液体噴射装置及び液体噴射型印刷装置
【課題】メモリ自体や制御装置の小型化が可能な液体噴射装置及び液体噴射型印刷装置を提供する。
【解決手段】駆動波形信号WCOMをパルス変調し、その変調信号PWMをデジタル電力増幅器28で電力増幅し、その電力増幅変調信号APWMを平滑化して駆動信号COM(駆動パルスPCOM)とすると共に、駆動するアクチュエータ22の数に応じて、駆動波形信号WCOMを補正するための逆フィルタ23の周波数特性を制御するにあたり、2bitで構成される駆動パルス選択特定データSIを、アクチュエータ22毎に連続して送信し、各アクチュエータ22の2bitの駆動パルス選択特定データSIを受信する毎に、駆動するアクチュエータ22の数をカウントすることにより、駆動パルス選択特定データSIを記憶するレジスタ27は1bitの容量でよい。
【解決手段】駆動波形信号WCOMをパルス変調し、その変調信号PWMをデジタル電力増幅器28で電力増幅し、その電力増幅変調信号APWMを平滑化して駆動信号COM(駆動パルスPCOM)とすると共に、駆動するアクチュエータ22の数に応じて、駆動波形信号WCOMを補正するための逆フィルタ23の周波数特性を制御するにあたり、2bitで構成される駆動パルス選択特定データSIを、アクチュエータ22毎に連続して送信し、各アクチュエータ22の2bitの駆動パルス選択特定データSIを受信する毎に、駆動するアクチュエータ22の数をカウントすることにより、駆動パルス選択特定データSIを記憶するレジスタ27は1bitの容量でよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータに駆動信号を印加して液体を噴射する液体噴射装置に関し、例えば微小な液体を液体噴射ヘッドのノズルから噴射して、微粒子(ドット)を印刷媒体上に形成することにより、所定の文字や画像等を印刷するようにした液体噴射型印刷装置に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
液体噴射型印刷装置では、液体噴射ヘッドのノズルから液体を噴射するために、圧電素子などのアクチュエータが設けられ、このアクチュエータに所定の駆動信号を印加しなければならない。この駆動信号は、比較的電圧の高いものなので、駆動信号の基準となる駆動波形信号を電力増幅器で電力増幅しなければならない。そこで、下記特許文献1では、アナログ電力増幅器に比べて、電力損失が極めて小さく、小型化が可能なデジタル電力増幅器を用い、駆動波形信号を変調回路でパルス変調して変調信号とし、その変調信号をデジタル電力増幅器で電力増幅して電力増幅変調信号とし、その電力増幅変調信号を平滑フィルタで平滑化して、駆動信号としている。
【0003】
一方、アクチュエータが圧電素子などの容量性負荷の場合、平滑フィルタ及びアクチュエータで構成されるフィルタの静電容量が、駆動されるアクチュエータの数によって変化してしまい、フィルタの静電容量が変化すると周波数特性が変化し、駆動信号の波形が変化してしまう。そこで、下記特許文献2では、駆動波形信号出力回路の後段に逆フィルタを設け、この逆フィルタによって、平滑フィルタ及びアクチュエータで構成されるフィルタの周波数特性が変化しないように、駆動するアクチュエータの数に応じて当該逆フィルタの周波数特性を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−168172号公報
【特許文献2】国際公開WO2007/083669
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献2に記載される液体噴射装置では、例えば駆動するアクチュエータを特定する特定データが複数bitで構成される場合、特定データの送受信方法や駆動するアクチュエータの数のカウント方法によっては、その特定データを記憶するレジスタの容量が大きくなってしまい、メモリ自体や制御装置の小型化に支障を来す恐れがある。
例えば、駆動するアクチュエータを特定する特定データが2bitで構成される場合を例に挙げる。従来は駆動パルス選択特定データの記憶にシフトレジスタを使用していた関係もあり、アクチュエータ数分の1bit目の駆動パルス選択特定データを連続して送信した後、アクチュエータ数分の2bit目の駆動パルス選択特定データを連続して送信していた。
【0006】
そのため、駆動するアクチュエータ数をカウントする場合、まず全てのアクチュエータ番号の1bit目の駆動パルス選択特定データを記憶しておき、アクチュエータ番号1の2bit目の駆動パルス選択特定データを受信すると、その時点で初めてアクチュエータ番号1に選択された駆動パルスの特定が可能となった。
従って、従来の駆動アクチュエータ数のカウント方法(前提として駆動パルス選択特定データSIの送信方法にも関係する)では、全てのアクチュエータ番号nの1bit目の駆動パルス選択特定データを記憶するために、nbitの容量のレジスタが必要となり、メモリ自体や制御装置の小型化に支障を来していた。
本発明は、これらの諸問題に着目して開発されたものであり、メモリ自体や制御装置の小型化が可能な液体噴射装置及び液体噴射型印刷装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記諸問題を解決するため、本発明の液体噴射装置は、駆動信号の基準となる駆動波形信号を発生する駆動波形信号発生回路と、前記駆動波形信号をパルス変調して変調信号とする変調回路と、前記変調信号を電力増幅して電力増幅変調信号とするデジタル電力増幅器と、前記電力増幅変調信号を平滑化してアクチュエータの駆動信号とする平滑フィルタと、前記駆動波形信号発生回路の後段に設けられ且つ少なくとも前記平滑フィルタ及び前記アクチュエータの静電容量で構成されるフィルタの周波数特性を、駆動するアクチュエータの数に関わらず、所定の周波数特性にする逆フィルタと、前記駆動するアクチュエータの数に応じて前記逆フィルタの周波数特性を制御する逆フィルタ制御部とを備え、前記駆動するアクチュエータを特定するmbitの特定データをアクチュエータ毎に連続して送信し、前記逆フィルタ制御部は、前記駆動するアクチュエータを特定するmbitの特定データを記憶する(m−1)bitのレジスタを有し、各アクチュエータを特定するmbitの特定データを受信する毎に、駆動するアクチュエータの数をカウントすることを特徴とするものである。
【0008】
この液体噴射装置によれば、アクチュエータ毎に連続してmbitの特定データを送信し、各アクチュエータのmbitの特定データを受信する毎に、駆動するアクチュエータの数をカウントすることとしたため、駆動するアクチュエータの特定データを記憶するレジスタは(m−1)bitの容量でよく、その結果、メモリ自体や制御装置の小型化が可能となる。
【0009】
また、前記アクチュエータを単独で駆動することが可能な駆動パルスを時系列的に連続して前記駆動信号が構成される場合に、前記逆フィルタ制御部は、前記駆動するアクチュエータの数を個々の駆動パルス毎にカウントすることを特徴とするものである。
この液体噴射装置によれば、駆動パルスを時系列的に連続して駆動信号が構成される場合にあっても、駆動するアクチュエータの数を個々の駆動パルス毎にカウントすることにより、各アクチュエータのNbitの特定データを受信する毎に、駆動するアクチュエータの数をカウントすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の液体噴射装置を用いた液体噴射型印刷装置の一実施形態を示す概略構成正面図である。
【図2】図1の液体噴射型印刷装置に用いられる液体噴射ヘッド近傍の平面図である。
【図3】図1の液体噴射型印刷装置の制御装置のブロック図である。
【図4】各液体噴射ヘッド内のアクチュエータを駆動する駆動信号の説明図である。
【図5】スイッチングコントローラのブロック図である。
【図6】アクチュエータの駆動回路の一例を示すブロック図である。
【図7】図6の変調回路のブロック図である。
【図8】図6のデジタル電力増幅器のブロック図である。
【図9】図6の平滑フィルタのブロック図である。
【図10】図6の逆フィルタのブロック図である。
【図11】図6の駆動回路で駆動するアクチュエータを特定するための駆動パルス選択データの説明図である
【図12】図6の逆フィルタ制御部で行われる演算処理のフローチャートである。
【図13】図12の演算処理による駆動アクチュエータ数カウントの説明図である。
【図14】駆動するアクチュエータを特定するための従来の駆動パルス選択データの説明図である。
【図15】図14の駆動パルス選択データによる駆動アクチュエータ数カウントの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の液体噴射装置の一実施形態として、液体噴射型印刷装置に用いられたものについて説明する。
図1は、本実施形態の液体噴射型印刷装置の概略構成図であり、図1において、印刷媒体1は、図の左から右に向けて矢印方向に搬送され、その搬送途中の印刷領域で印刷される、ラインヘッド型印刷装置である。
【0012】
図1中の符号2は、印刷媒体1の搬送ライン上方に設けられた複数の液体噴射ヘッドであり、印刷媒体搬送方向に2列になるように且つ印刷媒体搬送方向と交差する方向に並べて配設されて、夫々、ヘッド固定プレート11に固定されている。各液体噴射ヘッド2の最下面には、多数のノズルが形成されており、この面がノズル面と呼ばれている。ノズルは、図2に示すように、噴射する液体の色毎に、印刷媒体搬送方向と交差する方向に列状に配設されており、その列をノズル列と呼んだり、その列方向をノズル列方向と呼んだりする。そして、印刷媒体搬送方向と交差する方向に配設された全ての液体噴射ヘッド2のノズル列によって、印刷媒体1の搬送方向と交差する方向の幅全長に及ぶラインヘッドが形成されている。印刷媒体1は、これらの液体噴射ヘッド2のノズル面の下方を通過するときに、ノズル面に形成されている多数のノズルから液体が噴射され、印刷が行われる。
【0013】
液体噴射ヘッド2には、例えばイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のインクなどの液体が、図示しない液体タンクから液体供給チューブを介して供給される。そして、液体噴射ヘッド2に形成されているノズルから同時に必要箇所に必要量の液体を噴射することにより、印刷媒体1上に微小なドットを形成する。これを各色毎に行うことにより、搬送部4で搬送される印刷媒体1を一度通過させるだけで、1パスによる印刷を行うことができる。
【0014】
液体噴射ヘッド2のノズルから液体を噴射する方法としては、静電方式、ピエゾ方式、膜沸騰液体噴射方式などがあり、本実施形態ではピエゾ方式を用いた。ピエゾ方式は、アクチュエータである圧電素子に駆動信号を与えると、キャビティ内の振動板が変位してキャビティ内に圧力変化を生じ、その圧力変化によって液体がノズルから噴射されるというものである。そして、駆動信号の波高値や電圧増減傾きを調整することで液体の噴射量を調整することが可能となる。なお、本発明は、ピエゾ方式以外の液体噴射方法にも、同様に適用可能である。
【0015】
液体噴射ヘッド2の下方には、印刷媒体1を搬送方向に搬送するための搬送部4が設けられている。搬送部4は、駆動ローラ8及び従動ローラ9に搬送ベルト6を巻回して構成され、駆動ローラ8には図示しない電動モータが接続されている。また、搬送ベルト6の内側には、当該搬送ベルト6の表面に印刷媒体1を吸着するための図示しない吸着装置が設けられている。この吸着装置には、例えば負圧によって印刷媒体1を搬送ベルト6に吸着する空気吸引装置や、静電気力で印刷媒体1を搬送ベルト6に吸着する静電吸着装置などが用いられる。従って、給紙ローラ5によって給紙部3から印刷媒体1を一枚だけ搬送ベルト6上に送給し、電動モータによって駆動ローラ8を回転駆動すると、搬送ベルト6が印刷媒体搬送方向に回転され、吸着装置によって搬送ベルト6に印刷媒体1が吸着されて搬送される。この印刷媒体1の搬送中に、液体噴射ヘッド2から液体を噴射して印刷を行う。印刷の終了した印刷媒体1は、搬送方向下流側の排紙部10に排紙される。なお、前記搬送ベルト6には、例えばリニアエンコーダなどで構成される印刷基準信号出力装置が取付けられている。この印刷基準信号出力装置は、搬送ベルト6とそれに吸着されて搬送される印刷媒体1とが同期して移動されることに着目し、印刷媒体1が搬送経路中の所定位置を通過した後は、搬送ベルト6の移動に伴って要求される印刷解像度相当のパルス信号を出力し、このパルス信号に応じて、後述する駆動回路から駆動信号をアクチュエータ22に出力することで印刷媒体1上の所定位置に所定の色の液体を噴射し、そのドットによって印刷媒体1上に所定の画像を描画する。
【0016】
本実施形態の液体噴射装置を用いた液体噴射型印刷装置内には、液体噴射型印刷装置を制御するための制御装置が設けられている。この制御装置は、図3に示すように、ホストコンピュータ60から入力された印刷データ読込むための入力インタフェース61と、この入力インタフェース61から入力された印刷データに基づいて印刷処理等の演算処理を実行するマイクロコンピュータで構成される制御部62と、前記給紙ローラ5に接続されている給紙ローラモータ17を駆動制御する給紙ローラモータドライバ63と、液体噴射ヘッド2を駆動制御するヘッドドライバ65と、前記駆動ローラ8に接続されている電動モータ7を駆動制御する電動モータドライバ66と、給紙ローラモータドライバ63、ヘッドドライバ65、電動モータドライバ66と給紙ローラモータ17、液体噴射ヘッド2、電動モータ7とを接続するインタフェース67とを備えて構成される。
【0017】
制御部62は、印刷処理等の各種処理を実行するCPU(Central Processing Unit)62aと、入力インタフェース61を介して入力された印刷データ或いは当該印刷データ印刷処理等を実行する際の各種データを一時的に格納し、或いは印刷処理等のプログラムを一時的に展開するRAM(Random Access Memory)62cと、CPU62aで実行する制御プログラム等を格納する不揮発性半導体メモリで構成されるROM(Read-Only Memory)62dを備えている。この制御部62は、入力インタフェース61を介してホストコンピュータ60から印刷データ(画像データ)を入手すると、CPU62aが、この印刷データに所定の処理を実行して、何れのノズルから液体を噴射するか或いはどの程度の液体を噴射するかというノズル選択データ(駆動パルス選択データ)を算出し、この印刷データや駆動パルス選択データ及び各種センサからの入力データに基づいて、給紙ローラモータドライバ63、ヘッドドライバ65、電動モータドライバ66に駆動信号及び制御信号を出力する。これらの駆動信号及び制御信号により、給紙ローラモータ17、電動モータ7、液体噴射ヘッド2内のアクチュエータ22などが夫々作動して、印刷媒体1の給紙及び搬送及び排紙、並びに印刷媒体1への印刷処理が実行される。なお、制御部62内の各構成要素は、図示しないバスを介して電気的に接続されている。
【0018】
図4には、本実施形態の液体噴射装置を用いた液体噴射型印刷装置の制御装置から液体噴射ヘッド2に供給され、圧電素子からなるアクチュエータ22を駆動するための駆動信号COMの一例を示す。本実施形態では、中間電圧を中心に電圧が変化する信号とした。この駆動信号COMは、アクチュエータ22を駆動して液体を噴射する単位駆動信号としての駆動パルスPCOMを時系列的に接続したものであり、駆動パルスPCOMの立上がり部分がノズルに連通するキャビティ(圧力室)の容積を拡大して液体を引込む(液体の噴射面を考えればメニスカスを引き込むとも言える)段階であり、駆動パルスPCOMの立下がり部分がキャビティの容積を縮小して液体を押出す(液体の噴射面を考えればメニスカスを押出すとも言える)段階であり、液体を押出した結果、液体がノズルから噴射される。
【0019】
この電圧台形波からなる駆動パルスPCOMの電圧増減傾きや波高値を種々に変更することにより、液体の引込量や引込速度、液体の押出量や押出速度を変化させることができ、これにより液体の噴射量を変化させて異なる大きさのドットを得ることができる。従って、複数の駆動パルスPCOMを時系列的に連結する場合でも、そのうちから単独の駆動パルスPCOMを選択してアクチュエータ22に供給し、液体を噴射したり、複数の駆動パルスPCOMを選択してアクチュエータ22に供給し、液体を複数回噴射したりすることで種々の大きさのドットを得ることができる。即ち、液体が乾かないうちに複数の液体を同じ位置に着弾すると、実質的に大きな液体を噴射するのと同じことになり、ドットの大きさを大きくすることができるのである。このような技術の組合せによって多階調化を図ることが可能となる。なお、図4の左端の駆動パルスPCOM1は、液体を引込むだけで押出していない。これは、微振動と呼ばれ、液体を噴射せずに、ノズルの増粘を抑制防止したりするのに用いられる。
【0020】
液体噴射ヘッド2には、前記駆動信号COMの他、前記図3の制御装置から制御信号として、印刷データに基づいて駆動パルスPCOMのうちどの駆動パルスPCOMを選択するかを示す駆動パルス選択特定データSIと、全ノズルにノズル選択データが入力された後に、駆動パルス選択特定データSIに基づいて駆動信号COMと液体噴射ヘッド2のアクチュエータ22とを接続させるラッチ信号LAT及びチャンネル信号CHと、駆動パルス選択特定データSIをシリアル信号として液体噴射ヘッド2に送信するためのクロック信号SCKとが入力されている。なお、これ以後、アクチュエータ22を駆動する駆動信号の最小単位を駆動パルスPCOMとし、駆動パルスPCOMが時系列的に連結された信号全体を駆動信号COMと記す。即ち、ラッチ信号LATで一連の駆動信号COMが出力され始め、チャンネル信号CH毎に駆動パルスPCOMが出力されることになる。また、駆動パルス選択特定データSIは、前述した駆動パルスPCOMのうち、どの駆動パルスPCOMを選択するかを示す2bitのデータであり、駆動パルス選択特定データSIによって選択され特定される駆動パルスPCOMの数をカウントすれば、駆動するアクチュエータ22の数をカウントすることができる。
【0021】
図5には、駆動信号COM(駆動パルスPCOM)をアクチュエータ22に供給するために液体噴射ヘッド2内に構築されたスイッチングコントローラの具体的な構成を示す。このスイッチングコントローラは、液体を噴射させるノズルに対応した圧電素子などのアクチュエータ22を指定するための駆動パルス選択特定データSIを保存するレジスタ211と、レジスタ211のデータを一時的に保存するラッチ回路212と、ラッチ回路212の出力をレベル変換して選択スイッチ201に供給することにより、駆動信号COM(駆動パルスPCOM)をピエゾ素子などのアクチュエータ22に接続するレベルシフタ213とを備えて構成されている。
【0022】
レジスタ211には、クロック信号SCKの入力パルスに応じて駆動パルス選択特定データ信号SIが入力される。ラッチ回路212は、入力されるラッチ信号LATによってレジスタ211の各出力信号をラッチする。ラッチ回路212に保存された信号は、レベルシフタ213によって次段の選択スイッチ201をオンオフできる電圧レベルに変換される。これは、駆動信号COM(駆動パルスPCOM)が、ラッチ回路212の出力電圧に比べて高い電圧であり、これに合わせて選択スイッチ201の動作電圧範囲も高く設定されているためである。従って、レベルシフタ213によって選択スイッチ201が閉じられる(スイッチ201がオン状態の)圧電素子などのアクチュエータ22は、駆動パルス選択特定データSIに基づき所定の接続タイミングで駆動信号COM(駆動パルスPCOM)に接続される。また、レジスタ211の駆動パルス選択特定データSIがラッチ回路212に保存された後、次の印刷情報をレジスタ211に入力し、液体の噴射タイミングに合わせてラッチ回路212の保存データを順次更新する。なお、図中の符号HGNDは、圧電素子などのアクチュエータ22のグランド端である。また、この選択スイッチ201により、圧電素子などのアクチュエータ22を駆動信号COM(駆動パルスPCOM)から切り離した後(選択スイッチ201がオフ)も、当該アクチュエータ22の入力電圧は、切り離す直前の電圧に維持される。すなわち、前記圧電素子などのアクチュエータ22は、容量性負荷である。
【0023】
図6には、アクチュエータ22の駆動回路の概略構成を示す。このアクチュエータ駆動回路は、前記制御回路内の制御部62及びヘッドドライバ65内に構築されている。本実施形態の駆動回路は、予め記憶されている駆動波形データDWCOMに基づいて、駆動信号COM(駆動パルスPCOM)の元、つまりアクチュエータ22の駆動を制御する信号の基準となる駆動波形信号WCOMを生成する駆動波形信号発生回路25と、駆動波形信号発生回路25で生成された駆動波形信号WCOMをパルス変調する変調回路26と、変調回路26でパルス変調された変調信号PWMを電力増幅するデジタル電力増幅器28と、デジタル電力増幅器28で電力増幅された電力増幅変調信号APWMを平滑化して、駆動信号COMとして出力する平滑フィルタ29と、駆動信号発生回路70と変調回路24との間に介装された逆フィルタ23と、逆フィルタ23の周波数特性を制御する逆フィルタ制御部24とを備えて構成される。駆動波形信号発生回路25は、CPU62aから出力された駆動波形データDWCOMを電圧信号に変換して所定サンプリング周期分ホールド出力する。
【0024】
駆動波形信号WCOMをパルス変調する変調回路26には、図7に示すように、周知のパルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)回路を用いた。パルス幅変調は、所定周波数の三角波信号を出力する三角波発振器34と、三角波信号と駆動波形信号WCOMを比較し、例えば駆動波形信号WCOMが三角波信号より大きいときにオンデューティとなるパルスデューティの変調信号PWMを出力する比較部35とを備えて構成される。なお、変調回路26には、この他にパルス密度変調(PDM)回路などの周知のパルス変調回路を用いることができる。また、何れの場合も、プログラムによる演算処理によって変調回路26を構成することができる。
【0025】
デジタル電力増幅器28は、図8に示すように、実質的に電力を増幅するためのハイサイド側スイッチング素子Q1及びローサイド側スイッチング素子Q2からなるハーフブリッジ出力段21と、変調回路26からの変調信号PWMに基づいて、ハイサイド側スイッチング素子Q1、ローサイド側スイッチング素子Q2のゲート−ソース間信号GH、GLを調整するためのゲートドライブ回路30とを備えて構成されている。デジタル電力増幅器28では、変調信号がハイレベルであるとき、ハイサイド側スイッチング素子Q1のゲート−ソース間信号GHはハイレベルとなり、ローサイド側スイッチング素子Q2のゲート−ソース間信号GLはローレベルとなるので、ハイサイド側スイッチング素子Q1はオン状態となり、ローサイド側スイッチング素子Q2はオフ状態となり、その結果、ハーフブリッジ出力段21の出力電圧Vaは、供給電圧VDDとなる。一方、変調信号がローレベルであるとき、ハイサイド側スイッチング素子Q1のゲート−ソース間信号GHはローレベルとなり、ローサイド側スイッチング素子Q2のゲート−ソース間信号GLはハイレベルとなるので、ハイサイド側スイッチング素子Q1はオフ状態となり、ローサイド側スイッチング素子Q2はオン状態となり、その結果、ハーフブリッジ出力段21の出力電圧Vaは0となる。
【0026】
このようにハイサイド側スイッチング素子Q1及びローサイド側スイッチング素子Q2がデジタル駆動される場合には、オン状態のスイッチング素子に電流が流れるが、ドレイン−ソース間の抵抗値は非常に小さく、損失は殆ど発生しない。また、オフ状態のスイッチング素子には電流が流れないので損失は発生しない。従って、このデジタル電力増幅器28の損失そのものは極めて小さく、小型のMOSFET等のスイッチング素子を使用することができる。
平滑フィルタ29には、図9に示すように、1つの抵抗Rと1つのコンデンサCと1つのコイルLからなる2次のフィルタを用いた。この平滑フィルタ29によって、前記変調回路26で生じた変調周波数、即ちパルス変調の周波数成分を減衰して除去し、駆動信号COMを出力する。
【0027】
次に、図6の駆動信号出力回路に設けられた逆フィルタ23について説明する。前述したように平滑フィルタ29は電力増幅変調信号APWMのキャリア信号成分を十分減衰し、且つ駆動信号COMを減衰しないように設計されるが、アクチュエータ22には静電容量Cnがあるため駆動するアクチュエータ数が変化すると、平滑フィルタ29及びアクチュエータ22の静電容量Cnで構成されるフィルタの周波数特性が変化する。このようにフィルタの周波数特性が変化すると、アクチュエータ22の印加される駆動信号COM(駆動パルスPCOM)の波形が変化し、ノズルからの液体噴射特性も変化してしまう。
【0028】
そこで、本実施形態では、前述した図6に示すように駆動波形信号発生回路25の後段に逆フィルタ23を介装する。本実施形態では、図10に示すように、高域強調型のフィルタと1次の低域通過型或いは高域減衰型のフィルタとを並列に配設して逆フィルタ23を構成し、出力回路のゲインが減少する場合、駆動するアクチュエータ数が所定値より多い場合には高域強調型のフィルタを、出力回路のゲインが増加する場合、即ち駆動するアクチュエータ数が所定値より少ない場合には低域通過型又は高域減衰型のフィルタを、夫々スイッチで選択する。このようにすれば、駆動波形信号WCOM成分の中で、平滑フィルタ29及びアクチュエータ22の静電容量Cnで構成されるフィルタによる変化成分を適切に強調したり減衰したりすることができ、これにより実際にアクチュエータ22に印加される駆動信号COM(駆動パルスPCOM)の波形の変化を抑制防止することが可能となる。
【0029】
また、駆動するアクチュエータ数に応じて逆フィルタ23の周波数特性を設定することにより、駆動するアクチュエータ数に応じて異なる変化成分を正確に強調したり減衰したりすることができ、これにより実際にアクチュエータ22に印加される駆動信号COM(駆動パルスPCOM)の波形変化をより一層抑制防止することが可能となる。逆フィルタ23の周波数特性の設定は、高域強調型のフィルタ(1次ハイパスフィルタ)の時定数Tや、低域通過型又は高域減衰型のフィルタ(1次ローパスフィルタ)の時定数Tを調整することで行うことができる。なお、それら時定数Tの設定方法については、前述した特許文献1を参考にされたい。
【0030】
前記逆フィルタ23のスイッチの切換えや時定数Tの調整を逆フィルタ制御部24で行う。逆フィルタ制御部24は、前記図3の制御部62内で実行されるプログラムによって構築される。また、この逆フィルタ制御部24は、駆動パルス選択特定データSIの2bit(mbit)に対し、1bit((m−1)bit)のレジスタ27を備えている。
駆動するアクチュエータ22の数は、前記駆動パルス選択特定データSIによってカウントすることができる。駆動パルス選択特定データSIは、前述したように2bitのデータで構成され、各アクチュエータ22に対し、“00”ならば第1駆動パルス(微振動)PCOM1を、“01”ならば第2駆動パルスPCOM2を、“10”ならば第3駆動パルスPCOM3を、“11”ならば第4駆動パルスPCOM4を選択して特定する。
【0031】
この駆動パルス選択特定データSIの2bitのデータのうち、前側のデータをハイサイド駆動パルス選択特定データSIH(n)、後側のデータをローサイド駆動パルス選択特定データSIL(n)とし、nにはアクチュエータ22の番号(以下、アクチュエータ番号と記す)を付与する。そして、本実施形態では、図11に示すように、アクチュエータ番号1のハイサイド駆動パルス選択特定データSIH(1)をクロック信号SCKの立上がりで送信し、アクチュエータ番号1のローサイド駆動パルス選択特定データSIL(1)を同じクロック信号SCKの立下がりで送信し、アクチュエータ番号2のハイサイド駆動パル選択特定データSIH(2)を次のクロック信号SCKの立上がりで送信し、アクチュエータ番号2のローサイド駆動パルス選択特定データSIL(2)を同じクロック信号SCKの立下がりで送信するといったように、アクチュエータ22毎に連続して2bitの駆動パルス選択特定データSIH(n)、SIL(n)を送信する。
【0032】
図12は、前記逆フィルタ制御部24で行われる駆動アクチュエータ数に応じた逆フィルタ周波数特性制御のための演算処理を示すフローチャートである。この演算処理は、ノズル列1列分(全ノズル数=全アクチュエータ数=nmax)の駆動パルス選択特定データSIの出力開始と共に実行され、まずステップS1でアクチュエータ番号nを1とする。
【0033】
次にステップS2に移行して、アクチュエータ番号nのハイサイド駆動パルス選択特定データSIH(n)、つまり1bit目の駆動パルス選択特定データSIが読込まれたか否かを判定し、1bit目の駆動パルス選択特定データSIが読込まれた場合にはステップS2に移行し、そうでない場合には待機する。
ステップS3では、前記ステップS2で読込まれたアクチュエータ番号nのハイサイド駆動パルス選択特定データSIH(n)、つまり1bit目の駆動パルス選択特定データSIを1bitレジスタ27に記憶する。
【0034】
次にステップS4に移行して、アクチュエータ番号nのローサイド駆動パルス選択特定データSIL(n)、つまり2bit目の駆動パルス選択特定データSIが読込まれたか否かを判定し、2bit目の駆動パルス選択特定データSIが読込まれた場合にはステップS5に移行し、そうでない場合には待機する。
ステップS5では、アクチュエータ番号nのハイサイド駆動パルス選択特定データSIH(n)、つまり1bit目の駆動パルス選択特定データSIと、アクチュエータ番号nのローサイド駆動パルス選択特定データSIL(n)、つまり2bit目の駆動パルス選択特定データSIから選択された駆動パルスPCOMi(i=1〜4)を特定し、選択され特定された駆動パルスPCOMiに対応する駆動アクチュエータ数カウンタをインクリメントする。
【0035】
次にステップS6に移行して、アクチュエータ番号nをインクリメントする。
次にステップS7に移行して、前記1bitレジスタ27をクリアする。
次にステップS8に移行して、アクチュエータ番号nが全アクチュエータ数nmaxであるか否かを判定し、アクチュエータ番号nが全アクチュエータ数nmaxである場合にはステップS9に移行し、そうでない場合にはステップS2に移行する。
【0036】
ステップS9では、図示しない個別の演算処理に従って、前述したように駆動アクチュエータ数に応じた逆フィルタの周波数制御を行ってからメインプログラムに復帰する。
この演算処理によれば、アクチュエータ番号nのハイサイド駆動パルス選択特定データSIH(n)、つまり1bit目の駆動パルス選択特定データSIを受信し、それをレジスタ27に記憶した後、同じアクチュエータ番号nのローサイド駆動パルス選択特定データSIL(n)、つまり2bit目の駆動パルス選択特定データSIを受信すると、その時点で、当該アクチュエータ番号nに選択された駆動パルスPCOMiが特定され、その駆動パルスPCOMiに対応するアクチュエータ数カウンタがインクリメントされる。
【0037】
即ち、図13に示すように、アクチュエータ番号1のハイサイド駆動パルス選択特定データSIH(1)=0を受信し、それをレジスタ27に記憶した後、同じアクチュエータ番号1のローサイド駆動パルス選択特定データSIL(1)=0を受信すると、その時点で、アクチュエータ番号1に選択された駆動パルスPCOM1が特定され、その駆動パルスPCOM1に対応するアクチュエータ数カウンタがインクリメントされる。次いで、アクチュエータ番号2のハイサイド駆動パルス選択特定データSIH(2)=1を受信し、それをレジスタ27に記憶した後、同じアクチュエータ番号2のローサイド駆動パルス選択特定データSIL(2)=1を受信すると、その時点で、アクチュエータ番号2に選択された駆動パルスPCOM4が特定され、その駆動パルスPCOM4に対応するアクチュエータ数カウンタがインクリメントされる。例えば、全アクチュエータ数nmaxが180であるとすると、アクチュエータ番号180のハイサイド駆動パルス選択特定データSIH(180)=0を受信し、それをレジスタ27に記憶した後、同じアクチュエータ番号180のローサイド駆動パルス選択特定データSIL(180)=0を受信すると、その時点で、当該アクチュエータ番号180に選択された駆動パルスPCOM1が特定され、その駆動パルスPCOM1に対応するアクチュエータ数カウンタがインクリメントされ、その時点で、全ての駆動パルスPCOMiに対する駆動アクチュエータ数が得られる。
【0038】
従って、本実施形態では、駆動パルス選択特定データSIが2bitのデータである場合、逆フィルタ制御部24内に備えるレジスタ27の容量は1bitでよく、駆動パルスPCOMiが特定されるたびにレジスタ27をクリアすることができる。もし、駆動パルス選択特定データSIが3bitである場合には、レジスタ27の容量は2bitでよく、駆動パルス選択特定データSIが4bitである場合には、レジスタ27の容量は3bitでよい。つまり、駆動パルス選択特定データSIがmbitである場合には、レジスタ27の容量は(m−1)bitでよい。そのため、レジスタ27の容量を小さくして、メモリ自体や制御装置の小型化が可能となる。
【0039】
従来は、駆動パルス選択特定データSIの記憶にシフトレジスタを使用していた関係もあり、図14に示すように、アクチュエータ番号1のハイサイド駆動パルス選択特定データSIH(1)、つまり1bit目の駆動パルス選択特定データSIを送信した後、アクチュエータ番号2のハイサイド駆動パルス選択特定データSIH(2)を送信し、次いでアクチュエータ番号3のハイサイド駆動パルス選択特定データSIH(3)を送信し、これを繰り返して、最後のアクチュエータ番号180のハイサイド駆動パルス選択特定データSIH(180)を送信してから、アクチュエータ番号1のローサイド駆動パルス選択特定データSIL(1)を送信し、次いでアクチュエータ番号2のローサイド駆動パルス選択特定データSIL(2)を送信し、次いでアクチュエータ番号3のローサイド駆動パルス選択特定データSIL(3)を送信し、これを繰り返して最後のアクチュエータ番号180のローサイド駆動パルス選択特定データSIL(180)を送信するといったように、アクチュエータ番号nの順にハイサイド駆動パルス選択特定データSIH(n)、つまり1bit目の駆動パルス選択特定データSIだけを連続して送信し、それが終了した後、アクチュエータ番号nの順にローサイド駆動パルス選択特定データSIL(n)、つまり2bit目の駆動パルス選択特定データSIだけを連続して送信していた。
【0040】
そのため、図15に示すように、駆動するアクチュエータ数をカウントする場合、まず全てのアクチュエータ番号nのハイサイド駆動パルス選択特定データSIH(n)、つまり1bit目の駆動パルス選択特定データSIを記憶しておき、アクチュエータ番号1のローサイド駆動パルス選択特定データSIL(1)=0を受信すると、その時点で、アクチュエータ番号1に選択された駆動パルスPCOM1が特定され、その駆動パルスPCOM1に対応するアクチュエータ数カウンタがインクリメントされ、アクチュエータ番号2のローサイド駆動パルス選択特定データSIL(2)=1を受信すると、その時点で、アクチュエータ番号2に選択された駆動パルスPCOM4が特定され、その駆動パルスPCOM4に対応するアクチュエータ数カウンタがインクリメントされ、これを繰り返して、最後のアクチュエータ番号180のローサイド駆動パルス選択特定データSIL(180)=0を受信すると、その時点で、当該アクチュエータ番号180に選択された駆動パルスPCOM1が特定され、その駆動パルスPCOM1に対応するアクチュエータ数カウンタがインクリメントされ、その時点で、全ての駆動パルスPCOMiに対する駆動アクチュエータ数が得られる。
【0041】
従って、従来の駆動アクチュエータ数のカウント方法(前提として駆動パルス選択特定データSIの送信方法にも関係する)では、全てのアクチュエータ番号nのハイサイド駆動パルス選択特定データSIH(n)、つまり1bit目の駆動パルス選択特定データSIを記憶するために、nbitの容量のレジスタが必要となり、メモリ自体や制御装置の小型化に支障を来す。
【0042】
このように、本実施形態の液体噴射装置では、駆動波形信号発生回路25で発生された駆動波形信号WCOMを変調回路26でパルス変調して変調信号PWMとし、その変調信号PWMをデジタル電力増幅器28で電力増幅して電力増幅変調信号APWMとし、その電力増幅変調信号APWMを平滑フィルタ29で平滑化してアクチュエータ22の駆動信号COM(駆動パルスPCOM)とする場合に、駆動波形信号発生回路25の後段に設けられた逆フィルタ23で、平滑フィルタ29及び前記アクチュエータ22の静電容量で構成されるフィルタの周波数特性を、駆動するアクチュエータ22の数に関わらず、所定の周波数特性にし、駆動するアクチュエータ22の数に応じて逆フィルタ23の周波数特性を逆フィルタ制御部24で制御するにあたり、駆動するアクチュエータ22の特定データ、即ち駆動パルス選択特定データSIが2bit(mbit)で構成される場合、アクチュエータ22毎に連続して2bit(mbit)の駆動パルス選択特定データSIを送信し、各アクチュエータ22の2bit(mbit)の駆動パルス選択特定データSIを受信する毎に、駆動するアクチュエータ22の数をカウントすることとしたため、駆動するアクチュエータ22の駆動パルス選択特定データSIを記憶するレジスタ27は1bit((m−1)bit)の容量でよく、その結果、メモリ自体や制御装置の小型化が可能となる。
【0043】
また、駆動パルスPCOMiを時系列的に連続して駆動信号COMが構成される場合にあっても、駆動するアクチュエータ22の数を個々の駆動パルスPCOMi毎にカウントすることにより、各アクチュエータ22の2bit(mbit)の駆動パルス選択特定データSIを受信する毎に、駆動するアクチュエータ22の数をカウントすることができる。
なお、前記実施形態では、本発明の液体噴射装置をラインヘッド型の液体噴射型印刷装置に用いた場合についてのみ詳述したが、本発明の液体噴射装置は、マルチパス型の液体噴射型印刷装置にも同様に適用可能である。
【0044】
また、本発明の液体噴射装置は、インク以外の他の液体(液体以外にも、機能材料の粒子が分散されている液状体、ジェルなどの流状体を含む)や液体以外の流体(流体として流して噴射できる固体など)を噴射する液体噴射装置に具体化することもできる。例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッサンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解の形態で含む液状体を噴射する液状体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられて試料となる液体を噴射する液体噴射装置であってもよい。更に、時計やカメラなどの精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子などに用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するための紫外線硬化樹脂などの透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリなどのエッチング液を噴射する液体噴射装置、ジェルを噴射する流状体噴射装置、トナーなどの粉体を例とする固体を噴射する流体噴射式記録装置であってもよい。そして、これらのうち何れか一種の噴射装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1は印刷媒体、2は液体噴射ヘッド、3は給紙部、4は搬送部、5は給紙ローラ、6は搬送ベルト、7は電動モータ、8は駆動ローラ、9は従動ローラ、10は排紙部、11はヘッド固定プレート、21はハーフブリッジ出力段、22はアクチュエータ、23は逆フィルタ、24は逆フィルタ制御部、25は駆動波形信号発生回路、26は変調回路、27はレジスタ、28はデジタル電力増幅器、29は平滑フィルタ、30はゲートドライブ回路、34は三角波発振器、35は比較部、62は制御部、65はヘッドドライバ
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータに駆動信号を印加して液体を噴射する液体噴射装置に関し、例えば微小な液体を液体噴射ヘッドのノズルから噴射して、微粒子(ドット)を印刷媒体上に形成することにより、所定の文字や画像等を印刷するようにした液体噴射型印刷装置に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
液体噴射型印刷装置では、液体噴射ヘッドのノズルから液体を噴射するために、圧電素子などのアクチュエータが設けられ、このアクチュエータに所定の駆動信号を印加しなければならない。この駆動信号は、比較的電圧の高いものなので、駆動信号の基準となる駆動波形信号を電力増幅器で電力増幅しなければならない。そこで、下記特許文献1では、アナログ電力増幅器に比べて、電力損失が極めて小さく、小型化が可能なデジタル電力増幅器を用い、駆動波形信号を変調回路でパルス変調して変調信号とし、その変調信号をデジタル電力増幅器で電力増幅して電力増幅変調信号とし、その電力増幅変調信号を平滑フィルタで平滑化して、駆動信号としている。
【0003】
一方、アクチュエータが圧電素子などの容量性負荷の場合、平滑フィルタ及びアクチュエータで構成されるフィルタの静電容量が、駆動されるアクチュエータの数によって変化してしまい、フィルタの静電容量が変化すると周波数特性が変化し、駆動信号の波形が変化してしまう。そこで、下記特許文献2では、駆動波形信号出力回路の後段に逆フィルタを設け、この逆フィルタによって、平滑フィルタ及びアクチュエータで構成されるフィルタの周波数特性が変化しないように、駆動するアクチュエータの数に応じて当該逆フィルタの周波数特性を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−168172号公報
【特許文献2】国際公開WO2007/083669
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献2に記載される液体噴射装置では、例えば駆動するアクチュエータを特定する特定データが複数bitで構成される場合、特定データの送受信方法や駆動するアクチュエータの数のカウント方法によっては、その特定データを記憶するレジスタの容量が大きくなってしまい、メモリ自体や制御装置の小型化に支障を来す恐れがある。
例えば、駆動するアクチュエータを特定する特定データが2bitで構成される場合を例に挙げる。従来は駆動パルス選択特定データの記憶にシフトレジスタを使用していた関係もあり、アクチュエータ数分の1bit目の駆動パルス選択特定データを連続して送信した後、アクチュエータ数分の2bit目の駆動パルス選択特定データを連続して送信していた。
【0006】
そのため、駆動するアクチュエータ数をカウントする場合、まず全てのアクチュエータ番号の1bit目の駆動パルス選択特定データを記憶しておき、アクチュエータ番号1の2bit目の駆動パルス選択特定データを受信すると、その時点で初めてアクチュエータ番号1に選択された駆動パルスの特定が可能となった。
従って、従来の駆動アクチュエータ数のカウント方法(前提として駆動パルス選択特定データSIの送信方法にも関係する)では、全てのアクチュエータ番号nの1bit目の駆動パルス選択特定データを記憶するために、nbitの容量のレジスタが必要となり、メモリ自体や制御装置の小型化に支障を来していた。
本発明は、これらの諸問題に着目して開発されたものであり、メモリ自体や制御装置の小型化が可能な液体噴射装置及び液体噴射型印刷装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記諸問題を解決するため、本発明の液体噴射装置は、駆動信号の基準となる駆動波形信号を発生する駆動波形信号発生回路と、前記駆動波形信号をパルス変調して変調信号とする変調回路と、前記変調信号を電力増幅して電力増幅変調信号とするデジタル電力増幅器と、前記電力増幅変調信号を平滑化してアクチュエータの駆動信号とする平滑フィルタと、前記駆動波形信号発生回路の後段に設けられ且つ少なくとも前記平滑フィルタ及び前記アクチュエータの静電容量で構成されるフィルタの周波数特性を、駆動するアクチュエータの数に関わらず、所定の周波数特性にする逆フィルタと、前記駆動するアクチュエータの数に応じて前記逆フィルタの周波数特性を制御する逆フィルタ制御部とを備え、前記駆動するアクチュエータを特定するmbitの特定データをアクチュエータ毎に連続して送信し、前記逆フィルタ制御部は、前記駆動するアクチュエータを特定するmbitの特定データを記憶する(m−1)bitのレジスタを有し、各アクチュエータを特定するmbitの特定データを受信する毎に、駆動するアクチュエータの数をカウントすることを特徴とするものである。
【0008】
この液体噴射装置によれば、アクチュエータ毎に連続してmbitの特定データを送信し、各アクチュエータのmbitの特定データを受信する毎に、駆動するアクチュエータの数をカウントすることとしたため、駆動するアクチュエータの特定データを記憶するレジスタは(m−1)bitの容量でよく、その結果、メモリ自体や制御装置の小型化が可能となる。
【0009】
また、前記アクチュエータを単独で駆動することが可能な駆動パルスを時系列的に連続して前記駆動信号が構成される場合に、前記逆フィルタ制御部は、前記駆動するアクチュエータの数を個々の駆動パルス毎にカウントすることを特徴とするものである。
この液体噴射装置によれば、駆動パルスを時系列的に連続して駆動信号が構成される場合にあっても、駆動するアクチュエータの数を個々の駆動パルス毎にカウントすることにより、各アクチュエータのNbitの特定データを受信する毎に、駆動するアクチュエータの数をカウントすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の液体噴射装置を用いた液体噴射型印刷装置の一実施形態を示す概略構成正面図である。
【図2】図1の液体噴射型印刷装置に用いられる液体噴射ヘッド近傍の平面図である。
【図3】図1の液体噴射型印刷装置の制御装置のブロック図である。
【図4】各液体噴射ヘッド内のアクチュエータを駆動する駆動信号の説明図である。
【図5】スイッチングコントローラのブロック図である。
【図6】アクチュエータの駆動回路の一例を示すブロック図である。
【図7】図6の変調回路のブロック図である。
【図8】図6のデジタル電力増幅器のブロック図である。
【図9】図6の平滑フィルタのブロック図である。
【図10】図6の逆フィルタのブロック図である。
【図11】図6の駆動回路で駆動するアクチュエータを特定するための駆動パルス選択データの説明図である
【図12】図6の逆フィルタ制御部で行われる演算処理のフローチャートである。
【図13】図12の演算処理による駆動アクチュエータ数カウントの説明図である。
【図14】駆動するアクチュエータを特定するための従来の駆動パルス選択データの説明図である。
【図15】図14の駆動パルス選択データによる駆動アクチュエータ数カウントの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の液体噴射装置の一実施形態として、液体噴射型印刷装置に用いられたものについて説明する。
図1は、本実施形態の液体噴射型印刷装置の概略構成図であり、図1において、印刷媒体1は、図の左から右に向けて矢印方向に搬送され、その搬送途中の印刷領域で印刷される、ラインヘッド型印刷装置である。
【0012】
図1中の符号2は、印刷媒体1の搬送ライン上方に設けられた複数の液体噴射ヘッドであり、印刷媒体搬送方向に2列になるように且つ印刷媒体搬送方向と交差する方向に並べて配設されて、夫々、ヘッド固定プレート11に固定されている。各液体噴射ヘッド2の最下面には、多数のノズルが形成されており、この面がノズル面と呼ばれている。ノズルは、図2に示すように、噴射する液体の色毎に、印刷媒体搬送方向と交差する方向に列状に配設されており、その列をノズル列と呼んだり、その列方向をノズル列方向と呼んだりする。そして、印刷媒体搬送方向と交差する方向に配設された全ての液体噴射ヘッド2のノズル列によって、印刷媒体1の搬送方向と交差する方向の幅全長に及ぶラインヘッドが形成されている。印刷媒体1は、これらの液体噴射ヘッド2のノズル面の下方を通過するときに、ノズル面に形成されている多数のノズルから液体が噴射され、印刷が行われる。
【0013】
液体噴射ヘッド2には、例えばイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のインクなどの液体が、図示しない液体タンクから液体供給チューブを介して供給される。そして、液体噴射ヘッド2に形成されているノズルから同時に必要箇所に必要量の液体を噴射することにより、印刷媒体1上に微小なドットを形成する。これを各色毎に行うことにより、搬送部4で搬送される印刷媒体1を一度通過させるだけで、1パスによる印刷を行うことができる。
【0014】
液体噴射ヘッド2のノズルから液体を噴射する方法としては、静電方式、ピエゾ方式、膜沸騰液体噴射方式などがあり、本実施形態ではピエゾ方式を用いた。ピエゾ方式は、アクチュエータである圧電素子に駆動信号を与えると、キャビティ内の振動板が変位してキャビティ内に圧力変化を生じ、その圧力変化によって液体がノズルから噴射されるというものである。そして、駆動信号の波高値や電圧増減傾きを調整することで液体の噴射量を調整することが可能となる。なお、本発明は、ピエゾ方式以外の液体噴射方法にも、同様に適用可能である。
【0015】
液体噴射ヘッド2の下方には、印刷媒体1を搬送方向に搬送するための搬送部4が設けられている。搬送部4は、駆動ローラ8及び従動ローラ9に搬送ベルト6を巻回して構成され、駆動ローラ8には図示しない電動モータが接続されている。また、搬送ベルト6の内側には、当該搬送ベルト6の表面に印刷媒体1を吸着するための図示しない吸着装置が設けられている。この吸着装置には、例えば負圧によって印刷媒体1を搬送ベルト6に吸着する空気吸引装置や、静電気力で印刷媒体1を搬送ベルト6に吸着する静電吸着装置などが用いられる。従って、給紙ローラ5によって給紙部3から印刷媒体1を一枚だけ搬送ベルト6上に送給し、電動モータによって駆動ローラ8を回転駆動すると、搬送ベルト6が印刷媒体搬送方向に回転され、吸着装置によって搬送ベルト6に印刷媒体1が吸着されて搬送される。この印刷媒体1の搬送中に、液体噴射ヘッド2から液体を噴射して印刷を行う。印刷の終了した印刷媒体1は、搬送方向下流側の排紙部10に排紙される。なお、前記搬送ベルト6には、例えばリニアエンコーダなどで構成される印刷基準信号出力装置が取付けられている。この印刷基準信号出力装置は、搬送ベルト6とそれに吸着されて搬送される印刷媒体1とが同期して移動されることに着目し、印刷媒体1が搬送経路中の所定位置を通過した後は、搬送ベルト6の移動に伴って要求される印刷解像度相当のパルス信号を出力し、このパルス信号に応じて、後述する駆動回路から駆動信号をアクチュエータ22に出力することで印刷媒体1上の所定位置に所定の色の液体を噴射し、そのドットによって印刷媒体1上に所定の画像を描画する。
【0016】
本実施形態の液体噴射装置を用いた液体噴射型印刷装置内には、液体噴射型印刷装置を制御するための制御装置が設けられている。この制御装置は、図3に示すように、ホストコンピュータ60から入力された印刷データ読込むための入力インタフェース61と、この入力インタフェース61から入力された印刷データに基づいて印刷処理等の演算処理を実行するマイクロコンピュータで構成される制御部62と、前記給紙ローラ5に接続されている給紙ローラモータ17を駆動制御する給紙ローラモータドライバ63と、液体噴射ヘッド2を駆動制御するヘッドドライバ65と、前記駆動ローラ8に接続されている電動モータ7を駆動制御する電動モータドライバ66と、給紙ローラモータドライバ63、ヘッドドライバ65、電動モータドライバ66と給紙ローラモータ17、液体噴射ヘッド2、電動モータ7とを接続するインタフェース67とを備えて構成される。
【0017】
制御部62は、印刷処理等の各種処理を実行するCPU(Central Processing Unit)62aと、入力インタフェース61を介して入力された印刷データ或いは当該印刷データ印刷処理等を実行する際の各種データを一時的に格納し、或いは印刷処理等のプログラムを一時的に展開するRAM(Random Access Memory)62cと、CPU62aで実行する制御プログラム等を格納する不揮発性半導体メモリで構成されるROM(Read-Only Memory)62dを備えている。この制御部62は、入力インタフェース61を介してホストコンピュータ60から印刷データ(画像データ)を入手すると、CPU62aが、この印刷データに所定の処理を実行して、何れのノズルから液体を噴射するか或いはどの程度の液体を噴射するかというノズル選択データ(駆動パルス選択データ)を算出し、この印刷データや駆動パルス選択データ及び各種センサからの入力データに基づいて、給紙ローラモータドライバ63、ヘッドドライバ65、電動モータドライバ66に駆動信号及び制御信号を出力する。これらの駆動信号及び制御信号により、給紙ローラモータ17、電動モータ7、液体噴射ヘッド2内のアクチュエータ22などが夫々作動して、印刷媒体1の給紙及び搬送及び排紙、並びに印刷媒体1への印刷処理が実行される。なお、制御部62内の各構成要素は、図示しないバスを介して電気的に接続されている。
【0018】
図4には、本実施形態の液体噴射装置を用いた液体噴射型印刷装置の制御装置から液体噴射ヘッド2に供給され、圧電素子からなるアクチュエータ22を駆動するための駆動信号COMの一例を示す。本実施形態では、中間電圧を中心に電圧が変化する信号とした。この駆動信号COMは、アクチュエータ22を駆動して液体を噴射する単位駆動信号としての駆動パルスPCOMを時系列的に接続したものであり、駆動パルスPCOMの立上がり部分がノズルに連通するキャビティ(圧力室)の容積を拡大して液体を引込む(液体の噴射面を考えればメニスカスを引き込むとも言える)段階であり、駆動パルスPCOMの立下がり部分がキャビティの容積を縮小して液体を押出す(液体の噴射面を考えればメニスカスを押出すとも言える)段階であり、液体を押出した結果、液体がノズルから噴射される。
【0019】
この電圧台形波からなる駆動パルスPCOMの電圧増減傾きや波高値を種々に変更することにより、液体の引込量や引込速度、液体の押出量や押出速度を変化させることができ、これにより液体の噴射量を変化させて異なる大きさのドットを得ることができる。従って、複数の駆動パルスPCOMを時系列的に連結する場合でも、そのうちから単独の駆動パルスPCOMを選択してアクチュエータ22に供給し、液体を噴射したり、複数の駆動パルスPCOMを選択してアクチュエータ22に供給し、液体を複数回噴射したりすることで種々の大きさのドットを得ることができる。即ち、液体が乾かないうちに複数の液体を同じ位置に着弾すると、実質的に大きな液体を噴射するのと同じことになり、ドットの大きさを大きくすることができるのである。このような技術の組合せによって多階調化を図ることが可能となる。なお、図4の左端の駆動パルスPCOM1は、液体を引込むだけで押出していない。これは、微振動と呼ばれ、液体を噴射せずに、ノズルの増粘を抑制防止したりするのに用いられる。
【0020】
液体噴射ヘッド2には、前記駆動信号COMの他、前記図3の制御装置から制御信号として、印刷データに基づいて駆動パルスPCOMのうちどの駆動パルスPCOMを選択するかを示す駆動パルス選択特定データSIと、全ノズルにノズル選択データが入力された後に、駆動パルス選択特定データSIに基づいて駆動信号COMと液体噴射ヘッド2のアクチュエータ22とを接続させるラッチ信号LAT及びチャンネル信号CHと、駆動パルス選択特定データSIをシリアル信号として液体噴射ヘッド2に送信するためのクロック信号SCKとが入力されている。なお、これ以後、アクチュエータ22を駆動する駆動信号の最小単位を駆動パルスPCOMとし、駆動パルスPCOMが時系列的に連結された信号全体を駆動信号COMと記す。即ち、ラッチ信号LATで一連の駆動信号COMが出力され始め、チャンネル信号CH毎に駆動パルスPCOMが出力されることになる。また、駆動パルス選択特定データSIは、前述した駆動パルスPCOMのうち、どの駆動パルスPCOMを選択するかを示す2bitのデータであり、駆動パルス選択特定データSIによって選択され特定される駆動パルスPCOMの数をカウントすれば、駆動するアクチュエータ22の数をカウントすることができる。
【0021】
図5には、駆動信号COM(駆動パルスPCOM)をアクチュエータ22に供給するために液体噴射ヘッド2内に構築されたスイッチングコントローラの具体的な構成を示す。このスイッチングコントローラは、液体を噴射させるノズルに対応した圧電素子などのアクチュエータ22を指定するための駆動パルス選択特定データSIを保存するレジスタ211と、レジスタ211のデータを一時的に保存するラッチ回路212と、ラッチ回路212の出力をレベル変換して選択スイッチ201に供給することにより、駆動信号COM(駆動パルスPCOM)をピエゾ素子などのアクチュエータ22に接続するレベルシフタ213とを備えて構成されている。
【0022】
レジスタ211には、クロック信号SCKの入力パルスに応じて駆動パルス選択特定データ信号SIが入力される。ラッチ回路212は、入力されるラッチ信号LATによってレジスタ211の各出力信号をラッチする。ラッチ回路212に保存された信号は、レベルシフタ213によって次段の選択スイッチ201をオンオフできる電圧レベルに変換される。これは、駆動信号COM(駆動パルスPCOM)が、ラッチ回路212の出力電圧に比べて高い電圧であり、これに合わせて選択スイッチ201の動作電圧範囲も高く設定されているためである。従って、レベルシフタ213によって選択スイッチ201が閉じられる(スイッチ201がオン状態の)圧電素子などのアクチュエータ22は、駆動パルス選択特定データSIに基づき所定の接続タイミングで駆動信号COM(駆動パルスPCOM)に接続される。また、レジスタ211の駆動パルス選択特定データSIがラッチ回路212に保存された後、次の印刷情報をレジスタ211に入力し、液体の噴射タイミングに合わせてラッチ回路212の保存データを順次更新する。なお、図中の符号HGNDは、圧電素子などのアクチュエータ22のグランド端である。また、この選択スイッチ201により、圧電素子などのアクチュエータ22を駆動信号COM(駆動パルスPCOM)から切り離した後(選択スイッチ201がオフ)も、当該アクチュエータ22の入力電圧は、切り離す直前の電圧に維持される。すなわち、前記圧電素子などのアクチュエータ22は、容量性負荷である。
【0023】
図6には、アクチュエータ22の駆動回路の概略構成を示す。このアクチュエータ駆動回路は、前記制御回路内の制御部62及びヘッドドライバ65内に構築されている。本実施形態の駆動回路は、予め記憶されている駆動波形データDWCOMに基づいて、駆動信号COM(駆動パルスPCOM)の元、つまりアクチュエータ22の駆動を制御する信号の基準となる駆動波形信号WCOMを生成する駆動波形信号発生回路25と、駆動波形信号発生回路25で生成された駆動波形信号WCOMをパルス変調する変調回路26と、変調回路26でパルス変調された変調信号PWMを電力増幅するデジタル電力増幅器28と、デジタル電力増幅器28で電力増幅された電力増幅変調信号APWMを平滑化して、駆動信号COMとして出力する平滑フィルタ29と、駆動信号発生回路70と変調回路24との間に介装された逆フィルタ23と、逆フィルタ23の周波数特性を制御する逆フィルタ制御部24とを備えて構成される。駆動波形信号発生回路25は、CPU62aから出力された駆動波形データDWCOMを電圧信号に変換して所定サンプリング周期分ホールド出力する。
【0024】
駆動波形信号WCOMをパルス変調する変調回路26には、図7に示すように、周知のパルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)回路を用いた。パルス幅変調は、所定周波数の三角波信号を出力する三角波発振器34と、三角波信号と駆動波形信号WCOMを比較し、例えば駆動波形信号WCOMが三角波信号より大きいときにオンデューティとなるパルスデューティの変調信号PWMを出力する比較部35とを備えて構成される。なお、変調回路26には、この他にパルス密度変調(PDM)回路などの周知のパルス変調回路を用いることができる。また、何れの場合も、プログラムによる演算処理によって変調回路26を構成することができる。
【0025】
デジタル電力増幅器28は、図8に示すように、実質的に電力を増幅するためのハイサイド側スイッチング素子Q1及びローサイド側スイッチング素子Q2からなるハーフブリッジ出力段21と、変調回路26からの変調信号PWMに基づいて、ハイサイド側スイッチング素子Q1、ローサイド側スイッチング素子Q2のゲート−ソース間信号GH、GLを調整するためのゲートドライブ回路30とを備えて構成されている。デジタル電力増幅器28では、変調信号がハイレベルであるとき、ハイサイド側スイッチング素子Q1のゲート−ソース間信号GHはハイレベルとなり、ローサイド側スイッチング素子Q2のゲート−ソース間信号GLはローレベルとなるので、ハイサイド側スイッチング素子Q1はオン状態となり、ローサイド側スイッチング素子Q2はオフ状態となり、その結果、ハーフブリッジ出力段21の出力電圧Vaは、供給電圧VDDとなる。一方、変調信号がローレベルであるとき、ハイサイド側スイッチング素子Q1のゲート−ソース間信号GHはローレベルとなり、ローサイド側スイッチング素子Q2のゲート−ソース間信号GLはハイレベルとなるので、ハイサイド側スイッチング素子Q1はオフ状態となり、ローサイド側スイッチング素子Q2はオン状態となり、その結果、ハーフブリッジ出力段21の出力電圧Vaは0となる。
【0026】
このようにハイサイド側スイッチング素子Q1及びローサイド側スイッチング素子Q2がデジタル駆動される場合には、オン状態のスイッチング素子に電流が流れるが、ドレイン−ソース間の抵抗値は非常に小さく、損失は殆ど発生しない。また、オフ状態のスイッチング素子には電流が流れないので損失は発生しない。従って、このデジタル電力増幅器28の損失そのものは極めて小さく、小型のMOSFET等のスイッチング素子を使用することができる。
平滑フィルタ29には、図9に示すように、1つの抵抗Rと1つのコンデンサCと1つのコイルLからなる2次のフィルタを用いた。この平滑フィルタ29によって、前記変調回路26で生じた変調周波数、即ちパルス変調の周波数成分を減衰して除去し、駆動信号COMを出力する。
【0027】
次に、図6の駆動信号出力回路に設けられた逆フィルタ23について説明する。前述したように平滑フィルタ29は電力増幅変調信号APWMのキャリア信号成分を十分減衰し、且つ駆動信号COMを減衰しないように設計されるが、アクチュエータ22には静電容量Cnがあるため駆動するアクチュエータ数が変化すると、平滑フィルタ29及びアクチュエータ22の静電容量Cnで構成されるフィルタの周波数特性が変化する。このようにフィルタの周波数特性が変化すると、アクチュエータ22の印加される駆動信号COM(駆動パルスPCOM)の波形が変化し、ノズルからの液体噴射特性も変化してしまう。
【0028】
そこで、本実施形態では、前述した図6に示すように駆動波形信号発生回路25の後段に逆フィルタ23を介装する。本実施形態では、図10に示すように、高域強調型のフィルタと1次の低域通過型或いは高域減衰型のフィルタとを並列に配設して逆フィルタ23を構成し、出力回路のゲインが減少する場合、駆動するアクチュエータ数が所定値より多い場合には高域強調型のフィルタを、出力回路のゲインが増加する場合、即ち駆動するアクチュエータ数が所定値より少ない場合には低域通過型又は高域減衰型のフィルタを、夫々スイッチで選択する。このようにすれば、駆動波形信号WCOM成分の中で、平滑フィルタ29及びアクチュエータ22の静電容量Cnで構成されるフィルタによる変化成分を適切に強調したり減衰したりすることができ、これにより実際にアクチュエータ22に印加される駆動信号COM(駆動パルスPCOM)の波形の変化を抑制防止することが可能となる。
【0029】
また、駆動するアクチュエータ数に応じて逆フィルタ23の周波数特性を設定することにより、駆動するアクチュエータ数に応じて異なる変化成分を正確に強調したり減衰したりすることができ、これにより実際にアクチュエータ22に印加される駆動信号COM(駆動パルスPCOM)の波形変化をより一層抑制防止することが可能となる。逆フィルタ23の周波数特性の設定は、高域強調型のフィルタ(1次ハイパスフィルタ)の時定数Tや、低域通過型又は高域減衰型のフィルタ(1次ローパスフィルタ)の時定数Tを調整することで行うことができる。なお、それら時定数Tの設定方法については、前述した特許文献1を参考にされたい。
【0030】
前記逆フィルタ23のスイッチの切換えや時定数Tの調整を逆フィルタ制御部24で行う。逆フィルタ制御部24は、前記図3の制御部62内で実行されるプログラムによって構築される。また、この逆フィルタ制御部24は、駆動パルス選択特定データSIの2bit(mbit)に対し、1bit((m−1)bit)のレジスタ27を備えている。
駆動するアクチュエータ22の数は、前記駆動パルス選択特定データSIによってカウントすることができる。駆動パルス選択特定データSIは、前述したように2bitのデータで構成され、各アクチュエータ22に対し、“00”ならば第1駆動パルス(微振動)PCOM1を、“01”ならば第2駆動パルスPCOM2を、“10”ならば第3駆動パルスPCOM3を、“11”ならば第4駆動パルスPCOM4を選択して特定する。
【0031】
この駆動パルス選択特定データSIの2bitのデータのうち、前側のデータをハイサイド駆動パルス選択特定データSIH(n)、後側のデータをローサイド駆動パルス選択特定データSIL(n)とし、nにはアクチュエータ22の番号(以下、アクチュエータ番号と記す)を付与する。そして、本実施形態では、図11に示すように、アクチュエータ番号1のハイサイド駆動パルス選択特定データSIH(1)をクロック信号SCKの立上がりで送信し、アクチュエータ番号1のローサイド駆動パルス選択特定データSIL(1)を同じクロック信号SCKの立下がりで送信し、アクチュエータ番号2のハイサイド駆動パル選択特定データSIH(2)を次のクロック信号SCKの立上がりで送信し、アクチュエータ番号2のローサイド駆動パルス選択特定データSIL(2)を同じクロック信号SCKの立下がりで送信するといったように、アクチュエータ22毎に連続して2bitの駆動パルス選択特定データSIH(n)、SIL(n)を送信する。
【0032】
図12は、前記逆フィルタ制御部24で行われる駆動アクチュエータ数に応じた逆フィルタ周波数特性制御のための演算処理を示すフローチャートである。この演算処理は、ノズル列1列分(全ノズル数=全アクチュエータ数=nmax)の駆動パルス選択特定データSIの出力開始と共に実行され、まずステップS1でアクチュエータ番号nを1とする。
【0033】
次にステップS2に移行して、アクチュエータ番号nのハイサイド駆動パルス選択特定データSIH(n)、つまり1bit目の駆動パルス選択特定データSIが読込まれたか否かを判定し、1bit目の駆動パルス選択特定データSIが読込まれた場合にはステップS2に移行し、そうでない場合には待機する。
ステップS3では、前記ステップS2で読込まれたアクチュエータ番号nのハイサイド駆動パルス選択特定データSIH(n)、つまり1bit目の駆動パルス選択特定データSIを1bitレジスタ27に記憶する。
【0034】
次にステップS4に移行して、アクチュエータ番号nのローサイド駆動パルス選択特定データSIL(n)、つまり2bit目の駆動パルス選択特定データSIが読込まれたか否かを判定し、2bit目の駆動パルス選択特定データSIが読込まれた場合にはステップS5に移行し、そうでない場合には待機する。
ステップS5では、アクチュエータ番号nのハイサイド駆動パルス選択特定データSIH(n)、つまり1bit目の駆動パルス選択特定データSIと、アクチュエータ番号nのローサイド駆動パルス選択特定データSIL(n)、つまり2bit目の駆動パルス選択特定データSIから選択された駆動パルスPCOMi(i=1〜4)を特定し、選択され特定された駆動パルスPCOMiに対応する駆動アクチュエータ数カウンタをインクリメントする。
【0035】
次にステップS6に移行して、アクチュエータ番号nをインクリメントする。
次にステップS7に移行して、前記1bitレジスタ27をクリアする。
次にステップS8に移行して、アクチュエータ番号nが全アクチュエータ数nmaxであるか否かを判定し、アクチュエータ番号nが全アクチュエータ数nmaxである場合にはステップS9に移行し、そうでない場合にはステップS2に移行する。
【0036】
ステップS9では、図示しない個別の演算処理に従って、前述したように駆動アクチュエータ数に応じた逆フィルタの周波数制御を行ってからメインプログラムに復帰する。
この演算処理によれば、アクチュエータ番号nのハイサイド駆動パルス選択特定データSIH(n)、つまり1bit目の駆動パルス選択特定データSIを受信し、それをレジスタ27に記憶した後、同じアクチュエータ番号nのローサイド駆動パルス選択特定データSIL(n)、つまり2bit目の駆動パルス選択特定データSIを受信すると、その時点で、当該アクチュエータ番号nに選択された駆動パルスPCOMiが特定され、その駆動パルスPCOMiに対応するアクチュエータ数カウンタがインクリメントされる。
【0037】
即ち、図13に示すように、アクチュエータ番号1のハイサイド駆動パルス選択特定データSIH(1)=0を受信し、それをレジスタ27に記憶した後、同じアクチュエータ番号1のローサイド駆動パルス選択特定データSIL(1)=0を受信すると、その時点で、アクチュエータ番号1に選択された駆動パルスPCOM1が特定され、その駆動パルスPCOM1に対応するアクチュエータ数カウンタがインクリメントされる。次いで、アクチュエータ番号2のハイサイド駆動パルス選択特定データSIH(2)=1を受信し、それをレジスタ27に記憶した後、同じアクチュエータ番号2のローサイド駆動パルス選択特定データSIL(2)=1を受信すると、その時点で、アクチュエータ番号2に選択された駆動パルスPCOM4が特定され、その駆動パルスPCOM4に対応するアクチュエータ数カウンタがインクリメントされる。例えば、全アクチュエータ数nmaxが180であるとすると、アクチュエータ番号180のハイサイド駆動パルス選択特定データSIH(180)=0を受信し、それをレジスタ27に記憶した後、同じアクチュエータ番号180のローサイド駆動パルス選択特定データSIL(180)=0を受信すると、その時点で、当該アクチュエータ番号180に選択された駆動パルスPCOM1が特定され、その駆動パルスPCOM1に対応するアクチュエータ数カウンタがインクリメントされ、その時点で、全ての駆動パルスPCOMiに対する駆動アクチュエータ数が得られる。
【0038】
従って、本実施形態では、駆動パルス選択特定データSIが2bitのデータである場合、逆フィルタ制御部24内に備えるレジスタ27の容量は1bitでよく、駆動パルスPCOMiが特定されるたびにレジスタ27をクリアすることができる。もし、駆動パルス選択特定データSIが3bitである場合には、レジスタ27の容量は2bitでよく、駆動パルス選択特定データSIが4bitである場合には、レジスタ27の容量は3bitでよい。つまり、駆動パルス選択特定データSIがmbitである場合には、レジスタ27の容量は(m−1)bitでよい。そのため、レジスタ27の容量を小さくして、メモリ自体や制御装置の小型化が可能となる。
【0039】
従来は、駆動パルス選択特定データSIの記憶にシフトレジスタを使用していた関係もあり、図14に示すように、アクチュエータ番号1のハイサイド駆動パルス選択特定データSIH(1)、つまり1bit目の駆動パルス選択特定データSIを送信した後、アクチュエータ番号2のハイサイド駆動パルス選択特定データSIH(2)を送信し、次いでアクチュエータ番号3のハイサイド駆動パルス選択特定データSIH(3)を送信し、これを繰り返して、最後のアクチュエータ番号180のハイサイド駆動パルス選択特定データSIH(180)を送信してから、アクチュエータ番号1のローサイド駆動パルス選択特定データSIL(1)を送信し、次いでアクチュエータ番号2のローサイド駆動パルス選択特定データSIL(2)を送信し、次いでアクチュエータ番号3のローサイド駆動パルス選択特定データSIL(3)を送信し、これを繰り返して最後のアクチュエータ番号180のローサイド駆動パルス選択特定データSIL(180)を送信するといったように、アクチュエータ番号nの順にハイサイド駆動パルス選択特定データSIH(n)、つまり1bit目の駆動パルス選択特定データSIだけを連続して送信し、それが終了した後、アクチュエータ番号nの順にローサイド駆動パルス選択特定データSIL(n)、つまり2bit目の駆動パルス選択特定データSIだけを連続して送信していた。
【0040】
そのため、図15に示すように、駆動するアクチュエータ数をカウントする場合、まず全てのアクチュエータ番号nのハイサイド駆動パルス選択特定データSIH(n)、つまり1bit目の駆動パルス選択特定データSIを記憶しておき、アクチュエータ番号1のローサイド駆動パルス選択特定データSIL(1)=0を受信すると、その時点で、アクチュエータ番号1に選択された駆動パルスPCOM1が特定され、その駆動パルスPCOM1に対応するアクチュエータ数カウンタがインクリメントされ、アクチュエータ番号2のローサイド駆動パルス選択特定データSIL(2)=1を受信すると、その時点で、アクチュエータ番号2に選択された駆動パルスPCOM4が特定され、その駆動パルスPCOM4に対応するアクチュエータ数カウンタがインクリメントされ、これを繰り返して、最後のアクチュエータ番号180のローサイド駆動パルス選択特定データSIL(180)=0を受信すると、その時点で、当該アクチュエータ番号180に選択された駆動パルスPCOM1が特定され、その駆動パルスPCOM1に対応するアクチュエータ数カウンタがインクリメントされ、その時点で、全ての駆動パルスPCOMiに対する駆動アクチュエータ数が得られる。
【0041】
従って、従来の駆動アクチュエータ数のカウント方法(前提として駆動パルス選択特定データSIの送信方法にも関係する)では、全てのアクチュエータ番号nのハイサイド駆動パルス選択特定データSIH(n)、つまり1bit目の駆動パルス選択特定データSIを記憶するために、nbitの容量のレジスタが必要となり、メモリ自体や制御装置の小型化に支障を来す。
【0042】
このように、本実施形態の液体噴射装置では、駆動波形信号発生回路25で発生された駆動波形信号WCOMを変調回路26でパルス変調して変調信号PWMとし、その変調信号PWMをデジタル電力増幅器28で電力増幅して電力増幅変調信号APWMとし、その電力増幅変調信号APWMを平滑フィルタ29で平滑化してアクチュエータ22の駆動信号COM(駆動パルスPCOM)とする場合に、駆動波形信号発生回路25の後段に設けられた逆フィルタ23で、平滑フィルタ29及び前記アクチュエータ22の静電容量で構成されるフィルタの周波数特性を、駆動するアクチュエータ22の数に関わらず、所定の周波数特性にし、駆動するアクチュエータ22の数に応じて逆フィルタ23の周波数特性を逆フィルタ制御部24で制御するにあたり、駆動するアクチュエータ22の特定データ、即ち駆動パルス選択特定データSIが2bit(mbit)で構成される場合、アクチュエータ22毎に連続して2bit(mbit)の駆動パルス選択特定データSIを送信し、各アクチュエータ22の2bit(mbit)の駆動パルス選択特定データSIを受信する毎に、駆動するアクチュエータ22の数をカウントすることとしたため、駆動するアクチュエータ22の駆動パルス選択特定データSIを記憶するレジスタ27は1bit((m−1)bit)の容量でよく、その結果、メモリ自体や制御装置の小型化が可能となる。
【0043】
また、駆動パルスPCOMiを時系列的に連続して駆動信号COMが構成される場合にあっても、駆動するアクチュエータ22の数を個々の駆動パルスPCOMi毎にカウントすることにより、各アクチュエータ22の2bit(mbit)の駆動パルス選択特定データSIを受信する毎に、駆動するアクチュエータ22の数をカウントすることができる。
なお、前記実施形態では、本発明の液体噴射装置をラインヘッド型の液体噴射型印刷装置に用いた場合についてのみ詳述したが、本発明の液体噴射装置は、マルチパス型の液体噴射型印刷装置にも同様に適用可能である。
【0044】
また、本発明の液体噴射装置は、インク以外の他の液体(液体以外にも、機能材料の粒子が分散されている液状体、ジェルなどの流状体を含む)や液体以外の流体(流体として流して噴射できる固体など)を噴射する液体噴射装置に具体化することもできる。例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッサンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解の形態で含む液状体を噴射する液状体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられて試料となる液体を噴射する液体噴射装置であってもよい。更に、時計やカメラなどの精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子などに用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するための紫外線硬化樹脂などの透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリなどのエッチング液を噴射する液体噴射装置、ジェルを噴射する流状体噴射装置、トナーなどの粉体を例とする固体を噴射する流体噴射式記録装置であってもよい。そして、これらのうち何れか一種の噴射装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1は印刷媒体、2は液体噴射ヘッド、3は給紙部、4は搬送部、5は給紙ローラ、6は搬送ベルト、7は電動モータ、8は駆動ローラ、9は従動ローラ、10は排紙部、11はヘッド固定プレート、21はハーフブリッジ出力段、22はアクチュエータ、23は逆フィルタ、24は逆フィルタ制御部、25は駆動波形信号発生回路、26は変調回路、27はレジスタ、28はデジタル電力増幅器、29は平滑フィルタ、30はゲートドライブ回路、34は三角波発振器、35は比較部、62は制御部、65はヘッドドライバ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動信号の基準となる駆動波形信号を発生する駆動波形信号発生回路と、
前記駆動波形信号をパルス変調して変調信号とする変調回路と、
前記変調信号を電力増幅して電力増幅変調信号とするデジタル電力増幅器と、
前記電力増幅変調信号を平滑化してアクチュエータの駆動信号とする平滑フィルタと、
前記駆動波形信号発生回路の後段に設けられ且つ少なくとも前記平滑フィルタ及び前記アクチュエータの静電容量で構成されるフィルタの周波数特性を、駆動するアクチュエータの数に関わらず、所定の周波数特性にする逆フィルタと、
前記駆動するアクチュエータの数に応じて前記逆フィルタの周波数特性を制御する逆フィルタ制御部とを備え、
前記駆動するアクチュエータを特定するmbitの特定データをアクチュエータ毎に連続して送信し、
前記逆フィルタ制御部は、前記駆動するアクチュエータを特定するmbitの特定データを記憶する(m−1)bitのレジスタを有し、
各アクチュエータを特定するmbitの特定データを受信する毎に、駆動するアクチュエータの数をカウントすることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
前記アクチュエータを単独で駆動することが可能な駆動パルスを時系列的に連続して前記駆動信号が構成される場合に、前記逆フィルタ制御部は、前記駆動するアクチュエータの数を個々の駆動パルス毎にカウントすることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の液体噴射装置を備えた液体噴射型印刷装置。
【請求項1】
駆動信号の基準となる駆動波形信号を発生する駆動波形信号発生回路と、
前記駆動波形信号をパルス変調して変調信号とする変調回路と、
前記変調信号を電力増幅して電力増幅変調信号とするデジタル電力増幅器と、
前記電力増幅変調信号を平滑化してアクチュエータの駆動信号とする平滑フィルタと、
前記駆動波形信号発生回路の後段に設けられ且つ少なくとも前記平滑フィルタ及び前記アクチュエータの静電容量で構成されるフィルタの周波数特性を、駆動するアクチュエータの数に関わらず、所定の周波数特性にする逆フィルタと、
前記駆動するアクチュエータの数に応じて前記逆フィルタの周波数特性を制御する逆フィルタ制御部とを備え、
前記駆動するアクチュエータを特定するmbitの特定データをアクチュエータ毎に連続して送信し、
前記逆フィルタ制御部は、前記駆動するアクチュエータを特定するmbitの特定データを記憶する(m−1)bitのレジスタを有し、
各アクチュエータを特定するmbitの特定データを受信する毎に、駆動するアクチュエータの数をカウントすることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
前記アクチュエータを単独で駆動することが可能な駆動パルスを時系列的に連続して前記駆動信号が構成される場合に、前記逆フィルタ制御部は、前記駆動するアクチュエータの数を個々の駆動パルス毎にカウントすることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の液体噴射装置を備えた液体噴射型印刷装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−93104(P2011−93104A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−246210(P2009−246210)
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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