説明

液体噴出装置及び液体噴出方法

【課題】 液体噴出装置において外乱に強く正確な駆動波形信号を生成する。
【解決手段】 (A)信号の波形形状を規定するデジタル信号を生成するデジタル信号生成部と、前記デジタル信号に基づいてアナログ電圧信号を生成するアナログ電圧信号生成部と、前記アナログ電圧信号の波形に応じた大きさの電流信号を生成する電流信号生成部と、を有する制御部と、(B)前記電流信号が流れる経路において異なる2点間の電位差を検出し、該電位差を増幅して電圧信号を生成する電圧信号生成部と、前記電圧信号によって駆動され、ノズルから液体を噴出させる素子と、を有するヘッド部と、(C)前記電流信号を、前記制御部から前記ヘッド部に伝送する伝送部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴出装置及び液体噴出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッド部から液体を噴出して媒体上に液滴(ドット)を着弾させることで画像等の記録を行う液体噴出装置が広く普及している。そして、ヘッド部から液体を噴出させる方法として、ヘッド部の内部に設けられた圧電素子等の素子に駆動波形信号を印加して、当該圧電素子を振動させることで液体を噴出させる方法が知られている。
【0003】
このような液体噴出装置において、所定の電圧信号を生成する制御部からフレキシブルフラットケーブル(FFC)等のケーブルを介してヘッド部に小振幅の電圧信号を入力し、ヘッド部において該電圧信号を電力増幅することで、駆動波形信号を生成する方法が提案されている。(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−343690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の方法で、ヘッド上に電源用の十分大きなコンデンサを設けておけば、ヘッド駆動時に瞬間的に流れる大きなピークを有する電流を、FFC等のケーブルに流す必要が無い。つまり、FFC等のケーブルには平均的な電流が流れるので、該ケーブルにおける発熱を小さくすることができ、FFCの芯数を減らすことができる。しかし、小振幅の電圧波形信号を制御部からヘッド部に伝送する際に、伝送経路(FFC)でノイズ等の外乱による影響を受けることによって電圧波形信号に歪等が生じ、ヘッド部において正確な駆動波形信号を生成することができなくなることがある。このような場合、液体噴出量を精度良く制御することができない。
本発明は、液体噴出装置において外乱に強く正確な駆動波形信号を生成することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、(A)信号の波形形状を規定するデジタル信号を生成するデジタル信号生成部と、前記デジタル信号に基づいてアナログ電圧信号を生成するアナログ電圧信号生成部と、前記アナログ電圧信号の波形に応じた大きさの電流信号を生成する電流信号生成部と、を有する制御部と、(B)前記電流信号が流れる経路において異なる2点間の電位差を検出し、該電位差を増幅して電圧信号を生成する電圧信号生成部と、前記電圧信号によって駆動され、ノズルから液体を噴出させる素子と、を有するヘッド部と、(C)前記電流信号を、前記制御部から前記ヘッド部に伝送する伝送部と、を備える液体噴出装置である。
【0007】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】プリンター1の全体構成を示すブロック図である。
【図2】図2Aは、本実施形態のプリンターの構成を説明する図である。図2Bは、本実施形態のプリンターの構成を説明する側面図である。
【図3】ヘッドの構造を説明するための断面図である。
【図4】実施形態におけるコントローラー60及びヘッド制御部HCの構成とその動作について説明する図である。
【図5】デジタル信号から電位差信号COM´´が生成されるまでの流れを説明する図である。
【図6】駆動波形信号COMについて説明する図である。
【図7】比較例におけるコントローラー60及びヘッド制御部HCの構成とその動作について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
【0010】
(A)信号の波形形状を規定するデジタル信号を生成するデジタル信号生成部と、前記デジタル信号に基づいてアナログ電圧信号を生成するアナログ電圧信号生成部と、前記アナログ電圧信号の波形に応じた大きさの電流信号を生成する電流信号生成部と、を有する制御部と、(B)前記電流信号が流れる経路において異なる2点間の電位差を検出し、該電位差を増幅して電圧信号を生成する電圧信号生成部と、前記電圧信号によって駆動され、ノズルから液体を噴出させる素子と、を有するヘッド部と、(C)前記電流信号を、前記制御部から前記ヘッド部に伝送する伝送部と、を備える液体噴出装置。
このような液体噴出装置によれば、外乱に強く正確な駆動波形信号を生成することができる。
【0011】
かかる液体噴出装置であって、電位差を検出する前記異なる2点のうち、低電位側の点の電位がGNDの電位よりも高いことが望ましい。
このような液体噴出装置によれば、電圧信号生成部の誤作動を抑制することができるので、より正確な駆動波形信号を生成しやすくなる。
【0012】
かかる液体噴出装置であって、前記伝送部は、前記制御部から前記ヘッド部に伝送された前記電流信号を、前記ヘッド部から前記制御部に戻す経路を有することが望ましい。
このような液体噴出装置によれば、電流信号を伝送する際に、より歪のない転送が行われる。また、ノイズの影響をより小さくする差動転送を行なうこともできる。
【0013】
かかる液体噴出装置であって、前記制御部は、前記デジタル信号生成部と前記アナログ電圧信号生成部とが一体的に形成されたチップを有することが望ましい。
このような液体噴出装置によれば、デジタル信号(DAC値)の伝送過程においてノイズの影響を受ける可能性が小さくなるため、正確な波形形状を有する駆動波形信号COMを生成しやすくなる。
【0014】
かかる液体噴出装置であって、前記制御部は、前記デジタル信号生成部と前記アナログ電圧信号生成部と電流信号生成部とが一体的に形成されたチップを有することが望ましい。
このような液体噴出装置によれば、デジタル信号(DAC値)またはアナログ電圧信号(COM´)の伝送過程においてノイズの影響を受ける可能性が小さくなるため、正確な波形形状を有する駆動波形信号COMを生成しやすくなる。また、制御部の部品点数を減らしてコストを低減させることができる。
【0015】
かかる液体噴出装置であって前記電流信号が流れる経路に抵抗を有し、前記電流信号が前記抵抗を流れる際に、該抵抗の両端に生じる電位の差を検出することが望ましい。
このような液体噴出装置によれば、簡単かつ正確に電位差を検出することができる。
【0016】
また、信号の波形形状を規定するデジタル信号を生成することと、前記デジタル信号に基づいてアナログ電圧信号を生成することと、前記アナログ電圧信号の波形に応じた大きさの電流信号を生成することと、生成された前記電流信号を、ヘッド部に伝送することと、前記ヘッド部において、前記電流信号が流れる経路の異なる2点間の電位差を検出し、該電位差を増幅して電圧信号を生成することと、前記電圧信号によって素子を駆動することにより、ノズルから液体を噴出させることと、を有する液体噴出方法が明らかとなる。
【0017】
===実施形態===
発明を実施するための液体噴出装置の形態として、インクジェットプリンター(プリンター1)を例に挙げて説明する。
【0018】
<プリンターの構成>
図1は、プリンター1の全体構成を示すブロック図である。プリンター1は、紙・布・フィルム等の媒体に文字や画像を記録(印刷)する液体噴出装置であり、外部装置であるコンピューター110と通信可能に接続されている。
【0019】
コンピューター110にはプリンタードライバーがインストールされている。プリンタードライバーは、表示装置(不図示)にユーザーインターフェースを表示させ、アプリケーションプログラムから出力された画像データを印刷データに変換させるためのプログラムである。このプリンタードライバーは、フレキシブルディスクFDやCD−ROMなどの記録媒体(コンピューターが読み取り可能な記録媒体)に記録されている。また、プリンタードライバーはインターネットを介してコンピューター110にダウンロードすることも可能である。なお、このプログラムは、各種の機能を実現するためのコードから構成されている。
【0020】
コンピューター110はプリンター1に画像を印刷させるため、印刷させる画像に応じた印刷データをプリンター1に出力する。印刷データは、プリンター1が解釈できる形式のデータであって、各種のコマンドデータと、画素データSIとを有する。コマンドデータとは、プリンター1に特定の動作の実行を指示するためのデータである。このコマンドデータには、例えば、給紙を指示するコマンドデータ、搬送量を示すコマンドデータ、排紙を指示するコマンドデータがある。また、画素データSIは、印刷される画像の画素に関するデータである。ここで、画素とは画像を構成する単位要素であり、この画素が2次元的に並ぶことにより画像が構成される。印刷データにおける画素データSIは、媒体(例えば紙Sなど)上に形成されるドットに関するデータ(例えば、階調値)である。画素データは画素毎に例えば2ビットのデータによって構成される。この2ビットの画素データは1つの画素を4階調で表現できる。すなわち、ドット無しに対応するデータ[00]と、小ドットに対応するデータ[01]と、中ドットの形成に対応するデータ[10]と、大ドットに対応するデータ[11]とがある。
【0021】
プリンター1は、搬送ユニット20と、キャリッジユニット30と、ヘッドユニット40と、検出器群50と、コントローラー60と、伝送部70とを有する。コントローラー60は、外部装置であるコンピューター110から受信した印刷データに基づいてヘッドユニット40等の各ユニットを制御し、媒体に画像を印刷する。プリンター1内の状況は検出器群50によって監視されており、検出器群50は検出結果をコントローラー60に出力する。コントローラー60は検出器群50から出力された検出結果に基づいて各ユニットを制御する。
【0022】
<搬送ユニット20>
図2Aは本実施形態のプリンター1の構成を表した鳥瞰図であり、図2Bはプリンター1の構成を表した側面図である。
【0023】
搬送ユニット20は、媒体(例えば紙Sなど)を所定の方向(以下、搬送方向という)に搬送させるためのものである。ここで、搬送方向はキャリッジの移動方向と交差する方向である。搬送ユニット20は、給紙ローラー21と、搬送モーター22と、搬送ローラー23と、プラテン24と、排紙ローラー25とを有する(図2A及び図2B)。
【0024】
給紙ローラー21は、紙挿入口に挿入された紙をプリンター内に給紙するためのローラーである。搬送ローラー23は、給紙ローラー21によって給紙された紙Sを印刷可能な領域まで搬送するローラーであり、搬送モーター22によって駆動される。搬送モーター22の動作はプリンター側のコントローラー60により制御される。プラテン24は、印刷中の紙Sを、紙Sの裏側から支持する部材である。排紙ローラー25は、紙Sをプリンターの外部に排出するローラーであり、印刷可能な領域に対して搬送方向下流側に設けられている。
【0025】
<キャリッジユニット30>
キャリッジユニット30は、ヘッドユニット40が取り付けられたキャリッジ31を所定の方向(以下、移動方向という)に移動(「走査」とも呼ばれる)させるためのものである。キャリッジユニット30は、キャリッジ31と、キャリッジモーター32(CRモータとも言う)とを有する(図2A及び図2B)。
【0026】
キャリッジ31は、移動方向に往復移動可能であり、キャリッジモーター32によって駆動される。キャリッジモーター32の動作はプリンター側のコントローラー60により制御される。また、キャリッジ31は、インクを収容するインクカートリッジを着脱可能に保持している。
【0027】
<ヘッドユニット40>
ヘッドユニット40は、紙Sにインクを噴出するためのものである。ヘッドユニット40は、複数のノズルを有するヘッド41とヘッド制御部HCとを備える。このヘッド41はキャリッジ31に設けられ、キャリッジ31が移動方向に移動すると、ヘッド41も移動方向に移動する。そして、ヘッド41が移動方向に移動中にインクを断続的に噴出することによって、移動方向に沿ったドットライン(ラスタライン)が媒体上に形成される。
【0028】
図3は、ヘッド41の構造を示した断面図である。ヘッド41は、ケース411と、流路ユニット412と、ピエゾ素子群とを有する。ケース411はピエゾ素子群を収納し、ケース411の下面に流路ユニット412が接合されている。流路ユニット412は、流路形成板412aと、弾性板412bと、ノズルプレート412cとを有する。流路形成板412aには、圧力室412dとなる溝部、ノズル連通口412eとなる貫通口、共通インク室412fとなる貫通口、インク供給路412gとなる溝部が形成されている。弾性板412bはピエゾ素子PZTの先端が接合されるアイランド部412hを有する。そして、アイランド部412hの周囲には弾性膜412iによる弾性領域が形成されている。インクカートリッジに貯留されたインクが、共通インク室412fを介して、各ノズルNzに対応した圧力室412dに供給される。ノズルプレート412cはノズルNzが形成されたプレートである。ノズル面では、イエローインクを吐出するイエローノズル列Yと、マゼンタインクを吐出するマゼンタノズル列Mと、シアンインクを吐出するシアンノズル列Cと、ブラックインクを吐出するブラックノズル列Kと、が形成されている。各ノズル列では、複数のノズルNzが搬送方向に所定間隔にて並ぶことによって構成されている。
【0029】
ピエゾ素子群は、櫛歯状の複数のピエゾ素子PZT(駆動素子)を有し、ノズルNzに対応する数分だけ設けられている。ヘッド制御部HCなどが実装された配線基板(以下、ヘッド基板Base_Hとも呼ぶ)によって、電圧信号である駆動波形信号COMがピエゾ素子PZTに印加されると、該電圧信号に応じてピエゾ素子PZTは上下方向に伸縮(駆動)する。ピエゾ素子PZTが伸縮すると、アイランド部412hは圧力室412d側に押されたり、反対方向に引かれたりする。このとき、アイランド部412h周辺の弾性膜412iが変形し、圧力室412d内の圧力が上昇・下降することにより、ノズルからインク滴が吐出される。
【0030】
ヘッド制御部HCは、ピエゾ素子群PZTの駆動を制御するための制御用ICであり、ヘッド41に固定されたヘッド基板Base_H上に設けられる。ヘッド制御部HCの詳細については、後で説明する。
【0031】
<検出器群50>
検出器群50は、プリンター1の状況を監視するためのものである。検出器群50には、リニア式エンコーダ51、ロータリー式エンコーダ52、紙検出センサ53、及び光学センサ54等が含まれる(図2A及び図2B)。
【0032】
リニア式エンコーダ51は、キャリッジ31の移動方向の位置を検出する。ロータリー式エンコーダ52は、搬送ローラー23の回転量を検出する。紙検出センサ53は、給紙中の媒体(紙S)の先端の位置を検出する。光学センサ54は、キャリッジ31に取付けられている発光部と受光部により、対向する位置の媒体の有無を検出し、例えば、移動しながら紙の端部の位置を検出し、紙の幅を検出することができる。また、光学センサ54は、状況に応じて、媒体の先端(搬送方向下流側の端部であり、上端ともいう)・後端(搬送方向上流側の端部であり、下端ともいう)も検出できる。
【0033】
<コントローラー60>
コントローラー60は、プリンター1の制御を行うための制御ユニット(制御部)である。コントローラー60は、インターフェース部61と、SOC(System-on-a-chip)と、電流信号生成部67とを有し、プリンター1の本体に固定されたメイン基板Base_M上に搭載されている。
【0034】
インターフェース部61は、外部装置であるコンピューター110とプリンター1との間でデータの送受信を行う。
【0035】
SOCは、CPU62と、メモリー63と、ユニット制御回路64と、アナログ電圧信号生成回路65とが一体的に形成されたチップである(図1)。
【0036】
CPU62は、プリンター1の全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリー63は、CPU62のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものであり、RAM、EEPROM等の記憶素子によって構成される。そして、CPU62は、メモリー63に格納されているプログラムに従って、ユニット制御回路64を介して搬送ユニット20やキャリッジユニット30等の各ユニットを制御する。
【0037】
また、CPU62は所定の波形を有する信号の波形形状を規定するデジタル信号を生成し、SOC内においてアナログ電圧信号生成回路65に出力する。このデジタル信号はDAC値と呼ばれ、本実施形態においては、ピエゾ素子PZTを駆動させる駆動波形信号COMの波形を定めるための波形情報に相当する。すなわち、CPU62は、デジタル信号(DAC値)を生成するデジタル信号生成部にも相当する。
【0038】
また、CPU62は、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、転送用クロック信号SCK等の各種制御信号を生成し、ヘッドユニット40へ出力する。これらの制御信号は、後述するヘッド制御部HCにおいて、前述の画素データSIと共に駆動波形信号COMをピエゾ素子PZTへ印加するのを制御するSW信号を生成する際に用いられる。
【0039】
アナログ電圧信号生成回路65は、CPU62から入力されるデジタル信号(DAC値)に基づいて、駆動波形信号COMの基となる電圧変化パターンであるアナログ電圧信号COM´を生成するアナログ波形信号生成部である。例えば、デジタル信号(DAC値)について、当該デジタル信号の値が大きいほど高い電圧となり、デジタル信号の値が小さいほど低い電圧となるように、デジタル信号の値に応じた波形を有するアナログ電圧信号を生成する。本実施形態において、アナログ電圧信号COM´は3.3V程度の電圧を有する電圧波形信号である。
【0040】
上述のように、本実施形態ではCPU62と、アナログ電圧信号生成回路65とがSOC内で一体的に形成されているため、正確なアナログ電圧信号COM´を生成することができる。
【0041】
CPU62とアナログ電圧信号生成回路65とが別個のユニットとして離れた位置に設置される場合、CPU62で生成されたデジタル信号(DAC値)をアナログ電圧信号生成回路65に伝送する際に、その伝送経路においてノイズ等の影響を受けてDAC値に歪が生じることがある。DAC値に歪が生じると、アナログ電圧信号生成回路65において当該DAC値から生成されるアナログ電圧信号COM´にもその歪が伝播するので、正確な波形とすることが難しくなる。したがって、最終的に生成される駆動波形信号COMも不正確な波形となり、ピエゾ素子PZTの伸縮動作に乱れが生じ、インク噴出量の制御が困難になる。
【0042】
一方、本実施形態では、CPU62とアナログ電圧信号生成回路65とがSOCとして一体的に構成されるため、DAC値の伝送過程においてノイズの影響を受ける可能性は非常に小さくなる。したがって、アナログ電圧信号COM´を正確に生成することが可能となり、正確な波形形状を有する駆動波形信号COMを生成しやすくなる。
【0043】
電流信号生成回路67は、電圧信号に対応した電流信号を生成する電流信号生成部である。言い換えると、電流信号生成回路67は、電圧信号を電流信号に変換するV/I変換部にも相当する。なお、電流信号生成回路67は、オペアンプや抵抗器を組み合わせて構成される一般的なV/I変換回路である。
【0044】
本実施形態において、電流信号生成回路67は、アナログ電圧信号生成回路65から入力されるアナログ電圧信号COM´をV/I変換してCOM´に対応した電流信号を生成し、後述する伝送部70を介してヘッドユニット40へ出力する。具体的には、アナログ電圧信号COM´の波形(電圧)に応じた大きさの電流の信号を生成することにより、電圧波形情報を電流値の情報としてヘッドユニット40に伝送する。伝送された電流信号から駆動波形信号COMを生成する方法については、後で説明する。
【0045】
なお、電流信号生成回路67がSOC内に含まれるようにしてもよい。すなわち、SOCは、ユニット制御回路64と、アナログ電圧信号生成回路65と、電流信号生成回路67とが一体的に形成されたチップであり、デジタル信号の生成から電流信号の生成までを1チップ内で実行することとしてもよい。これにより、アナログ電圧信号生成回路65と電流信号生成回路67との間の信号経路において、COM´がノイズの影響を受ける可能性を減らすことができる。また、コントローラー60における部品点数を減らすことができる。
【0046】
<伝送部70>
伝送部70は、コントローラー60のメイン基板Base_Mと、ヘッドユニット40のヘッド基板Base_Hとを接続する複数の伝送線によって構成される。コントローラー60から出力される電流信号や、画素データSI、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、転送用クロック信号SCK等の各種制御信号は、伝送部70の各伝送線を介してヘッドユニット40側に伝送される。本実施形態では、伝送部70として図2Bに示されるようなフレキシブルフラットケーブル(以下、FFCとも呼ぶ)を用いる。FFCは複数の平板型伝送線を並列に並べることで、ケーブル自体の厚さを薄くしつつ、該複数の平板型伝送線を一体的に可動できるようにしたリボン状の伝送部材である。
【0047】
また、FFCには電源(例えば、主電源Vdd)からヘッドユニット40に電力を供給するための伝送線、及び、グランド(GND)の電圧を印加するグランド線等も含まれる。なお、本実施形態において、主電源Vddとグランドとの電位差は42V程度である。
【0048】
<プリンターの印刷動作>
プリンター1の印刷動作について簡単に説明する。コントローラー60は、コンピューター110からインターフェース部61を介して印刷命令を受信し、各ユニットを制御することにより、給紙処理・ドット形成処理・搬送処理等を行う。
【0049】
給紙処理は、印刷すべき紙をプリンター内に供給し、印刷開始位置(頭出し位置とも言う)に紙を位置決めする処理である。コントローラー60は、給紙ローラー21を回転させ、印刷すべき紙を搬送ローラー23まで送る。続いて、搬送ローラー23を回転させ、給紙ローラー21から送られてきた紙を印刷開始位置に位置決めする。
【0050】
ドット形成処理は、移動方向(走査方向)に沿って移動するヘッドからインクを断続的に噴出させ、紙上にドットを形成する処理である。コントローラー60は、キャリッジ31を移動方向に移動させ、キャリッジ31が移動している間に、印刷データに基づいてヘッド41からインクを噴出させる。噴出されたインク滴が紙上に着弾すると、紙上にドットが形成され、紙上には移動方向に沿った複数のドットからなるドットラインが形成される。
【0051】
搬送処理は、紙をヘッドに対して搬送方向に沿って相対的に移動させる処理である。コントローラー60は、搬送ローラー23を回転させて紙を搬送方向に搬送する。この搬送処理により、ヘッド41は、先ほどのドット形成処理によって形成されたドットの位置とは異なる位置に、ドットを形成することが可能になる。
【0052】
コントローラー60は、印刷すべきデータがなくなるまで、ドット形成処理と搬送処理とを交互に繰り返し、ドットラインにより構成される画像を徐々に紙に印刷する。そして、印刷すべきデータがなくなると、排紙ローラー25を回転させてその紙を排紙する。なお、排紙を行うか否かの判断は、印刷データに含まれる排紙コマンドに基づいても良い。
【0053】
次の紙に印刷を行う場合は同処理を繰り返し、行わない場合は、印刷動作を終了する。
【0054】
===駆動波形信号COMの生成について===
<ヘッド制御部HCの説明>
まず、ヘッド制御部HCの構成及びその動作について説明する。図4に、本実施形態におけるコントローラー60及びヘッド制御部HCの構成とその動作について説明する図を示す。
【0055】
ヘッド制御部HCは、ヘッド制御回路42と、電位差検出部43と、駆動波形信号生成回路44とを有し、ヘッド41に固定されたヘッド基板Base_H上に設けられる(図4)。また、駆動波形信号生成回路44は、電圧増幅部441と、スイッチ442と、電流増幅部443とを有する。なお、図4ではピエゾ素子PZTが二つのみ描かれているが、プリンター1は実際には多数のピエゾ素子を備える。図4に示される構成の場合、スイッチ442及び電流増幅部443は各ピエゾ素子PZTについて設けられる。
【0056】
ヘッド制御回路42は、コントローラー60から送信される転送用クロック信号SCK、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH等の各種制御信号、及び、画素データSIに応じてスイッチ442を制御するためのSW信号を出力する。
【0057】
電位差検出部43は、コントローラー60の電流信号生成回路67からFFCを介して伝送された電流信号について、その伝送経路中の異なる2点間の電位差を検出し、電位差信号COM´´として出力する。本実施形態では、所定の抵抗値を有する抵抗器を用いて電位差を検出する。具体的には、電流信号が流れる経路中に抵抗器を設け、電流信号が当該抵抗器を流れる際に抵抗器の両端に生じる電位の差を検出する。これにより、簡単かつ正確に電位差を検出することが可能となる。なお、電流信号の伝送経路中の異なる2点間の電位差を検出できるものであれば抵抗器以外の素子を用いることも可能である。例えば、トランジスタ、フォトトランジスタ等の素子を用いて電位差を検出するようにしてもよい。
【0058】
図5は、デジタル信号から電位差信号COM´´が生成されるまでの流れを説明する図である。はじめに、CPU62が駆動波形信号COMの波形形状を規定するデジタル信号(DAC値)を生成する。次に、アナログ電圧信号生成回路65が該DAC値に基づいてアナログ電圧信号COM´を生成する。このCOM´の或る瞬間における電圧値がVdで表されるものとする。続いて、電流信号生成回路67がCOM´をV/I変換し、電流信号を生成する。前述のように、電流信号の電流値はCOM´の電圧波形に応じた大きさの値であり、例えば、或る瞬間における電流値はIa(=α・Vd)で表される。このように、電流信号生成回路67によって電流値が制御され(電流制御)、電流信号として伝送部70(FFC)を経由して、ヘッドユニット40に設けられた電位差検出部43に伝送される。
【0059】
ここで、電流が流れる回路において、任意の点に流入する電流の総和は、流出する電流の総和に等しい(キルヒホッフの第一法則)。したがって、ある瞬間において電流信号生成回路67によって電流制御された電流値がIaである場合、当該伝送経路中のどの点においても、ある瞬間に流れる電流値はIaである。
【0060】
図5において、電位差検出部43として抵抗値Rの抵抗器を用いた場合、当該抵抗器の端子A(電流の入力側端子)及びB(電流の出力側端子)の間でR・Iaの電位差が発生する。このABの端子間で検出される電位差によって電位差信号COM´´が生成される。すなわち、電位差信号COM´´の電圧値は、電流信号の電流値に比例する値となる。
【0061】
なお、本実施形態では、後述する駆動波形信号生成回路44の各素子にGNDよりも低い電圧が入力されることによって、誤動作が生じたり入力自体を感知できなくなったりすることを抑制する。例えば、電位差を検出する2点(図5のA点及びB点)のうち低電位側の点(B点)とGNDとの間に抵抗等の素子を設けることで、B点の最低電位をGNDよりも十分高くすることができる。図5に示されるように、B点とGNDとの間に抵抗値rを有する抵抗器を設けると、低電位側の点であるB点における電位はr・Iaとなり、確実にGNDの電位よりも高い電位を有するようになる。これにより、駆動波形信号生成回路44の誤動作を抑制しやすくなる。ただし、B点とGNDとの間の抵抗がない場合でも、駆動波形信号COMを生成することは可能である。
【0062】
また、図5において、電流Iaが抵抗Rを流れ出た後、メイン基板Base_Mに戻るための経路が伝送部70にある。すなわち、伝送部70は、電流信号を、ヘッドユニット40からコントローラー60に伝送する(戻す)経路を有する。この経路と、メイン基板Base_Mからヘッド基板Base_Hに向かう経路とがいわゆる差動となっている。したがって、抵抗Rと伝送部70の特性インピーダンスを整合させることにより歪のない転送が行われる。また、メイン基板Base_Mからヘッド基板Base_Hに向かう経路とその反対向きの経路とを接近させておけば、外部からのノイズに二つの経路が同等の影響を受けるためノイズの影響をより小さく出来るという、差動転送の特長も有する。
【0063】
駆動波形信号生成回路44は、電位差検出部43において電流信号から検出された電位差に基づく電位差信号COM´´を電圧増幅および電流増幅して電圧信号である駆動波形信号COMを生成し、ピエゾ素子PZTに印加して該ピエゾ素子PZTを駆動させる。すなわち、駆動波形信号生成回路44は、電圧信号生成部に相当する(図4)。
【0064】
電圧増幅部441は、電位差信号COM´´の電圧を増幅して、電位差信号COM´´´を生成する。例えば、3V程度の電圧を、各ピエゾ素子PZTを駆動するのに必要な電圧である30V程度まで増幅する。電圧増幅部431には、オペアンプ等を用いた一般的な電圧増幅回路を使用することができる。
【0065】
スイッチ442は、ヘッド制御回路42から入力されるSW信号に応じて、電圧増幅部441で電圧増幅された電位差信号COM´´´を電流増幅部443へ入力する。例えば、SW信号がHレベルのとき、スイッチ442はON状態になり、電位差信号COM´´´が電流増幅部443へ入力される。一方、SW信号がLレベルのとき、スイッチ442はOFF状態になり、電位差信号COM´´´は電流増幅部443へ入力されない。
【0066】
電流増幅部443は、電位差信号COM´´´の入力を受けて、その電流を増幅して駆動波形信号COMを生成し、ピエゾ素子PZTへ印加する。電流増幅部443は、NPN型トランジスタとPNP型トランジスタとを相補的に接続することによって構成される。NPN型トランジスタのコレクタは主電源Vddに接続され、PNP型トランジスタのコレクタはグランド(GND)に接続される。また、トランジスタ以外の素子を用いて電流増幅部443を構成することも可能である。
【0067】
なお、電圧増幅部441、スイッチ442、電流増幅部443の配置は、図4に示される例には限られない。例えば、電圧増幅部441とスイッチ442との位置が逆であったり、スイッチ442と電流増幅部443との位置が逆であったりしてもよい。ただし、その場合は電圧増幅部441や電流増幅部443の数を適宜変更する必要がある点に留意する。
【0068】
また、ヘッド基板Base_Hには、十分な容量のコンデンサ(不図示)があってVddに接続されており、多くのピエゾ素子PZTに同時に大きな電流を流しても、瞬時にはコンデンサより電流が供給され、伝送部70に大きな電流が流れることがないので、伝送部70の電流容量を小さく出来る。
【0069】
図6に、生成される駆動波形信号COMについて説明する図を示す。図に示すように、駆動波形信号COMは、ラッチ信号LATの立ち上がりタイミングを区切りとした期間Tを1つの単位として生成される。期間Tには、ラッチ信号LAT又はチェンジ信号CHの立ち上がりタイミングによって区切られる区間T1〜T4が含まれる。また、区間T1〜T4には後述する駆動パルスがそれぞれ含まれる。繰り返し周期である期間Tは、ノズルが1画素分移動する間の期間に対応する。例えば、印刷解像度が720dpiの場合、期間Tは、ノズルが1/720インチ移動するための期間に相当する。そして、画素データSIに基づいて、期間Tに含まれる各区間の駆動パルスPS1〜PS4をピエゾ素子PZTに印加することによって、ノズルから噴出されるインクの量を調節し、複数階調からなる画像の表現を可能としている。
【0070】
駆動波形信号COMは、繰り返し周期における区間T1で生成される第1波形部SS1と、区間T2で生成される第2波形部SS2と、区間T3で生成される第3波形部SS3と、区間T4で生成される第4波形部SS4とを有する。ここで、第1波形部SS1は駆動パルスPS1を有している。また、第2波形部SS2は駆動パルスPS2を、第3波形部SS3は駆動パルスPS3を、第4波形部SS4は駆動パルスPS4をそれぞれ有している。
各駆動パルスは電圧波形であり、主電源Vddとグランド(GND)との電位差を用いて生成される。
【0071】
画素データSIが[00]の場合、駆動波形信号COMの第1区間信号SS1がピエゾ素子PZTへ印加され、ピエゾ素子PZTは駆動パルスPS1により駆動される。この駆動パルスPS1に応じてピエゾ素子PZTが駆動すると、インクが噴出されない程度の圧力変動がインクに生じて、インクメニスカス(ノズル部分で露出しているインクの自由表面)が微振動する。
【0072】
画素データSIが[01]の場合、駆動波形信号COMの第3区間信号SS3がピエゾ素子PZTへ印加され、ピエゾ素子PZTは駆動パルスPS3により駆動される。この駆動パルスPS3に応じてピエゾ素子PZTが駆動すると、小程度の量のインクが噴出され、媒体に小ドットが形成される。
【0073】
画素データSIが[10]の場合、駆動波形信号COMの第2区間信号SS2がピエゾ素子PZTへ印加され、ピエゾ素子PZTが駆動パルスPS2により駆動される。この駆動パルスPS2に応じてピエゾ素子PZTが駆動すると、中程度の量のインクが噴出され、媒体に中ドットが形成される。
【0074】
画素データSIが[11]の場合、駆動波形信号COMの第2区間信号SS2及び第4区間信号SS4がピエゾ素子PZTへ印加され、ピエゾ素子PZTが駆動パルスPS2及び駆動パルスPS4により駆動される。これらの駆動パルスPS2及び駆動パルスPS4に応じてピエゾ素子PZTが駆動すると、媒体に大ドットが形成される。
【0075】
<電流信号を伝送する場合の効果について>
まず、比較例として、アナログ電圧信号生成回路65で生成されるアナログ電圧信号COM´を電流信号に変換せず、そのままヘッドユニット40に伝送することによって駆動波形信号COMを生成して印刷を行う場合について、説明する。
【0076】
図7は、比較例におけるコントローラー60及びヘッド制御部HCの構成とその動作について説明する図である。比較例のプリンターでは、電流信号生成回路67及び電位差検出部43を備えていない。それ以外の構成は実施形態のプリンター1と基本的に同様である。
【0077】
比較例では、アナログ電圧信号COM´を駆動波形信号生成回路44へ直接伝送している。その際、アナログ電圧信号COM´は、コントローラー60のメイン基板Base_Mと、ヘッドユニット40のヘッド基板Base_Hとの間を接続するFFC(伝送部70)において比較的長い距離を伝送されるため、該FFCを伝送中にノイズを受けるおそれがある。COM´はアナログ信号であることから、ノイズの影響を受けると電圧波形の形状に歪や乱れが生じやすい。COM´の波形に乱れ等が生じると、COM´に基づいて生成される駆動波形信号COMの波形も変形されるため、ピエゾ素子PZTから噴出されるインク液滴の量や速度を正確に制御することができなくなる。
【0078】
したがって、比較例の場合、駆動波形信号COMを生成するためのアナログ電圧信号COM´が、FFC内を伝送される際に受けるノイズの影響により、正確な駆動波形信号COMを生成することができないという問題が生じる。
【0079】
これに対して、本実施形態では、図4に示されるように、電流信号生成回路67においてアナログ電圧信号COM´をV/I変換して電流信号を生成し、電流信号としてFFC内を伝送させている。前述のように電流値は、ある回路中においてどの地点でも等しいことから、電流値自体は同じ値となる。そして、電流信号は、電流信号生成回路67によって電流値を制御されているため、電流信号生成回路67の出口において所定の電流値が出力されれば、FFC伝送中にノイズの影響を受けたとしても、その後の回路中のどの地点でも電流値は等しい値となる。
【0080】
例えば、図5において、電流信号生成回路67から出力された電流信号の或る瞬間における電流値がIaで表される場合、FFCを伝送された後の電位差検出部43の入力側端子Aにおいても電流値はIaである。また、電位差検出部43の出力側端子Bにおいても電流値はIaである。したがって、FFC伝送中に電流信号がノイズの影響を受けた場合であっても、電位差検出部43で検出されるAB端子間の電位差はR・Iaとなる。
また、図5のように差動で信号を送っているので、差動転送の長所を有する。
【0081】
つまり、本実施形態においてAB間の端子間電圧として検出される電圧値は、ノイズの影響によらない値であるので、該端子間電圧を増幅することで生成される駆動波形信号COMもノイズの影響の小さい信号であるといえる。これにより、外乱に強く正確な駆動波形信号COMが生成され、ピエゾ素子PZTの駆動を精度良く制御することができる。
【0082】
<まとめ>
本実施形態では、所定の信号の波形形状を規定するデジタル信号であるDAC値をCPU62で生成し、アナログ電圧信号生成回路65において該DAC値に基づいてアナログ電圧信号COM´を生成し、電流信号生成回路67において該アナログ電圧信号COM´の波形に応じた大きさの電流信号を生成する。生成された電流信号は、FFCを介して制御ユニット60からヘッドユニット40へ伝送される。伝送された電流信号は、電位差検出部43内の電流経路において異なる2点間の電位差が検出され、その電位差を駆動波形信号生成回路44で電圧増幅および電流増幅することにより、駆動波形信号COMが生成される。そして、該駆動波形信号COMを印加してピエゾ素子PZTを駆動させることでインクを噴出させる。
【0083】
電流信号は、FFCを伝送される間にノイズを受ける可能性があるが、該電流信号の電流値自体は、回路中のどの地点でも等しくなるので、電流経路中の異なる2点間の電位差はノイズの影響によらず電流値に比例した値として検出することができる。したがって、該電位差を増幅することで、外乱に強く正確な駆動波形信号COMを生成することが可能となる。
【0084】
===その他の実施形態===
一実施形態としてのプリンター等を説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0085】
<液体噴出装置について>
前述の各実施形態では、液体噴出装置の一例としてプリンターが説明されていたが、これに限られるものではない。例えば、カラーフィルタ製造装置、染色装置、微細加工装置、半導体製造装置、表面加工装置、三次元造型機、液体気化装置、有機EL製造装置(特に高分子EL製造装置)、ディスプレイ製造装置、成膜装置、DNAチップ製造装置などのインクジェット技術を応用した各種の液体噴出装置に、本実施形態と同様の技術を適用してもよい。
【0086】
<ピエゾ素子について>
前述の各実施形態では、液体を噴出させるための動作を行う素子としてピエゾ素子PZTを例示したが、他の素子であってもよい。例えば、発熱素子や静電アクチュエーターを用いてもよい。
【0087】
<電流増幅部443のトランジスタについて>
前述の各実施形態では、電流増幅部443が有するトランジスタとしてNPN型トランジスタ及びPNP型トランジスタを例示した。しかし、アナログ電圧信号COM´について電流の増幅を行えるものであれば、他の種類のトランジスタを用いてもよい。
【0088】
<他の装置について>
前述の各実施形態では、ヘッド41をキャリッジとともに移動させるタイプのインクジェットプリンター(シリアルプリンター)を例に挙げて説明したが、プリンターはヘッドが固定された、いわゆるラインプリンターであってもよい。
【符号の説明】
【0089】
1 プリンター、
20 搬送ユニット、21 給紙ローラー、22 搬送モーター、
23 搬送ローラー、24 プラテン、25 排紙ローラー、
30 キャリッジユニット、31 キャリッジ、32 キャリッジモーター、
40 ヘッドユニット、41 ヘッド、411 ケース、412 流路ユニット、
412a 流路形成板、412b 弾性板、412c ノズルプレート、
412d 圧力室、412e ノズル連通口、412f 共通インク室、
412g インク供給路、412h アイランド部、412i 弾性膜、
42 ヘッド制御回路、43 電位差検出部、44 駆動波形信号生成回路、
441 電圧増幅部、442 スイッチ、443 電流増幅部、
50 検出器群、51 リニア式エンコーダ、52 ロータリー式エンコーダ、
53 紙検出センサ、54 光学センサ、
60 コントローラー、61 インターフェース部、
62 CPU、63 メモリー、64 ユニット制御回路、
65 アナログ電圧信号生成回路、67 電流信号生成回路、
70 伝送部、
110 コンピューター、
SOC System-on-a-tip、
PZT ピエゾ素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)信号の波形形状を規定するデジタル信号を生成するデジタル信号生成部と、
前記デジタル信号に基づいてアナログ電圧信号を生成するアナログ電圧信号生成部と、
前記アナログ電圧信号の波形に応じた大きさの電流信号を生成する電流信号生成部と、
を有する制御部と、
(B)前記電流信号が流れる経路において異なる2点間の電位差を検出し、該電位差を増幅して電圧信号を生成する電圧信号生成部と、
前記電圧信号によって駆動され、ノズルから液体を噴出させる素子と、
を有するヘッド部と、
(C)前記電流信号を、前記制御部から前記ヘッド部に伝送する伝送部と、
を備える液体噴出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体噴出装置であって、
電位差を検出する前記異なる2点のうち、低電位側の点の電位がGNDの電位よりも高いことを特徴とする液体噴出装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の液体噴出装置であって、
前記伝送部は、
前記制御部から前記ヘッド部に伝送された前記電流信号を、
前記ヘッド部から前記制御部に戻す経路を有することを特徴とする液体噴出装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の液体噴出装置であって、
前記制御部は、
前記デジタル信号生成部と前記アナログ電圧信号生成部とが一体的に形成されたチップを有することを特徴とする液体噴出装置。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の液体噴出装置であって、
前記制御部は、
前記デジタル信号生成部と前記アナログ電圧信号生成部と電流信号生成部とが一体的に形成されたチップを有することを特徴とする液体噴出装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の液体噴出装置であって、
前記電流信号が流れる経路に抵抗を有し、
前記電流信号が前記抵抗を流れる際に、該抵抗の両端に生じる電位の差を検出することを特徴とする液体噴出装置。
【請求項7】
信号の波形形状を規定するデジタル信号を生成することと、
前記デジタル信号に基づいてアナログ電圧信号を生成することと、
前記アナログ電圧信号の波形に応じた大きさの電流信号を生成することと、
生成された前記電流信号を、ヘッド部に伝送することと、
前記ヘッド部において、前記電流信号が流れる経路の異なる2点間の電位差を検出し、該電位差を増幅して電圧信号を生成することと、
前記電圧信号によって素子を駆動することにより、ノズルから液体を噴出させることと、
を有する液体噴出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−196819(P2012−196819A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61377(P2011−61377)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】