12の上面のノズル行方向Yの両端部には、第一表面共通電極44と第二表面共通電極43とが形成されている。このうち第一表面共通電極44は、上側圧電層21を積層方向Zに貫通したスルーホールに充填された導電性材料を介して、上側定電位電極46と電気的に接続されている。また、第二表面共通電極43は、上側圧電層21及び下側圧電層22を積層方向Zに貫通したスルーホールに充填された導電性材料を介して、下側定電位電極47と電気的に接続されている。
【0031】
図3及び図4に示すように、上記構成の圧電アクチュエータ12において、個別電極42、上側定電位電極46、下側定電位電極47、及び個別電極42と下側定電位電極47とで挟まれた圧電層23の部分は、圧力室53内に液体吐出圧を加えるために各圧力室53に対応して設けられたエネルギー発生部40を成している。このエネルギー発生部40に駆動信号(駆動電圧)を入力するために、各エネルギー発生部40に対応して上述した接続端子41が設けられており、該接続端子41は、ノズル列方向Xに延びる一又は複数の列を成して圧電アクチュエータ12の上面に配置されている。
【0032】
[フレキシブル基板]
次に、フレキシブル基板13について説明する。図2に示すように、フレキシブル基板13は、駆動回路66が実装された第1フレキシブル基板としてのCOF(チップ・オン・フィルム)64と、第2フレキシブル基板としてのFPC(フレキシブル・プリント・ケーブル)65とから構成されている。これらCOF64及びFPC65は、長方形状を成す電気絶縁性の可撓性シート材である第1ベースシート64a及び第2ベースシート65aの片面に複数の配線が形成され、互いに、そして圧電アクチュエータ12とも接続される。
【0033】
図6は、図2に示すフレキシブル基板13の構成を示す図面であり、(a)はCOF64の概略底面図、(b)はFPC65の概略平面図を示している。図6(a)に示すように、COF64には、第1ベースシート64aの片面(下面)であってそのノズル列方向Xの端部に、FPC65との接続電極35aが、その長手方向をノズル行方向Yに沿うようにして設けられており、その近傍に駆動回路66が実装されている。また、駆動回路66の実装面と同一面上には、ノズル行方向Yの両端に第1低電位バイアス線(第1低電位配線:COM)31,31が形成され、これらと平行するようにその内方には第1高電位バイアス線(第1高電位配線:VCOM)33,33が形成され、これらのバイアス線31,33のノズル列方向Yの端部は接続電極35aに接続されている。
【0034】
また、第1高電位バイアス線33,33間には複数の個別電極接続ランド60が形成されており、第1低電位バイアス線31及び第1高電位バイアス線33の上には、複数の共通電極接続ランド32,34が形成されている。
【0035】
このような第1ベースシート64aの下面は、電気絶縁性を有する可撓性の合成樹脂(例えば、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂)からなるカバー層で被覆されている一方、共通電極接続ランド32,34及び個別電極接続ランド60と重複するカバー層の部位には孔が形成され、この孔内に露出する共通電極接続ランド32,34及び個別電極接続ランド60にバンプ電極が固着されている。そして、このバンプ電極を介して、COF64が有する共通電極接続ランド32,34及び個別電極接続ランド60は、圧電アクチュエータ12が有する第一表面共通電極44、第二表面共通電極43、及び個別電極42の接続端子41(図5参照)に接続される。
【0036】
駆動回路66からは、圧電アクチュエータ12の駆動電極42へ駆動電位を付与するための出力側配線71が、個別電極接続ランド60と同数だけ、第1ベースシート64aの下面を並進するように延設されており、夫々は独立して各個別電極接続ランド60に接続されている。また、駆動回路66からは、該駆動回路66内の素子を動作させる制御信号を入力するための入力側配線72が、出力側配線71と同数だけ、並進するように延設されており、該入力側配線72は接続電極35aに接続されている。
【0037】
更に、複数の入力側配線72の群と第1高電位バイアス線33との間のスペースには、接続電極35aと駆動回路66とを接続する第1低電位駆動線(VSS)73,73が形成されている。また、上記スペース内であって、これら第1低電位駆動線73,73の外側には、接続電極35aと駆動回路66とを接続する第1高電位駆動線(VDD)74,74が形成されている。これら第1低電位駆動線73及び第1高電位駆動線74は、夫々駆動回路66にグランド電位又は所定の高電位を付与するものであり、駆動回路66は、出力側配線72を通じてこれら2種類の電位を選択的に個別電極42へ付与する。そして、これら出力側配線71、入力側配線72、第1低電位駆動線73、及び第1高電位駆動線74もまた、上記カバー層によって被覆されている。
【0038】
一方、図6(b)に示すように、FPC65におけるノズル行方向Yの一端部には、COF64と接続するための接続電極35bが、その長手方向をノズル行方向Yに沿うようにして設けられている。この接続電極35bからは、ノズル列方向Xの一方へ向かって4本の配線が平行に延設されている。このうち、両端に位置する配線は第2低電位バイアス線(第2低電位配線:COM)82,82であり、接続電極35a,35bが接合することによってCOF64の第1低電位バイアス線31,31に導通する。また、第2低電位バイアス線82,82の間に位置する2本の配線は、第2低電位駆動線83,83であり、COF64の第1低電位駆動線73,73に導通する。そして、これら第2低電位バイアス線82,82及び第2低電位駆動線83,83は、FPC65上にて合流して1本の第3低電位配線84を成し、FPC65上をノズル行方向Yに沿って延設されている。
【0039】
また、接続電極35bからノズル列方向Xの他方へ向かって4本の配線が平行に延設されている。このうち、両端に位置する配線は第2高電位バイアス線(第2高電位配線:VCOM)85,85であり、接続電極35a,35bが接合することによってCOF64の第1高電位バイアス線33,33に導通する。また、第2高電位バイアス線85,85の間に位置する2本の配線は、第2高電位駆動線86,86であり、COF64の第1高電位駆動線74,74に導通する。そして、これら第2高電位バイアス線85,85及び第2高電位駆動線86,86は、FPC65上にて合流して1本の第3高電位配線87を成し、FPC65上をノズル行方向Yに沿って延設されている。
【0040】
ここで、第3低電位配線84及び第3高電位配線87の各開放側端子(即ち、図6(b)でのノズル行方向Y上側の端子)は、液体吐出時に下側定電位電極47及び上側定電位電極46をバイアスする電位(COM及びVCOM)の入力端子を成すと共に、個別電極42へ選択的に付与される駆動電位(VSS及びVDD)を中継する駆動回路66へ入力するための端子をも成し、更に、両端子間のインピーダンス測定値から以下に説明するように配線の接続状態を検出する測定端子をも成している。
【0041】
[配線状態検出方法]
上述したような構成の圧電アクチュエータ12及びフレキシブル基板13が、本実施の形態に係る駆動ユニット90を構成している。以下、このような駆動ユニット90において、COF64に設けられたバイアス線31,33とFPC65に設けられたバイアス線82,85との間の接続状態を検出するための構成及び方法について説明する。
【0042】
図7は、配線状態を検出する際の駆動ユニット90の等価回路を示す図面である。また、図8は、駆動ユニット90の配線状態を検出する手順を示すフローチャートである。図7に示すように、配線状態を検出する場合には、第3低電位配線84と第3高電位配線85との間にインピーダンス測定器91が接続される(図8:S1)。そして、図3及び図4に示すように対向配置された上側定電位電極46及び下側定電位電極47は、一種のコンデンサC1〜CN(Nは圧力室53と同数の値)とみなすことができ、両電極46,47間には所定の静電容量が形成される。従って、インピーダンス測定器91、第3低電位配線84、第2低電位バイアス線82,第1低電位バイアス線31、コンデンサC1〜CN、第1高電位バイアス線33、第2高電位バイアス線85、及び第3高電位バイアス線87により、1つの閉回路が形成される。
【0043】
なお、本実施の形態に係るインピーダンス測定器91は、閉回路にパルス信号を出力する電源92と、第3低電位配線84及び第3高電位配線85の端子間電圧を検出する電圧計93と、閉回路を流れる電流の総和を検出する電流計94とから構成されている。
【0044】
次に、上述したような閉回路において、インピーダンス測定器91の電源92からパルス信号を出力し(図8:S2)、電圧計93及び電流計94の検出値から、閉回路内のインピーダンスを測定する(図8:S3)。一方、COF64に設けられたバイアス線31,33とFPC65に設けられたバイアス線82,85との間が適切に接続されている場合の閉回路内のインピーダンスを予め測定しておき、これを基準インピーダンスとする。次に、測定値と基準インピーダンスとを比較し(図8:S4)、測定値が基準インピーダンスと同程度であれば接続状態が良好であると判断し(図8:S5)、測定値が基準インピーダンスより大きければ接続状態に不備があり、断線の可能性があると判断する(図8:S6)。
【0045】
ここで、接続状態に不備があると判断する根拠について説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて2本の第1低電位バイアス線31を夫々第1低電位バイアス線31a,31bとして区別し、これら第1低電位バイアス線31a,31bに接続される2本の第1高電位バイアス線33も夫々第1高電位バイアス線33a,33bとして区別する。
【0046】
図7に示すように、COF64に設けられたバイアス線31,33とFPC65に設けられたバイアス線82,85と接続箇所は、接点P1〜P4の4箇所存在している。まず、これらの接点P1〜P4が全て適切に接続された状態である場合、電源92からのパルス信号のほとんどは、接点P1から、第1低電位バイアス線31a、コンデンサC1、及び第1高電位バイアス線33aを経て接点P3へ至るルートRaと、接点P2から、第1低電位バイアス線31b、コンデンサCN、及び第1高電位バイアス線33bを経て接点P4へ至るルートRbとを流れる。即ち、コンデンサC1,CNのみを通り、コンデンサC2〜CN-1を通らない。そして、このときのインピーダンスが基準インピーダンスとなる。
【0047】
一方、仮に接点P1が断線していた場合、パルス信号はこの接点P1を通るルートRaを流れることができないため、接点P2からコンデンサC1〜CNを経て第1高電位バイアス線33a,33bへと流れることになる(図7中の破線矢印参照)。そのため、全てのコンデンサC1〜CNに内在する抵抗成分rの影響を受けることになり、インピーダンス測定器91での測定値が基準インピーダンスよりも大きくなる。従って、基準インピーダンスよりも測定値が大きい場合には、COF64に設けられたバイアス線31,33とFPC65に設けられたバイアス線82,85と接続箇所である接点P1〜P4のうち、少なくとも1箇所に接続不良があると判断することができる。
【0048】
以上のような構成の駆動ユニット90及びその配線状態検出方法によれば、駆動ユニット90に別途専用の構成を予め備えさせることなく、COF64に設けられたバイアス線31,33とFPC65に設けられたバイアス線82,85と接続箇所の状態を容易に検出することができる。また、各接続箇所(接点P1〜P4)を目視によって確認することができない場合であっても、確実にその接続状態を検出することができる。
【0049】
[駆動ユニットの他の構成(1)]
図9は、上述したのとは異なる構成を備えた駆動ユニット90aのヘッド本体15aを、ノズル行方向Yに沿った線で切断したときの構成を示す断面図である。また、図10は、図9に示した駆動ユニット90aにおいて配線状態を検出する際の該駆動ユニット90aの等価回路を示す図面である。
【0050】
図9に示すように、ヘッド本体15aは、図3に示したものと同様の流路ユニット11を備える一方、圧電アクチュエータ12とは若干異なる構成の圧電アクチュエータ12aを備えている。具体的に説明すると、図9に示す圧電アクチュエータ12aは、ボトム層24と下側圧電層22との間であって、下側定電位電極47が設けられた領域のノズル行方向Yの両外側に、低電位中継電極110,110が設けられ、下側圧電層22と上側圧電層21との間であって、上側定電位電極46が設けられた領域のノズル行方向Yの両外側に、高電位中継電極111,111が設けられている。
【0051】
このうち低電位中継電極110は、圧電アクチュエータ12aの上面においてノズル行方向Yの両端に形成された第二表面共通電極43,43に対し、上側圧電層21及び下側圧電層22を貫通するスルーホールに充填された導電性材料を介して導通し、下側定電位電極47とはボトム層24の上面に形成された配線を介して導通している。従って、低電位中継電極110は、第二表面共通電極43(図5参照)と下側定電位電極47とを電気的に中継する位置にある。
【0052】
一方、高電位中継電極111は、圧電アクチュエータ12aの上面においてノズル行方向Yの両端に形成された第一表面共通電極44,44に対し、上側圧電層21を貫通するスルーホールに充填された導電性材料を介して導通し、上側定電位電極46とは下側圧電層22の上面に形成された配線を介して導通している。従って、高電位中継電極111は、第一表面共通電極44(図5参照)と上側定電位電極46とを電気的に中継する位置にある。
【0053】
そして、図9に示すように、これら低電位中継電極110と高電位中継電極111とは、積層方向Zに重複しており、換言すれば互いに対向配置されている。その結果、圧電アクチュエータ12のノズル行方向Yの両端部には、低電位中継電極110と高電位中継電極111とによって構成されるコンデンサCA,CBが形成されている。これらのコンデンサCA,CBは、下側定電位電極47及び上側定電位電極46間に形成されるコンデンサC1〜CNが有する静電容量とは独立した所定の静電容量を有しており、本実施の形態では、コンデンサC1〜CNが有する静電容量の総和よりも大きい静電容量を有している。
【0054】
なお、このような圧電アクチュエータ12aには、図6に示したフレキシブル基板13を接合し、該フレキシブル基板13を通じて入力する信号により、図3〜図5を用いて説明した圧電アクチュエータ12と同様の動作を実現することができる。
【0055】
図10に示すように、このような駆動ユニット90aにおいて配線状態を検出する際にも、図7に示したのと同様の構成とし、即ち、第3低電位配線84と第3高電位配線85との間にインピーダンス測定器91を接続する。そして、図8のフローチャートに示したのと同様の手順により、接点P1〜P4のうち何れかに接続不良があるかどうかを検出することができる。また、この駆動ユニット90aでは、上側定電位電極46及び下側定電位電極47で構成されるコンデンサC1〜CNとは別にコンデンサCA,CBを設けているため、このコンデンサCA,CBの静電容量を適宜設定することにより、接続不良が存在した場合のインピーダンス測定値と基準インピーダンスとの差を調整でき、接続不良有無の検出精度を向上することができる。
【0056】
更に、本実施の形態に係る駆動ユニット90aでは、コンデンサCA,CBの静電容量をコンデンサC1〜CNの静電容量の総和より大きくしており、コンデンサコンデンサCA,CBのインピーダンスのうちリアクタンス成分が比較的小さくなっている。従って、接点P1〜P4が適切に接続されており、パルス信号がルートRa,Rbを通る状態でのインピーダンス測定値(即ち、基準インピーダンス)が比較的小さくなる一方、接続不良があって図10の破線矢印をパルス信号が通る状態では、相対的に大きなリアクタンス成分を有するコンデンサC1〜CNのインピーダンスが測定値に含まれることになる。従って、接続不良がある場合には、インピーダンス測定値と基準インピーダンスとの差が大きくなり、接続不良有無の検出精度を向上することができる。
【0057】
なお、2つのコンデンサCA,CBの静電容量は、互いに同一であってもよいし、互いに異なる値としておいてもよい。
【0058】
[駆動ユニットの他の構成(2)]
図11は、上述したのとは異なる構成を備えた駆動ユニット90bのヘッド本体15bを、ノズル列方向Xに沿った線で切断したときの構成を示す断面図である。図11に示すように、ヘッド本体15bは、図4に示したものと同様の流路ユニット11を備える一方、図4に示した圧電アクチュエータ12とは若干異なる圧電アクチュエータ12bを備えている。具体的に説明すると、圧電アクチュエータ12bが有する下側定電位電極47bは、上側定電位電極46との積層方向Zの重複部分のみが欠落した構成となっている。
【0059】
このような構成により、個別電極42に対して高電位と低電位との間で変化する信号が入力された場合に、下側圧電層22において上側定電位電極46直下の部分に電解が生じず、この部分を変形しないようにすることができる。従って、この部分の変形に伴うクロストークを抑制することができると共に、消費電力の低減を図ることができる。
【0060】
一方、このように上側定電位電極46に対向する部分の下側定電位電極47を欠落させると、図7のようにコンデンサC1〜CNを形成することはできない。しかしながら、図9及び図10に示した低電位中継電極110と高電位中継電極111とを設けることにより、やはり接点P1〜P4での接続状態を検出することができる。以下、駆動ユニット90bにおいて配線状態を検出する方法について説明する。
【0061】
図12は、図11に示した駆動ユニット90bにおいて配線状態を検出する際の該駆動ユニット90bの等価回路を示す図面である。図12に示すように、駆動ユニット90bの場合は、2つの低電位中継電極110と2つの高電位中継電極111とによってコンデンサCA,CBが形成されている。そして、コンデンサコンデンサC1〜CNは存在せず、2つの低電位中継電極110,110間と2つの高電位中継電極111,111間とに、上側定電位電極46に内在する抵抗r1と下側定電位電極47に内在する抵抗r2とが存在している。
【0062】
このような駆動ユニット90bにおいて、4つの接点P1〜P4が適切に接続されている場合は、図7を用いて説明したのと同様に、入力されたパルス信号は接点P1から、第1低電位バイアス線31a、コンデンサC1、及び第1高電位バイアス線33aを経て接点P3へ至るルートRaと、接点P2から、第1低電位バイアス線31b、コンデンサCN、及び第1高電位バイアス線33bを経て接点P4へ至るルートRbとを流れる。即ち、この場合に測定されるインピーダンス(基準インピーダンス)には、抵抗r1、r2が含まれない。
【0063】
一方、仮に接点P1が断線していた場合、パルス信号はこの接点P1を通るルートRaを流れることができないため、接点P2から抵抗r1,r2を経て第1高電位バイアス線33a,33bへと流れることになる(図12中の破線矢印参照)。そのため、測定されるインピーダンスには抵抗r1,r2が含まれることになり、基準インピーダンスよりも大きくなる。従って、基準インピーダンスよりも測定値が大きい場合には、接点P1〜P4のうち、少なくとも1箇所に接続不良があると判断することができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、接続される2つの基板に跨って設けられる配線について、基板間の接続箇所の接続状態を容易に検出することができる液体吐出装置の駆動ユニットと、該駆動ユニットの配線状態検出方法とに適用することができる。
【符号の説明】
【0065】
2 液体吐出ヘッド
11 流路ユニット
12,12a,12b 圧電アクチュエータ
13 フレキシブル基板
31 第1低電位バイアス線(第1低電位配線:COM)
33 第1高電位バイアス線(第1高電位配線:VCOM)
42 個別電極(駆動電極)
46 上側定電位電極(高電位電極)
47 下側定電位電極(低電位電極)
53 圧力室
64 COF
64a 第1ベースシート
65 FPC
65a 第2ベースシート
66 駆動回路
73 第1低電位駆動線(VSS)
74 第1高電位駆動線(VDD)
82 第2低電位バイアス線(第2低電位配線:COM)
83 第2低電位駆動線(VSS)
84 第3低電位配線
85 第2高電位バイアス線(第2高電位配線:VCOM)
86 第2高電位駆動線(VDD)
87 第3高電位配線
90,90a,90b 駆動ユニット
91 インピーダンス測定器
100 液体吐出装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタ装置などの液体吐出装置の駆動ユニット、及びその配線状態検出方法に関し、特に、2つの基板に渡る配線の接続箇所における接続状態を検出することができる構成及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出装置の一例として、ノズル孔から液体(インク)を被記録体へ吐出する液体吐出ヘッドを備えたインクジェット式のプリンタ装置が知られている。該プリンタ装置が備える液体吐出ヘッドは、圧力室とノズル孔とを結ぶチャンネルが複数形成された流路ユニットと、圧力室内のインクに吐出圧力を付与する駆動ユニットとを有している。そして液体吐出ヘッドは、タンクから供給されたインクを複数の圧力室に分配し、全圧力室のなかから一又は複数の圧力室に対しパルス状の圧力を付与する。これにより、圧力が付与された圧力室と連通しているノズル孔から液体を吐出させ、被記録体に付着させて画像を形成する。ここで、圧力室内のインクに圧力を付与する駆動ユニットの一例として、駆動回路が実装されたフレキシブル基板に圧電アクチュエータを接続したものがある。
【0003】
圧電アクチュエータは、例えば特許文献1に示されるように、各圧力室に対向して個別に配置された個別電極と、複数の圧力室に跨って形成された共通電極と、これら個別電極及び共通電極で挟まれた圧電セラミックスから成る圧電層とが、複数積層された構成となっている。そして、流路ユニットの上面にて開口する圧力室を上方から覆うようにして、絶縁層を挟んで流路ユニットに接合される。
【0004】
また、圧電アクチュエータに接続されるフレキシブル基板は、駆動回路と圧電アクチュエータとの間の配線構造が汎用品ではまかなえず、圧電アクチュエータの仕様に合わせたものを使用する必要があるため、一般的に高価になりがちである。そこで特許文献2ではフレキシブル基板を2分割し、駆動回路が実装されて圧電アクチュエータに接続されるCOF(Chip On Film)と、該COFからプリンタ本体側へ延びる汎用FPC(Flexible Print Cable)とから構成したものを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−195047号公報
【特許文献2】特開2007−196404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年では上述したものとは異なり、個別電極の他に低電位共通電極及び高電位共通電極の2種類の共通電極を備える圧電アクチュエータも提案されており、この場合、フレキシブル基板には、低電位共通電極及び高電位共通電極の夫々に電位をバイアスすべく低電位配線と高電位配線とが設けられる。
【0007】
また、圧電アクチュエータ内の全ての低電位共通電極及び高電位共通電極に対して可及的に均一に低電位及び高電位を夫々付与すべく、低電位配線及び高電位配線の夫々を二手に分けてフレキシブル基板の両端部に形成し、これらを圧電アクチュエータの両端部にて、低電位共通電極及び高電位共通電極に接続することが考えられる。そして、この場合における低電位配線と高電位配線の構成は、FPC上で1本から2本に分岐しCOF上ではこの分岐に対応させて2本設ける構成とすることが考えられる。即ち、COFには2本の低電位配線(第1低電位配線)と2本の高電位配線(第1高電位配線)とを形成し、FPCにはこれらと接続される2本の低電位配線(第2低電位配線)と2本の高電位配線(第2高電位配線)とを形成し、更にFPCでは、これら2本の低電位配線を1本に合流した低電位配線(第3低電位配線)とし、同様に2本の高電位配線を1本に合流した高電位配線(第3高電位配線)とする構成である。これにより、低電位共通電極及び高電位共通電極での電圧降下による影響を抑制し、圧電アクチュエータの全領域において、低電位共通電極及び高電位共通電極の夫々に、略均一の低電位及び高電位を付与することができる。
【0008】
ここで、このような構成にした場合、上記の通り各共通電極への電位を均一化できる等のメリットを有する一方、COF上の低電位配線及び高電位配線とFPC上の低電位配線及び高電位配線との各接続箇所に不備があった場合に、これを検出するのが困難である。例えば、COF側の2本の低電位配線は低電位共通電極を通じて導通しているため、FPC側の2本の低電位配線を合流しない構成であれば、FPC側の2本の低電位配線間に電圧計を接続することにより1つの閉回路が形成される。従って、電圧計での測定値が所定未満であれば、COFとFPCとの接続箇所が適正に接続されていると判断でき、所定以上であれば接続箇所が断線していると判断できる。しかしながら、FPC側の2本の低電位配線を合流した構成の場合、上記のように電圧計を介装して閉回路を形成することができないため、容易にはCOFとFPCとの接続箇所の不備を検出することができない。また、高電位配線についてのCOFとFPCとの接続箇所の不備を検出する場合にも同じことが言える。
【0009】
なお、FPC上の2本の低電位配線(又は高電位配線)から別途配線を引き出して電圧計を接続するための端子を設けることも考えられるが、近年要望されている駆動ユニットの小型化に逆行するものであり、好ましくない。そして、このような事情は、インクジェット式プリンタ装置に限らず、同様の構成の駆動ユニットを備える液体吐出装置の全般においても同様である。
【0010】
そこで本発明は、接続される2つの基板に跨って設けられる配線について、基板間の接続箇所の接続状態を容易に検出することができる液体吐出装置の駆動ユニットと、該駆動ユニットの配線状態検出方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る駆動ユニットの配線状態検出方法は、低電位電極、高電位電極、及び駆動電極が圧電層を挟んで積層されたアクチュエータに、前記低電位電極に接続される2本の第1低電位配線と前記高電位電極に接続される2本の第1高電位配線とを有する第1シート基材が接続され、更に、該第1シート基材に、前記各第1低電位配線に接続される2本の第2低電位配線と前記各第1高電位配線に接続される2本の第2高電位配線とを有する第2シート基材が接続され、前記2本の第2低電位配線及び前記2本の第2高電位配線は、前記第2シート基材上で夫々合流して各1本の第3低電位配線及び第3高電位配線を形成して成る液体吐出装置の駆動ユニットの配線状態検出方法であって、前記駆動ユニットが有する前記第3低電位配線と前記第3高電位配線との間に測定器を接続し、両配線間のインピーダンス測定値を取得するステップと、前記第1低電位配線と前記第2低電位配線との間、及び前記第1高電位配線と前記第2高電位配線との間が、何れも電気的に接続されている状態での、前記第3低電位配線と前記第3高電位配線との間のインピーダンスである基準インピーダンスと、前記インピーダンス測定値とを比較するステップとを備えている。
【0012】
また、本発明に係る液体吐出装置の駆動ユニットは、ノズル孔から液体を吐出させる圧力が付与される圧力室に対応して設けられ、低電位にバイアスされる低電位電極、高電位にバイアスされる高電位電極、及び経時的に変化する駆動電位が付与される駆動電極が、圧電層を挟んでこの順に積層された活性部を有するアクチュエータと、前記低電位電極に接続される2本の第1低電位配線、及び前記高電位電極に接続される2本の第1高電位配線を有し、前記アクチュエータに接続される第1シート基材と、前記各第1低電位配線に接続される2本の第2低電位配線、前記各第1高電位配線に接続される2本の第2高電位配線、前記2本の第2低電位配線が合流して成す第3低電位配線、及び前記2本の第2高電位配線が合流して成す第3高電位配線を有し、前記第1シート基材に接続される第2シート基材とを備え、前記アクチュエータにおいて、前記各第1低電位配線から前記低電位電極へ至る途中の箇所と、前記各第1高電位配線から前記高電位電極へ至る箇所との間の夫々には、前記活性部とは独立した2つの静電容量が形成されており、前記第3低電位配線及び前記第3高電位配線の各開放側端子は、液体吐出時に前記低電位電極及び前記高電位電極をバイアスする電位の入力端子を成すと共に、前記静電容量を介したインピーダンス測定値から、前記第1低電位配線及び前記第1高電位配線と第2低電位配線及び第2高電位配線との間の接続状態を検出する測定端子をも成している。
【0013】
このような構成とすることにより、第1低電位配線及び第1高電位配線が圧電アクチュエータ内の静電容量を介して接続されるため、第3低電位配線及び第3高電位配線の開放側端子間にインピーダンス測定器を接続すれば、閉回路を形成することができる。従って、第1シート基材及び第2シート基材に跨って設けられる低電位配線及び高電位配線の接続箇所、即ち、第1シート基材上の第1低電位配線及び第1高電位配線と第2シート基材上の第2低電位配線及び第2高電位配線との接続箇所について、適正に接続されているか否かを検出することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、接続される2つの基板に跨って設けられる配線について、基板間の接続箇所の接続状態を容易に検出することができる液体吐出装置の駆動ユニットと、該駆動ユニットの配線状態検出方法とを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】液体吐出装置たるプリンタ装置の要部を示す模式的平面図である。
【図2】プリンタ装置が備える液体吐出ヘッドの構成を示す分解斜視図である。
【図3】流路ユニットと圧電アクチュエータとが接合された状態でのヘッド本体を、図2のIII-III線(後述するノズル行方向に沿った線)で切断したときの構成を示す断面図である。
【図4】流路ユニットと圧電アクチュエータとが接合された状態でのヘッド本体を、図2のIV-IV線(即ち、ノズル列方向に沿った線)で切断したときの構成を示す断面図である。
【図5】圧電アクチュエータの平面図である。
【図6】図2に示すフレキシブル基板13の構成を示す図面であり、(a)はCOFの概略底面図、(b)はFPCの概略平面図を示している。
【図7】配線状態を検出する際の駆動ユニットの等価回路を示す図面である。
【図8】駆動ユニットの配線状態を検出する手順を示すフローチャートである。
【図9】上述したのとは異なる構成を備えた駆動ユニットのヘッド本体を、ノズル行方向に沿った線で切断したときの構成を示す断面図である。
【図10】図9に示した駆動ユニットにおいて配線状態を検出する際の該駆動ユニットの等価回路を示す図面である。
【図11】更に異なる構成を備えた駆動ユニットのヘッド本体を、ノズル列方向に沿った線で切断したときの構成を示す断面図である。
【図12】図11に示した駆動ユニットにおいて配線状態を検出する際の該駆動ユニットの等価回路を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態に係る液体吐出装置及びその製造方法について、液体吐出装置の一例であるインクジェットプリンタ装置(以下、「プリンタ装置」と称する)に適用したとき場合を例にとり、図面を参照しつつ説明する。但し、本発明はプリンタ装置への適用に限定されるものではなく、インク以外の液体を吐出する液体吐出装置全般に対しても適用できることを付言しておく。
【0017】
[プリンタ装置の全体構成]
図1は、液体吐出装置たるプリンタ装置100の要部を示す模式的平面図である。図1に示すように、プリンタ装置100は、左右方向へ延びる一対のガイドレール102,103が略平行に配設されており、このガイドレール102,103に液体供給ユニット104が走査方向にスライド可能に支持されている。ガイドレール103の左右の端部付近には一対のプーリ105,106が設けられ、液体供給ユニット104は、このプーリ105,106に巻き掛けられたタイミングベルト107に接合されている。一方のプーリ106には正逆回転駆動するモータ(図示せず)が設けられており、そのプーリ106が正逆回転駆動することでタイミングベルト107が左方向及び右方向へと往復移動可能になっており、これに伴って液体供給ユニット104がガイドレール102,103に沿って左右方向へ往復走査される。
【0018】
プリンタ装置100には、4つのインクカートリッジ108が交換のために挿脱可能にして装着されている。そして、液体供給ユニット104には、これらのインクカートリッジ108から4色の有色インク(例えば、ブラック、シアン、マゼンダ、イエロー)を夫々供給すべく、可撓性を有する4本のインク供給チューブ109が接続されている。液体供給ユニット104の下部には液体吐出ヘッド2(図2参照)が搭載されており、その下方で走査方向と直角する方向(紙送り方向)に搬送される被記録体(例えば、記録用紙)に向けて液体吐出ヘッド2からインク(液体)を吐出し、この被記録体に画像を形成することができるようになっている。
【0019】
[液体吐出ヘッドの概略構成]
図2はプリンタ装置100が備える液体吐出ヘッド2の構成を示す分解斜視図である。この図2に示すように、液体吐出ヘッド2は、圧電アクチュエータ12を上方から流路ユニット11に接合して成るヘッド本体15と、このヘッド本体15の上部にて圧電アクチュエータ12に接合されたフレキシブル基板13とを備えている。また、流路ユニット11は、複数のプレート部材が積層された構成となっている。図6は配線板の底面図である。
【0020】
図3は、流路ユニット11と圧電アクチュエータ12とが接合された状態でのヘッド本体15を、図2のIII-III線(後述するノズル行方向に沿った線)で切断したときの構成を示す断面図である。図3に示すように、流路ユニット11はその下面にて開口する複数のノズル孔55を有しており、該ノズル孔55は、或一方向に延びる一又は複数の列を成すようにして複数配設されている。1つのノズル列に並ぶノズル孔55は、互いに所定間隔をおいて配置されて同色の液体(インク)が吐出されるようになっている。このノズル列は、該ノズル列と略直交する方向に適宜間隔で配置され、本実施の形態では、吐出される液体の色ごとに6列ずつ設けられている。
【0021】
以下、ノズル列の延びる方向を「ノズル列方向X」といい、このノズル列方向Xに対するノズル行方向を「ノズル行方向Y」という。なお、液体吐出ヘッド2は、ノズル行方向Yに往復走査される。
【0022】
流路ユニット11の内部には、液体を一時的に貯留する共通貯留室であるマニホールド51と、マニホールド51と各ノズル85とを個別に連通する複数のチャンネルとが形成されている。チャンネルは、各ノズル85に対応して設けられて液体を一時的に貯留する圧力室53、マニホールド51と圧力室53とを連通する絞り部52、及びノズル85と圧力室53とを連通するディセンダ孔54などの各空間で構成されている。
【0023】
図2に示すように、流路ユニット11の上面には液体タンク(図示せず)に接続されている液体供給口17が液体の色別に設けられている。液体タンクから各液体供給口17に供給された液体は、流路ユニット11内のマニホールド51に流入し、絞り部52を介して圧力室53に至る。そして、圧力室53内の液体が、圧電アクチュエータ12の駆動により吐出圧を受けると、その圧力波はディセンダ孔54を通じてノズル孔55近傍の液体にも伝搬し、該ノズル孔55から液体が吐出されるようになっている。
【0024】
[圧電アクチュエータ]
図4は、流路ユニット11と圧電アクチュエータ12とが接合された状態でのヘッド本体15を、図2のIV-IV線(即ち、ノズル列方向に沿った線)で切断したときの構成を示す断面図であり、図5は、圧電アクチュエータ12の平面図である。
【0025】
図3及び図4に示すように、圧電アクチュエータ12は、流路ユニット11の上面に積層接合され、流路ユニットの上面に開口している圧力室53を閉塞している。この圧電アクチュエータ12は、圧電材料(例えば、PZT)で構成される圧電層23と、該圧電層23が上面に積層されると共に流路ユニット11の上面に接合されるベース層24とを備えており、圧電層23は更に、上側圧電層21及び下側圧電層22の上下二層で構成されている。また、上側圧電層21の上面には、各圧力室53に対応して個別電極(駆動電極)42が設けられ、上側圧電層21と下側圧電層22との間には、各個別電極42に対応して(即ち、各圧力室53に対応して)上側定電位電極(高電位電極)46が設けられている。更に、下側圧電層22とボトム層24との間には下側定電位電極(低電位電極)47が設けられている。なお、以下では、圧電アクチュエータ12を構成する圧電層23の積層方向を「積層方向Z」という。
【0026】
上記各電極のうち、個別電極42は、圧力室53と対向するように上側圧電層21の上面にてノズル列方向Xに沿って略一定間隔で並設され、ノズル行方向Yには千鳥状にずれて配置されている。各個別電極42の一部はノズル行方向Yに突出しており、この突出部がフレキシブル基板13の個別電極接続ランド60(図6参照)に接続される接続端子41となっている。
【0027】
上側定電位電極46は、下側圧電層22の上面にてノズル列方向Xに沿って略一定間隔で並んでおり、そうして形成された上側定電位電極46の列は、ノズル行方向Yに複数並設されている。そのため、上側定電位電極46と個別電極42とは積層方向Zに重複して設けられている。また、圧電アクチュエータ12に具備される全ての上側定電位電極46は電気的に接続されており、全ての上側定電位電極46に対して共通電位が付与されるようになっている。
【0028】
下側定電位電極47は、ノズル列方向Xに沿って並ぶ圧力室53に共通の電極となるように、ノズル列方向Xに沿って延びる帯状に形成されており、下側定電位電極47と上側定電位電極46と個別電極42とは積層方向Zに重複している。圧電アクチュエータ12に具備される全ての下側定電位電極47は電気的に接続されており、全ての下側定電位電極47に対して共通電位が付与されるようになっている。
【0029】
ここで、図4の断面図に示すように、上側定電位電極46のノズル列方向Xの寸法は、個別電極42のノズル列方向Xの寸法よりも小さく、且つ、積層方向Zに沿って見ると、上側定電位電極46は個別電極42のノズル列方向Xの略中央に配置されている。従って、個別電極42のノズル列方向Xの略中央部分では、個別電極42と上側定電位電極46と下側定電位電極47とが積層方向Zに重複している。このように圧電アクチュエータ12において個別電極42と上側定電位電極46との間に上側圧電層21が挟まれている部分を、以下、「第一活性部36」という。一方、個別電極42のノズル列方向Xの両端部分では、個別電極42と下側定電位電極47とが積層方向Zに重複しており、これらの電極の間には上側定電位電極46が存在しない。このように圧電アクチュエータ12において個別電極42のノズル列方向Xの両端部分と下側定電位電極47との間に上側圧電層21及び下側圧電層22が挟まれている部分を、以下、「第二活性部37,37」という。
【0030】
図5に示すように、圧電アクチュエータ12の上面のノズル行方向Yの両端部には、第一表面共通電極44と第二表面共通電極43とが形成されている。このうち第一表面共通電極44は、上側圧電層21を積層方向Zに貫通したスルーホールに充填された導電性材料を介して、上側定電位電極46と電気的に接続されている。また、第二表面共通電極43は、上側圧電層21及び下側圧電層22を積層方向Zに貫通したスルーホールに充填された導電性材料を介して、下側定電位電極47と電気的に接続されている。
【0031】
図3及び図4に示すように、上記構成の圧電アクチュエータ12において、個別電極42、上側定電位電極46、下側定電位電極47、及び個別電極42と下側定電位電極47とで挟まれた圧電層23の部分は、圧力室53内に液体吐出圧を加えるために各圧力室53に対応して設けられたエネルギー発生部40を成している。このエネルギー発生部40に駆動信号(駆動電圧)を入力するために、各エネルギー発生部40に対応して上述した接続端子41が設けられており、該接続端子41は、ノズル列方向Xに延びる一又は複数の列を成して圧電アクチュエータ12の上面に配置されている。
【0032】
[フレキシブル基板]
次に、フレキシブル基板13について説明する。図2に示すように、フレキシブル基板13は、駆動回路66が実装された第1フレキシブル基板としてのCOF(チップ・オン・フィルム)64と、第2フレキシブル基板としてのFPC(フレキシブル・プリント・ケーブル)65とから構成されている。これらCOF64及びFPC65は、長方形状を成す電気絶縁性の可撓性シート材である第1ベースシート64a及び第2ベースシート65aの片面に複数の配線が形成され、互いに、そして圧電アクチュエータ12とも接続される。
【0033】
図6は、図2に示すフレキシブル基板13の構成を示す図面であり、(a)はCOF64の概略底面図、(b)はFPC65の概略平面図を示している。図6(a)に示すように、COF64には、第1ベースシート64aの片面(下面)であってそのノズル列方向Xの端部に、FPC65との接続電極35aが、その長手方向をノズル行方向Yに沿うようにして設けられており、その近傍に駆動回路66が実装されている。また、駆動回路66の実装面と同一面上には、ノズル行方向Yの両端に第1低電位バイアス線(第1低電位配線:COM)31,31が形成され、これらと平行するようにその内方には第1高電位バイアス線(第1高電位配線:VCOM)33,33が形成され、これらのバイアス線31,33のノズル列方向Yの端部は接続電極35aに接続されている。
【0034】
また、第1高電位バイアス線33,33間には複数の個別電極接続ランド60が形成されており、第1低電位バイアス線31及び第1高電位バイアス線33の上には、複数の共通電極接続ランド32,34が形成されている。
【0035】
このような第1ベースシート64aの下面は、電気絶縁性を有する可撓性の合成樹脂(例えば、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂)からなるカバー層で被覆されている一方、共通電極接続ランド32,34及び個別電極接続ランド60と重複するカバー層の部位には孔が形成され、この孔内に露出する共通電極接続ランド32,34及び個別電極接続ランド60にバンプ電極が固着されている。そして、このバンプ電極を介して、COF64が有する共通電極接続ランド32,34及び個別電極接続ランド60は、圧電アクチュエータ12が有する第一表面共通電極44、第二表面共通電極43、及び個別電極42の接続端子41(図5参照)に接続される。
【0036】
駆動回路66からは、圧電アクチュエータ12の駆動電極42へ駆動電位を付与するための出力側配線71が、個別電極接続ランド60と同数だけ、第1ベースシート64aの下面を並進するように延設されており、夫々は独立して各個別電極接続ランド60に接続されている。また、駆動回路66からは、該駆動回路66内の素子を動作させる制御信号を入力するための入力側配線72が、出力側配線71と同数だけ、並進するように延設されており、該入力側配線72は接続電極35aに接続されている。
【0037】
更に、複数の入力側配線72の群と第1高電位バイアス線33との間のスペースには、接続電極35aと駆動回路66とを接続する第1低電位駆動線(VSS)73,73が形成されている。また、上記スペース内であって、これら第1低電位駆動線73,73の外側には、接続電極35aと駆動回路66とを接続する第1高電位駆動線(VDD)74,74が形成されている。これら第1低電位駆動線73及び第1高電位駆動線74は、夫々駆動回路66にグランド電位又は所定の高電位を付与するものであり、駆動回路66は、出力側配線72を通じてこれら2種類の電位を選択的に個別電極42へ付与する。そして、これら出力側配線71、入力側配線72、第1低電位駆動線73、及び第1高電位駆動線74もまた、上記カバー層によって被覆されている。
【0038】
一方、図6(b)に示すように、FPC65におけるノズル行方向Yの一端部には、COF64と接続するための接続電極35bが、その長手方向をノズル行方向Yに沿うようにして設けられている。この接続電極35bからは、ノズル列方向Xの一方へ向かって4本の配線が平行に延設されている。このうち、両端に位置する配線は第2低電位バイアス線(第2低電位配線:COM)82,82であり、接続電極35a,35bが接合することによってCOF64の第1低電位バイアス線31,31に導通する。また、第2低電位バイアス線82,82の間に位置する2本の配線は、第2低電位駆動線83,83であり、COF64の第1低電位駆動線73,73に導通する。そして、これら第2低電位バイアス線82,82及び第2低電位駆動線83,83は、FPC65上にて合流して1本の第3低電位配線84を成し、FPC65上をノズル行方向Yに沿って延設されている。
【0039】
また、接続電極35bからノズル列方向Xの他方へ向かって4本の配線が平行に延設されている。このうち、両端に位置する配線は第2高電位バイアス線(第2高電位配線:VCOM)85,85であり、接続電極35a,35bが接合することによってCOF64の第1高電位バイアス線33,33に導通する。また、第2高電位バイアス線85,85の間に位置する2本の配線は、第2高電位駆動線86,86であり、COF64の第1高電位駆動線74,74に導通する。そして、これら第2高電位バイアス線85,85及び第2高電位駆動線86,86は、FPC65上にて合流して1本の第3高電位配線87を成し、FPC65上をノズル行方向Yに沿って延設されている。
【0040】
ここで、第3低電位配線84及び第3高電位配線87の各開放側端子(即ち、図6(b)でのノズル行方向Y上側の端子)は、液体吐出時に下側定電位電極47及び上側定電位電極46をバイアスする電位(COM及びVCOM)の入力端子を成すと共に、個別電極42へ選択的に付与される駆動電位(VSS及びVDD)を中継する駆動回路66へ入力するための端子をも成し、更に、両端子間のインピーダンス測定値から以下に説明するように配線の接続状態を検出する測定端子をも成している。
【0041】
[配線状態検出方法]
上述したような構成の圧電アクチュエータ12及びフレキシブル基板13が、本実施の形態に係る駆動ユニット90を構成している。以下、このような駆動ユニット90において、COF64に設けられたバイアス線31,33とFPC65に設けられたバイアス線82,85との間の接続状態を検出するための構成及び方法について説明する。
【0042】
図7は、配線状態を検出する際の駆動ユニット90の等価回路を示す図面である。また、図8は、駆動ユニット90の配線状態を検出する手順を示すフローチャートである。図7に示すように、配線状態を検出する場合には、第3低電位配線84と第3高電位配線85との間にインピーダンス測定器91が接続される(図8:S1)。そして、図3及び図4に示すように対向配置された上側定電位電極46及び下側定電位電極47は、一種のコンデンサC1〜CN(Nは圧力室53と同数の値)とみなすことができ、両電極46,47間には所定の静電容量が形成される。従って、インピーダンス測定器91、第3低電位配線84、第2低電位バイアス線82,第1低電位バイアス線31、コンデンサC1〜CN、第1高電位バイアス線33、第2高電位バイアス線85、及び第3高電位バイアス線87により、1つの閉回路が形成される。
【0043】
なお、本実施の形態に係るインピーダンス測定器91は、閉回路にパルス信号を出力する電源92と、第3低電位配線84及び第3高電位配線85の端子間電圧を検出する電圧計93と、閉回路を流れる電流の総和を検出する電流計94とから構成されている。
【0044】
次に、上述したような閉回路において、インピーダンス測定器91の電源92からパルス信号を出力し(図8:S2)、電圧計93及び電流計94の検出値から、閉回路内のインピーダンスを測定する(図8:S3)。一方、COF64に設けられたバイアス線31,33とFPC65に設けられたバイアス線82,85との間が適切に接続されている場合の閉回路内のインピーダンスを予め測定しておき、これを基準インピーダンスとする。次に、測定値と基準インピーダンスとを比較し(図8:S4)、測定値が基準インピーダンスと同程度であれば接続状態が良好であると判断し(図8:S5)、測定値が基準インピーダンスより大きければ接続状態に不備があり、断線の可能性があると判断する(図8:S6)。
【0045】
ここで、接続状態に不備があると判断する根拠について説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて2本の第1低電位バイアス線31を夫々第1低電位バイアス線31a,31bとして区別し、これら第1低電位バイアス線31a,31bに接続される2本の第1高電位バイアス線33も夫々第1高電位バイアス線33a,33bとして区別する。
【0046】
図7に示すように、COF64に設けられたバイアス線31,33とFPC65に設けられたバイアス線82,85と接続箇所は、接点P1〜P4の4箇所存在している。まず、これらの接点P1〜P4が全て適切に接続された状態である場合、電源92からのパルス信号のほとんどは、接点P1から、第1低電位バイアス線31a、コンデンサC1、及び第1高電位バイアス線33aを経て接点P3へ至るルートRaと、接点P2から、第1低電位バイアス線31b、コンデンサCN、及び第1高電位バイアス線33bを経て接点P4へ至るルートRbとを流れる。即ち、コンデンサC1,CNのみを通り、コンデンサC2〜CN-1を通らない。そして、このときのインピーダンスが基準インピーダンスとなる。
【0047】
一方、仮に接点P1が断線していた場合、パルス信号はこの接点P1を通るルートRaを流れることができないため、接点P2からコンデンサC1〜CNを経て第1高電位バイアス線33a,33bへと流れることになる(図7中の破線矢印参照)。そのため、全てのコンデンサC1〜CNに内在する抵抗成分rの影響を受けることになり、インピーダンス測定器91での測定値が基準インピーダンスよりも大きくなる。従って、基準インピーダンスよりも測定値が大きい場合には、COF64に設けられたバイアス線31,33とFPC65に設けられたバイアス線82,85と接続箇所である接点P1〜P4のうち、少なくとも1箇所に接続不良があると判断することができる。
【0048】
以上のような構成の駆動ユニット90及びその配線状態検出方法によれば、駆動ユニット90に別途専用の構成を予め備えさせることなく、COF64に設けられたバイアス線31,33とFPC65に設けられたバイアス線82,85と接続箇所の状態を容易に検出することができる。また、各接続箇所(接点P1〜P4)を目視によって確認することができない場合であっても、確実にその接続状態を検出することができる。
【0049】
[駆動ユニットの他の構成(1)]
図9は、上述したのとは異なる構成を備えた駆動ユニット90aのヘッド本体15aを、ノズル行方向Yに沿った線で切断したときの構成を示す断面図である。また、図10は、図9に示した駆動ユニット90aにおいて配線状態を検出する際の該駆動ユニット90aの等価回路を示す図面である。
【0050】
図9に示すように、ヘッド本体15aは、図3に示したものと同様の流路ユニット11を備える一方、圧電アクチュエータ12とは若干異なる構成の圧電アクチュエータ12aを備えている。具体的に説明すると、図9に示す圧電アクチュエータ12aは、ボトム層24と下側圧電層22との間であって、下側定電位電極47が設けられた領域のノズル行方向Yの両外側に、低電位中継電極110,110が設けられ、下側圧電層22と上側圧電層21との間であって、上側定電位電極46が設けられた領域のノズル行方向Yの両外側に、高電位中継電極111,111が設けられている。
【0051】
このうち低電位中継電極110は、圧電アクチュエータ12aの上面においてノズル行方向Yの両端に形成された第二表面共通電極43,43に対し、上側圧電層21及び下側圧電層22を貫通するスルーホールに充填された導電性材料を介して導通し、下側定電位電極47とはボトム層24の上面に形成された配線を介して導通している。従って、低電位中継電極110は、第二表面共通電極43(図5参照)と下側定電位電極47とを電気的に中継する位置にある。
【0052】
一方、高電位中継電極111は、圧電アクチュエータ12aの上面においてノズル行方向Yの両端に形成された第一表面共通電極44,44に対し、上側圧電層21を貫通するスルーホールに充填された導電性材料を介して導通し、上側定電位電極46とは下側圧電層22の上面に形成された配線を介して導通している。従って、高電位中継電極111は、第一表面共通電極44(図5参照)と上側定電位電極46とを電気的に中継する位置にある。
【0053】
そして、図9に示すように、これら低電位中継電極110と高電位中継電極111とは、積層方向Zに重複しており、換言すれば互いに対向配置されている。その結果、圧電アクチュエータ12のノズル行方向Yの両端部には、低電位中継電極110と高電位中継電極111とによって構成されるコンデンサCA,CBが形成されている。これらのコンデンサCA,CBは、下側定電位電極47及び上側定電位電極46間に形成されるコンデンサC1〜CNが有する静電容量とは独立した所定の静電容量を有しており、本実施の形態では、コンデンサC1〜CNが有する静電容量の総和よりも大きい静電容量を有している。
【0054】
なお、このような圧電アクチュエータ12aには、図6に示したフレキシブル基板13を接合し、該フレキシブル基板13を通じて入力する信号により、図3〜図5を用いて説明した圧電アクチュエータ12と同様の動作を実現することができる。
【0055】
図10に示すように、このような駆動ユニット90aにおいて配線状態を検出する際にも、図7に示したのと同様の構成とし、即ち、第3低電位配線84と第3高電位配線85との間にインピーダンス測定器91を接続する。そして、図8のフローチャートに示したのと同様の手順により、接点P1〜P4のうち何れかに接続不良があるかどうかを検出することができる。また、この駆動ユニット90aでは、上側定電位電極46及び下側定電位電極47で構成されるコンデンサC1〜CNとは別にコンデンサCA,CBを設けているため、このコンデンサCA,CBの静電容量を適宜設定することにより、接続不良が存在した場合のインピーダンス測定値と基準インピーダンスとの差を調整でき、接続不良有無の検出精度を向上することができる。
【0056】
更に、本実施の形態に係る駆動ユニット90aでは、コンデンサCA,CBの静電容量をコンデンサC1〜CNの静電容量の総和より大きくしており、コンデンサコンデンサCA,CBのインピーダンスのうちリアクタンス成分が比較的小さくなっている。従って、接点P1〜P4が適切に接続されており、パルス信号がルートRa,Rbを通る状態でのインピーダンス測定値(即ち、基準インピーダンス)が比較的小さくなる一方、接続不良があって図10の破線矢印をパルス信号が通る状態では、相対的に大きなリアクタンス成分を有するコンデンサC1〜CNのインピーダンスが測定値に含まれることになる。従って、接続不良がある場合には、インピーダンス測定値と基準インピーダンスとの差が大きくなり、接続不良有無の検出精度を向上することができる。
【0057】
なお、2つのコンデンサCA,CBの静電容量は、互いに同一であってもよいし、互いに異なる値としておいてもよい。
【0058】
[駆動ユニットの他の構成(2)]
図11は、上述したのとは異なる構成を備えた駆動ユニット90bのヘッド本体15bを、ノズル列方向Xに沿った線で切断したときの構成を示す断面図である。図11に示すように、ヘッド本体15bは、図4に示したものと同様の流路ユニット11を備える一方、図4に示した圧電アクチュエータ12とは若干異なる圧電アクチュエータ12bを備えている。具体的に説明すると、圧電アクチュエータ12bが有する下側定電位電極47bは、上側定電位電極46との積層方向Zの重複部分のみが欠落した構成となっている。
【0059】
このような構成により、個別電極42に対して高電位と低電位との間で変化する信号が入力された場合に、下側圧電層22において上側定電位電極46直下の部分に電解が生じず、この部分を変形しないようにすることができる。従って、この部分の変形に伴うクロストークを抑制することができると共に、消費電力の低減を図ることができる。
【0060】
一方、このように上側定電位電極46に対向する部分の下側定電位電極47を欠落させると、図7のようにコンデンサC1〜CNを形成することはできない。しかしながら、図9及び図10に示した低電位中継電極110と高電位中継電極111とを設けることにより、やはり接点P1〜P4での接続状態を検出することができる。以下、駆動ユニット90bにおいて配線状態を検出する方法について説明する。
【0061】
図12は、図11に示した駆動ユニット90bにおいて配線状態を検出する際の該駆動ユニット90bの等価回路を示す図面である。図12に示すように、駆動ユニット90bの場合は、2つの低電位中継電極110と2つの高電位中継電極111とによってコンデンサCA,CBが形成されている。そして、コンデンサコンデンサC1〜CNは存在せず、2つの低電位中継電極110,110間と2つの高電位中継電極111,111間とに、上側定電位電極46に内在する抵抗r1と下側定電位電極47に内在する抵抗r2とが存在している。
【0062】
このような駆動ユニット90bにおいて、4つの接点P1〜P4が適切に接続されている場合は、図7を用いて説明したのと同様に、入力されたパルス信号は接点P1から、第1低電位バイアス線31a、コンデンサC1、及び第1高電位バイアス線33aを経て接点P3へ至るルートRaと、接点P2から、第1低電位バイアス線31b、コンデンサCN、及び第1高電位バイアス線33bを経て接点P4へ至るルートRbとを流れる。即ち、この場合に測定されるインピーダンス(基準インピーダンス)には、抵抗r1、r2が含まれない。
【0063】
一方、仮に接点P1が断線していた場合、パルス信号はこの接点P1を通るルートRaを流れることができないため、接点P2から抵抗r1,r2を経て第1高電位バイアス線33a,33bへと流れることになる(図12中の破線矢印参照)。そのため、測定されるインピーダンスには抵抗r1,r2が含まれることになり、基準インピーダンスよりも大きくなる。従って、基準インピーダンスよりも測定値が大きい場合には、接点P1〜P4のうち、少なくとも1箇所に接続不良があると判断することができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、接続される2つの基板に跨って設けられる配線について、基板間の接続箇所の接続状態を容易に検出することができる液体吐出装置の駆動ユニットと、該駆動ユニットの配線状態検出方法とに適用することができる。
【符号の説明】
【0065】
2 液体吐出ヘッド
11 流路ユニット
12,12a,12b 圧電アクチュエータ
13 フレキシブル基板
31 第1低電位バイアス線(第1低電位配線:COM)
33 第1高電位バイアス線(第1高電位配線:VCOM)
42 個別電極(駆動電極)
46 上側定電位電極(高電位電極)
47 下側定電位電極(低電位電極)
53 圧力室
64 COF
64a 第1ベースシート
65 FPC
65a 第2ベースシート
66 駆動回路
73 第1低電位駆動線(VSS)
74 第1高電位駆動線(VDD)
82 第2低電位バイアス線(第2低電位配線:COM)
83 第2低電位駆動線(VSS)
84 第3低電位配線
85 第2高電位バイアス線(第2高電位配線:VCOM)
86 第2高電位駆動線(VDD)
87 第3高電位配線
90,90a,90b 駆動ユニット
91 インピーダンス測定器
100 液体吐出装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低電位電極、高電位電極、及び駆動電極が圧電層を挟んで積層されたアクチュエータに、前記低電位電極に接続される2本の第1低電位配線と前記高電位電極に接続される2本の第1高電位配線とを有する第1シート基材が接続され、更に、該第1シート基材に、前記各第1低電位配線に接続される2本の第2低電位配線と前記各第1高電位配線に接続される2本の第2高電位配線とを有する第2シート基材が接続され、前記2本の第2低電位配線及び前記2本の第2高電位配線は、前記第2シート基材上で夫々合流して各1本の第3低電位配線及び第3高電位配線を形成して成る液体吐出装置の駆動ユニットの配線状態検出方法であって、
前記駆動ユニットが有する前記第3低電位配線と前記第3高電位配線との間に測定器を接続し、両配線間のインピーダンス測定値を取得するステップと、
前記第1低電位配線と前記第2低電位配線との間、及び前記第1高電位配線と前記第2高電位配線との間が、何れも電気的に接続されている状態での、前記第3低電位配線と前記第3高電位配線との間のインピーダンスである基準インピーダンスと、前記インピーダンス測定値とを比較するステップと
を備えることを特徴とする駆動ユニットの配線状態検出方法。
【請求項2】
ノズル孔から液体を吐出させる圧力が付与される圧力室に対応して設けられ、低電位にバイアスされる低電位電極、高電位にバイアスされる高電位電極、及び経時的に変化する駆動電位が付与される駆動電極が、圧電層を挟んでこの順に積層された活性部を有するアクチュエータと、
前記低電位電極に接続される2本の第1低電位配線、及び前記高電位電極に接続される2本の第1高電位配線を有し、前記アクチュエータに接続される第1シート基材と、
前記各第1低電位配線に接続される2本の第2低電位配線、前記各第1高電位配線に接続される2本の第2高電位配線、前記2本の第2低電位配線が合流して成す第3低電位配線、及び前記2本の第2高電位配線が合流して成す第3高電位配線を有し、前記第1シート基材に接続される第2シート基材とを備え、
前記アクチュエータにおいて、前記各第1低電位配線から前記低電位電極へ至る途中の箇所と、前記各第1高電位配線から前記高電位電極へ至る途中の箇所との間の夫々には、前記活性部とは独立した2つの静電容量が形成されており、
前記第3低電位配線及び前記第3高電位配線の各開放側端子は、液体吐出時に前記低電位電極及び前記高電位電極をバイアスする電位の入力端子を成すと共に、前記静電容量を介したインピーダンス測定値から、前記第1低電位配線及び前記第1高電位配線と第2低電位配線及び第2高電位配線との間の接続状態を検出する測定端子をも成していることを特徴とする液体吐出装置の駆動ユニット。
【請求項3】
前記静電容量は、前記低電位電極及び前記高電位電極の間の静電容量よりも大きいことを特徴とする請求項2に記載の液体吐出装置の駆動ユニット。
【請求項4】
前記アクチュエータは、前記各第1低電位配線から入力される電位を複数の前記低電位電極へ中継する2つの低電位中継部と、前記各第1高電位配線から入力される電位を複数の前記高電位電極へ中継する2つの高電位中継部とを有し、前記各低電位中継部と前記各高電位中継部との間の夫々に前記静電容量が設けられていることを特徴とする請求項2又は3に記載の液体吐出装置の駆動ユニット。
【請求項1】
低電位電極、高電位電極、及び駆動電極が圧電層を挟んで積層されたアクチュエータに、前記低電位電極に接続される2本の第1低電位配線と前記高電位電極に接続される2本の第1高電位配線とを有する第1シート基材が接続され、更に、該第1シート基材に、前記各第1低電位配線に接続される2本の第2低電位配線と前記各第1高電位配線に接続される2本の第2高電位配線とを有する第2シート基材が接続され、前記2本の第2低電位配線及び前記2本の第2高電位配線は、前記第2シート基材上で夫々合流して各1本の第3低電位配線及び第3高電位配線を形成して成る液体吐出装置の駆動ユニットの配線状態検出方法であって、
前記駆動ユニットが有する前記第3低電位配線と前記第3高電位配線との間に測定器を接続し、両配線間のインピーダンス測定値を取得するステップと、
前記第1低電位配線と前記第2低電位配線との間、及び前記第1高電位配線と前記第2高電位配線との間が、何れも電気的に接続されている状態での、前記第3低電位配線と前記第3高電位配線との間のインピーダンスである基準インピーダンスと、前記インピーダンス測定値とを比較するステップと
を備えることを特徴とする駆動ユニットの配線状態検出方法。
【請求項2】
ノズル孔から液体を吐出させる圧力が付与される圧力室に対応して設けられ、低電位にバイアスされる低電位電極、高電位にバイアスされる高電位電極、及び経時的に変化する駆動電位が付与される駆動電極が、圧電層を挟んでこの順に積層された活性部を有するアクチュエータと、
前記低電位電極に接続される2本の第1低電位配線、及び前記高電位電極に接続される2本の第1高電位配線を有し、前記アクチュエータに接続される第1シート基材と、
前記各第1低電位配線に接続される2本の第2低電位配線、前記各第1高電位配線に接続される2本の第2高電位配線、前記2本の第2低電位配線が合流して成す第3低電位配線、及び前記2本の第2高電位配線が合流して成す第3高電位配線を有し、前記第1シート基材に接続される第2シート基材とを備え、
前記アクチュエータにおいて、前記各第1低電位配線から前記低電位電極へ至る途中の箇所と、前記各第1高電位配線から前記高電位電極へ至る途中の箇所との間の夫々には、前記活性部とは独立した2つの静電容量が形成されており、
前記第3低電位配線及び前記第3高電位配線の各開放側端子は、液体吐出時に前記低電位電極及び前記高電位電極をバイアスする電位の入力端子を成すと共に、前記静電容量を介したインピーダンス測定値から、前記第1低電位配線及び前記第1高電位配線と第2低電位配線及び第2高電位配線との間の接続状態を検出する測定端子をも成していることを特徴とする液体吐出装置の駆動ユニット。
【請求項3】
前記静電容量は、前記低電位電極及び前記高電位電極の間の静電容量よりも大きいことを特徴とする請求項2に記載の液体吐出装置の駆動ユニット。
【請求項4】
前記アクチュエータは、前記各第1低電位配線から入力される電位を複数の前記低電位電極へ中継する2つの低電位中継部と、前記各第1高電位配線から入力される電位を複数の前記高電位電極へ中継する2つの高電位中継部とを有し、前記各低電位中継部と前記各高電位中継部との間の夫々に前記静電容量が設けられていることを特徴とする請求項2又は3に記載の液体吐出装置の駆動ユニット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−214772(P2010−214772A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−64248(P2009−64248)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
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