液体吐出装置及び液体吐出方法
【課題】被処理媒体に液体を吐出するヘッド部を備える液体吐出装置であって、ヘッド部に与えられる駆動信号の調整法により液体吐出の均一化が図られ、処理品質を向上させることができる液体吐出装置等を提供する。
【解決手段】搬送される媒体に液体を吐出しドットを形成する液体吐出装置が、入力されるドット有無の情報に従って予め記憶した駆動波形による電気信号を供給する制御部と、前記供給された電気信号によってノズルから前記液体の吐出を行うヘッドユニットを複数備えたヘッド部と、を有し、前記駆動波形は、前記ヘッドユニット内の領域を複数に分割した各領域の液体吐出状態に基づいて、前記ヘッドユニット毎に決定されたものである。
【解決手段】搬送される媒体に液体を吐出しドットを形成する液体吐出装置が、入力されるドット有無の情報に従って予め記憶した駆動波形による電気信号を供給する制御部と、前記供給された電気信号によってノズルから前記液体の吐出を行うヘッドユニットを複数備えたヘッド部と、を有し、前記駆動波形は、前記ヘッドユニット内の領域を複数に分割した各領域の液体吐出状態に基づいて、前記ヘッドユニット毎に決定されたものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理媒体に液体を吐出するヘッド部を備える液体吐出装置等に関し、特に、ヘッド部に与えられる駆動信号の調整法により液体吐出の均一化が図られ、処理品質を向上させることができる液体吐出装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェットプリンターなどの液体吐出装置が使用されている。インクジェットプリンターでは、通常、液体であるインクを吐出する複数のノズルを有するヘッドが備えられ、当該ヘッドの作動部に対して駆動信号(電気信号)が与えられて、その信号に従ったインクの吐出がなされる。
【0003】
ヘッドが複数備えられる装置においては、ヘッド毎に液体の吐出特性が異なるため、全てのヘッドに対して同じ駆動信号を用いると、液体吐出量がばらつき、印刷媒体上のインク濃度が不均一になってしまうという課題がある。
【0004】
下記特許文献1には、ヘッド毎に生ずる濃度の違いを補正する発明について記載され、テストパターンを形成して濃度測定を行い、駆動信号である駆動パルスのパラメータを補正することなどが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−184380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
また、上述した特許文献1などに記載の従来技術では、各ヘッドに与えられる駆動信号の決定に際して、各ヘッドの全領域における平均印刷濃度を判断基準として用いている。
【0007】
しかしながら、各ヘッドに備えられる各ノズルの特性も均一ではなく、ヘッド内においても領域によって印刷濃度が大きく異なる場合がある。従って、上記ヘッドの平均印刷濃度を判断基準とした駆動信号の補正(調整)法では、印刷濃度の均一化が不十分である虞がある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、被処理媒体に液体を吐出するヘッド部を備える液体吐出装置であって、ヘッド部に与えられる駆動信号の調整法により液体吐出の均一化が図られ、処理品質を向上させることができる液体吐出装置、等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の一つの側面は、搬送される媒体に液体を吐出しドットを形成する液体吐出装置が、入力される前記ドットの形成の有無の情報に従って予め記憶した駆動波形による電気信号を供給する制御部と、前記供給された電気信号によってノズルから前記液体の吐出を行うヘッドユニットを複数備えたヘッド部と、を有し、前記駆動波形は、前記ヘッドユニット内の領域を複数に分割した各領域の液体吐出状態に基づいて、前記ヘッドユニット毎に決定されたものである、ことである。
【0010】
更に、上記発明において、好ましい態様は、前記分割した各領域の液体吐出状態は、当該領域に備えられる前記ノズルから吐出された前記液体の前記媒体上における色濃度の平
均値である、ことを特徴とする。
【0011】
更に、上記発明において、一つの態様は、前記ヘッドユニット毎の駆動波形の決定は、前記分割した各領域の色濃度の平均値と、全ヘッドユニットに備えられる前記ノズルから吐出された前記液体の前記媒体上における色濃度の平均値との差異が、第一の所定の範囲内に入るようになされる、ことを特徴とする。
【0012】
更にまた、上記発明において、一つの態様は、前記ヘッドユニット毎の駆動波形の決定は、前記分割した各領域の色濃度の平均値が第二の所定の範囲内に入るようになされる、ことを特徴とする。
【0013】
更に、上記発明において、一つの態様は、前記分割した各領域の色濃度の平均値として、前記ヘッドユニットの端部に位置する範囲の色濃度の平均値が用いられる、ことを特徴とする。
【0014】
更にまた、上記発明において、一つの態様は、前記ヘッドユニットの端部にある前記ノズルから所定数の前記ノズルが位置する領域が、前記分割した領域から除外される、ことを特徴とする。
【0015】
更に、上記発明において、一つの態様は、前記ヘッドユニット間で前記媒体の搬送と交わる方向について前記ノズルの位置が重なるオーバーラップ部がある場合に、前記ヘッドユニット毎の駆動波形の決定は、前記オーバーラップ部を含む互いに隣り合う2つの前記分割した領域における前記色濃度の平均値の差異が、第三の所定の範囲内に入るようになされる、ことを特徴とする。
【0016】
上記の目的を達成するために、本発明の別の側面は、搬送される媒体に液体を吐出しドットを形成する液体吐出装置における液体吐出方法が、制御部が、入力される前記ドットの形成の有無の情報に従って予め記憶した駆動波形による電気信号を供給する工程と、複数のヘッドユニットが、前記供給された電気信号によってノズルから前記液体の吐出を行う工程と、を有し、前記駆動波形は、前記ヘッドユニット内の領域を複数に分割した各領域の液体吐出状態に基づいて、前記ヘッドユニット毎に決定されたものである、ことである。
【0017】
本発明の更なる目的及び、特徴は、以下に説明する発明の実施の形態から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明を適用した液体吐出装置の実施の形態例に係る構成図である。
【図2】駆動波形の一例を示した図である。
【図3】プリンター2のヘッド部23の概略配置を例示した図である。
【図4】駆動信号の決定処理の手順を例示したフローチャートである。
【図5】各ヘッドユニット231のエリアを例示した図である。
【図6】第一の判定手法を説明するための図である。
【図7】第二の判定手法を説明するための図である。
【図8】第三の判定手法を説明するための図である。
【図9】第四の判定手法を説明するための図である。
【図10】第五の判定手法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態例を説明する。しかしながら、かかる実施の
形態例が、本発明の技術的範囲を限定するものではない。なお、図において、同一又は類似のものには同一の参照番号又は参照記号を付して説明する。
【0020】
図1は、本発明を適用した液体吐出装置の実施の形態例に係る構成図である。図1に示すプリンター2が本実施の形態例に係る液体吐出装置であり、複数のヘッドユニットを備えるヘッド部23からインクを吐出して用紙26に対する印刷を実行するが、各ヘッドユニットに対して供給される駆動信号(電気信号)は、ヘッドユニット内の領域を複数に分割した範囲(エリア)毎の印刷濃度に基づいて決定されたものであり、従来装置よりも印刷濃度の均一化を図ることができる。
【0021】
図1に示すホストコンピューター1は、プリンター2に対して印刷指示を行うプリンター2のホスト装置であり、例えば、パーソナルコンピューターで構成される。従って、ホストコンピューター1は、図示していないが、CPU、RAM、ROM、HDD、ディスプレイ、操作装置等で構成されている。
【0022】
アプリケーション11は、印刷要求元であり、例えば、文章作成アプリケーション、図形作成アプリケーションなど、様々な機能を有するアプリケーションが存在し得る。当該アプリケーション11は、処理内容を指示するプログラム、当該プログラムに従って処理を実行する上記CPU、及び上記RAM等で構成され、印刷要求時には印刷内容を表す画像データを出力する。
【0023】
ドライバー12は、プリンター2用のドライバーであり、上記アプリケーション11から出力された画像データに画像処理を施してプリンター2用の画像データ(印刷データ)とし、当該印刷データをプリンター2に送信して、アプリケーション11から要求を受けた印刷について印刷指示を行う部分である。プリンター2に送信する印刷データは、プリンター2用のコマンドで表現され、ここでは、一例として、ドットのオン/オフを表現した、いわゆるハーフトーン処理後のデータとなっている。
【0024】
当該ドライバー12は、上記HDD等に記憶されるドライバープログラム、当該ドライバープログラムに従って処理を実行する上記CPU、上記RAM等で構成される。また、このドライバープログラムは、CD等の記憶媒体からホストコンピューター1に複写される、または、インターネット等のネットワークを介してホストコンピューター1にダウンロードされる、ことにより、ホストコンピューター1の上記HDDに格納される。
【0025】
プリンター2(液体吐出装置)は、上記ホストコンピューター1の印刷指示に従って印刷処理を実行する、例えば、ラインヘッドタイプのインクジェットプリンターである。また、一例として、プリンター2はロール紙25への印刷を行うタイプのプリンターである。
【0026】
プリンター2には、図1に示されるように、コントローラー部21と印刷実行部22が備えられる。コントローラー部21(液体吐出装置の制御部)は、上記印刷指示による印刷データを受信して、当該印刷データに従った印刷処理を印刷実行部22に実行させる部分である。具体的には、印刷実行部22のヘッド部23の制御、すなわち、インクの吐出に係る制御と、印刷実行部22の搬送系の制御、すなわち、ロール紙から繰り出される用紙26の搬送に係る制御を行う。ヘッド部23の制御では、上記印刷データに従って、ヘッド部23が備える各ヘッドユニットに対して、そのヘッドユニット用の駆動信号(電気信号)を供給する。
【0027】
なお、コントローラー部21は、具体的には、処理内容を記述したプログラム、当該プログラムに従って処理を実行するCPU、RAM、プログラム等を格納するROM、AS
IC等で構成される。
【0028】
また、コントローラー部21の上記ROMには、上述した各ヘッドユニット用の駆動信号(電気信号)の駆動波形が記憶されている。図2は、当該駆動波形の一例を示した図である。図2に示す波形において、そのピーク電圧を示すVh(以下、駆動電圧とする)は、当該駆動信号の波形を決定するパラメータの一つであり、この値が大きいほどヘッド部23の作動部が大きく駆動され、インク(液体)が多く吐出される。後述する本実施の形態例における駆動信号の決定過程では、この値が調整される。
【0029】
次に、印刷実行部22は、上述の通り、インク吐出系機構と用紙搬送系機構(搬送部)を備える。用紙搬送系機構には、ロール紙25から用紙26を搬送路に供給するための給紙ローラー27、供給された用紙26を印刷位置に搬送するための搬送ローラー28、印刷後の用紙26を装置外へ排出するための排紙ローラー29等が備えられ、印刷処理中には一定速度で用紙26を搬送する。また、図示していないが、用紙搬送系機構には、これら以外に、各ローラー用の駆動装置、位置検出装置等が備えられる。
【0030】
インク吐出系機構には、プラテン24とその上に位置するヘッド部23が備えられる。ヘッド部23は、用紙26(被処理媒体)に対して色材であるインク(液体)を吐出する複数のノズルを備えたラインヘッドである。ここでは、一例として、CMYK(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)4色のインクを用いるものとする。また、ラインヘッドは、複数のヘッドユニット(231a−c、図3参照)に分割されており、それらが互い違いに、いわゆる千鳥状に配置される構成である。かかるヘッド部23は、固定位置で上記用紙搬送系機構により一定速度で搬送される用紙26に対し、インクを吐出して印刷処理を実行する。
【0031】
図3は、本プリンター2のヘッド部23の概略配置を例示した図である。ここでは、ヘッド部23は、一例として、3つのヘッドユニット231a、231b、231cに分割されており、被処理媒体である用紙26の搬送方向(図中の矢印a)に対して、図3に示すように、千鳥状に配置されている。なお、図3において、右方向は上記搬送方向を意味し、左方向は上記搬送方向と反対の方向を意味し、上方向は上記搬送方向と直交する上記搬送方向に向かって左手の方向を意味し、下方向は上記搬送方向と直交する上記搬送方向に向かって右手の方向を意味する。
【0032】
各ヘッドユニット231には、それぞれ、4つのノズル列232が備えられ、各ノズル列232は複数の(ここでは、一例として360個の)ノズルで構成される。また、これらノズル列232は、各ノズルユニットにおいて、用紙26の搬送方向の順番に、KCMYのインクをそれぞれ吐出するように構成される。すなわち、用紙26の搬送方向の後端に位置するノズル列232ではノズルからY色のインクが吐出され、その次のノズル列232ではノズルからM色のインクが吐出され、さらに次のノズル列232ではノズルからC色のインクが吐出され、先頭端のノズル列232ではノズルからK色のインクが吐出される。
【0033】
従って、この例では、ヘッド部23は、色毎に1080個のノズルが備えられている。そして、これら各ノズル列232におけるノズル番号は0−1079となる。また、図3に示されるように、隣り合うヘッドユニットは、用紙26の幅方向に一部が重なり合うように配置され、図3にbで示すオーバーラップ部では、各色で、用紙26の幅方向の同じ位置に対して、2つのノズルが配置される(2つのノズルでインクを吐出できる)ようになっている。
【0034】
印刷時には、搬送方向に移動する用紙26に対して、固定のヘッドユニットに備えられ
る、このような配置の各ノズルから各色のインクが吐出される。具体的には、各ノズルに対する作動部(例えば、ピエゾ素子と弾性板)に上述した駆動信号が印加されて、作動部の駆動によりノズルからインクが吐出される。
【0035】
以上説明したような構成を有するホストコンピューター1及びプリンター2では、以下のようにして印刷処理が実行される。まず、ホストコンピューター1において、アプリケーション11が印刷要求を出すと、その画像データがドライバー12で受信される。その後、ドライバー12は、受信した画像データに対して各種の画像処理を施す。具体的には、まず、オブジェクト単位で表現される画像データにラスタライズ処理を施し、受信した画像データを、画素毎に各色の濃度階調値を有するビットマップデータに変換する。次に、当該ビットマップデータの色表現をプリンター2で使用される色材の色表現に変換する色変換処理を実行する。具体的には、例えば、RGB(レッド、グリーン、ブルー)で表現されたデータを上記CMYKで表現されたデータに変換する。次に、ビットマップデータに対してプリンター2の装置(具体的には、ヘッド部23の各ノズル)に依存した補正処理を施し、その後、ハーフトーン処理によりドットのオン/オフを示す画像データとする。
【0036】
このようにして画像処理が施された後、ドライバー12は、処理後の画像データを含む印刷指示のための印刷データを生成する。当該印刷データは、プリンター2用のコマンドで表現され、使用する用紙の種類など印刷に係る各種の情報も含む。
【0037】
当該印刷データは、ドライバー12からプリンター2へ送信され、コントローラー部21で受信される。コントローラー部21は、受信した印刷データを解釈し、その結果に従って、順次、印刷実行部22に指示を出し印刷処理を実行させる。
【0038】
当該指示に従って、印刷実行部22の用紙搬送系は、用紙26を所定の位置に移動させた後、印刷処理が終了するまで、用紙26を上述した一定速度で搬送する。また、印刷実行部22のヘッド部23は、上記指示に従って、各ヘッドユニット231のノズル列232における各ノズルからインクを吐出する。具体的には、上記ドットのオン/オフを示すデータに基づいて、そのドットを形成する位置にあるノズルから上記インク吐出が実行される。
【0039】
その後、指示された印刷処理が終了すると、コントローラー部21からの指示により、印刷実行部22で、印刷された部分の用紙26が切断されプリンター2から排出される。
【0040】
次に、上述した各ヘッドユニット231の駆動信号(駆動波形)を決定する際の処理について説明する。当該処理は、プリンター2の使用前(出荷前)に行われ、生成された駆動波形は上述したとおり、コントローラー部21のROMに記憶される。
【0041】
図4は、当該駆動信号の決定処理の手順を例示したフローチャートである。図4に基づいて、1色分の処理について説明する。
【0042】
まず、プリンター2においてテストパターン(濃度測定用パターン)の印刷処理(出力)を実行する(ステップS1)。当該印刷処理は、低濃度から高濃度まで、複数の濃度階調値(例えば、0−255を均等に分割した5段階の値)に対して、それぞれ、その色の全ノズル(ここでは、ノズル番号0−1079)を用いて実行する。また、各階調値での印刷では、各ノズルが複数回インクを吐出するものとする。そして、当該印刷では、各ヘッドユニット231に対して、それぞれ、共通の標準駆動信号(駆動波形)が用いられる。
【0043】
次に、上記生成されたテストパターンの濃度を測定する(ステップS2)。具体的には、スキャナーを用いて、所定のピッチで(例えば、ノズルピッチと同ピッチで)テストパターンの印刷濃度を実測する。
【0044】
その後、当該濃度測定値が駆動信号を決定する機能を有するコンピューターに入力され、当該コンピューターで以下のように駆動信号が決定される。なお、当該決定処理において、人が介在する方法とすることもできる。
【0045】
まず、入力された上記濃度測定値のエリア毎の平均値を算出する(ステップS3)。ここで、エリアとは、各ヘッドユニット231内の領域を複数に分割した領域を意味し、ここでは、一例として、ヘッドユニット231内の領域を3つの領域に分割し、各ヘッドユニット231が、それぞれ、3つのエリアを有する、ものとする。
【0046】
図5は、当該エリアを例示した図である。図5に示すように、エリアはヘッドユニット231の領域を、用紙26の搬送方向と直交する方向に分割した領域であり、ここでは、エリア(1)−エリア(9)がある。
【0047】
そして、エリア毎の平均値とは、上記印刷されたテストパターンの各階調における、そのエリアに含まれる(位置する)ノズルによって印刷された部分から得られた、上記濃度測定値の平均値である。
【0048】
従って、当該処理により、エリア(1)については、ヘッドユニット231aのノズル列232でエリア(1)に含まれるノズルによって印刷されたパターンの平均印刷濃度が、各階調毎に算出される。すなわち、ここでは、低濃度から高濃度までの5段階の階調について印刷濃度の平均値が求められる。同様に、エリア(2)−エリア(9)についても各階調の平均値が求められる。
【0049】
このようにしてエリア毎の平均値が得られると、当該エリア毎の平均印刷濃度(液体吐出状態)を用いて、各ヘッドユニット231に対する駆動信号の切替要否を判断(判定)する(ステップS4)。すなわち、テストパターン印刷時に用いられた標準駆動信号を切り替える必要があるか否かを、換言すれば、標準駆動信号をそのまま使用する駆動信号として決定してよいか否かを判断する。
【0050】
当該判定は、上記印刷されたテストパターンの各濃度階調の範囲についてそれぞれ行われ、いずれかの濃度階調について切り替えが必要であると判断された場合には、切り替えが必要であると判定する。以下、1濃度階調についての判定手法を説明する。
【0051】
当該判定の具体的な手法としては、いくつかの手法があるが、何れにしても、各ヘッドユニット231内の領域を複数に分割したエリアの平均印刷濃度を用いて判定を行うことを特徴とする。
【0052】
第一の手法は、上記求めた各エリアの平均印刷濃度と、全ヘッドユニット231a−cの平均印刷濃度との差異が、所定の範囲(第一の範囲)内に入っているか否かによって判定する。そして、いずれかのエリアの平均印刷濃度が当該範囲に入っていない場合には、切り替えが必要であると判定する。なお、全ヘッドユニットの平均印刷濃度は、上記印刷されたテストパターンの当該濃度階調における濃度測定値の平均値であり、すなわち、当該色のノズル列232に含まれる全ノズルの印刷濃度の平均値である。
【0053】
また、上記所定の範囲は、前述したドライバー12による画像処理における補正処理によって対応が可能である範囲として、事前に決定される。
【0054】
図6は、第一の判定手法を説明するための図である。図6は、平均印刷濃度をノズル番号順に示したグラフであり、(a)には、上記エリア毎の平均印刷濃度が例示されている。図6の(a)には、図5に示したエリア(1)−エリア(9)の上記平均印刷濃度が黒丸でプロットされている。また、上記全ヘッドユニットの平均印刷濃度が、全ノズル平均として実線で示され、上記所定の第一の範囲は、図中の破線で示される上限値から下限値の範囲である。
【0055】
図6の(a)に示す例では、ヘッドユニット231cのエリア(7)の平均印刷濃度が上記所定の範囲内に入っておらず、駆動信号の切り替えが必要であると判断される。すなわち、例えば、図中の矢印で示すように、平均濃度値が上記範囲内に入るようにヘッドユニット231c用の駆動信号が標準駆動信号から切り替えられる必要があると判定される。
【0056】
なお、図6の(b)は、前述した従来手法の場合について示している。図6の(a)と同じテストパターンを得た場合、従来手法では、ヘッドユニット毎の平均印刷濃度(図6の(b)の黒丸)が判断の基準とされるので、ヘッドユニット231a−cのいずれの平均印刷濃度も上記所定の範囲内に入ることになる。従って、この従来手法では、駆動信号の切り替えは必要ない、と判定される。しかし、実際には、エリア(7)において、上記所定の範囲内を超える高濃度が印刷されることになり、濃度の均一化が不十分な結果となってしまう。
【0057】
次に、第二の手法は、上記求めた各エリアの平均印刷濃度の最大値と最小値の差異が、所定の範囲(第二の範囲)内に入っているか否かによって判定する。そして、当該範囲に入っていない場合には、切り替えが必要であると判定する。上記第二の範囲は、前述したドライバー12による画像処理における補正処理によって対応が可能である範囲として、事前に決定される。
【0058】
図7は、第二の判定手法を説明するための図である。図7は、図6と同様に、平均印刷濃度(図中の黒丸)をノズル番号順に示したグラフであり、(a)には、上記エリア毎の平均印刷濃度が例示されている。図7の(a)において許容差として示される破線の範囲は、エリア毎の最小平均印刷濃度を下限とした場合の上記所定の第二の範囲を表している。
【0059】
図7の(a)に示す例では、ヘッドユニット231cのエリア(7)の平均印刷濃度が最大値であり、上記第二の範囲内に入っておらず、駆動信号の切り替えが必要であると判断される。すなわち、例えば、図中の矢印で示すように、平均濃度値が上記範囲内に入るようにヘッドユニット231c用の駆動信号が標準駆動信号から切り替えられる必要があると判定される。
【0060】
なお、図7の(b)は、従来手法の場合について示している。図7の(a)と同じテストパターンを得た場合、従来手法では、ヘッドユニット毎の平均印刷濃度(図7の(b)の黒丸)が判断の基準とされるので、最小値であるヘッドユニット231aの平均印刷濃度と最大値であるヘッドユニット231cの平均印刷濃度が上記第二の範囲内に入ることになる。従って、この従来手法では、駆動信号の切り替えは必要ない、と判定される。しかし、実際には、エリア(7)において、上記第二の範囲を超える高濃度が印刷されることになり、濃度の均一化が不十分な結果となってしまう。
【0061】
次に、第三の手法は、各ヘッドユニット231の端部エリアの平均印刷濃度を用いる手法であり、第一の手法と同様に、当該各端部エリアの平均印刷濃度と全ヘッドユニット2
31a−cの平均印刷濃度との差異が、上記第一の範囲内に入っているか否かによって、あるいは、第二の手法と同様に、各端部エリアの平均印刷濃度の最大値と最小値の差異が、上記第二の範囲内に入っているか否かによって、判定する。そして、何れの場合にも、上記範囲に入っていない場合には、切り替えが必要であると判定する。
【0062】
ここで、端部エリアは、各ヘッドユニット231における、用紙26の搬送方向と直交する方向の端部(図3及び図5参照)を含むエリアであり、図5に示したエリアと同範囲を用いてもよいし、異なる大きさの範囲としてもよい。例えば、ヘッドユニット231aでは、エリア(1)及びエリア(3)を端部エリアとしてもよいし、それらよりも狭い範囲を端部エリアとしてもよい。また、端部エリアの平均印刷濃度は、上述したステップS3と同様に求められ、この手法では、端部エリア以外のエリアの平均印刷濃度は求めなくてよい。
【0063】
図8は、第三の判定手法を説明するための図である。図8には、端部エリアの平均印刷濃度(図中の黒丸)がノズル番号順に示され、上記全ヘッドユニットの平均印刷濃度が、全ノズル平均として実線で示され、上記第一の範囲が図中の破線で示される上限値から下限値の範囲として示される。例えば、図中の端部A及びBが、ヘッドユニット231aの端部エリアを表している。
【0064】
図8に示す例では、ヘッドユニット231cの左側の端部エリアの平均印刷濃度が上記第一の範囲内に入っておらず、駆動信号の切り替えが必要であると判断される。すなわち、例えば、図中の矢印で示すように、平均濃度値が上記範囲内に入るようにヘッドユニット231c用の駆動信号が標準駆動信号から切り替えられる必要があると判定される。
【0065】
通常、ヘッドユニット231内の液体吐出特性は、その一方の端部から他方の端部にかけて同じ傾向で変化する場合が多く、従って、端部エリアのみを上記判断の基準としても濃度を均一化する上で概ね支障はないと考えられる。
【0066】
次に、第四の手法は、上記第一から第三の手法において、各ヘッドユニット231の最端部エリアの印刷濃度を判定に用いない、というものである。すなわち、上記エリアあるいは端部エリアから当該最端部エリアを除いた範囲についての平均印刷濃度で上述した判定を行う。ここで、最端部エリアは、上述した各ヘッドユニット231の端部を含む範囲で、最端のノズル又は最端から所定本のノズルを含む範囲であり、上述した端部エリアよりも小さい範囲である。
【0067】
当該最端エリアは、インクの流れや電気的干渉の点で他のエリアと異なる環境であるため、ノズルからのインク吐出特性も特別なものとなり、他のエリアの平均的な特性を把握する上で除外するのが望ましいと考えられる。
【0068】
図9は、第四の判定手法を説明するための図である。図9は、図6等と同表現形式のグラフを例示しており、この例では、各ヘッドユニット231が上記最端部エリアを除いて4つのエリアに分割されている。図中の黒丸は、当該各エリアの平均印刷濃度であり、それらの両端にある折れ曲った部分が最端部エリア(図中の判定除外領域)を表している。この例では、最端部エリアにおける印刷濃度が他のエリアにおける印刷濃度よりもかなり高くなっている場合を示している。当該例において、最端部エリアを除いて上述した第一の手法を用いた場合には、Cで指し示す部分が判定に用いられないので、駆動信号の切り替えは行わない、という判定になる。
【0069】
次に、第五の手法は、前述したオーバーラップ部を含む上記端部エリアで互いに隣り合うエリア間の平均印刷濃度の差異が、所定の範囲(第三の範囲)内に入っているか否かに
よって判定する。そして、上記所定の第三の範囲内に入っていない場合に、駆動信号の切り替えが必要であると判定する。
【0070】
図10は、第五の判定手法を説明するための図である。図10では、図8と同じ端部エリアの平均印刷濃度がプロットされているが、判定方法が第三の手法とは異なる。図中の端部OLで指し示すエリアが上記オーバーラップ部を含む互いに隣り合う端部エリアである。ここに示す例では、ヘッドユニット231aの右側端部エリア(図3では下部端部エリア)と、ヘッドユニット231bの左側端部エリア(図3では上部端部エリア)との間の平均印刷濃度の差異D1は小さいが、ヘッドユニット231bの右側端部エリア(図3では下部端部エリア)と、ヘッドユニット231cの左側端部エリア(図3では上部端部エリア)との間の平均印刷濃度の差異D2は大きく、例えば、このD2が上記第三の範囲に入らなければ駆動信号を切り替えるという判定がなされる。
【0071】
当該第五の手法では、用紙26上の同範囲を印刷するオーバーラップ部を含むエリアで濃度が均一になるような駆動信号が決定されることになる。
【0072】
以上説明したようにテストパターンの1濃度階調について切替要否の判定がなされるが、他の濃度階調についても同様に判定がなされる。なお、テストパターンを高濃度の1濃度階調のみとして同様に判定してもよい。
【0073】
このようにして判定がなされると、その判定結果に従って、各ヘッドユニット231の駆動信号(駆動波形)を決定する(ステップS5)。当該駆動信号の決定は、上述した判定で用いた手法により、各エリアの平均印刷濃度に係る差異が上記第一の範囲、上記第二の範囲、又は上記第三の範囲内に入るように決定される。また、駆動信号を標準のものから切り替える場合には、駆動電圧Vhの値を上下させる。例えば、図6に示した例では、ヘッドユニット231aと231bについては、標準の駆動信号を用いるように決定され、ヘッドユニット231cについては、標準の駆動信号よりも駆動電圧Vhが低い駆動信号を用いるように決定される。また、その際の駆動電圧Vhの決定は、予め実験等により得られている駆動電圧と印刷濃度の関係を用いる、あるいは、テストパターンの実測値が条件を満たすまで段階的に値を下げていく、などの方法で行うことができる。なお、駆動信号(駆動波形)を決定するパラメータは駆動電圧Vhだけではないので、他のパラメータを用いて適切な駆動信号を決定してもよい。
【0074】
以上、図4に基づいて説明した駆動信号の決定処理が各色についてなされ、その後、各ヘッドユニット231について各色で決定された駆動信号が平均化され、その平均化された駆動信号が最終的な駆動信号とされる。各ヘッドユニットの最終的な駆動信号(駆動波形)は、上記ROMに記憶され、上述した印刷処理に用いられる。なお、上記駆動信号の平均化による最終的な駆動信号の決定は、上述のように駆動電圧Vhの値を変化させることによる切り替えを行った場合には、各色で決定された駆動信号の駆動電圧Vhの平均値を、最終的な駆動信号の駆動電圧Vhとすることである。
【0075】
以上説明したように、本実施の形態例に係るプリンター2では、各ヘッドユニット231用の駆動信号が、ヘッドユニット231の領域を複数に分割したエリア毎の印刷濃度実行値に基づいて決定されているので、ヘッドユニット231内のインク吐出特性のばらつきも考慮された駆動信号で印刷がなされ、従来よりも、濃度の均一性を向上させることができ、従って印刷品質を良好なものとすることができる。
【0076】
また、上述した第三の手法を用いることにより、上記平均印刷濃度の算出や上記切替判定の処理において、端部エリアのみの処理となり、処理の効率化を図ることができる。
【0077】
また、上述した第四の手法を用いることにより、特別な特性を有するヘッドユニット231の最端部エリアの影響が除外され、上記切替判定において正確な処理が実行できる。
【0078】
また、上述した第五の手法を用いることにより、オーバーラップ部について濃度の均一性が向上される。
【0079】
なお、本実施の形態例で示したヘッドユニット数、ノズル数、エリア数は一例であって、他の数としても構わない。
【0080】
また、プリンターに限らず同様の液体吐出装置に本発明を適用することができる。
【0081】
本発明の保護範囲は、上記の実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶものである。
【符号の説明】
【0082】
1 ホストコンピューター、 2 プリンター、 11 アプリケーション、 12 ドライバー、 21 コントローラー部、 22 印刷実行部、 23 ヘッド部、 24 プラテン、 25 ロール紙、 26 用紙、 27 給紙ローラー、 28 搬送ローラー、 29 排紙ローラー、 231a−c ヘッドユニット、 232 ノズル列
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理媒体に液体を吐出するヘッド部を備える液体吐出装置等に関し、特に、ヘッド部に与えられる駆動信号の調整法により液体吐出の均一化が図られ、処理品質を向上させることができる液体吐出装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェットプリンターなどの液体吐出装置が使用されている。インクジェットプリンターでは、通常、液体であるインクを吐出する複数のノズルを有するヘッドが備えられ、当該ヘッドの作動部に対して駆動信号(電気信号)が与えられて、その信号に従ったインクの吐出がなされる。
【0003】
ヘッドが複数備えられる装置においては、ヘッド毎に液体の吐出特性が異なるため、全てのヘッドに対して同じ駆動信号を用いると、液体吐出量がばらつき、印刷媒体上のインク濃度が不均一になってしまうという課題がある。
【0004】
下記特許文献1には、ヘッド毎に生ずる濃度の違いを補正する発明について記載され、テストパターンを形成して濃度測定を行い、駆動信号である駆動パルスのパラメータを補正することなどが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−184380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
また、上述した特許文献1などに記載の従来技術では、各ヘッドに与えられる駆動信号の決定に際して、各ヘッドの全領域における平均印刷濃度を判断基準として用いている。
【0007】
しかしながら、各ヘッドに備えられる各ノズルの特性も均一ではなく、ヘッド内においても領域によって印刷濃度が大きく異なる場合がある。従って、上記ヘッドの平均印刷濃度を判断基準とした駆動信号の補正(調整)法では、印刷濃度の均一化が不十分である虞がある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、被処理媒体に液体を吐出するヘッド部を備える液体吐出装置であって、ヘッド部に与えられる駆動信号の調整法により液体吐出の均一化が図られ、処理品質を向上させることができる液体吐出装置、等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の一つの側面は、搬送される媒体に液体を吐出しドットを形成する液体吐出装置が、入力される前記ドットの形成の有無の情報に従って予め記憶した駆動波形による電気信号を供給する制御部と、前記供給された電気信号によってノズルから前記液体の吐出を行うヘッドユニットを複数備えたヘッド部と、を有し、前記駆動波形は、前記ヘッドユニット内の領域を複数に分割した各領域の液体吐出状態に基づいて、前記ヘッドユニット毎に決定されたものである、ことである。
【0010】
更に、上記発明において、好ましい態様は、前記分割した各領域の液体吐出状態は、当該領域に備えられる前記ノズルから吐出された前記液体の前記媒体上における色濃度の平
均値である、ことを特徴とする。
【0011】
更に、上記発明において、一つの態様は、前記ヘッドユニット毎の駆動波形の決定は、前記分割した各領域の色濃度の平均値と、全ヘッドユニットに備えられる前記ノズルから吐出された前記液体の前記媒体上における色濃度の平均値との差異が、第一の所定の範囲内に入るようになされる、ことを特徴とする。
【0012】
更にまた、上記発明において、一つの態様は、前記ヘッドユニット毎の駆動波形の決定は、前記分割した各領域の色濃度の平均値が第二の所定の範囲内に入るようになされる、ことを特徴とする。
【0013】
更に、上記発明において、一つの態様は、前記分割した各領域の色濃度の平均値として、前記ヘッドユニットの端部に位置する範囲の色濃度の平均値が用いられる、ことを特徴とする。
【0014】
更にまた、上記発明において、一つの態様は、前記ヘッドユニットの端部にある前記ノズルから所定数の前記ノズルが位置する領域が、前記分割した領域から除外される、ことを特徴とする。
【0015】
更に、上記発明において、一つの態様は、前記ヘッドユニット間で前記媒体の搬送と交わる方向について前記ノズルの位置が重なるオーバーラップ部がある場合に、前記ヘッドユニット毎の駆動波形の決定は、前記オーバーラップ部を含む互いに隣り合う2つの前記分割した領域における前記色濃度の平均値の差異が、第三の所定の範囲内に入るようになされる、ことを特徴とする。
【0016】
上記の目的を達成するために、本発明の別の側面は、搬送される媒体に液体を吐出しドットを形成する液体吐出装置における液体吐出方法が、制御部が、入力される前記ドットの形成の有無の情報に従って予め記憶した駆動波形による電気信号を供給する工程と、複数のヘッドユニットが、前記供給された電気信号によってノズルから前記液体の吐出を行う工程と、を有し、前記駆動波形は、前記ヘッドユニット内の領域を複数に分割した各領域の液体吐出状態に基づいて、前記ヘッドユニット毎に決定されたものである、ことである。
【0017】
本発明の更なる目的及び、特徴は、以下に説明する発明の実施の形態から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明を適用した液体吐出装置の実施の形態例に係る構成図である。
【図2】駆動波形の一例を示した図である。
【図3】プリンター2のヘッド部23の概略配置を例示した図である。
【図4】駆動信号の決定処理の手順を例示したフローチャートである。
【図5】各ヘッドユニット231のエリアを例示した図である。
【図6】第一の判定手法を説明するための図である。
【図7】第二の判定手法を説明するための図である。
【図8】第三の判定手法を説明するための図である。
【図9】第四の判定手法を説明するための図である。
【図10】第五の判定手法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態例を説明する。しかしながら、かかる実施の
形態例が、本発明の技術的範囲を限定するものではない。なお、図において、同一又は類似のものには同一の参照番号又は参照記号を付して説明する。
【0020】
図1は、本発明を適用した液体吐出装置の実施の形態例に係る構成図である。図1に示すプリンター2が本実施の形態例に係る液体吐出装置であり、複数のヘッドユニットを備えるヘッド部23からインクを吐出して用紙26に対する印刷を実行するが、各ヘッドユニットに対して供給される駆動信号(電気信号)は、ヘッドユニット内の領域を複数に分割した範囲(エリア)毎の印刷濃度に基づいて決定されたものであり、従来装置よりも印刷濃度の均一化を図ることができる。
【0021】
図1に示すホストコンピューター1は、プリンター2に対して印刷指示を行うプリンター2のホスト装置であり、例えば、パーソナルコンピューターで構成される。従って、ホストコンピューター1は、図示していないが、CPU、RAM、ROM、HDD、ディスプレイ、操作装置等で構成されている。
【0022】
アプリケーション11は、印刷要求元であり、例えば、文章作成アプリケーション、図形作成アプリケーションなど、様々な機能を有するアプリケーションが存在し得る。当該アプリケーション11は、処理内容を指示するプログラム、当該プログラムに従って処理を実行する上記CPU、及び上記RAM等で構成され、印刷要求時には印刷内容を表す画像データを出力する。
【0023】
ドライバー12は、プリンター2用のドライバーであり、上記アプリケーション11から出力された画像データに画像処理を施してプリンター2用の画像データ(印刷データ)とし、当該印刷データをプリンター2に送信して、アプリケーション11から要求を受けた印刷について印刷指示を行う部分である。プリンター2に送信する印刷データは、プリンター2用のコマンドで表現され、ここでは、一例として、ドットのオン/オフを表現した、いわゆるハーフトーン処理後のデータとなっている。
【0024】
当該ドライバー12は、上記HDD等に記憶されるドライバープログラム、当該ドライバープログラムに従って処理を実行する上記CPU、上記RAM等で構成される。また、このドライバープログラムは、CD等の記憶媒体からホストコンピューター1に複写される、または、インターネット等のネットワークを介してホストコンピューター1にダウンロードされる、ことにより、ホストコンピューター1の上記HDDに格納される。
【0025】
プリンター2(液体吐出装置)は、上記ホストコンピューター1の印刷指示に従って印刷処理を実行する、例えば、ラインヘッドタイプのインクジェットプリンターである。また、一例として、プリンター2はロール紙25への印刷を行うタイプのプリンターである。
【0026】
プリンター2には、図1に示されるように、コントローラー部21と印刷実行部22が備えられる。コントローラー部21(液体吐出装置の制御部)は、上記印刷指示による印刷データを受信して、当該印刷データに従った印刷処理を印刷実行部22に実行させる部分である。具体的には、印刷実行部22のヘッド部23の制御、すなわち、インクの吐出に係る制御と、印刷実行部22の搬送系の制御、すなわち、ロール紙から繰り出される用紙26の搬送に係る制御を行う。ヘッド部23の制御では、上記印刷データに従って、ヘッド部23が備える各ヘッドユニットに対して、そのヘッドユニット用の駆動信号(電気信号)を供給する。
【0027】
なお、コントローラー部21は、具体的には、処理内容を記述したプログラム、当該プログラムに従って処理を実行するCPU、RAM、プログラム等を格納するROM、AS
IC等で構成される。
【0028】
また、コントローラー部21の上記ROMには、上述した各ヘッドユニット用の駆動信号(電気信号)の駆動波形が記憶されている。図2は、当該駆動波形の一例を示した図である。図2に示す波形において、そのピーク電圧を示すVh(以下、駆動電圧とする)は、当該駆動信号の波形を決定するパラメータの一つであり、この値が大きいほどヘッド部23の作動部が大きく駆動され、インク(液体)が多く吐出される。後述する本実施の形態例における駆動信号の決定過程では、この値が調整される。
【0029】
次に、印刷実行部22は、上述の通り、インク吐出系機構と用紙搬送系機構(搬送部)を備える。用紙搬送系機構には、ロール紙25から用紙26を搬送路に供給するための給紙ローラー27、供給された用紙26を印刷位置に搬送するための搬送ローラー28、印刷後の用紙26を装置外へ排出するための排紙ローラー29等が備えられ、印刷処理中には一定速度で用紙26を搬送する。また、図示していないが、用紙搬送系機構には、これら以外に、各ローラー用の駆動装置、位置検出装置等が備えられる。
【0030】
インク吐出系機構には、プラテン24とその上に位置するヘッド部23が備えられる。ヘッド部23は、用紙26(被処理媒体)に対して色材であるインク(液体)を吐出する複数のノズルを備えたラインヘッドである。ここでは、一例として、CMYK(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)4色のインクを用いるものとする。また、ラインヘッドは、複数のヘッドユニット(231a−c、図3参照)に分割されており、それらが互い違いに、いわゆる千鳥状に配置される構成である。かかるヘッド部23は、固定位置で上記用紙搬送系機構により一定速度で搬送される用紙26に対し、インクを吐出して印刷処理を実行する。
【0031】
図3は、本プリンター2のヘッド部23の概略配置を例示した図である。ここでは、ヘッド部23は、一例として、3つのヘッドユニット231a、231b、231cに分割されており、被処理媒体である用紙26の搬送方向(図中の矢印a)に対して、図3に示すように、千鳥状に配置されている。なお、図3において、右方向は上記搬送方向を意味し、左方向は上記搬送方向と反対の方向を意味し、上方向は上記搬送方向と直交する上記搬送方向に向かって左手の方向を意味し、下方向は上記搬送方向と直交する上記搬送方向に向かって右手の方向を意味する。
【0032】
各ヘッドユニット231には、それぞれ、4つのノズル列232が備えられ、各ノズル列232は複数の(ここでは、一例として360個の)ノズルで構成される。また、これらノズル列232は、各ノズルユニットにおいて、用紙26の搬送方向の順番に、KCMYのインクをそれぞれ吐出するように構成される。すなわち、用紙26の搬送方向の後端に位置するノズル列232ではノズルからY色のインクが吐出され、その次のノズル列232ではノズルからM色のインクが吐出され、さらに次のノズル列232ではノズルからC色のインクが吐出され、先頭端のノズル列232ではノズルからK色のインクが吐出される。
【0033】
従って、この例では、ヘッド部23は、色毎に1080個のノズルが備えられている。そして、これら各ノズル列232におけるノズル番号は0−1079となる。また、図3に示されるように、隣り合うヘッドユニットは、用紙26の幅方向に一部が重なり合うように配置され、図3にbで示すオーバーラップ部では、各色で、用紙26の幅方向の同じ位置に対して、2つのノズルが配置される(2つのノズルでインクを吐出できる)ようになっている。
【0034】
印刷時には、搬送方向に移動する用紙26に対して、固定のヘッドユニットに備えられ
る、このような配置の各ノズルから各色のインクが吐出される。具体的には、各ノズルに対する作動部(例えば、ピエゾ素子と弾性板)に上述した駆動信号が印加されて、作動部の駆動によりノズルからインクが吐出される。
【0035】
以上説明したような構成を有するホストコンピューター1及びプリンター2では、以下のようにして印刷処理が実行される。まず、ホストコンピューター1において、アプリケーション11が印刷要求を出すと、その画像データがドライバー12で受信される。その後、ドライバー12は、受信した画像データに対して各種の画像処理を施す。具体的には、まず、オブジェクト単位で表現される画像データにラスタライズ処理を施し、受信した画像データを、画素毎に各色の濃度階調値を有するビットマップデータに変換する。次に、当該ビットマップデータの色表現をプリンター2で使用される色材の色表現に変換する色変換処理を実行する。具体的には、例えば、RGB(レッド、グリーン、ブルー)で表現されたデータを上記CMYKで表現されたデータに変換する。次に、ビットマップデータに対してプリンター2の装置(具体的には、ヘッド部23の各ノズル)に依存した補正処理を施し、その後、ハーフトーン処理によりドットのオン/オフを示す画像データとする。
【0036】
このようにして画像処理が施された後、ドライバー12は、処理後の画像データを含む印刷指示のための印刷データを生成する。当該印刷データは、プリンター2用のコマンドで表現され、使用する用紙の種類など印刷に係る各種の情報も含む。
【0037】
当該印刷データは、ドライバー12からプリンター2へ送信され、コントローラー部21で受信される。コントローラー部21は、受信した印刷データを解釈し、その結果に従って、順次、印刷実行部22に指示を出し印刷処理を実行させる。
【0038】
当該指示に従って、印刷実行部22の用紙搬送系は、用紙26を所定の位置に移動させた後、印刷処理が終了するまで、用紙26を上述した一定速度で搬送する。また、印刷実行部22のヘッド部23は、上記指示に従って、各ヘッドユニット231のノズル列232における各ノズルからインクを吐出する。具体的には、上記ドットのオン/オフを示すデータに基づいて、そのドットを形成する位置にあるノズルから上記インク吐出が実行される。
【0039】
その後、指示された印刷処理が終了すると、コントローラー部21からの指示により、印刷実行部22で、印刷された部分の用紙26が切断されプリンター2から排出される。
【0040】
次に、上述した各ヘッドユニット231の駆動信号(駆動波形)を決定する際の処理について説明する。当該処理は、プリンター2の使用前(出荷前)に行われ、生成された駆動波形は上述したとおり、コントローラー部21のROMに記憶される。
【0041】
図4は、当該駆動信号の決定処理の手順を例示したフローチャートである。図4に基づいて、1色分の処理について説明する。
【0042】
まず、プリンター2においてテストパターン(濃度測定用パターン)の印刷処理(出力)を実行する(ステップS1)。当該印刷処理は、低濃度から高濃度まで、複数の濃度階調値(例えば、0−255を均等に分割した5段階の値)に対して、それぞれ、その色の全ノズル(ここでは、ノズル番号0−1079)を用いて実行する。また、各階調値での印刷では、各ノズルが複数回インクを吐出するものとする。そして、当該印刷では、各ヘッドユニット231に対して、それぞれ、共通の標準駆動信号(駆動波形)が用いられる。
【0043】
次に、上記生成されたテストパターンの濃度を測定する(ステップS2)。具体的には、スキャナーを用いて、所定のピッチで(例えば、ノズルピッチと同ピッチで)テストパターンの印刷濃度を実測する。
【0044】
その後、当該濃度測定値が駆動信号を決定する機能を有するコンピューターに入力され、当該コンピューターで以下のように駆動信号が決定される。なお、当該決定処理において、人が介在する方法とすることもできる。
【0045】
まず、入力された上記濃度測定値のエリア毎の平均値を算出する(ステップS3)。ここで、エリアとは、各ヘッドユニット231内の領域を複数に分割した領域を意味し、ここでは、一例として、ヘッドユニット231内の領域を3つの領域に分割し、各ヘッドユニット231が、それぞれ、3つのエリアを有する、ものとする。
【0046】
図5は、当該エリアを例示した図である。図5に示すように、エリアはヘッドユニット231の領域を、用紙26の搬送方向と直交する方向に分割した領域であり、ここでは、エリア(1)−エリア(9)がある。
【0047】
そして、エリア毎の平均値とは、上記印刷されたテストパターンの各階調における、そのエリアに含まれる(位置する)ノズルによって印刷された部分から得られた、上記濃度測定値の平均値である。
【0048】
従って、当該処理により、エリア(1)については、ヘッドユニット231aのノズル列232でエリア(1)に含まれるノズルによって印刷されたパターンの平均印刷濃度が、各階調毎に算出される。すなわち、ここでは、低濃度から高濃度までの5段階の階調について印刷濃度の平均値が求められる。同様に、エリア(2)−エリア(9)についても各階調の平均値が求められる。
【0049】
このようにしてエリア毎の平均値が得られると、当該エリア毎の平均印刷濃度(液体吐出状態)を用いて、各ヘッドユニット231に対する駆動信号の切替要否を判断(判定)する(ステップS4)。すなわち、テストパターン印刷時に用いられた標準駆動信号を切り替える必要があるか否かを、換言すれば、標準駆動信号をそのまま使用する駆動信号として決定してよいか否かを判断する。
【0050】
当該判定は、上記印刷されたテストパターンの各濃度階調の範囲についてそれぞれ行われ、いずれかの濃度階調について切り替えが必要であると判断された場合には、切り替えが必要であると判定する。以下、1濃度階調についての判定手法を説明する。
【0051】
当該判定の具体的な手法としては、いくつかの手法があるが、何れにしても、各ヘッドユニット231内の領域を複数に分割したエリアの平均印刷濃度を用いて判定を行うことを特徴とする。
【0052】
第一の手法は、上記求めた各エリアの平均印刷濃度と、全ヘッドユニット231a−cの平均印刷濃度との差異が、所定の範囲(第一の範囲)内に入っているか否かによって判定する。そして、いずれかのエリアの平均印刷濃度が当該範囲に入っていない場合には、切り替えが必要であると判定する。なお、全ヘッドユニットの平均印刷濃度は、上記印刷されたテストパターンの当該濃度階調における濃度測定値の平均値であり、すなわち、当該色のノズル列232に含まれる全ノズルの印刷濃度の平均値である。
【0053】
また、上記所定の範囲は、前述したドライバー12による画像処理における補正処理によって対応が可能である範囲として、事前に決定される。
【0054】
図6は、第一の判定手法を説明するための図である。図6は、平均印刷濃度をノズル番号順に示したグラフであり、(a)には、上記エリア毎の平均印刷濃度が例示されている。図6の(a)には、図5に示したエリア(1)−エリア(9)の上記平均印刷濃度が黒丸でプロットされている。また、上記全ヘッドユニットの平均印刷濃度が、全ノズル平均として実線で示され、上記所定の第一の範囲は、図中の破線で示される上限値から下限値の範囲である。
【0055】
図6の(a)に示す例では、ヘッドユニット231cのエリア(7)の平均印刷濃度が上記所定の範囲内に入っておらず、駆動信号の切り替えが必要であると判断される。すなわち、例えば、図中の矢印で示すように、平均濃度値が上記範囲内に入るようにヘッドユニット231c用の駆動信号が標準駆動信号から切り替えられる必要があると判定される。
【0056】
なお、図6の(b)は、前述した従来手法の場合について示している。図6の(a)と同じテストパターンを得た場合、従来手法では、ヘッドユニット毎の平均印刷濃度(図6の(b)の黒丸)が判断の基準とされるので、ヘッドユニット231a−cのいずれの平均印刷濃度も上記所定の範囲内に入ることになる。従って、この従来手法では、駆動信号の切り替えは必要ない、と判定される。しかし、実際には、エリア(7)において、上記所定の範囲内を超える高濃度が印刷されることになり、濃度の均一化が不十分な結果となってしまう。
【0057】
次に、第二の手法は、上記求めた各エリアの平均印刷濃度の最大値と最小値の差異が、所定の範囲(第二の範囲)内に入っているか否かによって判定する。そして、当該範囲に入っていない場合には、切り替えが必要であると判定する。上記第二の範囲は、前述したドライバー12による画像処理における補正処理によって対応が可能である範囲として、事前に決定される。
【0058】
図7は、第二の判定手法を説明するための図である。図7は、図6と同様に、平均印刷濃度(図中の黒丸)をノズル番号順に示したグラフであり、(a)には、上記エリア毎の平均印刷濃度が例示されている。図7の(a)において許容差として示される破線の範囲は、エリア毎の最小平均印刷濃度を下限とした場合の上記所定の第二の範囲を表している。
【0059】
図7の(a)に示す例では、ヘッドユニット231cのエリア(7)の平均印刷濃度が最大値であり、上記第二の範囲内に入っておらず、駆動信号の切り替えが必要であると判断される。すなわち、例えば、図中の矢印で示すように、平均濃度値が上記範囲内に入るようにヘッドユニット231c用の駆動信号が標準駆動信号から切り替えられる必要があると判定される。
【0060】
なお、図7の(b)は、従来手法の場合について示している。図7の(a)と同じテストパターンを得た場合、従来手法では、ヘッドユニット毎の平均印刷濃度(図7の(b)の黒丸)が判断の基準とされるので、最小値であるヘッドユニット231aの平均印刷濃度と最大値であるヘッドユニット231cの平均印刷濃度が上記第二の範囲内に入ることになる。従って、この従来手法では、駆動信号の切り替えは必要ない、と判定される。しかし、実際には、エリア(7)において、上記第二の範囲を超える高濃度が印刷されることになり、濃度の均一化が不十分な結果となってしまう。
【0061】
次に、第三の手法は、各ヘッドユニット231の端部エリアの平均印刷濃度を用いる手法であり、第一の手法と同様に、当該各端部エリアの平均印刷濃度と全ヘッドユニット2
31a−cの平均印刷濃度との差異が、上記第一の範囲内に入っているか否かによって、あるいは、第二の手法と同様に、各端部エリアの平均印刷濃度の最大値と最小値の差異が、上記第二の範囲内に入っているか否かによって、判定する。そして、何れの場合にも、上記範囲に入っていない場合には、切り替えが必要であると判定する。
【0062】
ここで、端部エリアは、各ヘッドユニット231における、用紙26の搬送方向と直交する方向の端部(図3及び図5参照)を含むエリアであり、図5に示したエリアと同範囲を用いてもよいし、異なる大きさの範囲としてもよい。例えば、ヘッドユニット231aでは、エリア(1)及びエリア(3)を端部エリアとしてもよいし、それらよりも狭い範囲を端部エリアとしてもよい。また、端部エリアの平均印刷濃度は、上述したステップS3と同様に求められ、この手法では、端部エリア以外のエリアの平均印刷濃度は求めなくてよい。
【0063】
図8は、第三の判定手法を説明するための図である。図8には、端部エリアの平均印刷濃度(図中の黒丸)がノズル番号順に示され、上記全ヘッドユニットの平均印刷濃度が、全ノズル平均として実線で示され、上記第一の範囲が図中の破線で示される上限値から下限値の範囲として示される。例えば、図中の端部A及びBが、ヘッドユニット231aの端部エリアを表している。
【0064】
図8に示す例では、ヘッドユニット231cの左側の端部エリアの平均印刷濃度が上記第一の範囲内に入っておらず、駆動信号の切り替えが必要であると判断される。すなわち、例えば、図中の矢印で示すように、平均濃度値が上記範囲内に入るようにヘッドユニット231c用の駆動信号が標準駆動信号から切り替えられる必要があると判定される。
【0065】
通常、ヘッドユニット231内の液体吐出特性は、その一方の端部から他方の端部にかけて同じ傾向で変化する場合が多く、従って、端部エリアのみを上記判断の基準としても濃度を均一化する上で概ね支障はないと考えられる。
【0066】
次に、第四の手法は、上記第一から第三の手法において、各ヘッドユニット231の最端部エリアの印刷濃度を判定に用いない、というものである。すなわち、上記エリアあるいは端部エリアから当該最端部エリアを除いた範囲についての平均印刷濃度で上述した判定を行う。ここで、最端部エリアは、上述した各ヘッドユニット231の端部を含む範囲で、最端のノズル又は最端から所定本のノズルを含む範囲であり、上述した端部エリアよりも小さい範囲である。
【0067】
当該最端エリアは、インクの流れや電気的干渉の点で他のエリアと異なる環境であるため、ノズルからのインク吐出特性も特別なものとなり、他のエリアの平均的な特性を把握する上で除外するのが望ましいと考えられる。
【0068】
図9は、第四の判定手法を説明するための図である。図9は、図6等と同表現形式のグラフを例示しており、この例では、各ヘッドユニット231が上記最端部エリアを除いて4つのエリアに分割されている。図中の黒丸は、当該各エリアの平均印刷濃度であり、それらの両端にある折れ曲った部分が最端部エリア(図中の判定除外領域)を表している。この例では、最端部エリアにおける印刷濃度が他のエリアにおける印刷濃度よりもかなり高くなっている場合を示している。当該例において、最端部エリアを除いて上述した第一の手法を用いた場合には、Cで指し示す部分が判定に用いられないので、駆動信号の切り替えは行わない、という判定になる。
【0069】
次に、第五の手法は、前述したオーバーラップ部を含む上記端部エリアで互いに隣り合うエリア間の平均印刷濃度の差異が、所定の範囲(第三の範囲)内に入っているか否かに
よって判定する。そして、上記所定の第三の範囲内に入っていない場合に、駆動信号の切り替えが必要であると判定する。
【0070】
図10は、第五の判定手法を説明するための図である。図10では、図8と同じ端部エリアの平均印刷濃度がプロットされているが、判定方法が第三の手法とは異なる。図中の端部OLで指し示すエリアが上記オーバーラップ部を含む互いに隣り合う端部エリアである。ここに示す例では、ヘッドユニット231aの右側端部エリア(図3では下部端部エリア)と、ヘッドユニット231bの左側端部エリア(図3では上部端部エリア)との間の平均印刷濃度の差異D1は小さいが、ヘッドユニット231bの右側端部エリア(図3では下部端部エリア)と、ヘッドユニット231cの左側端部エリア(図3では上部端部エリア)との間の平均印刷濃度の差異D2は大きく、例えば、このD2が上記第三の範囲に入らなければ駆動信号を切り替えるという判定がなされる。
【0071】
当該第五の手法では、用紙26上の同範囲を印刷するオーバーラップ部を含むエリアで濃度が均一になるような駆動信号が決定されることになる。
【0072】
以上説明したようにテストパターンの1濃度階調について切替要否の判定がなされるが、他の濃度階調についても同様に判定がなされる。なお、テストパターンを高濃度の1濃度階調のみとして同様に判定してもよい。
【0073】
このようにして判定がなされると、その判定結果に従って、各ヘッドユニット231の駆動信号(駆動波形)を決定する(ステップS5)。当該駆動信号の決定は、上述した判定で用いた手法により、各エリアの平均印刷濃度に係る差異が上記第一の範囲、上記第二の範囲、又は上記第三の範囲内に入るように決定される。また、駆動信号を標準のものから切り替える場合には、駆動電圧Vhの値を上下させる。例えば、図6に示した例では、ヘッドユニット231aと231bについては、標準の駆動信号を用いるように決定され、ヘッドユニット231cについては、標準の駆動信号よりも駆動電圧Vhが低い駆動信号を用いるように決定される。また、その際の駆動電圧Vhの決定は、予め実験等により得られている駆動電圧と印刷濃度の関係を用いる、あるいは、テストパターンの実測値が条件を満たすまで段階的に値を下げていく、などの方法で行うことができる。なお、駆動信号(駆動波形)を決定するパラメータは駆動電圧Vhだけではないので、他のパラメータを用いて適切な駆動信号を決定してもよい。
【0074】
以上、図4に基づいて説明した駆動信号の決定処理が各色についてなされ、その後、各ヘッドユニット231について各色で決定された駆動信号が平均化され、その平均化された駆動信号が最終的な駆動信号とされる。各ヘッドユニットの最終的な駆動信号(駆動波形)は、上記ROMに記憶され、上述した印刷処理に用いられる。なお、上記駆動信号の平均化による最終的な駆動信号の決定は、上述のように駆動電圧Vhの値を変化させることによる切り替えを行った場合には、各色で決定された駆動信号の駆動電圧Vhの平均値を、最終的な駆動信号の駆動電圧Vhとすることである。
【0075】
以上説明したように、本実施の形態例に係るプリンター2では、各ヘッドユニット231用の駆動信号が、ヘッドユニット231の領域を複数に分割したエリア毎の印刷濃度実行値に基づいて決定されているので、ヘッドユニット231内のインク吐出特性のばらつきも考慮された駆動信号で印刷がなされ、従来よりも、濃度の均一性を向上させることができ、従って印刷品質を良好なものとすることができる。
【0076】
また、上述した第三の手法を用いることにより、上記平均印刷濃度の算出や上記切替判定の処理において、端部エリアのみの処理となり、処理の効率化を図ることができる。
【0077】
また、上述した第四の手法を用いることにより、特別な特性を有するヘッドユニット231の最端部エリアの影響が除外され、上記切替判定において正確な処理が実行できる。
【0078】
また、上述した第五の手法を用いることにより、オーバーラップ部について濃度の均一性が向上される。
【0079】
なお、本実施の形態例で示したヘッドユニット数、ノズル数、エリア数は一例であって、他の数としても構わない。
【0080】
また、プリンターに限らず同様の液体吐出装置に本発明を適用することができる。
【0081】
本発明の保護範囲は、上記の実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶものである。
【符号の説明】
【0082】
1 ホストコンピューター、 2 プリンター、 11 アプリケーション、 12 ドライバー、 21 コントローラー部、 22 印刷実行部、 23 ヘッド部、 24 プラテン、 25 ロール紙、 26 用紙、 27 給紙ローラー、 28 搬送ローラー、 29 排紙ローラー、 231a−c ヘッドユニット、 232 ノズル列
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される媒体に液体を吐出しドットを形成する液体吐出装置であって、
入力される前記ドットの形成の有無の情報に従って予め記憶した駆動波形による電気信号を供給する制御部と、
前記供給された電気信号によってノズルから前記液体の吐出を行うヘッドユニットを複数備えたヘッド部と、を有し、
前記駆動波形は、前記ヘッドユニット内の領域を複数に分割した各領域の液体吐出状態に基づいて、前記ヘッドユニット毎に決定されたものである
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記分割した各領域の液体吐出状態は、当該領域に備えられる前記ノズルから吐出された前記液体の前記媒体上における色濃度の平均値である
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記ヘッドユニット毎の駆動波形の決定は、前記分割した各領域の色濃度の平均値と、全ヘッドユニットに備えられる前記ノズルから吐出された前記液体の前記媒体上における色濃度の平均値との差異が、第一の所定の範囲内に入るようになされる
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項4】
請求項2において、
前記ヘッドユニット毎の駆動波形の決定は、前記分割した各領域の色濃度の平均値が第二の所定の範囲内に入るようになされる
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項5】
請求項3あるいは4において、
前記分割した各領域の色濃度の平均値として、前記ヘッドユニットの端部に位置する範囲の色濃度の平均値が用いられる
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項6】
請求項3乃至5のいずれかにおいて、
前記ヘッドユニットの端部にある前記ノズルから所定数の前記ノズルが位置する領域が、前記分割した領域から除外される
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項7】
請求項2において、
前記ヘッドユニット間で前記媒体の搬送と交わる方向について前記ノズルの位置が重なるオーバーラップ部がある場合に、
前記ヘッドユニット毎の駆動波形の決定は、前記オーバーラップ部を含む互いに隣り合う2つの前記分割した領域における前記色濃度の平均値の差異が、第三の所定の範囲内に入るようになされる
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項8】
搬送される媒体に液体を吐出しドットを形成する液体吐出装置における液体吐出方法であって、
制御部が、入力される前記ドットの形成の有無の情報に従って予め記憶した駆動波形による電気信号を供給する工程と、
複数のヘッドユニットが、前記供給された電気信号によってノズルから前記液体の吐出
を行う工程と、を有し、
前記駆動波形は、前記ヘッドユニット内の領域を複数に分割した各領域の液体吐出状態に基づいて、前記ヘッドユニット毎に決定されたものである
ことを特徴とする液体吐出方法。
【請求項1】
搬送される媒体に液体を吐出しドットを形成する液体吐出装置であって、
入力される前記ドットの形成の有無の情報に従って予め記憶した駆動波形による電気信号を供給する制御部と、
前記供給された電気信号によってノズルから前記液体の吐出を行うヘッドユニットを複数備えたヘッド部と、を有し、
前記駆動波形は、前記ヘッドユニット内の領域を複数に分割した各領域の液体吐出状態に基づいて、前記ヘッドユニット毎に決定されたものである
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記分割した各領域の液体吐出状態は、当該領域に備えられる前記ノズルから吐出された前記液体の前記媒体上における色濃度の平均値である
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記ヘッドユニット毎の駆動波形の決定は、前記分割した各領域の色濃度の平均値と、全ヘッドユニットに備えられる前記ノズルから吐出された前記液体の前記媒体上における色濃度の平均値との差異が、第一の所定の範囲内に入るようになされる
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項4】
請求項2において、
前記ヘッドユニット毎の駆動波形の決定は、前記分割した各領域の色濃度の平均値が第二の所定の範囲内に入るようになされる
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項5】
請求項3あるいは4において、
前記分割した各領域の色濃度の平均値として、前記ヘッドユニットの端部に位置する範囲の色濃度の平均値が用いられる
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項6】
請求項3乃至5のいずれかにおいて、
前記ヘッドユニットの端部にある前記ノズルから所定数の前記ノズルが位置する領域が、前記分割した領域から除外される
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項7】
請求項2において、
前記ヘッドユニット間で前記媒体の搬送と交わる方向について前記ノズルの位置が重なるオーバーラップ部がある場合に、
前記ヘッドユニット毎の駆動波形の決定は、前記オーバーラップ部を含む互いに隣り合う2つの前記分割した領域における前記色濃度の平均値の差異が、第三の所定の範囲内に入るようになされる
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項8】
搬送される媒体に液体を吐出しドットを形成する液体吐出装置における液体吐出方法であって、
制御部が、入力される前記ドットの形成の有無の情報に従って予め記憶した駆動波形による電気信号を供給する工程と、
複数のヘッドユニットが、前記供給された電気信号によってノズルから前記液体の吐出
を行う工程と、を有し、
前記駆動波形は、前記ヘッドユニット内の領域を複数に分割した各領域の液体吐出状態に基づいて、前記ヘッドユニット毎に決定されたものである
ことを特徴とする液体吐出方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2013−103339(P2013−103339A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246199(P2011−246199)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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