液体噴射装置
【課題】制約のないフェイスアレイシュータ型の液体噴射装置を提供する。
【解決手段】他の技術に関しては構造上困難であった問題を克服するための装置を形成するための基材として、材料層を使用する。ノズルを組み入れた表面層の励起を利用する。これらのノズルは、アドレス可能に1つの表面層上に配置されて、液体噴射アレイを形成しており、様々な広範囲の液体をもって、高周波数で作動させる。
【解決手段】他の技術に関しては構造上困難であった問題を克服するための装置を形成するための基材として、材料層を使用する。ノズルを組み入れた表面層の励起を利用する。これらのノズルは、アドレス可能に1つの表面層上に配置されて、液体噴射アレイを形成しており、様々な広範囲の液体をもって、高周波数で作動させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、「フェイスシューター」アレイとして知られた形態の液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットに関する技術分野においては、複数のノズルと組み合わされた複数の毛細管チャンネルまたはチャンバ(以下、「セル」と総称する)の共振を利用して、圧縮波をもたらし、液体をこれらのノズルから噴射させる数多くの液体噴射装置がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許第0728583A2
【特許文献2】国際公開第WO−A−94/22592
【特許文献3】欧州特許公開第EP−A−0615470
【特許文献4】日本特許公開第09−226111
【特許文献5】日本特許公開第10−58672
【特許文献6】日本特許公開第10−58673
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの技術は、これらのセルの液体共振周波数により、それらの最大作動周波数において制約を受ける。これに加えて、セルは流れを制限するものとして作用して、セル内の圧力を発生させ、これにより、滴下放出を生ずる。従って、セルを通過する流れは、補充量によって制限されて、このような装置の作動周波数に対する更なる上方限界を生ぜしめる。その上、セルは、作動を著しく阻害し、除去するのに問題がある気泡や不純物のためのトラップとして作用する。これにより、セルを採用した構造はまた、特別なレオロジー、高純度及び高い安定性を有する液体の処理に対して制約を受ける。例えば、白色、金色及び銀色のインクを形成するために使用される不安定な懸濁液を、セルを採用した装置を用いて信頼性をもって塗布することはできない。
【0005】
先行技術に記載された更なる技術においては、別体としてのノズルプレートの後部に近接して、バルク液体中に励起部材を設けている。この構造は、気泡の逃がしを許容するという利点を有しているが、この方法は、エネルギーの使用において、本来役に立たないものであり、そして、クロストークを生じやすい。
【0006】
この分野において公知のプリントヘッドとの組合せに伴う更なる問題は、プリントヘッドの構造が、実質的に二次元的なワークピースよりもむしろ、三次元的な構造に基づくということである。その結果として、製品の変異性が増加し、そして、製造歩留まりが低下する。
【0007】
インクジェット産業においては、単一のプリントヘッド上において、十分な数の噴射サイトと組み合わされて、ページワイドアレイを構成するプリントヘッドに対する実現されていない要求が存在する。このようなプリントヘッドの製造に関する問題は、製造方法において、数千の噴射サイト間に高密度構造を提供しなければならないという要求にある。主に、先行技術、例えば、特許文献1(欧州特許第0728583A2)においては、数多くの構成要素を三次元的に位置せしめて、デマンドインクジェットプリントヘッド上において直線滴下を形成するという要求がなされた構造が開示されている。この構造は、トランスデューサ手段を実質的に平面形態で一体化することを実現するものではない。一体化の欠如により、先行技術の方法によって構成されたアレイの幅において、根本的な制限が生ずると本発明者等は信じる。
【0008】
励起手段が、複数のノズルが形成された材料層に、一体的にではなく結合されている特許文献2(国際公開第WO−A−94/22592)においても、同一の構造に伴う問題が発生する。この先行技術はまた、滴下を可能にする音響エネルギーをもたらすために、ノズルプレートの後方に延長された構造を必要とする。この先行技術の製造方法は、三次元的な製造工程により実施されなければならず、再び、構成要素の配置に関する問題をもたらす。
【0009】
上述したように、この問題の解決は、延長された構造は、トランスデューサ手段を表面に一体化することによって実現可能であることを理解することにあると本発明者等は信じる。実際問題として、これの実現は、克服されるべき自明な問題ではない。
【0010】
例えば、特許文献2(国際公開第WO−A−94/22592)に開示された構造の高さを減少させて、実質的に平面的な状態を実現すると、矛盾が生ずる。第一に、構成されたPZT(圧電ジルコン酸鉛チタン酸塩セラミック)の動作用が、PZTの高さの減少に伴って著しく低下する。第二に、この構造は、柔軟性を有する表面を必要とするが、PZTは、更なる表面に強固に結合したままの状態に置かれなければならない。この構造を層状に減少させることはできない。
【0011】
第二のアプローチは、特許文献3(欧州特許公開第EP−A−0615470)に記載されているように、アニュラーリング幾何学形状寸法を適用して、これらの装置の表面アレイを形成することである。撓みリングをアレイに位置しそして連結すると、第一に、アレイ上のノズルの分離は、液滴を許容作動電圧で生ぜしめる、PZTリングの実現可能な最大外径によって決定されるという大きさの問題がある。これは、(例えば、多くの印刷用途において要求された1インチ当たり150のノズルがあるような)高分解能リニアアレイを形成するには大きすぎる。表面(バイモーフ)撓みリングに振動を適用する試みが特許文献4(日本特許公開第09−226111)に開示されている。しかしながら、この場合には、材料層に結合され、又は、形成された複数のリングは、材料層全体に対して外周の周りに不可避的に結合されており、従って、これらリング間において、好ましくないクロストークを生ぜしめる。
【0012】
特許文献4(日本特許公開第09−226111)に類似する物理構造から励起する別の形態が、特許文献5(日本特許公開第10−58672)に示されている。この出願においては、表面リングのラジアル振動が明らかに生じている。しかしながら、これらリングは、また、材料層全体に対して外周の周りに不可避的に結合されており、従って、好ましくないクロストークを生ぜしめる。
【0013】
また、上述した出願に続いてなされた特許文献6(日本特許公開第10−58673)は、表面メニスカス共振波を発生させるために適用されたアニュラーリング幾何学形状寸法を開示している。特許文献6(日本特許公開第10−58673)の発明者は、更なる構造を、ノズルの下方において、インクの特定の深さをもって導き、共振セル構造を効果的に形成するフロー圧縮を形成することによって、流体カップリングを改善し、かくして、実質的に平面状態の構造をなくすことを求めている。
【0014】
特許文献4(日本特許公開第09−226111)、特許文献5(日本特許公開第10−58672)、特許文献6(日本特許公開第10−58673)に教示された先行技術の構造においては、形成された小滴は、基材の「ノズル」開口に匹敵して小さい。例えば、低表面張力、即ち、プリントヘッドに対する物理的衝撃が小さいインクの条件下で、放出されたジェットがノズルを満たして、ほぼ同一の大きさの小滴を形成するという構造よりも、比較的大きいノズルは、プリントヘッドの前面の好ましくない濡れに対して、より相応の影響を与える。この影響は、大きい「ノズル」内における比較的大きい直径のメニスカスが持続し得る低い圧力差から起こる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によれば、
相互に実質的に平行に向けられた複数のトランスデューサであって、各々が内面と、前記内面と向かい合う外面を有し、実質的に平面的なアレイに配置されたトランスデューサと、
複数のノズルであって、各々が、それぞれのトランスデューサと組み合わされており、前記それぞれのトランスデューサは、組み合わされたノズルを、ノズルの軸線と実質的に一致する方向に移動させて、そこから液体を噴射するために励起可能であるところのノズルと、
液体を前記複数のノズルの前記内面に供給するための液体供給手段と、
必要に応じて、トランスデューサを選択的に励起し、かくして、ノズルの移動に応じて、液体がノズル内を移動することによって、液体をそれぞれの外面からジェット又は小滴として噴射するための手段と
からなることを特徴とする、複数のノズルから液体をジェット又は小滴として噴射するための装置が提供される。
【0016】
従って、このような装置においては、複数のトランスデューサはすべて同一方向に並んで配置されており、そして、そこにおいては、トランスデューサは直線的であり、これらはすべて他のトランスデューサの長軸と平行な長軸を有する。複数のトランスデューサが直線的でない場合であっても、これらが正確に一致している限り、これらの少なくとも一端部は、アレイにおける他のトランスデューサの同一側端部と平行である。
【0017】
用語「トランスデューサ」とは、組み合わされた個々にアドレス可能な励起手段によって、励起されて作動可能な液体噴射装置の局所領域を意味する。用語「実質的に平面的な」とは、構成要素の高さが、個々の構成要素のアレイの横方向の広がりに対して小さいことを意味する。
【0018】
本発明者等は、ページワイドアレイを実現するためのキーは、表面処理技術を用いて光学的に整合可能な複数の層にアレイを形成することにあると信じる。
【0019】
トランスデューサ構成要素を、例えば、圧電又はこれに類似した励起手段からなるワンピースに形成してもよい。トランスデューサを、例えば、励起手段のための取付サポート又は基材をもたらしてもよい1又はそれ以上の材料本体に、励起手段が、例えば、結合され又は一体的に形成されたところの複合コンポーネントとして形成してもよい。
【0020】
すべてのトランスデューサが、これらと組み合わされるノズルを有する必要はない。しかしながら、ノズルと組み合わせて使用されるこれらトランスデューサについては、ノズルは、励起手段と貫通してもよく、又は、励起手段と共に複合トランスデューサを形成する単一の(又は複数の)材料本体を貫通してもよく、又は、上記励起手段及び上記単一の材料本体(又は、複数の材料本体)の双方を貫通してもよい。何れの場合においても、各ノズルが貫通して交差するトランスデューサの表面は、このトランスデューサの内面及び外面を構成する。これに対応して、この明細書においては、単一の(又は複数の)ノズルが別体として形成され、これに励起が直接的に適用されるところの本発明の実施は、全体的にトランスデューサを含むものと判断される。
【0021】
トランスデューサを構成する、励起手段及びこれに組み合わされる単一の(又は複数の)材料本体は層状であることが好ましい。噴射装置のトランスデューサをこのように層状コンポーネントから構成することにより、液体噴射装置の組立において、これらコンポーネント部品の正確な位置決めを、先行技術で使用された三次元構造によって実現されるよりも、より容易且つ信頼性をもって実現することが許容される。
【0022】
層を選択的に薄くすることによって、材料層内に別個のトランスデューサ領域を形成してもよく、これにより、それぞれの領域が、材料層の残りの部分から拘束を緩めた状態で移動することが許容され、かくして、トランスデューサの作動を高めることができる。材料層に正確にスリッティングを施して、各トランスデューサ領域の周りに複数のスリットを形成することにより、拘束力を更に減少させることができる。従って、これらの領域は、材料層内又はこれを貫通するスリットによって形成されたビームの形態を有していてもよく、そして、これらスリットの各々はシールされていてもよい。更に、スリットを櫛状、又は、2つの相互に結合された櫛状に配置してもよい。
【0023】
先行技術においては、曲げを許容するために単にスリットが形成されているに過ぎず、さもなければ、部材を薄くする必要があり、洩れが生じ、これにより、良い点もあるが、悪い点もある。スリットは、複数のトランスデューサを結合しない隔離手段になるので、曲げをもたらすための手段のみならず、クロストークを抑制するための方法として、スリットを用いることにより、我々は上記問題を利益に転換した。これらスリットを従順な媒体で充填することにより、隔離性を改善することができ、これにより、洩れの問題が克服される。上述した従順な媒体は、隔離状態の選択を許容して、必要な隔離状態をもたらすため、これらスリットは、トランスデューサの幅に匹敵するものであってもよい。
【0024】
複数のトランスデューサを主として実質的に平行な隙間のうちの末端のものに隣接する材料層の大部分に拘束し、そして、接触させた状態で、好ましくは、液体(典型的には、インク)を噴射するノズル開口(好ましくは、上述した末端の隙間から離れて位置したノズル開口)に最も近いトランスデューサの作動を最大限に増幅した状態で、表面内又は表面を貫通する実質的に平行な隙間によって複数のトランスデューサを隔離することによって、このように非結合状態が実現される。更に、物理的な隔離によって、トランスデューサ間の空間を満たすために第二材料を使用することが許容される。これを、剛性を有する媒体よりもむしろ従順な媒体であるように選択すれば、優れた非結合状態を実現することができる。従順なシーリング層を上記空間をシールするために使用してもよく、これにより、また、優れた非結合状態が維持される。柔軟性を有するノズルプレートを分割するためにスリットを使用することが国際特許公開第WO−A−94/22592に開示されているが、ノズルを有するトランスデューサの平面的配置は教示されておらず、そして、スリットの幅が、液体のしみ込む傾向、又は、充填及び小滴噴射のぞれぞれの実施中に、外表面に液体が吸い出される傾向によって制限される。本発明においては、国際特許公開第WO−A−94/22592におけるような在外的な細長い剛性を有する棒よりもむしろ、柔軟性を有するものによって、ノズルプレートの作動が誘起される。従って、本発明においては、ノズルを備えた層の機械的特性、例えば、剛性が、「励起手段」層のこれらの特性に匹敵し、隣接するノズルを有するトランスデューサの共平面性を維持するのに役立つ。これにより、液体がシールされていないスリットから排出されることが防止されると共に、スリットがシールされていない場合において、作動励起を維持して、シール手段によってもたらされたクロストークの低レベル又は容認可能なレベルで、小滴を形成することに役立つ。従って、クロストークを実質的に導入することなく、液体シールのためのシール手段を用いることは、本発明の1つの特徴である。
【0025】
クロストークを抑制するために、延長された材料層から選択的に取り外され、そして、このトランスデューサ内で励起手段を構成して、曲げモードにおいて共同で作用するトランスデューサ手段の一部として、層の表面を利用してもよい。更に、このような新たな層表面のアプローチによって、噴射される小滴の直径よりも小さい直径のノズルを(着色インク等の懸濁液の場合において、良好な耐ブロッキング性をもって)使用することができ、従って、先行技術の装置によって示された「湿潤」に対する感度を回避することができる。
【0026】
本発明から生ずる1つの構造において、トランスデューサは、それぞれがその機能に最適な3つの材料層からなっていてもよく、例えば、励起手段を提供し、そして、圧電材料からなる第1層を、この圧電層と協働して、可撓性をもたらすように、(例えば)ステンレススチール製の第2支持層上に取り付け、そして、この第1層が、複数の液体噴射ノズルが設けられた第3の薄いポリマー層を、その向かい合う面上に、有するものであってもよい。また、このような作用を2つ又は1つの層に結合させてもよい。
【0027】
ノズルを有するこれらのトランスデューサに関して、これらトランスデューサのノズルの局部的付近を、「ノズル領域」と定義付けする。使用時に、トランスデューサが励起されて、少なくともノズル領域が(適切な振幅及び応答時間をもって)ノズルの軸線と実質的に一致する方向に移動すると、トランスデューサの内面でのノズル領域に存在する液体がノズル中を通過して、単一のジェット又は小滴(若しくは、複数のジェット又は小滴)として噴射される。最も好都合なことに、ノズルの軸線及びノズル領域の運動の双方が、トランスデューサのノズルを有する領域の表面法線と実質的に平行な方向に置かれる。
【0028】
ノズルを有する領域内の複数のノズルは、装置内で配列されているが、このアレイは、これらノズルの列又は線等の一次元的なものであっても、または、好ましくは相互に並行に配置された複数の列又は線等の二次元的なものであってもよい。このようなノズルの配置により、少なくとも、ノズルを有する複数のトランスデューサの単一の列が確保される。更に、上記アレイ内において、ノズルを有さない付加的なトランスデューサ(例えば、ノズルを有するトランスデューサに散在するトランスデューサ)が存在していてもよい。これらの付加的なトランスデューサは、残留クロストークによって誘起される層の共振を抑制することにおいて有用である。
【0029】
本発明の好ましい実施形態においては、ノズルを有する少なくともこれらのトランスデューサは、個々にアドレス可能である。(対応するノズルから液体を噴射するために励起された、)ノズルを有する1つのトランスデューサの運動は、
ノズルを有する他のトランスデューサの同様の運動を生ぜしめず、他のトランスデューサの隣接するノズルを有する領域において、実質的な圧力変化を生ぜしめないことが通常は望ましい。このように、ノズルを有する複数のトランスデューサは個々にアドレス可能であるのみならず、更に、ノズルを有する各々のトランスデューサから、液体噴射の個々の制御を得ることができ、そして、各トランスデューサが単一のノズルしか有さない場合において、各ノズルからの噴射を個々に制御することができる。このことを、「ノズル間(及び/又はノズルを有するトランスデューサ間)の「クロストーク」を減少させる」と称する。
【0030】
上述した複数のトランスデューサのアレイ及び/又は(励起手段、励起手段用支持体及び/又はノズルを有する部材等の)その構成部材の何れかを、相互に一体的に形成してもよく、または、個々に独立して形成してもよい。一体的に形成して、装置の固体素子を介して生ずるクロストーク(「機械的クロストーク」)を減少させる場合には、隙間、典型的には、スリットによって、これらを完全に分離し又は部分的に分離することが一般的に望ましい。これらの隙間は、複数のトランスデューサの構成層の1つ、幾つか又はすべてに達していても(よく、例えば、励起手段及びその支持部材には到達するが、薄いポリマーのノズルを有する層には到達していなくても)よい。
【0031】
スリット、即ち、隙間がこれらの構成要素のすべてに到達して、トランスデューサの内外面間にスリットを形成している場合には、液体の流出又は蒸発を防止するために、これらのスリット、即ち、隙間をシールすることが一般的に有益である。これは、例えば、RSによて、商品番号561549の下に供給されているラテックスソルダレジスト等の、トランスデューサの運動をスリットに平行に伝達し難い軟質弾性材料体を上記スリット内に組み込むことによって行われる。また、(更なるトランスデューサコンポーネントとして、トランスデューサの作用に貢献する程度に考えられ、そして、すべてのトランスデューサのために、このようにシールする共通の構成要素として、装置性能全体のみに影響を与える程度に考えられる)更なる単一の(又は複数の)材料層を上記スリットに跨って塗布し、かくして、これをシールすることも可能である。
このような更なる材料層を、例えば、Upilex等の25ミクロンの厚さを有するポリイミドシートから形成してもよい。
【0032】
従って、本発明の好ましい実施形態においては、複数のノズルを有する単一の材料層又は複数の材料層であって、これらノズルに導かれるバルク液体に対して運動を励起する材料層が設けられている。この運動は、トランスデューサのノズル領域内におけるバルク液体内の圧力エクスカーションを誘起する。ノズルを有する各トランスデューサは、ここに励起されて運動し(「個々にアドレス可能であり」)、そして、本発明によって、このように個々にアドレス可能なマルチノズル型小滴噴射装置の構造を簡単にすることが可能である。
【0033】
本発明は、ノズル間の機械的クロストークの減少を促進し、かくして、各ノズルからの液体の噴射の個々の制御を促進すると共に、個々にアドレス可能な複数のトランスデューサをもたらす。
【0034】
本発明による装置は、少なくともノズルを有する領域におけるこのような液体圧力の積極的及び消極的な変動の両者を効果的に生ぜしめて、上記ノズルから液体を噴射させる。「運動ノズル」方法は、液体の低圧縮率または硬いセルに依存するものではないので、圧力がセル内で圧縮力を作用するところの従来のインクジェット小滴噴射装置と対比されるものである。
【0035】
本発明は、ノズル領域の「直接的」励起をもたらすものである(ある意味では、この「直接的」という用語は、液体を伝達媒体として使用することによって、励起が主としてノズル領域には伝達されないことを意味する)。むしろ、主として、それぞれのトランスデューサが形成される固体材料素子を経由して励起が伝達される。このように、本発明による装置によれば、ノズルの直後のノズルを有する領域において、大きな圧力変動が生ぜしめられ、かくして、液体によって生ずる「液体クロストーク」が減少する。この「液体クロストーク」とは、1つのトランスデューサのノズル領域から他のトランスデューサのノズル領域への液体を介したエネルギー伝達を意味(し、さもなければ、他のノズルからもの液体噴射に対する望ましくない貢献をもたらす可能性がある)
従来技術における装置の中で、本発明による装置の独特な利益は、トランスデューサの個々のアドレス可能性及びトランスデューサの基材の共通性により、隣接する複数のトランスデューサの部分的又は段階的(又は、双方の)起動によって、残留クロストーク信号を1つの局部領域から積極的に有効に消滅させることができることにある。この結果、クロストークを積極的に減衰させるために干渉する複数のトランスデューサ(これらはノズルを有していなくてもよい)を用いて、次の最も近くに隣接する局部領域を作動させることができる。
【0036】
励起及びノズル手段と、運動励起機構とを一体化することにより、各ノズルのために液体セルを分離する必要性を少なくし、又は、除去することもできる。また、これにより、液体中の気泡に対するジェット又は小滴の感度を抑制し、このようなセルに基づく設計により、気泡がこれらのセル内に捕集されるようになり、ジェット及び/又は小滴の噴射の摂動が連続して行われる。
【0037】
本発明はまた、高精度な構成要素を多くても数枚のシート状の層に集中させることを可能にする。片状部材が単一の平面上で組み付けられるので、上述により製造が簡単になる。
【0038】
本発明者等は、ここに説明する液体噴射装置は、トランスデューサ手段の独特な超音波作用に起因して、白色、金色及び銀色のインク、又は、大きいピグメントサイズ及び不安定な分散特性を有する他のインクを付着させる能力において独特のものであると信ずる。
【0039】
更に、少なくともノズル領域の動的駆動の作用により、この装置が、これらの領域の内外面及び複数のノズルそのものを含む、トランスデューサの少なくともこれらの領域の超音波洗浄作用をもたらすことが可能になる。これにより、装置の面をパージし、拭き取る必要性が減少したメンテナンスが可能になる。
【0040】
好都合なことに、トランスデューサの励起によって、励振圧力を、ノズル領域と直接的に接触する液体に実質的に集中させることができる。これは、例えば、ノズル領域を、トランスデューサの他の部分よりも曲げ動作に対して剛性を小さくし、もって、大きな動的反応をノズル領域そのものに発生させ(そして、これにより、大きな励振圧力を生ぜしめ)ることによって実現可能である。
【0041】
このことは、この新規な液体噴射装置においては、正に急な共振は必要ではなく、従って、液体噴射は、一般には、従来の液体噴射装置の性能及びコストに非常に顕著な効果を与える、液体の軟度、液体中の気泡の有無及び装置の製造誤差等の要素に対して感度が著しく低いことを意味する。従って、この新規な液体噴射装置は、先行技術の装置よりも、潜在的に安価で、動作においてより信頼性を有し、そして、このような複雑な液体条件調節装置を必要としない。
【0042】
好都合なことに、各トランスデューサの運動方向の厚さは、下記不等式を満たす:
【0043】
【数1】
【0044】
上記式において、tiは、トランスデューサにおける材料のi番目の層の厚さであり、そして、ciは、その厚さの方向において、層を伝播する圧縮波又は剪断波の作動周波数fでの上記層中の速度である。
【0045】
本発明において使用に適した、圧電素子以外の他の励起手段は、電歪的、磁歪的及び静電的に撓んだ電気機械的素子である。
【0046】
1つの実施形態においては、圧電素子に印加された電場に対応して、ノズルを有する材料層の運動を励起する励起手段として、圧電素子が使用されている。これらの素子は、両面に電極を有する圧電材料の薄い層からなっている。焼結素子として予め成形する場合には、各圧電素子の1つの面は、ノズルを有する材料層の一部に機械的に結合される。(セラミック等の)耐火ノズルを有する層材料を使用する場合には、圧電素子を、(例えば、スクリーン印刷によって)厚い層として交互に析出させ、そして、下の位置に焼結して、励起手段を形成してもよい。何れの場合においても、圧電層は、これに印加された電圧に至り又は接触するように配置される。従って、素子が協働的に結合されたノズルを有する材料層の領域との結合において、各素子は、可撓性を有する部材の形態のトランスデューサを形成する。従って、ノズルを有する層の結合領域又はその付近の領域の何れかに設けられたノズルは、ノズルを有するトランスデューサを完全に形成する。ノズルを有するトランスデューサ及びノズルを有しないトランスデューサは何れも励起して、圧電素子及び全体としてのトランスデューサの電極面に対して実質的に直交する方向に屈曲運動を行う。これにより、第1の利益として、トランスデューサ及びその中のノズル領域の運動励起が、簡単且つ効果的な方法でもたらされる。
【0047】
この実施形態の結果として生ずる第2の利益は、このようなノズルを有するトランスデューサ構造の励起部分(この場合には、圧電素子及びこれが結合されたノズルを有する材料層の領域)は、従来の液体噴射装置におけるよりも著しく低い音響インピーダンスを有し、この励起部分の音響インピーダンスは、ノズル領域のそれに匹敵(し、ノズルが励起部分内に位置する場合には、同一のインピーダンスになる)するように構成することが可能であることである。これらの事実は、このようなトランスデューサに蓄積される励起エネルギー量が、従来の装置において蓄積されるそれよりも小さく、そして、大きなエネルギー量が励起中において、励起部分及びノズル領域間の何れの方向にも伝播可能であることを意味する。これにより、駆動信号を励起手段に供給することによって、ノズル領域の励起を直接的に制御し、従って、望ましくない運動を積極的に抑制することが可能になる。
【0048】
複数のトランスデューサを隙間によって分離して構成すること、即ち、他のトランスデューサ、特に、他の隣接するトランスデューサと共通の層内において、材料を部分的に除去して、隙間を形成し、もって、これらの間の機械的な結合度合いを減少させることによって、1つのトランスデューサの他のトランスデューサからの隔離状態(即ち、クロストークの減少)を改善することができる。これは、例えば、研磨又はレーザ切断によって実現可能であり、後者の場合には、約5ミクロンの幅の狭いスリットを形成して、不完全な切断部分のない適正に限定されたスリットを形成することにおいて有利である。
【0049】
トランスデューサは、付加的な基材(必須要件ではないが、層状であることが好ましい)を有していてもよい。この基材は、その上に上記励起手段が取り付けられるもので、孔と、上記基材上に取り付けられ、上記孔を覆う柔軟性薄膜とを有しており、上記ノズルが、上記孔を覆う柔軟性薄膜の領域を通過する。別の基材と柔軟性薄膜とを用いたこのような構造においては、例えば、ステンレススチールから形成される基材に柔軟性薄膜を結合することができる。
【0050】
本発明を様々に適用する場合には、単一のアレイ(又は複数の一連のアレイ)において、そのそれぞれのトランスデューサの励起手段によって個々にアドレス可能なように複数のノズルを配置することが望ましい。共通のノズルを有する層の外面と一致することが好都合であるところの共通の外面を形成するように、複数のノズルのこのようなアレイを形成してもよい。この場合には、複数のトランスデューサ間のエネルギーを1つのノズルから他のノズルに伝播する進行波の発生を回避して、機械的クロストークを最小限に減少させるように、励起手段及びトランスデューサ、又は、その各々の形状及び位置を適切に構成することが好ましい。これは、例えば、使用に係る、ノズルを有する層及び/又は補助材料層に(上述した)スリットを形成することによって実現される。
【0051】
センサ手段を、ノズルを有する複数のトランスデューサの励起手段と分離して、又は、これらと一体的に設け、そして、このセンサ手段からのフィードバックを利用して、バックグランドノイズを除去することによって、更なる洗練化を実施することが可能である。同様に、ノズルを有しない複数のトランスデューサを、交互に、又は、付加的に励起して、ノズルを有する複数のトランスデューサのノズル領域における運動又は圧力を減衰又は消去してもよい。この作用のために、ノズルを有しないこのような複数のトランスデューサを、ノズルを有する複数のトランスデューサ間に散在させて、交互アレイを形成することが有効である。実際問題として、ノズルを有する複数のトランスデューサ間に、励起手段をも有さないノズルなしのトランスデューサ、又は、これらが有する励起手段には駆動体が設けられていないところのノズルなしのトランスデューサから典型的に構成されるこれらの簡単な「積極的要素」を、ノズルを有するトランスデューサ間に設けることによってでさえ、有効な効果をもたらすことができる。
【0052】
インクを少なくともノズル領域に供給するための空間を有するマニホルド上に、ノズルを有する層を設けてもよい。このマニホルドは、励起減衰材料を有していてもよく、または、共振を防止するように構成されていてもよく、そして、複数のノズルのすべて又は幾つかを超えて伸長させることによって、従来のインクジェット式プリントヘッドの「セル」構造が気泡や固体の付着に対して関連した感度を有することを回避することができる。
【0053】
また、液体噴射装置を、予め成形された構成要素からなる区分的組立体として形成してもよい。これにより、複数のトランスデューサのための限界条件の選択、構成部品の予備試験、及び、ノズル領域のための更なる層やトランスデューサ間のシール構造の適用が有効に可能になる。
【0054】
この装置は、複数のターミナルに接続され、その結果、複数のトランスデューサにに接続され、そして、それぞれのトランスデューサターミナルに駆動信号を独立して供給するように配置された電子駆動機構を含み、かくして、ノズルからの小滴の生成が、対応して選択的に生ずる駆動信号によって選択的に実行されるように構成することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1a】図1aは、プッシュストローク中における作動原理を簡略化して示す装置の断面図。
【図1b】図1bは、プルストローク中における作動原理を簡略化して示す装置の断面図。
【図2】図2は、第1装置の平面図。
【図3】図3は、第1装置の周波数応答作用に関する有限要素のモデリング結果。
【図4】図4は、第1装置の実験的な周波数応答作用のグラフ
【図5】図5a、5b、5cは、3つの更なる実施例の平面図。
【図6】図6a、6bは、区分的組立方法を用いた2つの更なる実施例の構造の平面図。
【図7】図7は、一体化されたカンチレバー形ビーム構造を有する装置の平面図。
【図8】図8は、一体化されたカンチレバー形ビーム構造を有する更なる装置の平面図。
【図9】図9は、複数材料層を用いて構成された装置の部分平面図。
【図10】図9の装置の断面図。
【図11】図11は、トランスデューサビームの選択的な薄肉化を具現化した更なる装置の等角図。
【図12】図12は、本発明による装置に使用するためのPZT構造体の等角図。
【図13】図13は、図11のPZT構造体を組み込んだ装置の断面図。
【図14】図14は、テーパビームを有する構造の平面図。
【図15】図15は、スロットを有するPZT構造体を備えた装置の部分断面図。
【図16】図16は、シール層の様々な厚さによる有限要素のモデリング結果。
【図17】図17は、更に他の実施例の平面図。
【図18】図18は、PZT素子の端部に付加的なサポートを備えた層状構造の平面図。
【図19】図19は、更なる実施例の部分断面図。
【図20】図20は、ノズルの二次元アレイを有する装置の平面図であり、図20aは、図20の装置の拡大部の平面図。
【図21】図21は、装置構造の概略図。
【図22】図22は、適切な駆動波形の概略グラフ。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下、本発明に従って構成された実施形態に係る装置を、添付図面を参照して詳述する。
【0057】
図1aは、液体2を、98の部分に示された方向においてノズル8を通過させて、液体2中において正の圧力変動を誘起する、4に示す運動に応答して、出現した液体3を形成するために、慣性及び粘性において効果的な著しく短い長さをもたらすように、薄い材料層に形成されたノズルを有する部材1を示す。図1bは、液体2中に負の圧力変動を生ぜしめて、出現した液体3を、100に示す出現小滴に形成する、5に示す運動に応答して、99で示す方向における液体2の流れを示す。これにより、1マイクロ秒から1ミリ秒の範囲内における時間の間の圧力変動を生ぜしめるという本発明による装置の機能と共に、非常に高い周波数での液体噴射が効果的に可能になる。
【0058】
アレイ装置全体における単一のトランスデューサについて、実施状態に置かれた1つの実施形態が、図2に平面図で示されている。これは、「ビーム」6を組み込んだトランスデューサ9であり、例えば、1つのノズル8当たり、PZTから形成された2つの圧電素子を備えている。ノズル8は、材料層100を貫通する。この構造により、ノズル孔8をトランスデューサのアンチノードに正確に配置して、ノズル孔のサブ領域に対称的な圧力分布をもたらすことが可能になる。この場合において、トランスデューサ9は、材料層100にスリット10を導入することによって形成されていることは明らかである。作動液体噴射装置としてのこの実施例においては、材料層100は、100ミクロンの厚さを有する電気的に形成されたニッケルであり、出口直径が25ミクロンのノズルを有している。スリット10は電気的に形成されており、20ミクロンの幅を有している。スリット長さは9ミリメートルであり、スリット10間の距離は1ミリメートルである。圧電素子7の各々は、0.8ミリメートルの幅、1.5ミリメートルの長さ、200ミクロンの厚さを有しており、ドイツのCeramtec of Laufから提供される圧電セラミックP5から形成され、高い圧電定数及び高い機械強度をもたらす。上記圧電素子7に適用された電極材料は、ニッケル−コバルト−金によるスパッタリング処理され、2−5ミクロンの範囲の厚さを有している。これにより、PZT材料への損傷を無視できる程度の状態で、切断作業が可能になり、即ち、スリッティング切断が可能になる。また、これにより、30ミクロンの直径を有するアルミニウムワイヤを用いたトランスデューサへの電気接続を、超音波ワイヤボンダを用いて行うことが可能になる。圧電素子7は、イギリスのCiba-Geigyの提供に係る接着剤、Araldite2019を用いて、ノズルプレート100に接合される。
【0059】
共振周波数での各方向における交互のビーム運動を連続的に励起することにより、このような装置が小滴を連続した流れとして噴射することが可能になる。上述した装置は、95.8kHzの周波数で、ピークからピークまで、120ボルトの交互方形波によって励起した場合に、連続的な小滴流を形成する。
【0060】
このようなサイクルのうちの単一のみで、または、不連続な幾つかによって励起することによって、この装置が、「要求に応じて」、即ち、短い小滴噴射パルス又はパルストレインに対応して小滴を噴射し、パルストレインが終わった後、その噴射が終了することが可能になる。上述した装置は、ピークからピークまで150ボルトの駆動電圧、及び、97.3kHzの基本周波数で作動する。この一般的な形態を有する他の装置においてでは、ピークからピークまでの40ボルトの駆動電圧を用いて、10kHzまでの要求に応じた周波数が認められている。
【0061】
水性インクを用いた場合には、0から30ミリバールの供給バイアス圧力で、この装置は、オンデマンドモードで、小滴噴射作用が実証されている。上述した構造を有する液体噴射装置は、印刷メディアに近接して、液体供給手段をもたらし、もって、インクジェット印刷のための適切なシステムを形成するために、マニホルドに取り付けられる。長期間にわたる信頼性を得るためには、シール層が必要であるが、このスリットからの液体の流出を防止するためには、シーラントは必要ないことが実験的に確認されている。
【0062】
有限要素モデリングによって予測されるように、図2の装置に関する、周波数の関数としての運動応答のピーク値は図3に示されており、そして、これは典型的な場合には、広範である。周波数スケールは80kHzから100kHzに至っており、予測される最大振幅が周波数が87kHzの場合であることを示している。これは、望ましい作動周波数付近においては、好ましくない振動モードが存在しないことをも示している。
【0063】
図4は、HP4194インピーダンススペクトロメータを用いた、機械的インピーダンスフェーズの実験における測定結果を示す。周波数掃引は、50kHzから150kHzに至っており、これは、この範囲内において、最も高いピーク値は、99.5kHzを境にして1つの共振のみが生じていることを示している。
【0064】
図2の実施例の他の構造に関しては、7に示した励起手段のために、シングルモルフ(即ち、単層)及びバイモルフ(即ち、二重層)の幾何学的構造の何れをも適用してもよい。スリットの端部付近における材料層100の領域の厚さは、装置の共振周波数を制御するように選択される。
【0065】
スリット10によって実質的に隔離されれば、このような複数のトランスデューサのアレイによって、小滴噴射の制御を、インクジェット式プリントヘッド等のアレイ液体噴射装置から実質的に独立して行うことができる。図5a、5bおyび5cは、ノズルを有する複数のトランスデューサ9が、材料層11内に設けられ、これらの横方向の広がりが複数のスリット12によって制限されているところの付加的な構造を示している。各々のトランスデューサは層11を貫通するノズル13を有している。図5a、5b及び5cは、示されているように、励起手段構造14の様々な順列を図示していることにおいて、これらの図は異なっている。
【0066】
励起モード、及び、固定−自由(カンチレバー)型境界条件、又は、固定−ヒンジ型境界条件、又は、固定−固定型境界条件を含む利用可能な音響境界条件を選択して、1又は2以上のリニアアレイの形態を有する予め成形されたトランスデューサ(ノズルを有するもの、又は、その他のもの)の組立体から上記装置を構成してもよい。個々のトランスデューサを、所望の共振条件を適切に実現できるように、固定−自由型境界条件、固定−固定型境界条件、ヒンジ−固定型境界条件、又は、ヒンジ−ヒンジ型境界条件で組み付けてもよい。ここで、用語「ヒンジ」及び「ピボット」は、同義語として扱うものとし、用語「クランプ」及び「固定」は、音響理論における慣例と同一に扱う。
【0067】
予め成形された領域のこのような組立体が、図6a及び6bに示されており、ここにおいて、単一の(又は、複数の)孔10を有する材料層15は、複数のトランスデューサ16(励起手段20を含む)の取付けのためのベースを形成する。このベースは、これ自身が、予め成形された複数の孔17を有するか、又は、ブランク18のままで、これらブランク部材が、励起手段19を参照して示すように、積極的なクロストーク補償手段として使用できるものであってもよい。図示された手段を液体噴射装置として使用するためには、複数の孔17と、複数のトランスデューサ16間(及び、複数のトランスデューサとプレート15との間)の間隙領域そのものとを、更なる層によってシールする。このさらなる層には、孔17に対応する領域に複数のノズルが形成されているか、又は、それ自身がノズルとして形成されていてもよい。
【0068】
図7は、材料層110から構成された組立体を示しており、この材料層においては、2セットのカンチレバー型ビームが、相互に結合された櫛22及び23として形成され、これらの櫛の歯が柔軟性のある、ノズルを有するトランスデューサを提供する。これらの櫛は、シール層101に結合された材料層100内に形成されている。材料層110が圧電材料等の励起材料から形成されている実施形態においては、この材料の局部領域102、103は、材料層自身に形成されたパターントラック104及びパッドコネクション105を用いてこれらの領域において電流がながれ、そして、活性化される。ノズル手段106は、柔軟性を有するトランスデューサ108又はシール層101を介して形成される。柔軟性を有する部材のアレイへの高密度での電気的接続のための必要性を効果的に減少させるドライバ集積回路からアレイコンタクトを受けるように、パッドコネクションを配置することができる。
【0069】
図8は、図7の実施形態の変形例を示しており、ここにおいて、点線の円で示されたノズル領域107は、点線109で示されたトランスデューサ(この場合には、柔軟性を有するトランスデューサ)と組み合わせて使用されているが、このトランスデューサによって形成されているわけではない。このような変形例により、柔軟性を有するシール層101をノズル75に組み入れることが可能になり、これは、例えば、ノズルの形成が、トランスデューサの材料自身によってよりも、むしろ、シール層によって形成した方がより簡単でかつより正確である場合に有利である。この場合には、また、材料層110は、カンチレバー型ビーム22、23のみを有しており、励起手段102、パターントラックインターコネクション104及びパッドコネクション105が、ノズルを有するシール層101上に形成されている。
【0070】
図7及び図8において、シール層101を、例えば、25ミクロンの厚さを有するUpilexから形成してもよい。
【0071】
図9及び図10は、それぞれ概略平面図及びA−A線断面図において、アレイ装置全体において使用されるべき、1つが24の位置に示した柔軟性を有するトランスデューサの構造を示している。このアレイ装置においては、材料シート100において予め成形されたスリット10および孔25と、励起手段29とが、ノズルを有する層26で覆われている。この構造により、ノズル8が、柔軟性を有する手段の運動のアンチノードに有利に位置した状態で、(図9において、材料層100として示された)分離したノズル構造及びスリットシール手段が実現される。
【0072】
ノズルを有する層26は、材料層100上を覆うが、この材料層は、励起手段29のための受けポケット28を有している。このような構造体は、支持手段30に固定されるが、液体供給手段の一部として使用されてもよい。
【0073】
液体噴射装置の構造体に形成されたノズルは、円筒形状、または、テーパ状の断面を有する他の形状を有していてもよい。ノズルをテーパ状にすることによる結果として、内面における開口が、インクジェット印刷の分野において周知の形式である外面よりも小さくなる。また、外面における開口を、内面における開口よりも小さくなるように形成して、本願出願人の出願に係る特許された欧州特許第EP−B−0732975及び同時係属イギリス出願第GB9903433.2におけるアエロゾルの塗布に関して記載された、異なる作動形態をもたらすことも可能である。
【0074】
ノズルを有する層26又は支持層30を、ステンレスシートから形成することが有利である。この材料に化学的エッチング又はレーザ研磨を適用することにより、小さく且つ合理的に適切に特徴付けられたノズル孔を有する応力のない基材を簡単に製造する方法が実現される。
【0075】
本発明において使用に適したトランスデューサの更なる実施形態に関する構造が、図11に示されている。この構造においては、材料層31が、PZTの運動と、プレートの柔軟運動とを良好に連結するのに十分な厚さを有するプレートから形成されている。上記層31の局部的に薄くされた領域32によって、印加電圧でのノズルの振幅運動が増加する。このような実施形態は、例えば、電鋳によって実現される。
【0076】
液体供給圧力を制御し、即ち、供給されるインクの量を制限して、キャッピング及びメンテナンスステーションにおいて、装置を空にすることが可能である。これは、装置が不使用の際に、ノズル内の液体メニスカスからの蒸発に起因するノズルの目詰まり作用を有利に減少させる。
【0077】
通常の周波数又は材料層の洗浄のために選択された他の周波数で、励起手段を使用して、装置に超音波振動を与えることにより、メンテナンスステーションでの付加的な洗浄を実施することが有益である。また、メンテナンスステーションに取り付けられた別の励起手段によって振動を与えたり、または、材料層上に又はその付近に位置した、積極的な減衰作用に使用される別の励起手段によって振動を与えてもよい。
【0078】
上述した実施形態においては、ノズル及びスリットを、電鋳によってニッケル中において交互に形成してもよく、次いで、PZTをニッケル上に結合してもよい。また、複数のノズル孔のみを電鋳工程で形成してもよく、この場合には、ニッケルをレーザ切断してスリットを形成してもよい。何れの場合においても、レーザ又は研磨ソーを使用して、PZTを貫通するスリットを形成することができる。ニッケルの電鋳を使用することにより、単一又は2段階工程ので、スリット及びノズルの石版印刷的な形成のために、パターン化されたレジスト技術を適用することが可能になる。
【0079】
ノズルを有する層が、スリットシール層から分離して形成された設計においては、スリットをシールするが、ノズルの開口をそのまま残す25ミクロンの厚さのKapton等の従順な単一の(又は複数の)薄膜として、スリットシールを設けることが好ましい。これにより、液体がスリットから流出しないことが確保され、そして、複数のノズル領域及び/又はこれらと組み合わされるトランスデューサの動きを妨げる可能性のある、液体のスリットからの蒸発が防止される。
【0080】
良好なノズル孔の品質及びこれらノズルの狭いピッチをもたらす好ましい形成方法を説明する。レーザ加工技術、特に、励起二量体レーザ及び周波数三重パルスヤグレーザにより、材料の所定の領域において、高品質のスリット及び高品質のノズル孔をもたらすことができる。実際には、励起二量体レーザ、特に、40Hzの反復率で248nmのパワーを300mW発生させるLambda Physik model Minex30796が、PZTにおけるノズル及びスリットの形成に非常に適していることを出願人は見出した。25ミクロンの直径を有するPZTにおける高品質なノズル孔は、10秒間で加工される。PZTにおけるスリットは、装置をレーザビーム中でスキャンすることにより形成される。材料の消耗率は、約20ミクロン/秒または等価的な0.5ミクロン/パルスであることが発見されている。大規模な製造においては、1秒間で約1個のトランスデューサのための複数のノズル及びスリットを、この形成方法を用いて、プリントヘッドのノズル1個当たりのコストに殆ど影響を与えることなく形成することができる。
【0081】
更に別の実施形態においては、この構造は、異方性をもってエッチングが施されたシリコン基材を使用することによって実現可能である。これにより、大きなノズルテーパ角度(KOH溶液を用いた湿式化学エッチングにより、シリコン111面と100面との間の54.7度の角度分だけ良好に露出するが、これは、この分野において周知である)がもたらされ、孔の最小及び最大直径間の2:1またはそれより大きい比率を与えることができ、改善されたチャネル間コンシステンシーがもたらされ、半導体産業における大量生産に一般的に使用される製造技術がもたらされる。
【0082】
このような装置のアレイの形成においては、圧電セラミック(PZT)層等の励起材料のモノリシックスラブ又は複数層スラブを用いて個々のトランスデューサを形成してもよい。図12に示すように、先ず、このような材料のモノリシック層36に切り込みを入れて、中央溝35を形成する。これにより、トランスデューサアレイにおけるすべてのトランスデューサの共通の内側端部が特定され、外側端部は、モノリシックスラブ36の周辺部によって形成される。次いで、この構造体をクロスカットすることにより、個々のトランスデューサ素子37が形成される。この「トーテムポール」構造体を次いで逆にして更なる材料層の上に結合して、柔軟性を有するトランスデューサのアレイを形成する。材料層がノズルを有する層である場合には、この方法は、複数のノズルに対して複数のトランスデューサを単一の工程で、整列して位置させるために有利である。結合後、次いで、複数のトランスデューサは、中央溝の領域の材料を残す1つ又は2つ以上のダイシングカットによって相互に分離される。
【0083】
このような方法で製造されたトランスデューサの断面が、図13において、ノズルを有する材料層42に結合されたPZT素子39を取り囲む点線94によって示されている。この構造体において、次いで、電気接続のために、PZT素子39の後方に(高い熱伝導率を有する材料から形成されることが好ましい)スペーサ材料層38が挿入される。次いで、パターントラックされた電極41を有する相互接続・保護層40が38、39条に結合され、これにより、PZT素子39に個々にアドレスする個々の手段が提供される。材料層42によってグラウンド層への接続が(層42が導電性を有する場合には、直接的に、また、層として、非導電材料が選択された場合には、層42上に予め形成された単一の又は複数の電極によって)なされる。トランスデューサ素子の端部に充填剤が塗布されて、これら素子を液体との接触からシールし、電極及び圧電素子の化学的又は電気的攻撃からこれらを保護する。この組立体は、適宜選択により、上述した何れかの方法でインクマニホルドに結合される。充填材料を使用して、又は、付加的なシール層73を設けることによって、これらスリットをシールしてもよい。
【0084】
また、PZT素子、相互接続・スペーサ層、及び、グルー充填剤を、マニホルド30と共に装置の液体側に配置してもよい。このような構成にすれば、PZTを使用時の機械的損傷から保護し、そして、キャッピング、パージング及びクリーニングにおける装置のメンテナンスを用意にするために頂面を平面的にすることができる。何れの場合においても、液体は、励起要素への冷却材として作用することができる。
【0085】
図13に示した装置の製造方法の他の形態は、ノズルを有する層42に結合される以前に、先ず、層40に取り付けられるPZT素子のための位置決め具として相互接続・保護層40を使用することによって提供される。PZTを、上述した方法によって励起素子に形成してもよく、または、PZTを個々に形成し、そして、ピックアンドプレイス機械によって所定の位置に載置してもよい。プリントヘッドの一体部品としてのパワードライブマイクロチップ及び表面マウント電子部品を支持するように、層42又は40を構成することも可能である。これによれば、ワイヤボンディングの必要性(これによって得られる高い集積度)を除去し、電子部品全体をパッシベーション化及び/又はエンキャプシュレート化(し、かくして、組立体全体を化学的攻撃から効果的に保護)することが可能になる。
【0086】
適用に際して、アレイ内の個々のトランスデューサの特性において幾つかの変化の度合いが必然的に存在する。この変化は、複数のノズル間における異なった性能に関する特性に至るので、これは望ましくない。従って、局部的領域間のこのような変化を低減させるための方法が有効である。このような方法は、例えば、電極の選択的なレーザ研磨によって、トランスデューサにおける励起手段の電極パターンを変更することや、トランスデューサ、特に、トランスデューサのビーム領域から材料を物理的に除去し、もって、ビームの周波数応答を、例えば、レーザ光の作用によって変更することや、例えば、マイクロマシーニングによって、材料を励起手段から除去することを含む。
【0087】
更なる実施形態(図14参照)においては、複数のトランスデューサ、例えば、柔軟性を有する複数のトランスデューサが設けられ、トランスデューサの幅、及び、隣接するトランスデューサ間の対応するスリット幅がそれぞれの長さに準じて変化している。従って、この実施形態においては、トランスデューサ97は、形状において直線で囲まれているものではなく、それぞれの端部45、46に向かってテーパを有している。この構造の調和によって、アレイにおける複数のトランスデューサが、平行な少なくとも1つの共通の端部、例えば、端部116及び117を有するという条件が維持される。これらのテーパは、ノズル領域に向かうビームの曲げ剛性を連続的に減少させ、これにより、上記領域におけるビームの曲げを向上し、小滴の形成効率を向上させる。例えば、圧電セラミックから形成され、そして、トランスデューサ97を有する、ノズルを有する柔軟な層44は、45、46において示されるように、ノズル47から離れた側の169ミクロンの最も薄い幅と、ノズル47に近い方の84.5ミクロンの最も薄い幅とを有している。トランスデューサ97間の組織間領域48は、25ミクロンの厚さを有するUpilex等の従順なポリマー材料層96によってシールされる。この材料層は、トランスデューサが個々に励起して作動する際に、トランスデューサから他のトランスデューサに発生するクロストークを吸収する作用という付加的な利益を有する。複数の47は、トランスデューサ層44及び96の双方を介して形成されている。
【0088】
その例が図15に示されているところの更なる実施においては、柔軟性を有するトランスデューサ95及び支持層53、54を通る部分が図示されており、ここにおいては、層49はPZTから形成され、そして、約200ミクロンの厚さを有している。作動において、電極表面(ノズル52の通路によって限定された外面及び内面)に印加された電圧によって、層49の撓みがノズル52の軸線と実質的に平行に、そして/または、非並行になる。この撓みは、末端50、51において、約100ミクロンだけ薄くされた領域(溝)を導入することによって向上される。2つの薄い領域間の間隔は2.0mmであり、これにより、約90kHzの作動周波数が得られる。
【0089】
図16は、図15に示された装置に関する、有限要素のモデリング結果を示す。グラフは、6個の装置についてのモデリング結果を示している。各々の装置は、シール層のための材料としてUpilexを使用した構造に基づいて、ポリマーシール層74の異なる厚さを有している。この層の厚さが10ミクロン未満の場合には、ノズルの運動振幅は、8.5ミクロンのピークトゥーピークで一定である。シール層の厚さが100ミクロンを超える場合には、シール層は、ノズル運動を減衰し、もって、ノズル振幅が液体噴射を与えるためにはあまりにも小さくなる。モデリングは、25ミクロンの厚さのUpilexの層は、ダンピングまたはクロストークを誘発することなく、スリットを流体の流出に対してシールするために適している。
【0090】
図15に示した実施例においては、トランスデューサ全体が単一のPZT層から形成されているが、この明細書内でなされた様々な変形に従って、図示された原理を実施してもよい。トランスデューサ95は、局部領域の端部をクランプするように作用し、柔軟運動を最大限に高めるための薄い領域に対応して位置した、例えば、ステンレススチール製の支持層53、54上に取り付けられている。再び、ノズルを単なる孔で置き換えてもよく、そして、トランスデューサ間のスリットをシールし、層49の外面を保護するように作用し、相互接続状態をもたらす更なるノズルを有するポリマー層74によって(これらの孔にノズルが一致するように)、層49を覆ってもよい。
【0091】
複数層構造を採用したこのような構造が図17に示されている。この複数層構造においては、トランスデューサ59の柔軟性部材55が2つの部材に分割されており、57内にノズルを有するノズル領域56が別のシール層58に形成されている。この別の層58は、ノズル形成のための基材を提供すると共に、トランスデューサ素子間のシール手段と提供するように作用する。これにより、ノズルが構造体内において横方向における最大の寸法を有することが可能になり、そして、スリットが、ノズルの直径の重要な部分である幅を有することが可能になる。この構造を実現することによる更なる利益は、柔軟性を有するポリマーを、単なるスリットによって得られる間隔よりも、トランスデューサ間の間隔を広くして、分離層58に使用した場合に、クロストークの減少に関するより大きい減衰効果が得られることである。
【0092】
図18には、スリット74、75、76によって分離されたトランスデューサ72、73の末端部分における境界条件の変更が、更なる補強層77を含ませることによってどのようになされるかが示されている。微小な小滴付着装置の層構造により、この更なる補強層の光学的整合を独特の方法で可能にしている。タブ78、79がこれらに対応するトランスデューサ要素80、81の下方に位置するように、更なる層を配置してもよく、これにより、重複部分82の領域においてヒンジ連結またはクランプ連結を補強し、その結果、柔軟性を有する層83が他の可能な方法よりも相対的に低い剛性をもって形成することが可能になる。この補強層はまた、複数の局部領域間の音響バリアを形成することによって、これら局部領域の末端部分間のクロストークを有効に防止する。
【0093】
図19に示された実施形態は、ノズル90を有するトランスデューサ89のセクションからなっており、更なる補強層の作用が、液体85を収容する作用をも有する支持層84によって実現されている。図示された形態においては、励起手段86は、材料層87を覆っており、この材料層においては、複数の局部領域が形成され、そして、励起手段の末端部分88が支持層84を覆うように配置されている。これにより、トランスデューサの末端部分での境界拘束条件を、実質的にヒンジ状態に変更することが実現される。
【0094】
図20には、更なる実施形態が示されており、ここにおいては、液体噴射装置が、デジタル印刷に適した方法で構成されている。この装置は、材料層59上に設けられており、その上に、複数のトランスデューサの二次元的なアレイが、複数の線60に沿って配列されている。トランスデューサの幾何学的構造の詳細は、これを明確化するための挿入図62に示されている。複数のトランスデューサは、ノズル63及び励起手段64を有しており、そして、スリット65によって相互に分離されている。この実施形態においては、トランスデューサは、上述した実施形態と比較して、トランスデューサ1個当たり2つのスリットを有するものとして示されているが、1つのスリットを適用してもよい。図示されたトランスデューサアレイは、低製作解像度間隔66が印刷方向67と直行するように有利に配置されている。各線の印刷解像度は、これにより、間隔68に対して最大である。アレイ60の付加的な複数の線は、間隔68の一部において(図示された場合においては、間隔68の四分の一で)食違いに配置されており、これにより、プリントを個々の線から連続的に覆うことによって、印刷解像度を更に向上させることが可能になる。この実施形態において最後に示された精密構造は、複数のトランスデューサ60を、サブアレイ70上において、これらトランスデューサの線に対して角度71で配置していることである。この配置70によって、隣接するトランスデューサへの印刷信号を、サブアレイにおける他のトランスデューサに関して遅延させ、もって、隣接するトランスデューサ間に残るクロストークをやがて分配させることができる。サブアレイ内における複数のトランスデューサの相対的配置に関して考え得る様々な置換があり、そして、ここに示された実施形態は、このような置換の単なる一例に過ぎない。
【0095】
液体噴射装置を作動するための電子駆動装置に概略的なレイアウトが図21に示されている。ETCs.r.o.、Zilina,Slovak Republicの製造に係るETCM321ジェネレータソフトウェア等の適切なソフトウェアを実行するパーソナルコンピュータ111が示されている。このソフトウェアは、上述と同一の提供者からのETCM321ジェネレータカード等の対応するドライブカード112にデータを供給する。発生した信号は、注文品の増幅器113を経由して、明細書に記載した液体噴射装置114に送られる。図22には、ドライブ信号が模式的に示されており、ここにおいては、波形例115が図示されている。この波形の典型的なピーク電圧は、40から150ボルトの範囲内である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、「フェイスシューター」アレイとして知られた形態の液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットに関する技術分野においては、複数のノズルと組み合わされた複数の毛細管チャンネルまたはチャンバ(以下、「セル」と総称する)の共振を利用して、圧縮波をもたらし、液体をこれらのノズルから噴射させる数多くの液体噴射装置がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許第0728583A2
【特許文献2】国際公開第WO−A−94/22592
【特許文献3】欧州特許公開第EP−A−0615470
【特許文献4】日本特許公開第09−226111
【特許文献5】日本特許公開第10−58672
【特許文献6】日本特許公開第10−58673
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの技術は、これらのセルの液体共振周波数により、それらの最大作動周波数において制約を受ける。これに加えて、セルは流れを制限するものとして作用して、セル内の圧力を発生させ、これにより、滴下放出を生ずる。従って、セルを通過する流れは、補充量によって制限されて、このような装置の作動周波数に対する更なる上方限界を生ぜしめる。その上、セルは、作動を著しく阻害し、除去するのに問題がある気泡や不純物のためのトラップとして作用する。これにより、セルを採用した構造はまた、特別なレオロジー、高純度及び高い安定性を有する液体の処理に対して制約を受ける。例えば、白色、金色及び銀色のインクを形成するために使用される不安定な懸濁液を、セルを採用した装置を用いて信頼性をもって塗布することはできない。
【0005】
先行技術に記載された更なる技術においては、別体としてのノズルプレートの後部に近接して、バルク液体中に励起部材を設けている。この構造は、気泡の逃がしを許容するという利点を有しているが、この方法は、エネルギーの使用において、本来役に立たないものであり、そして、クロストークを生じやすい。
【0006】
この分野において公知のプリントヘッドとの組合せに伴う更なる問題は、プリントヘッドの構造が、実質的に二次元的なワークピースよりもむしろ、三次元的な構造に基づくということである。その結果として、製品の変異性が増加し、そして、製造歩留まりが低下する。
【0007】
インクジェット産業においては、単一のプリントヘッド上において、十分な数の噴射サイトと組み合わされて、ページワイドアレイを構成するプリントヘッドに対する実現されていない要求が存在する。このようなプリントヘッドの製造に関する問題は、製造方法において、数千の噴射サイト間に高密度構造を提供しなければならないという要求にある。主に、先行技術、例えば、特許文献1(欧州特許第0728583A2)においては、数多くの構成要素を三次元的に位置せしめて、デマンドインクジェットプリントヘッド上において直線滴下を形成するという要求がなされた構造が開示されている。この構造は、トランスデューサ手段を実質的に平面形態で一体化することを実現するものではない。一体化の欠如により、先行技術の方法によって構成されたアレイの幅において、根本的な制限が生ずると本発明者等は信じる。
【0008】
励起手段が、複数のノズルが形成された材料層に、一体的にではなく結合されている特許文献2(国際公開第WO−A−94/22592)においても、同一の構造に伴う問題が発生する。この先行技術はまた、滴下を可能にする音響エネルギーをもたらすために、ノズルプレートの後方に延長された構造を必要とする。この先行技術の製造方法は、三次元的な製造工程により実施されなければならず、再び、構成要素の配置に関する問題をもたらす。
【0009】
上述したように、この問題の解決は、延長された構造は、トランスデューサ手段を表面に一体化することによって実現可能であることを理解することにあると本発明者等は信じる。実際問題として、これの実現は、克服されるべき自明な問題ではない。
【0010】
例えば、特許文献2(国際公開第WO−A−94/22592)に開示された構造の高さを減少させて、実質的に平面的な状態を実現すると、矛盾が生ずる。第一に、構成されたPZT(圧電ジルコン酸鉛チタン酸塩セラミック)の動作用が、PZTの高さの減少に伴って著しく低下する。第二に、この構造は、柔軟性を有する表面を必要とするが、PZTは、更なる表面に強固に結合したままの状態に置かれなければならない。この構造を層状に減少させることはできない。
【0011】
第二のアプローチは、特許文献3(欧州特許公開第EP−A−0615470)に記載されているように、アニュラーリング幾何学形状寸法を適用して、これらの装置の表面アレイを形成することである。撓みリングをアレイに位置しそして連結すると、第一に、アレイ上のノズルの分離は、液滴を許容作動電圧で生ぜしめる、PZTリングの実現可能な最大外径によって決定されるという大きさの問題がある。これは、(例えば、多くの印刷用途において要求された1インチ当たり150のノズルがあるような)高分解能リニアアレイを形成するには大きすぎる。表面(バイモーフ)撓みリングに振動を適用する試みが特許文献4(日本特許公開第09−226111)に開示されている。しかしながら、この場合には、材料層に結合され、又は、形成された複数のリングは、材料層全体に対して外周の周りに不可避的に結合されており、従って、これらリング間において、好ましくないクロストークを生ぜしめる。
【0012】
特許文献4(日本特許公開第09−226111)に類似する物理構造から励起する別の形態が、特許文献5(日本特許公開第10−58672)に示されている。この出願においては、表面リングのラジアル振動が明らかに生じている。しかしながら、これらリングは、また、材料層全体に対して外周の周りに不可避的に結合されており、従って、好ましくないクロストークを生ぜしめる。
【0013】
また、上述した出願に続いてなされた特許文献6(日本特許公開第10−58673)は、表面メニスカス共振波を発生させるために適用されたアニュラーリング幾何学形状寸法を開示している。特許文献6(日本特許公開第10−58673)の発明者は、更なる構造を、ノズルの下方において、インクの特定の深さをもって導き、共振セル構造を効果的に形成するフロー圧縮を形成することによって、流体カップリングを改善し、かくして、実質的に平面状態の構造をなくすことを求めている。
【0014】
特許文献4(日本特許公開第09−226111)、特許文献5(日本特許公開第10−58672)、特許文献6(日本特許公開第10−58673)に教示された先行技術の構造においては、形成された小滴は、基材の「ノズル」開口に匹敵して小さい。例えば、低表面張力、即ち、プリントヘッドに対する物理的衝撃が小さいインクの条件下で、放出されたジェットがノズルを満たして、ほぼ同一の大きさの小滴を形成するという構造よりも、比較的大きいノズルは、プリントヘッドの前面の好ましくない濡れに対して、より相応の影響を与える。この影響は、大きい「ノズル」内における比較的大きい直径のメニスカスが持続し得る低い圧力差から起こる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によれば、
相互に実質的に平行に向けられた複数のトランスデューサであって、各々が内面と、前記内面と向かい合う外面を有し、実質的に平面的なアレイに配置されたトランスデューサと、
複数のノズルであって、各々が、それぞれのトランスデューサと組み合わされており、前記それぞれのトランスデューサは、組み合わされたノズルを、ノズルの軸線と実質的に一致する方向に移動させて、そこから液体を噴射するために励起可能であるところのノズルと、
液体を前記複数のノズルの前記内面に供給するための液体供給手段と、
必要に応じて、トランスデューサを選択的に励起し、かくして、ノズルの移動に応じて、液体がノズル内を移動することによって、液体をそれぞれの外面からジェット又は小滴として噴射するための手段と
からなることを特徴とする、複数のノズルから液体をジェット又は小滴として噴射するための装置が提供される。
【0016】
従って、このような装置においては、複数のトランスデューサはすべて同一方向に並んで配置されており、そして、そこにおいては、トランスデューサは直線的であり、これらはすべて他のトランスデューサの長軸と平行な長軸を有する。複数のトランスデューサが直線的でない場合であっても、これらが正確に一致している限り、これらの少なくとも一端部は、アレイにおける他のトランスデューサの同一側端部と平行である。
【0017】
用語「トランスデューサ」とは、組み合わされた個々にアドレス可能な励起手段によって、励起されて作動可能な液体噴射装置の局所領域を意味する。用語「実質的に平面的な」とは、構成要素の高さが、個々の構成要素のアレイの横方向の広がりに対して小さいことを意味する。
【0018】
本発明者等は、ページワイドアレイを実現するためのキーは、表面処理技術を用いて光学的に整合可能な複数の層にアレイを形成することにあると信じる。
【0019】
トランスデューサ構成要素を、例えば、圧電又はこれに類似した励起手段からなるワンピースに形成してもよい。トランスデューサを、例えば、励起手段のための取付サポート又は基材をもたらしてもよい1又はそれ以上の材料本体に、励起手段が、例えば、結合され又は一体的に形成されたところの複合コンポーネントとして形成してもよい。
【0020】
すべてのトランスデューサが、これらと組み合わされるノズルを有する必要はない。しかしながら、ノズルと組み合わせて使用されるこれらトランスデューサについては、ノズルは、励起手段と貫通してもよく、又は、励起手段と共に複合トランスデューサを形成する単一の(又は複数の)材料本体を貫通してもよく、又は、上記励起手段及び上記単一の材料本体(又は、複数の材料本体)の双方を貫通してもよい。何れの場合においても、各ノズルが貫通して交差するトランスデューサの表面は、このトランスデューサの内面及び外面を構成する。これに対応して、この明細書においては、単一の(又は複数の)ノズルが別体として形成され、これに励起が直接的に適用されるところの本発明の実施は、全体的にトランスデューサを含むものと判断される。
【0021】
トランスデューサを構成する、励起手段及びこれに組み合わされる単一の(又は複数の)材料本体は層状であることが好ましい。噴射装置のトランスデューサをこのように層状コンポーネントから構成することにより、液体噴射装置の組立において、これらコンポーネント部品の正確な位置決めを、先行技術で使用された三次元構造によって実現されるよりも、より容易且つ信頼性をもって実現することが許容される。
【0022】
層を選択的に薄くすることによって、材料層内に別個のトランスデューサ領域を形成してもよく、これにより、それぞれの領域が、材料層の残りの部分から拘束を緩めた状態で移動することが許容され、かくして、トランスデューサの作動を高めることができる。材料層に正確にスリッティングを施して、各トランスデューサ領域の周りに複数のスリットを形成することにより、拘束力を更に減少させることができる。従って、これらの領域は、材料層内又はこれを貫通するスリットによって形成されたビームの形態を有していてもよく、そして、これらスリットの各々はシールされていてもよい。更に、スリットを櫛状、又は、2つの相互に結合された櫛状に配置してもよい。
【0023】
先行技術においては、曲げを許容するために単にスリットが形成されているに過ぎず、さもなければ、部材を薄くする必要があり、洩れが生じ、これにより、良い点もあるが、悪い点もある。スリットは、複数のトランスデューサを結合しない隔離手段になるので、曲げをもたらすための手段のみならず、クロストークを抑制するための方法として、スリットを用いることにより、我々は上記問題を利益に転換した。これらスリットを従順な媒体で充填することにより、隔離性を改善することができ、これにより、洩れの問題が克服される。上述した従順な媒体は、隔離状態の選択を許容して、必要な隔離状態をもたらすため、これらスリットは、トランスデューサの幅に匹敵するものであってもよい。
【0024】
複数のトランスデューサを主として実質的に平行な隙間のうちの末端のものに隣接する材料層の大部分に拘束し、そして、接触させた状態で、好ましくは、液体(典型的には、インク)を噴射するノズル開口(好ましくは、上述した末端の隙間から離れて位置したノズル開口)に最も近いトランスデューサの作動を最大限に増幅した状態で、表面内又は表面を貫通する実質的に平行な隙間によって複数のトランスデューサを隔離することによって、このように非結合状態が実現される。更に、物理的な隔離によって、トランスデューサ間の空間を満たすために第二材料を使用することが許容される。これを、剛性を有する媒体よりもむしろ従順な媒体であるように選択すれば、優れた非結合状態を実現することができる。従順なシーリング層を上記空間をシールするために使用してもよく、これにより、また、優れた非結合状態が維持される。柔軟性を有するノズルプレートを分割するためにスリットを使用することが国際特許公開第WO−A−94/22592に開示されているが、ノズルを有するトランスデューサの平面的配置は教示されておらず、そして、スリットの幅が、液体のしみ込む傾向、又は、充填及び小滴噴射のぞれぞれの実施中に、外表面に液体が吸い出される傾向によって制限される。本発明においては、国際特許公開第WO−A−94/22592におけるような在外的な細長い剛性を有する棒よりもむしろ、柔軟性を有するものによって、ノズルプレートの作動が誘起される。従って、本発明においては、ノズルを備えた層の機械的特性、例えば、剛性が、「励起手段」層のこれらの特性に匹敵し、隣接するノズルを有するトランスデューサの共平面性を維持するのに役立つ。これにより、液体がシールされていないスリットから排出されることが防止されると共に、スリットがシールされていない場合において、作動励起を維持して、シール手段によってもたらされたクロストークの低レベル又は容認可能なレベルで、小滴を形成することに役立つ。従って、クロストークを実質的に導入することなく、液体シールのためのシール手段を用いることは、本発明の1つの特徴である。
【0025】
クロストークを抑制するために、延長された材料層から選択的に取り外され、そして、このトランスデューサ内で励起手段を構成して、曲げモードにおいて共同で作用するトランスデューサ手段の一部として、層の表面を利用してもよい。更に、このような新たな層表面のアプローチによって、噴射される小滴の直径よりも小さい直径のノズルを(着色インク等の懸濁液の場合において、良好な耐ブロッキング性をもって)使用することができ、従って、先行技術の装置によって示された「湿潤」に対する感度を回避することができる。
【0026】
本発明から生ずる1つの構造において、トランスデューサは、それぞれがその機能に最適な3つの材料層からなっていてもよく、例えば、励起手段を提供し、そして、圧電材料からなる第1層を、この圧電層と協働して、可撓性をもたらすように、(例えば)ステンレススチール製の第2支持層上に取り付け、そして、この第1層が、複数の液体噴射ノズルが設けられた第3の薄いポリマー層を、その向かい合う面上に、有するものであってもよい。また、このような作用を2つ又は1つの層に結合させてもよい。
【0027】
ノズルを有するこれらのトランスデューサに関して、これらトランスデューサのノズルの局部的付近を、「ノズル領域」と定義付けする。使用時に、トランスデューサが励起されて、少なくともノズル領域が(適切な振幅及び応答時間をもって)ノズルの軸線と実質的に一致する方向に移動すると、トランスデューサの内面でのノズル領域に存在する液体がノズル中を通過して、単一のジェット又は小滴(若しくは、複数のジェット又は小滴)として噴射される。最も好都合なことに、ノズルの軸線及びノズル領域の運動の双方が、トランスデューサのノズルを有する領域の表面法線と実質的に平行な方向に置かれる。
【0028】
ノズルを有する領域内の複数のノズルは、装置内で配列されているが、このアレイは、これらノズルの列又は線等の一次元的なものであっても、または、好ましくは相互に並行に配置された複数の列又は線等の二次元的なものであってもよい。このようなノズルの配置により、少なくとも、ノズルを有する複数のトランスデューサの単一の列が確保される。更に、上記アレイ内において、ノズルを有さない付加的なトランスデューサ(例えば、ノズルを有するトランスデューサに散在するトランスデューサ)が存在していてもよい。これらの付加的なトランスデューサは、残留クロストークによって誘起される層の共振を抑制することにおいて有用である。
【0029】
本発明の好ましい実施形態においては、ノズルを有する少なくともこれらのトランスデューサは、個々にアドレス可能である。(対応するノズルから液体を噴射するために励起された、)ノズルを有する1つのトランスデューサの運動は、
ノズルを有する他のトランスデューサの同様の運動を生ぜしめず、他のトランスデューサの隣接するノズルを有する領域において、実質的な圧力変化を生ぜしめないことが通常は望ましい。このように、ノズルを有する複数のトランスデューサは個々にアドレス可能であるのみならず、更に、ノズルを有する各々のトランスデューサから、液体噴射の個々の制御を得ることができ、そして、各トランスデューサが単一のノズルしか有さない場合において、各ノズルからの噴射を個々に制御することができる。このことを、「ノズル間(及び/又はノズルを有するトランスデューサ間)の「クロストーク」を減少させる」と称する。
【0030】
上述した複数のトランスデューサのアレイ及び/又は(励起手段、励起手段用支持体及び/又はノズルを有する部材等の)その構成部材の何れかを、相互に一体的に形成してもよく、または、個々に独立して形成してもよい。一体的に形成して、装置の固体素子を介して生ずるクロストーク(「機械的クロストーク」)を減少させる場合には、隙間、典型的には、スリットによって、これらを完全に分離し又は部分的に分離することが一般的に望ましい。これらの隙間は、複数のトランスデューサの構成層の1つ、幾つか又はすべてに達していても(よく、例えば、励起手段及びその支持部材には到達するが、薄いポリマーのノズルを有する層には到達していなくても)よい。
【0031】
スリット、即ち、隙間がこれらの構成要素のすべてに到達して、トランスデューサの内外面間にスリットを形成している場合には、液体の流出又は蒸発を防止するために、これらのスリット、即ち、隙間をシールすることが一般的に有益である。これは、例えば、RSによて、商品番号561549の下に供給されているラテックスソルダレジスト等の、トランスデューサの運動をスリットに平行に伝達し難い軟質弾性材料体を上記スリット内に組み込むことによって行われる。また、(更なるトランスデューサコンポーネントとして、トランスデューサの作用に貢献する程度に考えられ、そして、すべてのトランスデューサのために、このようにシールする共通の構成要素として、装置性能全体のみに影響を与える程度に考えられる)更なる単一の(又は複数の)材料層を上記スリットに跨って塗布し、かくして、これをシールすることも可能である。
このような更なる材料層を、例えば、Upilex等の25ミクロンの厚さを有するポリイミドシートから形成してもよい。
【0032】
従って、本発明の好ましい実施形態においては、複数のノズルを有する単一の材料層又は複数の材料層であって、これらノズルに導かれるバルク液体に対して運動を励起する材料層が設けられている。この運動は、トランスデューサのノズル領域内におけるバルク液体内の圧力エクスカーションを誘起する。ノズルを有する各トランスデューサは、ここに励起されて運動し(「個々にアドレス可能であり」)、そして、本発明によって、このように個々にアドレス可能なマルチノズル型小滴噴射装置の構造を簡単にすることが可能である。
【0033】
本発明は、ノズル間の機械的クロストークの減少を促進し、かくして、各ノズルからの液体の噴射の個々の制御を促進すると共に、個々にアドレス可能な複数のトランスデューサをもたらす。
【0034】
本発明による装置は、少なくともノズルを有する領域におけるこのような液体圧力の積極的及び消極的な変動の両者を効果的に生ぜしめて、上記ノズルから液体を噴射させる。「運動ノズル」方法は、液体の低圧縮率または硬いセルに依存するものではないので、圧力がセル内で圧縮力を作用するところの従来のインクジェット小滴噴射装置と対比されるものである。
【0035】
本発明は、ノズル領域の「直接的」励起をもたらすものである(ある意味では、この「直接的」という用語は、液体を伝達媒体として使用することによって、励起が主としてノズル領域には伝達されないことを意味する)。むしろ、主として、それぞれのトランスデューサが形成される固体材料素子を経由して励起が伝達される。このように、本発明による装置によれば、ノズルの直後のノズルを有する領域において、大きな圧力変動が生ぜしめられ、かくして、液体によって生ずる「液体クロストーク」が減少する。この「液体クロストーク」とは、1つのトランスデューサのノズル領域から他のトランスデューサのノズル領域への液体を介したエネルギー伝達を意味(し、さもなければ、他のノズルからもの液体噴射に対する望ましくない貢献をもたらす可能性がある)
従来技術における装置の中で、本発明による装置の独特な利益は、トランスデューサの個々のアドレス可能性及びトランスデューサの基材の共通性により、隣接する複数のトランスデューサの部分的又は段階的(又は、双方の)起動によって、残留クロストーク信号を1つの局部領域から積極的に有効に消滅させることができることにある。この結果、クロストークを積極的に減衰させるために干渉する複数のトランスデューサ(これらはノズルを有していなくてもよい)を用いて、次の最も近くに隣接する局部領域を作動させることができる。
【0036】
励起及びノズル手段と、運動励起機構とを一体化することにより、各ノズルのために液体セルを分離する必要性を少なくし、又は、除去することもできる。また、これにより、液体中の気泡に対するジェット又は小滴の感度を抑制し、このようなセルに基づく設計により、気泡がこれらのセル内に捕集されるようになり、ジェット及び/又は小滴の噴射の摂動が連続して行われる。
【0037】
本発明はまた、高精度な構成要素を多くても数枚のシート状の層に集中させることを可能にする。片状部材が単一の平面上で組み付けられるので、上述により製造が簡単になる。
【0038】
本発明者等は、ここに説明する液体噴射装置は、トランスデューサ手段の独特な超音波作用に起因して、白色、金色及び銀色のインク、又は、大きいピグメントサイズ及び不安定な分散特性を有する他のインクを付着させる能力において独特のものであると信ずる。
【0039】
更に、少なくともノズル領域の動的駆動の作用により、この装置が、これらの領域の内外面及び複数のノズルそのものを含む、トランスデューサの少なくともこれらの領域の超音波洗浄作用をもたらすことが可能になる。これにより、装置の面をパージし、拭き取る必要性が減少したメンテナンスが可能になる。
【0040】
好都合なことに、トランスデューサの励起によって、励振圧力を、ノズル領域と直接的に接触する液体に実質的に集中させることができる。これは、例えば、ノズル領域を、トランスデューサの他の部分よりも曲げ動作に対して剛性を小さくし、もって、大きな動的反応をノズル領域そのものに発生させ(そして、これにより、大きな励振圧力を生ぜしめ)ることによって実現可能である。
【0041】
このことは、この新規な液体噴射装置においては、正に急な共振は必要ではなく、従って、液体噴射は、一般には、従来の液体噴射装置の性能及びコストに非常に顕著な効果を与える、液体の軟度、液体中の気泡の有無及び装置の製造誤差等の要素に対して感度が著しく低いことを意味する。従って、この新規な液体噴射装置は、先行技術の装置よりも、潜在的に安価で、動作においてより信頼性を有し、そして、このような複雑な液体条件調節装置を必要としない。
【0042】
好都合なことに、各トランスデューサの運動方向の厚さは、下記不等式を満たす:
【0043】
【数1】
【0044】
上記式において、tiは、トランスデューサにおける材料のi番目の層の厚さであり、そして、ciは、その厚さの方向において、層を伝播する圧縮波又は剪断波の作動周波数fでの上記層中の速度である。
【0045】
本発明において使用に適した、圧電素子以外の他の励起手段は、電歪的、磁歪的及び静電的に撓んだ電気機械的素子である。
【0046】
1つの実施形態においては、圧電素子に印加された電場に対応して、ノズルを有する材料層の運動を励起する励起手段として、圧電素子が使用されている。これらの素子は、両面に電極を有する圧電材料の薄い層からなっている。焼結素子として予め成形する場合には、各圧電素子の1つの面は、ノズルを有する材料層の一部に機械的に結合される。(セラミック等の)耐火ノズルを有する層材料を使用する場合には、圧電素子を、(例えば、スクリーン印刷によって)厚い層として交互に析出させ、そして、下の位置に焼結して、励起手段を形成してもよい。何れの場合においても、圧電層は、これに印加された電圧に至り又は接触するように配置される。従って、素子が協働的に結合されたノズルを有する材料層の領域との結合において、各素子は、可撓性を有する部材の形態のトランスデューサを形成する。従って、ノズルを有する層の結合領域又はその付近の領域の何れかに設けられたノズルは、ノズルを有するトランスデューサを完全に形成する。ノズルを有するトランスデューサ及びノズルを有しないトランスデューサは何れも励起して、圧電素子及び全体としてのトランスデューサの電極面に対して実質的に直交する方向に屈曲運動を行う。これにより、第1の利益として、トランスデューサ及びその中のノズル領域の運動励起が、簡単且つ効果的な方法でもたらされる。
【0047】
この実施形態の結果として生ずる第2の利益は、このようなノズルを有するトランスデューサ構造の励起部分(この場合には、圧電素子及びこれが結合されたノズルを有する材料層の領域)は、従来の液体噴射装置におけるよりも著しく低い音響インピーダンスを有し、この励起部分の音響インピーダンスは、ノズル領域のそれに匹敵(し、ノズルが励起部分内に位置する場合には、同一のインピーダンスになる)するように構成することが可能であることである。これらの事実は、このようなトランスデューサに蓄積される励起エネルギー量が、従来の装置において蓄積されるそれよりも小さく、そして、大きなエネルギー量が励起中において、励起部分及びノズル領域間の何れの方向にも伝播可能であることを意味する。これにより、駆動信号を励起手段に供給することによって、ノズル領域の励起を直接的に制御し、従って、望ましくない運動を積極的に抑制することが可能になる。
【0048】
複数のトランスデューサを隙間によって分離して構成すること、即ち、他のトランスデューサ、特に、他の隣接するトランスデューサと共通の層内において、材料を部分的に除去して、隙間を形成し、もって、これらの間の機械的な結合度合いを減少させることによって、1つのトランスデューサの他のトランスデューサからの隔離状態(即ち、クロストークの減少)を改善することができる。これは、例えば、研磨又はレーザ切断によって実現可能であり、後者の場合には、約5ミクロンの幅の狭いスリットを形成して、不完全な切断部分のない適正に限定されたスリットを形成することにおいて有利である。
【0049】
トランスデューサは、付加的な基材(必須要件ではないが、層状であることが好ましい)を有していてもよい。この基材は、その上に上記励起手段が取り付けられるもので、孔と、上記基材上に取り付けられ、上記孔を覆う柔軟性薄膜とを有しており、上記ノズルが、上記孔を覆う柔軟性薄膜の領域を通過する。別の基材と柔軟性薄膜とを用いたこのような構造においては、例えば、ステンレススチールから形成される基材に柔軟性薄膜を結合することができる。
【0050】
本発明を様々に適用する場合には、単一のアレイ(又は複数の一連のアレイ)において、そのそれぞれのトランスデューサの励起手段によって個々にアドレス可能なように複数のノズルを配置することが望ましい。共通のノズルを有する層の外面と一致することが好都合であるところの共通の外面を形成するように、複数のノズルのこのようなアレイを形成してもよい。この場合には、複数のトランスデューサ間のエネルギーを1つのノズルから他のノズルに伝播する進行波の発生を回避して、機械的クロストークを最小限に減少させるように、励起手段及びトランスデューサ、又は、その各々の形状及び位置を適切に構成することが好ましい。これは、例えば、使用に係る、ノズルを有する層及び/又は補助材料層に(上述した)スリットを形成することによって実現される。
【0051】
センサ手段を、ノズルを有する複数のトランスデューサの励起手段と分離して、又は、これらと一体的に設け、そして、このセンサ手段からのフィードバックを利用して、バックグランドノイズを除去することによって、更なる洗練化を実施することが可能である。同様に、ノズルを有しない複数のトランスデューサを、交互に、又は、付加的に励起して、ノズルを有する複数のトランスデューサのノズル領域における運動又は圧力を減衰又は消去してもよい。この作用のために、ノズルを有しないこのような複数のトランスデューサを、ノズルを有する複数のトランスデューサ間に散在させて、交互アレイを形成することが有効である。実際問題として、ノズルを有する複数のトランスデューサ間に、励起手段をも有さないノズルなしのトランスデューサ、又は、これらが有する励起手段には駆動体が設けられていないところのノズルなしのトランスデューサから典型的に構成されるこれらの簡単な「積極的要素」を、ノズルを有するトランスデューサ間に設けることによってでさえ、有効な効果をもたらすことができる。
【0052】
インクを少なくともノズル領域に供給するための空間を有するマニホルド上に、ノズルを有する層を設けてもよい。このマニホルドは、励起減衰材料を有していてもよく、または、共振を防止するように構成されていてもよく、そして、複数のノズルのすべて又は幾つかを超えて伸長させることによって、従来のインクジェット式プリントヘッドの「セル」構造が気泡や固体の付着に対して関連した感度を有することを回避することができる。
【0053】
また、液体噴射装置を、予め成形された構成要素からなる区分的組立体として形成してもよい。これにより、複数のトランスデューサのための限界条件の選択、構成部品の予備試験、及び、ノズル領域のための更なる層やトランスデューサ間のシール構造の適用が有効に可能になる。
【0054】
この装置は、複数のターミナルに接続され、その結果、複数のトランスデューサにに接続され、そして、それぞれのトランスデューサターミナルに駆動信号を独立して供給するように配置された電子駆動機構を含み、かくして、ノズルからの小滴の生成が、対応して選択的に生ずる駆動信号によって選択的に実行されるように構成することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1a】図1aは、プッシュストローク中における作動原理を簡略化して示す装置の断面図。
【図1b】図1bは、プルストローク中における作動原理を簡略化して示す装置の断面図。
【図2】図2は、第1装置の平面図。
【図3】図3は、第1装置の周波数応答作用に関する有限要素のモデリング結果。
【図4】図4は、第1装置の実験的な周波数応答作用のグラフ
【図5】図5a、5b、5cは、3つの更なる実施例の平面図。
【図6】図6a、6bは、区分的組立方法を用いた2つの更なる実施例の構造の平面図。
【図7】図7は、一体化されたカンチレバー形ビーム構造を有する装置の平面図。
【図8】図8は、一体化されたカンチレバー形ビーム構造を有する更なる装置の平面図。
【図9】図9は、複数材料層を用いて構成された装置の部分平面図。
【図10】図9の装置の断面図。
【図11】図11は、トランスデューサビームの選択的な薄肉化を具現化した更なる装置の等角図。
【図12】図12は、本発明による装置に使用するためのPZT構造体の等角図。
【図13】図13は、図11のPZT構造体を組み込んだ装置の断面図。
【図14】図14は、テーパビームを有する構造の平面図。
【図15】図15は、スロットを有するPZT構造体を備えた装置の部分断面図。
【図16】図16は、シール層の様々な厚さによる有限要素のモデリング結果。
【図17】図17は、更に他の実施例の平面図。
【図18】図18は、PZT素子の端部に付加的なサポートを備えた層状構造の平面図。
【図19】図19は、更なる実施例の部分断面図。
【図20】図20は、ノズルの二次元アレイを有する装置の平面図であり、図20aは、図20の装置の拡大部の平面図。
【図21】図21は、装置構造の概略図。
【図22】図22は、適切な駆動波形の概略グラフ。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下、本発明に従って構成された実施形態に係る装置を、添付図面を参照して詳述する。
【0057】
図1aは、液体2を、98の部分に示された方向においてノズル8を通過させて、液体2中において正の圧力変動を誘起する、4に示す運動に応答して、出現した液体3を形成するために、慣性及び粘性において効果的な著しく短い長さをもたらすように、薄い材料層に形成されたノズルを有する部材1を示す。図1bは、液体2中に負の圧力変動を生ぜしめて、出現した液体3を、100に示す出現小滴に形成する、5に示す運動に応答して、99で示す方向における液体2の流れを示す。これにより、1マイクロ秒から1ミリ秒の範囲内における時間の間の圧力変動を生ぜしめるという本発明による装置の機能と共に、非常に高い周波数での液体噴射が効果的に可能になる。
【0058】
アレイ装置全体における単一のトランスデューサについて、実施状態に置かれた1つの実施形態が、図2に平面図で示されている。これは、「ビーム」6を組み込んだトランスデューサ9であり、例えば、1つのノズル8当たり、PZTから形成された2つの圧電素子を備えている。ノズル8は、材料層100を貫通する。この構造により、ノズル孔8をトランスデューサのアンチノードに正確に配置して、ノズル孔のサブ領域に対称的な圧力分布をもたらすことが可能になる。この場合において、トランスデューサ9は、材料層100にスリット10を導入することによって形成されていることは明らかである。作動液体噴射装置としてのこの実施例においては、材料層100は、100ミクロンの厚さを有する電気的に形成されたニッケルであり、出口直径が25ミクロンのノズルを有している。スリット10は電気的に形成されており、20ミクロンの幅を有している。スリット長さは9ミリメートルであり、スリット10間の距離は1ミリメートルである。圧電素子7の各々は、0.8ミリメートルの幅、1.5ミリメートルの長さ、200ミクロンの厚さを有しており、ドイツのCeramtec of Laufから提供される圧電セラミックP5から形成され、高い圧電定数及び高い機械強度をもたらす。上記圧電素子7に適用された電極材料は、ニッケル−コバルト−金によるスパッタリング処理され、2−5ミクロンの範囲の厚さを有している。これにより、PZT材料への損傷を無視できる程度の状態で、切断作業が可能になり、即ち、スリッティング切断が可能になる。また、これにより、30ミクロンの直径を有するアルミニウムワイヤを用いたトランスデューサへの電気接続を、超音波ワイヤボンダを用いて行うことが可能になる。圧電素子7は、イギリスのCiba-Geigyの提供に係る接着剤、Araldite2019を用いて、ノズルプレート100に接合される。
【0059】
共振周波数での各方向における交互のビーム運動を連続的に励起することにより、このような装置が小滴を連続した流れとして噴射することが可能になる。上述した装置は、95.8kHzの周波数で、ピークからピークまで、120ボルトの交互方形波によって励起した場合に、連続的な小滴流を形成する。
【0060】
このようなサイクルのうちの単一のみで、または、不連続な幾つかによって励起することによって、この装置が、「要求に応じて」、即ち、短い小滴噴射パルス又はパルストレインに対応して小滴を噴射し、パルストレインが終わった後、その噴射が終了することが可能になる。上述した装置は、ピークからピークまで150ボルトの駆動電圧、及び、97.3kHzの基本周波数で作動する。この一般的な形態を有する他の装置においてでは、ピークからピークまでの40ボルトの駆動電圧を用いて、10kHzまでの要求に応じた周波数が認められている。
【0061】
水性インクを用いた場合には、0から30ミリバールの供給バイアス圧力で、この装置は、オンデマンドモードで、小滴噴射作用が実証されている。上述した構造を有する液体噴射装置は、印刷メディアに近接して、液体供給手段をもたらし、もって、インクジェット印刷のための適切なシステムを形成するために、マニホルドに取り付けられる。長期間にわたる信頼性を得るためには、シール層が必要であるが、このスリットからの液体の流出を防止するためには、シーラントは必要ないことが実験的に確認されている。
【0062】
有限要素モデリングによって予測されるように、図2の装置に関する、周波数の関数としての運動応答のピーク値は図3に示されており、そして、これは典型的な場合には、広範である。周波数スケールは80kHzから100kHzに至っており、予測される最大振幅が周波数が87kHzの場合であることを示している。これは、望ましい作動周波数付近においては、好ましくない振動モードが存在しないことをも示している。
【0063】
図4は、HP4194インピーダンススペクトロメータを用いた、機械的インピーダンスフェーズの実験における測定結果を示す。周波数掃引は、50kHzから150kHzに至っており、これは、この範囲内において、最も高いピーク値は、99.5kHzを境にして1つの共振のみが生じていることを示している。
【0064】
図2の実施例の他の構造に関しては、7に示した励起手段のために、シングルモルフ(即ち、単層)及びバイモルフ(即ち、二重層)の幾何学的構造の何れをも適用してもよい。スリットの端部付近における材料層100の領域の厚さは、装置の共振周波数を制御するように選択される。
【0065】
スリット10によって実質的に隔離されれば、このような複数のトランスデューサのアレイによって、小滴噴射の制御を、インクジェット式プリントヘッド等のアレイ液体噴射装置から実質的に独立して行うことができる。図5a、5bおyび5cは、ノズルを有する複数のトランスデューサ9が、材料層11内に設けられ、これらの横方向の広がりが複数のスリット12によって制限されているところの付加的な構造を示している。各々のトランスデューサは層11を貫通するノズル13を有している。図5a、5b及び5cは、示されているように、励起手段構造14の様々な順列を図示していることにおいて、これらの図は異なっている。
【0066】
励起モード、及び、固定−自由(カンチレバー)型境界条件、又は、固定−ヒンジ型境界条件、又は、固定−固定型境界条件を含む利用可能な音響境界条件を選択して、1又は2以上のリニアアレイの形態を有する予め成形されたトランスデューサ(ノズルを有するもの、又は、その他のもの)の組立体から上記装置を構成してもよい。個々のトランスデューサを、所望の共振条件を適切に実現できるように、固定−自由型境界条件、固定−固定型境界条件、ヒンジ−固定型境界条件、又は、ヒンジ−ヒンジ型境界条件で組み付けてもよい。ここで、用語「ヒンジ」及び「ピボット」は、同義語として扱うものとし、用語「クランプ」及び「固定」は、音響理論における慣例と同一に扱う。
【0067】
予め成形された領域のこのような組立体が、図6a及び6bに示されており、ここにおいて、単一の(又は、複数の)孔10を有する材料層15は、複数のトランスデューサ16(励起手段20を含む)の取付けのためのベースを形成する。このベースは、これ自身が、予め成形された複数の孔17を有するか、又は、ブランク18のままで、これらブランク部材が、励起手段19を参照して示すように、積極的なクロストーク補償手段として使用できるものであってもよい。図示された手段を液体噴射装置として使用するためには、複数の孔17と、複数のトランスデューサ16間(及び、複数のトランスデューサとプレート15との間)の間隙領域そのものとを、更なる層によってシールする。このさらなる層には、孔17に対応する領域に複数のノズルが形成されているか、又は、それ自身がノズルとして形成されていてもよい。
【0068】
図7は、材料層110から構成された組立体を示しており、この材料層においては、2セットのカンチレバー型ビームが、相互に結合された櫛22及び23として形成され、これらの櫛の歯が柔軟性のある、ノズルを有するトランスデューサを提供する。これらの櫛は、シール層101に結合された材料層100内に形成されている。材料層110が圧電材料等の励起材料から形成されている実施形態においては、この材料の局部領域102、103は、材料層自身に形成されたパターントラック104及びパッドコネクション105を用いてこれらの領域において電流がながれ、そして、活性化される。ノズル手段106は、柔軟性を有するトランスデューサ108又はシール層101を介して形成される。柔軟性を有する部材のアレイへの高密度での電気的接続のための必要性を効果的に減少させるドライバ集積回路からアレイコンタクトを受けるように、パッドコネクションを配置することができる。
【0069】
図8は、図7の実施形態の変形例を示しており、ここにおいて、点線の円で示されたノズル領域107は、点線109で示されたトランスデューサ(この場合には、柔軟性を有するトランスデューサ)と組み合わせて使用されているが、このトランスデューサによって形成されているわけではない。このような変形例により、柔軟性を有するシール層101をノズル75に組み入れることが可能になり、これは、例えば、ノズルの形成が、トランスデューサの材料自身によってよりも、むしろ、シール層によって形成した方がより簡単でかつより正確である場合に有利である。この場合には、また、材料層110は、カンチレバー型ビーム22、23のみを有しており、励起手段102、パターントラックインターコネクション104及びパッドコネクション105が、ノズルを有するシール層101上に形成されている。
【0070】
図7及び図8において、シール層101を、例えば、25ミクロンの厚さを有するUpilexから形成してもよい。
【0071】
図9及び図10は、それぞれ概略平面図及びA−A線断面図において、アレイ装置全体において使用されるべき、1つが24の位置に示した柔軟性を有するトランスデューサの構造を示している。このアレイ装置においては、材料シート100において予め成形されたスリット10および孔25と、励起手段29とが、ノズルを有する層26で覆われている。この構造により、ノズル8が、柔軟性を有する手段の運動のアンチノードに有利に位置した状態で、(図9において、材料層100として示された)分離したノズル構造及びスリットシール手段が実現される。
【0072】
ノズルを有する層26は、材料層100上を覆うが、この材料層は、励起手段29のための受けポケット28を有している。このような構造体は、支持手段30に固定されるが、液体供給手段の一部として使用されてもよい。
【0073】
液体噴射装置の構造体に形成されたノズルは、円筒形状、または、テーパ状の断面を有する他の形状を有していてもよい。ノズルをテーパ状にすることによる結果として、内面における開口が、インクジェット印刷の分野において周知の形式である外面よりも小さくなる。また、外面における開口を、内面における開口よりも小さくなるように形成して、本願出願人の出願に係る特許された欧州特許第EP−B−0732975及び同時係属イギリス出願第GB9903433.2におけるアエロゾルの塗布に関して記載された、異なる作動形態をもたらすことも可能である。
【0074】
ノズルを有する層26又は支持層30を、ステンレスシートから形成することが有利である。この材料に化学的エッチング又はレーザ研磨を適用することにより、小さく且つ合理的に適切に特徴付けられたノズル孔を有する応力のない基材を簡単に製造する方法が実現される。
【0075】
本発明において使用に適したトランスデューサの更なる実施形態に関する構造が、図11に示されている。この構造においては、材料層31が、PZTの運動と、プレートの柔軟運動とを良好に連結するのに十分な厚さを有するプレートから形成されている。上記層31の局部的に薄くされた領域32によって、印加電圧でのノズルの振幅運動が増加する。このような実施形態は、例えば、電鋳によって実現される。
【0076】
液体供給圧力を制御し、即ち、供給されるインクの量を制限して、キャッピング及びメンテナンスステーションにおいて、装置を空にすることが可能である。これは、装置が不使用の際に、ノズル内の液体メニスカスからの蒸発に起因するノズルの目詰まり作用を有利に減少させる。
【0077】
通常の周波数又は材料層の洗浄のために選択された他の周波数で、励起手段を使用して、装置に超音波振動を与えることにより、メンテナンスステーションでの付加的な洗浄を実施することが有益である。また、メンテナンスステーションに取り付けられた別の励起手段によって振動を与えたり、または、材料層上に又はその付近に位置した、積極的な減衰作用に使用される別の励起手段によって振動を与えてもよい。
【0078】
上述した実施形態においては、ノズル及びスリットを、電鋳によってニッケル中において交互に形成してもよく、次いで、PZTをニッケル上に結合してもよい。また、複数のノズル孔のみを電鋳工程で形成してもよく、この場合には、ニッケルをレーザ切断してスリットを形成してもよい。何れの場合においても、レーザ又は研磨ソーを使用して、PZTを貫通するスリットを形成することができる。ニッケルの電鋳を使用することにより、単一又は2段階工程ので、スリット及びノズルの石版印刷的な形成のために、パターン化されたレジスト技術を適用することが可能になる。
【0079】
ノズルを有する層が、スリットシール層から分離して形成された設計においては、スリットをシールするが、ノズルの開口をそのまま残す25ミクロンの厚さのKapton等の従順な単一の(又は複数の)薄膜として、スリットシールを設けることが好ましい。これにより、液体がスリットから流出しないことが確保され、そして、複数のノズル領域及び/又はこれらと組み合わされるトランスデューサの動きを妨げる可能性のある、液体のスリットからの蒸発が防止される。
【0080】
良好なノズル孔の品質及びこれらノズルの狭いピッチをもたらす好ましい形成方法を説明する。レーザ加工技術、特に、励起二量体レーザ及び周波数三重パルスヤグレーザにより、材料の所定の領域において、高品質のスリット及び高品質のノズル孔をもたらすことができる。実際には、励起二量体レーザ、特に、40Hzの反復率で248nmのパワーを300mW発生させるLambda Physik model Minex30796が、PZTにおけるノズル及びスリットの形成に非常に適していることを出願人は見出した。25ミクロンの直径を有するPZTにおける高品質なノズル孔は、10秒間で加工される。PZTにおけるスリットは、装置をレーザビーム中でスキャンすることにより形成される。材料の消耗率は、約20ミクロン/秒または等価的な0.5ミクロン/パルスであることが発見されている。大規模な製造においては、1秒間で約1個のトランスデューサのための複数のノズル及びスリットを、この形成方法を用いて、プリントヘッドのノズル1個当たりのコストに殆ど影響を与えることなく形成することができる。
【0081】
更に別の実施形態においては、この構造は、異方性をもってエッチングが施されたシリコン基材を使用することによって実現可能である。これにより、大きなノズルテーパ角度(KOH溶液を用いた湿式化学エッチングにより、シリコン111面と100面との間の54.7度の角度分だけ良好に露出するが、これは、この分野において周知である)がもたらされ、孔の最小及び最大直径間の2:1またはそれより大きい比率を与えることができ、改善されたチャネル間コンシステンシーがもたらされ、半導体産業における大量生産に一般的に使用される製造技術がもたらされる。
【0082】
このような装置のアレイの形成においては、圧電セラミック(PZT)層等の励起材料のモノリシックスラブ又は複数層スラブを用いて個々のトランスデューサを形成してもよい。図12に示すように、先ず、このような材料のモノリシック層36に切り込みを入れて、中央溝35を形成する。これにより、トランスデューサアレイにおけるすべてのトランスデューサの共通の内側端部が特定され、外側端部は、モノリシックスラブ36の周辺部によって形成される。次いで、この構造体をクロスカットすることにより、個々のトランスデューサ素子37が形成される。この「トーテムポール」構造体を次いで逆にして更なる材料層の上に結合して、柔軟性を有するトランスデューサのアレイを形成する。材料層がノズルを有する層である場合には、この方法は、複数のノズルに対して複数のトランスデューサを単一の工程で、整列して位置させるために有利である。結合後、次いで、複数のトランスデューサは、中央溝の領域の材料を残す1つ又は2つ以上のダイシングカットによって相互に分離される。
【0083】
このような方法で製造されたトランスデューサの断面が、図13において、ノズルを有する材料層42に結合されたPZT素子39を取り囲む点線94によって示されている。この構造体において、次いで、電気接続のために、PZT素子39の後方に(高い熱伝導率を有する材料から形成されることが好ましい)スペーサ材料層38が挿入される。次いで、パターントラックされた電極41を有する相互接続・保護層40が38、39条に結合され、これにより、PZT素子39に個々にアドレスする個々の手段が提供される。材料層42によってグラウンド層への接続が(層42が導電性を有する場合には、直接的に、また、層として、非導電材料が選択された場合には、層42上に予め形成された単一の又は複数の電極によって)なされる。トランスデューサ素子の端部に充填剤が塗布されて、これら素子を液体との接触からシールし、電極及び圧電素子の化学的又は電気的攻撃からこれらを保護する。この組立体は、適宜選択により、上述した何れかの方法でインクマニホルドに結合される。充填材料を使用して、又は、付加的なシール層73を設けることによって、これらスリットをシールしてもよい。
【0084】
また、PZT素子、相互接続・スペーサ層、及び、グルー充填剤を、マニホルド30と共に装置の液体側に配置してもよい。このような構成にすれば、PZTを使用時の機械的損傷から保護し、そして、キャッピング、パージング及びクリーニングにおける装置のメンテナンスを用意にするために頂面を平面的にすることができる。何れの場合においても、液体は、励起要素への冷却材として作用することができる。
【0085】
図13に示した装置の製造方法の他の形態は、ノズルを有する層42に結合される以前に、先ず、層40に取り付けられるPZT素子のための位置決め具として相互接続・保護層40を使用することによって提供される。PZTを、上述した方法によって励起素子に形成してもよく、または、PZTを個々に形成し、そして、ピックアンドプレイス機械によって所定の位置に載置してもよい。プリントヘッドの一体部品としてのパワードライブマイクロチップ及び表面マウント電子部品を支持するように、層42又は40を構成することも可能である。これによれば、ワイヤボンディングの必要性(これによって得られる高い集積度)を除去し、電子部品全体をパッシベーション化及び/又はエンキャプシュレート化(し、かくして、組立体全体を化学的攻撃から効果的に保護)することが可能になる。
【0086】
適用に際して、アレイ内の個々のトランスデューサの特性において幾つかの変化の度合いが必然的に存在する。この変化は、複数のノズル間における異なった性能に関する特性に至るので、これは望ましくない。従って、局部的領域間のこのような変化を低減させるための方法が有効である。このような方法は、例えば、電極の選択的なレーザ研磨によって、トランスデューサにおける励起手段の電極パターンを変更することや、トランスデューサ、特に、トランスデューサのビーム領域から材料を物理的に除去し、もって、ビームの周波数応答を、例えば、レーザ光の作用によって変更することや、例えば、マイクロマシーニングによって、材料を励起手段から除去することを含む。
【0087】
更なる実施形態(図14参照)においては、複数のトランスデューサ、例えば、柔軟性を有する複数のトランスデューサが設けられ、トランスデューサの幅、及び、隣接するトランスデューサ間の対応するスリット幅がそれぞれの長さに準じて変化している。従って、この実施形態においては、トランスデューサ97は、形状において直線で囲まれているものではなく、それぞれの端部45、46に向かってテーパを有している。この構造の調和によって、アレイにおける複数のトランスデューサが、平行な少なくとも1つの共通の端部、例えば、端部116及び117を有するという条件が維持される。これらのテーパは、ノズル領域に向かうビームの曲げ剛性を連続的に減少させ、これにより、上記領域におけるビームの曲げを向上し、小滴の形成効率を向上させる。例えば、圧電セラミックから形成され、そして、トランスデューサ97を有する、ノズルを有する柔軟な層44は、45、46において示されるように、ノズル47から離れた側の169ミクロンの最も薄い幅と、ノズル47に近い方の84.5ミクロンの最も薄い幅とを有している。トランスデューサ97間の組織間領域48は、25ミクロンの厚さを有するUpilex等の従順なポリマー材料層96によってシールされる。この材料層は、トランスデューサが個々に励起して作動する際に、トランスデューサから他のトランスデューサに発生するクロストークを吸収する作用という付加的な利益を有する。複数の47は、トランスデューサ層44及び96の双方を介して形成されている。
【0088】
その例が図15に示されているところの更なる実施においては、柔軟性を有するトランスデューサ95及び支持層53、54を通る部分が図示されており、ここにおいては、層49はPZTから形成され、そして、約200ミクロンの厚さを有している。作動において、電極表面(ノズル52の通路によって限定された外面及び内面)に印加された電圧によって、層49の撓みがノズル52の軸線と実質的に平行に、そして/または、非並行になる。この撓みは、末端50、51において、約100ミクロンだけ薄くされた領域(溝)を導入することによって向上される。2つの薄い領域間の間隔は2.0mmであり、これにより、約90kHzの作動周波数が得られる。
【0089】
図16は、図15に示された装置に関する、有限要素のモデリング結果を示す。グラフは、6個の装置についてのモデリング結果を示している。各々の装置は、シール層のための材料としてUpilexを使用した構造に基づいて、ポリマーシール層74の異なる厚さを有している。この層の厚さが10ミクロン未満の場合には、ノズルの運動振幅は、8.5ミクロンのピークトゥーピークで一定である。シール層の厚さが100ミクロンを超える場合には、シール層は、ノズル運動を減衰し、もって、ノズル振幅が液体噴射を与えるためにはあまりにも小さくなる。モデリングは、25ミクロンの厚さのUpilexの層は、ダンピングまたはクロストークを誘発することなく、スリットを流体の流出に対してシールするために適している。
【0090】
図15に示した実施例においては、トランスデューサ全体が単一のPZT層から形成されているが、この明細書内でなされた様々な変形に従って、図示された原理を実施してもよい。トランスデューサ95は、局部領域の端部をクランプするように作用し、柔軟運動を最大限に高めるための薄い領域に対応して位置した、例えば、ステンレススチール製の支持層53、54上に取り付けられている。再び、ノズルを単なる孔で置き換えてもよく、そして、トランスデューサ間のスリットをシールし、層49の外面を保護するように作用し、相互接続状態をもたらす更なるノズルを有するポリマー層74によって(これらの孔にノズルが一致するように)、層49を覆ってもよい。
【0091】
複数層構造を採用したこのような構造が図17に示されている。この複数層構造においては、トランスデューサ59の柔軟性部材55が2つの部材に分割されており、57内にノズルを有するノズル領域56が別のシール層58に形成されている。この別の層58は、ノズル形成のための基材を提供すると共に、トランスデューサ素子間のシール手段と提供するように作用する。これにより、ノズルが構造体内において横方向における最大の寸法を有することが可能になり、そして、スリットが、ノズルの直径の重要な部分である幅を有することが可能になる。この構造を実現することによる更なる利益は、柔軟性を有するポリマーを、単なるスリットによって得られる間隔よりも、トランスデューサ間の間隔を広くして、分離層58に使用した場合に、クロストークの減少に関するより大きい減衰効果が得られることである。
【0092】
図18には、スリット74、75、76によって分離されたトランスデューサ72、73の末端部分における境界条件の変更が、更なる補強層77を含ませることによってどのようになされるかが示されている。微小な小滴付着装置の層構造により、この更なる補強層の光学的整合を独特の方法で可能にしている。タブ78、79がこれらに対応するトランスデューサ要素80、81の下方に位置するように、更なる層を配置してもよく、これにより、重複部分82の領域においてヒンジ連結またはクランプ連結を補強し、その結果、柔軟性を有する層83が他の可能な方法よりも相対的に低い剛性をもって形成することが可能になる。この補強層はまた、複数の局部領域間の音響バリアを形成することによって、これら局部領域の末端部分間のクロストークを有効に防止する。
【0093】
図19に示された実施形態は、ノズル90を有するトランスデューサ89のセクションからなっており、更なる補強層の作用が、液体85を収容する作用をも有する支持層84によって実現されている。図示された形態においては、励起手段86は、材料層87を覆っており、この材料層においては、複数の局部領域が形成され、そして、励起手段の末端部分88が支持層84を覆うように配置されている。これにより、トランスデューサの末端部分での境界拘束条件を、実質的にヒンジ状態に変更することが実現される。
【0094】
図20には、更なる実施形態が示されており、ここにおいては、液体噴射装置が、デジタル印刷に適した方法で構成されている。この装置は、材料層59上に設けられており、その上に、複数のトランスデューサの二次元的なアレイが、複数の線60に沿って配列されている。トランスデューサの幾何学的構造の詳細は、これを明確化するための挿入図62に示されている。複数のトランスデューサは、ノズル63及び励起手段64を有しており、そして、スリット65によって相互に分離されている。この実施形態においては、トランスデューサは、上述した実施形態と比較して、トランスデューサ1個当たり2つのスリットを有するものとして示されているが、1つのスリットを適用してもよい。図示されたトランスデューサアレイは、低製作解像度間隔66が印刷方向67と直行するように有利に配置されている。各線の印刷解像度は、これにより、間隔68に対して最大である。アレイ60の付加的な複数の線は、間隔68の一部において(図示された場合においては、間隔68の四分の一で)食違いに配置されており、これにより、プリントを個々の線から連続的に覆うことによって、印刷解像度を更に向上させることが可能になる。この実施形態において最後に示された精密構造は、複数のトランスデューサ60を、サブアレイ70上において、これらトランスデューサの線に対して角度71で配置していることである。この配置70によって、隣接するトランスデューサへの印刷信号を、サブアレイにおける他のトランスデューサに関して遅延させ、もって、隣接するトランスデューサ間に残るクロストークをやがて分配させることができる。サブアレイ内における複数のトランスデューサの相対的配置に関して考え得る様々な置換があり、そして、ここに示された実施形態は、このような置換の単なる一例に過ぎない。
【0095】
液体噴射装置を作動するための電子駆動装置に概略的なレイアウトが図21に示されている。ETCs.r.o.、Zilina,Slovak Republicの製造に係るETCM321ジェネレータソフトウェア等の適切なソフトウェアを実行するパーソナルコンピュータ111が示されている。このソフトウェアは、上述と同一の提供者からのETCM321ジェネレータカード等の対応するドライブカード112にデータを供給する。発生した信号は、注文品の増幅器113を経由して、明細書に記載した液体噴射装置114に送られる。図22には、ドライブ信号が模式的に示されており、ここにおいては、波形例115が図示されている。この波形の典型的なピーク電圧は、40から150ボルトの範囲内である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に実質的に平行に向けられた複数のトランスデューサであって、各々が内面と、前記内面と向かい合う外面とを有し、実質的に平面的アレイに配置されたトランスデューサと、
複数のノズルであって、各々のノズルが、それぞれのトランスデューサと組み合わされており、前記それぞれのトランスデューサは、組み合わされたノズルを、ノズルの軸線と実質的に一致する方向に移動させて、そこから液体を噴射するために励起可能であるところのノズルと、
液体を前記複数のノズルの内面に供給するための液体供給手段と、
必要に応じて、トランスデューサを選択的に励起し、かくして、ノズルの移動に応じて、液体がノズル中を移動することによって、液体をそれぞれの外面からジェット又は小滴として噴射するための手段と
からなることを特徴とする、複数のノズルから液体をジェット又は小滴として噴射するための平面装置。
【請求項2】
前記複数のトランスデューサが、外面及び内面を有する材料層の複数の領域に設けられ、前記複数の領域のうちの少なくとも幾つかは、ノズルを支持するサブ領域を有し、ノズルは前記サブ領域を通って、内面から外面に至っており、そして、前記複数の領域のうちの少なくとも幾つかは、複数の励起手段を含んでおり、その各々は、前記複数の領域及び/又はノズルを備えたサブ領域の少なくとも1つを励起可能であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記複数のトランスデューサが、複数の貫通孔を有する第1材料層の複数の領域に設けられており、
前記複数のノズルが、第2材料層の複数の領域に、前記第1材料層の前記貫通孔と整合して設けられており、そして、
前記複数のノズルが、複数の励起手段を有しており、その各々は、前記複数のノズルのうちの少なくとも幾つかのサブ領域において、前記第2材料層を直接的又は間接的に励起可能であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記複数のトランスデューサは、基板上に支持された複数の部材に限定されていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記トランスデューサは可撓性を有していることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1つに記載の装置。
【請求項6】
前記複数の領域は、前記材料層内に、複数のスリットによって形成されたビーム状であることを特徴とする請求項2及び3の何れかに記載の装置。
【請求項7】
前記複数のスリットの各々はシールされていることを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記複数のスリットは、櫛状に配置されていることを特徴とする請求項6又は7に記載の装置。
【請求項9】
前記複数のスリットは、2つの相互に結合された櫛状に配置されていることを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記複数のトランスデューサは、材料層の他の部分よりも厚さが薄い部分を有する前記材料層の複数の領域に設けられていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1つに記載の装置。
【請求項11】
前記複数のトランスデューサは、第1材料層に設けられ、そして、シール層によって相互に分離されており、そして、前記複数のノズルは、前記シール層に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項12】
各ノズルが、一対の対向するトランスデューサの端部間に配置されていることを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項13】
各ノズルが、それぞれのトランスデューサの端部に配置されていることを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項14】
前記複数のトランスデューサはビーム状であり、前記ビームの各々の自由端は、材料の補強層によって支持されていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記複数のトランスデューサはビーム状であり、前記ビームの各々の側部は、相互に向かってテーパ状に形成されており、それぞれの複数のノズルは、それぞれのビームの狭い部分に位置していることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項16】
前記複数のトランスデューサに作動信号を供給するための複数のターミナルが、前記複数のトランスデューサが設けられている前記材料層に設けられていることを特徴とする請求項2又は3に記載の装置。
【請求項17】
複数の信号ターミナルがそれぞれのトランスデューサに対応して設けられていることを特徴とする請求項1乃至16の何れか1つに記載の装置。
【請求項18】
ノズルが組み合わされない更なるトランスデューサを含み、かくして、前記更なるトランスデューサを単独で作動させて、隣接するノズル間のクロストークを減少させることを特徴とする請求項1乃至17の何れか1つに記載の装置。
【請求項19】
各トランスデューサに隣接する材料層の領域が、前記材料層の他の部分よりも薄いことを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項20】
前記複数のターミナルに接続され、従って、前記複数のトランスデューサに接続され、そして、それぞれのトランスデューサターミナルに作動信号を独立して送るために配置された電子駆動機構を更に含み、かくして、前記複数のノズルからの小滴の形成が、対応して選択的に発生する作動信号によって選択的に実施されることを特徴とする請求項17に記載の装置。
【請求項21】
前記複数のトランスデューサがワンピースに形成されていることを特徴とする請求項1乃至20の何れか1つに記載の装置。
【請求項22】
前記複数のトランスデューサが複合コンポーネントとして形成されていることを特徴とする請求項1乃至20の何れか1つに記載の装置。
【請求項23】
前記複数のトランスデューサ、前記複数のノズル及び前記複数の励起手段が単一の平面上に形成されていることを特徴とする請求項1乃至22の何れか1つに記載の装置。
【請求項24】
前記複数のトランスデューサのアスペクト比は、下記不等式:
【数1】
上記式において、tiは、トランスデューサにおける材料のi番目の層の厚さであり、そして、ciは、その厚さの方向において、層を伝播する圧縮波又は剪断波の作動周波数fでの上記層中の速度である
を満たすことを特徴とする請求項1乃至23の何れか1つに記載の装置。
【請求項25】
前記複数のトランスデューサ、及び、前記複数のトランスデューサを励起するための前記手段は、層構造を構成していることを特徴とする請求項1乃至24の何れか1つに記載の装置。
【請求項26】
前記複数のノズルが前記層構造を通って伸びていることを特徴とする請求項25に記載の装置。
【請求項27】
前記層構造は複数の層から形成されていることを特徴とする請求項25に記載の装置。
【請求項1】
相互に実質的に平行に向けられた複数のトランスデューサであって、各々が内面と、前記内面と向かい合う外面とを有し、実質的に平面的アレイに配置されたトランスデューサと、
複数のノズルであって、各々のノズルが、それぞれのトランスデューサと組み合わされており、前記それぞれのトランスデューサは、組み合わされたノズルを、ノズルの軸線と実質的に一致する方向に移動させて、そこから液体を噴射するために励起可能であるところのノズルと、
液体を前記複数のノズルの内面に供給するための液体供給手段と、
必要に応じて、トランスデューサを選択的に励起し、かくして、ノズルの移動に応じて、液体がノズル中を移動することによって、液体をそれぞれの外面からジェット又は小滴として噴射するための手段と
からなることを特徴とする、複数のノズルから液体をジェット又は小滴として噴射するための平面装置。
【請求項2】
前記複数のトランスデューサが、外面及び内面を有する材料層の複数の領域に設けられ、前記複数の領域のうちの少なくとも幾つかは、ノズルを支持するサブ領域を有し、ノズルは前記サブ領域を通って、内面から外面に至っており、そして、前記複数の領域のうちの少なくとも幾つかは、複数の励起手段を含んでおり、その各々は、前記複数の領域及び/又はノズルを備えたサブ領域の少なくとも1つを励起可能であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記複数のトランスデューサが、複数の貫通孔を有する第1材料層の複数の領域に設けられており、
前記複数のノズルが、第2材料層の複数の領域に、前記第1材料層の前記貫通孔と整合して設けられており、そして、
前記複数のノズルが、複数の励起手段を有しており、その各々は、前記複数のノズルのうちの少なくとも幾つかのサブ領域において、前記第2材料層を直接的又は間接的に励起可能であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記複数のトランスデューサは、基板上に支持された複数の部材に限定されていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記トランスデューサは可撓性を有していることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1つに記載の装置。
【請求項6】
前記複数の領域は、前記材料層内に、複数のスリットによって形成されたビーム状であることを特徴とする請求項2及び3の何れかに記載の装置。
【請求項7】
前記複数のスリットの各々はシールされていることを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記複数のスリットは、櫛状に配置されていることを特徴とする請求項6又は7に記載の装置。
【請求項9】
前記複数のスリットは、2つの相互に結合された櫛状に配置されていることを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記複数のトランスデューサは、材料層の他の部分よりも厚さが薄い部分を有する前記材料層の複数の領域に設けられていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1つに記載の装置。
【請求項11】
前記複数のトランスデューサは、第1材料層に設けられ、そして、シール層によって相互に分離されており、そして、前記複数のノズルは、前記シール層に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項12】
各ノズルが、一対の対向するトランスデューサの端部間に配置されていることを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項13】
各ノズルが、それぞれのトランスデューサの端部に配置されていることを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項14】
前記複数のトランスデューサはビーム状であり、前記ビームの各々の自由端は、材料の補強層によって支持されていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記複数のトランスデューサはビーム状であり、前記ビームの各々の側部は、相互に向かってテーパ状に形成されており、それぞれの複数のノズルは、それぞれのビームの狭い部分に位置していることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項16】
前記複数のトランスデューサに作動信号を供給するための複数のターミナルが、前記複数のトランスデューサが設けられている前記材料層に設けられていることを特徴とする請求項2又は3に記載の装置。
【請求項17】
複数の信号ターミナルがそれぞれのトランスデューサに対応して設けられていることを特徴とする請求項1乃至16の何れか1つに記載の装置。
【請求項18】
ノズルが組み合わされない更なるトランスデューサを含み、かくして、前記更なるトランスデューサを単独で作動させて、隣接するノズル間のクロストークを減少させることを特徴とする請求項1乃至17の何れか1つに記載の装置。
【請求項19】
各トランスデューサに隣接する材料層の領域が、前記材料層の他の部分よりも薄いことを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項20】
前記複数のターミナルに接続され、従って、前記複数のトランスデューサに接続され、そして、それぞれのトランスデューサターミナルに作動信号を独立して送るために配置された電子駆動機構を更に含み、かくして、前記複数のノズルからの小滴の形成が、対応して選択的に発生する作動信号によって選択的に実施されることを特徴とする請求項17に記載の装置。
【請求項21】
前記複数のトランスデューサがワンピースに形成されていることを特徴とする請求項1乃至20の何れか1つに記載の装置。
【請求項22】
前記複数のトランスデューサが複合コンポーネントとして形成されていることを特徴とする請求項1乃至20の何れか1つに記載の装置。
【請求項23】
前記複数のトランスデューサ、前記複数のノズル及び前記複数の励起手段が単一の平面上に形成されていることを特徴とする請求項1乃至22の何れか1つに記載の装置。
【請求項24】
前記複数のトランスデューサのアスペクト比は、下記不等式:
【数1】
上記式において、tiは、トランスデューサにおける材料のi番目の層の厚さであり、そして、ciは、その厚さの方向において、層を伝播する圧縮波又は剪断波の作動周波数fでの上記層中の速度である
を満たすことを特徴とする請求項1乃至23の何れか1つに記載の装置。
【請求項25】
前記複数のトランスデューサ、及び、前記複数のトランスデューサを励起するための前記手段は、層構造を構成していることを特徴とする請求項1乃至24の何れか1つに記載の装置。
【請求項26】
前記複数のノズルが前記層構造を通って伸びていることを特徴とする請求項25に記載の装置。
【請求項27】
前記層構造は複数の層から形成されていることを特徴とする請求項25に記載の装置。
【図1a】
【図1b】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図1b】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2010−280221(P2010−280221A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−161350(P2010−161350)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【分割の表示】特願2000−544506(P2000−544506)の分割
【原出願日】平成11年4月16日(1999.4.16)
【出願人】(500477090)ザ テクノロジー パートナーシップ ピーエルシー (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【分割の表示】特願2000−544506(P2000−544506)の分割
【原出願日】平成11年4月16日(1999.4.16)
【出願人】(500477090)ザ テクノロジー パートナーシップ ピーエルシー (2)
【Fターム(参考)】
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