説明

液体噴射装置用パッキンおよび液体噴射装置

【課題】液体噴射装置を倒立状態で使用しても、大気取込流路から液体収容器内の液状内容物が漏れ出すことがないようにする。
【解決手段】液体噴射装置用パッキン1は、液体収容器20と、液体収容器20に装着される液体噴射装置10との間に配置された部材で、外部から液体収容器20の内部へ大気を取り込む大気取込流路2を備える。この液体噴射装置用パッキン1は、大気を通過させるが液体の通過を遮断する切り込み幅を有するスリット3である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体収容器と液体収容器に装着される液体噴射装置との間に配置され、液体噴射装置のポンプ動作による液体収容器内からの液状内容物の吸い上げに伴って外部から液体収容器の内部へ大気を取り込む大気取込手段を備えた噴射装置用パッキン、及び噴射装置用パッキンを備えた液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を入れる容器と、容器に装着され容器内の液状内容物を吸い上げる往復ポンプと、往復ポンプによって吸い上げられた液状内容物を噴射する噴射ノズルを備えた液体噴射装置が知られている。
【0003】
液体噴射装置には、正立姿勢及び倒立姿勢の両姿勢において液体収容器の内容物を噴射可能なものがあり、正倒立両用噴霧器として知られている。特許文献1には、倒立状態において容器内の空気が往復ポンプへ吸入されることによる不完全な噴霧動作を防止することができる噴射装置が記載されている。2つの空気吸込防止弁を備え、正立時には一方の空気吸込防止弁が閉じ倒立時には他方の空気吸込防止弁が閉じるよう構成されており、何れの際にも容器中の空気が往復ポンプへ吸入されないようになっている。
【0004】
ところで、液体収容器に液体噴射装置が装着された液体噴射製品において、液状内容物の使用に伴い容器内の空間が増してゆくが、空間が増した分だけ容器内に大気を補給してやらないと容器内が真空状態に近くなり、真空状態に耐えられず容器がへこんでしまう現象が生じる。この現象を防ぐため、一般に液体収容器に装着される液体噴射装置には、噴射に伴う容器内の内容物減少に基づく内部の減圧を補償するため、外部から容器内部へ空気を取り込む大気取込手段が設けられている(特許文献2,特許文献3参照)。
【0005】
図2に、大気取込手段を備えた従来の正倒立両用噴射装置を示す。図2(b)に示すように、正倒立両用噴射装置50は、液体収容器100との間に配置されるパッキン30を備えている。図2(a)に示すようにパッキン30には、大気取込流路31,31が形成されており、ボタン部51が押下され噴射口52から内容物が噴射されると同時に、矢印XからY方向に大気が取り込まれ、大気取込流路31,31を介して液体収容器内部に大気が取り込まれる(矢印Z)。これにより、液体収容器内の内容物の減少に基づく内部の減圧を補償することができるようになっている。
【0006】
【特許文献1】特開昭55−157352号公報
【特許文献2】特開昭53−141918号公報
【特許文献3】特開昭58−170562号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これら特許文献に記載のような正倒立両用噴霧器や図2に記載の正倒立両用噴射装置においてを倒立状態で使用する場合、大気取込流路の開口面積が大きいと液体収容器内の液状内容物が大気取込流路から漏れ出す虞がある。
【0008】
そこで、本発明は、液体噴射装置を倒立状態で使用しても、大気取込流路から液体収容器内の液状内容物が漏れ出すことがないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決することのできる本発明は、液体収容器と前記液体収容器に装着される液体噴射装置との間に配置され、前記液体噴射装置のポンプ動作による前記液体収容器内からの液状内容物の吸い上げに伴って外部から前記液体収容器の内部へ大気を取り込む大気取込手段を備えた液体噴射装置用パッキンであって、
前記大気取込手段は、大気を通過させるが液体の通過を遮断する切り込み幅を有するスリットであることを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、大気取込手段は大気を通過させるが液体の通過を遮断するので、噴射装置を倒立状態で使用しても、大気取込流路から液体収容器内の液状内容物が漏れ出すことがない。
【0011】
さらに、上記構成によれば、大気取込手段をスリットとすることで、液体噴射装置用パッキンに大気取込流路を簡単に形成することができる。
【0012】
また、本発明の液体噴射装置は、前記液体収容器に装着され、上記液体噴射装置用パッキンを備えたことを特徴とする。
【0013】
上記構成によれば、液体噴射装置を倒立状態で使用しても、大気取込流路から液体収容器内の液体が漏れ出すことを防止することが可能になり、液体噴射装置の使い勝手を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る液体噴射装置用パッキン及び液体噴射装置用パッキンを備えた液体噴射装置の実施形態を図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0015】
図1(b)に示すように、液体噴射装置用パッキン1は、液体収容器20と、液体収容器20に装着される液体噴射装置10との間に配置された部材で、外部から液体収容器20の内部へ大気を取り込む大気取込流路(大気取込手段)2を備える。
【0016】
具体的には、図1(a)に示すように液体噴射装置用パッキン1は、外周4が円弧状に形成され、中央に開口部5が形成されたドーナツ状の部材で、開口部5の周縁5aから半径方向外方に延びるスリット3が180°の間隔をおいて形成されている。
【0017】
液体噴射装置用パッキン1は、例えば商品名ハイシート(製造メーカー:三井化学ファブロ株式会社)で、ある程度の弾力を備えたパッキン材質である。
商品名ハイシートとしての液体噴射装置用パッキン1は、PEの低発砲独立気泡シートの両面にPPフィルムが貼り付けられたシート状のものが打ち抜かれ、カットを入れることでスリット3,3が形成されたものである。
なお、液体噴射装置用パッキン1は、その他の材質として、PPの気泡タイプ、ラバーまたはPE単体などで形成することが可能である。
【0018】
スリット3は、かみそりで切れ目を入れたもので、切れ目がふさがった状態になるようにスリット幅が形成されている。
このスリット3は、大気を通過させるが液体の通過を遮断する切り込み幅を有し、大気取込流路2の役割を果たすものである。
【0019】
液体噴射装置10は、液体収容器20の取出口に取付キャップ11がねじ結合され、液体収容器20の取出口と取付キャップ11との間に液体噴射装置用パッキン1が挟持され、液体収容器20の内部に噴射バルブ12が差し込まれた状態に収容され、噴射バルブ12の頂部にステム13が設けられ、ステム13にボタン部14が係止されている。液体収容器20の内部には液状内容物21が充填されている。
【0020】
液体噴射装置10によれば、図1(b)に示す正立状態において、ボタン部14が押下され内部ピストン(スプリング)12が押し下げられると、液体噴射装置10の取付キャップ11部分のボンプ動作によって液状内容物が吸い上げられ、一定量の液状内容物21がステム13まで導かれて、ボタン部14の噴射口15から噴射される。
【0021】
本実施形態では、液状内容物の吸い上げに伴って外部から液体収容器20の内部へ大気を取り込む。すなわち、矢印XからY方向に大気が取り込まれ、液体噴射装置用パッキン1のスリット(大気取込流路)3,3を介して液体収容器20内部に大気が取り込まれる(矢印Z)。これにより、液体収容器20内の液状内容物21の減少に基づく内部の減圧を補償する。
【0022】
また、液体噴射装置10を倒立状態で使用する場合には、液体収容器20内の内容物21が液体噴射装置用パッキン1まで流れる。
ここで、スリット3は、大気を通過させるが液体の通過を遮断するので、液体噴射装置10を倒立状態で使用しても、スリット3から液体収容器20内の液状内容物21が漏れ出すことを防止する。
これにより、液体噴射装置10の使い勝手を高めることができる。
【0023】
なお、前記実施の形態では、大気取込流路2としてスリット3を例示したが、大気取込流路2はこれに限定するものではなく、大気を通過させるが液体の通過を遮断する機能を備えたものであれば使用可能である。
【0024】
また、前記実施の形態では、液体噴射装置用パッキン1にスリット3が180°の間隔をおいて2箇所に形成した例について説明したが、これに限定しない、3箇所などの他の複数箇所に形成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】(a)は本実施形態にかかるパッキンの上面図であり、(b)は、本実施形態にかかるパッキンを備えた液体噴射装置の中央断面図である。
【図2】(a)は従来のパッキンの上面図であり、(b)は、従来のパッキンを備えた液体噴射装置の中央断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1:液体噴射装置用パッキン、2:大気取込流路、3:スリット、10:液体噴射装置、20:液体収容器、21:液状内容物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体収容器と前記液体収容器に装着される液体噴射装置との間に配置され、前記液体噴射装置のポンプ動作による前記液体収容器内からの液状内容物の吸い上げに伴って外部から前記液体収容器の内部へ大気を取り込む大気取込手段を備えた液体噴射装置用パッキンであって、
前記大気取込手段は、大気を通過させるが液体の通過を遮断する切り込み幅を有するスリットであることを特徴とする液体噴射装置用パッキン。
【請求項2】
前記液体収容器に装着され、請求項1の液体噴射装置用パッキンを備えたことを特徴とする液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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