説明

液体噴射ヘッド及び液体噴射装置

【課題】フィルター4の上流側の第一室2と循環路6の間にバイパス路7を設け、液体に混入する気泡をこのバイパス路7を介して排出する。
【解決手段】液体噴射ヘッド1を、液体が供給される第一室2と、第一室2から流入した液体を通過させるフィルター4と、フィルター4を通過した液体を流入する第二室3と、第二室3から流入した液体を吐出する吐出部5と、第二室3から流入した液体を供給側に戻す循環路6と、第一室2から循環路6に液体をバイパスさせるバイパス路7とを備えるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから液体を吐出して被記録媒体に画像や文字、あるいは機能性薄膜を形成する液体噴射ヘッド、及びこれを用いた液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、記録紙等にインク滴を吐出して文字、図形を描画する、或いは素子基板の表面に液体材料を吐出して機能性薄膜を形成するインクジェット方式の液体噴射ヘッドが利用されている。この方式は、インクや液体材料(以下、総称して液体という。)を液体タンクから供給管を介して液体噴射ヘッドに供給し、チャンネルに充填した液体をチャンネルに連通するノズルから吐出させる。液体の吐出の際には、液体噴射ヘッドや噴射した液体を記録する被記録媒体を移動させて、文字や図形を記録する、或いは所定形状の機能性薄膜を形成する。
【0003】
例えば特許文献1にはこの種の液体噴射ヘッドが記載されている。図7は特許文献1に記載される印字ヘッド101の液体流路の概略を示す図である(特許文献1の図2)。印字ヘッド101の下部に、下方に液体を吐出する液体吐出ノズル201と、この液体吐出ノズル201に液体を供給するノズル液室202が設置されている。印字ヘッド101の上部右側に、ノズル液室202に液体を供給するOUT液室301と、OUT液室301にヘッドフィルタ203を介して液体を供給するIN液室204が設置されている。ヘッドフィルタ203は垂直もしくは傾きを持って設置される。液体はチューブ114からIN側ジョイント303を介してIN液室204の下部に流入し、一部はヘッドフィルタ203を通ってOUT液室301に流入し、他はIN液室204の上部からOUT側ジョイント304を介してチューブ115に流出する。
【0004】
即ち、液体はチューブ114、IN液室204及びチューブ115を経由して循環する構成となっている。そして、IN液室204に対しOUT側ジョイント304は上方に、IN側ジョイント303は下方に設置されている。これにより、液体循環クリーニング時に気泡の浮力を利用して気泡をOUT側ジョイント304側に除去することができ、液体循環クリーニングで使用される液体流量を従来と比較して格段に少なくすることができる、というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−351641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来例において、IN液室204とOUT液室301の間に液体に混入する塵埃を除去するためのヘッドフィルタ203が設けられている。しかし、印字ヘッド101を使用するに従い、ヘッドフィルタ203のIN液室204側に気泡が付着して蓄積し、ヘッドフィルタ203の実効面積が低下し、ノズル液室202に液体の供給不足が生ずる。また、IN液室204に蓄積した気泡がヘッドフィルタ203を通り抜けてノズル液室202に流れ出し、ノズルを詰まらせるトッド抜けなどの記録品質が低下する原因となる。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、フィルターの上流側に気泡が蓄積して記録品質が低下することを防止した液体噴射ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の液体噴射ヘッドは、液体が供給される第一室と、前記第一室の液体が通過するフィルターと、前記フィルターから液体を流入する第二室と、前記第二室から流入した液体を吐出する吐出部と、前記第二室から流入した液体を供給側に戻す循環路と、前記第一室から前記循環路に液体をバイパスさせるバイパス路と、を備えることとした。
【0009】
また、前記バイパス路は、前記第一室の内部領域のうち液体に混入する気泡が滞留する領域に開口することとした。
【0010】
また、前記バイパス路は、前記第一室の内部領域のうち重力の方向に対して最上位となる領域に開口することとした。
【0011】
また、前記バイパス路と前記循環路が合流する地点を合流点とし、前記バイパス路の流路抵抗は、前記フィルター、前記第二室及び前記循環路の前記合流点までの合計の流路抵抗よりも大きいこととした。
【0012】
また、前記バイパス路と前記循環路が合流する地点を合流点とし、前記バイパス路の流路抵抗は、前記フィルター、前記第二室及び前記循環路の前記合流点までの合計の流路抵抗よりも小さいこととした。
【0013】
また、前記第一室、前記フィルター、前記第二室、前記バイパス及び第一循環路を含むフィルターユニットと、第二循環路を備え、前記第二室から流入した液体を前記吐出部に供給するとともに前記第二循環路を介して前記第一循環路に導く流路部と、を備え、前記第一循環路と前記第二循環路により前記循環路が構成されることとした。
【0014】
また、前記フィルターユニットは、凹部が形成される基体と、前記凹部の開口端を塞ぐ閉塞部材を備え、前記閉塞部材により塞がれる前記凹部の内部に、前記第一室、前記フィルター及び前記第二室が積層して構成され、前記基体に前記第一循環路及び前記バイパス路が構成されることとした。
【0015】
また、前記フィルターユニット、前記流路部、及び、前記吐出部の順に接続され、前記基体は、前記基体の前記流路部の側とは反対側に前記第一室に液体を供給するための供給口と前記循環路から液体を供給側に戻すための排出口を備えることとした。
【0016】
また、前記第一室、前記フィルター、前記第二室、前記バイパス及び前記循環路を含むフィルターユニットを備えることとした。
【0017】
本発明の液体噴射装置は、上記いずれか一項に記載の液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドを往復移動させる移動機構と、前記液体噴射ヘッドに液体を供給する液体供給管と、前記液体供給管に前記液体を供給する液体タンクと、を備えることとした。
【発明の効果】
【0018】
本発明の液体噴射ヘッドは、液体が供給される第一室と、第一室の液体が通過するフィルターと、フィルターから液体を流入する第二室と、第二室から流入した液体を吐出する吐出部と、第二室から流入した液体を供給側に戻して循環させる循環路と、第一室から循環路に液体をバイパスさせるバイパス路と、を備える。その結果、フィルターを通過した液体が吐出部の直前を循環するので、吐出部に常に新鮮な液体を流すことができる。また、第一室にバイパス路を設けたことにより、第一室に進入した気泡を供給側に戻すことができる。これにより、使用するに従い第一室に気泡が蓄積し、この気泡の蓄積に伴う流路抵抗の増加、あるいは気泡のフィルター通り抜けを防止することができる。加えて、気泡がフィルターを通り抜けた場合でも循環路を介して供給側に除去されるので、ドット抜けなどの記録品質の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第一実施形態に係る液体噴射ヘッドの構造を表す概念図である。
【図2】循環路と液体供給室との間の連通態様を説明するための図である。
【図3】本発明の第二実施形態に係る液体噴射ヘッドの構造を表す概念図である。
【図4】本発明の第三実施形態に係る液体噴射ヘッドの説明図である。
【図5】本発明の第四実施形態に係る液体噴射ヘッドの模式的な正面図である。
【図6】本発明の第五実施形態に係る液体噴射装置の模式的な斜視図である。
【図7】従来から公知のインクジェットヘッドの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第一実施形態)
図1は本発明の第一実施形態に係る液体噴射ヘッド1の概念図であり、本発明の基本構成を示す。図2は循環路6と液体供給室20との間の連通態様を説明するための図である。液体噴射ヘッド1は、図示しない液体貯留部から液体が供給される第一室2と、第一室2から流入した液体を通過させるフィルター4と、フィルター4を通過した液体を流入する第二室3と、第二室3から流入した液体を吐出する吐出部5と、第二室3から流入した液体を図示しない液体貯留部に戻す循環路6と、第一室2から循環路6に液体をバイパスさせるバイパス路7と、を備える。
【0021】
即ち、液体は、図示しない液体貯留部から供給口15を介して第一室2に供給され、フィルター4を通過して第二室3に流れる。フィルター4は供給された液体に混入する塵埃や気泡を除去する。第二室3から流出した液体は、吐出部5と循環路6に流れる。吐出部5は流入した液体を図示しないノズルから被記録媒体に吐出する。循環路6に流入した液体は排出口16から排出され、図示しない液体貯留部に戻される。更に、第一室2に供給された液体の一部はバイパス路7から循環路6にバイパスされ、図示しない液体貯留部に戻される。
【0022】
このように、供給される液体の一部を供給側に戻して循環させることにより、液体が分離や分解して劣化することを防止することができる。特に、フィルター4を通過した液体が吐出部5の直前を循環するので、劣化の早い液体を使用する場合でも吐出部5に常に新鮮な液体を流すことができる。また、フィルター4の上流側である第一室2にバイパス路7を設けたことにより、第一室2に進入した気泡を供給側に戻して除去することができる。これにより、使用するに従い第一室2に気泡が蓄積し、この気泡の蓄積に伴ってフィルター4の実効面積が減少し、流路抵抗が増加して吐出特性が劣化するのを防止することができる。また、気泡の蓄積に伴って気泡がフィルター4を通り抜けてノズルを詰まらせ、ドット抜けが発生するのを防止することができる。加えて、気泡がフィルター4を通り抜けた場合でも通り抜けた気泡は循環路6を通して供給側に除去されるので、ドット抜けによる記録品質の低下を防止することができる。
【0023】
なお、吐出部5は、液体を吐出するためのノズルと、このノズルに連通する圧力室から構成される。ノズルは列状に配列し、従って圧力室も列状に配列する。液体供給室20は複数の圧力室に液体を供給できるように、長尺状に形成される。図2を用いて循環路6と液体供給室20との間の連通態様を説明する。図2(a)は循環路6と液体供給室20が平面的に連通する場合であり、図2(b)は循環路6と液体供給室20が局所的に連通する場合である。
【0024】
図2(a)に示す場合は、循環路6と液体供給室20が液体供給室20の一方端から他方端に亘って広い範囲で連通する。従って、第二室から流入した液体は、実線で示すように循環路6と破線で示すように液体供給室20との両方を流れる。そのため、液体供給室20は循環路6の一部とみなすことができる。図2(b)に示す場合は、循環路6と液体供給室20が連通口22を介して狭い範囲で連通し、液体供給室20に流入した液体は循環路6に戻ることがない。この場合、液体供給室20は循環路6の一部を構成しない。従って、本発明において、図2(a)に示す態様のように、液体供給室20と循環路6が広い範囲で連通し、液体供給室20と循環路6の間で液体の流入出が可能である場合は、液体供給室20は循環路6に含まれるものとする。
【0025】
また、バイパス路7は、第一室2の内部領域のうち液体に混入する気泡が滞留する領域に開口することが望ましい。例えば、図1において重力の方向に対して第一室2が上位、吐出部5が下位となるように液体噴射ヘッド1を設置すれば、第一室2の上辺近傍に気泡が溜まるので、上辺近傍に開口するバイパス路7からこれら溜まった気泡を容易に排出させることができる。
【0026】
また、バイパス路7と循環路6が合流する地点を合流点Pとして、バイパス路7の流路抵抗を、フィルター4、第二室3及び循環路6の合流点Pまでの合計の流路抵抗よりも大きくする。つまり、バイパス路7を流れる流量を絞って吐出部5と循環路6に流れる流量を多くする。これにより、吐出部5や循環路6の流路内に異物が沈殿し難くなるとともに異物が沈殿し或いは混入した場合でも除去されやすくなる。また、粘度の高い液体を使用する場合に、吐出部5に供給される液体の量や圧力を確保することができる。
【0027】
また、バイパス路7の流路抵抗を、フィルター4、第二室3及び循環路6の合流点Pまでの合計の流路抵抗よりも小さくする。つまり、バイパス路7を流れる流量を、循環路6を流れる流量よりも多くする。これにより、循環路6を流れる液体の流量が制限され、吐出部5から吐出する液体の吐出特性を安定化させることができる。また、分離速度の速い液体を使用する場合に有効である。バイパス路7を介して液体を多く循環させることにより、液体の分離を防ぎ、吐出部5に新鮮な液体を供給することができる。
【0028】
(第二実施形態)
図3は、本発明の第二実施形態に係る液体噴射ヘッド1の概念図である。第一実施形態と異なる部分は、第一室2の上辺が傾斜する点であり、その他の構成は第一実施形態と同様である。以下、第一実施形態と同一の部分については説明を省略する。
【0029】
図3に示すように、重力gの方向は上方の第一室2から下方の吐出部5に向かう。第一室2の上辺は重力gの方向に対して傾斜する。重力gの方向に対して最上位となる上辺と右辺の角部に気泡8が滞留する滞留領域Rが形成される。バイパス路7はこの滞留領域Rに開口し、滞留した気泡8が循環路6に排出される。これにより、第一室2に気泡8が蓄積してフィルター4の実効面積が減少し、流路抵抗が増加して吐出特性が劣化するのを防止することができる。また、第一室2に蓄積した気泡8がフィルター4を通り抜けて吐出部5に進入し、ノズルを詰まらせるドット抜けなどの記録品質の低下を防止することができる。その他の構成及び効果は第一実施形態と同様である。
【0030】
(第三実施形態)
図4は、本発明の第三実施形態に係る噴射ヘッド1の説明図である。図4(a)が液体噴射ヘッド1の模式的な正面図であり、図4(b)がフィルターユニット10の部分AAの縦断面模式図である。図4(a)は、理解を容易にするために凹部13を閉塞する閉塞部材14を除去した正面図である。同一の部分または同一の機能を有する部分には同一の符号を付した。
【0031】
図4に示すように、液体噴射ヘッド1は、フィルターユニット10、流路部11及び吐出部5の順に接続される。フィルターユニット10は、第一室2、フィルター4、第二室3、バイパス路7及び第一循環路6aを含む。フィルターユニット10の上端部には図示しない液体貯留部から液体が供給される第一接続部19aと液体を排出して供給側に戻す第二接続部19bが設置される。フィルターユニット10の下端部には第二室3から第二循環路6b及び吐出部5に液体を流出させる第三接続部19cと、第二循環路6bから第一循環路6aに液体を流入する第四接続部19dが設置される。
【0032】
流路部11は第二循環路6bを有し、第二室3から流入した液体を吐出部5と第二循環路6bに導く。流路部11と吐出部5の間は、図2(a)に示すように、循環路と液体供給室が平面的に広い範囲に亘って連通する。従って、すでに説明したように、吐出部5の各圧力室に連通する液体供給室を循環路の一部とみなし、第二循環路6bとして記載する。
【0033】
図4(b)に示すように、フィルターユニット10は、平面視で略四角形であり中央に凹部13が形成される扁平な基体12と、凹部13の開口端を塞ぐ閉塞部材14を備える。閉塞部材14により塞がれる凹部13の内部に、凹部13の底面の側から順に第二室3、フィルター4及び第一室2が積層して構成される。より具体的には、凹部13の側面に段部Sが形成され、この段部Sの上面(凹部13の底面と平行な面)にフィルター4が設置される。即ち、第一室2は閉塞部材14と凹部13の側面とフィルター4の一方の表面に囲まれる領域であり、第二室3は段部Sの側面(凹部13の側面と平行な面)とフィルター4の他方の表面と凹部13の底面に囲まれる領域である。
【0034】
第一室2の上辺は、液体噴射ヘッド1を液体噴射装置に設置したときに重力gの方向に対して右側が高く左側が低い。従って、第一室2の上辺と右辺の角部が滞留領域Rとなる。第一室2に液体を供給する供給口15は上辺の凹部13の側面に開口する。第一循環路6aは第一室2の右辺と基体12の右辺の間の表面に形成される。バイパス路7は基体12の上辺と右辺の角部に形成され、第一室2と第一循環路6aを連通する。バイパス路7は、第一室2の上辺と右辺の角部の滞留領域Rに開口する。第一循環路6aから液体を排出させるための排出口16は基体12の右辺側の上辺に設置される。
【0035】
第二室3から液体を流出させるための流出口17は第二室3の左辺と下辺の角部近傍の底面に開口する。流出口17は第三接続部19cを介して流路部11の第二循環路6bに連通する。流路部11から液体を流入するための流入口18が基体12の下辺の右辺側の側面に形成され、第四接続部19dを介して第二循環路6bと連通する。
【0036】
このように、扁平な基体12に凹部13を形成し、この凹部13に第一室2、フィルター4及び第二室3を積層して形成したので、フィルター4の面積を大きく形成でき、フィルター4の流路抵抗を低下させることができる。また、フィルターユニット10の厚さが薄いので、複数の液体噴射ヘッド1を並設するマルチノズル方式の液体噴射ヘッドを薄く構成することができる。また、フィルター4を通過した液体が吐出部5の直前で循環するので、吐出部5に常に新鮮な液体を供給することができる。また、第一室2の滞留領域Rに開口するバイパス路7を設けたことにより、第一室2に進入した気泡を供給側に戻して除去することができる。これにより、使用するに従い第一室2に気泡が蓄積し、この気泡の蓄積に伴う流路抵抗の増加により吐出特性が劣化することを防止することができる。また、気泡の蓄積に伴って気泡がフィルターを通り抜けてノズルを詰まらせ、ドット抜けが発生するのを防止することができる。加えて、気泡がフィルターを通り抜けた場合でも通り抜けた気泡は循環路6を通して供給側に除去されるので、ドット抜けによる記録品質の低下を防止することができる。
【0037】
なお、第一〜第四接続部19a〜19dの設置場所は図4に示すものに限定されないが、第一及び第二接続部19a、19bを基体12の上端部に、第三及び第四接続部19c、19dを基体12の下端部に集約的に設置することにより、給排液の配管周りをコンパクトに構成することができる。また、本実施形態では、凹部13の底面側から第二室3、フィルター4及び第一室2のように積層したが、これを第一室2、フィルター4及び第二室3のように積層しても本発明の効果を奏することができることは言うまでもない。
【0038】
また、バイパス路7の流路抵抗をフィルター4、第二室3、第一循環路6a及び第二循環路6bの合流点Pまでの合計の流路抵抗よりも大きくすることにより、吐出部5や循環路6の流路内に異物が沈殿し難くなるとともに異物が沈殿し或いは混入した場合でも除去され易くなる。また、バイパス路7の流路抵抗をフィルター4、第二室3、第一循環路6a及び第二循環路6bの合流点までの合計の流路抵抗よりも小さくすることにより、循環路6を流れる液体の流量が制限され、吐出部5から吐出する液体の吐出特性を安定化させることができる。
【0039】
また、粘度の高い液体を使用する場合は、バイパス路7の流路抵抗を、フィルター4、第二室3、第一循環路6a及び第二循環路6bの合流点Pまでの合計の流路抵抗よりも大きくする。これにより、吐出部5に供給される液体の量や圧力を確保することができる。また、分離速度の速い液体を使用する場合は、バイパス路7の流路抵抗を、フィルター4から第二循環路6bの合流点までの合計の流路抵抗よりも小さくする。これにより、液体の分離を防ぎ、吐出部5に新鮮な液体を供給することができる。
【0040】
(第四実施形態)
図5は、本発明の第四実施形態に係る液体噴射ヘッド1の説明図である。図5(a)が液体噴射ヘッド1の模式的な正面図であり、図5(b)がフィルターユニット10の部分BBの縦断面模式図である。第三実施形態の図4(a)と同様に、図5(a)は理解を容易にするために凹部13の開口端を塞ぐ閉塞部材14を除去した正面図である。第三実施形態と異なる部分は、循環路6をフィルターユニット10に形成した点である。
【0041】
図5に示すように、液体噴射ヘッド1はフィルターユニット10の下部に吐出部5が接続される。フィルターユニット10は、第一室2、フィルター4、第二室3、バイパス路7及び循環路6を備える。フィルターユニット10の上端部には、図示しない液体貯留部から液体が供給される第一接続部19aと供給側に液体を戻す第二接続部19bが設置される。
【0042】
フィルターユニット10は、第三実施形態と同様に、略四角形の扁平な基体12と図示しない閉塞部材14とを備える。基体12の中央部には凹部13が形成され、凹部13の底面側から順に第二室3、フィルター4及び第一室2が積層して構成される。フィルター4は凹部13の側面に形成した段部Sの上面に設置される。即ち、第一室2は図示しない閉塞部材14と凹部13の側面とフィルター4の一方の表面に囲まれる領域であり、第二室3は凹部13の底面と段部Sの側面とフィルター4の他方の表面に囲まれる領域である。
【0043】
第一室2の右辺及び下辺と基体12の右辺及び下辺の間の基体12の上面に溝状の循環路6が形成される。第一室2の上辺は重力gの方向に対して傾斜し、上辺と右辺の角部に滞留領域Rが形成される。バイパス路7は一方の端部が滞留領域Rに開口し、他方の端部が循環路6に開口し、第一室2と循環路6を連通する。バイパス路7は基体12の上辺と右辺の角部に設置される。
【0044】
第一室2の上辺の左辺側には供給口15を備え、図示しない液体貯留部から第一接続部19a及び供給口15を介して液体が供給される。第一室2の液体はフィルター4を介して第二室3に流入し、凹部13の底面に形成した流出口17から基体12の背面側を流れて、一部が流入口18から循環路6に流入し、他が第三接続部19cを介して吐出部5に流入する。循環路6に流入した液体は下辺から右辺に沿って流れ、基体12の右辺と左辺の角部に形成した排出口16から排出され、第二接続部19bを介して供給側に戻される。
【0045】
このように、フィルターユニット10に循環路6を形成したので、フィルターユニット10と吐出部5の間に循環路6を設置する必要がなく、部品点数が減少して製造コストを抑えることができる。その他の構成及び作用効果は第三実施形態と同様であり、説明を省略する。
【0046】
(第五実施形態)
図6は本発明の第五実施形態に係る液体噴射装置30の模式的な斜視図である。液体噴射装置30は、液体噴射ヘッド1、1’を往復移動させる移動機構40と、液体噴射ヘッド1、1’に液体を供給する供給チューブ35、35’と、液体噴射ヘッド1、1’から液体を回収する回収チューブ45、45’と、供給チューブ35、35’に液体を圧送する液体ポンプ33、33’と液体タンク34、34’を備えている。各液体噴射ヘッド1、1’は複数の吐出溝を備え、各吐出溝に連通するノズルから液滴を吐出する。液体噴射ヘッド1、1’は既に説明した第一〜第五実施形態のいずれかを使用する。
【0047】
液体噴射装置30は、紙等の被記録媒体44を主走査方向に搬送する一対の搬送手段41、42と、被記録媒体44に液体を吐出する液体噴射ヘッド1、1’と、液体噴射ヘッド1、1’を載置するキャリッジユニット43と、液体タンク34、34’に貯留した液体を供給チューブ35、35’に押圧して供給する液体ポンプ33、33’と、液体噴射ヘッド1、1’を主走査方向と直交する副走査方向に走査する移動機構40を備えている。図示しない制御部は液体噴射ヘッド1、1’、移動機構40、搬送手段41、42を制御して駆動する。
【0048】
一対の搬送手段41、42は副走査方向に延び、ローラ面を接触しながら回転するグリッドローラとピンチローラを備えている。図示しないモータによりグリッドローラとピンチローラを軸周りに移転させてローラ間に挟み込んだ被記録媒体44を主走査方向に搬送する。移動機構40は、副走査方向に延びた一対のガイドレール36、37と、一対のガイドレール36、37に沿って摺動可能なキャリッジユニット43と、キャリッジユニット43を連結し副走査方向に移動させる無端ベルト38と、この無端ベルト38を図示しないプーリを介して周回させるモータ39を備えている。
【0049】
キャリッジユニット43は、複数の液体噴射ヘッド1、1’を載置し、例えばイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4種類の液滴を吐出する。液体タンク34、34’は対応する色の液体を貯留し、液体ポンプ33、33’、供給チューブ35、35’を介して液体噴射ヘッド1、1’に供給し、回収チューブ45、45’を介して液体を液体タンク34、34’に回収する。各液体噴射ヘッド1、1’は駆動信号に応じて各色の液滴を吐出する。液体噴射ヘッド1、1’から液体を吐出させるタイミング、キャリッジユニット43を駆動するモータ39の回転及び被記録媒体44の搬送速度を制御することにより、被記録媒体44上に任意のパターンを記録することできる。
【0050】
本発明による液体噴射装置30は、液体噴射ヘッド1に供給される液体の一部を供給側に戻して循環させるので、液体が分解又は分離して劣化することを防止することができる。また、フィルターの上流側である第一室にバイパス路を設けたことにより、液体に混入する気泡をバイパス路から排出できるので、第一室に気泡が蓄積してフィルターの実効面積が減少し、流路抵抗が増大して吐出特性が劣化することを防止することができる液体噴射装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 液体噴射ヘッド
2 第一室
3 第二室
4 フィルター
5 吐出部
6 循環路、6a 第一循環路、6b 第二循環路
7 バイパス路
8 気泡
10 フィルターユニット
11 流路部
12 基体
13 凹部
14 閉塞部材
15 供給口
16 排出口
17 流出口
18 流入口
20 液体供給室
R 滞留領域
P 合流点
30 液体噴射装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が供給される第一室と、
前記第一室の液体が通過するフィルターと、
前記フィルターから液体を流入する第二室と、
前記第二室から流入した液体を吐出する吐出部と、
前記第二室から流入した液体を供給側に戻す循環路と、
前記第一室から前記循環路に液体をバイパスさせるバイパス路と、を備える液体噴射ヘッド。
【請求項2】
前記バイパス路は、前記第一室の内部領域のうち液体に混入する気泡が滞留する領域に開口する請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項3】
前記バイパス路は、前記第一室の内部領域のうち重力の方向に対して最上位となる領域に開口する請求項1又は2に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項4】
前記バイパス路と前記循環路が合流する地点を合流点とし、
前記バイパス路の流路抵抗は、前記フィルター、前記第二室及び前記循環路の前記合流点までの合計の流路抵抗よりも大きい請求項1〜3のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項5】
前記バイパス路と前記循環路が合流する地点を合流点とし、
前記バイパス路の流路抵抗は、前記フィルター、前記第二室及び前記循環路の前記合流点までの合計の流路抵抗よりも小さい請求項1〜3のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項6】
前記第一室、前記フィルター、前記第二室、前記バイパス及び第一循環路を含むフィルターユニットと、
第二循環路を備え、前記第二室から流入した液体を前記吐出部に供給するとともに前記第二循環路を介して前記第一循環路に導く流路部と、を備え、
前記第一循環路と前記第二循環路により前記循環路が構成される請求項1〜5のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項7】
前記フィルターユニットは、凹部が形成される基体と、前記凹部の開口端を塞ぐ閉塞部材を備え、
前記閉塞部材により塞がれる前記凹部の内部に、前記第一室、前記フィルター及び前記第二室が積層して構成され、
前記基体に前記第一循環路及び前記バイパス路が構成される請求項6に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項8】
前記フィルターユニット、前記流路部、及び、前記吐出部の順に接続され、
前記基体は、前記基体の前記流路部の側とは反対側に前記第一室に液体を供給するための供給口と前記循環路から液体を供給側に戻すための排出口を備える請求項7に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項9】
前記第一室、前記フィルター、前記第二室、前記バイパス及び前記循環路を含むフィルターユニットを備える請求項1〜5のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドを往復移動させる移動機構と、
前記液体噴射ヘッドに液体を供給する液体供給管と、
前記液体供給管に前記液体を供給する液体タンクと、を備える液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−67111(P2013−67111A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208175(P2011−208175)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(501167725)エスアイアイ・プリンテック株式会社 (198)
【Fターム(参考)】