説明

液体吐出装置

【課題】第1ブレードによって払拭されたインクが第2ブレードを伝って流れ落ちないワイプユニットを備えた液体吐出装置を提供する。
【解決手段】インクジェット記録装置1は、複数の液体吐出孔が形成されたノズル面40を有し、そのノズル面40が下向きであるヘッド4と、液体吐出孔から吐出された液体を受ける液体受け面72を有し、該液体受け面72がノズル面40と対向するように上方を向く液体受け部材7と、ノズル面40を払拭する第1ブレード8と、液体受け面72を払拭する第2ブレード80と、第1ブレード8がその先端が上向きで、第2ブレード80がその先端が下向きで夫々取り付けられたベース3と、ベース3をヘッド4と液体受け部材7との間で、所定の進行方向に移動させる移動機構とを備えている。ベース3には、第1ブレード8によって払拭された液体が第2ブレード80に伝わることを防止する防止構造が備えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドから記録媒体にインクを吐出して画像を形成する液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、下面であるノズル面に多数の液体吐出孔を形成したヘッドから、紙である記録媒体にインクを吐出して印刷を行うインクジェット記録装置が知られている。該インクジェット記録装置は、画像形成を行わない時に、下側からノズル面に密閉して大気との接触を防止して、該液体吐出孔内のインクの乾燥を防止するキャップを備えている。
【0003】
これらノズル面及びキャップにインクが付着した場合に、これを除去することが望まれており、ノズル面及びキャップの上面に残存したインクを払拭するワイプ動作を行うインクジェット記録装置が提案されている(特許文献1参照)。これは、ノズル面及びキャップの間に、記録媒体の搬送方向に沿って水平方向にスライドするワイプユニットを設け、該ワイプユニットはノズル面に接してスライドする上側の第1ブレードと、キャップの上面に接してスライドする下側の第2ブレードとを備えている。ワイプ動作時には、第1ブレードはノズル面に、第2ブレードはキャップ上面に夫々接して、ノズル面とキャップ上面に残存したインクを一度に払拭する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−101594号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この上記従来例のワイプユニットを設けたインクジェット記録装置においては、第1ブレードを移動させる機構を用いて、第2ブレードも移動させるように構成されており、装置コストが削減されている。しかしながら、第1ブレードによって払拭されたインクが第2ブレードを伝って流れ落ちる虞がある。該第2ブレードを伝って流れ落ちたインクは、該第2ブレードによって払拭されない場合があるため、ワイプ動作の効果が薄れる。
本発明の目的は、第1ブレードによって払拭されたインクが第2ブレードを伝って流れ落ちないワイプユニットを備えた液体吐出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の液体吐出装置は、係る点に鑑みてなされたものであって、
複数の液体吐出孔が形成されたノズル面を有し、そのノズル面が下方を向く姿勢で配置されたヘッドと、前記液体吐出孔から吐出された液体を受ける液体受け面を有し、該液体受け面が前記ノズル面と対向するように上方を向く姿勢で配置された液体受け部材と、前記ノズル面を払拭するための第1ブレードと、前記液体受け面を払拭するための第2ブレードと、
前記第1ブレードがその先端が上方を向く姿勢で取り付けられるとともに、前記第2ブレードがその先端が下方を向く姿勢で取り付けられたベースと、前記ベースを前記ヘッドと前記液体受け部材との間で、所定の進行方向に移動させる移動機構と、を備え、
前記ベースには、前記第1ブレードによって払拭された液体が前記第2ブレードに伝わることを防止する防止構造が備えられている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ベースの防止構造によって第1ブレードによって払拭された液体は、第2ブレードを伝って流れ落ちることが防止される。これにより、該液体は第2ブレードによって確実に払拭され、ワイプ動作の効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態におけるインクジェット記録装置の全体的な構成を示す概略図である。
【図2】(a)、(b)、(c)はプラテンと液体受け部材の移動動作を示す図である。
【図3】ヘッドの周辺部を拡大した図である。
【図4】図3に示すヘッドの周辺部をB方向から見た矢視図である。
【図5】ワイプユニットの斜視図である。
【図6】図5に示すワイプユニットをA−Aを含む面にて破断し矢視した断面図である。
【図7】(a)、(b)は、第2ブレードの先端部を示す図である。
【図8】図5のワイプユニットをC方向から見た裏面図である。
【図9】ワイプユニットのワイプ動作及び液体受け部材周辺の構成を示す図である。
【図10】ワイプユニットのワイプ動作及び液体受け部材周辺の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について、図面を用いて説明する。以下の記載では、上方及び下方は鉛直方向に沿う向きを指す。また、液体の具体例としてインクを例示する。
図1に示すように、インクジェット記録装置1は直方体状の筐体10を有し、該筐体10の天板上部には、排紙部11が設けられている。筐体10内には、上方から下方に向かって、ブラックのインクを用紙Pに吐出するヘッド4、用紙Pを水平に搬送した後に排紙部11に送る搬送ユニット5、用紙Pを供給する給紙ユニット6が配置されている。筐体10の内側上部にて、ヘッド4に干渉しない位置には、筐体10内の各機構及び電気回路の動作を司るコントローラ100が配置されている。
搬送ユニット5は、図1中の用紙Pを左から右に搬送する機構である。以下の記載では、印刷領域において用紙Pを搬送する方向を副走査方向、水平面内において該副走査方向と直交する方向を主走査方向と呼ぶ。
【0010】
前記搬送ユニット5は、プラテン50と、該プラテン50の両側に配備された搬送ローラ51、51aを有する。搬送方向上流側の搬送ローラ51によって搬送力を付与された用紙Pはプラテン50の上面に支持されつつ搬送される。プラテン50を通過した用紙Pは、搬送方向下流側の搬送ローラ51aによって搬送力を付与されて、該搬送ローラ51aと排紙部11との間に位置するガイド52及び送りローラ53によって排紙部11に送られる。搬送方向上流側の搬送ローラ51と、ヘッド4との間には、主走査方向に延びたガイド軸15が設けられている。該ガイド軸15は後記するワイプユニット2のスライドを案内する。尚、該ガイド軸15は搬送方向下流側の搬送ローラ51aとヘッド4の間に設けられてもよい。
前記給紙ユニット6は、給紙トレイ60と給紙ローラ61を有し、該給紙ローラ61と前記搬送ユニット5との間には、3つのガイド62及び送りローラ63が配置されている。給紙ローラ61は給紙トレイ60内の最上位の用紙Pを取り出し、該ガイド62及び送りローラ63によって搬送ユニット5の上流側に搬送する。
【0011】
ヘッド4は、主走査方向に延びた直方体状のラインヘッドであって、その下面はインクを吐出する多数の液体吐出孔が形成されたノズル面40として形成されている。該ヘッド4の下端部周面には、環状の弾性部材41が昇降可能に取り付けられ、ノズル面40の下方には液体受け部材7が設けられている。用紙Pに印刷を行わないときには該弾性部材41が下降して下端が液体受け面72に当接する。ヘッド4は昇降可能であるが、印刷時には昇降せず、後記のワイプ動作時に昇降する。
図2(a)、(b)、(c)に示すように、プラテン50は樹脂製の一対の扉部材55、55から構成される。両扉部材55、55は、ヘッド4のノズル面40に平行で主走査方向に延びた枢軸56に一端部が嵌まっており、互いに逆方向に回転することができる。該プラテン50は両扉部材55、55が水平面内に位置してノズル面40に対向した対向位置(図2(a))と、両扉部材55、55が下方を向いてノズル面40とは対向しない非対向位置(図2(b))との間を回転移動する。扉部材55、55の対向位置にて、用紙Pが扉部材55、55の上面を通過し、この際にヘッド4からインクが吐出されて、用紙Pに印刷が施される。
【0012】
プラテン50の下方には、上面に前記液体受け部材7を設けた昇降体70が設けられ、用紙Pに印刷を施す際には昇降体70は該印刷を妨げないように、用紙Pの搬送路から下方に位置して、該搬送路から退避している(図2(a))。図2(b)に示すように、扉部材55、55の非対向位置では、両扉部材55、55間に昇降体70が通過可能な通路が形成される。図2(c)に示す昇降体70の上昇完了状態では、液体受け部材7がノズル面40に接近する。
図3に示すように、前記の弾性部材41はホルダ42に支持される。該ホルダ42はモータMによって中間ギア43を介してヘッド4に対して昇降駆動される。昇降体70の上昇完了状態となると、弾性部材41及びホルダ42はモータMによって下降され、弾性部材41の下端部はノズル面40よりも下側に位置して、液体受け部材7に接する。
【0013】
長時間に亘って印刷を行わないときに、ノズル面40が露出したままであると、該ノズル面40に残存したインクが乾燥する。この対策として、長時間に亘って印刷を行わないときは、弾性部材41を下降させて下端部を液体受け部材7に当接させ、ノズル面40と液体受け部材7上面との間に、封止空間S1を形成する。これにより、ノズル面40が露出することを防いでいる。即ち、本実施形態では、液体受け部材7をインク乾燥防止用のキャップとして用いている。
また、所定回数又は所定時間の印刷後は、前記コントローラ100はヘッド4のインク吐出特性の維持・回復のためにメインテナンスを行う。このメインテナンスはインクをノズル面40の液体吐出孔から排出させる動作である。このメインテナンスの1つに図示しない吸引ポンプによって封止空間S1内に負圧を生じさせ、液体吐出孔に残存したインク及び異物を液体受け部材7上面である液体受け面72に排出させるパージ動作がある。液体受け部材7にはインクが流れるダクト71が設けられており、該インクは該ダクト71を通って廃液タンク76(図9参照)に回収される。尚、液体受け部材7は水分を吸収しない又は吸収し難い材料であるガラス又はステンレス等の金属にて形成される。
【0014】
しかし、全てのインクがダクト71に流れ込む場合は少なく、多くの場合はインクが液体受け面72に残存する。これにより、残存したインクの媒質が蒸発して増粘インクとなる。この状態で、液体受け部材7がノズル面40を密閉すると、増粘したインクが封止空間S1の空気から水分を吸収しようとする。つまり、増粘したインクが乾燥剤として働く。この現象によって、ノズル面40に残ったインクから水分が奪われると、ヘッド4からのインクの吐出不良を引き起こす虞がある。
この虞を防ぐべく、本実施形態のインクジェット記録装置1では、図4に示すように、ヘッド4の側方にノズル面40に残存したインクを払拭するとともに、液体受け面72に残存したインクをも払拭するワイプユニット2を設けている。以下の記載では、ワイプユニット2がノズル面40及び液体受け面72に残存したインクを払拭するように進む所定の進行方向を前方とする。また、かかるインクの払拭、つまり掻き取り動作をワイプ動作と呼ぶ。
【0015】
(ワイプユニットの全体構成)
図5の斜視図に示すように、ワイプユニット2は、互いに離間した一対の金属板から形成された支持ホルダ20と、該支持ホルダ20の先端部に設けられてヘッド4のノズル面40に対向する樹脂製のベース3と、該ベース3よりも支持ホルダ20の基端部側に位置する嵌合片21を備えている。支持ホルダ20と嵌合片21には、前記のガイド軸15に嵌合する嵌合部22が設けられており、ベース3と該嵌合部22の間には隙間SUが形成されている。尚、嵌合片21は下端部が例えばボールネジを備えた駆動機構に接続されており、ガイド軸15に沿う方向の移動推進力を付与される。即ち、該駆動機構とガイド軸15にてワイプユニット2を進行させる移動機構を構成する。
【0016】
図6の断面図に示すように、ベース3は上面が開口した第1受け室30と、該第1受け室30の後方に設けられて下面が開口した第2受け室31を備えている。第1受け室30の下面には透孔32が開設され、該透孔32を囲むように筒体33が下向きに突出している。筒体33の内部空間は透孔32と連続する。第1受け室30内には第1ブレード8が上向きに取り付けられ、一方、第2受け室31内には第2ブレード80が下向きに取り付けられている。即ち、第1ブレード8は第2ブレード80よりもワイプユニット2進行方向における前方に位置し、透孔32及び筒体33も第2ブレード80より前方に位置する。
該第1ブレード8の上端部はヘッド4のノズル面40に接したまま移動して該ノズル面40に残存したインクを払拭し、第2ブレード80の下端部は液体受け面72に接したまま移動して該液体受け面72に残存したインクを払拭する。両ブレード8、80はヘッド4のノズル面40及び液体受け面72を傷つけないように、例えばゴム等の可撓性材料から形成される。
【0017】
第1受け室30の内面には、第1ブレード8が払拭したインクを収容する液体収容空間35が形成されている。第1受け室30の開口部前端は第1ブレード8の前面よりも前方に位置し、開口部後端は第1ブレード8の前面よりも後方に位置する。これにより、第1ブレード8が払拭したノズル面40上のインクは、一旦確実に液体収容空間35に収容される。インクはこの後、透孔32及び筒体33の内部を通って落下し、液体受け部材7の液体受け面72に排出される。
これにより、インクが第2ブレード80に伝わることが防止される。つまり、第2ブレード80よりもワイプユニット2進行方向における前方に位置する透孔32及び筒体33と、液体収容空間35とによって、インクが第2ブレード80に伝わることを防止する防止構造を構成する。前記の如く、透孔32及び筒体33は、第2ブレード80より前方に位置するから、ワイプ動作時に液体受け部材7上のインクは確実に払拭され、ワイプ動作の効果を高めることができる。
【0018】
また、透孔32及び筒体33は、ワイプユニット2の前進方向に直交する方向、即ち液体受け部材7の幅方向の中央部に対向している。よって、透孔32及び筒体33を通ったインクは、液体受け部材7の幅方向中央部に落下する。仮にインクが液体受け面72の幅方向の端部に落下すると、該インクが液体受け面72に正確に受けられずに、液体受け面72からこぼれ落ちる虞がある。しかし、インクは液体受け面72の幅方向中央部に落下するから、この虞はない。
【0019】
第1受け室30の前壁には、上下に延びたシート状の薄手部材9が取り付けられる。該薄手部材9は上端部に上向き後方に傾いた傾斜部90を有し、該傾斜部90の上端は第1受け室30の上面よりも上方に位置し、且つ第1ブレード8の先端よりも下方に位置している。即ち、傾斜部90はノズル面40には直接接触しないが、接近している。薄手部材9の下端は、筒体33の下端よりも下側に位置する。
図6に示すように、ノズル面40に付着したインクの水滴44は、第1ブレード8だけでなく薄手部材9の傾斜部90の上端によっても払拭される。これにより、第1ブレード8のみでインクを払拭するよりも多くのインクを払拭することができる。
該インクは該薄手部材9を伝って、該薄手部材9の下端に流れる。該薄手部材9の下端は筒体33の下端よりも下側に位置しているから、薄手部材9を流れ落ちたインクが液体受け面72で撥ねることが防止される。これにより、インクを液体受け面72に正確に落下させる効果が高まる。
【0020】
図5に示すように、薄手部材9の下端には、ワイプユニット2の前進方向に直交する方向、即ち液体受け部材7の幅方向の中央部に対向する主頂部91と、液体受け部材7の幅方向に亘って該主頂部91の両側に位置する2つの副頂部92、92が設けられている。
主頂部91は液体受け部材7の幅方向の中央部に対向しているから、主頂部91を伝って落下したインクは、液体受け面72に正確に受けられる。また、薄手部材9によって払拭されたインクは、主頂部91と副頂部92から液体受け部材7の幅方向に亘って万遍なく落下する。従って、インクが液体受け面72の1箇所に集中して落下し、該インクが不用意に広がったり、飛び散ったりする虞を防止することができる。
【0021】
図6に示すように、第2ブレード80の上端は第2受け室31内に昇降可能に設けられた中間板86に取り付けられ、該中間板86と第2受け室31の上壁との間にはバネ85が設けられている。該バネ85によって第2ブレード80は液体受け部材7上面に押圧される。即ち、第2ブレード80を液体受け部材7上面に押圧する専用の部材を設けることにより、第2ブレード80自体の弾性のみで該第2ブレード80を液体受け部材7上面に押圧するよりも第2ブレード80を短くすることができる。これにより、ワイプユニット2全体を小型化することができる。また、第2ブレード80自体の弾性で該第2ブレード80を液体受け部材7上面に押圧する場合よりも押圧力が強くなり且つ押圧状態が安定する。更に、第2ブレード80はバネ85により上下移動が可能であるから、ワイプ動作時に液体受け面72から受ける振動を吸収することができる。
【0022】
尚、図7(a)に示すように、第2ブレード80が液体受け部材7上面に当接した状態でしなると、インク払拭効果が弱くなる。従って、図7(b)に示すように、第2ブレード80の下端稜線RLが液体受け部材7上面に接するように押圧する必要がある。また、第2ブレード80と液体受け部材7上面とが成す当接角度θは浅いのが好ましい。更に、ノズル面40は下方を向いているので、そこからインクが落ちるのに対し、液体受け部材7上面はインクが溜まり易いから、第2ブレード80は、第1ブレード8がノズル面40に接するよりも大きな押圧力で液体受け部材7上面に接して、インクを払拭する必要がある。従って、バネ85により第2ブレード80を押圧するのが好ましい。
【0023】
図8の裏面図に示すように、第1受け室30の裏面には、筒体33の周面及び透孔32を囲むようにリブ34が設けられている。該リブ34の後壁部分34aは透孔32と第2ブレード80との間に設けられている。筒体33から排出されるインクは液体受け面72に落下するが、一部は筒体33の側部から第1受け室30の裏面を伝って流れることがある。該一部のインクはリブ34によって堰き止められ、リブ34を伝って液体受け部材7上面に落下する。これにより、インクが第2ブレード80を伝って流れることを更に防止することができる。
また、リブ34が筒体33の周面及び透孔32を囲むことにより、筒体33の側部から第1受け室30の裏面を伝って流れるインクが、リブ34の外側に出ることが防止される。特に後壁部分34aによって、第2ブレード80に向かうインクが堰き止められる。該インクは液体受け面72に正確に落下するとともに、該インクが第2ブレード80を伝って流れることを更に防止することができる。
また、前記の如く、ワイプユニット2のベース3と嵌合部22の間には隙間SUが形成されている。筒体33の側部から第1受け室30の裏面を伝って流れたインクは、リブ34によって堰き止められる。しかし、仮にインクがリブ34を越えても、該隙間SUによって嵌合部22に伝わることが防止される。これにより、インクは液体受け面72に正確に流れる。
【0024】
(ワイプ動作)
図9(a)〜(c)乃至図10(a)〜(c)は、該ワイプユニット2のワイプ動作及び液体受け部材7周辺の構成を示しており、図1に示すヘッド4を側方から見ている。図示の便宜上、支持ホルダ20、薄手部材9及び嵌合片21を図示しない。また、ワイプ動作は前記のコントローラ100に格納されたプログラムに基づいて実行される。
液体受け部材7及び昇降体70の前側には、第2ブレード80が払拭し、液体受け部材7から押し出されるインクを収容する廃棄インク容器75が設けられている。該廃棄インク容器75内のインクはポンプPを介して前記廃液タンク76に回収される。この廃液タンク76は前記のパージ動作時にインクを回収するタンクと同じものである。
また、液体受け部材7の後側には、インク吸収体77が設けられ、該インク吸収体77の上にはメッシュから構成された蓋板78が被さる。後記の如く、液体受け面72を払拭する第2ブレード80は該払拭動作開始前に、一旦蓋板78に対向する。
廃棄インク容器75及びインク吸収体77は液体受け部材7とともに昇降する。
【0025】
尚、ワイプユニット2は、ワイプ動作時には、第1ブレード8にてヘッド4のノズル面40に残存したインクを払拭した後に、一旦後退してワイプ動作当初の位置に戻り、再び前進して第2ブレード80にて液体受け面72に残存したインクを払拭する。
即ち、第1ブレード8と第2ブレード80にて一度に、ノズル面40と液体受け面72に残存したインクを払拭するようなことはしていない。この理由としては、次の(1)(2)に示すようなものがある。
(1)ノズル面40と液体受け面72とでは摩擦係数が異なるから、ノズル面40と液体受け面72に残存したインクを払拭するブレードの適正な前進速度が異なる。具体的には液体受け面72に残存したインクを払拭する第2ブレード80の適正速度は、ノズル面40 に残存したインクを払拭する第1ブレード8の適正速度よりも速い。液体受け面72に残存したインクを払拭する第1ブレード8の速度が遅いと液体受け面72にインクが広がり易くなり、ワイプ動作の効果が薄れる。
(2)ノズル面40と液体受け面72に残存したインクを一度に払拭すると、ノズル面40と液体受け面72の両方との摩擦により、両ブレード8、80の推進負荷が大きくなる。
【0026】
前記の吸引ポンプによるパージ動作が終了すると、図9(a)に示すように、昇降体70と液体受け部材7が下降する。ヘッド4のノズル面40と液体受け面72との間には、ワイプユニット2を作動させる空間が形成される。このときの液体受け面72の高さ位置を初期位置とする。ノズル面40の高さは、記録媒体に印刷を行う際の記録位置のままであり、ノズル面40は第1ブレード8の先端よりも低い位置にある。弾性部材41は上昇して、その下端部がノズル面40と同一面内又はノズル面40以上の高さに位置する。また、ワイプ動作を行う前は、ワイプユニット2はノズル面40と液体受け部材7の間から外れた位置にある。
【0027】
次に、図9(b)に示すように、ヘッド4がやや上昇してヘッドワイプ位置に達する。このヘッドワイプ位置は、第1ブレード8がノズル面40に残存したインクを払拭することができる高さ位置である。また、液体受け部材7及び昇降体70が初期位置からやや上昇して、液体受け面72が第2位置に達する。第2位置における液体受け面72は、第2ブレード80の下端よりも低い。
次に、ワイプユニット2が前進して第1ブレード8がノズル面40に残存したインクを払拭する。この間、第2ブレード80は液体受け面72に接しない。前記の如く、第1ブレード8が払拭したインクは、透孔32及び筒体33を通って第2ブレード80の前方において、液体受け面72に落下する。液体受け面72は初期位置から上昇した第2位置に位置して、落下したインクが飛び散ることを抑えている。
【0028】
第1ブレード8がノズル面40の払拭を終了すると、ヘッド4は図9(c)に示すように、ヘッドワイプ位置から更に上昇して、ノズル面40がヘッド退避位置に達する。このヘッド退避位置では、ノズル面40の高さ位置は、第1ブレード8の先端より高い。ワイプユニット2はノズル面40を過ぎて停止し、廃棄インク容器75の上方に位置する。昇降体70が上昇して、液体受け面72及び廃棄インク容器75の上面が第2位置から滴下インク吸引位置に達し、廃棄インク容器75はワイプユニット2の筒体33の真下に位置する。ポンプPを用いて、ベース3の液体収容空間35に残存して筒体33から滴下し得るインクを廃液タンク76に吸引する。インクは粘度を有するから、ワイプユニット2がノズル面40を通過した後も、液体収容空間35に残存する場合がある。かかるインクがベース3から滴下する場合を考慮して、該インクを廃棄インク容器75にて受けている。
【0029】
次に、図10(a)に示すように、昇降体7が下降して、液体受け面72及び廃棄インク容器75の上面が滴下インク吸引位置から第2位置に達する。すると、ワイプユニット2の後退通路が形成され、ワイプユニット2がガイド軸15に沿って後退する。かかるワイプユニット2の後退時は、第1ブレード8はノズル面40から、第2ブレード80は液体受け面72から夫々離れており、インクを払拭しない。
ワイプユニット2の後退完了状態では、図10(b)に示すように、昇降体70が上昇して液体受け面72及び蓋板78の上面が第2位置から滴下インク吸引位置に達する。そして、ワイプユニット2の第2ブレード80が蓋板78に接してインク吸収体77にて先端部をクリーニングされる。第2ブレード80の先端部にインクが付着していると、液体受け部材7上面のインクを十分に払拭することができないから、予め第2ブレード80の先端部をクリーニングするのである。
【0030】
該クリーニングが終了すると、液体受け部材7と蓋板78は図10(b)に示す状態から一旦所定距離だけ下降する。ワイプユニット2は一定距離だけ前進した後に、停止する。この前進停止箇所は、ノズル面40からインクの水滴44が滴下する領域の外側にある(図10(c)参照)。即ち、第2ブレード80は、インクの払拭残りを防ぐために、インクが滴下しない箇所からインクの払拭を開始するのである。
再び昇降体70が上昇して、図10(c)に示すように、液体受け面72は前記第2位置よりも高い第3位置に達する。この第3位置は、第2ブレード80の先端が液体受け面72に接する位置、即ち図7(b)に示す状態で接する高さ位置である。この高さは、適下インク吸引位置とほぼ等しくてもよい。そして、ワイプユニット2は再び前進し、液体受け面72に残存したインクを払拭する。第2ブレード80が液体受け面72を通過すると、第2ブレード80によって払拭されたインクは廃棄インク容器75に収容されて、廃液タンク76に流れる。これにより、ワイプ動作が終了する。
ワイプ動作終了後は、図9(c)に示すように、ポンプPを用いて、第2ブレード80に付着したインクを廃液タンク76に吸引する。そして、液体受け部材7及び廃棄インク容器75を下降させてワイプユニット2を後退させ、ノズル面40が記録位置の高さ位置となるまでヘッド4を下降させる。
【0031】
上記したワイプユニット2の構成及び動作によって、第1ブレード8にて払拭されたノズル面40上のインクが、第2ブレード80に伝わることを効果的に防止することができる。
上記記載では、第1ブレード8は、第1受け室30の開口部前端と後端の間に配置されているとした。しかし、これに代えて、図6に一点鎖線で示すように、第1ブレード8を開口部後端に設け、払拭したインクを液体収容空間35に収容させるようにしてもよい。
また、本実施形態のインクジェット記録装置1では、液体受け部材7を、ノズル面40を塞ぐキャップとしても使用しているとした。しかし、これに代えて、キャップを液体受け部材として用いてもよい。また、液体受け部材7とキャップを別個に設けてもよい。
更に、本実施形態のインクジェット記録装置1では、パージ動作時にインクを液体受け面72に排出させているとした。しかし、これに代えて、或いはこれに加えて、画像データとは異なるフラッシングデータに基づいて、ヘッド4を駆動することにより、一部又は全ての液体吐出孔からインクを強制的に排出するフラッシング動作を行い、この時に、インクを液体受け面72に排出させてもよい。
本実施形態におけるインクジェット記録装置1は、インクはブラックのみを用いるモノクロタイプの記録装置を想定している。しかし、一般的なカラープリンタのように、シアン、イエロー、マゼンタの3色のインクを用いる記録装置にも、本発明の技術的思想は適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、パージ動作等にてヘッドから排出されたインクを払拭するワイプユニットを設けたインクジェット記録装置のような液体吐出装置において有用である。
【符号の説明】
【0033】
2 ワイプユニット
3 ベース
4 ヘッド
7 液体受け部材
8 第1ブレード
9 薄手部材
32 透孔
33 筒体
40 ノズル面



【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の液体吐出孔が形成されたノズル面を有し、そのノズル面が下方を向く姿勢で配置されたヘッドと、
前記液体吐出孔から吐出された液体を受ける液体受け面を有し、該液体受け面が前記ノズル面と対向するように上方を向く姿勢で配置された液体受け部と、
前記ノズル面を払拭するための第1ブレードと、
前記液体受け面を払拭するための第2ブレードと、
前記第1ブレードがその先端が上方を向く姿勢で取り付けられるとともに、前記第2ブレードがその先端が下方を向く姿勢で取り付けられたベースと、
前記ベースを前記ヘッドと前記液体受け部との間で、所定の進行方向に移動させる移動機構と、
を備えた液体吐出装置であって、
前記ベースには、前記第1ブレードによって払拭された液体が前記第2ブレードに伝わることを防止する防止構造が備えられている、液体吐出装置。
【請求項2】
前記防止構造は、上方に開口するようにベースに形成された液体収容空間と、前記液体収容空間の底部から前記ベースの下面まで前記ベースを貫くように形成され、前記液体収容空間に収容された液体を落下させる透孔とを有し、
前記液体収容空間の開口部の前記進行方向における前端は、前記第1ブレードの前記進行方向における前面よりも前記進行方向において前方に位置し、
前記液体収容空間の開口部の前記進行方向における後端は、前記第1ブレードの前記前面よりも前記進行方向において後方に位置するか、または、前記進行方向において前記前記第1ブレードの前記前面に一致する、請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記防止構造は、前記ベースの下面から下方に向けて突出し、その内部空間が前記透孔と連続するように形成された筒体を有する、請求項2記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記透孔は、前記第2ブレードよりも前記進行方向において前方に位置する、請求項2または3記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記防止構造は、前記第1ブレードが前記第2ブレードよりも前記進行方向において前方に位置するブレード配置構造を含む、請求項1乃至4の何れかに記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記防止構造は、前記ベースの下面に形成されたリブを有し、
前記リブの少なくとも一部は前記透孔と前記第2ブレードとの間に形成されている、請求項2乃至5の何れかに記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記リブは、前記透孔を囲むように形成されている、請求項6に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記防止構造は、上下に延び、前記ベースの前記進行方向における前端に取り付けられた薄手部材を有し、
前記薄手部材は、その上端が前記ベースの上面よりも上方、かつ、前記第1ブレードの前記先端よりも下方に位置し、その下端が前記ベースの下面よりも下方に位置する、請求項1乃至7の何れかに記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記薄手部材の下端には下向きの主頂部が形成されており、
前記透孔及び前記主頂部が、前記ワイプユニットの前進方向に直交するキャップ幅方向の中央部に対向している、請求項8に記載の液体吐出装置。
【請求項10】
前記薄手部材の下端には、前記主頂部と前記キャップ幅方向に並ぶように、一つ以上の下向きの副頂部が形成されている、請求項9に記載の液体吐出装置。
【請求項11】
前記ワイプユニットの前記進行方向に沿って延びたガイド部材と、前記ワイプユニットを支持し前記ガイド部材に案内されてスライドする支持ホルダとを備え、
前記支持ホルダは、前記ガイド部材と嵌合する嵌合部を有し、
前記支持ホルダは、前記嵌合部と前記ベースとの間に隙間が形成されるように前記ワイプユニットを支持する、請求項1乃至10の何れかに記載の液体吐出装置。
【請求項12】
前記ベースには、下方に開口し、前記第2ブレードの基端部を収容する第2ブレード収容空間が形成され、
前記第2ブレード収容空間には、前記第2ブレードを前記キャップ上面に付勢するバネ部材が設けられた、請求項1乃至11の何れかに記載の液体吐出装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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