説明

液体噴射装置

【課題】キャリッジの往復移動の力を利用して、切換部材を第2位置から第1位置に確実に移動させる。
【解決手段】キャリッジ2の画像記録領域からメンテナンス領域への移動にともない、切換レバー74をキャリッジ2で押進して第1ガイド位置から第3ガイド位置へ移動させるとともに、切換レバー74の支持部74bとキャリッジ2のキャリッジ係合部2bとを係合させて、キャリッジ2のメンテナンス領域から画像記録領域への移動にともない、切換レバー74を第3ガイド位置から第1ガイド位置へ移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を噴射する液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、インクジェットプリンタなどの液体を噴射する様々な技術分野において、液体噴射ヘッドをキャリッジに搭載し、キャリッジの往復移動により、液体噴射ヘッドを往復移動させて被噴射媒体に液体を噴射する液体噴射装置が知られている。このような液体噴射装置には、装置内の各部を駆動する様々な種類の駆動機構が設けられているが、それぞれの駆動機構に対して1つずつ別個に駆動モータを設けると、駆動モータの数が増えて、装置が大型化するとともに、製品コストが増大してしまう。そこで、駆動タイミングが異なる複数の駆動機構に対しては、動力伝達機構を介して1つの駆動モータが連結されている。この動力伝達機構は、複数の駆動機構に対する駆動モータの連結先を選択的に切り換え可能になっている。そして、動力伝達機構は、キャリッジの移動を利用して、駆動機構への駆動モータの連結先を切り換え可能なレバー(切換部材)に接続されており、レバーの位置に応じて、駆動モータの連結先が切り換わる。
【0003】
例えば、特許文献1に記載のインクジェットプリンタにおいては、記録動作時に使用され、給紙トレイに収容された記録用紙をインクジェットヘッドに対して供給する供給機構と、メンテナンス動作時に使用され、インクジェットヘッドのノズルが形成された面に密着可能なキャップをインクジェットヘッドに対して離接移動させるキャップ駆動機構とを動力伝達機構を介して1つの駆動モータに連結している。そして、キャリッジの移動経路上には、この動力伝達機構の連結先の切り換え用として、キャリッジの一方向からの移動によって当接可能なレバーが設けられている。
【0004】
このレバーは、走査方向に関してキャリッジ側にバネにより付勢されており、キャリッジが画像記録領域にあるときには、レバーの移動可能範囲内におけるキャリッジ側の一方端部に位置しており、動力伝達機構を介して供給機構と駆動モータが連結し、供給機構に対して動力を伝達可能となっている。また、キャリッジがメンテナンス領域に移動してレバーを押進して、レバーが他方端部まで移動すると、動力伝達機構を介してキャップ駆動機構と駆動モータが連結し、キャップ駆動機構に対して動力を伝達可能となっている。そして、他方端部まで移動したキャリッジが、レバーの移動可能範囲を越えて一方に移動すると、レバーは付勢力によって供給機構と駆動モータが連結する元の位置まで移動する。
【0005】
【特許文献1】特開2009−34847号公報(図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、キャリッジに押進されて移動する切換部材の位置に応じて動力伝達機構の連結先を切り換える構成においては、例えば、動力伝達機構と駆動機構が互いのギヤの噛合状態を切り換えて、駆動モータの連結先を切り換えている場合には、動力伝達機構とこの動力伝達機構に連結した駆動機構の噛合したギヤ同士が歯面の面圧などにより食いつくなどして、切換部材がバネの付勢力によってキャリッジに押進された位置から元の位置まで戻れず、動力伝達機構は押進された位置における駆動機構と連結されたままで、元の位置における駆動機構と連結されないことがある。すると、駆動モータが動力を発生したときに、その動力が伝達される駆動機構が所望の駆動機構ではないために、誤動作が生じてしまう。そこで、バネの付勢力を大きくして切換部材を元の位置に戻すことも考えられるが、これでは、キャリッジによって切換部材を押進させるときに、その押進力を大きくする必要があり、消費電力が大きくなってしまう。このように、現構成においては、切換部材の位置を切り換えるのに困難を要している。
【0007】
そこで、本発明の目的は、キャリッジの往復移動の力を利用して、切換部材を第2位置から第1位置に確実に移動させる液体噴射装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の液体噴射装置は、ノズルから液体を噴射する液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドが搭載され、所定の走査方向に往復移動するキャリッジと、動力を発生させる駆動モータと、前記駆動モータの動力により駆動する第1機構と、同じく、前記駆動モータの動力により駆動する第2機構と、前記駆動モータに接続され、且つ、前記第1機構及び前記第2機構のいずれかに選択的に連結し、その連結先に前記駆動モータの動力を伝達する動力伝達機構と、前記キャリッジの移動経路上における、第1位置と前記第1位置とは異なる第2位置とにわたって移動可能であり、その位置に応じて前記動力伝達機構の連結先を切り換える切換部材と、を備えており、前記動力伝達機構は、前記切換部材が前記第1位置に位置するときには、前記第1機構と連結され、前記切換部材が前記第2位置に位置するときには、前記第2機構と連結され、前記切換部材は、前記キャリッジの前記走査方向に沿った第1向きへの移動にともない、前記キャリッジに押進されて前記第1位置から前記第2位置に移動し、前記切換部材と前記キャリッジには、前記切換部材が前記第2位置から前記第1向きと反対の第2向きに移動するときに、前記切換部材と前記キャリッジとを係合させる係合部がそれぞれ形成されており、前記キャリッジが前記第2向きへ移動する際に、前記第2位置にある前記切換部材と前記キャリッジは、前記係合部により係合され一体的に前記第2位置から前記第1位置に移動する。
【0009】
本発明の液体噴射装置によると、キャリッジの第1向きへの移動にともない、切換部材をキャリッジで押進して第1位置から第2位置へ移動させるとともに、切換部材をキャリッジと係合させて、キャリッジの第2向きへの移動にともない、第2位置から第1位置へ移動させることができる。このように、液体噴射ヘッドを走査方向に往復移動させるキャリッジの力を利用して、切換部材を第1位置と第2位置とにわたって確実に移動させることができる。
【0010】
また、前記液体噴射ヘッドは、前記ノズルが開口する液体噴射面を有しており、前記液体噴射ヘッドの液体噴射対象である被噴射媒体が収容された供給部と、前記液体噴射ヘッドの前記液体噴射面に密着可能なキャップと、をさらに備えており、前記第1機構は、前記供給部に収容された前記被噴射媒体を、前記液体噴射ヘッドに対して供給する供給機構であり、前記第2機構は、前記キャップを前記液体噴射面に対して離接移動させるキャップ駆動機構であり、前記切換部材は、前記キャリッジの移動経路における、前記液体噴射ヘッドから前記被噴射媒体に液体を噴射する噴射領域の、前記走査方向に関する外側に位置する非噴射領域に配置され、前記非噴射領域から前記噴射領域に向かう前記第2向きに付勢されており、前記第2位置は、前記第1位置よりもさらに前記噴射領域から離れた位置にあり、前記キャリッジが前記非噴射領域から前記噴射領域に向かう前記第2向きへ移動する際に、前記第2位置にある前記切換部材と前記キャリッジは、前記係合部により係合され一体的に前記第2位置から前記第1位置に移動することが好ましい。
【0011】
これによると、キャリッジの移動経路上における非噴射領域に配置された切換部材を、キャリッジの噴射領域から非噴射領域に向かう第1向きへの移動にともない、キャリッジで押進して第1位置から第2位置へ移動させて、動力伝達機構をキャップ駆動機構と連結させて、キャップを離接移動可能とする。また、キャリッジが噴射領域において被噴射媒体に液体を噴射するときには、動力伝達機構の連結先を供給機構にして、被噴射媒体を液体噴射ヘッドに対して供給可能としておく必要がある。そこで、キャリッジを非噴射領域から噴射領域に戻す際に、切換部材とキャリッジを係合させて、キャリッジの非噴射領域から噴射領域に向かう第2向きへの移動にともない、切換部材を第2位置から第1位置に移動させて、動力伝達機構を供給機構と連結させて、被噴射媒体を供給可能とする。このように、キャリッジの往復移動の力を利用して、切換部材を第1位置と第2位置とにわたって移動させて、動力伝達機構の連結先を確実に切り換えることができる。したがって、切換部材が第2位置から第1位置へ移動しないことで、動力伝達機構の連結先が切り換わらずに、供給部から被噴射媒体を供給しているつもりが、キャップが離接移動してしまい、被噴射媒体が供給されていないにもかかわらず、液体噴射ヘッドから液体を噴射してしまうような誤動作が生じるのを防止することができる。
【0012】
さらに、前記非噴射領域に配置され、ともに前記第1位置と前記第2位置とを結び、互いに前記走査方向と交差する方向にずれた第1経路と第2経路が形成された経路形成部材をさらに備えており、前記切換部材は、前記走査方向に平行な揺動軸周りに揺動自在であり、前記経路形成部材は、前記切換部材が前記第1位置から前記第2位置へは前記第1経路を移動し、前記第2位置から前記第1位置へは前記第2経路を移動するように構成されており、前記係合部は、前記第1経路で係合せずに、前記第2経路で係合し、前記第2経路を移動して前記第1位置に位置付けられたときに前記係合部は前記切換部材との係合が解除され、前記第1経路を移動して前記第2位置に位置付けられたときに前記係合部は前記切換部材と係合されることが好ましい。
【0013】
これによると、切換部材は、第1経路を第1位置から第2位置へ移動するときには、キャリッジと係合していない。また、切換部材は、第2経路を第2位置から第1位置へ移動するときには、キャリッジと係合する。そして、切換部材とキャリッジとの係合状態の切り換えは、第1位置と第2位置で行われる。このように、切換部材の移動する経路に応じて、切換部材とキャリッジの係合状態を切り換えることができる。
【0014】
加えて、前記キャリッジの前記係合部は、前記キャリッジが前記第2位置にある前記切換部材と当接したときに、前記切換部材に対して前記噴射領域と反対側に設けられており、前記切換部材は、前記第2経路上に位置するときに前記走査方向に関して前記係合部と重なり、前記第1経路上に位置するときに前記走査方向に関して前記係合部と重ならないことが好ましい。
【0015】
これによると、キャリッジと当接した切換部材を第2経路に位置させることで、キャリッジの係合部と係合させることができる。そして、キャリッジを第2向きに移動させると、切換部材が係合部と係合し、第2経路上を第2位置から第1位置へ移動させることができる。
【0016】
また、前記経路形成部材は、前記第1経路における前記第1位置と前記第2位置との間の第3位置において、前記切換部材の前記第2向きへの移動を規制するストッパを有していることが好ましい。
【0017】
これによると、第1経路上の第3位置において切換部材の位置を固定することができる。また、このように切換部材が固定される第3位置が設けられた第1経路上を第2位置から第1位置へ切換部材を移動させるのは困難であるため、第1経路とは別に、第1位置と第2位置の間に切換部材が固定される位置のない第2経路を設けて、切換部材を第2経路を移動させて、容易に第2位置から第1位置へ移動させることができる。
【0018】
さらに、前記液体噴射ヘッドから一方の面に液体が噴射された後の前記被噴射媒体の表裏を反転させる反転機構をさらに備えており、前記動力伝達機構は、前記切換部材が前記第3位置に位置するときには、前記反転機構と連結されることが好ましい。
【0019】
これによると、切換部材が第3位置に位置するときには、反転機構に対して動力を伝達することができる。
【0020】
加えて、前記キャリッジの走行状態を検出する検出手段と、前記駆動モータの駆動を制御する駆動制御手段と、をさらに備えており、前記動力伝達機構は、前記切換部材とともに、前記走査方向に移動可能であり、前記駆動モータにより回転駆動される駆動ギヤと、前記切換部材が前記第2位置に位置したときに、前記切換部材とともに移動した前記駆動ギヤと噛合する第1従動ギヤと、を有しており、前記第1従動ギヤは、前記キャップ駆動機構と連結されており、前記駆動制御手段は、前記第2位置にある前記切換部材と係合された前記キャリッジが前記第1位置に向かって走行していないことが前記検出手段によって検出されると、前記駆動モータを駆動して、前記駆動ギヤを正負方向に交互に微小回転させることが好ましい。
【0021】
キャリッジの移動にともない、キャリッジに係合された切換部材を第2位置から第1位置に移動させることで、駆動ギヤを走査方向に移動させて、駆動ギヤと第1従動ギヤの噛合状態を解除しようとしても、例えば、駆動ギヤと第1従動ギヤが歯面の面圧により食いつくなどして、駆動ギヤが走査方向に移動不能になっていることがある。すると、駆動ギヤに連結された切換部材に係合されたキャリッジも走行不能になる。そこで、検出手段によって切換部材と係合されたキャリッジが第1位置に向かって走行していないことが検出されたときには、駆動ギヤと第1従動ギヤを正負方向に交互に微小回転させて、駆動ギヤと第1従動ギヤの食いつきを解消する。これにより、駆動ギヤと第1従動ギヤの噛合状態が解除され、切換部材に係合されたキャリッジを第1位置に向かって走行させることが可能となり、切換部材を第2位置から第1位置に移動させることができる。
【0022】
また、前記走査方向に沿って前記第1従動ギヤの前記噴射領域側に隣接配置され、前記切換部材が最も前記噴射領域側の前記第1位置に位置するときに前記駆動ギヤと噛合する第2従動ギヤを有しており、前記第2従動ギヤは、前記供給機構と連結されていることが好ましい。
【0023】
キャリッジの第2向きへの移動にともない、キャリッジに係合された切換部材を第2位置から第1位置に移動させることで、駆動ギヤを走査方向に移動させて、駆動ギヤと第1従動ギヤの噛合状態を解除して、駆動ギヤを第2従動ギヤと噛合させようとしても、例えば、第1従動ギヤと第2従動ギヤの位相がずれて、第1従動ギヤの歯車の凹部と第2従動ギヤの歯車の凸部が重なっているなどして、駆動ギヤが走査方向に移動不能になっていることがある。すると、駆動ギヤに連結された切換部材に係合されたキャリッジも走行不能になる。そこで、検出手段によって切換部材と係合されたキャリッジが第1位置に向かって走行していないことが検出されたときには、駆動ギヤと第1従動ギヤを正負方向に交互に微小回転させる。これにより、第1従動ギヤと第2従動ギヤの位相が同じになり、切換部材に係合されたキャリッジを第1位置に向かって走行させることが可能となり、切換部材を第2位置から第1位置に移動させることができる。
【発明の効果】
【0024】
キャリッジの第1向きへの移動にともない、切換部材をキャリッジで押進して第1位置から第2位置へ移動させるとともに、キャリッジと係合させて、キャリッジの第2向きへの移動にともない、第2位置から第1位置へ移動させることができる。このように、液体噴射ヘッドを走査方向に往復移動させるキャリッジの力を利用して、切換部材を第1位置と第2位置とにわたって確実に移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施形態に係るプリンタの概略斜視図である。
【図2】プリンタの縦断面図である。
【図3】プリンタ本体内のインクジェットヘッド近傍の概略上面図である。
【図4】動力伝達機構近傍の部分斜視図である。
【図5】動力伝達機構の概略平面図である。
【図6】キャリッジと切換レバーの係合状態の切り換えについて説明する図であり、(a)はキャリッジ当接時の切換レバー近傍の斜視図であり、(b)は図6(a)のA方向から見たときの側面図である。
【図7】レバーガイドの上面図である。
【図8】キャリッジによるレバー位置の切り換えについて説明するときの動力伝達機構の概略平面図であり、(a)は記録動作時であり、(b)はメンテナンス動作時であり、(c)はメンテナンス動作終了後の記録動作開始時であり、(d)は記録用紙の反転時である。
【図9】記録動作に関するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。本実施形態は、記録用紙に対してインクを噴射するインクジェットヘッドを有するインクジェットプリンタに本発明を適用した一例である。
【0027】
図1は、本実施形態に係るプリンタの概略斜視図である。図2は、プリンタの縦断面図である。図3は、プリンタ本体内のインクジェットヘッド近傍の概略上面図である。図1〜図3に示すように、プリンタ1(液体噴射装置)は、各種ボタンや制御パネルが配置された略直方体状のプリンタ本体6を有しており、プリンタ本体6の下半部の正面(図1の手前側)には開口13が形成されている。開口13内には、記録用紙Pが収容される給紙トレイ20と、文字や画像などが記録された記録用紙Pが排出される排紙トレイ21が上下2段にわかれて設けられている。そして、給紙トレイ20内の記録用紙Pは、プリンタ本体6内の後述するインクジェットヘッド3へ搬送されて、インクジェットヘッド3により文字や画像などが記録された後、排紙トレイ21へ排出される。
【0028】
まず、プリンタ1における記録用紙Pの搬送系の構成について説明する。図2に示すように、給紙トレイ20の開口13から離れた奥側には、給紙トレイ20内の最も上にある記録用紙Pを分離して上方へ案内する分離傾斜板22が設けられている。給紙トレイ20の上方には、給紙トレイ20に収容された記録用紙Pを分離傾斜板22へ送る第1給紙ローラ25が設けられている。第1給紙ローラ25は、第1アーム26の先端に軸支されており、ASF(Auto Sheet Feed)モータ110(図5参照)の動力が伝達されて回転する。第1アーム26は、支軸26aに回動自在に支持され、バネなどにより付勢されて給紙トレイ20に接触するように下側へ回動されており、給紙トレイ20の挿抜の際に上方へ退避可能に構成されている。なお、本実施形態におけるASFモータ110が、本発明における駆動モータに相当する。また、本実施形態における第1給紙ローラ25が、本発明における第1機構に相当する。
【0029】
また、分離傾斜板22から上方へ向かって延びるように、所定間隔で対向する一対のガイド面によって形成された第1搬送路23が形成されている。第1搬送路23は、分離傾斜板22から上方へ向かった後、プリンタ1の正面(開口13が形成された面)側へ湾曲している。第1搬送路23の下流側には、インクジェットヘッド3(液体噴射ヘッド)が設けられている。インクジェットヘッド3は、その下方の記録用紙Pが送られる方向と直交する走査方向(図2の紙面直交方向)に往復移動するキャリッジ2に搭載されている。キャリッジ2が往復移動する間に、インクジェットヘッド3のノズル12(図3参照)からインクが噴射されることによって、プラテン63上を紙送り方向に送られる記録用紙Pに文字や画像などが記録される。なお、紙送り方向とは、インクジェットヘッド3によって記録動作が行われている記録用紙Pが送られている方向である。
【0030】
インクジェットヘッド3の上流側には、第1搬送路23を搬送される記録用紙Pを狭持してプラテン63上へ搬送する一対の搬送ローラ29及びピンチローラ30が設けられている。搬送ローラ29は、LF(Line Feed)モータ120(図5参照)の動力が伝達されて駆動する。ピンチローラ30は、搬送ローラ29の回転にともない回転する従動ローラである。
【0031】
インクジェットヘッド3の下流側には、文字や画像などが記録された記録用紙Pを狭持して排紙トレイ21へ搬送する一対の排紙ローラ31及び拍車32が設けられている。排紙ローラ31は、搬送ローラ29と同様に、LFモータ120の動力が伝達されて駆動する。拍車32は、排紙ローラ31の回転にともない回転する従動ローラである。搬送ローラ29に設けられたロータリーエンコーダ(図示せず)は、搬送ローラ29とともに回転するエンコーダディスクのパターンを光学センサで検知する。この検知信号に基づいて、LFモータ120の回転が制御される。
【0032】
また、インクジェットヘッド3の下流側と、給紙トレイ20の第1給紙ローラ25よりも上流側とを結ぶように、傾斜しながら下降した第2搬送路33が形成されている。この第2搬送路33によって、インクジェットヘッド3により一方の面に文字や画像などが記録された記録用紙Pが給紙トレイ20上へ案内される。第2搬送路33も、第1搬送路23と同様に、所定の間隔で対向する一対のガイド面によって形成されている。
【0033】
さらに、インクジェットヘッド3の下流側には、第1搬送路23を搬送された記録用紙Pを、排紙トレイ21または第2搬送路33のいずれかへ選択的に送る経路切換機構34(反転機構)が設けられている。経路切換機構34は、スイッチバックローラ35、拍車36、38及びフレーム37を有する。スイッチバックローラ35及び拍車36は、排紙トレイ21の上流側であって、第2搬送路33の接続部よりも下流側に設けられている。
【0034】
記録用紙Pに片面記録を行う場合は、記録用紙Pは、インクジェットヘッド3によって記録が行われて、スイッチバックローラ35及び拍車36によって排紙トレイ21へ排出される。記録用紙Pに両面記録を行う場合は、記録用紙Pは、インクジェットヘッド3によって一方の面に記録が行われて、スイッチバックローラ35及び拍車36によってスイッチバック搬送される。そして、記録用紙Pのスイッチバック搬送にともなって、フレーム37が第2搬送路33へ向かって回動されて、拍車38が降下する。スイッチバック搬送された記録用紙Pは、拍車38により第2搬送路33へ案内されて、給紙トレイ20へ送られる。記録用紙Pの先端が第1給紙ローラ25に到達すると、その記録用紙Pは、第1給紙ローラ25によって再び第1搬送路23を経てインクジェットヘッド3へ搬送される。その際、記録用紙Pは、記録が行われていない他方の面が記録ヘッド61と対向する。そして、両面に記録が行われた記録用紙Pは、経路切換機構34によって排紙トレイ21へ排出される。
【0035】
経路切換機構34のスイッチバックローラ35は、LFモータ120の動力が伝達されて駆動回転する。また、経路切換機構34におけるフレーム37は、ASFモータ110の動力が伝達されて駆動回転する。
【0036】
また、給紙トレイ20の下側には、複数の記録用紙Pが積層されて収容された給紙カセット14がプリンタ本体6に対して着脱自在に装着されている。給紙カセット14の装置奥側には、分離傾斜板39が設けられている。分離傾斜板39は、給紙カセット14から積層して送られた記録用紙Pを分離して、最も上にある記録用紙Pのみを上方へ案内する。分離傾斜板39から上方へ向かっては、第3搬送路40が形成されている。第3搬送路40も、所定の間隔で対向する一対のガイド面によって形成されている。給紙カセット14に収容された記録用紙Pは、第3搬送路40により下方から上方へUターンするように案内されて第1搬送路23に進入し、インクジェットヘッド3により記録が行われた後、排紙トレイ21に排出される。
【0037】
給紙カセット14の上側には、給紙カセット14に収容された記録用紙Pを第3搬送路40へ供給する第2給紙ローラ42が設けられている。第2給紙ローラ42は、第2アーム43の先端に軸支されている。第2給紙ローラ42は、複数のギヤが噛合されてなる駆動伝達機構(図示せず)によってASFモータ110の動力が伝達されて駆動回転する。第2アーム43は、支軸43aに回動自在に支持され、バネなどに付勢されて給紙カセット14に接触するように下側へ回動されており、給紙カセット14の挿抜の際に上側へ退避可能に構成されている。第2給紙ローラ42が給紙カセット14内の記録用紙Pに接触した状態で回転すると、最も上にある記録用紙Pが分離傾斜板39を介して第3搬送路40へ送られる。
【0038】
また、インクジェットヘッド3の下方には、プラテン63が配設されている。プラテン63は、キャリッジ2の往復移動範囲のうち、記録用紙Pが通過する部分に配設されている。プラテン63の幅は、搬送可能な記録用紙Pの最大幅より十分に大きいので、第1搬送路23を搬送される記録用紙Pは常にプラテン63上を通過する。このプラテン63上の領域が画像記録領域A1となっている。
【0039】
次に、記録動作に関わるキャリッジ2やインクジェットヘッド3などの構成について説明する。図3に示すように、キャリッジ2は、走査方向(図3の左右方向)に平行に延びる2本のガイド軸17に沿って往復移動可能に構成されている。また、キャリッジ2には、無端ベルト18が連結されており、CRモータ19によって無端ベルト18が走行駆動されたときに、キャリッジ2は、無端ベルト18の走行にともなって走査方向に移動する。
【0040】
なお、プリンタ本体6内には、走査方向に間隔を空けて配列された多数の透光部(スリット)を有するリニアエンコーダ10が設けられている。一方、キャリッジ2には、発光素子と受光素子とを有する透過型の位置検出センサ11が設けられている。そして、プリンタ1は、キャリッジ2の移動中に位置検出センサ11が検出したリニアエンコーダ10の透光部の計数値(検出回数)から、キャリッジ2の走査方向に関する現在位置を認識できるようになっており、CRモータ19の回転駆動が制御される。
【0041】
インクジェットヘッド3は、キャリッジ2の下面に搭載されており、圧電式のアクチュエータにより、図示しないインクカートリッジから供給され、貯留された流路ユニットのインク流路内のインクを複数のノズル12から噴射させる。複数のノズル12は、紙送り方向(図3の走査方向と直交する上下方向)に複数並べて配置されてノズル列を形成しているとともに、このノズル列が走査方向に4列配列されている。そして、このインクジェットヘッド3の下面が、複数のノズル12がそれぞれ開口するインク噴射面3a(液体噴射面)となっており、ノズル列ごとに、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラックのインクが噴射される。
【0042】
次に、インクジェットヘッド3のメンテナンス動作に関わる構成について説明する。図4は、動力伝達機構近傍の部分斜視図であり、ともにパージ機構も図示されている。図3に示すように、プラテン63の幅方向(走査方向)に関する画像記録領域A1よりも外側の領域にはパージ機構55が設けられている。パージ機構55は、インクジェットヘッド3のノズル12から強制的にインクを排出させるパージ動作を行い、インクジェットヘッド3のメンテナンスを行うものである。このパージ機構55が配置された領域がメンテナンス領域A2となっている。画像記録領域A1とメンテナンス領域A2は走査方向に関して隣接して配置されており、キャリッジ2は画像記録領域A1とメンテナンス領域A2にまたがって往復動可能である。
【0043】
図3、図4に示すように、パージ機構55は、インクジェットヘッド3のインク噴射面3aに形成されたノズル12を覆うキャップ57と、キャップ57と接続された吸引ポンプ58と、キャップ57を昇降駆動するキャップ昇降機構59とを有する。キャップ57は、ゴムや合成樹脂などの可撓性を有する材料で形成されており、キャップ昇降機構59によって上下動されてインクジェットヘッド3と接離する。キャップ57がインクジェットヘッド3と接触してノズル12を覆った状態において吸引ポンプ58が駆動すると、インクジェットヘッド3から強制的にインクが排出されて、インク噴射性能が回復する。吸引ポンプ58は、LFモータ120の動力が伝達されて駆動する。また、キャップ昇降機構59は、ASFモータ110の動力が伝達されて駆動する。なお、本実施形態におけるキャップ昇降機構59が、本発明における第2機構に相当する。
【0044】
次に、ASFモータ110から第1給紙ローラ25、第2給紙ローラ42、キャップ昇降機構59、フレーム37へ、また、LFモータ120から吸引ポンプ58への動力伝達機構70について説明する。図4は、動力伝達機構近傍の部分斜視図である。図5は、動力伝達機構の概略平面図である。図6は、キャリッジと切換レバーの係合状態の切り換えについて説明する図であり、(a)はキャリッジ当接時の切換レバー近傍の斜視図であり、(b)は図6(a)のA方向から見たときの側面図である。図7は、レバーガイドの上面図である。図4、図5に示すように、動力伝達機構70は、プリンタ本体6におけるメンテナンス領域A2に配置されたパージ機構55よりも奥側に配置されており、ASFモータ110とLFモータ120から独立に出力される2系統の動力を、各駆動機構へ選択的に伝達するものである。
【0045】
LFモータ120は、搬送ローラ29の一端(図3における左側)に連結されている。搬送ローラ29の他端(図3における右側)にはLFギヤ(図示せず)が搬送ローラ29と同軸且つ一体的に回転するように設けられており、このLFギヤに軸線方向にスライド可能な第1駆動ギヤ71が噛合されて、この第1駆動ギヤ71はLFモータ120の動力により回転駆動する。第1駆動ギヤ71の軸線は、LFギヤの軸線と平行であり、第1駆動ギヤ71はLFギヤに対して平行移動可能である。LFギヤの軸線方向の長さ(以下、厚みと称する)は、第1駆動ギヤ71のスライド範囲に対して十分に長いので、第1駆動ギヤ71のスライド範囲において第1駆動ギヤ71とLFギヤとは常時噛合される。
【0046】
ASFモータ110は、動力伝達機構70の奥側に配置されて、その出力軸からASFギヤ(図示せず)を介して第2駆動ギヤ72に動力が伝達されて、第2駆動ギヤ72は回転駆動する。第2駆動ギヤ72の軸線は、ASFギヤの軸線と平行であり、第2駆動ギヤ72はASFギヤに対して平行移動可能である。ASFギヤの厚みは、第2駆動ギヤ72のスライド範囲に対して十分に厚いので、第2駆動ギヤ72のスライド範囲において、第2駆動ギヤ72とASFギヤとは常時噛合される。
【0047】
図5に示すように、第1駆動ギヤ71及び第2駆動ギヤ72は、1本の支軸73に軸線方向にスライド可能に軸支されている。第1駆動ギヤ71と第2駆動ギヤ72は、メンテナンス領域A2内に配置され、且つ、第2駆動ギヤ72は第1駆動ギヤ71よりも画像記録領域A1側に配置されている。支軸73の軸線方向は、キャリッジ2の走査方向と平行である。この支軸73に沿って第1駆動ギヤ71と第2駆動ギヤ72がスライド移動することで、第1駆動ギヤ71と第2駆動ギヤ72は、後述する第1〜第4伝達ギヤ101〜104と選択的に噛合される。
【0048】
支軸73には、第1駆動ギヤ71よりも画像記録領域A1から離れている側に、切換レバー74がスライド移動可能に設けられている。図6(a)に示すように、切換レバー74は、支軸73に回転自在に支持されて径方向に突設しており、さらに軸線方向にスライド自在である。この切換レバー74は、図6(a)の手前方向に付勢されている。
【0049】
切換レバー74は、その先端が2つに分岐しており、支軸73の軸線方向に沿って並んだ、長さの異なるレバー係合部74aと支持部74bとを有している。そして、画像記録領域A1に近い側にあるレバー係合部74aは、直立したときに、その先端がキャリッジ2のガイド片2aの下端よりも低い位置であり、且つ、キャリッジ2の後述するキャリッジ係合部2bの下端よりも高い位置となっている。また、支持部74bは、直立したときに、その先端がキャリッジ2の後述するガイド片2aの上端よりも高い位置となっている。第1駆動ギヤ71、第2駆動ギヤ72及び切換レバー74は、支軸73において相互に当接されて一体となっており、支軸73の軸線方向に沿って画像記録領域A1側にコイルバネ(図示せず)によって付勢されている。また、第1駆動ギヤ71及び第2駆動ギヤ72は、一体となった状態においてそれぞれ独立して回転可能である。
【0050】
また、図6(a)に示すように、キャリッジ2のメンテナンス領域A2側の側面(図3の右側側面)には、走査方向に突出する板状のガイド片2aが設けられている。ガイド片2aは、A方向から見たときに、直立する切換レバー74(図6(b)の実線で示す)の支持部74bと重なるように配置されている。ガイド片2aの下面には、切換レバー74のレバー係合部74aと係合可能なキャリッジ係合部2bが設けられている。キャリッジ係合部2bは、A方向から見たときに、直立する切換レバー74のレバー係合部74aと重ならないようにずれて配置されている。
【0051】
図4、図7に示すように、支軸73の上側には、レバーガイド83が設けられている。レバーガイド83は、プリンタ本体6に固定されている。レバーガイド83は、内側に所定形状のガイド孔86が形成された略平板状の部材である。ガイド孔86には、切換レバー74が挿入されている。ガイド孔86に挿入された切換レバー74は、外力が付与されなければ、付勢力によりガイド孔86における紙送り方向下流側とプリンタ本体6内の中央側との隅部である第1ガイド位置P1(図7の左下の位置)に維持される。
【0052】
また、ガイド孔86の紙送り方向下流側の縁には、第1ガイド位置P1からプリンタ本体6の外側へ向かって、第3ガイド位置P3、第2ガイド位置P2が順次形成されている。第1ガイド位置P1と第3ガイド位置P3の間には、凸部87が形成されている。この凸部87が形成されていることで、付勢力によって第1ガイド位置P1に向かう切換レバー74を凸部87に接触させて、第3ガイド位置P3で係止可能である。第3ガイド位置P3から第2ガイド位置P2へは搬送方向上流側へ迫り出す傾斜面が形成されており、この傾斜面に案内されて切換レバー74が第3ガイド位置P3から第2ガイド位置P2へ円滑に移動可能である。
【0053】
ガイド孔86の搬送方向上流側の縁には、リターンガイド91が形成されている。リターンガイド91は、ガイド孔86の縁から鉛直上方へ突出し、搬送方向下流側へ向かってガイド孔86の中央付近まで水平方向に延出され、その延出端が、切換レバー74の上端より下方となるように、鉛直下方へ垂下された鈎形状である。リターンガイド91は、切換レバー74が第2ガイド位置P2から第1ガイド位置P1へ戻る際の経路を案内する。つまり、切換レバー74は、レバーガイド83のガイド孔86内において、第1ガイド位置P1から第2ガイド位置P2へ向かう往路98(第1経路)と、第2ガイド位置P2から第1ガイド位置P1に戻る復路99(第2経路)の2つの経路を移動可能となっている。
【0054】
また、図6(b)、図7に示すように、切換レバー74は、第1ガイド位置P1にあるときには直立しており、A方向から見て、キャリッジ2のキャリッジ係合部2bと重なっていない(図6(b)に実線で示す)。一方、切換レバー74は、第2ガイド位置P2にあるときには、ガイド孔86の傾斜面に沿って支軸73に対して揺動し、A方向から見て、キャリッジ2のキャリッジ係合部2bと重なっている(図6(b)に2点鎖線で示す)。
【0055】
図5に戻って、第1駆動ギヤ71及び第2駆動ギヤ72の下方には、支軸73と平行な支軸100に、メンテナンス領域A2側から画像記録領域A1側へ向かって(図5における右側から左側)へ順に第1伝達ギヤ101、第2伝達ギヤ102、第3伝達ギヤ103及び第4伝達ギヤ104が並列に配置されている。第1伝達ギヤ101は、第1駆動ギヤ71と噛離可能である。第2〜第4伝達ギヤ102〜104は第2駆動ギヤ72と噛離可能である。第1〜第4伝達ギヤ101〜104は、その厚みは異なるが、外径は同等である。また、第1伝達ギヤ101と第2伝達ギヤ102との間には、第2伝達ギヤ102と第3伝達ギヤ103の合計厚みに相当するスペーサ106が設けられている。
【0056】
第2伝達ギヤ102は、第1駆動ギヤ71及び第2駆動ギヤ72や他の伝達ギヤよりも2倍程度厚くなっており、第1伝達ギヤ101、第3伝達ギヤ103及び第4伝達ギヤ104は、第1駆動ギヤ71及び第2駆動ギヤ72と同等の厚みとなっている。第1伝達ギヤ101のメンテナンス領域A2側には、傘歯ギヤ105が設けられている。傘歯ギヤ105の外径は第1伝達ギヤ101より大きく、これによって、これら間に径方向外側へ突出する規制面105aが形成されている。第1駆動ギヤ71は、この規制面105aに当接することによって、第1伝達ギヤ101と噛合した位置で制止される。
【0057】
第1〜第4伝達ギヤ101〜104は、各駆動機構に連結されて、各駆動機構に動力をそれぞれ伝達するためのものである。第1伝達ギヤ101は、その一端側に設けられた傘歯ギヤ105とともにパージ機構55の吸引ポンプ58などへ動力を伝達する。第2伝達ギヤ102は、パージ機構55のキャップ昇降機構59へ動力を伝達する。第3伝達ギヤ103は、両面印刷時の記録用紙Pの反転動作に用いられる経路切換機構34へ動力を伝達する。第4伝達ギヤ104は、その回転方向の正逆によって第1給紙ローラ25または第2給紙ローラ42へ選択的に動力を伝達する。
【0058】
このように、第1〜第4伝達ギヤ101〜104は、各駆動機構に動力をそれぞれ伝達すべく割り当てが定められている。そして、第2駆動ギヤ72と選択的に連結され、第2〜第4伝達ギヤ102〜104から動力を伝達される駆動機構は互いに異なるタイミングで駆動されるものであり、同時に駆動される駆動機構ではない。第1〜第4伝達ギヤ101〜104から各駆動機構への伝達機構は、ギヤ列やベルトなどを用いた公知の伝達機構を採用することができ、本発明の要旨には直接影響しないので、ここでは詳細な説明を省略する。なお、本実施形態における第2駆動ギヤ72が、本発明における駆動ギヤに相当する。また、本実施形態における第2伝達ギヤ102が、本発明における第1従動ギヤに相当する。さらに、本実施形態における第4伝達ギヤ104が、本発明における第2従動ギヤに相当する。
【0059】
次に、キャリッジ2の往復移動にともなう切換レバー74の移動による各駆動ギヤと伝達ギヤとの噛合の切り換えについて説明する。図8は、キャリッジによるレバー位置の切り換えについて説明するときの動力伝達機構の概略平面図であり、(a)は記録動作時であり、(b)はメンテナンス動作時であり、(c)はメンテナンス動作終了後の記録動作開始時であり、(d)は記録用紙の反転時である。
【0060】
インクジェットヘッド3による記録動作を行っている場合には、キャリッジ2は画像記録領域A1において走査方向に沿って往復移動している。このとき、図7、図8(a)に示すように、ガイド孔86に挿入された切換レバー74は第1ガイド位置P1にある。すると、第1駆動ギヤ71は、スペーサ106によって形成された空間のうち第2伝達ギヤ102側に位置する。この際、第1駆動ギヤ71からはいずれの駆動機構へも駆動伝達されないが、第1駆動ギヤ71と噛合する第1駆動ギヤは搬送ローラ29とともにLFモータ120の動力によって回転され、搬送ローラ29と同期されている排紙ローラ31なども回転する。第2駆動ギヤ72は、第4伝達ギヤ104と噛合して、ASFモータ110の動力を第1給紙ローラ25または第2給紙ローラ42へ伝達する。第1駆動ギヤ71と第2駆動ギヤ72とは、独立した2つのモータ(LFモータ120とASFモータ110)の動力が伝達されて回転されるので、給紙トレイ20または給紙カセット14からの給紙と、第1搬送路23における用紙搬送とを独立して制御することができる。
【0061】
次に、インクジェットヘッド3のメンテナンス動作を行う場合には、キャリッジ2を画像記録領域A1からメンテナンス領域A2に移動させる。すると、キャリッジ2のガイド片2aが切換レバー74の支持部74bに当接する。そのまま、図7、図8(b)に示すように、キャリッジ2が移動すると、キャリッジ2の移動にともない切換レバー74が押進されて往路98を通過して第2ガイド位置P2まで移動したところで、キャリッジ2を停止させる。すると、第1駆動ギヤ71は、第1伝達ギヤ101と噛合して、LFモータ120の動力を吸引ポンプ58に伝達する。また、第2駆動ギヤ72は、第2伝達ギヤ102と噛合して、ASFモータ110の動力をキャップ昇降機構59に伝達する。そして、切換レバー74が第2ガイド位置P2に位置し、第2ガイド位置P2の切換レバー74にキャリッジ2が当接した状態で、パージ動作が行われる。
【0062】
この第2ガイド位置P2における切換レバー74は、第1ガイド位置P1にあるときの切換レバー74と紙送り方向に関する位置がずれており、図6(b)の2点鎖線で示す位置にあり、キャリッジ2のキャリッジ係合部2bと切換レバー74のレバー係合部74aは係合している。この状態で、キャリッジ2がインクジェットヘッド3による記録動作のために画像記録領域A1に戻ろうとすると、図8(c)に示すように、キャリッジ2の移動にともない、キャリッジ係合部2bと係合した切換レバー74が復路99においてリターンガイド91を通過して、第1ガイド位置P1までキャリッジ2と一体的に移動する。そして、第1ガイド位置P1における切換レバー74は、図6(b)の実線で示す位置であり、キャリッジ2のキャリッジ係合部2bと切換レバー74のレバー係合部74aは解除される。したがって、キャリッジ2のみが画像記録領域A1に移動可能となっている。このように、キャリッジ2がインクジェットヘッド3による記録動作のために画像記録領域A1に戻る際に、切換レバー74も第2ガイド位置P2から第1ガイド位置P1まで戻る。これにより、切換レバー74が第2ガイド位置P2のままで、給紙トレイ20または給紙カセット14から給紙を行って、記録動作を行おうとしているときに、誤ってキャップ昇降機構59が駆動してしまうのを防止することができる。なお、本実施形態における画像記録領域A1からメンテナンス領域A2に向かう向きが第1向きに相当する。また、本実施形態におけるメンテナンス領域A2から画像記録領域A1に向かう向きが第1向きとは反対の第2向きに相当する。
【0063】
また、記録用紙Pへの両面印刷時には、片面に文字や画像などが記録されてインクジェットヘッド3の紙送り方向下流側に記録用紙Pが位置する状態で、キャリッジ2を画像記録領域A1からメンテナンス領域A2に移動させる。すると、キャリッジ2のガイド片2aが切換レバー74の支持部74bに当接する。そのまま、図7、図8(d)に示すように、キャリッジ2が移動すると、キャリッジ2の移動にともない切換レバー74が往路98を通って第3ガイド位置P3まで移動したところで、キャリッジ2を停止させる。すると、第1駆動ギヤ71は、スペーサ106によって形成された空間に位置する。この際、第1伝達ギヤ101からはいずれの駆動機構へも駆動伝達されないが、第1駆動ギヤ71と噛合する第1駆動ギヤは搬送ローラ29とともにLFモータ120の動力によって回転され、搬送ローラ29と同期されている排紙ローラ31なども回転する。第2駆動ギヤ72は、第3伝達ギヤ103と噛合して、ASFモータ110の動力を動力伝達機構70に伝達する。記録用紙Pの反転動作が行われた後、キャリッジ2は一旦切換レバー74を第3ガイド位置P3から第2ガイド位置P2に移動させた後、切換レバー74と係合した状態で、切換レバー74を第1ガイド位置P1に移動させつつ、画像記録領域A1に戻る。
【0064】
ここで、キャリッジ2の第2ガイド位置P2から第1ガイド位置P1への移動にともない、キャリッジ2のキャリッジ係合部2bに係合された切換レバー74を第2ガイド位置P2から第1ガイド位置P1に移動させることで、第2駆動ギヤ72を走査方向にスライド移動させて、現在噛合している第2伝達ギヤ102の噛合状態を解除しようとしても、例えば、第2駆動ギヤ72と第2伝達ギヤ102が歯面の面圧により食いつく、または、第2伝達ギヤ102とこれに隣接する第3伝達ギヤ103の位相がずれて、第2伝達ギヤ102の歯車の凹部と第3伝達ギヤ103の歯車の凸部が重なっているなどして、第2駆動ギヤ72が走査方向に移動不能になっていることがある。すると、第2駆動ギヤ72に連結された切換レバー74に係合されたキャリッジ2も走行不能になる。
【0065】
そこで、リニアエンコーダ10によって切換レバー74と係合されたキャリッジ2が画像記録領域A1に向かって走行していないことが検出されたときには、各モータやインクジェットヘッド3を制御する制御部77(図3参照)が、ASFモータ110を駆動して、第2駆動ギヤ72と第2伝達ギヤ102を正負方向に交互に微小回転させて(クック動作)、第2駆動ギヤ72と第2伝達ギヤ102の食いつきを解消する。これにより、第2駆動ギヤ72と第2伝達ギヤ102の噛合状態が解除され、切換レバー74に係合されたキャリッジ2を画像記録領域A1に向かって走行させることが可能となり、切換レバー74を第2ガイド位置P2から第1ガイド位置P1に移動させることができる。
【0066】
次に、インクジェットヘッド3が記録動作の実行命令を受信して、記録動作終了までの工程について説明する。図9は、記録動作に関するフローチャートである。図9に示すように、インクジェットヘッド3が記録動作の実行命令を受信する(S1)。すると、キャリッジ2の位置に応じた切換レバー74の位置が第1ガイド位置P1であるかをリニアエンコーダ10により判断する(S2)。切換レバー74の位置が第1ガイド位置P1ではなく、第2ガイド位置P2または第3ガイド位置P3であるときには(S2:No)、メンテナンス領域A2にあるキャリッジ2を画像記録領域A1に戻す(S3)。そして、キャリッジ2が画像記録領域A1に移動したかリニアエンコーダ10により判断する(S4)。キャリッジ2が移動していないことが検出された場合には(S4:Yes)、上述したクック動作を行う(S5)。そして、キャリッジ2とともに切換レバー74を第1ガイド位置P1まで戻した後、キャリッジ2を1秒停止させて、キャリッジ2のキャリッジ係合部2bと切換レバー74のレバー係合部74aの係合状態が解除されるのを待ってから(S6)、キャリッジ2を画像記録領域A1に戻して、給紙を行った記録用紙Pにインクジェットヘッド3による記録動作を行う(S7)。
【0067】
切換レバー74の位置が第1ガイド位置P1であるときには(S2:Yes)、そのまま給紙を行い、その記録用紙Pにインクジェットヘッド3による記録動作を行う(S7)。また、メンテナンス領域A2にあるキャリッジ2を画像記録領域A1に戻そうとしたときに、キャリッジ2が問題なく移動していることが検出された場合には(S4:No)、クック動作を行わずに、キャリッジ2とともに切換レバー74を第1ガイド位置P1まで戻した後、キャリッジ2を1秒停止させて、キャリッジ2のキャリッジ係合部2bと切換レバー74のレバー係合部74aの係合状態が解除されるのを待ってから(S6)、キャリッジ2を画像記録領域A1に戻して、給紙を行った記録用紙Pにインクジェットヘッド3による記録動作を行う(S7)。
【0068】
本発明のプリンタ1によると、キャリッジ2の画像記録領域A1からメンテナンス領域A2への移動にともない、切換レバー74をキャリッジ2で押進して第1ガイド位置P1から第2ガイド位置P2へ移動させるとともに、切換レバー74をキャリッジ2と係合させて、キャリッジ2のメンテナンス領域A2から画像記録領域A1への移動にともない、第2ガイド位置P2から第1ガイド位置P1へ移動させることができる。このように、インクジェットヘッド3を走査方向に往復移動させるキャリッジ2の力を利用して、切換レバー74を第1ガイド位置P1と第2ガイド位置P2とにわたって確実に移動させることができる。
【0069】
また、キャリッジ2をメンテナンス領域A2に移動させて、インクジェットヘッド3のメンテナンス動作を行った後、インクジェットヘッド3による記録動作を行う場合には、キャリッジ2を画像記録領域A1に移動させるのに加えて、動力伝達機構70の連結先を第1給紙ローラ25にして、記録用紙Pをインクジェットヘッド3に対して供給可能としておく必要がある。そこで、キャリッジ2をメンテナンス領域A2から画像記録領域A1に戻す際に、切換レバー74の支持部74bをキャリッジ2のキャリッジ係合部2bに係合させて、キャリッジ2の画像記録領域A1への移動にともない、切換レバー74を第2ガイド位置P2から第1ガイド位置P1に移動させて、動力伝達機構70を第1給紙ローラ25と連結させて、記録用紙Pを供給可能とする。このように、キャリッジ2の往復移動の力を利用して、切換レバー74を第1ガイド位置P1と第2ガイド位置P2とにわたって移動させて、動力伝達機構70の連結先を確実に切り換えることができる。したがって、切換レバー74が第2ガイド位置P2から第1ガイド位置P1へ移動しないことで、動力伝達機構70の連結先が切り換わらずに、第1給紙ローラ25から記録用紙Pを供給しているつもりが、キャップ昇降機構59が駆動されて、キャップ57が離接移動してしまい、記録用紙Pが供給されていないにもかかわらず、インクジェットヘッド3からインクを噴射してしまうような誤動作が生じるのを防止することができる。
【0070】
さらに、切換レバー74は、紙送り方向の下流側の経路を第1ガイド位置P1から第2ガイド位置P2へ移動するときには、キャリッジ2のキャリッジ係合部2bと係合していない。また、切換レバー74は、紙送り方向の上流側を第2ガイド位置P2から第1ガイド位置P1へ移動するときには、キャリッジ2のキャリッジ係合部2bと係合する。そして、切換レバー74とキャリッジ2との係合状態の切り換えは、第1ガイド位置P1と第2ガイド位置P2で行われる。このように、切換レバー74の移動する経路を2つ設けることで、切換レバー74とキャリッジ2の係合状態を切り換えることができる。
【0071】
加えて、レバーガイド83の紙送り方向の下流側の経路にある第3ガイド位置P3に凸部87が形成されていることで、その第3ガイド位置P3で切換レバー74を固定することができる。また、このように切換レバー74が固定される第3ガイド位置P3が設けられた紙送り方向の下流側の経路を第2ガイド位置P2から第1ガイド位置P1へ切換レバー74を移動させるのは困難であるため、この経路とは別に、第1ガイド位置P1と第2ガイド位置P2の間に切換レバー74が固定される位置のない紙送り方向の上流側の経路を設けて、切換レバー74を紙送り方向の上流側の経路を移動させて、容易に第2ガイド位置P2から第1ガイド位置P1へ移動させることができる。
【0072】
次に、本実施の形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。ただし、上述した実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0073】
本実施形態においては、切換レバー74は、メンテナンス領域A2に配置されていたが、画像記録領域A1とメンテナンス領域A2の境界でもよい。もちろん、切換レバー74が、画像記録領域A1とメンテナンス領域A2との境界より若干画像記録領域A1側に配置されていても本発明の効果が発揮されるが、画像記録領域A1においてキャリッジ2が切換レバー74と当接して負荷が変動することは記録画質の劣化を生じかねないので、切換レバー74は当該境界よりメンテナンス領域A2側に配置されることが好ましい。
【0074】
また、本実施形態においては、動力伝達機構70によって連結先が切り換えられる第1伝達ギヤ101は第1給紙ローラ25に連結され、第3伝達ギヤ103はキャップ昇降機構59に連結されていたが、第1伝達ギヤ101に連結されている機構は、インクジェットヘッド3の記録動作に関わる機構であればよく、さらに、第3伝達ギヤ103に連結されている機構は、インクジェットヘッド3のメンテナンス動作に関わる機構であればよい。また、第2伝達ギヤ102に連結されている機構は、記録用紙Pの反転に関わるフレーム37に連結されずに、任意の駆動機構に連結されていてもよい。
【0075】
さらに、本実施形態においては、動力伝達機構70の第2駆動ギヤ72に連結可能なギヤは第1〜第3伝達ギヤ101〜103の3つのギヤであったが、2つでも4つ以上のギヤであってもよい。また、2つのギヤの場合には、切換レバー74の位置することが可能な第2ガイド位置P2やレバーガイド83の凸部87が設けられてなくてもよい。
【0076】
また、本実施形態においては、キャリッジ2と切換レバー74を係合させるために、キャリッジ2と切換レバー74にキャリッジ係合部2bとレバー係合部74aがそれぞれ設けられていたが、少なくとも一方に特別な形状の係合部が形成され、他方には通常のキャリッジ2や切換レバー74が配置され、いずれかの部位に係合が係合可能となっていればよい。この場合、その係合部と係合する部位を係合部と解する。
【0077】
さらに、本実施形態においては、切換レバー74の移動する経路が往路と復路で異なっていたが、往路と復路が同じ経路であってもよい。
【0078】
以上、本実施形態として、ノズルからインクを噴射するインクジェットヘッドを有するプリンタに本発明を適用した例を挙げて説明したが、本発明の適用対象は、このようなプリンタに限られるものではなく、切換レバーによって1つの駆動モータで動力伝達機構を介して駆動タイミングの異なる複数の駆動機構に対して選択的に動力を伝達可能な、様々な分野で使用される液体噴射装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0079】
1 プリンタ
2 キャリッジ
2b キャリッジ係合部
3 インクジェットヘッド
12 ノズル
25 第1給紙ローラ
59 キャップ駆動機構
70 動力伝達機構
74 切換レバー
74a レバー係合部
110 LFモータ
120 ASFモータ
P1 第1ガイド位置
P2 第2ガイド位置
P3 第3ガイド位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルから液体を噴射する液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドが搭載され、所定の走査方向に往復移動するキャリッジと、
動力を発生させる駆動モータと、
前記駆動モータの動力により駆動する第1機構と、
同じく、前記駆動モータの動力により駆動する第2機構と、
前記駆動モータに接続され、且つ、前記第1機構及び前記第2機構のいずれかに選択的に連結し、その連結先に前記駆動モータの動力を伝達する動力伝達機構と、
前記キャリッジの移動経路上における、第1位置と前記第1位置とは異なる第2位置とにわたって移動可能であり、その位置に応じて前記動力伝達機構の連結先を切り換える切換部材と、を備えており、
前記動力伝達機構は、前記切換部材が前記第1位置に位置するときには、前記第1機構と連結され、前記切換部材が前記第2位置に位置するときには、前記第2機構と連結され、
前記切換部材は、前記キャリッジの前記走査方向に沿った第1向きへの移動にともない、前記キャリッジに押進されて前記第1位置から前記第2位置に移動し、
前記切換部材と前記キャリッジには、前記切換部材が前記第2位置から前記第1向きと反対の第2向きに移動するときに、前記切換部材と前記キャリッジとを係合させる係合部がそれぞれ形成されており、
前記キャリッジが前記第2向きへ移動する際に、前記第2位置にある前記切換部材と前記キャリッジは、前記係合部により係合され一体的に前記第2位置から前記第1位置に移動することを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
前記液体噴射ヘッドは、前記ノズルが開口する液体噴射面を有しており、
前記液体噴射ヘッドの液体噴射対象である被噴射媒体が収容された供給部と、
前記液体噴射ヘッドの前記液体噴射面に密着可能なキャップと、をさらに備えており、
前記第1機構は、前記供給部に収容された前記被噴射媒体を、前記液体噴射ヘッドに対して供給する供給機構であり、
前記第2機構は、前記キャップを前記液体噴射面に対して離接移動させるキャップ駆動機構であり、
前記切換部材は、前記キャリッジの移動経路における、前記液体噴射ヘッドから前記被噴射媒体に液体を噴射する噴射領域の、前記走査方向に関する外側に位置する非噴射領域に配置され、前記非噴射領域から前記噴射領域に向かう前記第2向きに付勢されており、
前記第2位置は、前記第1位置よりもさらに前記噴射領域から離れた位置にあり、
前記キャリッジが前記非噴射領域から前記噴射領域に向かう前記第2向きへ移動する際に、前記第2位置にある前記切換部材と前記キャリッジは、前記係合部により係合され一体的に前記第2位置から前記第1位置に移動することを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記非噴射領域に配置され、ともに前記第1位置と前記第2位置とを結び、互いに前記走査方向と交差する方向にずれた第1経路と第2経路が形成された経路形成部材をさらに備えており、
前記切換部材は、前記走査方向に平行な揺動軸周りに揺動自在であり、
前記経路形成部材は、前記切換部材が前記第1位置から前記第2位置へは前記第1経路を移動し、前記第2位置から前記第1位置へは前記第2経路を移動するように構成されており、
前記係合部は、前記第1経路で係合せずに、前記第2経路で係合し、
前記第2経路を移動して前記第1位置に位置付けられたときに前記係合部は前記切換部材との係合が解除され、前記第1経路を移動して前記第2位置に位置付けられたときに前記係合部は前記切換部材と係合されることを特徴とする請求項2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記キャリッジの前記係合部は、前記キャリッジが前記第2位置にある前記切換部材と当接したときに、前記切換部材に対して前記噴射領域と反対側に設けられており、
前記切換部材は、前記第2経路上に位置するときに前記走査方向に関して前記係合部と重なり、前記第1経路上に位置するときに前記走査方向に関して前記係合部と重ならないことを特徴とする請求項3に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記経路形成部材は、前記第1経路における前記第1位置と前記第2位置との間の第3位置において、前記切換部材の前記第2向きへの移動を規制するストッパを有していることを特徴とする請求項3または4に記載の液体噴射装置。
【請求項6】
前記液体噴射ヘッドから一方の面に液体が噴射された後の前記被噴射媒体の表裏を反転させる反転機構をさらに備えており、
前記動力伝達機構は、前記切換部材が前記第1位置と前記第2位置との間の前記第3位置に位置するときには、前記反転機構と連結されることを特徴とする請求項5に記載の液体噴射装置。
【請求項7】
前記キャリッジの走行状態を検出する検出手段と、
前記駆動モータの駆動を制御する駆動制御手段と、をさらに備えており、
前記動力伝達機構は、
前記切換部材とともに、前記走査方向に移動可能であり、前記駆動モータにより回転駆動される駆動ギヤと、
前記切換部材が前記第2位置に位置したときに、前記切換部材とともに移動した前記駆動ギヤと噛合する第1従動ギヤと、を有しており、
前記第1従動ギヤは、前記キャップ駆動機構と連結されており、
前記駆動制御手段は、前記第2位置にある前記切換部材と係合された前記キャリッジが前記第1位置に向かって走行していないことが前記検出手段によって検出されると、前記駆動モータを駆動して、前記駆動ギヤを正負方向に交互に微小回転させることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の液体噴射装置。
【請求項8】
前記走査方向に沿って前記第1従動ギヤの前記噴射領域側に隣接配置され、前記切換部材が最も前記噴射領域側の前記第1位置に位置するときに前記駆動ギヤと噛合する第2従動ギヤを有しており、
前記第2従動ギヤは、前記供給機構と連結されていることを特徴とする請求項7に記載の液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−11549(P2012−11549A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147063(P2010−147063)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】