説明

液体噴射ヘッド及び液体噴射装置

【課題】簡単な構造で内部の換気を的確に行うことができる液体噴射ヘッドを提供する。
【解決手段】圧力発生室11の一部を区画する振動部材15と、振動部材15を介して圧力発生室11に圧力変動を与える圧電素子35と、圧電素子35に電気信号を供給するため異方性導電性接着剤で圧電素子35に接続されるフレキシブルプリント基板50と、圧電素子35及びフレキシブルプリント基板50を内部に収納するケース40とを具備するヘッド本体100の圧電素子35とフレキシブルプリント基板50との接続部位において圧力発生室11の並設方向に沿って、ケース40に設けた流入口から排出口62に向かう気流が形成されるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから液体を噴射する液体噴射ヘッド及び液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電圧を印加することで変形する圧電素子で液体に圧力を付与することにより
ノズルから液滴を吐出する液体噴射ヘッドが知られており、その代表例として、ノズルか
らインク滴を吐出するインクジェット式記録ヘッドが知られている。
【0003】
このようなインクジェット式記録ヘッドとしては、例えば、特許文献1に開示されたも
のが知られている。特許文献1に開示されたものは、ノズルが複数穿設されたノズルプレ
ートが一方面に接合され各ノズルにそれぞれ連通する複数の圧力発生室を備えている。
【0004】
また、各圧力発生室の共通のインク室であるマニホールド(インク貯留室)が形成され
たマニホールド形成基板(流路基板)を備えている。そして、圧力発生室内の圧力を変化
させてノズルにインク吐出力を付与する圧電振動子(圧電素子)を備えている。更に、ポ
リフェニレンサルファイド(PPS)フィルムとステンレス鋼(SUS)からなる金属薄
膜との複合板で構成されマニホールド形成基板の他方面に接合された振動板を備えている

【0005】
このようなインクジェット式記録ヘッドでは、圧電素子に配線部材(フレキシブル回路
基板)が接続され、駆動回路からの電気信号が圧電素子に供給されている。圧電素子と配
線部材は導電性の接着剤(ACF)で接合され、コストをかけることなく作業性良く接合
される。また、基板等の部材の接合にはウレタン系の接着剤が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−148509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで上記特許文献1のインクジェット式記録ヘッドでは、振動部や薄肉部を構成す
るポリフェニレンサルファイド(PPS)が有機溶剤の揮発ガスを透過させる性質を有し
ている。このため、有機溶剤を含む溶剤系インクを吐出すると、揮発ガスが振動部を透過
して空間部内に流入する。かかる揮発ガスは、振動部の変形などに伴い一部が外部空間に
排出されるが、空気より比重が大きいため、その大半が空間部内に残留する。
【0008】
このような有機溶剤の揮発ガスは、圧電素子と配線部材を接着する導電性の接着剤(A
CF)を膨潤させて接着不良を生じさせる虞があった。接着不良は電気的な接続不良につ
ながり、製品の信頼性に影響を及ぼすことになる。
【0009】
また、有機溶剤の揮発ガスは、基板等の部材の接合にも影響を及ぼすため、製品寿命の
短縮や、振動部の変位特性の劣化等による良好なインク吐出特性の低下につながることに
なる。このように有機溶剤の揮発ガスは、インクジェット式記録ヘッドに対して様々な悪
影響を及ぼすことが考えられる。
【0010】
このような問題は、インクジェット式記録ヘッドだけでなく、インク以外の有機溶剤を
含む液体を吐出する液体噴射ヘッドにおいても同様に存在する。
【0011】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、簡単な構造で内部の換気を的確に行うこと
ができる液体噴射ヘッド及び液体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための本発明の液体噴射ヘッドは、液滴を吐出させるノズルが形成
されたノズルプレートと、ノズルに連通しマニホールドから液体が供給される複数の圧力
発生室と、前記圧力発生室の一部を区画する封止板と、前記封止板を介して前記圧力発生
室に圧力変動を与える圧電素子と、前記圧電素子に電気信号を供給するため異方性導電性
接着剤で前記圧電素子に接続される配線部材と、前記圧電素子及び配線部材を内部に収納
するケースとを具備するヘッド本体と、少なくとも前記圧電素子により前記圧力発生室に
前記圧力変動が付与される間は、前記圧電素子の前記配線部材が接続されている部位で前
記ケースの内部に気流を発生させる気流発生手段を備えたことを特徴とする液体噴射ヘッ
ドにある。
本態様によれば、少なくとも圧電素子により圧力発生室に圧力変動が付与される間、す
なわちノズルから液体が吐出され、圧電素子の配線部材が接続されている部位に吐出され
た液体のミストが漂っている可能性が高い間は前記部位に気流発生手段により気流が形成
されているので、ミスト状液体が前記部位等に付着するのを可及的に防止し得る。この結
果、液体が有機溶剤を含む溶剤系の液体であっても、また圧電素子の配線部材を異方性導
電性接着剤で接続している場合でも、当該接続部位や基板等の部材を接合する接着剤によ
る接合部位が有機溶剤系の液体により腐食されるのを未然に防止し得る。
【0013】
ここで、前記ケースは前記気流発生手段から気体を流入させる流入口又は前記気流発生
手段へ気体を排出する排出口の少なくとも何れか一方が形成されており、前記気流発生手
段は気体の供給手段または排出手段の少なくとも何れか一方を備えていることが望ましい
。この場合には、気体の圧送又は吸引によりケース内に良好に所定の気流を発生させるこ
とができる。また、前記気流発生手段は、前記電気信号による前記圧電素子の駆動に基づ
き駆動が開始され、前記電気信号による前記圧電素子の駆動の停止に基づき駆動が停止さ
れるように構成することができる。この場合には、ノズルから液体が吐出される期間は気
流発生手段によりケース内に気流が発生させられているので、液体の吐出によりミスト状
となってケースの内部に浸入した液体を確実に気流に乗せて配線基板の接続部位等への付
着を防止し得る。
【0014】
本発明の他の態様は、上記液体噴射ヘッドを有することを特徴とする液体噴射装置にあ
る。
本態様によれば、ヘッド本体が液体を吐出している時に、気流発生手段で圧電素子と配
線部材が接続されている部位等に気流を発生させることで、ケース内に浸入したミスト状
の液体が前記部位等に付着するのを有効に防止することができる。この結果、有機溶剤系
の液体を吐出させる場合でも機器の長寿命化が実現でき、長期に亘り安定した所定の動作
が保証される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係るインクジェット式記録ヘッド本体の断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るインクジェット式記録ヘッドの概略斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係るインクジェット式記録装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態のインクジェット式記録ヘッド本体(以下、単に「記録
ヘッド本体」という)100は、圧力発生室11を有する流路形成基板10と、各圧力発
生室11に連通する複数のノズル21が穿設されたノズルプレート20と、流路形成基板
10のノズルプレート20とは反対側の面に接合された振動部材15とを具備する。また
本実施形態の記録ヘッド本体100は、振動部材15上の各圧力発生室11に対応する領
域に設けられる圧電素子35を複数有する圧電素子ユニット30と、振動部材15を介し
て流路形成基板10の一方面に接合されたケース40とを具備する。また、本実施形態で
は、流路形成基板10に各圧力発生室11の共通液室となるマニホールド13が形成され
ており、流路形成基板10がマニホールド形成基板にもなっている。
【0017】
図1を参照すれば明らかな通り、本実施形態に係る記録ヘッド本体100は、上述の如
き圧力発生室11、ノズル21、圧電素子ユニット30等を二列有している。すなわち、
左右対称になるように圧力発生室11やノズル21等が二列形成されている。これは勿論
一列でも構わない。
【0018】
流路形成基板10には、その一方面側の表層部分に、圧力発生室11が隔壁によって区
画されてその幅方向で複数並設されている。なお、本実施形態では並設された複数の圧力
発生室11からなる列が2列形成されている。また各圧力発生室11の列の外側には、ケ
ース40の液体導入路であるインク導入路41を介してインクが供給されるマニホールド
13が、流路形成基板10を厚さ方向に貫通してそれぞれ1つずつ設けられている。
【0019】
また、マニホールド13と各圧力発生室11とは、インク供給路12を介して連通され
ており、各圧力発生室11には、インク導入路41、マニホールド13及びインク供給路
12を介してインクが供給される。インク供給路12は、本実施形態では、圧力発生室1
1よりも狭い幅で形成されており、マニホールド13から圧力発生室11に流入するイン
クの流路抵抗を一定に保持する役割を果たしている。
【0020】
さらに、圧力発生室11のマニホールド13とは反対の端部側には、流路形成基板10
を貫通するノズル連通孔14が形成されている。すなわち、本実施形態では、流路形成基
板10に液体流路として、マニホールド13、インク供給路12、圧力発生室11、及び
ノズル連通孔14が設けられている。このような流路形成基板10は、本実施形態では、
シリコン単結晶基板からなり、流路形成基板10に設けられる上記圧力発生室11やマニ
ホールド13等は、流路形成基板10をエッチングすることによって形成されている。
【0021】
この流路形成基板10の一方面にはインクを吐出するノズル21が複数穿設されたノズ
ルプレート20が接合され、各ノズル21は、流路形成基板10に設けられたノズル連通
孔14を介して各圧力発生室11と連通している。
【0022】
また、流路形成基板10の他方面、すなわち圧力発生室11の開口面には、振動部材1
5がウレタン系の接着剤からなる接着層17で接合されており、各圧力発生室11はこの
振動部材15によって封止されている。なお、振動部材15は、図示するように流路形成
基板10の他方面の面積と同程度の面積を備えており、流路形成基板10の他方面全体を
覆うように接合されている。
【0023】
この振動部材15は、例えば、樹脂フィルム等の弾性部材からなる弾性膜15aと、こ
の弾性膜15aを支持する、例えば、金属材料等からなる支持板15bとの複合板で形成
されており、弾性膜15a側が流路形成基板10に接合されている。本実施形態では、弾
性膜15aは、厚さが数μm程度のポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルムから
なり、支持板15bは、厚さが数十μm程度のステンレス鋼板(SUS)からなる。
【0024】
また、この振動部材15の各圧力発生室11の周縁部に対向する領域は、支持板15b
が除去されて実質的に弾性膜15aのみで構成された薄肉部15dとなっている。この薄
肉部15dは、圧力発生室11の一方面を画成している。また、この薄肉部15dの内側
には、各圧電素子35の先端が当接する支持板15bの一部からなる島部15cがそれぞ
れ設けられている。また、振動部材15のマニホールド13に対向する領域は、支持板1
5bが除去されて弾性膜15aのみで構成される振動部16となっている。この振動部1
6は、マニホールド13内の圧力変化が生じた時に、変形することによって圧力変化を吸
収し、マニホールド13内の圧力を常に一定に保持する役割を果たす。そして、かかる振
動部材15上に、ケース40がウレタン系の接着剤からなる接着層18で接合されている
。つまり、本実施形態のケース40は、振動部材15を介して流路形成基板10に接合さ
れている。
【0025】
ケース40には、図1に示すように、振動部16に対向する位置に、凹部からなる空間
部42が設けられている。ここで、空間部42は、振動部16の変形を阻害しない程度の
高さを備えている。また、ケース40には、薄肉部15dに対向する位置に、かかるケー
ス40を貫通する貫通部からなる圧電素子収容部43が設けられている。また、圧電素子
収容部43のインク導入路41側には、段差部45が設けられており、後述する圧電素子
ユニット30の固定基板36がこの段差部45に接合される。
【0026】
また、ケース40の流路形成基板10側とは反対側の面には、後述するフレキシブルプ
リント基板50の各配線層51がそれぞれ接続される複数の導電パッド71が設けられた
配線基板70が固定されている。配線基板70には、ケース40の圧電素子収容部43に
対向する領域にスリット状の開口部72が形成されており、圧電素子収容部43は、かか
る開口部72により外部空間に連通されている。そして、かかる圧電素子収容部43内に
、圧電素子35を備える圧電素子ユニット30が収容されている。
【0027】
圧電素子ユニット30は、各圧力発生室11に対向して設けられ、圧力発生室11とマ
ニホールド13とを含む液体流路内の圧力を変動させる複数の圧電素子35と、かかる圧
電素子35をケース40に取り付ける固定基板36とで構成されている。
【0028】
各圧電素子35は、本実施形態では一つの圧電素子ユニット30において一体的に形成
されている。すなわち、圧電材料31と電極形成材料32,33とを縦に交互にサンドイ
ッチ状に挟んで積層した圧電素子形成部材34を形成し、この圧電素子形成部材34を各
圧力発生室11に対応して櫛歯状に切り分けることによって各圧電素子35が形成されて
いる。つまり、本実施形態では、複数の圧電素子35が一体的に形成されている。そして
圧電素子35は、先端部が振動部材15の島部15cに接着剤で接合されるとともに、振
動に寄与しない不活性領域となっている基端部側で固定基板36に固着されている。この
ように圧電素子35が固着された固定基板36は、圧電素子収容部43の段差部45でケ
ース40に接合されている。これにより圧電素子ユニット30は、ケース40の圧電素子
収容部43に収容されて固定されている。
【0029】
なお、固定基板36は、上述のように圧電素子35と一体的に設けられることで、圧電
素子ユニット30を構成し、圧電素子ユニット30はケース40に位置決め固定される。
このとき、圧電素子35の振動部材15(島部15c)に対する位置合わせは、固定基板
36の外周面とケース40の圧電素子収容部43の内面とによって行われる。これにより
、脆性材料である圧電素子35を直接把持して位置合わせするのに比べて容易に且つ高精
度に位置合わせを行うことができる。
【0030】
固定基板36を構成する材料は特に限定されるものではないが、例えば、アルミニウム
、銅、鉄及びステンレス鋼などで好適に構成することができる。そして、かかる圧電素子
ユニット30の圧電素子35の基端部近傍には、固定基板36とは反対側の面に、各圧電
素子35を駆動するための信号を供給する配線層51を有するフレキシブルプリント基板
50が接続されている。
【0031】
フレキシブルプリント基板50は、フレキシブルプリンティングサーキット(FPC)
や、テープキャリアパッケージ(TCP)などからなる。詳しくは、フレキシブルプリン
ト基板50は、例えば、ポリイミド等のベースフィルム52の表面に銅薄等で所定のパタ
ーンの配線層51を形成し、配線層51の圧電素子35と接続される端子部などの他の配
線と接続される領域以外の領域をレジスト等の絶縁材料で覆ったものである。
【0032】
このような、フレキシブルプリント基板50の配線層51は、本実施形態においては、
その基端部側で異方性導電材等によって圧電素子35を構成する電極形成材料32,33
に接続されている。
【0033】
一方、先端部側では、各配線層51はケース40上に設けられた配線基板70の導電パ
ッド71と電気的に接続されている。フレキシブルプリント基板50はこの配線基板70
の開口部72から圧電素子収容部43の外側に引き出されて、引き出された領域が屈曲さ
れて導電パッド71と接続されている。
【0034】
図2は本実施形態に係るインクジェット式記録ヘッド(以下、単に「記録ヘッド」とい
う)を示す概略斜視図である。同図に示すように、本実施形態の記録ヘッド300は、記
録ヘッド本体100と気流発生手段200とを組み合わせたものである。同図を参照すれ
ば明らかな通り、記録ヘッド本体100のケース40には、空気の流入口61及び排出口
62がケース40の内部の空間である圧電素子収容部43(図1参照)に臨んで形成され
ている。ここで、流入口61及び排出口62は、流入口61から排出口62に向かう方向
が、圧力発生室11(図1参照)の並設方向(図2に矢印で示す方向)に沿うように構成
されている。気流発生手段200はケース80の内部を仕切板81で仕切った二つの領域
である空気供給部82と、空気排出部83とを有している。空気供給部82はチューブ9
1を介してケース40の流入口61に接続されており、また空気排出部83はチューブ9
2を介してケース40の排出口62に接続されている。一方、ケース80には空気供給部
82に対応する部位に外部に開口する空気取入口84が、また空気排出部83に対応する
部位に外部に開口する空気排出口85がそれぞれ形成されている。かくして空気供給部8
2からは、空気取入口84を介して取込んだ空気がチューブ91を介してケース40内に
供給される。一方、空気排出部83には、ケース40内を流通した空気がチューブ92を
介して供給される。かくしてケース40内を流通した空気は空気排出部83を介して空気
排出口85から外部に排出される。
【0035】
なお、図2に図示はしないが、空気供給部82及び空気排出部83には気流発生器がそ
れぞれ配設されている。空気供給部82の気流発生器は、例えば空気取入口84を介して
空気を取入れ、ケース40に向けて圧送するファンで好適に形成することができる。また
、空気排出部83の気流発生器は、例えば空気排出部83にケース40内の空気を取入れ
、空気排出口85に向けて圧送するファンで好適に形成することができる。
【0036】
ここで、気流発生器は空気供給部82、空気排出部83の少なくとも何れか一方に配設
されていれば良い。何れか一方にあれば、ケース40の内部に流入口61から排出口62
に向かう気流を発生させることができるからである。
【0037】
気流発生手段200は少なくとも圧電素子35により圧力発生室11に圧力変動が付与
される間、すなわちノズル21を介してインク滴が吐出されている間は駆動されてケース
40内に所定の気流を発生させる。要するに、インク滴が吐出されケース40の内部にイ
ンク滴の吐出に伴うインク成分がミスト状となって浸入する可能性が高い期間はケース4
0内に気流が形成されるように構成してある。本実施形態では、電気信号による圧電素子
35の駆動に基づき駆動が開始され、前記電気信号による圧電素子35の駆動の停止に基
づき駆動が停止されるように構成してある。具体的には、当該記録ヘッド300を搭載す
る記録装置のスイッチのON状態に同期させて駆動を開始し、OFF状態に同期させて駆
動を停止させれば良い。
【0038】
かかる記録ヘッド300においては、圧電素子35及び振動部材15の変形によって各
圧力発生室11の容積を変化させることで、各ノズル21からインク滴を吐出させている
。具体的には、図示しない液体貯留手段から液体導入路であるインク導入路41を介して
マニホールド13にインクが供給されると、インク供給路12を介して各圧力発生室11
にインクが分配される。そして、図示しない駆動回路からの駆動信号によって所定の圧電
素子35に電圧を印加及び解除することによって、圧電素子35を収縮及び伸張させて圧
力発生室11に圧力変化を生じさせ、ノズル21からインク滴を吐出させる。
【0039】
一方、当該記録ヘッド300を搭載する記録装置のスイッチのON状態に同期させて気
流発生手段200が駆動を開始されているので、インク滴の吐出時にはケース40内に流
入口61から排出口62に向かう気流が形成されている。すなわち、圧電素子収容部43
に圧力発生室11の並設方向に流れる気流が形成されている。この結果、インク滴の吐出
に伴うミスト状のインクが圧電素子35とフレキシブルプリント基板50との接続部位等
に付着するのを可及的に防止し得る。この結果、インクが有機溶剤を含む溶剤系のもので
あっても、また圧電素子35とフレキシブルプリント基板50とを異方性導電性接着剤で
接続している場合でも、当該接続部位や基板等の部材を接合する接着層18等の接合部位
が有機溶剤系のインクにより腐食されるのを未然に防止し得る。
【0040】
図3は本発明の実施形態に係るインクジェット式記録装置の概略図である。同図に示す
ように、本実施形態に係るインクジェット式記録装置I(以下、単に「記録装置」という
)は、インクカートリッジ2が搭載されるキャリッジ3やキャリッジ3に取り付けられた
記録ヘッド本体100を搭載している。キャリッジ3はタイミングベルト6を介してステ
ッピングモーター7に接続され、ガイドバー8に案内されて記録紙9の紙幅方向(主走査
方向)に往復移動する。キャリッジ3は上部に開放する箱型をなし、記録紙9と対面する
面(下面)に記録ヘッド本体100のノズル面が露呈するよう取り付けられるとともに、
インクカートリッジ2が収容される。
【0041】
制御装置4はキャリッジ3の往復動に追従して移動するフレキシブル配線5を介して所
定の電気信号を送出することにより、当該記録装置Iの動作の全体を制御する。気流発生
手段200は制御装置4のケース上に配設されており、チューブ91,92を介して記録
ヘッド本体100に接続されている。
【0042】
かくして、記録ヘッド本体100は、インクカートリッジ2から液体としてのインクが
供給され、印刷を行う際のホーム位置(基準位置)からキャリッジ3とともに移動しなが
ら記録紙9の上面にインク滴を吐出させて記録紙9に画像や文字をドットマトリックスに
より印刷する。
【0043】
図3中の符号で、10は印刷休止中に記録ヘッド本体100のノズルを封止することに
よりインクの乾燥を防止するとともに記録ヘッド本体100のノズル面に負圧を作用させ
てクリーニング動作をするキャップである。11は記録ヘッド本体100のノズル面をワ
イピングするワイパーブレードであり、12はクリーニング動作で吸引した廃インクを貯
留する廃インク貯留部である。
【0044】
なお、図示の記録ヘッド本体100には、インクカートリッジ2からインクを供給する
ための流路が形成された流路形成部材が備えられているが、インクカートリッジがキャリ
ッジ3とは別の場所に収容され、配管を介してインクが記録ヘッド本体100の流路形成
部材に圧送される構成のインクジェット式記録装置であっても勿論、本発明を適用するこ
とが可能である。
【0045】
本実施形態に係る記録装置Iでは記録ヘッド本体100によるインクの吐出時には、チ
ューブ91を介して記録ヘッド本体100のケース40の内部に空気が供給されるととも
に、チューブ92を介してケース40内の空気を吸引することでケース40内に気流が形
成されるので、インクの吐出により発生するミスト状のインクのケース40内への滞留を
有効に防止し得る。この結果、インクが有機溶剤を含む場合でも長期に亘り安定した所定
の動作を継続することができる。
【0046】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定される
ものではない。例えば、上記実施の形態における記録ヘッド本体100は圧電素子35の
縦振動によりインクを吐出させる方式のものを説明したが、これに限るものではない。薄
膜型の圧電素子の屈曲振動を利用したもの等、電気的な接続部や部材同士の接着層がイン
ク滴のミストに晒される可能性があるものであれば、制限なく適用できる。
【0047】
また、気流発生手段は、圧電素子35の接続部位でケース40の内部に気流を発生させ
ることができれば良いので、ケース40に流入口61、排出口62の二つを形成する必要
は必ずしもない。例えば開口部72を流入路又は流出路として利用することもできる。
【0048】
さらに、記録装置Iは記録ヘッド本体100がキャリッジとともに移動するシリアル式
のものとして説明したが、記録ヘッド本体は固定しておき記録媒体が移動するライン式の
ものにも勿論適用し得る。
【0049】
上述した実施形態では、液体噴射ヘッド及び液体噴射装置としてインクジェット式記録
ヘッド及びインクジェット式記録装置を挙げて説明したが、本発明は広く液体噴射ヘッド
及び液体噴射装置全般を対象としたものであり、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘ
ッド及びそれを具備する液体噴射装置にも勿論適用することができる。その他の液体噴射
ヘッドとしては、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、
液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELデ
ィスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘ
ッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられる。
【符号の説明】
【0050】
I インクジェット式記録装置、 10 流路形成基板、 11 圧力発生室、 12
インク供給路、 14 ノズル連通孔、 15 振動部材、 16 振動部、 17,
18 接着層、 20 ノズルプレート、 21 ノズル、 30 圧電素子ユニット、
34 圧電素子形成部材、 35 圧電素子、 36 固定基板、 40 ケース、
41 インク導入路、 43 圧電素子収容部、 50 フレキシブルプリント基板、
61 流入口、 62 排出口、 70 配線基板、 72 開口部、 80 ケース、
82 空気供給部、 83 空気排出部、 84 空気取入口、 85 空気排出口、
91,92 チューブ、 100 インクジェット式記録ヘッド本体(記録ヘッド本
体)、 200 気流発生手段、 300 インクジェット式記録ヘッド(記録ヘッド)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出させるノズルが形成されたノズルプレートと、
ノズルに連通しマニホールドから液体が供給される複数の圧力発生室と、
前記圧力発生室の一部を区画する封止板と、
前記封止板を介して前記圧力発生室に圧力変動を与える圧電素子と、
前記圧電素子に電気信号を供給するため異方性導電性接着剤で前記圧電素子に接続され
る配線部材と、
前記圧電素子及び配線部材を内部に収納するケースとを具備するヘッド本体と、
少なくとも前記圧電素子により前記圧力発生室に前記圧力変動が付与される間は、前記
圧電素子の前記配線部材が接続されている部位で前記ケースの内部に気流を発生させる気
流発生手段を備えたことを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載の液体噴射ヘッドにおいて、
前記ケースは前記気流発生手段から気体を流入させる流入口又は前記気流発生手段へ気
体を排出する排出口の少なくとも何れか一方が形成されており、前記気流発生手段は気体
の供給手段または排出手段の少なくとも何れか一方を備えていることを特徴とする液体噴
射ヘッド。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載する液体噴射ヘッドにおいて、
前記気流発生手段は、前記電気信号による前記圧電素子の駆動に基づき駆動が開始され
、前記電気信号による前記圧電素子の駆動の停止に基づき駆動が停止されるように構成し
たことを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか一項に記載する液体噴射ヘッドを有することを特徴とする
液体噴射装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−213974(P2012−213974A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81705(P2011−81705)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】