説明

液体噴射ヘッドユニット及び液体噴射装置

【課題】ヘッド固定部材の剛性を向上して液体噴射ヘッドの位置ずれを防止し、液体の侵入から電装部分を保護して信頼性を向上した液体噴射ヘッドユニット及び液体噴射装置を提供する。
【解決手段】インクを噴射する記録ヘッド18と、記録ヘッド18が挿通されるヘッド挿通開口を有し、当該ヘッド挿通開口の開口縁部に記録ヘッド18が固定されるサブキャリッジ26とを備え、前記開口縁部に箱形梁部90を設けた。箱形梁部90は、前記ヘッド挿通開口に面した側面を有する第1壁部91と、第1壁部91よりも外側に位置し、第1壁部91に対向する第2壁部92と、第1壁部91及び第2壁部92を接続する第3壁部
93とから構成されている。第1壁部91〜第3壁部93から構成される箱形空間部94の底部に止着穴29を設け、記録ヘッド18をサブキャリッジ26に固定するヘッド固定ボルト43aを止着穴29に挿通させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射ヘッドユニット及び液体噴射装置に関し、特に液体としてインクを吐出するインクジェット式記録ヘッドユニット及びインクジェット式記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射装置は、液体を液滴として噴射可能な液体噴射ヘッドを備え、この液体噴射ヘッドから各種の液体を噴射する装置である。この液体噴射装置の代表的なものとして、例えば、インクジェット式記録ヘッド(以下、記録ヘッドという)を備え、この記録ヘッドのノズルから液体状のインクをインク滴として噴射させて記録を行うインクジェット式記録装置(プリンター)等の画像記録装置を挙げることができる。また、近年においては、この画像記録装置に限らず、ディスプレイ製造装置などの各種の製造装置にも応用されている。そして、画像記録装置用の記録ヘッドでは液状のインクを噴射し、ディスプレイ製造装置用の色材噴射ヘッドではR(Red)・G(Green)・B(Blue)の各色材の溶液を噴射する。また、電極形成装置用の電極材噴射ヘッドでは液状の電極材料を噴射し、チップ製造装置用の生体有機物噴射ヘッドでは生体有機物の溶液を噴射する。
【0003】
近年、上記プリンターには、ノズルを複数列設してなるノズル列を有する記録ヘッドをサブキャリッジなどのヘッド固定部材に複数並べて固定したものを1つのヘッドユニットとする構成(マルチヘッド型)を採用するものがある。そして、サブキャリッジに対して各記録ヘッドが位置決めされた状態でネジ留めされる構成においては、位置決めの後、ネジ留めの前に、記録ヘッドをサブキャリッジに対して接着剤(例えば、瞬間接着剤)によって仮留することが行われている。これにより、ネジ留めにより本固定するときにネジ留め時の回転モーメントにより記録ヘッドの位置がずれることが防止される。このような接着剤による仮留を採用する場合、一旦サブキャリッジに固定された記録ヘッドを修理或いは交換するために取り外すことが困難となる。このような問題に対し、記録ヘッドとサブキャリッジの間にスペーサーと呼ばれる仲介部材を介在させる構成も提案されている(例えば、特許文献1)。この構成によれば、記録ヘッドにスペーサーをネジ留めにより予め固定しておき、スペーサーとサブキャリッジとの間を接着剤で仮留してからスペーサーとサブキャリッジとをネジ留めにより本固定することで、サブキャリッジに一旦固定された記録ヘッドは、スペーサーとの間のネジの締結を解除することにより、スペーサー及びサブキャリッジから取り外すことができる。これにより、記録ヘッドの交換や修理等による記録ヘッドの着脱が容易になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−90327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
サブキャリッジに他の部品が固定された場合、当該部品による外力がサブキャリッジに加わる。剛性が低いと、サブキャリッジが変形しやすく、記録ヘッドのサブキャリッジに対する位置がずれてしまう。また、そのような外力のみならず、クリープ荷重や、雰囲気の変化(温度や湿度の変化など)によっても、剛性が低いとサブキャリッジが変形し、記録ヘッドの当初の配置がずれてしまう。記録ヘッドが位置ずれすると、インクの着弾精度が低下してしまう。このため、スペーサーを介して記録ヘッドが固定されるサブキャリッジは、高い剛性を有することが好ましい。
【0006】
なお、このような問題は、スペーサーを介さず、サブキャリッジに直接的に固定される記録ヘッドを備えるインクジェット式記録ヘッドにおいても同様に存在する。また、インク滴を噴射するインクジェット式記録ヘッドだけでなく、他の液滴を噴射する液体噴射ヘッドにおいても同様に存在する。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、ヘッド固定部材の剛性を向上して液体噴射ヘッドの位置ずれを防止した液体噴射ヘッドユニット及び液体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明は、液体を噴射するノズルを有する液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドが挿通される開口を有し、当該開口の開口縁部に当該液体噴射ヘッドが固定されるヘッド固定部材とを備え、前記開口縁部には、箱形梁部が設けられていることを特徴とする液体噴射ヘッドユニットにある。
かかる態様では、液体噴射ヘッドが固定されるヘッド固定部材に、箱形梁部を設けたので、ヘッド固定部材は高い剛性を有する。したがって、ヘッド固定部材が様々な要因で変形することが防止される。ヘッド固定部材の変形が防止されることで、規定位置に配置された状態でヘッド固定部材に固定された液体噴射ヘッドは、当該規定位置からの位置ずれが生じず、液体の着弾精度の低下が防止される。
【0009】
ここで、前記ヘッド固定部材には、前記箱形梁部の内部に連通し、前記液体噴射ヘッドのノズル側に開口した貫通孔が設けられ、前記液体噴射ヘッドは、前記貫通孔を挿通する締結部材で前記ヘッド固定部材に締結されていることが好ましい。
【0010】
例えば、液体噴射ヘッドには、ノズル列が設けられた一方面とは反対側に、液体噴射ヘッドに駆動信号等を送信するフレキシブルケーブル等が接続されるコネクター等の電装部が設けられている。このような液体噴射ヘッドをサブキャリッジに固定したものである液体噴射ヘッドユニットは、ノズル列が外部に露出する一方、コネクター側は、カバー部材などに覆われ、外部からインク滴がコネクター等に侵入することが防止されている。
【0011】
しかしながら、スペーサーをサブキャリッジに固定するネジの一端部がカバー部材で覆われた内側の空間に位置し、当該ネジの他端部がノズル列側の外部に露出していると、そのネジの表面を伝って、インクがコネクター等に侵入する虞がある。そのようなインクにより、液体噴射ヘッドの電装部が短絡して誤作動を起こしたり、電子部品が故障する虞がある。
【0012】
そこで、液体噴射ヘッドをヘッド固定部材に固定する締結部材が挿通される貫通孔を、箱形梁部の内部に設けることにより、締結部材の表面に沿って侵入した液体は、箱形梁部の内部に貯留される。これにより、当該液体が液体噴射ヘッドの電装部に達することが防止され、信頼性が向上した液体噴射ヘッドユニットが提供される。
【0013】
また、前記ヘッド固定部材には、前記箱形梁部の内部に連通し、前記液体噴射ヘッドのノズル側に開口した貫通孔が設けられ、前記液体噴射ヘッドには、当該液体噴射ヘッドと前記ヘッド固定部材との間に介在する仲介部材が取り付けられ、前記仲介部材は、前記貫通孔を挿通する締結部材で前記ヘッド固定部材に締結されていることが好ましい。これにより、液体噴射ヘッドの交換や修理等による液体噴射ヘッドの着脱が容易になる。
【0014】
また、前記ヘッド固定部材は、前記開口が設けられた板状のベース部を備え、前記箱形梁部は、前記開口に面した側面を有して前記ベース部に立設された第1壁部と、当該第1壁部よりも外側に位置し、当該第1壁部に対向するように前記ベース部に立設された第2壁部と、前記第1壁部及び前記第2壁部を接続するように前記ベース部に立設された第3壁部とから構成されていることが好ましい。これにより、箱形梁部を好適に構成することができる。
【0015】
また、前記液体噴射ヘッドは、複数のノズルが列設されたノズル列を有し、当該ノズル列の列設方向における両端部が前記ヘッド固定部材の開口縁部に固定され、前記箱形梁部は、前記ヘッド固定部材の前記両端部が固定される領域に設けられていることが好ましい。これにより、規定位置に配置された状態でヘッド固定部材に固定された液体噴射ヘッドの位置ずれが、より確実に防止される。
【0016】
また、前記ヘッド固定部材の前記開口側に面した少なくとも一つの側面には、当該側面から突出した第1突出部が設けられていることが好ましい。これにより、ヘッド固定部材の剛性がより一層向上し、ヘッド固定部材の変形がより確実に防止される。
【0017】
また、前記第1突出部は、前記ヘッド固定部材の前記開口側に面した少なくとも二つ以上の側面に連続して設けられていることが好ましい。これにより、ヘッド固定部材の開口面と平行な方向に係る力に対してより一層剛性が向上し、ヘッド固定部材の開口面内における変形をより確実に防止することができる。
【0018】
また、前記ヘッド固定部材には、前記液体噴射ヘッドが挿通される開口が設けられた面から突出した第2突出部が立設されていることが好ましい。これにより、ヘッド固定部材の剛性がより一層向上し、ヘッド固定部材の変形がより確実に防止される。
【0019】
また、前記第2突出部は、前記ヘッド固定部材の前記開口側に面した少なくとも二つ以上の側面に連続して設けられていることが好ましい。これにより、ヘッド固定部材の厚さ方向(開口の深さ方向)に係る力に対してより一層剛性が向上し、ヘッド固定部材の厚さ方向における変形をより確実に防止することができる。
【0020】
また、本発明の他の態様は、上記液体噴射ヘッドユニットを具備することを特徴とする液体噴射装置にある。かかる態様では、ヘッド固定部材の剛性を向上して液体噴射ヘッドの位置ずれが防止され、液体の侵入から電装部を保護して信頼性を向上した液体噴射装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】プリンターの内部構成の一部を示す斜視図である。
【図2】プリンターの内部構成の一部を示す平面図である。
【図3】キャリッジの上面図である。
【図4】キャリッジの右側面図である。
【図5】キャリッジの下面図である。
【図6】図3におけるA−A線断面図である。
【図7】ヘッドユニットの斜視図である。
【図8】ヘッドユニットの上面図である。
【図9】ヘッドユニットの正面図である。
【図10】ヘッドユニットの下面図である。
【図11】ヘッドユニットの下面側の斜視図である。
【図12】記録ヘッドの構成を説明する斜視図である。
【図13】記録ヘッドの構成を説明する上面図である。
【図14】記録ヘッドの構成を説明する下面図である。
【図15】記録ヘッドの構成を説明する正面図である。
【図16】記録ヘッドの構成を説明する右側面図である。
【図17】(a)は図13における領域Aの拡大図、(b)は図13における領域Bの拡大図である。
【図18】図15における領域Cの拡大図である。
【図19】図16における領域Dの拡大図である。
【図20】図16における領域Eの拡大図である。
【図21】スペーサーの構成を説明する図である。
【図22】記録ヘッドに対するスペーサーの位置決め工程を説明する模式図である。
【図23】サブキャリッジの平面図である。
【図24】図23のA−A線断面図及びB−B線断面図である。
【図25】記録ヘッドが固定されたサブキャリッジの平面図である。
【図26】図25のA−A線断面図である。
【図27】実施形態2に係るヘッドユニットの平面図である。
【図28】図27のA−A′線断面図及びB−B′線断面図である。
【図29】実施形態3に係るヘッドユニットの平面図及び側面図である。
【図30】図29のA−A′線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
〈実施形態1〉
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面を参照して説明する。なお、以下に述べる実施の形態では、本発明の好適な具体例として種々の限定がされているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、以下においては、本発明の液体噴射装置として、インクジェット式記録装置(以下、プリンター)を例に挙げて説明する。
【0023】
図1はプリンター1の内部構成の一部を示す斜視図、図2はプリンター1の平面図である。例示したプリンター1は、記録用紙、布、フィルム等の記録媒体(着弾対象)に向けて、液体の一種であるインクを噴射する。このプリンター1は、フレーム2の内部にキャリッジ3(ヘッドユニット保持部材の一種)を、記録媒体の送り方向に交差する方向である主走査方向に往復移動可能に搭載している。プリンター1の背面側のフレーム2の内壁には、当該フレーム2の長手方向に沿って長尺な上下一対のガイドロッド4a,4bが互いに間隔を空けて平行に取り付けられている。キャリッジ3は、その背面側に設けられた軸受け部7(図4参照。)等にガイドロッド4a,4bが嵌合することで、これらのガイドロッド4a,4bに対して摺動可能に支持されている。
【0024】
フレーム2の背面側であって主走査方向の一端側(図2における右端部)には、キャリッジ3を移動させるための駆動源としてのキャリッジモーター8が配設されている。このキャリッジモーター8の駆動軸は、フレーム2の背面側から内面側に突出しており、その先端部分には、駆動プーリー(図示せず)が接続されている。この駆動プーリーは、キャリッジモーター8の駆動により回転される。また、この駆動プーリーに対して主走査方向における反対側(図2における左端部)の位置には、遊転プーリー(図示せず)が設けられている。これらのプーリーには、タイミングベルト9が架け渡されている。このタイミングベルト9には、キャリッジ3が接続されている。そして、キャリッジモーター8が駆動されると、駆動プーリーの回転に伴ってタイミングベルト9が回動し、キャリッジ3がガイドロッド4a,4bに沿って主走査方向に移動する。
【0025】
フレーム2の背面の内壁には、リニアスケール10(エンコーダーフィルム)が、主走査方向に沿ってガイドロッド4a,4bと平行に張設されている。リニアスケール10は、透明な樹脂製フィルムによって作製された帯状(バンド状)部材であり、例えば、透明なベースフィルムの表面に帯幅方向を横断する不透明なストライプが複数印刷されたものである。各ストライプは、同じ幅とされ、帯長手方向に一定ピッチで形成されている。また、キャリッジ3の背面側には、このリニアスケール10のストライプを光学的に読み取るためのリニアエンコーダーが設けられている(図示せず。)。このリニアエンコーダーは位置情報出力手段の一種であり、キャリッジ3の走査位置に応じたエンコーダーパルスを、主走査方向における位置情報として出力する。これにより、プリンターの制御部(図示せず)は、エンコーダーパルスに基づいてキャリッジ3の走査位置を認識しながら、ヘッドユニット17(図3参照)による記録媒体に対する記録動作を制御することができる。そして、プリンター1は、主走査方向の一端側のホームポジションから反対側の端部(フルポジション)へ向けてキャリッジ3が移動する往動時と、フルポジションからホームポジション側にキャリッジ3が戻る復動時との双方向で記録紙上に文字や画像等を記録する所謂双方向記録処理が可能に構成されている。
【0026】
図2に示すように、キャリッジ3には、ヘッドユニット17の各記録ヘッド18に各色のインクを供給するためのインク供給チューブ14と、駆動信号等の信号を供給するための信号ケーブル15が接続されている。その他、プリンター1には、図示しないが、インクを貯留したインクカートリッジ(液体供給源)が着脱可能に取り付けられるカートリッジ装着部、記録紙を搬送する搬送部、待機状態の記録ヘッド18のノズル形成面53(図12参照)をキャッピングするキャッピング部等が設けられている。
【0027】
図3はキャリッジ3の平面(上面)図、図4はキャリッジ3の右側面図、図5はキャリッジ3の底面(下面)図である。また、図6は図3におけるA−A線断面図である。なお、図3は、キャリッジカバー13が外された状態を図示している。キャリッジ3は、後述するヘッドユニット17(本発明における液体噴射ヘッドユニットの一種。)を内部に搭載するキャリッジ本体12と、このキャリッジ本体12の上部開口を塞ぐキャリッジカバー13とから成り、上下に分割可能な中空箱体状の部材である。キャリッジ本体12は、略矩形状の底板部12aと、当該底板部12aの四方の外周縁からそれぞれ上方に起立した側壁部12bとから成り、これらの底板部12a及び側壁部12bに囲まれた空間内にヘッドユニット17を収容する。底板部12aには、収容されたヘッドユニット17の各記録ヘッド18のノズル形成面53(図12参照)を露出させるための底部開口19が開設されている。そして、ヘッドユニット17をキャリッジ本体12内に収容した状態では、底板部12aの底部開口19から各記録ヘッド18のノズル形成面53が、キャリッジ本体12の底部よりも下方(記録動作時における記録媒体側)に突出する。
【0028】
図7はヘッドユニット17の斜視図であり、(a)は流路部材24が取り付けられた状態、(b)は流路部材24が外された状態をそれぞれ示している。また、図8はヘッドユニット17の上面図、図9はヘッドユニット17の正面図(流路部材24が外された状態)、図10はヘッドユニット17の下面図、図11はヘッドユニット17の下面側の斜視図である。
【0029】
液体噴射ヘッドユニットの一例であるヘッドユニット17は、複数の記録ヘッド18等をユニット化したものであり、これらの記録ヘッド18が取り付けられるサブキャリッジ26(本発明におけるヘッド固定部材の一種)と、流路部材24と、を備えている。
【0030】
サブキャリッジ26は、詳細は後述するが、記録ヘッド18が固定される板状のベース部26aと、このベース部26aの外周縁から上方に起立した起立壁部26b及び箱形梁部90とから構成され、上面が開口した中空箱体状に形成されている。これらのベース部26aと四方の起立壁部26b及び箱形梁部90とから囲まれた空間が、記録ヘッド18の少なくとも一部(主にサブタンク37)を収容する収容部として機能する。本実施形態のサブキャリッジ26は、金属、例えばアルミニウムにより作製されており、キャリッジ本体12やキャリッジカバー13と比較して剛性が高められている。なお、サブキャリッジ26の材料としては、金属には限られず、合成樹脂を採用することも可能である。
【0031】
サブキャリッジ26のベース部26aの略中央部分には、複数の記録ヘッド18を挿通可能な(即ち、各記録ヘッド18に共通な1つの)ヘッド挿通開口28(請求項のヘッド固定部材の開口に対応するものである。)が開設されている。このためベース部26aは、四方の辺部から成る額縁状の枠体となっている。このベース部26aには、各記録ヘッド18の取り付け位置に対応して、止着穴29が開設されている(図23参照)。本実施形態において、止着穴29は、1つの記録ヘッド18の取り付け位置に対して、ヘッド挿通開口28を間に挟んでノズル列方向に対応する方向(ヘッド列設方向に直交する方向)の両側の辺部に、後述するスペーサー32のサブキャリッジ用挿通穴69(図26参照)に対応してそれぞれ2つずつ、合計4箇所設けられている。
【0032】
本実施形態においては、図10に示すように、第1の記録ヘッド18a、第2の記録ヘッド18b、第3の記録ヘッド18c、第4の記録ヘッド18d、及び第5の記録ヘッド18eの合計5つの記録ヘッド18が、後述するサブタンク37をヘッド挿通開口28の下方から挿通させて収容部内に収容し、且つ、ベース部26aとの間にそれぞれスペーサー32(図9等参照)を介在させた状態で、ノズル列に直交する方向に横並びで、ベース部26aにそれぞれ固定される。
【0033】
図7,8等に示すように、サブキャリッジ26の四方の起立壁部26bのうちの3つには、側方に向けてフランジ部30が突設されている。フランジ部30には、キャリッジ本体12の底板部12aのヘッドユニット17の取り付け位置に開設された図示しない3箇所の取り付けネジ穴に対応して、挿通穴31がそれぞれ開設されている。そして、キャリッジ本体12の底板部12aの各取り付けネジ穴に、それぞれ対応する挿通穴31の位置を合わせた状態で、ヘッドユニット固定ネジ22を、挿通穴31を通じて取り付けネジ穴に止着することで、キャリッジ本体12内部にヘッドユニット17が収容・固定される。また、サブキャリッジ26の四方の起立壁部26bの上端面には、流路部材24を固定するための固定ネジ穴33が合計4箇所設けられている。
【0034】
流路部材24は、上下方向が薄い箱体状の部材であり、例えば、合成樹脂により作製される。この流路部材24の内部には、各記録ヘッド18のサブタンク37(後述)の流路接続部38にそれぞれ対応した各色のインク分配流路(図示せず)が区画形成されている。この流路部材24の上面(サブキャリッジ26に固定される側の面とは反対側の面)には、チューブ接続部34が設けられている。図8に示すように、このチューブ接続部34の内部には、各色のインクに対応した導入口39が複数設けられている。各導入口39は、それぞれ対応する色のインク分配流路に連通している。そして、チューブ接続部34に上記のインク供給チューブ14が接続されると、インク供給チューブ14内の各色のインク供給路と、それぞれ対応する導入口39とが液密状態で連通する。これにより、インクカートリッジ側からインク供給チューブ14を通じて送られてきた各色のインクが、導入口39を通じて流路部材24内のインク分配流路にそれぞれ導入される。また、流路部材24の下面において各記録ヘッド18のサブタンク37の流路接続部38に対応する位置には図示しない接続流路が設けられている。各接続流路は、各記録ヘッド18のサブタンク37の流路接続部38にそれぞれ挿入されて液密状態で連結されるように構成されている。さらに、流路部材24の四隅には、サブキャリッジ26の固定ネジ穴33に対応する流路挿通穴(図示せず)が、それぞれ板厚方向を貫通した状態で形成されている。流路部材24がサブキャリッジ26に固定される際に、流路止着ネジ45が流路挿通穴を通じて固定ネジ穴33に止着(螺合)される。そして、流路部材24内部のインク分配流路を通ったインクは、接続流路と流路接続部38を介して各記録ヘッド18のサブタンク37に供給される。
【0035】
図12は記録ヘッド18(液体噴射ヘッドの一種)の構成を説明する斜視図である。図13は記録ヘッド18の上面図であり、(a)はスペーサー32が取り付けられていない状態、(b)はスペーサー32が取り付けられた状態を示している。図14は記録ヘッド18の下面図であり、(a)はスペーサー32が取り付けられていない状態、(b)はスペーサー32が取り付けられた状態を示している。図15は記録ヘッド18の正面図であり、(a)はスペーサー32が取り付けられていない状態、(b)はスペーサー32が取り付けられた状態を示している。図16は記録ヘッド18の右側面図であり、(a)はスペーサー32が取り付けられていない状態、(b)はスペーサー32が取り付けられた状態を示している。
【0036】
また、図17(a)は図13における領域Aの拡大図、図17(b)は図13における領域Bの拡大図である。図18は図15における領域Cの拡大図であり、図19は図16における領域Dの拡大図である。そして、図20は図16における領域Eの拡大図である。なお、基本的な構造等は各記録ヘッド18で共通であるため、サブキャリッジ26に取り付けられる5つの記録ヘッド18のうちの1つを代表として示している。
【0037】
記録ヘッド18は、ノズル51に連通する圧力室を含むインク流路を形成する流路ユニットや、圧力室内のインクに圧力変動を生じさせる圧電振動子或いは発熱素子などの圧力発生手段(何れも図示せず)をヘッドケース52に備えている。本実施形態における記録ヘッド18は、平面視においてノズル列方向に長尺である一方、ノズル列に直交する幅方向に短尺な形状に形成されている。そして、この記録ヘッド18は、プリンター1の制御部側からの駆動信号を圧力発生手段に印加して圧力発生手段を駆動することにより、ノズル51からインクを噴射して記録紙等の記録媒体に着弾させる記録動作を行うように構成されている。各記録ヘッド18のノズル形成面53には、インクを噴射するノズル51が複数列設されてノズル列56(ノズル群)が構成され、このノズル列56がノズル列に直交する方向に2列並べて形成されている。1つのノズル列56は、例えば360dpiのピッチで開設された360個のノズルから成る。
【0038】
ヘッドケース52は、中空箱体状部材である。このヘッドケース52の先端側には、ノズル形成面53を露出させた状態で流路ユニットが固定されている。また、ヘッドケース52の内部に形成された収容空部内には圧力発生手段などを収容し、先端面とは反対側の基端面側(上面側)には、流路ユニット側にインクを供給するためのサブタンク37が装着されている。また、ヘッドケース52の上面側におけるノズル列方向の両側には、側方に向けて突出したフランジ部57がそれぞれ形成されている。このフランジ部57には、図17に示すように、スペーサー32のヘッド用挿通穴68(図21参照)に対応して、スペーサー取付穴54がそれぞれ開設されている。両側のフランジ部57にスペーサー32をそれぞれ取り付ける際に、このスペーサー取付穴54にスペーサー固定ボルト27aの軸部が挿通される。
【0039】
このスペーサー取付穴54は、フランジ部57において、両側のフランジ部57の並び方向に直交する方向(スペーサー32との締結箇所同士の並び方向またはノズル列に直交する方向)であるフランジ幅方向の中央部に、フランジ部57の厚さ方向を貫通した状態で形成されている。両側のフランジ部57のスペーサー取付穴54のうちの一方(図13(a)における左側)のスペーサー取付穴54は、図17(a)に示すように平面視において丸穴形状の貫通穴であり、その内径はスペーサー固定ボルト27aの軸部の外径よりも僅かに大きく設定されている。これにより、この一方のスペーサー取付穴54は、スペーサー固定ボルト27aの軸部を円滑に挿通することが可能であり、尚かつ、両者の間にガタツキが生じ難いように構成されている。これに対し、他方(図13(a)における右側)のスペーサー取付穴54は、図17(b)に示すように平面視において各スペーサー取付穴54の並び方向(ノズル列方向)に長尺な長穴となっている。この他方のスペーサー取付穴54の取付穴並び方向の内径(長径)はスペーサー固定ボルト27aの軸部の外径よりも大きく設定されており、取付穴並び方向に直交するフランジ幅方向の内径(短径)は一方のスペーサー取付穴54の内径に揃えられている。このように、両側のフランジ部57のスペーサー取付穴54のうちの一方を丸穴とし、他方を長穴とすることにより、両フランジ部57にそれぞれ固定された各スペーサー32をサブキャリッジ26のヘッド取付部に対してネジ留めする際に、サブキャリッジ26側の止着穴29の間隔とスペーサー取付穴54の間隔との誤差が、長穴の長径の範囲内で許容される。
【0040】
図17に示すように、各スペーサー取付穴54の開口周縁部61は、フランジ部57のスペーサー固定面63よりも、取り付け状態におけるスペーサー32側に突出している。この開口周縁部61は、スペーサー取付穴54の開口周囲を囲繞する状態で形成された土手状の突起である。また、フランジ部57のスペーサー固定面63において、スペーサー取付穴54よりもフランジ幅方向の両外側には、平面視円形状の当接凸部62がそれぞれ形成されている。本実施形態においては、両側のフランジ部57の外側の隅角部にそれぞれ当接凸部62が設けられている。この当接凸部62は、フランジ部57のスペーサー固定面63よりも、取り付け状態におけるスペーサー32側に突出している。
【0041】
さらに、両側のフランジ部57のスペーサー固定面63のうちの一方のフランジ部57a(図13(a)における左側)には、後述するスペーサー32の位置決め穴77aに対応して、スペーサー32に対する位置決めの基準となる丸穴76a(本発明におけるヘッド側位置決め穴に相当)が開設されている。同様に、他方のフランジ部57b(図13(a)における右側)には、スペーサー32の位置決め穴77bに対応して、スペーサー32に対する位置決めの基準となる長穴76b(本発明におけるヘッド側位置決め穴に相当)が開設されている。
【0042】
丸穴76aは、図17(a)に示すように、フランジ部57aにおいて、スペーサー取付穴54、開口周縁部61、および当接凸部62に干渉しない位置であって、フランジ幅方向の中心線(図中に符号Oで示す)よりも一側(図中下側)に外れた位置に、フランジ部57aの厚さ方向を貫通した状態で設けられている。この丸穴76aは、平面視において丸穴形状の開口を持つ貫通穴であり、その内径は後述する位置決め治具79(図22参照)の位置決めピン80aの外径よりも僅かに大きく設定されている。また、長穴76bは、図17(b)に示すように、スペーサー取付穴54、開口周縁部61、および当接凸部62に干渉しない位置であって、フランジ幅方向の中心線(図中に符号Oで示す)よりも一側(図中下側)に外れた位置に、フランジ部57bの厚さ方向を貫通した状態で設けられている。この長穴76bは、平面視において位置決め穴並設方向に長尺な長円形状の開口を持つ貫通穴である。この長穴76bの位置決め穴並設方向の内径(長径)は、位置決め治具79の位置決めピン80bの外径よりも十分に大きく設定されており、長穴76bのフランジ幅方向の内径(短径)は丸穴76aの内径に揃えられている。なお、位置決め治具79によるフランジ部57に対するスペーサー32の位置決めについては後述する。
【0043】
本実施形態においては、これらの丸穴76aと長穴76bとは、フランジ幅方向の中心線Oに対してフランジの幅方向の一方側(図中下側)にそれぞれ同じ距離(図中に符号xで示す)だけ外れた位置に設けられている。即ち、丸穴76aのフランジ幅方向の中心線Oからの距離と、長穴76bのフランジ幅方向の中心線Oからの距離とが、等しくなるように設定されている。
【0044】
図12や図14に示すように、ヘッドケース52の先端面側には、流路ユニットやノズル形成面53の周縁部を記録紙等の接触から保護するカバー部材58が取り付けられる。このカバー部材58は、ステンレス鋼などの導電性を有する薄手の金属板で作製されている。本実施形態におけるカバー部材58は、中央部分に開口窓部59が開設された額縁状のフレーム部58aと、ヘッドケース52への取付け状態でフレーム部58aのノズル列方向両側の縁部からヘッドケース52の側面に沿ってそれぞれ延出した側板部58bと、により概略構成されている。各側板部58bの先端部は、フランジ部57に沿う形となるように外側に向けて屈曲されており、カバー止着ネジ60によってフランジ部57にネジ留めされている。このカバー部材58は、流路ユニットやノズル形成面53の周縁部を保護する機能以外に、ノズル形成面53を接地電位に調整する機能も有している。
【0045】
上記サブタンク37は、流路部材24からのインクを記録ヘッド18の圧力室側に導入する部材である。サブタンク37は、内部の圧力変動に応じてバルブを開閉し、圧力室側へのインクの導入を制御する自己封止機能を有している。このサブタンク37の後端面(上面)におけるノズル列方向の両端部に、上記流路部材24の接続流路が接続される流路接続部38が設けられている。この流路接続部38には図示しないリング状のパッキンが嵌め込まれており、このパッキンにより流路部材24との液密性が確保される。また、サブタンク37の内部には、圧力発生手段に駆動信号を供給するための駆動基板が設けられている(図示せず)。サブタンク37の後端面の中央部の開口内には、当該駆動基板にフレキシブルケーブル(配線部材の一種。図示せず)を電気的に接続するコネクター49(図13参照)が配設されている。
【0046】
図21は、スペーサー32(仲介部材の一種)の構成を説明する図であり、(a)は斜視図、(b)は上面図、(c)は正面図、(d)は右側面図、(e)は下面図である。
【0047】
本実施形態におけるスペーサー32は、合成樹脂から成る部材であり、1つの記録ヘッド18に対して両側のフランジ部57のスペーサー固定面63(サブタンク37側の面)にそれぞれ1つずつ、合計2つ取り付けられる(図12、図20参照)。これらのスペーサー32は、同一形状となっている。そして、記録ヘッド18は、スペーサー32を介してサブキャリッジ26のベース部26aに取り付けられる。このため、スペーサー32は、サブキャリッジ26のベース部26aに対して高さ方向(ノズル形成面に垂直な方向)の位置を規定する部材である。したがって、スペーサー32のベース面65から、後述する当接突起部74の先端面までの寸法に関してより高い精度が要求される。
【0048】
これらのスペーサー32は、サブキャリッジ26のベース部26aに配置されるベース面65を有するスペーサー本体部64と、このスペーサー本体部64の幅方向(フランジ部57に取り付けられた状態におけるフランジ幅方向に相当)の中央部に形成された中央隆起部66と、当該中央隆起部66に対して幅方向の両側に離隔して形成された側壁部67と、から概略構成されている。平面視において、このスペーサー32の幅方向の寸法はフランジ部57の幅方向の寸法に概ね揃えられている。また、このスペーサー32がフランジ部57に正しく取り付けられた状態では、中央隆起部66の一部(後述)が、フランジ部57の突出端面よりも少し側方に突出する。
【0049】
中央隆起部66は、取り付け状態におけるフランジ部57側となる方向に向けてスペーサー本体部64から隆起している。この中央隆起部66の幅方向両側の側面には、平面視において六角形のヘッド固定ナット43bの三辺の形状に倣った切欠が設けられている。この切欠は、側壁部67の内壁面と共にヘッド固定ナット43bの平面方向の姿勢(即ち、締結時の回転)を規制するヘッド固定ナット用切欠70である。即ち、スペーサー本体部64と、ヘッド固定ナット用切欠70と、側壁部67とによって、ヘッド固定ナット43bを収容するヘッド固定ナット収容部72が区画されている。そして、スペーサー32がフランジ部57に固定される前の段階で、各ヘッド固定ナット収容部72にヘッド固定ナット43bがそれぞれ嵌め込まれる。
【0050】
中央隆起部66の奥行き方向の一方(フランジ部57に取り付けた状態においてサブタンク37側とは反対側)の部分は、スペーサー本体部64から側方に突出している。この突出した部分には、奥行き方向の一方から他方に向けて次第に幅狭となる平面視略三角形状の治具用切欠71が形成されている。この治具用切欠71には、記録ヘッド18をサブキャリッジ26のヘッド取付部に位置決めする際において、ヘッド保持用の治具が嵌合される。
【0051】
中央隆起部66の幅方向の中央部分には、記録ヘッド18におけるフランジ部57のスペーサー取付穴54に対応してヘッド用挿通穴68が開設されている。このヘッド用挿通穴68は、図21(b)に示すように平面視において丸穴形状の貫通穴である。このヘッド用挿通穴68の内径は、スペーサー固定ボルト27aの軸部の外径よりも僅かに大きく設定されており、スペーサー取付穴54の内径に揃えられている。ヘッド用挿通穴68の挿通穴周縁部73は、中央隆起部66の突出端面よりも、取り付け状態におけるフランジ部57側に突出している。この挿通穴周縁部73は、平面視においてヘッド用挿通穴68の開口周囲を囲繞する土手状の突起であり、フランジ部57の開口周縁部61に対応する位置に設けられている。
【0052】
中央隆起部66の両側に設けられたヘッド固定ナット収容部72には、サブキャリッジ26のベース部26aに設けられた止着穴29に対応して、サブキャリッジ用挿通穴69がそれぞれ開設されている。これらのサブキャリッジ用挿通穴69は、図21(b)に示すように平面視において丸穴形状の貫通穴であり、その内径はヘッド固定ボルト43aの軸部の外径よりも僅かに大きく設定されている。これにより、サブキャリッジ用挿通穴69は、ヘッド固定ボルト43aの軸部を円滑に挿通することが可能であり、尚かつ、両者の間にガタツキが生じ難いように構成されている。このように、1つのスペーサー32には、1つのヘッド用挿通穴68と2つのサブキャリッジ用挿通穴69が各々設けられている。即ち、スペーサー32とサブキャリッジ26とのヘッド固定ボルト43aおよびヘッド固定ナット43bによる締結箇所は、スペーサー32とフランジ部57との締結箇所よりも幅方向の外側となる(図26参照)。
【0053】
スペーサー32の幅方向両端部にそれぞれ設けられている側壁部67は、取り付け状態におけるフランジ部57側となる方向に向けてスペーサー本体部64から突出した壁であり、スペーサー本体部64の幅方向両側面と一連に形成されている。この側壁部67の突出端面は、中央隆起部66の突出端面と同一面上に揃えられている。また、側壁部67の突出端面には、当該端面から取り付け状態におけるフランジ部57側となる方向に向けて当接突起部74が突設されている。この当接突起部74は、スペーサー32がフランジ部57に正しく取り付けられた状態(スペーサー固定ボルト27aおよびスペーサー固定ナット27bによって締結された状態)において当接凸部62に当接可能な位置に設けられている。この当接突起部74の先端面は、本発明における当接面として機能する。
【0054】
スペーサー32のベース面65側において、幅方向の中央部には、スペーサー固定ナット収容部75が形成されている。このスペーサー固定ナット収容部75は、平面視においてスペーサー固定ナット27bの一部の形状に倣った窪みであり、ベース面65からスペーサー32の厚さ方向の途中まで窪んでいる。スペーサー固定ナット収容部75にスペーサー固定ナット27bが嵌め込まれて窪みの底部に着座した状態では、このスペーサー固定ナット収容部75の内壁面によってスペーサー固定ナット27bの平面方向の姿勢が規制される。即ち、スペーサー固定ボルト27aとの締結時のスペーサー固定ナット27bの回転が防止される。また、このスペーサー固定ナット収容部75の窪みの底部には、ヘッド用挿通穴68が開口している。さらに、スペーサー32における中央隆起部66と側壁部67との間であって、ヘッド固定ナット収容部72から外れた位置には、スペーサー32の厚さ方向を貫通した状態で位置決め穴77が合計2箇所開設されている。これらの位置決め穴77a,77bは、スペーサー32の幅方向中心部に対して左右対称となる位置に形成されている。
【0055】
本実施形態における位置決め穴77は、平面視円形の貫通穴である。一対の位置決め穴77のうちの一方の位置決め穴77a(図21(b)における左側)は、スペーサー32において、当該スペーサー32がフランジ部57aに取り付けられた状態における丸穴76aに対応する位置に設けられている。これに対して、他方の位置決め穴77b(図21(b)における右側)は、スペーサー32において、当該スペーサー32がフランジ部57bに取り付けられた状態における長穴76bに対応する位置に設けられている。即ち、各スペーサー32には、フランジ部57aの丸穴76aに対応する位置決め穴77aと、フランジ部57bの長穴76bに対応する位置決め穴77bと、がそれぞれ開設されている。
【0056】
次に、図22の模式図を参照して、記録ヘッド18の両側のフランジ部57a,57bにそれぞれ上記のスペーサー32を位置決めする工程について説明する。このスペーサー位置決め工程では、まず、位置決め治具79に記録ヘッド18がセットされる。位置決め治具79には、一対の位置決めピン80a,80bが立設されており、一方の位置決めピン80aをフランジ部57aの丸穴76aに挿通すると共に、他方の位置決めピン80bをフランジ部57bの長穴76bに挿通することで、位置決め治具79に対する記録ヘッド18の平面方向(ノズル形成面に平行な面方向)の位置が規定される。ここで、長穴76bの位置決め穴並設方向の内径は、位置決めピン80の外径よりも大きく設定されているので、丸穴76aと長穴76bとの間隔と、位置決めピン80a,80bの間隔との間の誤差が、位置決めピン80bと長穴76bとの間に生じる間隙の範囲内で許容される。
【0057】
記録ヘッド18を位置決め治具79にセットしたならば、当該記録ヘッド18の両側のフランジ部57a,57bに、それぞれスペーサー32が配置される。各スペーサー32は、挿通穴周縁部73をフランジ部57の開口周縁部61に対向させると共に、治具用切欠71を互いに反対側(外側)に向けて、ヘッド本体を中心として対称な姿勢(即ち、180°回転した姿勢)でフランジ部57にそれぞれ配置される。このとき、一方のフランジ部57aに配置されるスペーサー32は、フランジ部57aの丸穴76aから突出した一方の位置決めピン80aが位置決め穴77aに挿入されることで、当該フランジ部57aに対して位置決めされる。なお、位置決め穴77aを中心としたスペーサー32の回転については、図示しない他の治具によって規制される。同様に、他方のフランジ部57bに配置されるスペーサー32は、フランジ部57bの長穴76bから突出した他方の位置決めピン80bが位置決め穴77bに挿入されることで、当該フランジ部57bに対して位置決めされる。そして、各スペーサー32は、位置決めされた状態でスペーサー固定ボルト27aおよびスペーサー固定ナット27bによってフランジ部57に締結される。このようにして、各フランジ部57a,57bに対してスペーサー32が互いに対称となる向きで位置決めされて固定される。
【0058】
ここで、フランジ部57にスペーサー32を配置し、スペーサー固定ボルト27aおよびスペーサー固定ナット27bによって締結する前の状態では、フランジ幅方向において当該締結箇所から可及的に離れた両端部で当接凸部62と当接突起部74とが当接する一方で、スペーサー32とフランジ部57の締結箇所(締結予定箇所)、即ち、スペーサー取付穴54の開口周縁部61とヘッド用挿通穴68の挿通穴周縁部73との間において間隙G(図26参照)が生じる。これにより、スペーサー固定ボルト27aおよびスペーサー固定ナット27bによってスペーサー32をフランジ部57に締結した後の状態では、当接凸部62と当接突起部74とは、スペーサー32とフランジ部57の締結箇所およびスペーサー32とサブキャリッジ26の締結箇所よりもフランジ幅方向の外側において他の部分よりも優先的に当接する。これらの当接凸部62と当接突起部74との当接により、フランジ部57に対するスペーサー32の高さ方向の位置および姿勢が規制される。このような構成を採用することにより、記録ヘッド18とスペーサー32との間で、両側のフランジ部57の締結箇所同士を結ぶ仮想線に直交する方向、本実施形態においては、記録ヘッド18の短尺方向において傾きが生じることが抑制される。したがって、記録ヘッド18を、スペーサー32を介在させてサブキャリッジ26に取り付けた状態においても、サブキャリッジ26に対して記録ヘッド18が短尺方向に傾くことが抑制される。
【0059】
記録ヘッド18の両側のフランジ部57にそれぞれスペーサー32が固定されたならば、次に、サブキャリッジ26のヘッド取付部に対する記録ヘッド18の位置決めが行われる。この位置決め工程では、例えば、サブキャリッジ26のベース部26aにおけるヘッド取付部にセットされた記録ヘッド18のノズル形成面53をCCDカメラ等の撮像手段を用いて観察しながら、当該ノズル形成面53の予め定められた複数(少なくとも2箇所)の特定のノズル51が規定位置に位置付けられるように、ベース部26a上における記録ヘッド18の位置が調整される。取り付け対象の記録ヘッド18が位置決めされたならば、続いて、当該記録ヘッド18に取り付けられたスペーサー32がベース部26aに対して接着剤によって仮固定される。この仮固定に用いられる接着剤としては、シアノアクリレートを主成分とした所謂瞬間接着剤が好適であるが、完全に硬化した状態でサブキャリッジ26に対して記録ヘッド18がガタつくことなく固定される程度の剛性を発揮するものであれば、任意の接着剤を用いることができる。例えば、紫外線硬化型の接着剤を採用することも可能である。この場合、スペーサー32又はサブキャリッジ26を、透光性を有する素材で作製することが望ましい。そして、接着剤が硬化した後、ヘッド固定ボルト43aおよびヘッド固定ナット43bによってスペーサー32とベース部26aとが締結されて、記録ヘッド18aがベース部26aの規定位置に本固定される。
【0060】
このような手順でサブキャリッジ26に対して各記録ヘッド18が取り付けられる。その後、流路部材24がサブキャリッジ26に固定される。上述したように、流路部材24は、流路止着ネジ45によってサブキャリッジ26に対して固定される。この際、流路部材24の接続流路40が各記録ヘッド18のサブタンク37の流路接続部38にそれぞれ挿入されて液密状態で連結される。なお、流路部材24は、各記録ヘッド18がサブキャリッジ26に取り付けられる前の段階で、サブキャリッジ26に固定されるようにしても良い。
【0061】
以上の工程を経てヘッドユニット17が完成する。このヘッドユニット17は、上述したように、キャリッジ本体12の底板部12aの底部開口19から各記録ヘッド18のノズル形成面53を露出させた状態で、キャリッジ本体12の内部に収容され、キャリッジ本体12に対するヘッドユニット17の位置や傾きなどの姿勢が調整された後、ヘッドユニット固定ネジ22によりネジ留めされて固定される。
【0062】
ここで、サブキャリッジ26の構成について詳細に説明する。図23は、サブキャリッジ26の平面図であり、図24(a)は、図23のA−A線断面図、図24(b)は、図23のB−B線断面図である。
【0063】
図示するように、サブキャリッジ26を構成するベース部26aは、略中央部分に複数の記録ヘッド18が挿通されるヘッド挿通開口28(請求項のヘッド固定部材の開口に対応するものである。)を有している。すなわち、ベース部26aは、四方の辺部から成る額縁状の枠体となっている。
【0064】
ベース部26aのヘッド挿通開口28の開口縁部95(ベース部26aの一部であってヘッド挿通開口28の周辺部である。)には、起立壁部26bと箱形梁部90が立設されている。
【0065】
起立壁部26bは、開口縁部95の四方うち、ヘッド挿通開口28に挿通された記録ヘッド18の短尺方向の辺部分(図23のベース部26aのうちヘッド挿通開口28の左側及び右側の領域)に立設された壁部である。
【0066】
箱形梁部90は、開口縁部95の四方うち、ヘッド挿通開口28に挿通された記録ヘッド18の両端のフランジ部57が固定される領域(図23のベース部26aのうちヘッド挿通開口28の上側及び下側の領域)に設けられている。詳言すると、箱形梁部90は、ベース部26aの開口縁部95に立設した第1壁部91、第2壁部92及び第3壁部93から構成されている。第1壁部91は、ベース部26aに設けられ、ヘッド挿通開口28に面した側面を有する壁部である。第2壁部92は、第1壁部91よりも外側(第1壁部91のヘッド挿通開口28とは反対側)であり、かつ第1壁部91に対向してベース部26aに設けられた壁部である。第3壁部93は、第1壁部91と第2壁部92とを接続するようにベース部26aに設けられた壁部である。
【0067】
このように構成された第1壁部91、第2壁部92及び第3壁部93により、上面が開口した凹形状の箱形空間部94が複数画成されている。
【0068】
本実施形態では、箱形空間部94の上部開口は、記録ヘッド18の短尺方向の一辺とほぼ同等の長さを有する長辺(第1壁部91、第2壁部92の一部)と、当該長辺よりも短い短辺(第3壁部93)とからなる長方形の開口形状とした(図25参照)。そして、一つの記録ヘッド18の両端のそれぞれに箱形空間部94が対向するように箱形梁部90を設けた。すなわち、1つの記録ヘッド18に2つの箱形空間部94が対応している。
【0069】
サブキャリッジ26には、貫通孔である止着穴29が設けられている。止着穴29は、記録ヘッド18のノズル51側(図24の下側)に開口し、箱形梁部90の内部、すなわち箱形空間部94に連通している。本実施形態では、各箱形空間部94に2つの止着穴29が設けられている。
【0070】
図25は、記録ヘッドがスペーサーを介して固定されたサブキャリッジの平面図であり、図26は、図25のA−A線断面図である。
【0071】
図示するように、記録ヘッド18のフランジ部57には、スペーサー32が固定され、スペーサー32は、サブキャリッジ26に固定されている。すなわち記録ヘッド18はスペーサー32を介してサブキャリッジ26に固定されている。
【0072】
詳言すると、記録ヘッド18の両側のフランジ部57には、各スペーサー32の挿通穴周縁部73がフランジ部57の開口周縁部61に対向した状態で各スペーサー32が配置されている。そして、スペーサー固定ボルト27aがスペーサー取付穴54及びヘッド用挿通穴68を挿通し、スペーサー固定ナット27bに螺合することで、スペーサー32は、フランジ部57に締結され、固定されている。なお、上述したように、各スペーサー32は、位置決め治具79により記録ヘッド18の所定位置に配置されている。
【0073】
フランジ部57に設けられたスペーサー32は、特に図示しないが、接着剤でサブキャリッジ26のベース部26aに接着されている。さらにスペーサー32は、締結部材の一例であるヘッド固定ボルト43a及びヘッド固定ナット43bによってベース部26aに締結されている。なお、上述したように、各スペーサー32は、各記録ヘッド18のノズル51が規定位置になるようにサブキャリッジ26に取り付けられている。
【0074】
ヘッド固定ボルト43aは、箱形空間部94側から止着穴29に挿入され、スペーサー32のサブキャリッジ用挿通穴69を挿通して、ヘッド固定ナット43bに螺合している。このようにヘッド固定ボルト43aがヘッド固定ナット43bに螺合することで、スペーサー32はサブキャリッジ26に締結されている。
【0075】
上述したように、スペーサー32を介して各記録ヘッド18が固定されるサブキャリッジ26には、箱形梁部90が設けられている。箱形梁部90がサブキャリッジ26の枠状のベース部26aに設けられているので、サブキャリッジ26の剛性が向上している。このようにサブキャリッジ26の剛性を向上させたため、サブキャリッジ26の変形が防止される。したがって、サブキャリッジ26をキャリッジ本体12に取り付けたときに掛かる外力や、クリープ荷重や、雰囲気の変化(温度や湿度の変化など)等によって、サブキャリッジ26が変形することが防止される。
【0076】
このようにサブキャリッジ26の変形が防止されるため、規定位置に配置された状態でサブキャリッジ26に固定された記録ヘッド18は、当該規定位置からの位置ずれが生じず、インクの着弾精度の低下が防止される。
【0077】
特に、本実施形態では、ベース部26aのうち、記録ヘッド18のフランジ部57が固定される部分(図25の上側及び下側の部分)に箱形梁部90を設けたので、規定位置に配置された状態でサブキャリッジ26に固定された記録ヘッド18の位置ずれが、より確実に防止されている。なお、当然ながら、箱形梁部90は、ベース部26aの任意の位置に設けられても良い。
【0078】
また、箱形梁部90は、記録ヘッド18に流路部材24(図7参照)を取り付ける際に流路部材24の位置を規定するための基準部位としてもよい。すなわち、箱形梁部90の各箱形空間部94を基準に流路部材24を配置すると、流路部材24が記録ヘッド18に対して規定位置に配置されるようにしてもよい。なお、図7には、複数の記録ヘッド18に対して共通の一つの流路部材24が取り付けられた例を示したが、これに限らず、記録ヘッド18毎に流路部材24を取り付けても良い。この場合、箱形梁部90の各箱形空間部94を基準として各流路部材24を配置する。これにより、各流路部材24が規定位置に位置決めされて各記録ヘッド18に取り付けられる。このように記録ヘッド18毎に流路部材24を取り付けるようにすることで、記録ヘッド18毎に流路部材24を位置決めでき、また、流路部材24を個別に交換することが可能となり、記録ヘッド18や流路部材24の修理・交換等の保守作業が容易になる。
【0079】
ここで、図25に示すように、記録ヘッド18のサブタンク37側には、コネクター49など記録ヘッド18の電装部がある。この電装部は、キャリッジ本体12及びキャリッジカバー13(図4参照)により画成された空間内に収容されるため、外部から電装部にインクが侵入することが防止されている。
【0080】
当該空間内には、箱形梁部90も収容されている。図26に示すように、箱形梁部90により画成された箱形空間部94は、箱形空間部94の底部に設けられた止着穴29及びスペーサー32に設けられたサブキャリッジ用挿通穴69を介して外部に連通している。したがって、スペーサー32にインクが付着した場合、止着穴29及びサブキャリッジ用挿通穴69にヘッド固定ボルト43aが挿通されていても、ヘッド固定ボルト43aの表面を伝い、キャリッジ本体12及びキャリッジカバー13(図4参照)により画成された空間内にインクが侵入する虞がある。
【0081】
しかしながら、ヘッド固定ボルト43aが挿通される止着穴29を、箱形空間部94の底部に設けたため、ヘッド固定ボルト43aの表面を伝って侵入したインクは、箱形空間部94内に貯留される。このように箱形空間部94に外部から侵入したインクは、箱形空間部94内に貯留することで、当該インクが記録ヘッド18のコネクター49などの電装部に達することが防止される。そして、このようにインクの侵入から電装部が保護されるため、記録ヘッドの電装部が短絡して誤作動を起こしたり、電子部品が故障することが防止され、信頼性が向上したヘッドユニット17が提供される。
【0082】
以上説明したように、本実施形態のヘッドユニット17では、記録ヘッド18が固定されるサブキャリッジ26に、箱形梁部90を設けたので、サブキャリッジ26は高い剛性を有する。したがって、サブキャリッジ26が様々な要因で変形することが防止される。サブキャリッジ26の変形が防止されることで、規定位置に配置された状態でサブキャリッジ26に固定された記録ヘッド18は、当該規定位置からの位置ずれが生じず、インクの着弾精度の低下が防止される。
【0083】
また、記録ヘッド18(スペーサー32)をサブキャリッジ26に固定するヘッド固定ボルト43aが挿通される止着穴29を、箱形空間部94の底部に設けたので、ヘッド固定ボルト43aの表面に沿って侵入したインクは、箱形空間部94内に貯留される。これにより、当該インクが記録ヘッド18のコネクター49などの電装部に達することが防止され、信頼性が向上したヘッドユニット17が提供される。
【0084】
また、本実施形態のヘッドユニット17は、記録ヘッド18におけるスペーサー32が固定されるフランジ部57を、ヘッドケース52を間に挟んで両側にそれぞれ有し、各フランジ部57a,57bには、記録ヘッド18におけるノズル列56に直交する幅方向の中心部に、スペーサー32を取り付けるスペーサー取付穴54がそれぞれ設けられると共に、幅方向の中心線O上から外れた位置に、スペーサー32に対する位置決めの基準となる丸穴76aと長穴76bとがそれぞれ設けられ、各スペーサー32には、各フランジ部57a,57bの丸穴76aと長穴76bに対応する位置に、フランジ部57a,57bに対する位置決めの基準となる位置決め穴77a,77bがそれぞれ設けられ、両側のフランジ部57a,57bには、丸穴76aと長穴76bに対して位置決め穴77a,77bの位置を合わせて位置決めされた状態でスペーサー32が、互いに対称となる向きでそれぞれ固定される構成を採用するので、記録ヘッド18の両側のフランジ部57a,57bに固定されるスペーサー32の部品の共通化、形状・寸法管理の共通化が可能となる。これにより、スペーサー32の形状・寸法のばらつきが低減される。この結果、スペーサー32の形状・寸法のばらつきに起因するサブキャリッジ26に対する記録ヘッド18の傾きを可及的に抑制することができる。特に、各スペーサー32には、それぞれ、各フランジ部57a,57bの丸穴76aと長穴76bに対応して合計2箇所に位置決め穴77a,77bが設けられるので、スペーサー32を可及的に小型化した上でスペーサー取付穴54をフランジ部57の中心部に設ける関係から、やむを得ず、フランジ部57において幅方向の中心線上から外れた位置に丸穴76aと長穴76bを設ける構成においても、各スペーサー32の共通化が可能となる。これにより、各スペーサー32の形状・寸法のばらつきが低減される。
【0085】
また、スペーサー32におけるノズル列56に直交する方向の幅は、記録ヘッド18におけるノズル列に直交する方向の幅よりも幅狭に形成されるので、複数の記録ヘッド18を並べて配置場合に、隣り合う液体噴射ヘッド間で仲介部材が干渉することが防止される。これにより、サブキャリッジ26における各記録ヘッド18間のピッチを狭めることができる。その結果、ヘッドユニット17の小型化が可能となる。
【0086】
なお、少なくとも、同一の記録ヘッド18の両側のフランジ部57に固定される各スペーサー32は、同一の金型によって作製されたものを使用することが望ましい。これにより、同一の記録ヘッド18の両側のフランジ部57に固定される各スペーサー32の寸法・形状を可及的に揃えることができる。これにより、サブキャリッジ26に対する記録ヘッド18の傾きをより確実に防止することができる。
【0087】
また、同一の記録ヘッド18の両側のフランジ部57に固定される各スペーサー32の当接突起部74の先端面に対し、研磨して平坦化するラッピング処理が同時に施される構成を採用することが望ましい。このように構成することにより、各スペーサー32の寸法・形状をより確実に揃えることができる。特に、スペーサー32のベース面65から当接突起部74の先端面までの高さ方向の寸法を、各スペーサー32の間でより高い精度で揃えることができるので、サブキャリッジ26に対する記録ヘッド18の傾きを一層確実に防止することができる。
【0088】
なお、本発明は、上記した各実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて種々の変形が可能である。
【0089】
例えば、上記実施形態では、記録ヘッド18は、スペーサー32を介してサブキャリッジ26に固定されていたが、スペーサー32を介さず、サブキャリッジ26に直接的に固定される記録ヘッドを備えるインクジェット式記録ヘッドであってもよい。また、締結部材としてヘッド固定ボルト43a、ヘッド固定ナット43bを用いたが、これに限定されない。例えば、止着穴29に雌ねじを切り、ヘッド固定ボルト43aを当該止着穴29に螺合させ、記録ヘッドをサブキャリッジ26に固定しても良い。また、箱形梁部90の一つの箱形空間部94には、2つの止着穴29が設けられていたが、これに限らず、1又は3以上であってもよい。また、一つの記録ヘッド18に対して、2つの箱形空間部94が対応するように箱形梁部90を構成したが、これに限らない。1つの記録ヘッド18に対して、1又は3以上の箱形空間部94が対応するように箱形梁部90を構成してもよいし、記録ヘッド18の個数に関わらず、箱形梁部90を構成してもよい。
【0090】
他にも、上記実施形態では、記録媒体に対して記録ヘッド18を往復移動させながらインクの噴射を行う構成を例示したが、これには限られない。例えば、記録ヘッド18の位置を固定した状態で、当該記録ヘッド18に対して記録媒体を移動させながらインクの噴射を行う構成を採用することもできる。
【0091】
そして、以上では、液体噴射装置の一種であるインクジェット式プリンター1を例に挙げて説明したが、本発明は、ヘッド固定部材に対して仲介部材を介在させた状態で液体噴射ヘッドが固定される構成を採用する他の液体噴射装置にも適用することができる。例えば、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターを製造するディスプレイ製造装置,有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイやFED(面発光ディスプレイ)等の電極を形成する電極製造装置,バイオチップ(生物化学素子)を製造するチップ製造装置,ごく少量の試料溶液を正確な量供給するマイクロピペットにも適用することができる。
【0092】
〈実施形態2〉
実施形態1で説明したように、サブキャリッジ26(ヘッド固定部材)に箱形梁部90を設けることでサブキャリッジ26の剛性を向上させた。本実施形態では、サブキャリッジ26の剛性をさらに向上させることができる構成について説明する。
【0093】
図27は、本実施形態に係るヘッドユニット17の平面図であり、図28(a)は、図27のA−A′線断面図であり、図28(b)は、図27のB−B′線断面図である。なお、これらの図では、ヘッドユニット17を構成する流路部材24の図示は省略している。また、実施形態1と同一のものには同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0094】
これらの図に示すように、サブキャリッジ26には、箱形梁部90の内側の側面に、当該側面から突出した平板状の第1突出部96が設けられている。具体的には、第1突出部96は、箱形梁部90の第1壁部91のヘッド挿通開口28側に面した側面に設けられている。さらに、第1突出部96は、箱形梁部90の第1壁部91のヘッド挿通開口28側に面した側面の一つである起立壁部26bに連続している。すなわち、第1突出部96の3辺が第1壁部91及び起立壁部26bに連続している。また、本実施形態では、このような第1突出部96が記録ヘッド18の長手方向において、記録ヘッド18のコネクター49を挟むように2つ設けられている。
【0095】
このように、第1突出部96を設けることで、サブキャリッジ26の剛性が向上する。すなわち、第1突出部96を箱形梁部90に設けたことで、箱形梁部90の幅(図27の平面視における第1壁部91及び第2壁部92との間の幅)が増したのと同等の作用が生じ、箱形梁部90の剛性を向上させることができる。さらに、第1突出部96は、2つの起立壁部26bに連続している。このような第1突出部96が設けられていることで、箱形梁部90や起立壁部26bがヘッド挿通開口28側に折れ曲がるような変形が防止されている。
【0096】
箱形梁部90に加えて、第1突出部96を設けることで、図27に示すように、サブキャリッジ26に対して加えられた水平方向の力(図中の矢印)に対してサブキャリッジの剛性をより一層向上させることができる。
【0097】
このようにサブキャリッジ26の剛性の向上によりサブキャリッジ26の変形が防止されることで、規定位置に配置された状態でサブキャリッジ26に固定された記録ヘッド18は、当該規定位置からの位置ずれが生じず、インクの着弾精度の低下が防止される。
【0098】
また、箱形梁部90の幅を拡幅することで、サブキャリッジ26の剛性を向上させることも可能ではある。しかし、ヘッド挿通開口28の開口形状を一定以上にする必要があるため、箱形梁部90の幅を拡幅すると、サブキャリッジ26の形状を外側に大きくせざるを得ない場合が生じる。一方、本実施形態では、箱形梁部90とは別に第1突出部96をヘッド挿通開口28の内側に突出させるので、箱形梁部90の幅を厚くすることなく、サブキャリッジ26の剛性を向上させることができる。すなわち、ヘッドユニット17を大型化することなくサブキャリッジ26の剛性を向上できる。
【0099】
なお、第1突出部96の配置は、上述したような態様に限定されない。例えば、第1突出部96は、箱形梁部90の第1壁部91にのみ設けられていてもよいし、起立壁部26bにのみ設けられていてもよい。いずれにせよ、第1突出部96は、サブキャリッジ26のヘッド挿通開口28に面した側面に設けられていればよい。このように、第1突出部96がサブキャリッジ26のヘッド挿通開口28に面した側面の一つにのみ設けられている場合であっても、その第1突出部96が設けられた部位(例えば箱形梁部90や起立壁部26b)が肉厚になるため、その部位の剛性を向上させることができる。
【0100】
また、第1突出部96の個数や形状は、2つの平板状である態様に限定されず、任意の個数、任意の形状であってもよい。例えば、特に図示しないが、サブキャリッジ26のヘッド挿通開口28に面した全ての側面(図27に示す態様では、2つの箱形梁部90の第1壁部91と2つの起立壁部26b)に連続した第1突出部96を設けてもよい。
【0101】
〈実施形態3〉
実施形態2では、サブキャリッジ26(ヘッド固定部材)に箱形梁部90及び第1突出部96を設けることでサブキャリッジ26の剛性を向上させた。本実施形態では、サブキャリッジ26の剛性をさらに向上させることができる構成について説明する。
【0102】
図29は、本実施形態に係るヘッドユニット17の平面図及び側面図であり、図30は、図29のA−A′線断面図である。なお、これらの図では、ヘッドユニット17を構成する流路部材24の図示は省略している。また、実施形態1及び実施形態2と同一のものには同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0103】
図29に示すように、サブキャリッジ26を構成するベース部26aは略長方形状に形成され、その1辺に箱形梁部90が形成され、他の2辺に当該箱形梁部90に連続した起立壁部26bが形成されている。これら箱形梁部90及び起立壁部26bの内側の側面には実施形態2と同様に第1突出部96が設けられている。
【0104】
さらに、ベース部26aには、ベース部26aの箱形梁部90が設けられた面から突出した第2突出部97が立設している。第2突出部97は、図29に示す平面視で平板状に形成されており、かつその両端は、2つの起立壁部26bにそれぞれ連続している。
【0105】
このように、第2突出部97を設けることで、サブキャリッジ26の剛性が向上する。すなわち、第2突出部97をベース部26aに設けたことで、ベース部26aの厚さが増したのと同等の作用が生じ、ベース部26aの剛性を向上させることができる。
【0106】
さらに、第2突出部97は、2つの起立壁部26bに連続している。このような第2突出部97が設けられていることで、第2突出部97や起立壁部26bがヘッド挿通開口28側に折れ曲がるような変形が防止されている。すなわち、第2突出部97を設けることで、図30に示すように、サブキャリッジ26に対して加えられた垂直方向の力(図中の矢印)に対するサブキャリッジ26の剛性をより一層向上させることができる。
【0107】
このようにサブキャリッジ26の剛性の向上によりサブキャリッジ26の変形が防止されることで、規定位置に配置された状態でサブキャリッジ26に固定された記録ヘッド18は、当該規定位置からの位置ずれが生じず、インクの着弾精度の低下が防止される。
【0108】
なお、第2突出部97の配置は、上述したような態様に限定されない。例えば、第2突出部97は、2つの起立壁部26bに連続していたが、必ずしも起立壁部26bなどの他の部材に連続している必要は無い。ベース部26aに単独で第2突出部97が設けられている場合であっても、ベース部26aの第2突出部97が設けられた部位は厚みが増すので、サブキャリッジ26の剛性が向上する。また、第2突出部97の高さは特に限定されないが、サブキャリッジ26の上面側に配設される流路部材24などの他の部材に干渉しない程度に、極力高くすることが好ましい。サブキャリッジ26の剛性をより向上させることができるからである。
【0109】
さらに、上述した態様では、ベース部26aのうち箱形梁部90や起立壁部26bが設けられていない部位に第2突出部97を設けていた。しかし、第2突出部97を箱形梁部90や起立壁部26bの近傍で箱形梁部90や起立壁部26bの長尺方向に沿って設けてもよい。いずれにせよ、第2突出部97は、サブキャリッジ26のヘッド挿通開口28が設けられた部材(ベース部26a)に立設されていればよい。
【0110】
また、第2突出部97の個数や形状は、1つの平板状である態様に限定されず、任意の個数、任意の形状であってもよい。
【符号の説明】
【0111】
1 プリンター、 17 ヘッドユニット、 18 記録ヘッド、 26 サブキャリッジ、 26a ベース部、 26b 起立壁部、 32 スペーサー、 43a ヘッド固定ボルト、 43b ヘッド固定ナット、 49 コネクター、 51 ノズル、 52 ヘッドケース、 56 ノズル列、 90 箱形梁部、 91 第1壁部、 92 第2壁部、 93 第3壁部、 94 箱形空間部、 95 開口縁部、 96 第1突出部、 97 第2突出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射するノズルを有する液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドが挿通される開口を有し、当該開口の開口縁部に当該液体噴射ヘッドが固定されるヘッド固定部材とを備え、
前記開口縁部には、箱形梁部が設けられている
ことを特徴とする液体噴射ヘッドユニット。
【請求項2】
請求項1に記載する液体噴射ヘッドユニットにおいて、
前記ヘッド固定部材には、前記箱形梁部の内部に連通し、前記液体噴射ヘッドのノズル側に開口した貫通孔が設けられ、
前記液体噴射ヘッドは、前記貫通孔を挿通する締結部材で前記ヘッド固定部材に締結されている
ことを特徴とする液体噴射ヘッドユニット。
【請求項3】
請求項1に記載する液体噴射ヘッドユニットにおいて、
前記ヘッド固定部材には、前記箱形梁部の内部に連通し、前記液体噴射ヘッドのノズル側に開口した貫通孔が設けられ、
前記液体噴射ヘッドには、当該液体噴射ヘッドと前記ヘッド固定部材との間に介在する仲介部材が取り付けられ、
前記仲介部材は、前記貫通孔を挿通する締結部材で前記ヘッド固定部材に締結されている
ことを特徴とする液体噴射ヘッドユニット。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか一項に記載する液体噴射ヘッドユニットにおいて、
前記ヘッド固定部材は、前記開口が設けられた板状のベース部を備え、
前記箱形梁部は、前記開口に面した側面を有して前記ベース部に立設された第1壁部と、当該第1壁部よりも外側に位置し、当該第1壁部に対向するように前記ベース部に立設された第2壁部と、前記第1壁部及び前記第2壁部を接続するように前記ベース部に立設された第3壁部とから構成されている
ことを特徴とする液体噴射ヘッドユニット。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか一項に記載する液体噴射ヘッドユニットにおいて、
前記液体噴射ヘッドは、複数のノズルが列設されたノズル列を有し、当該ノズル列の列設方向における両端部が前記ヘッド固定部材の開口縁部に固定され、
前記箱形梁部は、前記ヘッド固定部材の前記両端部が固定される領域に設けられている
ことを特徴とする液体噴射ヘッドユニット。
【請求項6】
請求項1〜請求項4の何れか一項に記載する液体噴射ヘッドユニットにおいて、
前記ヘッド固定部材の前記開口側に面した少なくとも一つの側面には、当該側面から突出した第1突出部が設けられている
ことを特徴とする液体噴射ヘッドユニット。
【請求項7】
請求項6に記載する液体噴射ヘッドユニットにおいて、
前記第1突出部は、前記ヘッド固定部材の前記開口側に面した少なくとも二つ以上の側面に連続して設けられている
ことを特徴とする液体噴射ヘッドユニット。
【請求項8】
請求項6又は請求項7に記載する液体噴射ヘッドユニットにおいて、
前記ヘッド固定部材には、前記液体噴射ヘッドが挿通される開口が設けられた面から突出した第2突出部が立設されている
ことを特徴とする液体噴射ヘッドユニット。
【請求項9】
請求項8に記載する液体噴射ヘッドユニットにおいて、
前記第2突出部は、前記ヘッド固定部材の前記開口側に面した少なくとも二つ以上の側面に連続して設けられている
ことを特徴とする液体噴射ヘッドユニット。
【請求項10】
請求項1〜請求項9の何れか一項に記載する液体噴射ヘッドユニットを備えることを特
徴とする液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2012−158168(P2012−158168A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250165(P2011−250165)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】