説明

液体含有率測定法及びその装置

【課題】 測定対象を選ばずに簡便かつ正確に液体の含有率を測定することのできる、液体含有率測定法及びその装置を提供する。
【解決手段】 サンプル5に向けて周波数を変化させながら音波を放射するスピーカー3と、サンプル5からの音波を受信するマイク4と、マイク4で受信された音波の強度からサンプル5の吸音率が最大となる周波数を算出する周波数算出手段16と、周波数算出手段16により算出された周波数からサンプル5の液体含有率を算出する液体含有率算出手段17と、液体含有率算出手段17により算出された液体含有率を表示するディスプレイ18とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体、特に粒状材料や多孔質材料に含まれる液体の含有率を測定するための液体含有率測定法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
固体に含まれる液体の含有率を測定する方法として、種々の方法が知られている。
【0003】
最も一般的には、固体の重量を測定し、乾燥させたときの固体の重量との差から液体の含有率を求めることができる。しかしながら、この方法では測定対象の比重が大きい場合に、液体の重量が相対的に小さくなり、正確な含水率を求めることができないという問題があった。また、この方法では重量を測定しなければならないため、測定対象が大きい構造物であったり、取り外しができないような部品であったりした場合には、この方法による液体の含有率を求めることは困難であった。
【0004】
このような重量法の欠点を解決できる方法としては、音や超音波を用いる方法が開示されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、製材含水率の測定方法が開示されている。この方法は、木材の一端面をハンマーで打撃し、他端面のマイクロフォンで縦振動音を捕らえ、この周波数分析を行うことで製材内部の含水率を測定するものである。
【0006】
また、特許文献2には、微粉体に含まれる液体量を測定する方法が開示されている。この方法は、液体を含む微粉末に所定周波数の超音波を当て、反射した超音波の信号強度から微粉体に含まれる液体量を測定するものである。
【0007】
また、特許文献3には、地盤中の水分量を測定する方法が開示されている。この方法は、地盤の音速から地盤中の水分量を測定するものである。
【特許文献1】特開平7−128307号公報
【特許文献2】特開平5−72182号公報
【特許文献3】特開2003−270221号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の方法において、特許文献1に開示された方法は、ハンマーで打撃したときの縦振動音を捕らえる方法であるため、測定対象は製材などの硬いものに限られ、微粉体などの粒状物などの縦振動音の伝わりにくいものを対象とした測定には用いることができなかった。
【0009】
これに対し、特許文献2に開示された方法は、反射した超音波の信号強度を利用するものであり、微粉体に含まれる液体含量を測定できる。しかし、この方法では、4%以下の低い含水率を測定することができないという問題があった。
【0010】
また、特許文献3に開示された方法は、音速を利用するものであり、測定対象を地盤などの広大な面積を有するものを対象とする場合はよいが、小さいものを測定する場合には測定誤差が大きくなってしまい、正確な測定ができないという問題があった。
【0011】
さらに、湿式フィルタの含水率を測定する方法として、音や超音波を用いることなく、フィルタへの空気の通り易さから含水率を測定する方法も知られているが、この方法では測定時に空気を流すことからフィルタが乾燥してしまい、正確な含水率を求めることができないとともに、フィルタが汚れてしまうといった問題があった。
【0012】
そこで本発明は、上記課題を解決し、測定対象を選ばずに簡便かつ正確に液体の含有率を測定することのできる、液体含有率測定法及びその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の請求項1記載の液体含有率測定法は、測定対象物に音波を放射して測定対象物による吸音率を測定し、この吸音率が最大となる周波数から測定対象物の液体含有率を算出することを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項2記載の液体含有率測定装置は、測定対象物に向けて周波数を変化させながら音波を放射する音波放射手段と、測定対象物からの音波を受信する音波受信手段と、この音波受信手段で受信された音波の強度から測定対象物の吸音率が最大となる周波数を算出する周波数算出手段と、この周波数算出手段により算出された周波数から測定対象物の液体含有率を算出する液体含有率算出手段と、この液体含有率算出手段により算出された液体含有率を表示する表示手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の請求項1記載の液体含有率測定法によれば、測定対象物による吸音率が最大となる周波数から測定対象物の液体含有率を算出することで、簡便かつ正確に液体の含有率を測定することができる。
【0016】
本発明の請求項2記載の液体含有率測定装置によれば、測定対象物による吸音率が最大となる周波数から測定対象物の液体含有率を算出することができ、簡便かつ正確に液体の含有率を測定することができる液体含有率測定装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の液体含有率測定法及びその装置の実施例について説明する。
【0018】
本実施例の液体含有率測定装置を示す図1において、1は略円筒状に形成された本体であり、この本体1の一端側には開口部2が形成されており、本体1の他端側には音波放射手段としてのスピーカー3が設けられている。また、本体1における開口部2の近傍には、2本の音波受信手段としてのマイク4が設けられている。そして、開口部2に近接した位置にある測定対象物に向けてスピーカー3から音波を放射し、測定対象物からの音波をマイク4で受信することができるように構成されている。なお、本実施例では、開口部2に連接して測定対象物としてのサンプル5を収容したサンプル収容部6が設けられている。
【0019】
本体1の外部には、2つのマイク4からの電気信号を増幅する調整アンプ7が設けられており、この調整アンプ7には、2つのマイク4からの電気信号が入力される入力端子としてのAチャンネル5,Bチャンネル6と、増幅された電気信号を出力する出力端子としてのAチャンネル8とBチャンネル9が設けられている。
【0020】
調整アンプ7には、2チャンネルのFFT(高速フーリエ変換)分析器10が接続しており、このFFT分析器10には、調整アンプ7のAチャンネル8とBチャンネル9にそれぞれ接続する入力端子としてのAチャンネル11とBチャンネル12が設けられている。また、FFT分析器10と一体に、信号発生器13が設けられ、この信号発生器13で発生した信号はアンプ14で増幅された後、スピーカー3へ送られるようになっている。
【0021】
FFT分析器10には、さらにサンプル5の吸音率を算出する吸音率算出手段15と、サンプル5の吸音率が最大となる周波数を算出する周波数算出手段16が順に接続し、周波数算出手段16には、この周波数算出手段16により算出された周波数から測定対象物の液体含有率を算出する液体含有率算出手段17が接続している。また、液体含有率算出手段17には、この液体含有率算出手段17により算出された液体含有率を表示する表示手段としてのディスプレイ18が接続している。なお、FFT分析器10,吸音率算出手段15,周波数算出手段16,液体含有率算出手段17はコンピュータソフトウェアにより構成することができる。
【0022】
つぎに、本実施例の液体含有率測定装置を用いた液体含有率測定法について説明する。
【0023】
まず、開口部2をサンプル5の近傍に位置させる。なお、本実施例においては、開口部2に連接して設けられたサンプル収容部6にサンプル5を収容しているが、このサンプル収容部6を用いずに開口部2をサンプルの近傍に位置させることで液体含有率を測定してもよい。
【0024】
そして、測定装置を起動すると、信号発生器13から所定の周波数の正弦波信号が発生し、この信号はアンプ14で増幅され、スピーカー3から音波が放射される。このとき、信号発生器13から発生する信号の周波数は、可聴域における所定の周波数の範囲内で変化する。
【0025】
スピーカー3から放射された音波は、サンプル5に達し、特定の周波数成分がサンプル5によって吸音され、その結果としての音圧がマイク4によって受信される。マイク4によって受信された音波は、調整アンプ5により増幅された後、FFT分析器10により2つの信号間の伝達関数が計算され、吸音率算出手段15により吸音率と周波数の関係を表す吸音率曲線が作成される。
【0026】
そして、周波数算出手段16により、吸音率曲線のピークの周波数、すなわち吸音率が最大になる周波数が算出され、この周波数をもとに、液体含有率算出手段17によりサンプル5の液体含有率が算出される。なお、液体含有率算出手段17には、予め測定された周波数と液体含有率の関係から作成された検量線データが入力されており、液体含有率算出手段17はこの検量線データから液体含有率を算出する。最後に、算出された液体含有率は、ディスプレイ18によって表示される。
【0027】
以上のように、本実施例の液体含有率測定法によれば、サンプル5に音波を放射してサンプル5による吸音率を測定し、この吸音率が最大となる周波数からサンプル5の液体含有率を算出することで、簡便かつ正確に液体の含有率を測定することができる。
【0028】
また、本実施例の液体含有率測定装置によれば、サンプル5に向けて周波数を変化させながら音波を放射するスピーカー3と、サンプル5からの音波を受信するマイク4と、マイク4で受信された音波の強度からサンプル5の吸音率が最大となる周波数を算出する周波数算出手段16と、周波数算出手段16により算出された周波数からサンプル5の液体含有率を算出する液体含有率算出手段17と、液体含有率算出手段17により算出された液体含有率を表示するディスプレイ18とを備えたものであり、サンプル5による吸音率が最大となる周波数からサンプル5の液体含有率を算出することができ、簡便かつ正確に液体の含有率を測定することができる液体含有率測定装置を提供することができる。
【0029】
本発明の液体含有率測定法及びその装置は、特に粒状体や湿式フィルタなどの多孔質材料の液体含有率を測定するのに適しており、多孔質材料の細かい隙間に液体が浸透することにより内部における音波の伝搬状態が変化することを利用して、その音響特性を測定することで間接的に多孔質材料の液体含有率を測定するものである。
【0030】
この方法によれば、湿式フィルタの含水率の測定する際に、従来の空気流を通す湿式フィルタの含水率の測定法のようにサンプルを汚したり乾燥させたりすることがない。
【0031】
また、従来の重量法による含水率の測定においては、測定対象の比重が大きい場合に液体の重量が相対的に小さくなり、正確な含水率を求めることができないという問題があった。また、測定対象が大きい構造物であったり、取り外しができないような部品であったりした場合には、この重量法による液体の含有率を求めることは困難であった。しかし、本発明の方法ではそのような問題が生じることなく、簡便かつ正確に液体の含有率を測定することができる
【0032】
以上、本発明の液体含有率測定法及びその装置について説明したが、本発明はこれに限定されず、本発明の思想を逸脱しない範囲で種々の変形実施が可能である。
【0033】
以下、具体的な測定例について説明する。
【実施例1】
【0034】
サンプル5として、直径1.0mmの中実のガラスビーズを用い、サンプル5をサンプル収容部6に厚さ20mmになるように収容した。そして、500〜6400Hzの音波をサンプル5へ放射して、吸音率曲線を得た。
【0035】
液体として水を用い、サンプル5の含水率を0%,5%,10%としたときの吸音率曲線の例を図2に示す。また、含水率と吸音率曲線のピークの周波数との関係を図3及び図4に示す。
【0036】
このように、含水率が3%程度までは、吸音率曲線のピークの周波数が含水率の増加に伴い低くなることがわかった。そして、この関係を利用することによりサンプル5に接触することなく極めて低い含水率を正確に測定できることが確認された。
【0037】
また、含水率が高くなると、底に水が溜まり、ガラスビーズが水没した層ができる。このため、含水率が3%を超えた場合に吸音率曲線のピークの周波数が含水率の増加に伴い高くなるものと考えられえる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の液体含有率測定装置の一実施例を示す概略図である。
【図2】実施例1において含水率を0%,5%,10%としたときの周波数と吸音率の関係を示すグラフである。
【図3】実施例1において含水率が1〜10%のときの含水率と吸音率曲線のピークの周波数との関係を示すグラフである。
【図4】実施例1において含水率が1〜3%のときの含水率と吸音率曲線のピークの周波数との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0039】
3 スピーカー(音波放射手段)
4 マイク(音波受信手段)
5 サンプル(測定対象物)
16 周波数算出手段
17 液体含有率算出手段
18 ディスプレイ(表示手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物に音波を放射して測定対象物による吸音率を測定し、この吸音率が最大となる周波数から測定対象物の液体含有率を算出することを特徴とする液体含有率測定法。
【請求項2】
測定対象物に向けて周波数を変化させながら音波を放射する音波放射手段と、測定対象物からの音波を受信する音波受信手段と、この音波受信手段で受信された音波の強度から測定対象物の吸音率が最大となる周波数を算出する周波数算出手段と、この周波数算出手段により算出された周波数から測定対象物の液体含有率を算出する液体含有率算出手段と、この液体含有率算出手段により算出された液体含有率を表示する表示手段とを備えたことを特徴とする液体含有率測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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