説明

液体噴射装置及び液体噴射装置におけるヘッドホルダの傾き調整方法

【課題】傾き調整機構を小型化しながら、ヘッドホルダの傾きを細かく高分解能に調整することができ、且つ、その傾きの調整範囲も大きく確保する。
【解決手段】インクジェットプリンタは、ノズル配列方向が搬送方向と平行なるように、キャリッジ3を水平面内で回動させる傾き調整機構を有している。傾き調整機構は、回転軸部23を中心に回転可能であり、カム面34aによってスライド部材31とキャリッジ3の接触部をガイド面に対して揺動方向に変位させる偏心カム34と、偏心カム34に複数の異なる角度で装着され、装着状態で偏心カム34と一体的に回転可能なレバー部材33とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を噴射する液体噴射装置及び液体噴射装置におけるヘッドホルダの傾き調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数のノズルから液体を噴射する液体噴射装置として、インクジェットヘッドに形成された複数のノズルからインクを噴射して、記録用紙に印刷を行うインクジェットプリンタが知られている。このようなインクジェットプリンタにおいて、インクジェットヘッドは、プリンタ内でノズル配列方向が所定の方向(以下、基準方向と称す)を向くように取り付けられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、所定のY方向(以下、走査方向と称す)に延在するガイド部材にガイドされて往復移動するキャリッジ(ヘッドホルダ)に搭載されたインクジェットヘッドからインクを噴射することによって、Y方向と直交するX方向(以下、搬送方向と称す)に沿って搬送される記録用紙に印刷を行う画像記録装置について記載されている。この特許文献1に記載の画像記録装置において、インクジェットヘッドは、ノズル配列方向が、基準方向である搬送方向と平行になるようにキャリッジに取り付けられている。
【0004】
ところで、キャリッジへのインクジェットヘッドの取り付け誤差などにより、ノズル配列方向が、複数のノズルが形成されたインク噴射面と平行な平面内において搬送方向に対して傾いてしまう場合がある。このように、ノズル配列方向が搬送方向に対して傾いてしまうと、例えば、ノズル配列方向が傾いていない状態と同じ噴射タイミングでインクを噴射すると、ノズル列を形成する複数のノズルから噴射されるインクの着弾位置がキャリッジの走査方向にそれぞれずれて、印刷品質が低下してしまうおそれがある。
【0005】
そこで、印刷品質の低下を防止するために、ノズル配列方向と搬送方向との傾きをなくすようにキャリッジ(インクジェットヘッド)の傾きを補正する方法が挙げられる。特許文献1では、複数のノズルが形成されたインク噴射面と平行な平面内においてノズル配列方向と搬送方向との傾きがなくなるように、キャリッジの傾きを調整できる。
【0006】
特許文献1に記載のキャリッジは、そのキャリッジに設けられた第1、第2摺動凸部が、ガイド部材に設けられ、走査方向に沿った摺動面と摺動することで、走査方向にガイドされている。第1摺動凸部はキャリッジに固定されているのに対して、第2摺動凸部は姿勢調整手段(傾き調整機構)によってキャリッジに対してスライド移動可能となっている。姿勢調整手段により第1摺動凸部を軸として第2摺動凸部を回動させることで、キャリッジのガイド部材に対する傾きを調整することができる構成となっている。
【0007】
姿勢調整手段は、第2摺動凸部と一体的に構成された調節体ブロックと、調節体ブロックに嵌め込まれることで、その外周面が調節体ブロックの当接面に当接した偏心丸軸と、偏心丸軸と一体的に形成された円形のダイヤル板などを備えている。そして、ダイヤル板を回して、偏心丸軸が回動する。これにより、偏心丸軸の外周面の位置を変更し、偏心丸軸に当接した調節体ブロックを第2摺動凸部と一体的に移動させることができるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−246933号公報(図11)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、高速印字のため一度に形成できるドットの数を増やすには、ノズル列の長さを長くすることが好ましい。しかしながら、ノズル配列方向の搬送方向(基準方向)に対する傾きによる印刷品質の低下は、ノズル列の長さが長いほど大きくなる。ノズル列の長さが長い場合には、ノズル列が搬送方向に対してわずかに傾いているだけであっても、ノズル列の両端のノズルからそれぞれ噴射されるインクの着弾位置が、走査方向に大きく離れてしまうため、印刷品質が大きく低下してしまう。そのため、わずかな傾きも解消できるように、キャリッジ(ヘッドホルダ)の傾きを非常に細かく調整可能にする必要がある。特許文献1に記載の姿勢調整手段(傾き調整機構)によってヘッドホルダの傾きを細かく調整するためには、ダイヤル板の溝を細かく形成する、あるいは、偏心丸軸を偏心の程度の小さいものとする(回転角に対する変位量が小さいものとする)必要がある。
【0010】
しかしながら、単純に、ダイヤル板に形成される溝を細かくすると、溝の周方向間隔が小さくなるので、作業性を考えるとダイヤル板を大径のものにする必要があり、その結果、傾き調整機構が大型化してしまう。一方、偏心丸軸を偏心の程度の小さいものとすると、調節体ブロック(第2摺動凸部)の移動可能範囲が狭くなってしまう。すると、傾きが比較的大きい場合には、調整不能となってしまい、歩留まりが悪化してしまう。
【0011】
そこで、本発明の目的は、傾き調整機構を小型化しながら、ヘッドホルダの傾きを細かく調整することができ、且つ、その傾きの調整範囲も大きく確保することが可能な液体噴射装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る液体噴射装置は、複数のノズルが所定のノズル配列方向に沿って配列された液体噴射面を有する液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドを保持し、前記液体噴射面と平行な平面内において回動可能なヘッドホルダと、前記平面内において前記ヘッドホルダと少なくとも2箇所が接触し、前記ヘッドホルダの回動を規制する回動規制部材と、前記ヘッドホルダに設けられた回転軸を中心に回転可能で、前記回動規制部材に接触している少なくとも2箇所の接触部のうち少なくとも第1の接触部を、前記平面内の前記第1の接触部と他の第2の接触部とを結ぶ方向と直交する方向成分を含む方向に、前記液体噴射ヘッドに対して相対的に変位させることのできるカム部材を有し、前記カム部材を回転させることによって前記第2の接触部を中心に、前記ヘッドホルダを前記ノズル配列方向がある基準方向と平行になるように回動させることで、前記回動規制部材に規制される前記ヘッドホルダの傾きを調整する、前記ヘッドホルダの傾き調整機構と、を備えており、前記傾き調整機構は、前記カム部材に取り外し可能に装着され、装着状態で前記カム部材と一体的に回転可能なレバー部材を備え、前記カム部材は、第1係合部を有し、前記レバー部材は、前記回転軸の回転方向における複数の異なる角度配置で、前記第1係合部と係合可能な第2係合部を有し、前記複数の異なる角度配置のうちいずれかの角度配置で前記第1係合部と前記第2係合部とが係合された状態で、カム部材に装着される。
【0013】
本発明における液体噴射装置によると、カム部材を回転させることで、第2の接触部を回動中心として、第1の接触部を液体噴射ヘッドに対して平面内で相対的に変位させることによって、ヘッドホルダ全体を平面内で回動させて、回動規制部材に規制されるヘッドホルダの傾きを調整している。このとき、カム部材を直接回転させずに、カム部材にレバー部材を装着して、レバー部材を揺動させてカム部材を回転させている。これにより、カム部材の小さな回転角度に対して、レバー部材を揺動させたときのレバー先端側の移動量が大きいため、ヘッドホルダの傾きを細かく調整しやすくなる。したがって、カム部材の回転角度(レバー部材の揺動角度)を細かく設定して、ヘッドホルダの傾きを細かく調整することができる。
【0014】
また、カム部材の第1係合部に対するレバー部材の第2係合部が係合する、回転軸の回転方向における角度を切り換えることで、レバー部材を複数の異なる角度でカム部材に装着することができ、ヘッドホルダの傾き調整範囲をずらすことができる。したがって、レバー部材の揺動範囲を広くすることなく、傾き調整機構を小型化しながら、ヘッドホルダの傾き調整範囲を大きく確保することができる。
【0015】
また、前記ヘッドホルダは、前記液体噴射ヘッドを保持し、前記液体噴射面と平行な第1方向に往復移動するキャリッジであり、前記回動規制部材は、前記第1方向と平行で且つ前記液体噴射面と平行ではない面上に延在するガイド面を有し、前記キャリッジを前記ガイド面に沿ってガイドするガイド部材であることが好ましい。
【0016】
これによると、ガイド部材に対するキャリッジの傾きを変更することで、キャリッジの移動方向(第1方向)に対するノズル配列方向を調整することができる。
【0017】
さらに、前記傾き調整機構は、前記ヘッドホルダに設けられ、前記レバー部材を複数の位置でそれぞれある角度範囲以上に揺動できないように制限する固定部材をさらに備え、前記回転軸は、前記第1接触部の変位方向に略垂直な方向に延びて構成されており、前記固定部材が前記レバー部材の角度を制限できる前記複数の位置は、180度よりも狭く、且つ、前記カム部材が調整完了状態においてとりうる回転角度よりも小さな角度範囲に収まっていることが好ましい。
【0018】
これによると、レバー部材の角度を制限できる範囲を180度よりも狭く、且つ、カム部材が調整完了状態においてとりうる回転角度よりも小さな範囲としている。したがって、レバー部材を揺動させるスペースを小さくすることができる。
【0019】
このとき、前記回転軸は、前記液体噴射面と直交する方向に延びて構成されており、前記固定部材が前記レバー部材の角度を制限できる前記複数の位置は、前記レバー部材の先端が前記液体噴射面と平行な第1方向に関して、前記レバー部材を除く前記傾き調整機構の最大存在範囲に収まるような範囲にあってもよい。
【0020】
カム部材は、回転角度を細かく設定するためにそれなりの大きさが必要であり、レバー部材を除く傾き調整機構の大きさはカム部材の大きさに合わせて設計することができる。そして、レバー部材の角度を、レバー部材の先端が第1方向に関して、レバー部材を除く、傾き調整機構の最大存在範囲に収まるような範囲に制限することで、レバー部材は、レバー部材を除く傾き調整機構よりも第1方向に関して外側にはみ出して揺動することがない。したがって、ヘッドホルダを第1方向に関して小型化することができる。
【0021】
また、前記回転軸は、前記液体噴射面と平行な第1方向に延びて構成されており、前記固定部材が前記レバー部材の角度を制限できる前記複数の位置は、前記レバー部材の先端が前記液体噴射面と直交する方向に関して、前記液体噴射ヘッド及び前記ヘッドホルダの最大存在範囲に収まるような範囲にあってもよい。
【0022】
これによると、レバー部材の角度を、レバー部材の先端が液体噴射面と直交する方向に関して、液体噴射ヘッド及びヘッドホルダの最大存在範囲に収まるような範囲に制限することで、レバー部材は、液体噴射ヘッド及びヘッドホルダよりも前記直交する方向に関して外側にはみ出して揺動することがない。したがって、液体噴射ヘッドを薄型化することができる。また、液体噴射面よりも被噴射媒体に近い側にレバー部材などが突出して被噴射媒体と接触することを防止することができる。
【0023】
また、前記固定部材による前記レバー部材の角度を制限できる前記複数の位置は、前記回転軸を中心とした、前記レバー部材をある角度配置で前記カム部材に装着したときと前記レバー部材を前記回転方向に1つずれた角度配置で前記カム部材に装着したときとの間の角度以上にわたって存在していることが好ましい。
【0024】
これによると、レバー部材の角度を制限できる角度範囲を、レバー部材をある角度配置でカム部材に装着したときとレバー部材を回転方向に1つずれた角度配置でカム部材に装着したときとの間の角度以上にしている。すると、レバー部材をある角度配置でカム部材に装着して、レバー部材を最大幅揺動させたときの、ヘッドホルダの回動する範囲(以下、第1範囲と称する)と、レバー部材を回転方向に1つずれた角度配置でカム部材に装着して、レバー部材を最大幅揺動させたときの、ヘッドホルダの回動する範囲(以下、第2範囲と称する)とに重なる領域が存在することになる。これにより、装置の個体差により、ヘッドホルダの回動する第1範囲と第2範囲の間に調整不可能な範囲が生じるのを抑制することができる。また、第1範囲と第2範囲とを連続した範囲とすることができ、ヘッドホルダの傾き調整範囲を連続的に大きく確保することができる。
【0025】
さらに、前記固定部材は、前記レバー部材の揺動を係止し、前記レバー部材の角度を前記複数の位置でそれぞれ制限する複数の係止部を有していることが好ましい。
【0026】
これによると、レバー部材の揺動を一定の角度範囲の中の複数の角度にて係止することができる。また、複数の係止部の中から、レバー部材の揺動を係止している係止部を確認することで、レバー部材の角度を把握することも可能であり、複数の係止部はレバー部材の揺動角度を検出するためのインジケータとしての役割を果たす。
【0027】
また、前記傾き調整機構は、前記ヘッドホルダに設けられ、所定間隔をあけて配置された一対の規制部材をさらに備え、前記レバー部材は、前記一対の揺動規制部材の間に収容されて、前記一対の規制部材を越えて揺動するのを規制されており、前記回転軸は、前記第1接触部の変位方向に略垂直な方向に延びて構成されており、前記レバー部材が前記一対の規制部材の間で揺動できる角度範囲は、180度よりも狭く、且つ、前記カム部材が調整完了状態においてとりうる回転角度よりも小さな角度範囲に収まっていてもよい。
【0028】
これによると、レバー部材の角度を制限できる範囲を180度よりも狭く、且つ、カム部材が調整完了状態においてとりうる回転角度よりも小さな範囲としている。したがって、レバー部材を揺動させるスペースを小さくすることができる。
【0029】
また、前記カム部材は、前記回転軸と同軸の第1テーパー面を有する第1円筒部を有し、前記レバー部材は、前記第1円筒部の前記第1テーパー面と接触可能な第2テーパー面を有する第2円筒部を有し、前記第1テーパー面と前記第2テーパー面が接圧により係合され、前記カム部材と前記レバー部材が一体となって前記回転軸周りを回転可能であることが好ましい。
【0030】
これによると、カム部材とレバー部材とはテーパー面同士の接圧により係合し、レバー部材を揺動させたときの力を、テーパー面で伝達する。これにより、レバー部材を揺動させたときに、カム部材の第1係合部とレバー部材の第2係合部との間にかかる力を小さくして、第1係合部と第2係合部とに損耗や変形が生じにくくなる。また、第1係合部と第2係合部の間に多少のクリアランスがあっても、カム部材とレバー部材に回転方向の遊びが生じないので、液体噴射ヘッドの傾きを安定に維持することができる。
【0031】
そして、前記カム部材は、第3係合部を有し、前記レバー部材は、前記固定部材に揺動を制限されない状態で、前記カム部材の前記第3係合部に装着できる第4係合部を有していることが好ましい。
【0032】
これによると、レバー部材の揺動が固定部材により制限されることがないため、カム部材を簡便に任意の角度に設定することができる。
【0033】
本発明のヘッドホルダの傾き調整方法は、複数のノズルが所定のノズル配列方向に沿って配列された液体噴射面を有する液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドを保持し、前記液体噴射面と平行な平面内において回動可能なヘッドホルダと、前記平面内において前記ヘッドホルダと少なくとも2箇所が接触し、前記ヘッドホルダの回動を規制する回動規制部材と、前記ヘッドホルダに設けられた回転軸を中心に回転可能で、前記回動規制部材に接触している少なくとも2箇所の接触部のうち少なくとも第1の接触部を、前記平面内の前記第1の接触部と他の第2の接触部とを結ぶ方向と直交する方向成分を含む方向に、前記液体噴射ヘッドに対して相対的に変位させることのできるカム部材を有し、前記カム部材を回転させることによって前記第2の接触部を中心に、前記ヘッドホルダを前記ノズル配列方向がある基準方向と平行になるように回動させることで、前記回動規制部材に規制される前記ヘッドホルダの傾きを調整する、前記ヘッドホルダの傾き調整機構と、を備えており、前記傾き調整機構は、前記カム部材に取り外し可能に装着され、装着状態で前記カム部材と一体的に回転可能なレバー部材を備え、前記カム部材は、第1係合部を有し、前記レバー部材は、前記回転軸の回転方向における複数の異なる角度配置で、前記第1係合部と係合可能な第2係合部を有し、前記複数の異なる角度配置のうちいずれかの角度配置で前記第1係合部と前記第2係合部とが係合された状態で、カム部材に装着されることを特徴とする液体噴射装置におけるヘッドホルダの傾き調整方法であって、前記基準方向に対する前記ノズル配列方向の傾き角度を検出する傾き検出工程と、前記傾き検出工程において検出された前記ノズル列方向の傾き角度に応じて、前記カム部材の前記複数の第1係合部のうち前記レバー部材の前記第2係合部と係合される前記第1係合部を決定し、前記カム部材を回転させて、当該第1係合部を前記レバー部材と装着可能な位置に合わせる第1調整工程と、前記第1調整工程において位置合わせされた前記カム部材の当該第1係合部に対して前記レバー部材の前記第2係合部を係合させて、前記ノズル配列方向が前記基準方向と平行になるように、前記レバー部材を揺動させる第2調整工程と、を備えている。
【0034】
本発明におけるヘッドホルダの傾き調整方法によると、まず、第1調整工程において、ノズル配列方向の基準方向に対する傾きが、レバー部材の揺動により調整可能な範囲内になるように、ヘッドホルダの傾きを大きく調整する。その後、第2調整工程において、レバー部材を揺動させて、ヘッドホルダの傾きを微調整することで、基準方向に対してノズル列方向を平行にすることができる。これにより、レバー部材の揺動範囲を広くすることなく、傾き調整機構を小型化しつつ、ヘッドホルダの傾き調整範囲を大きく確保することができる。
【0035】
また、前記液体噴射装置は、前記傾き調整機構は、前記ヘッドホルダに設けられ、前記レバー部材を複数の位置でそれぞれある角度範囲以上に揺動できないように制限する固定部材をさらに備え、前記回転軸は、前記第1接触部の変位方向に略垂直な方向に延びて構成されており、前記固定部材が前記レバー部材の角度を制限できる前記複数の位置は、180度よりも狭く、且つ、前記カム部材が調整完了状態においてとりうる回転角度よりも小さな角度範囲に収まっており、前記カム部材は、第3係合部を有し、前記レバー部材は、前記固定部材に揺動を制限されない状態で、前記カム部材の前記第3係合部に装着できる第4係合部を有することを特徴とし、第1調整工程において、前記レバー部材の前記第4係合部を前記カム部材の前記第3係合部に係合させて、前記レバー部材を前記固定部材に制限されずに揺動させて前記カム部材を回転させて、当該第1係合部を前記レバー部材と装着可能な位置に合わせることが好ましい。
【0036】
これによると、レバー部材の揺動が固定部材により制限されることがないため、カム部材を簡便に任意の角度に設定することができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、カム部材の回転角度(レバー部材の揺動角度)を細かく設定して、ヘッドホルダの傾きを細かく調整することができる。また、レバー部材の揺動範囲を広くすることなく、傾き調整機構を小型化しながら、ヘッドホルダの傾き調整範囲を大きく確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本実施形態に係るインクジェットプリンタの概略構成を示す平面図である。
【図2】図1のキャリッジの上面図である。
【図3】図1のキャリッジの側面図である。
【図4】図2のA−A線断面図である。
【図5】図3のB−B線断面図である。
【図6】キャリッジ内の傾き調整機構の分解斜視図である。
【図7】カム部材の偏心カムを回転させたときのキャリッジの傾きについて説明するための模式図である。
【図8】レバー部材の揺動角度と装着軸部の溝間の角度について説明する図である。
【図9】キャリッジの傾き調整工程について説明するフローチャート図である。
【図10】第1調整工程におけるキャリッジ近傍の斜視図である。
【図11】変形例におけるキャリッジの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施形態について説明する。本実施形態は、記録用紙にインクを噴射して文字や画像などを記録するインクジェットプリンタに本発明を適用した一例である。
【0040】
まず、本実施形態のインクジェットプリンタ1の概略構成について説明する。図1は、インクジェットプリンタ1の概略構成を示す平面図である。図1に示すように、インクジェットプリンタ1(液体噴射装置)は、記録用紙Pが載置されるプラテン2と、このプラテン2と平行な走査方向(図1の左右方向:第1方向)に往復移動可能なキャリッジ3(ヘッドホルダ)と、このキャリッジ3に搭載されたインクジェットヘッド4(液体噴射ヘッド)と、記録用紙Pを走査方向と直交する搬送方向(図1の上下方向)に搬送する搬送機構5などを有している。
【0041】
プラテン2の上面には、図示しない給紙機構から供給された記録用紙Pが載置される。プラテン2の上方には、走査方向に沿って平行に延びる2本のガイドレール7、8が設けられている。キャリッジ3は、プラテン2と対向する領域において2本のガイドレール7、8に沿って走査方向に往復移動可能に構成されている。
【0042】
キャリッジ3には、2つのプーリ9、10間に巻き掛けられた無端ベルト11が連結されている。キャリッジ駆動モータ12によって無端ベルト11が走行駆動されると、キャリッジ3は、無端ベルト11の走行にともなって走査方向に移動する。後で詳細に説明するが、キャリッジ3は、プラテン2の上面と平行である。キャリッジ3は、搬送方向及び走査方向と平行な水平面(図1の紙面と平行な平面)内において、後述する傾き調整機構30によりガイドレール8(回動規制部材)に対して傾く角度を変更できる。
【0043】
インクジェットヘッド4は、キャリッジ3の下部に搭載されている。インクジェットヘッド4の下面は、プラテン2の上面と上下方向に間隔をあけて平行となっており、複数のノズル6が開口するインク噴射面4aとなっている。複数のノズル6は、搬送方向に並んでノズル列を形成している。このノズル列は、走査方向に4列並んで配置されている。このインク噴射面4aに形成された複数のノズル6は、図示しない圧電式のアクチュエータにより駆動されて、左方のノズル列から順に、それぞれブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクをプラテン2に載置された記録用紙Pに対して噴射する。
【0044】
搬送機構5は、プラテン2を搬送方向から挟むように配置された2つの搬送ローラ13、14を有する。搬送機構5は、これら2つの搬送ローラ13、14によって、プラテン2に載置された記録用紙Pを搬送方向(図1の下方)に搬送する。
【0045】
そして、インクジェットプリンタ1は、プラテン2上に載置された記録用紙Pに対して、キャリッジ3とともに走査方向に往復移動するインクジェットヘッド4からインクを噴射させるとともに、2つの搬送ローラ13、14によって記録用紙Pを搬送方向(図1の前方)に搬送することにより、記録用紙Pに所望の文字や画像などを記録する。
【0046】
次に、キャリッジ3をガイドするガイドレール7、8の構成について詳細に説明する。図2は、図1のキャリッジの上面図である。図3は、図1のキャリッジの側面図である。なお、図2、図3においては、キャリッジ3に加えて、ガイドレール8も合わせて図示している。また、以下においては、必要に応じて、搬送方向下流側を前方、搬送方向上流側を後方、図1の走査方向に沿った左右方向を左右方向、図1の紙面手前方向を上方、図1の紙面奥方向を下方として説明する。
【0047】
図1に示すように、ガイドレール7は、走査方向に長尺な略矩形の板部材である。ガイドレール7の上面における前方側の略半分の領域がキャリッジ3の下面と対向して配置されている。キャリッジの下部に設けられた図示しないスライド部材は、自重によりガイドレール7の上面に接触して、走査方向に沿って摺動可能となっている。
【0048】
また、図1、図2に示すように、ガイドレール8は、ガイドレール7と同じく、走査方向に長尺な略矩形の板部材である。そして、ガイドレール8には、搬送方向に間隔をあけて配置され、上方に立設したガイド壁15、16が形成されている。ガイド壁15とガイド壁16の互いに対向する面、すなわち、ガイド壁15の前方側の面、及び、ガイド壁16の後方側の面が、それぞれ、走査方向に延びたガイド面15a、16aとなっている。
【0049】
次に、キャリッジ3について説明する。図1に示すように、キャリッジ3には、上述したようにインクジェットヘッド4が搭載されているとともに、固定摺動部材20、可動摺動部材21、傾き調整機構30などが設けられている。キャリッジ3は、上方にあいた開口をカバー17(図2参照)に覆われている。
【0050】
固定摺動部材20は、右方端部の前後方向略中央に設けられており、キャリッジ3に固定されて、前後方向からガイドレール8のガイド壁15を挟んでいる。ガイド面15aと対向する面が、ガイド面15aと摺動可能に接触する摺動面20a(図7参照)となっている。
【0051】
可動摺動部材21は、左右方向に関して固定摺動部材20と間隔をあけた、左方端部の前後方向略中央部に設けられており、固定摺動部材20と同様、前後方向からガイドレール8のガイド壁15を挟んでいる。ガイド面15aと対向する面が、ガイド面15aと摺動可能に接触する摺動面21a(図7参照)となっている。また、可動摺動部材21は、固定摺動部材20とは異なり、キャリッジ3に固定されておらず、キャリッジ3に対して前後方向に移動可能となっている。
【0052】
キャリッジ3は、バネなどの弾性部材を含む付勢手段18(図7参照)により、ガイド壁16のガイド面16aに摺動可能に押し付けられている。キャリッジ3は、ガイド面16aから押し返される力によって、ガイド面15a側(後方)に付勢される。これにより、固定摺動部材20の摺動面20a及び可動摺動部材21の摺動面21aがガイド面15aに摺動可能に押し付けられて、キャリッジ3はガイド壁15、16に沿って走査方向にガイドされる。
【0053】
次に、傾き調整機構30について説明する。図4は、図2のA−A線断面図である。図5は、図3のB−B線断面図である。図6は、キャリッジ内の傾き調整機構の分解斜視図である。
【0054】
傾き調整機構30は、水平面内におけるガイドレール8に対するキャリッジ3の角度を変更するための機構である。図4〜図6に示すように、この傾き調整機構30は、スライド部材31、カム部材32、レバー部材33などを有している。
【0055】
スライド部材31は、可動摺動部材21と一体的に形成されて、キャリッジ3の左方端部の前後方向略中央部に設けられた凹部22(図6参照)に収容されている。スライド部材31は、可動摺動部材21とともにキャリッジ3に対して前後方向と平行にスライド移動可能となっている。また、スライド部材31には、その略中央部に、カム部材32の後述する偏心カム34が配置される貫通孔31aが形成されている。
【0056】
カム部材32は、スライド部材31の貫通孔31a内に収容され、水平面内で軸中心に回転する偏心カム34と、偏心カム34の上面に接続され、側面から径方向に突出した突起36を有する方向指示部35と、方向指示部35の上面に接続され、レバー部材33が装着される装着軸部37とを有している。
【0057】
偏心カム34は、キャリッジ3に設けられ、上下方向に延びた回転軸部23に挿通されて、回転軸部23を中心に回転可能となっている。スライド部材31に形成された貫通孔31aは、前後方向に関する長さが、偏心カム34の直径とほぼ同じとなっている。偏心カム34のカム面34aが、貫通孔31aの前後方向の両端部を画定する壁面である接触面31bに接触して、偏心カム34は貫通孔31a内に圧入されている。これにより、偏心カム34が回転すると、偏心カム34が挿通された回転軸部23とカム面34aが接触する接触面31bとの前後方向に関する位置関係が変位する。そして、回転軸部23が設けられたキャリッジ3と接触面31bが設けられたスライド部材31とは前後方向に相対移動する。
【0058】
ここで、カム部材32の偏心カム34を回転させたときのキャリッジ3の傾きについて説明する。図7は、カム部材の偏心カムを回転させたときのキャリッジの傾きについて説明するための模式図である。
【0059】
まず、図7(a)に示すように、初期位置においては、偏心カム34の回転軸からカム面34aまでの幅が最も大きな部分が、スライド部材31内において、左方端に位置している。すなわち、キャリッジ3に設けられた回転軸部23が、スライド部材31内において、右方端に位置している。
【0060】
この状態で、図7(b)に示すように、偏心カム34を時計回り方向に90度回転させると、偏心カム34の最も幅の大きな部分が後方端に移動する。これにより、スライド部材31と回転軸部23との間に挿入される偏心カム34の厚みが増大し、キャリッジ3に設けられた回転軸部23が前方に移動する。
【0061】
したがって、キャリッジ3は、ガイドレール8のガイド壁15と固定摺動部材20との接触部を中心にして、回転軸部23が前方に移動することで、時計周り方向に回動することになる。なお、キャリッジ3の回転軸部23の前方への移動量は、図7(b)に示すように、偏心カム34の最も幅の大きい部分が後方端にきたときに最大となる。
【0062】
また、図7(a)に示す初期位置から、図7(c)に示すように、偏心カム34を反時計回り方向に90度回転させると、偏心カム34の最も幅の大きな部分が前方端に移動する。これにより、スライド部材31と回転軸部23との間に挿入される偏心カム34の厚みが減少し、キャリッジ3に設けられた回転軸部23が後方に移動する。
【0063】
したがって、キャリッジ3は、ガイドレール8のガイド壁15と固定摺動部材20の接触部を中心にして、回転軸部23が後方に移動することで、反時計周り方向に回動することになる。なお、キャリッジ3の回転軸部23の後方への移動量は、図7(c)に示すように、偏心カム34の最も幅の大きい部分が前方端にきたときに最大となる。
【0064】
なお、本実施形態におけるガイドレール8のガイド壁15のガイド面15aと可動摺動部材21の摺動面21aとの接触部が、本発明における第1の接触部に相当する。また、本実施形態におけるガイドレール8のガイド壁15のガイド面15aと固定摺動部材20の摺動面20aとの接触部が、本発明における第2の接触部に相当する。そして、ガイドレール8は、キャリッジ3の走査方向へガイドするとともに、キャリッジ3の回動を規制している。
【0065】
次に、図4〜図6に示すように、カム部材32の装着軸部37は、上方にテーパー状に先細った円錐台形状をしている。装着軸部37には、その外周面の後方側の半周領域に周方向に等間隔に配置された3つの後方溝38aと、前方側の半周領域において、円錐台の中心を軸に3つの後方溝38aと点対称に配置された3つの前方溝38bとが形成されている。3つの後方溝38aのうち、中央の後方溝38aは、方向指示部35の突起36と装着軸部37の周方向の同じ位置に配置されている。そして、方向指示部35の突起36が後方を向き、真ん中の後方溝38aと真ん中の前方溝38bが前後方向に並んだカム部材32の位置が、キャリッジ3に設けられた回転軸部23がスライド部材31内において右方端に位置する、上記初期位置となっている。なお、ここでは便宜上初期位置は前後方向とするが、実際には図2のように傾いていてもよい。
【0066】
レバー部材33は、装着軸部37が嵌挿される貫通孔39aが形成された揺動軸部39と、揺動軸部39の周面から径方向に延在した棒状のレバー部40とを有している。レバー部40は、途中部が屈曲した段差部42となっており、先端部43が先細っている。揺動軸部39の貫通孔39aを画定する内周面には、1つの後方溝38aと当該後方溝38aと点対称に配置された1つの前方溝38bと係合可能な一対の突起41a、41bが形成されている。
【0067】
レバー部材33は、一対の突起41a、41bが3つの後方溝38a及び前方溝38bのいずれか点対称になった一対と選択的に係合することで、複数の異なる角度配置でカム部材32に装着され、装着軸部37のテーパー面37aとの接圧でカム部材32と係合される。後述するキャリッジ3の角度の調整を行う際には、カム部材32に装着されたレバー部材33を揺動させることにより、偏心カム34を回転させて、ガイドレール8に対してキャリッジ3を回動させる。
【0068】
このように、カム部材32の装着軸部37とレバー部材33の揺動軸部39とは接圧により係合し、レバー部材33を揺動させたときの力を、装着軸部37のテーパー面37aで伝達する。これにより、レバー部材33を揺動させたときに、カム部材32の後方溝38a及び前方溝38bとレバー部材33の突起41a、41bとの間にかかる力を小さくする。したがって、後方溝38a、前方溝38b及び突起41a、41bに損耗や変形が生じにくくなる。また、後方溝38a及び前方溝38bとレバー部材33の突起41a、41bとの間に多少のクリアランスがあっても、装着軸部37と揺動軸部39に回転方向の遊びが生じない。したがって、インクジェットヘッド4の傾きを安定に維持することができる。なお、本実施形態における複数の後方溝38a及び複数の前方溝38bが、本発明における第1係合部に相当する。また、本実施形態における突起41a、41bが、本発明における第2係合部に相当する。
【0069】
また、キャリッジ3には、凹部22を形成する壁が後方に延在し、スライド部材31(偏心カム34)の左右方向の幅より若干大きな間隔をあけて上方に立設して配置された一対の規制壁44(規制部材)と、一対の規制壁44の間に配置され、カム部材32に装着されたレバー部40の先端部43と係合可能であり、レバー部材33の揺動する方向に等間隔に配置された複数の係止溝45(固定部材)と、一対の規制壁44の互いに対向する面から突出し、先端間にレバー部40が通過可能な隙間が形成された一対の突出部材46とが設けられている。
【0070】
レバー部材33は、レバー部40が一対の規制壁44の間に配置されるように、装着軸部37に装着された状態では、両規制壁44間を揺動することはできる。しかしながら、一対の規制壁44の間に配置されたレバー部材33は両規制壁44に接触して両規制壁44の外側までは揺動できなくなっている。この一対の規制壁44の間においてレバー部材33の揺動できる範囲は、180度よりも狭くなって、且つ、レバー部材33を除く傾き調整機構30の最大存在範囲に収まるような範囲となっている。ここで、偏心カム34は回転角度を細かく設定するためにそれなりの大きさが必要であり、スライド部材31が収容された凹部22の左右方向に関する幅は、偏心カム34の大きさに合わせて設計することができる。そして、凹部22と左右方向に関して同じ幅となった一対の規制壁44の間にレバー部材33を収容することで、レバー部材33は凹部22よりも左右方向に関して外側に揺動することがない。したがって、キャリッジ3の左右方向に関してレバー部材33が外側にはみ出して位置決め固定されることがなく、キャリッジを小型化することができる。
【0071】
そして、レバー部40の先端部43が複数の係止溝45のいずれかと係合することで、レバー部材33の揺動が係止されている。レバー部40の先端部43は、ある程度以上の力でレバー部40を揺動することで、係止溝45との係止状態が解除される。複数の係止溝45は、基準位置を中心に、左右方向にそれぞれ7つずつ形成されている。すなわち、レバー部材33を基準位置、及び、左右方向にそれぞれ7段階の位置まで揺動させて係止することができる。
【0072】
キャリッジ3に形成された複数の係止溝45の後方には、基準位置を中心に右方をプラス、左方をマイナスとした表示部47が設けられている。この表示部47により、レバー部材33がプラス側またはマイナス側に何段階揺動しているのか(レバー部材33の揺動角度)を容易に検出することができる。また、表示部47がなくても、複数の係止溝45のいずれにレバー部40の先端部43が係止されているかを確認することでも、レバー部材33の揺動角度を検出することができる。このように、表示部47や複数の係止溝45は、レバー部材33の揺動角度を検出するためのインジケータとしての役割を果たす。
【0073】
図8に示すように、一対の規制壁44間におけるレバー部材33の揺動可能な角度範囲D1(すなわち、揺動軸部39(回転軸部23)を中心とした、最も左方側の係止溝45と最も右方側の係止溝45と間の角度範囲)は、回転軸部23を中心とした、装着軸部37の周方向に互いに隣接する2つの後方溝38a間の角度D2以上となっている。なお、本実施形態においては、一例として、角度範囲D1は、基準位置を中心に±10.5°(幅21°)、角度D2は、19.5°、偏心カム34がとりうる回転角度は、基準位置を中心に±30°(幅60°)となっている。そして、仮にレバー部材33とカム部材32が一体であれば、レバー部材33は、基準位置を中心に±30度揺動しなければならないので、レバー部材33の左右方向に関する揺動幅は、2×レバー部40の長さL×sin30°を要するが、本実施形態では、2×レバー部40の長さL×sin10.5°の範囲に収めることができる。
【0074】
また、本実施形態においては、係止溝45は回転軸部23を中心に1.5°刻みで±7段階の計15箇所に設けられている。したがって、レバー部材33は、±1.5×7=±10.5°の範囲において1.5°刻みで固定することができる。一方、カム部材32(装着軸部37)の隣接する2つの後方溝38a間は19.5°の角度をなしており、これは係止溝45の13段階分の角度に相当する(19.5÷1.5=13)。すなわち、カム部材32に対してレバー部材33を装着する際に、後方溝38aをひとつずらすことは、レバー部材33を13段階回したのと同等のスライダ部材移動を実現する。
【0075】
例えば、カム部材32を時計回りに9°回転させたい場合、レバー部材33をカム部材32の中央の後方溝38aと係合させておいて、レバー部材33を時計回りに6段階回してもよい(1.5°×6=9°)。あるいは、レバー部材33をカム部材32の中央の後方溝38aより反時計回りに隣接する後方溝38aと係合させておいて、レバー部材33を反時計回りに7段階回してもよい(19.5°−1.5°×7=9°)。このように一部の角度範囲については調整の方法が2通り存在するようにできる。
【0076】
したがって、カム部材32の1つの後方溝38aにレバー部材33の突起41aを係合して、レバー部材33を最大幅揺動させたときの、キャリッジ3の回動する範囲(以下、第1範囲と称する)と、カム部材32の上記後方溝38aと周方向に隣接する後方溝38aにレバー部材33の突起41aを係合して、レバー部材33を最大幅揺動させたときの、キャリッジ3の回動する範囲(以下、第2範囲と称する)とに重なり、調整の方法が2通りの領域が存在することになる。
【0077】
もし仮に、カム部材32の隣接する後方溝38aが例えば24°の角度をなしていたとすると、レバー部材33をカム部材32の中央の後方溝38aと係合させておいて、レバー部材33を時計回りに7段階回しても(1.5°×7=10.5°)、レバー部材33をカム部材32の中央の後方溝38aより反時計回りに隣接する後方溝38aと係合させておいて、レバー部材33を反時計回りに7段階回しても(24°−1.5°×7=13.5°)、カム部材32を時計回りに12°回転させた状態に調整することはできない。
【0078】
これにより、インクジェットプリンタ1の個体差により、キャリッジ3の回動する第1範囲と第2範囲の間に調整不可能な範囲が生じるのを抑制することができる。また、第1範囲と第2範囲とを連続した範囲とすることができ、キャリッジ3の回動する範囲(角度)を連続的に大きく確保することができる。
【0079】
また、一対の突出部材46は、一対の規制壁44の間の左右方向中央に、レバー部40が通過可能な隙間が形成されている。そして、レバー部材33は、レバー部40の先端部43が後方を向いた状態で、一対の突出部材46の隙間を通過して、装着軸部37に装着可能となっている。つまり、装着軸部37は、3つの後方溝38a及び前方溝38bのうちいずれか1組が前後方向に並んだ状態でレバー部材が装着される。そして、レバー部材33が段差部42を有していることで、レバー部40の先端部43が一対の突出部材46の隙間を通過して、一対の突出部材46の下方を揺動可能となっている
【0080】
次に、傾き調整機構30によりキャリッジ3の傾きを調整する工程について説明する。図9は、キャリッジの傾き調整工程について説明するフローチャート図である。図9に示すように、まず、製品組み立て時において、キャリッジ3にインクジェットヘッド4を搭載した後、初期位置として、3つの後方溝38aのうち、真ん中の後方溝38a(方向指示部35の突起36)を後方に向けて、レバー部材33を取り付ける(S1)。そして、レバー部材33を中央に合わせる(S2)。このときのキャリッジ3の姿勢における、搬送方向に対してノズル配列方向が平行からどれだけ傾いているか傾き角度を検出する(傾き検出工程:S3)。
【0081】
この検出方法としては、例えば、搬送方向に搬送される記録用紙Pに1本のノズル列を構成するノズル6から一直線の線が形成されるようにインクを噴射させて、記録用紙Pに対する、インクが着弾して形成された線の傾き角度を検出してもよい。また、インクジェットヘッド4が搭載されたキャリッジ3を治具に取り付けた状態で、ノズル6を顕微鏡などで直接測定してノズル配列方向の所定方向に対する傾き角度を検出して、この所定方向と搬送方向の関係から、搬送方向に対するノズル配列方向の傾き角度を検出してもよい。
【0082】
そして、傾き検出工程において検出されたノズル列の傾き角度を、この傾き角度を補正するためのレバー部材33の移動量Rに換算する(S4)。移動量Rが±7段階以内相当の場合には(S5:Yes)、レバー部材33をそのまま移動量Rだけ移動させて、ノズル配列方向と基準方向とを平行にする(S6)。
【0083】
また、移動量Rが、±7段階よりも大きく(S5:No)、+8〜+20段階相当の場合には(S7:Yes)、カム部材32を時計周りに1目盛り回転させて、工程S1の場合とは異なる後方溝38aが後方を向いてカム部材32に対して異なる角度配置でレバー部材33を取り付ける(S8)。そして、レバー部材33を中央に合わせる(S9)。その後、レバー部材33を移動量(R−13)だけ移動させて、ノズル配列方向と基準方向とを平行にする(S10)。
【0084】
また、移動量Rが、+8〜+20段階相当ではなく(S7:No)、−8〜−20段階相当の場合には(S11:Yes)、カム部材32を反時計周りに1目盛り回転させて、工程S1、S8の場合とは異なる後方溝38aが後方を向いてカム部材32に対して異なる角度配置でレバー部材33を取り付ける(S12)。そして、レバー部材33を中央に合わせる(S13)。その後、レバー部材33を移動量(R+13)だけ移動させて、ノズル配列方向と基準方向とを平行にする(S14)。そして、レバー部40の先端部43を所定位置の係止溝45と係止させて、ガイドレール8に対するキャリッジ3の傾きを固定して、キャリッジ3の傾き調整を終了する。なお、工程S7のように、カム部材32に対してレバー部材33を付け替える(カム部材32に対するレバー部材33の角度配置を変更する)か否かの判定は、移動量Rが+7と+8の間ではなく、移動量Rが+6と+7の間、あるいは、移動量Rが+5と+6の間で行ってもよい。同様に、工程S11における判定は、移動量Rが−7と−8の間ではなく、移動量Rが−6と−7の間、あるいは、移動量Rが−5と−6の間で行ってもよい。しかしながら、カム部材32に対してレバー部材33を付け替える頻度を減らして作業量を少なくするには、工程S7(S11)のように、カム部材32に対してレバー部材33を付け替えるか否かの判定は、移動量Rが+7(−7)と+8(−8)の間であることが好ましい。
【0085】
また、移動量Rが、−8〜−20段階相当ではない場合、すなわち、±20よりも大きい調整が必要な場合には(S11:No)、そのインクジェットヘッド4を部品不良と判定して交換・修理などを行うか、あるいは、廃棄する。なお、本実施形態における工程S5、S7〜S9、S11〜S13が本発明における第1調整工程に相当する。また、本実施形態における工程S6、S10、S14が本発明における第2調整工程に相当する。さらに、本実施形態における搬送方向が、本発明における基準方向に相当する。
【0086】
ここで、工程S8、S12において、偏心カム34をスライド部材31の貫通孔31a内で回転させるときに、偏心カム34は貫通孔31a内に圧入されているため、作業者がカム部材32を手に持って回転させるのは困難である。そこで、図10に示すように、レバー部材33は、上下方向を逆にしても装着軸部37に装着可能となっており、また、装着軸部37に3つの後方溝38aに加えて、3つの後方溝38aと点対称に3つの前方溝38bが形成されていることで、前後方向を逆にしても装着軸部37に装着可能となっている。
【0087】
そこで、レバー部材33を上下、前後を逆にして装着軸部37に装着して、レバー部材33を揺動させる。これにより、レバー部材33は、一対の規制壁44にその揺動を規制されることがなく、3つの後方溝38aのうち左右いずれかの後方溝38aが後方を向くように偏心カム34を容易に回転させることができる。このとき、3つの後方溝38aのうち真ん中の後方溝38aと突起36が同じ向きを向いているため、後方溝38aと前方溝38bを誤認識することを防止することができる。なお、本実施形態における複数の後方溝38a及び複数の前方溝38bが、本発明における第3係合部に相当する。また、本実施形態における突起41a、41bが、本発明における第4係合部に相当する。この場合、本実施形態では第3係合部は第1係合部を、第4係合部は第2係合部をそれぞれ兼ねていることになるが、別個に設けてもかまわない。
【0088】
本実施形態におけるインクジェットプリンタ1によると、カム部材32を回転させることで、ガイドレール8のガイド壁15のガイド面15aと固定摺動部材20の摺動面20aとの接触部を回動中心として、キャリッジ3の回転軸部23をガイドレール8に対して水平面内の回動方向に変位させることによって、キャリッジ3を水平面内で回動させて、ガイドレール8に対するキャリッジ3の傾きを調整している。このとき、カム部材32を直接回転させずに、カム部材32にレバー部材33を装着して、レバー部材33を揺動させてカム部材32を回転させている。
【0089】
これにより、カム部材32の小さな回転角度に対して、レバー部材33を揺動させたときのレバー部40の先端側の移動量が大きいため、キャリッジ3の傾きを細かく調整しやすくなる。したがって、カム部材32の回転角度(レバー部材33の揺動角度)を細かく設定して、キャリッジ3の傾きを細かく調整することができる。
【0090】
また、カム部材32の3つの後方溝38a(前方溝38b)に対する、レバー部材33の突起41a(突起41b)が係合する後方溝38a(前方溝38b)の位置を切り換えることで、レバー部材33を複数の異なる角度でカム部材32に装着することができる。これにより、後方を向いたレバー部材33が装着されたときのカム部材32の回転角度を切り換えて、キャリッジ3の傾き調整範囲をずらすことができる。したがって、レバー部材33の揺動範囲を広くすることなく、傾き調整機構30を小型化しながら、キャリッジ3の傾き調整範囲を大きく確保することができる。なお、本実施形態におけるキャリッジ3の傾き調整範囲に対応した偏心カム34の回転角度が、本発明におけるカム部材が調整完了状態においてとりうる回転角度に相当する。
【0091】
また、後方溝38a(前方溝38b)の数を増やせば、キャリッジ3の傾き調整範囲をさらに大きく確保することができる。さらに、レバー部材33の長さを長くすれば、キャリッジ3の傾きをより細かく高分解能に調整することができる。
【0092】
そして、上述した傾き調整機構30によるキャリッジ3の傾き調整によると、まず、第1調整工程において、ノズル配列方向の搬送方向に対する傾きが、レバー部材33の揺動により調整可能な範囲内になるように、キャリッジ3の傾きを大きく調整する。その後、第2調整工程において、レバー部材33を揺動させて、キャリッジ3の傾きを微調整することで、搬送方向に対してノズル列方向を平行にすることができる。これにより、レバー部材の揺動範囲を広くすることなく、傾き調整機構30を小型化しつつ、キャリッジ3の傾き調整範囲を大きく確保することができる。
【0093】
次に、本実施の形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。ただし、本実施形態と同様の構成については、適宜その説明を省略する。
【0094】
本実施形態においては、一対の規制壁44間におけるレバー部材33の揺動可能な角度範囲は、回転軸部23を中心とした、装着軸部37の周方向に互いに隣接する2つの後方溝38a間の角度以上としていたが、この角度よりも小さい角度範囲であってもよい。この場合、キャリッジ3の傾き調整可能範囲を連続的に大きく確保することはできないが、搬送方向に対するノズル配列方向の傾きの傾向があらかじめ予測されているときなどにおいては、必要な範囲においてだけキャリッジ3の傾きを調整可能にすれば、キャリッジ3の傾き調整可能範囲を連続的に大きく確保する必要はない。
【0095】
また、上述した実施形態においては、偏心カム34は真円であったが、これには限られず、例えば、楕円形状の偏心カムであってもよい。
【0096】
また、レバー部材33の突起41a(突起41b)と係合される装着軸部37の後方溝38a(前方溝38b)の数は、3つに限らず、2つまたは4つ以上でもよい。さらに、レバー部材33の先端部43と係止される係止溝45の数も、基準位置に加えて±7段階の15段階に限らず、任意の段階分だけ形成されていてもよい。
【0097】
さらに、装着軸部37には、後方溝38a及び前方溝38bのいずれかの溝のみ形成されていてもよい。この場合、レバー部材33には、後方溝38aに対応する突起41a、または、前方溝38bに対応する突起41bのみ形成されていればよい。
【0098】
また、上述した実施形態においては、偏心カム34のカム面34aがスライド部材31の接触面31bに直接接触していたが、これには限られず、偏心カム34のカム面34aの前後方向に関する端部と、スライド部材31との間に別の部材や機構が介在しており、スライド部材31が、これらの部材や機構を介して偏心カム34のカム面34aによってスライド移動させられるように構成されていてもよい。また、スライド部材31が設けられずに、偏心カム34のカム面34aがガイド壁15のガイド面15aに直接接触していてもよい。
【0099】
また、上述した実施形態では、レバー部材33の揺動軸部39に突起41a、41bが形成され、カム部材32にこれらの突起41a(突起41b)と係合可能な後方溝38a(前方溝38b)が形成されており、複数の位置のいずれかに選択的に位置決め可能となっていたが、カム部材32に対するレバー部材33の位置決めを行うための構成はこれには限られない。例えば、レバー部材33の突起41a(突起41b)が形成されていた部分に1つの溝が形成されているとともに、カム部材32の後方溝38a(前方溝38b)が形成されていた部分に複数の突起が形成されていてもよい。また、突起と溝による係合に限らず、あらゆる形状において係合してもよい。
【0100】
また、上述した実施形態においては、偏心カム34の回動軸(回転軸部23)は、上下方向に延びていたが、これには限られず、偏心カム34の回動軸は、揺動方向と交差する方向であれば、上下方向以外の方向に延びていてもよい。例えば、図11に示すように、偏心カム134の回転軸(キャリッジ3に設けられた回転軸部123)は、左右方向に延びていてもよい。そして、レバー部材133は、図11に仮想線で示すような、鉛直面内においてキャリッジ3の上端位置と下端位置との間に収まる範囲で揺動を制限するのが好ましい。すると、レバー部材133は、キャリッジ3よりも上下方向に関して外側にはみ出して揺動することがない。したがって、インクジェットヘッド4を薄型化することができる。また、インク噴射面4aよりも記録用紙Pに近い側にレバー部材133などが突出して記録用紙Pと接触することを防止することができる。
【0101】
さらに、複数の係止溝45は設けられていなくてもよい。この場合、レバー部材33は、係止溝45がなくても偏心カム34が貫通孔31a内に圧入されることによる圧入摩擦力だけで回転が固定されていて角度を維持することができる。これにより、調整における分解能を上げることができる。
【0102】
また、上述した実施形態においては、ノズル配列方向が搬送方向に配列されており、本発明における基準方向は搬送方向であったが、ノズル配列方向が搬送方向に対して斜めに配列されていてもよく、その場合には、本発明における基準方向は搬送方向に対して斜めの方向となる。
【0103】
また、以上では、シリアル型のインクジェットプリンタに本発明を適用したが、本発明はライン型の複数のインクジェットヘッドを有するインクジェットプリンタに適用することも可能である。ライン型のインクジェットプリンタにおいては、複数のノズルは搬送方向と直交する方向に配列されたノズル列を形成している。そして、インクジェットヘッド間でノズル列方向が搬送方向に直交する方向に対して傾くと、直線がずれたり異なる色を同じ位置に着弾させることができなくなったりする。したがって、ライン型のインクジェットプリンタの場合においても、複数のインクジェットヘッドのある基準の配列方向に対して傾きを調整する必要がある。本変形例における搬送方向と直交する方向が本発明における基準方向に相当する。
【0104】
また、ノズルからインクを噴射することによって印刷を行うインクジェットプリンタには限られず、ノズルからインク以外の液体を噴射する液体噴射装置に本発明を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0105】
1 インクジェットプリンタ
3 キャリッジ
4 インクジェットヘッド
4a インク噴射面
6 ノズル
8 ガイドレール
15 ガイド壁
15a ガイド面
20 固定摺動部材
21 可動摺動部材
23 回転軸部
30 傾き調整機構
32 カム部材
33 レバー部材
38a 後方溝
38b 前方溝
41a、41b 突起
45 係止溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルが所定のノズル配列方向に沿って配列された液体噴射面を有する液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドを保持し、前記液体噴射面と平行な平面内において回動可能なヘッドホルダと、
前記平面内において前記ヘッドホルダと少なくとも2箇所が接触し、前記ヘッドホルダの回動を規制する回動規制部材と、
前記ヘッドホルダに設けられた回転軸を中心に回転可能で、前記回動規制部材に接触している少なくとも2箇所の接触部のうち少なくとも第1の接触部を、前記平面内の前記第1の接触部と他の第2の接触部とを結ぶ方向と直交する方向成分を含む方向に、前記液体噴射ヘッドに対して相対的に変位させることのできるカム部材を有し、前記カム部材を回転させることによって前記第2の接触部を中心に、前記ヘッドホルダを前記ノズル配列方向がある基準方向と平行になるように回動させることで、前記回動規制部材に規制される前記ヘッドホルダの傾きを調整する、前記ヘッドホルダの傾き調整機構と、を備えており、
前記傾き調整機構は、
前記カム部材に取り外し可能に装着され、装着状態で前記カム部材と一体的に回転可能なレバー部材を備え、
前記カム部材は、第1係合部を有し、
前記レバー部材は、前記回転軸の回転方向における複数の異なる角度配置で、前記第1係合部と係合可能な第2係合部を有し、前記複数の異なる角度配置のうちいずれかの角度配置で前記第1係合部と前記第2係合部とが係合された状態で、カム部材に装着されることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
前記ヘッドホルダは、前記液体噴射ヘッドを保持し、前記液体噴射面と平行な第1方向に往復移動するキャリッジであり、
前記回動規制部材は、前記第1方向と平行で且つ前記液体噴射面と平行ではない面上に延在するガイド面を有し、前記キャリッジを前記ガイド面に沿ってガイドするガイド部材であることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記傾き調整機構は、前記ヘッドホルダに設けられ、前記レバー部材を複数の位置でそれぞれある角度範囲以上に揺動できないように制限する固定部材をさらに備え、
前記回転軸は、前記第1接触部の変位方向に略垂直な方向に延びて構成されており、
前記固定部材が前記レバー部材の角度を制限できる前記複数の位置は、180度よりも狭く、且つ、前記カム部材が調整完了状態においてとりうる回転角度よりも小さな角度範囲に収まっていることを特徴とする請求項1または2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記回転軸は、前記液体噴射面と直交する方向に延びて構成されており、
前記固定部材が前記レバー部材の角度を制限できる前記複数の位置は、前記レバー部材の先端が前記液体噴射面と平行な第1方向に関して、前記レバー部材を除く前記傾き調整機構の最大存在範囲に収まるような範囲にあることを特徴とする請求項3に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記回転軸は、前記液体噴射面と平行な第1方向に延びて構成されており、
前記固定部材が前記レバー部材の角度を制限できる前記複数の位置は、前記レバー部材の先端が前記液体噴射面と直交する方向に関して、前記液体噴射ヘッド及び前記ヘッドホルダの最大存在範囲に収まるような範囲にあることを特徴とする請求項3に記載の液体噴射装置。
【請求項6】
前記固定部材による前記レバー部材の角度を制限できる前記複数の位置は、前記回転軸を中心とした、前記レバー部材をある角度配置で前記カム部材に装着したときと前記レバー部材を前記回転方向に1つずれた角度配置で前記カム部材に装着したときとの間の角度以上にわたって存在していることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の液体噴射装置。
【請求項7】
前記固定部材は、前記レバー部材の揺動を係止し、前記レバー部材の角度を前記複数の位置でそれぞれ制限する複数の係止部を有していることを特徴とする請求項3〜6のいずれか1項に記載の液体噴射装置。
【請求項8】
前記傾き調整機構は、前記ヘッドホルダに設けられ、所定間隔をあけて配置された一対の規制部材をさらに備え、
前記レバー部材は、前記一対の揺動規制部材の間に収容されて、前記一対の規制部材を越えて揺動するのを規制されており、
前記回転軸は、前記第1接触部の変位方向に略垂直な方向に延びて構成されており、
前記レバー部材が前記一対の規制部材の間で揺動できる角度範囲は、180度よりも狭く、且つ、前記カム部材が調整完了状態においてとりうる回転角度よりも小さな角度範囲に収まっていることを特徴とする請求項1または2に記載の液体噴射装置。
【請求項9】
前記カム部材は、前記回転軸と同軸の第1テーパー面を有する第1円筒部を有し、
前記レバー部材は、前記第1円筒部の前記第1テーパー面と接触可能な第2テーパー面を有する第2円筒部を有し、前記第1テーパー面と前記第2テーパー面が接圧により係合され、前記カム部材と前記レバー部材が一体となって前記回転軸周りを回転可能であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の液体噴射装置。
【請求項10】
前記カム部材は、第3係合部を有し、
前記レバー部材は、前記固定部材に揺動を制限されない状態で、前記カム部材の前記第3係合部に装着できる第4係合部を有していることを特徴とする請求項3に記載の液体噴射装置。
【請求項11】
複数のノズルが所定のノズル配列方向に沿って配列された液体噴射面を有する液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドを保持し、前記液体噴射面と平行な平面内において回動可能なヘッドホルダと、
前記平面内において前記ヘッドホルダと少なくとも2箇所が接触し、前記ヘッドホルダの回動を規制する回動規制部材と、
前記ヘッドホルダに設けられた回転軸を中心に回転可能で、前記回動規制部材に接触している少なくとも2箇所の接触部のうち少なくとも第1の接触部を、前記平面内の前記第1の接触部と他の第2の接触部とを結ぶ方向と直交する方向成分を含む方向に、前記液体噴射ヘッドに対して相対的に変位させることのできるカム部材を有し、前記カム部材を回転させることによって前記第2の接触部を中心に、前記ヘッドホルダを前記ノズル配列方向がある基準方向と平行になるように回動させることで、前記回動規制部材に規制される前記ヘッドホルダの傾きを調整する、前記ヘッドホルダの傾き調整機構と、を備えており、
前記傾き調整機構は、
前記カム部材に取り外し可能に装着され、装着状態で前記カム部材と一体的に回転可能なレバー部材を備え、
前記カム部材は、第1係合部を有し、
前記レバー部材は、前記回転軸の回転方向における複数の異なる角度配置で、前記第1係合部と係合可能な第2係合部を有し、前記複数の異なる角度配置のうちいずれかの角度配置で前記第1係合部と前記第2係合部とが係合された状態で、カム部材に装着されることを特徴とする液体噴射装置におけるヘッドホルダの傾き調整方法であって、
前記基準方向に対する前記ノズル配列方向の傾き角度を検出する傾き検出工程と、
前記傾き検出工程において検出された前記ノズル列方向の傾き角度に応じて、前記カム部材の前記複数の第1係合部のうち前記レバー部材の前記第2係合部と係合される前記第1係合部を決定し、前記カム部材を回転させて、当該第1係合部を前記レバー部材と装着可能な位置に合わせる第1調整工程と、
前記第1調整工程において位置合わせされた前記カム部材の当該第1係合部に対して前記レバー部材の前記第2係合部を係合させて、前記ノズル配列方向が前記基準方向と平行になるように、前記レバー部材を揺動させる第2調整工程と、を備えていることを特徴とするヘッドホルダの傾き調整方法。
【請求項12】
前記液体噴射装置は、
前記傾き調整機構は、前記ヘッドホルダに設けられ、前記レバー部材を複数の位置でそれぞれある角度範囲以上に揺動できないように制限する固定部材をさらに備え、
前記回転軸は、前記第1接触部の変位方向に略垂直な方向に延びて構成されており、
前記固定部材が前記レバー部材の角度を制限できる前記複数の位置は、180度よりも狭く、且つ、前記カム部材が調整完了状態においてとりうる回転角度よりも小さな角度範囲に収まっており、
前記カム部材は、第3係合部を有し、
前記レバー部材は、前記固定部材に揺動を制限されない状態で、前記カム部材の前記第3係合部に装着できる第4係合部を有することを特徴とし、
第1調整工程において、前記レバー部材の前記第4係合部を前記カム部材の前記第3係合部に係合させて、前記レバー部材を前記固定部材に制限されずに揺動させて前記カム部材を回転させて、当該第1係合部を前記レバー部材と装着可能な位置に合わせることを特徴とする請求項11に記載のヘッドホルダの傾き調整方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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